説明

同軸コネクタ、同軸コネクタ取付け方法

【課題】本発明は特性の劣化を伴わないで回路基板上に表面実装することが可能な同軸コネクタを実現することを課題とする。
【解決手段】同軸ケーブル側同軸コネクタ200は、同軸ケーブル80の内部導体81をかしめる結線部203を有する中心導体202と、中心導体202を支持する絶縁性の支持部205と、同軸ケーブル80の外部導体81をかしめる第一の部分224、227と前記結線部203をかしめる第二の部分223、226とを有する周囲導体220と、結線部203と前記第二の部分224、227との間に介在する絶縁体210とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は同軸コネクタに係り、特に、回路基板上に表面実装されて使用され、高周波信号の伝送の経路に適応可能である同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図1(A)は回路基板上に実装されて使用される従来の同軸コネクタ1を示す。同軸コネクタ1は、中心に位置する芯状の中心導体2と、この中心導体2の周囲を占める絶縁体部材3と、この絶縁体3を囲む筒状の周囲導体4とを有し、中心導体2の下端部2aは絶縁体部材3より下方に突き出ており、周囲導体4は下側にフランジ部4aを有する構成である。
【0003】
図1(B)は回路基板10のうちこの同軸コネクタ1が実装される部分を示す。回路基板10には、中心導体2の下端部2aが貫通するスルーホール11が形成してあり、上面にはスルーホール11を中心とするリング状のグランドパッド12が形成してある。回路基板10の下面には、スルーホール11の周囲にリング状のパッド13が形成してある。
【0004】
同軸コネクタ1は、図1(C)に示すように、中心導体2の下端部2aをスルーホール11に貫通させて、回路基板10上に載せ、フランジ部4aの周囲を半田部20によってグランドパッド12に半田付けされ、スルーホール11から下方に突き出ている中心導体2の下端部2aを半田部21によってパッド13に半田付けされて、回路基板10上に実装される。
【0005】
回路基板10上に実装された同軸コネクタ1に対して、同軸ケーブル30の先端の同軸コネクタ31が接続される。
【0006】
また、従来は、図29に示すように、同軸ケーブル80の処理してある内部導体81の先端が中心ピン端子250の後端側に形成してある結線部252にはんだ付けしてあり、全体がかしめて筒形状とされた外部導体でもって囲まれている構成である。255ははんだを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−336115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の同軸コネクタ1は回路基板10上に半田付けされて実装される構成であるため、回路基板10上に実装された状態において、二箇所の半田部20、21がインダクタンスを形成する。伝送する信号が数10GHz以上の高周波数の信号である場合には、半田部20、21によるインダクタンスによって、同軸コネクタ1の箇所における信号の伝送特性の劣化が無視できない程度となってしまう場合もある。
【0009】
また、同軸コネクタ1を実装するためには回路基板10にスルーホール11を形成することが必要となるけれども、伝送する信号が数10GHz以上の高周波数の信号である場合には、この回路基板10に形成したスルーホール11も信号の伝送特性の無視できない程度の劣化を引き起こしてしまう場合もある。
【0010】
また、図29に示すような従来の同軸コネクタの構成においては、はんだ付けの作業とかしめの作業が必要となり、工数がかかっていた。
【0011】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされた同軸コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、同軸ケーブルの先端に取り付けられる同軸コネクタであって、前記同軸ケーブルの内部導体をかしめる結線部を有する中心導体と、前記中心導体を支持する絶縁性の支持部と、前記同軸ケーブルの外部導体をかしめる第一の部分と前記結線部をかしめる第二の部分とを有する周囲導体と、前記結線部と前記第二の部分との間に介在する絶縁体とを備える構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第一の部分と第二の部分とを有する周囲導体をかしめることによって、同軸ケーブルの先端に同軸コネクタを取り付ける作業工数を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の表面実装型の同軸コネクタを示す図である。
【図2】本発明の実施例1になる同軸コネクタをその内部を透視した状態で、且つ、これが実装される回路基板と対応させて示す斜視図である。
【図3】図2の同軸コネクタを分解して示す斜視図である。
【図4】周囲導体を示す図である。
【図5】図4(B)中、V-V線に沿う周囲導体の縦断面図である。
【図6】図4(A)中、VI-VI線に沿う周囲導体の横断面図である。
【図7】図3のハウジングの一部を直交する面で切断して示す斜視図である。
【図8】図3中ハウジングを面SXで切断して示す断面図である。
【図9】図3中ハウジングを面SYで切断して示す断面図である。
【図10】実装状態の同軸コネクタを同軸ケーブル側同軸コネクタと併せて示す図である。
【図11】実装状態の同軸コネクタに同軸ケーブル側同軸コネクタが接続された状態を示す図である。
【図12】変形例になる回路基板の同軸コネクタが実装される部分を示す図である。
【図13】本発明の実施例3になる同軸コネクタを分解して示す斜視図である。
【図14】図2の同軸コネクタの回路基板への実装の構造の第1の変形例を分解して示す図である。
【図15】図14に示す実装構造を示す断面図である。
【図16】図2の同軸コネクタの回路基板への実装の構造の第2の変形例を分解して示す図である。
【図17】図16に示す実装構造を示す断面図である。
【図18】本発明の実施例5になる同軸コネクタをこれが実装される回路基板と対応させて示す斜視図である。
【図19】図18は同軸コネクタが回路基板に実装された状態を示す斜視図である。
【図20】図19の同軸コネクタの平面図である。
【図21】図20中XXI-XXI線に沿う断面図である。
【図22】図20中XXII-XXII線に沿う断面図である。
【図23】本発明の実施例6になる同軸ケーブル側同軸コネクタを示す斜視図である。
【図24】図23の同軸ケーブル側同軸コネクタを示す図である。
【図25】図24(B)のXXV-XXV線に沿う断面図である。
【図26】同軸ケーブル側同軸コネクタの分解斜視図である。
【図27】同軸ケーブル側同軸コネクタのかしめる前の状態を示す断面図である。
【図28】かしめた後の同軸ケーブル側同軸コネクタの断面図である。
【図29】従来の同軸ケーブル側同軸コネクタの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
[同軸コネクタ50]
図2は本発明の実施例1になる同軸コネクタ50をその内部を透視した状態で、且つ、これが実装される回路基板70と対応させて示す。図2の一部には同軸コネクタ50のZ2側の面の構成も示している。図3は同軸コネクタ50を分解して示す。
【0017】
Z1−Z2は同軸コネクタ50の軸線であり、Z1が先端の側であり、Z2が根元の側である。X1−X2は、後述する一対のコンタクト部54X1、54X2が並んでいる方向(面SXに沿う方向)、Y1−Y2はこれと直交する方向(面SYに沿う方向)である。
【0018】
同軸コネクタ50は、中心に位置して信号が伝送される中心導体51と、中心導体52を囲むように外側に配置され実装されたときにグランド電位とされる周囲導体52と、絶縁性のハウジング60とを有し、オス型であり、回路基板上に実装される表面実装型であり、特性インピーダンスは例えば50Ωであり、数10GHz以上の高周波数の信号の伝送路に使用可能である構成である。
【0019】
中心導体51は、直径がD1であるピン形状であり、根元側に、足部51aを有する。足部51aは、直径がD1の約2倍であるD2であり、釘の頭のような円板形状であり、中心導体51の端をプレスで潰す加工をして形成されたものである。
【0020】
図4、図5及び図6は周囲導体52を示す。図5は図4(B)中、V-V線に沿う断面図であり、図6は図4(A)中、VI-VI線に沿う断面図である。周囲導体52は、図4、図5及び図6に示すように、所定形状に打ち抜いた金属板を円筒形に成形してなる構成であり、円筒部53と、円筒部53の上端のX1−X2方向に対向する位置よりZ1方向に延在している一対のコンタクト部54X1、54X2と、円筒部53の下端より放射状に張り出ている6つのラグ56とを有する。
【0021】
円筒部53には、一対の切り欠き部55Y1,55Y2が形成してある。切り欠き部55Y1,55Y2は、Y1−Y2方向に対向する位置、即ち、周方向の一対のコンタクト部54X1、54X2の間の箇所に、円筒部53の上端よりZ2方向に切り込んで形成してある。
【0022】
一対のコンタクト部54X1、54X2は、その間の間隔が拡がる方向に弾性変形する。
【0023】
6つのラグ56は等角度間隔に配置してある。
【0024】
図7乃至図9はハウジング60を示す。図7は図3のハウジング60の一部を直交する面で切断して示す。図8は図3中面SXで切断した断面図、図9は図3中面SYで切断した断面図である。面SXはX1−X2線とZ1−Z2線とを含む面であり、面SYはY1−Y2線とZ1−Z2線とを含む面であり、直交している。
【0025】
図3、図7乃至図9に示すように、ハウジング60は、合成樹脂の成形部品であり、ハウジング本体61と、絶縁体部62とを一体に有する。
【0026】
ハウジング本体61は、X1−X2方向が長軸、X1−X2方向が短軸である楕円の円筒形状である。このZ2側にはフランジ部61aを有し、ここに、ねじ止め用の穴61bが形成してある。また、ハウジング61のZ2側の面61cより、実装位置を決めるための突起61dが例えば2つ突き出ている。
【0027】
絶縁体部62は、ハウジング本体61の内部のZ2側の箇所に配置してある。絶縁体部62は、円筒形状であり、中心に貫通穴62aを有する。
【0028】
絶縁体部62とハウジング本体61とは、ハウジング本体61の内周面のうち絶縁体部62の周面のZ1側寄りの部分のY1側の部分及びY2側の部分の連結部63Y1、63Y2よって連結されている。この連結部63Y1、63Y2をハウジング本体61の内周面に沿って断面した形状は、前記の周囲導体52の切り欠き部55Y1,55Y2の奥の部分と対応する形状を有する。
【0029】
絶縁体部62の外周面とハウジング本体61の内周面との間には、環状の空間64が存在している。ハウジング本体61が楕円の円筒形状であることによって、環状の空間64のうち、X1側とX2側の部分は、コンタクト部54X1、54X2が通過するに十分な広さを有している。65Y1、65Y2は、連結部63Y1、63Y2のZ2側のスリットであり、環状の空間64の一部である。
【0030】
中心導体51は、Z2側より、貫通穴62aに嵌合させて貫通穴62aを貫通させて設けてある。
【0031】
周囲導体52は、コンタクト部54X1、54X2をZ1側に向けた姿勢で、Z2側より、環状の空間64に嵌合させて組み付けてある。コンタクト部54X1、54X2は環状の空間64を通り抜けてハウジング本体61内に突き出ており、円筒部53は環状空間64及びスリット65Y1、65Y2に嵌合し、切り欠き部55Y1,55Y2が夫々連結部63Y1、63Y2にきつく嵌合している。円筒部53はスリット65Y1、65Y2にきつく嵌合している。切り欠き部55Y1,55Y2と連結部63Y1、63Y2との嵌合によって、周囲導体52は周方向の位置を決められており、コンタクト部54X1、54X2は、ハウジング本体61のZ1側の入り口部の近くでX1−X2方向に対向している。
【0032】
図2の一部に示すように、上記の足部51a及びラグ56は、ハウジング58のZ2側の面58cにZ2方向に突き出た状態で面58cに露出している。
[回路基板70]
図2に示すように、回路基板70のうち同軸コネクタ50が実装される箇所には、信号用パッド71、グランド用パッド72、位置決め穴73と、ねじ止め用の穴74とが形成してある。
【0033】
信号用パッド71は、前記の足部51aに対応し、円形である。グランド用パッド72は前記のラグ56に対応し、リング状である。グランド用パッド72は、グランドパターン(図示せず)とつながっている。信号用パッド71はビア等を介して信号パターン(図示せず)とつながっている。
【0034】
位置決め穴73及びねじ穴74は、リング状のグランド用パッド72の外側に形成してある。
【0035】
回路基板70は特性を低下せる要因であるスルーホールを有していない。
[同軸コネクタ50の実装状態]
上記の同軸コネクタ50は、図10に示すように、突起61dを位置決め穴73に嵌合させて位置を決めて、ねじ59を穴61bを通して穴74にねじ込むことによって、回路基板70上に垂直に立った姿勢で固定されて実装してある。
【0036】
ねじ59をきつく締めた状態で、足部51aが信号用パッド71に強く押し付けられており、且つ、6つのラグ56が図2中破線の円Pでしめす6箇所でグランド用パッド72に強く押し付けられており、中心導体51が信号用パッド71と電気的に接続してあり、周囲導体52がグランド用パッド72と電気的に接続してありグランド電位とされている。ハウジング60のZ2側の面61cは回路基板70には密着していず回路基板70より少し浮いている。
【0037】
特に、ラグ56は、等角度間隔で分散している6箇所でグランド用パッド72に押し付けられており、周囲導体52とグランド用パッド72との電気的接続は確実である。
【0038】
ここで、中心導体51と信号用パッド71との電気的接続の箇所及び周囲導体52とグランド用パッド72との電気的接続の箇所には、インダクタンスを増やす半田付け部は存在していないため、また、回路基板70には同軸コネクタ50が実装される箇所にスルーホールを有しないため、同軸コネクタ50はその特性を少しも劣化させないで回路基板70に実装されている。即ち、実装された同軸コネクタ50は、特性インピーダンスが50Ωに維持され、数10GHz以上の高周波数の信号の伝送に適応が可能である。
【0039】
この実装された同軸コネクタ50には、図11に示すように、同軸ケーブル80の先端の同軸ケーブル側同軸コネクタ90が差し込まれて接続される。
【0040】
図10は同軸ケーブル側同軸コネクタ90を示す。同軸ケーブル側同軸コネクタ90は、メス型であり、円柱形状であり、中心導体91がインサート成形してある絶縁体92と、この絶縁体92の先端側(Z2側)の絶縁体93と、絶縁体92と先端側絶縁体93とを囲む円筒形状のすう周囲導体95と、周囲導体95を囲むハウジング96とを有する。
【0041】
先端側絶縁体93は、段付きの貫通穴93aを有する。段付き貫通穴93aは、先端側の貫通穴93bと、後方側(Z1側)の貫通穴93cとよりなる。先端側貫通穴93bの径は中心導体51の径に対応する径である。後端側貫通穴93cの径は、先端側貫通穴93bの径の約2倍である。中心導体91は、絶縁体92より先端側に突き出ているコンタクト部91aと、絶縁体92より後方側に突き出ているかしめ部91bとを有する。コンタクト部91aは、貫通穴93c内に突き出ている。
【0042】
同じく図10に示すように、同軸ケーブル側同軸コネクタ90は同軸ケーブル80の処理されている先端に設けてある。同軸ケーブル80の内部導体81が受け部91bにはんだ付けしてあり、同軸ケーブル80の外部導体82がコネクタ90の周囲導体95の内側のかしめられており、ハウジング96が同軸ケーブル80のシース83を覆っている。
【0043】
この同軸ケーブル側同軸コネクタ90は、図11に示すように、実装された同軸コネクタ50に差し込まれて接続してある。中心導体51が貫通穴93bを相対的に貫通して、先端側の部分が貫通穴93cに突き出ている。コンタクト部91aが中心導体51の先端側の部分と接触している。周囲導体95は、一対のコンタクト部54X1、54X2の間に挟まれてこれらと接触している。
【0044】
上記のように同軸コネクタ50はその特性を少しも劣化させないで回路基板70に実装されているため、数10GHz以上の高周波数の信号であっても、同軸ケーブル側同軸コネクタ90及び同軸コネクタ50を通して、同軸ケーブル80と回路基板70との間で良好に伝送される。
【0045】
図12は変形例になる回路基板70Aのうち同軸コネクタ50が実装される部分を示す。グランド用パッド72Aは、等角度間隔で配置した6つの円形のパッド75によって構成してある。信号用パッド71からの信号パターン75は、ビア等を介さないで、回路基板70Aの上面を、隣り合う円形のパッドの間の隙間を通って延在するように形成してある。
【0046】
上記の同軸コネクタ50は、中心導体51を、中心に凹部を有する形状のものとすることによって、メス型とすることも可能である。
【実施例2】
【0047】
図13は本発明の実施例2になる同軸コネクタ50Aを示す。同軸コネクタは、周囲導体52A以外は図2及び図3に示す構成と同じである。
【0048】
周囲導体52Aは、ラグ56A以外は図3に示す構成と同じである。ラグ56Aは、放射状の先端側が周囲導体52Aの中心方向に180度に折り返されて曲げられた形状であり、ばね性を有している。56Aaは折り返されて曲げられた部分である。
【0049】
ラグ56Aがばね性を有しているため、複数のラグの並び等の寸法のばらつきが吸収され、ラグ56Aとグランド用パッド72(72A)との電気的接続の信頼性は、図10に示す構造に比べて高くなる。
【実施例3】
【0050】
図14及び図15は前記の同軸コネクタ50の回路基板70への実装の構造の第1の変形例を示す。
【0051】
100は導電性スペーサであり、シート状であり、圧縮されたときに厚さ方向に導電性を有する部材である。
【0052】
同軸コネクタ50は導電性スペーサ100を間に介して回路基板70上に実装してある。足部51a及びラグ56は導電性スペーサ100に強く押し付けられており、対応する部分を圧縮させる。足部51aは導電性スペーサ100のうち足部51aによって圧縮された部分を介して信号用パッド71と電気的に接続してある。6つのラグ56は導電性スペーサ100のうちラグ56によって圧縮された部分を介してグランド用パッド72と電気的に接続してありグランド電位とされている。
【0053】
間に導電性スペーサ100が介在することによって、足部51aとラグ56との高さ位置のばらつき、ラグ56間の高さ位置のばらつき等の影響が解消され、足部51aと信号用パッド71との電気的接続、6つのラグ56とグランド用パッド72との電気的接続の信頼性は、図10に示す構造に比べて高くなる。
【0054】
導電性スペーサ100のインダクタンスは極く僅かであり、同軸コネクタ50はその特性を殆ど劣化させないで回路基板70に実装されている。
【0055】
同軸コネクタ50は、底側の面に導電性スペーサ100が予め付いている構成でもよい。
【実施例4】
【0056】
図16及び図17は前記の同軸コネクタ50の回路基板70への実装の構造の第2の変形例を示す。
【0057】
第2の変形例は、上記の導電性スペーサ100に代えて、導電性ボール110,111を複数使用した構成である。導電性ボール110、111は、例えば銀製であり、導電性及び弾性を有し、足部51a及びラグ56に対応する大きさの球状体であり、
直径が0.3mm程度と小さい。
【0058】
同軸コネクタ50は、足部51aについては導電性ボール110を間に介して、個々のラグ56については導電性ボール111を間に介して、回路基板70上に実装してある。導電性ボール110及び111は共に、潰れる方向に弾性変形された状態、即ち、復元する方向の弾性力を有する状態にある。導電性ボール110はその弾性力によって足部51aと信号用パッド71とに押し当たっており、足部51aは導電性ボール110を介して信号用パッド71と電気的に接続してある。導電性ボール111はその弾性力によってラグ56とグランド用パッド72とに押し当たっており、全部のラグ56が導電性ボール111を介してグランド用パッド72と電気的に接続してある。
【0059】
よって、足部51aとラグ56との高さ位置のばらつき、ラグ56間の高さ位置のばらつき等の影響が解消され、足部51aと信号用パッド71との電気的接続、6つのラグ56とグランド用パッド72との電気的接続の信頼性は、図7に示す構造に比べて高くなる。
【0060】
導電性ボール110、111のインダクタンスは極く僅かであり、同軸コネクタ50はその特性を殆ど劣化させないで回路基板70に実装されている。
【0061】
同軸コネクタ50は、足部51aの底面に導電性ボール110が、個々のラグ56の底面に導電性ボール111が予め付いている構成でもよい。
【0062】
なお、導電性ボール110と導電性ボール111とは同じものである。
【実施例5】
【0063】
図18は本発明の実施例5になる同軸コネクタ150を、これが実装される回路基板170と対応させて示す。図19は同軸コネクタ150が回路基板170に実装された状態を示す。図20は同軸コネクタ150の平面図、図21は図20中XXI-XXI線に沿う断面図、図22は図20中XXII-XXII線に沿う断面図である。
【0064】
同軸コネクタ150は、図2に示す同軸コネクタ50と実質的に同じ構成の同軸コネクタ部160が複数個、マトリクス状に並んでいる構成である。151はハウジングであり、合成樹脂の板状の成形部品であり、四角形の板形状の本体部152と、本体部152より四方に張り出ているフランジ部153とを有する。本体部152には、断面が楕円の穴154がマトリクス状に並んでいる。各穴153の内部には、前記の絶縁体部62が本体部152とつながって一体に形成してある。
【0065】
各フランジ部153にはねじ止め用の穴153aが形成してある。本体部152の下面より、実装位置を決めるための突起155が突き出ている。
【0066】
本体部152の各穴153毎に、本体部152の底面側から、中心導体51と周囲導体52とが前記の同軸コネクタ50の場合と同様に挿入されて組み込んであり、同軸コネクタ部160が形成されている。
【0067】
同軸コネクタ150の底面側は、足部とこの周囲の6つのラグとを一つの単位として、これが、マトリクス状に並んでいる構成である。
【0068】
回路基板170上には、図18に示すように、信号用パッド71とグランド用パッド72とが一つの単位として、これが、同軸コネクタ部160と同じ配置で並んでいる。
【0069】
また、回路基板170には、位置決め穴73及びねじ穴74が形成してある。
【0070】
上記の同軸コネクタ150は、図19乃至図22に示すように、突起58dを位置決め穴73に嵌合させて位置を決めて、ねじ59を穴153aを通して穴74にねじ込むことによって、回路基板170上に固定されて実装してある。
【0071】
ねじ59をきつく締めた状態で、図21、図22に拡大して示すように、全部の同軸コネクタ部160において、足部51aが信号用パッド71に強く押し付けられており、且つ、6つのラグ56がグランド用パッド72に強く押し付けられており、中心導体51が信号用パッド71と電気的に接続してあり、周囲導体52がグランド用パッド72と電気的に接続してありグランド電位とされている。
【0072】
ここで、中心導体51と信号用パッド71との電気的接続の箇所及び周囲導体52とグランド用パッド72との電気的接続の箇所には、インダクタンスを増やす半田付け部は存在していないため、同軸コネクタ150は、全部の同軸コネクタ部160についてその特性を少しも劣化させないで回路基板170に実装されている。即ち、各同軸コネクタ部160は、特性インピーダンスが50Ωに維持され、数10GHz以上の高周波数の信号の伝送に適応が可能である。
【0073】
この実装された同軸コネクタ150の各同軸コネクタ部160には、図20乃至図22に示すように、同軸ケーブル80の先端の同軸ケーブル側同軸コネクタ90が差し込まれて接続される。
【0074】
また、同軸コネクタ150は、図14及び図15に示すと同様に、導電性スペーサを間に介して実装することも可能であり、また、図16及び図17に示すと同様に、導電性ボールを間に介して実装することも可能である。導電性スペーサ或いは導電性ボールを間に介することによって、同軸コネクタ150と回路基板170との電気的接続の信頼性が高まる。
【実施例6】
【0075】
従来は、図29に示すように、同軸ケーブル80の処理してある内部導体81の先端が中心ピン端子250の後端側に形成してある結線部252にはんだ付けしてあり、全体がかしめて筒形状とされた外部導体でもって囲まれている構成である。このため、はんだ付けの作業とかしめの作業が必要となり、工数がかかっていた。255ははんだを示す。
【0076】
図23乃至図26は本発明の実施例6になる同軸ケーブル側同軸コネクタ200を示す。図23は同軸ケーブル側同軸コネクタ200の斜視図、図24(A)は同軸ケーブル側同軸コネクタ200の正面図、同図(B)は側面図、図25は図24(B)のXXV-XXV線に沿う断面図である。図26は同軸ケーブル側同軸コネクタ200の分解斜視図であり、外部で、外部導体はかしめる前の状態で示す。Z1−Z2は同軸ケーブル側同軸コネクタ200の軸線の方向、Y1−Y2,X1−X2は、Z1−Z2と直交しており、且つ、互い直交している方向である。Y1−Y2は後述するかしめの方向である。
【0077】
同軸ケーブル側同軸コネクタ200は、同軸ケーブル80の先端に設けてある同軸コネクタであり、オス型であり、図26に分解して示すように、中心導体端子モジュール201と、介在部材210と、周囲導体220とを有する。
【0078】
中心導体端子モジュール201は、中心導体端子202が支持部材205にインサート成形してある構造である。支持部材205は、絶縁性の合成樹脂の成形部品であり、円筒部205aと、円筒部205aのZ2側の端面205cのY2側よりZ2方向に突き出ている略半円筒形状の張り出し台部205bとを有する。内部導体端子202は、Z2側に、結線部203を有する。この中心導体端子202は、円筒部205aをZ1−Z2方向に貫通しており、結線部203が張り出し台部205bのY1側の面上に位置している。結線部203は、Z2側からみて、横向きのU字形状を有し、Y2側の板部203Y2とY1側の板部203Y1を有する。板部203Y2と板部203Y1との間の隙間の間隔Eは同軸ケーブル80の内部導体81の径E2よりも広い。
【0079】
介在部材210は、絶縁性の合成樹脂の小さい成形部品であり、上記の板部203Y1上に配置してある。
【0080】
周囲導体220は、金属製板のプレス成形部品であり、Z1側に円筒部221を有し、円筒部221のZ2側のY2側から第1の腕部222が、円筒部221のZ2側のY1側から第2の腕部225が、共にZ2方向に張り出ている形状である。
【0081】
第1の腕部222は、円筒部221の側から、Y2側の第1の部分223とY2側の第2の部分224とを有する。
【0082】
第2の腕部225は、円筒部221の側から、Y1側の第1の部分226とY1側の第2の部分227とY1側の第3の部分228を有する。
【0083】
Y2側の第1の部分223とY1側の第1の部分226とが、Y1−Y2方向に対向しており、Y2側の第2の部分224とY1側の第2の部分227とが、Y1−Y2方向に対向している。
【0084】
同軸ケーブル側同軸コネクタ200は以下の手順で組み立てられる。
(1)中心導体端子モジュール201を円筒部221内に組み込む。
【0085】
中心導体端子モジュール201は、図27(A)、(B)に示すように、張り出し部205bがY2側の第1の部分223の上側に位置するように組み込まれる。
(2)介在部材210をセットする。
【0086】
介在部材210は、図27(A)、(B)に示すように、板部203Y1上に載せられ、板部203Y1とY1側の第2の部分227との間に介在している。
(3)同軸ケーブル80の処理された先端部をセットする。
【0087】
同軸ケーブル80をZ2側から外部導体220に内部導体81の先端が円筒部205aの端面205cに突き当たる位置まで差し込む。図27(A)、(B)に示すように、内部導体81は結線部203のY2側の板部203Y2とY1側の板部203Y1との間に差し込まれた状態となる。また、図27(A)、(C)に示すように、同軸ケーブル80の外部導体82がY2側の第2の部分224とY1側の第2の部分227との間に位置する状態となる。また、図27(A)に示すように、Y1側の第3の部分228が同軸ケーブル80のシース83に対向している。
(4)最後に一括かしめを行う。
【0088】
図27(A)に示すように、周囲導体220を同軸ケーブル80と共に、かしめ装置250の固定かしめ台部251上にセットし、上側の可動かしめ台部251を下降させる。
【0089】
これによって、図28(A)に示すように、同軸ケーブル80の内部導体81、外部導体82、シース83が同時にかしめられ、図28(B)、図28(C)、図23に示す状態となる。
【0090】
同軸ケーブル80の内部導体81は、図28(B)に示すように、結線部203が介在部材210を介して潰され、内部導体81が結線部203Cにかしめられて固定される。203Aは潰された結線部を示す。内部導体81がかしめられている結線部203のY2側には張り出し台部205bが、Y1側には介在部材210が存在している。張り出し台部205bと介在部材210とはかしめられたY2側の第1の部分223CとY1側の第1の部分226CとによってY1−Y2の方向からかしめられている。
【0091】
同軸ケーブル80の外部導体82は、図28(C)に示すように、かしめられたY2側の第2の部分224CとY1側の第2の部分227CとによってY1−Y2の方向からかしめられている。
【0092】
同軸ケーブル80のシース83は、図28(A)に示すように、かしめられたY2側の第3の部分228Cによってかしめられている。
【0093】
以上から分かるように、同軸ケーブル側同軸コネクタ200は手間のかかる半田付け作業を必要としないで組み立てられる。
【0094】
なお、上記の発明は、図11に示す同軸ケーブル側同軸コネクタ90にも適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の同軸コネクタは、数10GHz以上の周波数の信号の伝送の経路に適応可能であり、例えば、電子計測機器、半導体試験装置、電算機、サーバー、交換機、ルーター等において同軸ケーブルとの接続場所に好適である。
【符号の説明】
【0096】
50,150 同軸コネクタ
51 中心導体
51a 足部
52 周囲導体
63 円筒部
54X1、54X2 コンタクト部
55Y1,55Y2 切り欠き部
56,56A ラグ
59 ねじ
60 ハウジング
61 ハウジング本体
61a フランジ部
62 絶縁体部
62a 貫通穴
63Y1、63Y2 連結部
64 環状の空間
65Y1、65Y2 スリット
70,170 回路基板
71 信号用パッド
72 グランド用パッド
80 同軸ケーブル
81 内部導体
82 外部導体
83 シース
90,200 同軸ケーブル側同軸コネクタ
100 導電性スペーサ
110,111 導電性ボール
160 同軸コネクタ部
201 中心導体端子モジュール
202 中心導体端子
203 結線部
203Y1、203Y2 板部
205 支持部材
205b 張り出し台部
210 介在部材
220 外部導体
221 円筒部
222 第1の腕部
223 Y2側の第1の部分
224 Y2側の第2の部分
225 第2の腕部
226 Y1側の第1の部分
227 Y1側の第2の部分
228 Y1側の第3の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルの先端に取り付けられる同軸コネクタであって、
前記同軸ケーブルの内部導体をかしめる結線部を有する中心導体と、
前記中心導体を支持する絶縁性の支持部と、
前記同軸ケーブルの外部導体をかしめる第一の部分と前記結線部をかしめる第二の部分とを有する周囲導体と、
前記結線部と前記第二の部分との間に介在する絶縁体とを備える同軸コネクタ。
【請求項2】
前記周囲導体は、
前記支持部を覆う円筒部と、
前記円筒部から張り出す、前記第一の部分と前記第二の部分とを備える腕部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の同軸コネクタ。
【請求項3】
前記周囲導体は、
前記前記外部導体に接する第三の部分をさらに備え、
前記同軸ケーブルが前記同軸コネクタに取り付けられたとき、前記外部導体は、前記第一の部分と前記第三の部分とに挟まれることを特徴とする、請求項2に記載の同軸コネクタ。
【請求項4】
前記支持部は、
前記結線部が載置される台部を備え、
前記結線部は、前記台部と前記絶縁体とに挟まれてかしめられることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【請求項5】
同軸コネクタを同軸ケーブルの先端に取り付ける同軸コネクタ取付け方法であって、
同軸ケーブルの内部導体をかしめる結線部を有する中心導体を支持する絶縁性の支持部と、前記結線部に載置される絶縁体とを、同軸ケーブルの外部導体をかしめる第一の部分と前記結線部をかしめる第二の部分とを有する周囲導体に定置するステップと、
同軸ケーブルを、外部導体が前記第一の部分にてかしめられ、かつ内部導体が前記第二の部分にてかしめられる位置に定置するステップと、
前記周囲導体を、前記第一の部分にて前記外部導体をかしめるとともに、前記第二の部分にて前記絶縁体を介して前記結線部と前記内部導体をかしめるステップとを有する取付け方法。
【請求項6】
同軸ケーブルの内部導体に接続される中心導体と、同軸ケーブルの外部導体に接続される周囲導体とを有する同軸コネクタであって、
前記中心導体は、前記内部導体をかしめる結線部を有し、
前記周囲導体は、前記外部導体をかしめる第一のかしめ部と前記結線部をかしめる第二のかしめ部とを有し、
前記結線部は、前記第二のかしめ部において前記周囲導体と前記中心導体との間に配される前記結線部を囲む複数の絶縁性の挟持部に挟持され、前記第二のかしめ部がかしめられることにより、複数の前記挟持部に緊締されて前記内部導体をかしめることを特徴とする同軸コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−124174(P2012−124174A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26855(P2012−26855)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2007−174010(P2007−174010)の分割
【原出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】