説明

同軸ケーブル

【課題】現場での作業負担を軽減し、位相の微調整を容易化すること。
【解決手段】同軸ケーブルは、内部導線と、絶縁層と、外部導体層と、遮蔽用導体とを備える。絶縁層は、内部導線の外周を被覆する。外部導体層は、絶縁層の外周を被覆するとともに、絶縁層の一部を露出させる開口を備える。遮蔽用導体は、外部導体層の外周にスライド自在に装着され、外部導体層の外周をスライドしつつ開口の少なくとも一部を遮蔽することにより、開口から露出される絶縁層の面積を増減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムや無線電力送電システムでは、装置間を接続する伝送線路として同軸ケーブルが用いられており、この同軸ケーブルを通過する信号の位相を任意に調整することが求められる。例えば、同軸ケーブルの線路間に位相調整器を介在させ、この位相調整器によって伝送線路の電気長を変化させることで、位相を調整することが行われている。
【0003】
しかし、位相調整器を用いて位相を調整する手法では、線路途中に位相変調器を設置するために、2本の同軸ケーブルを位相変調器に接続する作業が発生し、接続作業の負担が大きい。
【0004】
このため、位相調整器を用いることなく、同軸ケーブルを直接加工して位相を調整する従来技術が提案されている。この従来技術では、同軸ケーブルの外部導体層の一部を剥離して内部の絶縁層を露出させる開口を設けることにより、同軸ケーブルを等価回路に置き換えた場合の誘導性又は容量性を変化させ、位相の進みまたは遅れを発生させる。これにより、位相を調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−56687号公報
【特許文献2】特開2009−224044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、同軸ケーブルを直接加工して位相を調整する従来技術では、現場での作業負担が大きく、位相の微調整が困難であるという問題がある。
【0007】
すなわち、従来技術では、同軸ケーブルの外部導体層の一部を剥離して形成された開口の面積が目的の面積と異なる場合には、現場にて作業員が外部導体層を再度剥離して開口の寸法を再調整するため、現場での作業負担が増大する。また、現場にて作業員が開口の寸法を再調整した場合、作業員の技量の違いにより開口の面積が過剰に増加することがあり、結果として、位相を微調整することができない恐れがある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、現場での作業負担を軽減し、位相の微調整を容易化することができる同軸ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する同軸ケーブルは、内部導線と、絶縁層と、外部導体層と、遮蔽用導体とを備える。絶縁層は、前記内部導線の外周を被覆する。外部導体層は、前記絶縁層の外周を被覆するとともに、前記絶縁層の一部を露出させる開口を備える。遮蔽用導体は、前記外部導体層の外周にスライド自在に装着され、前記外部導体層の外周をスライドしつつ前記開口の少なくとも一部を遮蔽することにより、前記開口から露出される前記絶縁層の面積を増減する。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する同軸ケーブルの一つの態様によれば、現場での作業負担を軽減し、位相の微調整を容易化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1に係る同軸ケーブルの外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、一般的な同軸ケーブルを複数の区間に区切った態様を示す図である。
【図3】図3は、図2に示した同軸ケーブルの等価回路を示す図である。
【図4】図4は、図2に示した同軸ケーブルの外部導体層に開口を設けた態様を示す図である。
【図5】図5は、図4に示した同軸ケーブルの等価回路を示す図である。
【図6】図6は、スライド操作を受け付ける前のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図7】図7は、スライド操作を受け付けた場合のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図8】図8は、C型金具の位置と絶縁層の露出面積との関係を示す図である。
【図9】図9は、実施例2に係る同軸ケーブルの外観を示す斜視図である。
【図10】図10は、スライド操作を受け付ける前のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図11】図11は、スライド操作を受け付けた場合のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図12】図12は、スライド操作を受け付けた場合のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図13】図13は、C型金具の位置と絶縁層の露出面積との関係を示す図である。
【図14】図14は、実施例3に係る同軸ケーブルの外観を示す斜視図である。
【図15】図15は、θ方向のスライド操作を受け付ける前のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図16】図16は、θ方向のスライド操作を受け付けた場合のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図17】図17は、C型金具の位置と絶縁層の露出間隔との関係を示す図である。
【図18】図18は、X方向のスライド操作を受け付ける前のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図19】図19は、X方向のスライド操作を受け付けた場合のC型金具と開口との位置関係を示す図である。
【図20】図20は、C型金具の位置と絶縁層の露出面積との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する同軸ケーブルの実施例を図面に基づいて説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
まず、実施例1に係る同軸ケーブル100の構成について説明する。図1は、実施例1に係る同軸ケーブル100の外観を示す斜視図である。図1に示すように、同軸ケーブル100は、内部導線110と、絶縁層120と、外部導体層130と、C型金具140とを有する。
【0014】
内部導線110は、導電性を有する材料により断面略円形状に形成され、一方向に伸延する。図1に示した例では、内部導線110は、X方向に伸延する。なお、図1の直線矢印で示す「X方向」は、内部導線110の「軸方向」に対応する。また、以下、単に「X方向」と記載する場合には、正方向および負方向を含むものとする。
【0015】
絶縁層120は、絶縁体により構成され、内部導線110の外周を被覆する。
【0016】
外部導体層130は、導電性を有する材料により構成され、絶縁層120の外周を被覆する。外部導体層130は、X方向に沿って配置された2つの開口131、131を備える。開口131、131は、外部導体層130の一部を剥離することにより形成され、絶縁層120の一部を露出させる。
【0017】
ここで、同軸ケーブル100の外部導体層130に開口131、131を設ける理由について説明する。まず、外部導体層に開口が設けられていない一般的な同軸ケーブルについて説明する。図2は、一般的な同軸ケーブルを複数の区間に区切った態様を示す図である。図3は、図2に示した同軸ケーブルの等価回路を示す図である。図2に示す同軸ケーブルは、4つの区間A〜Dに区切られている。4つの区間A〜Dに区切られた同軸ケーブルが等価回路に置き換えられると、図3に示すように、抵抗値Rの抵抗とインダクタンスLのコイルとが直列に接続され、これら抵抗およびコイルとキャパシタンスCのコンデンサとが並列に接続されることとなる。通常の態様では、4つの区間A〜Dにおける抵抗値R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCは、同一の値である。
【0018】
次いで、外部導体層に開口を設けた同軸ケーブルについて説明する。同軸ケーブルの外部導体層の一部を剥離することにより開口が形成されると、同軸ケーブルのうち開口の形成された区間における特性インピーダンスが変動する。言い換えると、同軸ケーブルのうち開口の形成された区間における抵抗値、インダクタンスおよびキャパシタンスが変動する。例えば、図2に示した同軸ケーブルの区間Cに、図4に示すように、開口が形成されると、開口の形成された区間Cにおける抵抗値R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCが変動する。すなわち、図5に示す等価回路では、開口が形成された区間Cにおける抵抗値R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCが、それぞれ、抵抗値R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCに変動していることが分かる。なお、図4は、図2に示した同軸ケーブルの外部導体層に開口を設けた態様を示す図である。図5は、図4に示した同軸ケーブルの等価回路を示す図である。
【0019】
このように、外部導体層に開口が設けられると、同軸ケーブルのうち開口の形成された区間における抵抗値、インダクタンスおよびキャパシタンスが変動し、当該区間での誘導性または容量性が支配的となる。結果として、開口では、位相の進みまたは遅れが生じる。さらに、開口から露出される絶縁層の面積が大きいほど、位相の進みまたは遅れが大きくなることが分かっている。そこで、本実施例の同軸ケーブル100では、開口131、131にて位相の進みまたは遅れを発生させるために、外部導体層130に開口131、131を設ける。
【0020】
図1の説明に戻る。開口131、131どうしの間隔Lは、利用される周波数帯の波長の1/4に設定される。これにより、開口131、131にて発生する反射波どうしを相殺させることができ、インピーダンスの不整合を抑えることができる。
【0021】
C型金具140は、導電性およびバネ性を有する金属などの材料により断面視略C字状に形成され、外部導体層130の外周にスライド自在に装着される。すなわち、C型金具140は、自身のバネ性を利用して外部導体層130に外嵌されることにより、外部導体層130の外周に装着され、外部導体層130の外周に対して、X方向およびθ方向にスライド可能である。なお、図1の弧状矢印で示す「θ方向」は、内部導線110の「周方向」に対応する。また、以下、単に「θ方向」と記載する場合には、正方向および負方向を含むものとする。
【0022】
また、C型金具140は、外部導体層130の外周のうち開口131、131付近に配置されている。そして、C型金具140は、スライド操作を受けた場合に、外部導体層130の外周をθ方向に沿ってスライドしつつ開口131、131の一部を遮蔽することにより、開口131、131から露出される絶縁層120の面積を増減する。C型金具140は、遮蔽用導体の一例である。
【0023】
次に、C型金具140による開口131の遮蔽動作を説明する。図6は、スライド操作を受け付ける前のC型金具140と開口131、131との位置関係を示す図である。図7は、スライド操作を受け付けた場合のC型金具140と開口131、131との位置関係を示す図である。
【0024】
図6に示すように、スライド操作を受け付ける前のC型金具140は、開口131、131を遮蔽していない。この状態では、開口131、131から露出される絶縁層120の面積は最大となる。
【0025】
そして、C型金具140は、θ方向の負方向へのスライド操作を受け付けた場合には、図7に示すように、外部導体層130の外周をθ方向の負方向にスライドしつつ開口131、131の下部を遮蔽する。これにより、C型金具140は、開口131、131から露出される絶縁層120の面積を減じる。一方、図7に例示したように既に開口131,131の下部を遮蔽しているC型金具140は、θ方向の正方向へのスライド操作を受け付けた場合には、外部導体層130の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ開口131、131の下部を開放する。これにより、C型金具140は、開口131、131から露出される絶縁層120の面積を増やす。なお、以下では、開口131、131から露出される絶縁層120の面積を、単に「露出面積」と呼ぶことがあるものとする。
【0026】
図8は、C型金具140の位置と絶縁層120の露出面積との関係を示す図である。図8の横軸は、外部導体層130の外周におけるC型金具140のθ方向の位置を示し、図8の縦軸は、絶縁層120の露出面積を示す。また、C型金具140が位置θmaxにある場合には、スライド操作を受けておらず、C型金具140が開口131、131を遮蔽していないものとする。
【0027】
図8に示すように、C型金具140が位置θmaxにある場合には、絶縁層120の露出面積は、最大値Smaxとなる。そして、C型金具140が外部導体層130の外周を位置θmaxからθ方向の負方向へ移動するに連れて、開口131、131がC型金具140により遮蔽されるため、絶縁層120の露出面積が減少することが分かる。一方、C型金具140が外部導体層130の外周をθ方向の正方向へ移動するに連れて、開口131、131が解放されるため、絶縁層120の露出面積が増加することが分かる。
【0028】
このように、外部導体層130の外周に対してC型金具140をスライドさせて開口131、131の一部を遮蔽することにより、絶縁層120の露出面積を自由に増減することができる。ここで、上述したように、絶縁層120の露出面積が大きいほど、位相の進みまたは遅れが大きくなることが分かっている。このことより、絶縁層120の露出面積を自由に増減することによって、位相を目的の値に微調整することが可能となることが分かる。
【0029】
上述してきたように、実施例1によれば、開口131、131を設けた外部導体層130の外周にC型金具140をスライド自在に装着し、スライドさせたC型金具140により開口131、131の一部を遮蔽することで、絶縁層120の露出面積を増減する。このため、現場にて作業員が外部導体層を剥離して開口自体の寸法を調整する従来技術と比較して、外部導体層の剥離作業を行うことなくC型金具140のスライド操作という簡易な作業を行うだけで絶縁層120の露出面積を目的の値に微調整することができる。その結果、現場での作業負担を軽減し、位相の微調整を容易化することができる。
【0030】
また、実施例1によれば、外部導体層130の外周に対し、θ方向にスライドさせたC型金具140により開口131、131の一部を遮蔽する。このため、同軸ケーブルの周方向のスライド操作のみで位相の微調整を実行可能であり、軸方向のスライド操作を不要化できるため、軸方向に十分な作業空間がとれない場合の作業性を向上することができる。
【0031】
なお、上記実施例1では、C型金具140を自身のバネ性を利用して外部導体層130に外嵌する構成について説明したが、C型金具140を他の固定具を介して外部導体層130に装着するようにしてもよい。すなわち、かかる構成では、C型金具140が他の固定具を介して外部導体層130との導電性を保持しつつ、外部導体層130の外周に対してスライド自在に装着されればよい。
【実施例2】
【0032】
上記実施例1では、スライドさせたC型金具140により外部導体層130に設けた開口131、131の一部を遮蔽することで、絶縁層120の露出面積を増減する例を示した。しかし、C型金具に切欠孔を設け、スライドさせたC型金具の切欠孔の周囲の面で外部導体層の開口の一部を遮蔽することで、切欠孔と重合する開口から露出される絶縁層の面積を増減するようにしてもよい。そこで、実施例2では、C型金具に切欠孔を設け、スライドさせたC型金具の切欠孔の周囲の面で外部導体層の開口の一部を遮蔽することで、切欠孔と重合する開口から露出される絶縁層の面積を増減する構成について説明する。
【0033】
図9は、実施例2に係る同軸ケーブル200の外観を示す斜視図である。なお、図9では、図1と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。また、図1の直線矢印で示す「X方向」は、内部導線110の「軸方向」に対応する。また、以下、単に「X方向」と記載する場合には、正方向および負方向を含むものとする。また、図1の弧状矢印で示す「θ方向」は、内部導線110の「周方向」に対応する。また、以下、単に「θ方向」と記載する場合には、正方向および負方向を含むものとする。
【0034】
図9に示すように、同軸ケーブル200は、内部導線110と、絶縁層120と、外部導体層230と、C型金具240とを有する。
【0035】
外部導体層230は、導電性を有する材料により構成され、絶縁層120の外周を被覆する。外部導体層230は、1つの開口231を備える。開口231は、外部導体層230の一部を剥離することにより形成され、絶縁層120の一部を露出させる。
【0036】
C型金具240は、導電性およびバネ性を有する金属などの材料により断面視略C字状に形成され、外部導体層230の外周にスライド自在に装着される。すなわち、C型金具240は、自身のバネ性を利用して外部導体層230に外嵌されることにより、外部導体層230の外周に装着され、外部導体層230の外周に対して、X方向およびθ方向にスライド可能である。
【0037】
また、C型金具240は、外部導体層230の開口231のほぼ全領域を覆うように外部導体層230の外周に配置されている。C型金具240は、X方向に沿って外部導体層230の開口231と重合するように配置された2つの切欠孔241、241を備える。切欠孔241、241どうしの間隔Lは、利用される周波数帯の波長の1/4に設定される。これにより、切欠孔241、241にて発生する反射波どうしを相殺させることができ、インピーダンスの不整合を抑えることができる。
【0038】
そして、C型金具240は、スライド操作を受けた場合に、外部導体層230の外周をθ方向に沿ってスライドする。さらに、C型金具240は、外部導体層230の外周をθ方向に沿ってスライドしつつ切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽することにより、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積を増減する。C型金具240は、遮蔽用導体の一例である。
【0039】
次に、C型金具240による開口231の遮蔽動作を説明する。図10は、スライド操作を受け付ける前のC型金具240と開口231との位置関係を示す図である。図11および図12は、スライド操作を受け付けた場合のC型金具240と開口231との位置関係を示す図である。
【0040】
図10に示すように、スライド操作を受け付ける前のC型金具240は、切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽しつつ、開口231との重なり範囲が最大となるように切欠孔241、241を開口231と重合させている。この状態では、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積は最大となる。
【0041】
そして、C型金具240は、θ方向の正方向へのスライド操作を受け付けた場合には、図11に示すように、外部導体層230の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具240は、外部導体層230の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ、開口231との重なり範囲が小さくなるように切欠孔241、241を開口231と重合させる。これにより、C型金具240は、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積を減じる。一方、図11に例示したように既に開口231の一部を遮蔽しているC型金具240は、θ方向の負方向へのスライド操作を受け付けた場合には、外部導体層130の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具240は、外部導体層230の外周をθ方向の負方向にスライドしつつ開口231との重なり範囲が大きくなるように切欠孔241、241を開口231と重合させる。これにより、C型金具240は、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積を増やす。
【0042】
そして、C型金具240は、θ方向の負方向へのスライド操作を受け付けた場合には、図12に示すように、外部導体層230の外周をθ方向の負方向にスライドしつつ切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具240は、外部導体層230の外周をθ方向の負方向にスライドしつつ開口231との重なり範囲が小さくなるように切欠孔241、241を開口231と重合させる。これにより、C型金具240は、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積を減じる。一方、図12に例示したように既に開口231の一部を遮蔽しているC型金具240は、θ方向の正方向へのスライド操作を受け付けた場合には、外部導体層130の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具240は、外部導体層230の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ開口231との重なり範囲が大きくなるように切欠孔241、241を開口231と重合させる。これにより、C型金具240は、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積を増やす。なお、以下では、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の面積を、単に「露出面積」と呼ぶことがあるものとする。
【0043】
図13は、C型金具240の位置と絶縁層120の露出面積との関係を示す図である。図13の横軸は、外部導体層130の外周におけるC型金具240のθ方向の位置を示し、図13の縦軸は、絶縁層120の露出面積を示す。また、C型金具240が位置θmaxにある場合には、切欠孔241、241の周囲の面で開口231の一部を遮蔽しつつ、開口231との重なり範囲が最大となるように切欠孔241、241を開口231と重合させているものとする。
【0044】
図13に示すように、C型金具240が位置θmaxにある場合には、絶縁層120の露出面積は、最大値Smaxとなる。そして、C型金具240が外部導体層230の外周を位置θmaxからθ方向の正方向へ移動するに連れて、切欠孔241、241と開口231との重なり範囲が小さくなるため、絶縁層120の露出面積が減少することが分かる。一方、そして、C型金具240が外部導体層230の外周を位置θmaxからθ方向の負方向へ移動するに連れて、切欠孔241、241と開口231との重なり範囲が小さくなるため、絶縁層120の露出面積が減少することが分かる。
【0045】
このように、スライドさせたC型金具240の切欠孔241、241の周囲の面で外部導体層230の開口231の一部を遮蔽することで、切欠孔241、241と重合する開口231からの絶縁層120の露出面積を自由に増減することができる。ここで、絶縁層120の露出面積が大きいほど、位相の進みまたは遅れが大きくなることが分かっている。このことより、絶縁層120の露出面積を自由に増減することによって、位相を目的の値に微調整することが可能となることが分かる。
【0046】
上述してきたように、実施例2によれば、スライドさせたC型金具240の切欠孔241、241の周囲の面で外部導体層230の開口231の一部を遮蔽し、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120の露出を増減する。このため、現場にて作業員が外部導体層を剥離して開口自体の寸法を調整する従来技術と比較して、外部導体層の剥離作業を行うことなくC型金具140のスライド操作という簡易な作業を行うだけで絶縁層120の露出面積を目的の値に微調整することができる。その結果、現場での作業負担を軽減し、位相の微調整を容易化することができる。
【実施例3】
【0047】
上記実施例2では、周方向に沿って切欠孔241、241どうしの間隔が固定されている例を示した。このため、利用される周波数帯が変更された場合には、切欠孔241、241と重合する開口231から露出される絶縁層120どうしの間隔が変更後の周波数帯の波長の1/4からずれることがある。そこで、実施例3では、周方向に沿って互いの間隔が変化するように配置された切欠孔をC型金具に設けることにより、切欠孔と重合する開口から露出される絶縁層どうしの間隔を増減する構成について説明する。
【0048】
図14は、実施例3に係る同軸ケーブル300の外観を示す斜視図である。なお、図14では、図9と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。また、図14の直線矢印で示す「X方向」は、内部導線110の「軸方向」に対応する。また、以下、単に「X方向」と記載する場合には、正方向および負方向を含むものとする。また、図14の弧状矢印で示す「θ方向」は、内部導線110の「周方向」に対応する。また、以下、単に「θ方向」と記載する場合には、正方向および負方向を含むものとする。
【0049】
図14に示すように、同軸ケーブル300は、内部導線110と、絶縁層120と、外部導体層330と、C型金具340とを有する。
【0050】
外部導体層330は、導電性を有する材料により構成され、絶縁層120の外周を被覆する。外部導体層330は、X方向に沿って所定の間隔を空けて配置された2つの開口331、331を備える。開口331、331は、外部導体層330の一部を剥離することにより形成され、絶縁層120の一部を露出させる。各開口331は、θ方向に沿った幅がX方向の負方向に向かって減少する三角形の形状に形成されている。なお、各開口331の形状は、三角形の形状に限られず、例えば、三角形以外の他の多角形の形状や楕円の形状であってもよい。要するに、各開口331は、θ方向に沿った幅がX方向に沿って変化する形状に形成されればよい。
【0051】
C型金具340は、導電性およびバネ性を有する金属などの材料により断面視略C字状に形成され、外部導体層330の外周にスライド自在に装着される。すなわち、C型金具340は、自身のバネ性を利用して外部導体層330に外嵌されることにより、外部導体層230の外周に装着され、外部導体層340の外周に対して、X方向およびθ方向にスライド可能である。
【0052】
また、C型金具340は、外部導体層330の開口331、331のほぼ全領域を覆うように外部導体層330の外周に配置されている。C型金具340は、X方向に沿って外部導体層330の開口331、331と重合するように配置された2つの切欠孔341、341を備える。切欠孔341、341は、θ方向に沿って互いの間隔が変化するように配置されている。具体的には、切欠孔341、341は、θ方向の正方向へ向かうほど互いの間隔が減少するように配置されている。
【0053】
そして、C型金具340は、θ方向のスライド操作を受けた場合に、外部導体層330の外周をθ方向に沿ってスライドする。さらに、C型金具340は、外部導体層330の外周をθ方向に沿ってスライドしつつ切欠孔341、341の周囲の面で開口331、3331を遮蔽することにより、切欠孔341、341とそれぞれ重合する開口331、331から露出される絶縁層120どうし間隔Lを増減する。
【0054】
また、C型金具340は、X方向のスライド操作を受けた場合に、外部導体層330の外周をX方向に沿ってスライドする。さらに、C型金具340は、外部導体層330の外周をX方向に沿ってスライドしつつ切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331を遮蔽することにより、切欠孔341、341とそれぞれ重合する開口331、331から露出される絶縁層120の面積を増減する。C型金具340は、遮蔽用導体の一例である。
【0055】
次に、θ方向のスライド操作を受け付けたC型金具340による開口331、331の遮蔽動作を説明する。図15は、θ方向のスライド操作を受け付ける前のC型金具340と開口331、331との位置関係を示す図である。図16は、θ方向のスライド操作を受け付けた場合のC型金具340と開口331、331との位置関係を示す図である。
【0056】
図15に示すように、θ方向のスライド操作を受け付ける前のC型金具340は、切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽しつつ、開口331、331との重なり範囲の間隔が最大となるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させている。この状態では、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120どうしの間隔Lは、最大値Lmaxとなる。
【0057】
そして、C型金具340は、θ方向の負方向へのスライド操作を受け付けた場合には、図16に示すように、外部導体層330の外周をθ方向の負方向にスライドしつつ切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具340は、外部導体層330の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ、開口331、331との重なり範囲の間隔が小さくなるように切欠孔341、341を開口231と重合させる。これにより、C型金具340は、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120どうしの間隔Lを最大値Lmaxから最小値Lminまで減じる。
【0058】
一方、図16に示したように既に開口331、221の一部を遮蔽しているC型金具340は、θ方向の正方向へのスライド操作を受け付けた場合には、外部導体層130の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具340は、外部導体層330の外周をθ方向の正方向にスライドしつつ、開口331、331との重なり範囲の間隔が大きくなるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させる。これにより、C型金具340は、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120どうしの間隔Lを最小値Lminから最大値Lmaxまで増やす。なお、以下では、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120どうしの間隔を、単に「露出間隔」と呼ぶことがあるものとする。
【0059】
図17は、C型金具340の位置と絶縁層120の露出間隔との関係を示す図である。図17の横軸は、外部導体層330の外周におけるC型金具340のθ方向の位置を示し、図17の縦軸は、絶縁層120の露出間隔を示す。また、C型金具340が位置θmaxにある場合には、切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽しつつ、開口331、331との重なり範囲の間隔が最大となるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させているものとする。また、C型金具340が位置θminにある場合には、切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽しつつ、開口331、331との重なり範囲の間隔が最小となるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させているものとする。
【0060】
図17に示すように、C型金具340が位置θmaxにある場合には、絶縁層120の露出間隔は、最大値Lmaxとなる。そして、C型金具340が外部導体層330の外周を位置θmaxからθ方向の負方向へ移動するに連れて、切欠孔341、341と開口331、331との重なり範囲の間隔が小さくなるため、絶縁層120の露出間隔が減少することが分かる。一方、C型金具340が位置θminにある場合には、絶縁層120の露出間隔は、最小値Lminとなる。そして、C型金具340が外部導体層330の外周を位置θminからθ方向の正方向へ移動するに連れて、切欠孔341、341と開口331、331との重なり範囲の間隔が大きくなるため、絶縁層120の露出間隔が増加することが分かる。
【0061】
このように、θ方向にスライドさせたC型金具340の切欠孔341、341の周囲の面で外部導体層330の開口331、331の一部を遮蔽することで、切欠孔341、341と重合する開口331、331からの絶縁層120の露出間隔を自由に増減することができる。これにより、利用される周波数帯が変更された場合であっても、絶縁層120の露出間隔を変更後の周波数帯の波長の1/4に再調整することができる。
【0062】
次に、X方向のスライド操作を受け付けたC型金具340による開口331、331の遮蔽動作を説明する。図18は、X方向のスライド操作を受け付ける前のC型金具340と開口331、331との位置関係を示す図である。図19は、X方向のスライド操作を受け付けた場合のC型金具340と開口331、331との位置関係を示す図である。
【0063】
図18に示すように、スライド操作を受け付ける前のC型金具340は、切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽しつつ、開口331、331との重なり範囲が最大となるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させている。この状態では、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120の面積は最大となる。
【0064】
そして、C型金具340は、X方向の負方向へのスライド操作を受け付けた場合には、図19に示すように、外部導体層330の外周をX方向の負方向にスライドしつつ切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331を遮蔽する。言い換えると、C型金具340は、外部導体層330の外周をX方向の負方向にスライドしつつ、開口331、331との重なり範囲が小さくなるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させる。これにより、C型金具340は、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120の面積を減じる。
【0065】
一方、図19に例示したように既に開口331、331の一部を遮蔽しているC型金具340は、X方向の正方向へのスライド操作を受け付けた場合には、外部導体層130の外周をX方向の正方向にスライドしつつ切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽する。言い換えると、C型金具340は、外部導体層330の外周をX方向にスライドしつつ開口331、331との重なり範囲が大きくなるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させる。これにより、C型金具340は、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120の面積を増やす。なお、以下では、切欠孔341、341と重合する開口331から露出される絶縁層120の面積を、単に「露出面積」と呼ぶことがあるものとする。
【0066】
図20は、C型金具340の位置と絶縁層120の露出面積との関係を示す図である。図20の横軸は、外部導体層330の外周におけるC型金具340のθ方向の位置を示し、図30の縦軸は、絶縁層320の露出面積を示す。また、C型金具340が位置Xmaxにある場合には、切欠孔341、341の周囲の面で開口331、331の一部を遮蔽しつつ、開口331、331との重なり範囲が最大となるように切欠孔341、341を開口331、331と重合させているものとする。
【0067】
図20に示すように、C型金具340が位置Xmaxにある場合には、絶縁層120の露出面積は、最大値Smaxとなる。そして、C型金具340が外部導体層330の外周を位置XmaxからX方向の負方向へ移動するに連れて、切欠孔341、341と開口331、331、331との重なり範囲が小さくなるため、絶縁層120の露出面積が減少することが分かる。
【0068】
このように、スライドさせたC型金具340の切欠孔341、341の周囲の面で外部導体層330の開口331、331の一部を遮蔽することで、切欠孔341、341と重合する開口331、331からの絶縁層120の露出面積を自由に増減することができる。ここで、絶縁層120の露出面積が大きいほど、位相の進みまたは遅れが大きくなることが分かっている。このことより、絶縁層120の露出面積を自由に増減することによって、位相を目的の値に微調整することが可能となることが分かる。
【0069】
上述してきたように、実施例3によれば、θ方向に沿って互いの間隔が変化するように配置された切欠孔341、341をC型金具340に設ける。そして、θ方向にスライドさせたC型金具340の切欠孔341、341の周囲の面で外部導体層330の開口331、331の一部を遮蔽することにより、切欠孔341、341と重合する開口331、331から露出される絶縁層120の露出間隔を増減する。このため、利用される周波数帯が変更された場合に、絶縁層120の露出間隔を変更後の周波数帯の波長の1/4に再調整することができる。その結果、利用される周波数帯が変更された場合でも、開口331、331にて発生する反射波どうしを相殺させることができ、インピーダンスの不整合を抑えることができる。
【0070】
また、実施例3によれば、θ方向に沿った幅がX方向に沿って変化する形状に形成された開口331、331を外部導体層330に設ける。そして、X方向にスライドさせたC型金具340の切欠孔341、341の周囲の面で外部導体層330の開口331、331の一部を遮蔽することで、切欠孔341、341と重合する開口331、331からの絶縁層120の露出面積を増減する。このため、現場にて作業員が外部導体層を剥離して開口自体の寸法を調整する従来技術と比較して、外部導体層の剥離作業を行うことなくC型金具340のスライド操作という簡易な作業を行うだけで絶縁層120の露出面積を目的の値に微調整することができる。その結果、現場での作業負担を軽減し、位相の微調整を容易化することができる。
【0071】
なお、上記実施例3では、外部導体層330に2つの開口331、331を設け、C型金具340に2つの切欠孔341、341を設けた構成について説明したが、開口や切欠孔の数は2つ以上であってもよい。
【0072】
また、上記実施例3では、C型金具340のθ方向へのスライドにより、絶縁層120の露出間隔を利用される周波数帯の波長の1/4に調整する例を説明したが、周波数帯に応じたC型金具340のθ方向のスライド位置を示す目盛を外部導体層330に設けてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100、200、300 同軸ケーブル
110 内部導線
120 絶縁層
130、230、330 外部導体層
131、231、331 開口
140、240、340 C型金具
241、341 切欠孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導線と
前記内部導線の外周を被覆する絶縁層と、
前記絶縁層の外周を被覆するとともに、前記絶縁層の一部を露出させる開口を備えた外部導体層と、
前記外部導体層の外周にスライド自在に装着され、前記外部導体層の外周をスライドしつつ前記開口の少なくとも一部を遮蔽することにより、前記開口から露出される前記絶縁層の面積を増減する遮蔽用導体と
を有することを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記遮蔽用導体は、
前記外部導体層の外周を前記内部導線の周方向に沿ってスライドしつつ前記開口の少なくとも一部を遮蔽することにより、前記開口から露出される前記絶縁体の面積を増減することを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記遮蔽用導体は、
前記開口と重合する切欠孔を備え、前記外部導体層の外周をスライドしつつ当該切欠孔の周囲の面で前記開口の一部を遮蔽することにより、当該切欠孔と重合する前記開口から露出される前記絶縁層の面積を増減することを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記外部導体層は、
前記内部導線の軸方向に沿って配置された複数の前記開口を備え、
前記遮蔽用導体は、
前記内部導線の周方向に沿って互いの間隔が変化するように配置され、複数の前記開口とそれぞれ重合する複数の前記切欠孔を備え、前記外部導体層の外周を前記内部導線の周方向に沿ってスライドしつつ複数の前記切欠孔の周囲の面で複数の前記開口を遮蔽することにより、複数の前記切欠孔とそれぞれ重合する複数の前記開口から露出される前記絶縁層どうしの間隔を増減することを特徴とする請求項3に記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
各前記開口は、
前記内部導線の周方向に沿った各前記開口の幅が前記内部導線の軸方向に沿って変化する形状に形成され、
前記遮蔽用導体は、
前記外部導体層の外周を前記内部導線の軸方向に沿ってスライドしつつ複数の前記切欠孔の周囲の面で複数の前記開口を遮蔽することにより、複数の前記切欠孔とそれぞれ重合する複数の前記開口から露出される前記絶縁体の面積を増減することを特徴とする請求項4に記載の同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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