説明

同軸ケーブル及びその製造方法並びにこれを用いた多芯ケーブル

【課題】高強度特性と低抵抗特性(高導電性)を両立し、かつ発泡押出作業や端末部の半田付け作業などにおける熱的な負荷においても強度の低下が生じにくく、高い耐熱性をも兼ね備えた同軸ケーブル及びその製造方法並びにこれを用いた多芯ケーブルを提供する。
【解決手段】銅合金線1を7本撚り合わせた銅合金撚線(内部導体)3の外周に発泡絶縁体5が被覆され、その外側に形成されたスキン層6の外周に、複数本の導体線7を銅合金撚線(内部導体)3の長手方向に沿って螺旋状に巻き廻して外部導体8とし、その表面にジャケット層9を被覆して同軸ケーブル10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度、高導電性を有し、かつ発泡押出作業、半田付け作業等のような熱的な負荷を与える作業においても強度の低下が生じにくく、耐熱性にも優れた同軸ケーブル及びその製造方法並びにこれを用いた多芯ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の耐屈曲ケーブル(例えば、ロボットケーブル)や、医療機器用の耐屈曲ケーブル(例えば、プローブケーブル)等に用いられる導体の材料としては、高強度で高導電性の銅合金が一般的に使用されている。
【0003】
現在、量産レベルで製造されている銅合金線としては、連続鋳造・圧延が可能で、経済性に優れたCu−Sn合金線及びCu−Sn−In合金線が挙げられ、電子機器用、及び医療機器用耐屈曲ケーブルの導体材料として多用されている。また、その他の銅合金線も、製品コストおよび銅合金線の各種特性に応じて、様々な分野に適用されている。
【0004】
近年の電子機器の小型化・軽量化、あるいは医療機器の小型化に伴って、これらに使用される電線の導体にも細径化が強く求められており、φ0.03mm以下の導体が要求されるようになってきている。特に、超音波内視鏡ヘッド部の高度化に伴い、超音波内視鏡用ケーブルはより多芯化(200〜260心)の方向に進む傾向がみられ、その一方で、患者の苦痛低減のためのヘッド部の細径化の要求が高まっている。細径化の要求は、血管内から所定の患部にアプローチする血管内手術を実施する際に使用されるカールケーブル等においても顕著である。
また、最近では細径化のニーズのみではなく、耐屈曲性の向上と伝送容量の増加を目的に、高強度特性と高導電特性を両立した導体材料の開発が強く求められている。
【0005】
前述のCu−Sn合金線やCu−Sn−In合金線は、ベース金属であるタフピッチ銅にSnを添加してなる銅合金で構成されている。しかしながら、Cu−Sn合金線は強度を増加するためにはSnの添加量を増加しなければならず、その結果、導電率は低下してしまい、強度と導電率を両立するのは困難である。
【0006】
一方、近年、強度と導電率を両立する銅合金として、Cu−Ag合金が注目されている。引張強度及び導電率が優れたCu−Ag合金は、例えば、銅に銀を1.0〜15重量%含有したCu−Ag合金を(1)鋳造して得たロットに減面率70%以上に冷間加工した後、(2)400〜500℃の温度で1〜30時間熱処理を行い、次いで(3)減面率95%以上の冷間加工を行うことにより製造される(特許文献1参照)。
【0007】
また、純銅に銀を0.1〜1.0重量%添加してCu−Ag合金を生成し、0.01〜0.08mm、引張強さが600MPa以上の素線にし、この素線を所定の本数だけ撚り合わせた後、この撚線に熱処理を施すことにより撚線時の歪を除去して極細銅合金撚線とすることも行われている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−40439号公報
【特許文献2】特開2001−234309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低容量の同軸ケーブルにおいては、極細銅合金線の外層に融点が300℃程度の発泡絶縁体を押出被覆して使用しているが、この押出作業においては、被覆時の絶縁体の熱と押出機ヘッド部の熱(300〜380℃)によって極細銅合金線の機械的特性、特に引張り強度の低下が生じる。更に、端末加工においては、半田付け作業により、300〜350℃程度の半田コテ熱によって端末部極細銅合金線の引張り強度が著しく低下する。従って、発泡押出作業や半田付け作業後においては、電気的特性および機械的特性の両立が難しくなる場合があり、特に引張強度の低下によって、ケーブルとケーブル端末加工部の機械的信頼性が大きく損なわれることがある。
【0009】
また、例えば、超音波診断装置用プローブケーブルや超音波内視鏡ケーブルの用途には、線径0.025mm以下の極細線が使用されるため、このような導体サイズに対応した電気抵抗が問題となる。具体的には、AWG(American Wire Gauge)規格に沿って、細径化と電気特性を真に両立した極細銅合金撚線が要求される。AWG規格と撚線構造(撚り本数/線径)の関係は、42AWG(7/0.025)、43AWG(7/0.023)、44AWG(7/0.020)、45AWG(7/0.018)、46AWG(7/0.016)、48AWG(7/0.013)、50AWG(7/0.010)とされる。
【0010】
しかしながら、特許文献1記載のCu−Ag合金では、引張強さと導電率を両立させているものの、このための手法として、特定の温度で長時間(1〜30時間)の熱処理を行うため、生産効率が悪くコスト高になってしまう。また、押出作業などの熱的な負荷が加わった場合の熱履歴による強度低下について、何ら言及されておらず、対策がなされていない。更に、極細径の導体サイズに対応した電気抵抗についても何ら言及されていない。
【0011】
一方、特許文献2の極細銅合金撚線では、銅合金の添加元素として銀が記載されているが、添加量が0.1〜1.0重量%と少なく、引張強さの向上は望めない。また、この極細銅合金撚線では、塑性歪領域の屈曲特性を向上する目的で主に伸び特性を5%以上確保しているが、伸びを重視した特性では必然的に引張強さは低下してしまう。このため、特に線径0.025mm以下の極細線が使用される電子機器用ケーブル、あるいは医療機器用ケーブル、例えば超音波診断装置用プローブケーブルや超音波内視鏡ケーブルの用途に対しては強度不足であり、屈曲性が十分でないという問題がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、上記課題を解決し、高強度特性と低抵抗特性(高導電性)を両立し、かつ発泡押出作業や端末部の半田付け作業などにおける熱的な負荷においても強度の低下が生じにくく、高い耐熱性をも兼ね備えた同軸ケーブル及びその製造方法並びにこれを用いた多芯ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の同軸ケーブルは、銀(Ag)を1〜3重量%含有し、残部が銅(Cu)及び不可避的不純物からなる線径が0.010〜0.025mmの銅合金線を複数本撚り合わせて銅合金撚線を形成し、前記銅合金撚線の引張強さが850MPa以上、導電率が85%IACS以上であり、かつ前記銅合金撚線の外周に発泡絶縁体を被覆し、更にその外周に、複数本の導体線を前記銅合金撚線の長手方向に沿って螺旋状に巻き廻して外部導体を形成し、前記外部導体の表面にジャケット層を被覆したことを特徴とする。
【0014】
前記銅合金撚線は、熱処理されたものであり、前記熱処理後の電気抵抗の低下率が6%以上であり、かつ前記熱処理後の引張強度の低下率が20%以下とすることが好ましい。
【0015】
前記銅合金線の表面に錫(Sn)、銀(Ag)、又はニッケル(Ni)のめっき層を形成することができる。
【0016】
前記銅合金線の線径が0.021 mmを超え0.025mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が7500Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
前記銅合金線の線径が0.018 mmを超え0.022mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が10000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
前記銅合金線の線径が0.016 mmを超え0.020mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が13000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
前記銅合金線の線径が0.014 mmを超え0.018mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が15500Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
前記銅合金線の線径が0.013 mmを超え0.017mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が17000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
前記銅合金線の線径が0.011 mmを超え0.015mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が23500Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
前記銅合金線の線径が0.008 mmを超え0.012mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が40000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/m、
の同軸ケーブルとすることができる。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明の同軸ケーブルの製造方法は、純銅に銀を1〜3重量%添加して銅合金を生成し、伸線加工を行って線径が0.010〜0.025mmの極細銅合金線を作製後、前記極細銅合金線を複数本撚り合わせて極細銅合金撚線とし、300〜500℃の温度で0.2〜5秒の熱処理を施した後、前記銅合金撚線の外周に、厚さ0.28mm以下の発泡絶縁体を被覆後、スキン層を形成し、更にその外周に、複数本の導体線を前記銅合金撚線の長手方向に沿って螺旋状に巻き廻して外部導体を形成した後、前記外部導体の表面にジャケット層を被覆することを特徴とする。
【0018】
更に、テンションメンバ又は中心介在の外周に、前記同軸ケーブルを複数本撚り合わせて多芯ケーブルとすることができる。
【0019】
テンションメンバ又は中心介在の外周に、前記同軸ケーブルを複数本束ねて形成した同軸ケーブルユニットを複数本撚り合わせて多芯ケーブルとすることもできる。
【0020】
前記同軸ケーブルを複数本一定ピッチで並列に配置して多芯ケーブルとすることもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高強度特性と低抵抗特性(高導電性)を両立し、かつ発泡押出作業や端末部の半田付け作業などにおける熱的な負荷においても強度の低下が生じにくく、高い耐熱性をも兼ね備えた同軸ケーブル及び多芯ケーブルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(同軸ケーブル)
図1に、本実施形態の同軸ケーブルの断面図を示す。
この同軸ケーブル10は、銅合金線1を7本撚り合わせた銅合金撚線(内部導体)3の外周に発泡絶縁体5が被覆され、その外側に形成されたスキン層6の外周に、複数本の導体線7を銅合金撚線(内部導体)3の長手方向に沿って螺旋状に巻き廻して外部導体8とし、その表面にジャケット層9を被覆したものである。
【0023】
(銅合金線)
この銅合金線1は、Cu−Ag合金線であって、線径が0.025〜0.010mmであり、銀を1〜3重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%含有するものである。
銀の含有量を1〜3重量%としたのは、1重量%未満では強度の向上が望めず、3重量%を超えると強度は向上するものの導電率が低下してしまうためである。更に、銀の含有量を1.5〜2.5重量%の範囲とすることにより、強度特性と導電率特性が最も両立した性能が得られる。
【0024】
なお、銅合金線1の表面に、錫(Sn)、銀(Ag)、又はニッケル(Ni)のめっき層を形成することもできる。
【0025】
(内部導体)
内部導体は、上記の銅合金線1を7本撚り合わせた銅合金撚線3で構成され、引張強さが850MPa以上、導電率が85%IACS以上とするものである。引張強さ850MPa以上、導電率85%IACS以上としたのは、医療機器用ケーブルへの使用を考慮した場合、上記範囲では屈曲性、電気抵抗、可撓性などの諸特性が満足されるが、上記範囲外では、これらの諸特性を満足させることができなくなるためである。
また、この銅合金撚線3は、熱処理されたものであり、熱処理後の電気抵抗の低下率が6%以上であり、かつ前記熱処理後の引張強度の低下率が20%以内とされている。熱処理後の電気抵抗の低下率が6%未満であり、前記熱処理後の引張強度の低下率が20%を超えると、発泡押出製造作業や端末部の半田付け作業において断線が生じ易くなり、高強度特性と低抵抗特性(高導電性)を両立することが困難となる。
【0026】
更に、この銅合金撚線3の電気抵抗は、銅合金線1の線径と以下の関係を有するものである。
(1)銅合金線1の線径が0.021 mmを超え0.025mm以下の場合、電気抵抗が7500Ω/km以下。
(2)銅合金線1の線径が0.018 mmを超え0.022mm以下の場合、電気抵抗が10000Ω/km以下。
(3)銅合金線1の線径が0.016 mmを超え0.020mm以下の場合、電気抵抗が13000Ω/km以下。
(4)銅合金線1の線径が0.014 mmを超え0.018mm以下の場合、電気抵抗が15500Ω/km以下。
(5)銅合金線1の線径が0.013 mmを超え0.017mm以下の場合、電気抵抗が17000Ω/km以下。
(6)銅合金線1の線径が0.011 mmを超え0.015mm以下の場合、電気抵抗が23500Ω/km以下。
(7)銅合金線1の線径が0.008 mmを超え0.012mm以下の場合、電気抵抗が40000Ω/km以下。
各サイズ毎に電気抵抗を限定したのは、AWG(American Wire Gauge)規格に沿って、細径化と電気特性を真に両立させるためである。
【0027】
(発泡絶縁体)
発泡絶縁体5としては、例えば、発泡押出用四フッ化エチレン・パーフロロプロビルビニルエーテル共重合体(PFA)を用いることができる。発泡絶縁体5は、銅合金撚線3の外周に、0.28mm以下の厚さで形成される。0.28mm以下の厚さとしたのは、43AWG〜50AWGの同軸ケーブルにおいて、静電容量を30pF/m以上とするためである。
【0028】
(スキン層)
スキン層6は、PETテープを巻回したり、或いは四フッ化エチレン・パーフロロプロビルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)を押出し被覆することなどによって設けることができる。
【0029】
(外部導体)
外部導体8(損巻きシールド)は、Snめっき銅線、Snめっき銅合金線、銀めっき銅線、銀めっき銅合金線などの導体線7を、多数本(例えば、30本〜60本)所定ピッチでらせん状に横巻して形成される。
【0030】
(ジャケット層)
ジャケット層9は、PETテープを巻回したり、或いは四フッ化エチレン・パーフロロプロビルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などを押出し被覆することによって設けることができる。
【0031】
(同軸ケーブルの静電容量)
上記同軸ケーブル10の静電容量は、銅合金線1の線径が0.021 mmを超え0.025mm以下の場合、0.018 mmを超え0.022mm以下の場合、0.016 mmを超え0.020mm以下の場合、0.014 mmを超え0.018mm以下の場合、0.013 mmを超え0.017mm以下の場合、0.011 mmを超え0.015mm以下の場合、0.008 mmを超え0.012mm以下の場合のいずれも、30〜80pF/mであり、低容量なものとなる。
【0032】
(多芯ケーブル:4本の同軸ケーブルを用いたもの)
図2に、本実施形態の多芯ケーブルの断面図を示す。
この多芯ケーブル20は、テンションメンバ21(若しくは中心介在)の外周に、図1に示す同軸ケーブル10を4本同心円上に配置して撚り合わせてバインドテープ23を巻き付け、更に、その外側にシールド25及びシース27を設けたものである。
バインドテープ23の巻厚は、例えば0.05mmとしている。また、シールド25としては、例えば、厚さ0.05mmのSnめっき軟銅線編組を施したものを用いる。シールド25は、他に横巻きシールドであっても良い。シース27は、PETテープを巻回したり、あるいは、例えば、四フッ化エチレン・パーフロロプロビルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)を押出し被覆することなどによって設けることができる。
なお、図2では、同軸ケーブル10を同心円上に1層配置し撚り合わせた構造を示したが、同軸ケーブル10を更に複数本用いて2層以上配置して撚り合わせても良い。
【0033】
(多芯ケーブル:4本の同軸ケーブルユニットを用いたもの)
図3に、他の実施形態の多芯ケーブルの断面図を示す。
この多芯ケーブル30は、図1に示す同軸ケーブル10を複数本束ねて同軸ケーブルユニット31を形成し、この同軸ケーブルユニット31をテンションメンバ21(若しくは中心介在)の外周に複数本集合撚りしてバインドテープ23を巻き付け、更に、その外側にシールド25及びシース27を設けたものである。
【0034】
(多芯ケーブル:多芯リボンケーブル)
図4に、他の実施形態の多芯ケーブルの断面図を示す。
この多芯ケーブル40は、図1に示す同軸ケーブル10を複数本一定のピッチで並列に配置し、更にその並列体の両面に粘着テープ41を貼り、多芯リボンケーブルとしたものである。
【0035】
(製造方法)
次に、本実施形態で使用した銅合金線、銅合金撚線の製造方法について説明する。
まず、純銅に銀を1〜3重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%添加し、銅合金を生成する。その後、伸線加工し、あるいは中間に熱処理を施して線径が0.025〜0.010mmの極細線を作製する。この場合、途中の線径において錫(Sn)、銀(Ag)、又はニッケル(Ni)めっきを施して、最終的に線径が0.025〜0.010mmの極細線となるように作製してもよい。
【0036】
次に、得られた極細銅合金線単線、あるいは所定の本数、例えば7本撚り合わせて極細銅合金撚線としたものについて、特定条件での熱処理を施す。熱処理は、300〜500℃に加熱された加熱炉中を0.2〜5秒、好ましくは0.5〜1.5秒走行させることにより行う。
熱処理条件として、300〜500℃で0.2〜5秒としたのは、熱処理温度が300℃未満、熱処理時間が0.2秒未満とすると、引張強さの低下は小さいものの、導電率の増加が少なく所望の特性が得られないためである。また、熱処理温度が500℃を超え、熱処理時間が5秒を超えると導電率は大きく増加するものの、引張強さが著しく低下してしまい、所望の特性が得られないためである。さらに、好ましくは0.5〜1.5秒の範囲で熱処理を行うことで、引張強さと導電率が最も両立した性能を得ることができる。
【0037】
以上の処理を行うことにより得られた銅合金線、銅合金撚線は、線径が0.025〜0.010mmであり、銀を1〜3重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%含有し、引張強さ850MPa以上、導電率85%IACS以上とすることができる。
【0038】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、最終線径0.025mm以下の極細線で、高強度特性と低抵抗特性(高導電性)を両立し、かつ発泡押出作業や端末部の半田付け作業などにおける熱的な負荷においても強度の低下が生じにくく、高い耐熱性をも兼ね備えた極細銅合金線及び極細銅合金撚線とすることができる。
よって、これらの極細銅合金線、極細銅合金撚線を使用して同軸ケーブルなどを製造すれば、小型化、細径化、軽量化、高耐屈曲性、高伝送化の性能が要求される電子機器用及び医療機器用ケーブルに好適に用いることができる。
【実施例1】
【0039】
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0040】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが1μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.023mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.023mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ1.1mmで撚り合せを行い、その外径が0.069mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0041】
この極細銅合金撚線について、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。なお、変化率は、[(熱処理前の値−熱処理後の値)/熱処理前の値]×100%として計算した。その結果を表1に示す。
【0042】
更に、この撚線の外周に厚さ0.07mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.210mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.025mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.310mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例2】
【0043】
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0044】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例3】
【0045】
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0046】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例4】
【0047】
(44AWGの同軸ケーブルの作製)
【0048】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが0.9μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.020mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.020mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ1.0mmで撚り合せを行い、その外径が0.06mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0049】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0050】
更に、この撚線の外周に厚さ0.06mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.180mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.025mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.280mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例5】
【0051】
(44AWGの同軸ケーブルの作製)
【0052】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例4の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例6】
【0053】
(44AWGの同軸ケーブルの作製)
【0054】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例4の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例7】
【0055】
(45AWGの同軸ケーブルの作製)
【0056】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが0.8μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.018mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.018mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ0.8mmで撚り合せを行い、その外径が0.054mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0057】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0058】
更に、この撚線の外周に厚さ0.05mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.154mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.020mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.244mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例8】
【0059】
(45AWGの同軸ケーブルの作製)
【0060】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例7の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例9】
【0061】
(45AWGの同軸ケーブルの作製)
【0062】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例7の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例10】
【0063】
(46AWGの同軸ケーブルの作製)
【0064】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが0.7μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.016mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.016mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ0.8mmで撚り合せを行い、その外径が0.048mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0065】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0066】
更に、この撚線の外周に厚さ0.04mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.128mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.020mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.218mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例11】
【0067】
(46AWGの同軸ケーブルの作製)
【0068】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例10の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例12】
【0069】
(46AWGの同軸ケーブルの作製)
【0070】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例10の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例13】
【0071】
(47AWGの同軸ケーブルの作製)
【0072】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが0.6μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.015mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.015mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ0.8mmで撚り合せを行い、その外径が0.045mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0073】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0074】
更に、この撚線の外周に厚さ0.035mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.115mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.020mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.205mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例14】
【0075】
(47AWGの同軸ケーブルの作製)
【0076】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例13の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例15】
【0077】
(47AWGの同軸ケーブルの作製)
【0078】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例13の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例16】
【0079】
(48AWGの同軸ケーブルの作製)
【0080】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが0.5μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.013mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.013mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ0.7mmで撚り合せを行い、その外径が0.039mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0081】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0082】
更に、この撚線の外周に厚さ0.03mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.099mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.016mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.181mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例17】
【0083】
(48AWGの同軸ケーブルの作製)
【0084】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例16の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例18】
【0085】
(48AWGの同軸ケーブルの作製)
【0086】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例16の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例19】
【0087】
(50AWGの同軸ケーブルの作製)
【0088】
無酸素銅に、2.0重量%の銀を添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめっき厚さが0.4μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.010mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.010mmのAgめっき銅合金線(Cu−2%Ag)を7本用意し、これをピッチ0.5mmで撚り合せを行い、その外径が0.030mmの撚線を作製した。その後、得られた極細銅合金撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0089】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0090】
更に、この撚線の外周に厚さ0.025mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.08mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.016mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.162mmの同軸ケーブルを得た。
【実施例20】
【0091】
(50AWGの同軸ケーブルの作製)
【0092】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、実施例19の製造方法と同様の処理を行った。
【実施例21】
【0093】
(50AWGの同軸ケーブルの作製)
【0094】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、実施例19の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例1]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0095】
熱処理を施さない点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例2]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0096】
Ag添加濃度を0.5重量%とした点を除いて、実施例2の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例3]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0097】
Ag添加濃度を3.5重量%とした点を除いて、実施例2の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例4]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0098】
250℃で5.0秒の熱処理を施す点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例5]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0099】
600℃で0.2秒の熱処理を施す点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例6]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0100】
450℃で0.1秒の熱処理を施す点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例7]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0101】
450℃で6.0秒の熱処理を施す点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[従来例1]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0102】
添加金属をAgに替えてSnを0.3重量%とし熱処理を施さない点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[従来例2]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0103】
添加金属をAgに替えてSnを0.3重量%とした点を除いて、実施例1の製造方法と同様の処理を行った。
[従来例3]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0104】
添加金属をAgに替えてSnを0.3重量%とした点を除いて、実施例2の製造方法と同様の処理を行った。
[従来例4]
(43AWGの同軸ケーブルの作製)
【0105】
添加金属をAgに替えてSnを0.3重量%とした点を除いて、実施例3の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例8]
(42AWGの同軸ケーブルの作製)
【0106】
無酸素銅に、0.19重量%のSnと、0.20重量%のInを添加し、真空チャンバ内に固定してある黒鉛坩堝において加熱溶解した後、黒鉛鋳型を用いて連続鋳造してφ8mmの荒引線を作製した。その後、伸線加工、中間焼鈍、伸線加工を経て、最終素線のめつき厚さが1.1μmとなるようにAgめっきを行い、線径0.025mmまで伸線加工を行い、極細銅合金線を得た。この0.025mmのAgめっきCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を7本用意し、これをピッチ1.3mmで撚り合せを行い、その外径が0.075mmの撚線を作製した。その後、得られた撚線を350℃に加熱された熱処理炉で5.0秒走行熱処理し、極細銅合金撚線を得た。
【0107】
この極細銅合金撚線について、実施例1と同様にして、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率を測定し、引張強さ及び電気抵抗の変化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0108】
更に、この撚線の外周に厚さ0.08mmの発泡PFA樹脂を押出被覆して外径0.235mmの気泡を持つ内部絶縁体を形成した。この内部絶縁体の外周に、0.01mm厚のPETテープからなるスキン層を形成し、このスキン層の外周に、素線径が0.025mmのCu−In−Sn合金線(0.19重量%Sn、0.20重量%In)を横巻きして外部導体を形成し、その外部導体の外周に厚さ0.015mmのPETテープからなるジャケットを形成し、外径0.335mmの同軸ケーブルを得た。
[比較例9]
(42AWGの同軸ケーブルの作製)
【0109】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、比較例8の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例10]
(42AWGの同軸ケーブルの作製)
【0110】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、比較例8の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例11]
(44AWGの同軸ケーブルの作製)
【0111】
銀の代わりに0.19重量%の錫と0.19重量%のインジウムを添加した点を除いて、実施例4の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例12]
(44AWGの同軸ケーブルの作製)
【0112】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、比較例11の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例13]
(44AWGの同軸ケーブルの作製)
【0113】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、比較例11の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例14]
(46AWGの同軸ケーブルの作製)
【0114】
銀の代わりに0.19重量%の錫と0.19重量%のインジウムを添加した点を除いて、実施例10の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例15]
(46AWGの同軸ケーブルの作製)
【0115】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、比較例14の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例16]
(46AWGの同軸ケーブルの作製)
【0116】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、比較例14の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例17]
(48AWGの同軸ケーブルの作製)
【0117】
銀の代わりに0.19重量%の錫と0.19重量%のインジウムを添加した点を除いて、実施例16の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例18]
(48AWGの同軸ケーブルの作製)
【0118】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、比較例17の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例19]
(48AWGの同軸ケーブルの作製)
【0119】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、比較例17の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例20]
(50AWGの同軸ケーブルの作製)
【0120】
銀の代わりに0.19重量%の錫と0.19重量%のインジウムを添加した点を除いて、実施例19の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例21]
(50AWGの同軸ケーブルの作製)
【0121】
450℃で1.5秒の熱処理を施す点を除いて、比較例20の製造方法と同様の処理を行った。
[比較例22]
(50AWGの同軸ケーブルの作製)
【0122】
500℃で0.4秒の熱処理を施す点を除いて、比較例20の製造方法と同様の処理を行った。
【0123】
(実施例1〜21、比較例1〜22、従来例1〜4の極細銅合金撚線の評価結果)
表1に、実施例1〜21、比較例1〜22、従来例1〜4の極細銅合金撚線について、熱処理前後の引張強さ及び電気抵抗、熱処理後の導電率、引張強さ及び電気抵抗の変化率の結果を示す。
【0124】
【表1】

【0125】
表1に示すように、実施例1〜3(43AWG)の7本撚線においては、添加金属濃度および熱処理条件が適切であったため、引張強さの低下率が6.9〜10.8%に止まり、加熱後の引張強さが910MPaであり、目標値である引張強さ850MPa以上をクリアできた。また、電気抵抗の低下率も6.1〜7.3%(電気抵抗変化率6%以上)と顕著で、加熱後の電気抵抗が6,450Ω/kmであり、導電率85%以上の高導電性の線材を得ることができた。
【0126】
これに対し、銅錫合金線の従来例1〜4(43AWG)の7本撚線は、その引張強さが850MPaを下回っており、さらに、従来の銅錫合金線に本発明の熱処理を同様に行っても(従来例2〜4)、引張強さ710〜730MPaと大きく低下してしまい、電気抵抗の低下率も0.9%以下に止まり、引張強度と導電率両方の特性を両立することは困難であった。
【0127】
従来のCu−Sn−In合金線(比較例8〜22参照)の7本撚線は、その引張強さが加熱後850MPaを下回っており、高強度の材料を得ることができなかった。
【0128】
また、比較例1は熱処理を実施していないため、引張強さは高いものの、電気抵抗は6,870Ω/kmと高く、導電率85%以上の高導電性の線材を得ることができなかった。
比較例2は、銀の添加濃度が0.5重量%と少なすぎるため、引張強さが目標値の850MPaを下回ってしまい、また、電気抵抗の低下率が2%に止まり、引張強度と電気抵抗の両立は困難であることが分かった。
比較例3は、銀の添加濃度が3.5重量%と多すぎるため、電気抵抗の低下率が1%に止まり、引張強度と電気抵抗の両立は困難であることが分かった。
比較例4は、熱処理温度が250℃と低温であったため、電気抵抗の低下率が0.5%に止まり、引張強度と電気抵抗の両立は困難であることが分かった。
比較例5は、熱処理温度が600℃と高温であったため、引張強さの低下率が27.3%と著しく、引張強度と電気抵抗の両立は困難であることが分かった。
比較例6は、熱処理時間が0.1秒と短時間であったため、電気抵抗の低下率が1%に止まり、引張強度と電気抵抗の両立は困難であることが分かった。
比較例7は、熱処理時間が6.0秒と長時間であったため、引張強さの低下率が22.1%であり、810MPaと低く、引張強度と電気抵抗の両立は困難であることが分かった。
【0129】
実施例1〜実施例21と比較例8〜22とを比較すると、比較例8〜22の撚線は、電気抵抗の低下率が0.8〜3.2%程度に止まったため、いずれも電気抵抗の値が高い線材となってしまった。また、比較例8〜比較例22に至っては、引張強さの目標値である850MPaを下回ってしまった。
つまり、表1から、比較例8〜22のようなCu−0.19%Sn−0.19%In合金を使用した場合には、加熱処理の有無に関わらず、引張強さが実施例1〜21に比して下回っており、また、電気抵抗も実施例1〜21に比して高いことがわかる。
【0130】
また、従来技術において説明した通り、従来品は特に加熱処理を施さないCu−0.19%Sn−0.19%In合金撚線を使用しており、別途熱処理を実施していない。従って、たとえ裸の7本撚線の段階で、高導電性および高強度の特性を有するものであったとしても、押出し作業時に生じる加熱(例えば、400〜300℃、1秒〜5秒)よって、比較例8〜22の合金撚線に示すように、電気抵抗の低下率も少なく、加熱前よりも引張強さが低下してしまうことがわかる。
これに対して、実施例の撚線は、撚線加工後にあらかじめ熱処理を実施しているため、押出し加工時に生じる加熱による熱履歴が生じることがなく、押出し加工時の前後において引張強度および電気抵抗の点に変動がない同軸ケーブルを提供できる。
【0131】
表1の結果より、実施例の同軸ケーブルの電気特性は、ワンサイズ太い従来の同軸ケー―ブルと同等である(例えば、実施例の43AWG、45AWG、47AWGの同軸ケーブルの電気特性および機械的特性は、従来の42AWG、44AWG、46AWGの同軸ケーブルの電気特性および機械的特性と同等レベルである)。従って、43AWG、45AWG、47AWGのように奇数サイズの同軸線を用いることで同軸ケーブルを細径化しながら、同軸線の急激な電気特性の劣化を防止することが可能になる。
【0132】
(実施例1〜21、比較例1〜22、従来例1〜4の同軸ケーブルの評価結果)
まず、実施例1〜21、比較例1〜22、従来例1〜4の各同軸ケーブルについて屈曲試験を行い、屈曲寿命を評価した。屈曲試験は、曲げ半径2mmの治具に試料ケーブル(同軸ケーブル)の一端部を固定し、試料ケーブルのサイズによって他端部に50gf或いは20gfの重りを吊り下げた状態から、サンプルを同軸ケーブルの長手方向に試験速度30回/1分の条件で左右90゜繰り返し屈曲させ、試料ケーブルの内部導体が破断するまでの回数(寿命)を測定する試験であり、試料に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点で寿命とした。次表中の数値は、寿命に至るまでの屈曲回数を表している。
【0133】
また、実施例1〜21、比較例1〜22、従来例1〜4の各同軸ケーブルについて、静電容量、減衰量、特性インピーダンスを評価した。
静電容量の測定は1mの試料ケーブル(同軸ケーブル)の内部導体と外部導体間をLCRメーターと接続し、1kHzでの静電容量を測定した。また、1mの試料ケーブル両端の内部導体と外部導体間を測定用同軸ケーブル(リード線)でネットワークアナライザの送信側と受信側とに接続し、10MHzでの減衰量を測定した。なお、試料の減衰量を測定する前に、校正を行い、測定用同軸ケーブル(リード線)の影響を除いた。また、特性インピーダンスは、ネットワークアナライザを用いて10MHzでの数値を測定した。
表2にこれらの電気特性および機械特性の評価結果を示す。
【0134】
【表2】

【0135】
表2に示すように、実施例1〜3(43AWG)の同軸ケーブルの屈曲寿命は20,900回以上であるのに対し、比較例1〜7(43AWG)及び従来例1〜4(43AWG)では各々19,600回、12,300回、18,200回、20,600回、12,400回、18,800回、9,300回、16,500回、12,400回、11,900回、12,300回であり、実施例1〜実施例3の同軸ケーブルは、屈曲寿命が長くて屈曲特性に優れていることが分かる。
また、同一ワイヤサイズの実施例4〜21および比較例11〜22を比較しても、実施例の同軸ケーブルは、比較例の同軸ケーブルに対して、屈曲寿命が長くて屈曲特性に優れていることが分かる。
【0136】
また、表2の結果から、実施例1〜21の同軸ケーブルは、比較例および従来例の同軸ケーブルと比較して同等の静電容量および特性インピーダンスを維持していることが確認できた。周波数が10MHzの時の減衰量についても、実施例の同軸ケーブルは、同一ワイヤサイズの従来例および比較例の同軸ケーブルに比して、同等以上の減衰特性を維持していることが確認できた。
【0137】
特に、比較例8は42AWG の同軸ケーブルであるが、実施例1〜実施例3の同軸ケーブルと屈曲寿命および減衰量について比較すると、屈曲寿命は実施例1〜実施例3の方が長く、減衰量はほぼ同等であると評価できる。
また、表1を参照して、撚線状態における引張強さおよび電気抵抗を比較すると、引張強さは実施例1〜実施例3の方が勝っており、電気抵抗はほぼ同等であると評価できる。
つまり、本実施例によれば、顧客の要望等に応じて同軸ケーブルをワンサイズ細くしたとしても、電気特性(中心導体抵抗、減衰量)はワンサイズ太い比較例と同等であり、同軸線の屈曲特性(引張強度)はワンサイズ太い比較例よりも高い同軸ケーブルを提供することができる。このため、同軸ケーブルを細径化する際には、電気特性(電気抵抗、減衰量)と機械特性(屈曲寿命)の劣化を極力抑えることができる。
【0138】
[他の実施形態]
本発明の銅合金の添加元素として銀以外に、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)から選ばれる一種、あるいは2種の金属を合計量で0.02〜0.10重量%添加することも可能である。添加元素を増やすことはコストの増加につながるが、さらなる高強度化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の一実施形態の同軸ケーブルの横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の多芯ケーブルの横断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の多芯ケーブルの横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の多芯ケーブルの横断面図である。
【符号の説明】
【0140】
1 銅合金線
3 銅合金撚線
(内部導体)
5 発泡絶縁体
6 スキン層
7 導体線
8 外部導体
9 ジャケット層
10 同軸ケーブル
20,30,40 多芯ケーブル
21 テンションメンバ
23 バインドテープ
25 シールド
27 シース
31 同軸ケーブルユニット
41 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀(Ag)を1〜3重量%含有し、残部が銅(Cu)及び不可避的不純物からなる線径が0.010〜0.025mmの銅合金線を複数本撚り合わせて銅合金撚線を形成し、前記銅合金撚線の引張強さが850MPa以上、導電率が85%IACS以上であり、かつ前記銅合金撚線の外周に発泡絶縁体を被覆し、更にその外周に、複数本の導体線を前記銅合金撚線の長手方向に沿って螺旋状に巻き廻して外部導体を形成し、前記外部導体の表面にジャケット層を被覆したことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記銅合金撚線は、熱処理されたものであり、前記熱処理後の電気抵抗の低下率が6%以上であり、かつ前記熱処理後の引張強度の低下率が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記銅合金線の表面に錫(Sn)、銀(Ag)、又はニッケル(Ni)のめっき層を形成したことを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記銅合金線の線径が0.021 mmを超え0.025mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が7500Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記銅合金線の線径が0.018 mmを超え0.022mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が10000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項6】
前記銅合金線の線径が0.016 mmを超え0.020mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が13000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項7】
前記銅合金線の線径が0.014 mmを超え0.018mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が15500Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項8】
前記銅合金線の線径が0.013 mmを超え0.017mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が17000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項9】
前記銅合金線の線径が0.011 mmを超え0.015mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が23500Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項10】
前記銅合金線の線径が0.008 mmを超え0.012mm以下である同軸ケーブルであって、電気抵抗が40000Ω/km以下、静電容量が30〜80pF/mであることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項11】
純銅に銀を1〜3重量%添加して銅合金を生成し、伸線加工を行って線径が0.010〜0.025mmの極細銅合金線を作製後、前記極細銅合金線を複数本撚り合わせて極細銅合金撚線とし、300〜500℃の温度で0.2〜5秒の熱処理を施した後、前記銅合金撚線の外周に、厚さ0.28mm以下の発泡絶縁体を被覆後、スキン層を形成し、更にその外周に、複数本の導体線を前記銅合金撚線の長手方向に沿って螺旋状に巻き廻して外部導体を形成した後、前記外部導体の表面にジャケット層を被覆することを特徴とする同軸ケーブルの製造方法。
【請求項12】
テンションメンバ又は中心介在の外周に、請求項1記載の同軸ケーブルを複数本撚り合わせたことを特徴とする多芯ケーブル。
【請求項13】
テンションメンバ又は中心介在の外周に、請求項1記載の同軸ケーブルを複数本束ねて形成した同軸ケーブルユニットを複数本撚り合わせたことを特徴とする多芯ケーブル。
【請求項14】
請求項1記載の同軸ケーブルを複数本一定ピッチで並列に配置したことを特徴とする多芯ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−169687(P2007−169687A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366568(P2005−366568)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】