説明

同軸ノズルを使用した1−K系のための反応性成分のカプセル化

本発明は、一成分樹脂系のための反応性成分をカプセル化するためのコアシェル粒子の製造を含む。殊に、本発明はラジカル開始剤、例えばペルオキシドのカプセル化を含む。さらに、本発明は、反応性成分を100%カプセル化するための方法を含み、従って新式の貯蔵安定性の樹脂系の提供を可能にする。同時に、コアシェル粒子は、その施与の際に容易、迅速且つほぼ完全に開くが、しかし施与前には充分な貯蔵安定性および剪断安定性を有するように作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一成分樹脂系のための、反応性成分をカプセル化するためのコアシェル粒子の製造を含む。殊に、本発明はラジカル開始剤、例えばペルオキシドのカプセル化を含む。さらに、本発明は、反応性成分を100%カプセル化するための方法を含み、従って新式の貯蔵安定性の樹脂系を提供することを可能にする。同時に、コアシェル粒子は、その施与の際に容易、迅速且つほぼ完全に開くが、しかし施与前には充分な貯蔵安定性および剪断安定性を有するように作られている。
【0002】
一成分反応系は、様々な分野で使用できる。かかる系は、封止剤、接着剤および埋込樹脂(Duebelharz)の分野、例えばDE4315788号内に記載されているものにおいて特に意義があることが見出されている。しかし、医療分野、例えば歯科分野において、コーティング、例えば塗料、または反応性樹脂、例えば道路マーキングまたは工業用床におけるさらなる領域も、硬化性一成分系の潜在的な使用を見出すことができる。
【0003】
一成分系の提供のために、多くの技術的な解がある。まず、硬化機構を、後から、好ましくは環境から拡散する成分、例えば大気湿度または酸素によって開始することができる。しかしながら、大抵はイソシアネートまたはシリルに基づく湿分硬化系は、全ての用途には適していない。例えば、非常に厚い層または湿った領域における用途の際、湿分硬化系はあまり適していない。それに加えて、かかる系は非常に長い、しばしば何週間にわたって初めて完全に硬化する。これに反して、例えば道路マーキングのためには、迅速な硬化速度が必要である。
【0004】
一成分の貯蔵安定性一成分系の提供のための第二の技術的な解は、反応成分、例えば架橋剤、触媒、促進剤または開始剤のカプセル化である。
【0005】
かかる迅速な硬化機構は、殊に反応性樹脂のために大きな役割を果たす。反応性樹脂は大抵、ラジカル反応機構によって硬化する。その際、開始剤系は、多くの場合、ラジカル連鎖開始剤もしくは開始剤から、大抵はペルオキシドまたはレドックス系、および促進剤、大抵はアミンからなる。系の両方の成分は、それぞれカプセル化され得る。しかしながら、従来技術の問題は、カプセルが破られ、溶解され、または異なって開かれる解放機構である。
【0006】
従来技術
カプセル化系の際、反応性成分が解放されるタイミングは制御可能である。ここで、それは大抵、コアシェル粒子であり、そのシェルは作用物質に対して非透過性であり、且つ、作用物質の解放のために開かれなければならない。そのために、コアがシェル中で可溶性であってはならないだけでなく、シェルも、該コアシェル粒子が存在する媒体中で可溶性であってはならない。一連の解放機構が公知である。これは外部のエネルギー導入または化学的な配合パラメータ、例えば湿度またはpH値の変化に基づく。しかしながら、水または溶剤導入による解放は、かかる方法が非常に緩慢にしか機能しないか、または添加によって行われなければならないという欠点を有する。しかしながら、成分添加の場合、2−成分系の特徴および欠点が生じる。2番目の成分の例えば湿気の形での拡散の際には、その解放は、例えば道路マーキングとしての用途のためには長すぎる。
【0007】
その間に系が確立され、その際、圧力によって、もしくは機械的なエネルギー投入によって、例えば剪断によってシェルが開かれる。そのために、反応性成分、例えば開始剤のカプセル化のための様々なコーティングが記載されている。この系は、有機の厚膜コーティングに基づく。従来技術のかかる系の欠点は、大抵、殻の剪断不安定性である。かかるコアシェル粒子は大抵、1−K−配合物中に不適当に組み込まれるに過ぎず、なぜなら、完全混合の際に生じる剪断エネルギーは、相対的に不安定な殻にとって高すぎるからである。大抵は、直径500μm未満を有する粒子を製造することによって、この作用に対処している。しかしながら、小さい粒子の欠点は、相対的にわずかな充填材、例えばペルオキシド分散液について、比較液多くのシェル材料もしくは明らかに多数の粒子が必要とされることである。従って、かかる1−K−配合物のための目標は、反応成分に対する比において、シェル材料の可能な限り低い割合である。さらに、小さい粒子が開くことは、大きい粒子よりも困難である。これは、反応性成分の不完全な提供をみちびくことがあり、且つ、事情によっては、さらにより高い配合物の割合が必要になることがある。
【0008】
微細粒子、もしくは反応性成分を含有する充填材を有するコアシェル粒子の製造のために適切な古い技術は、スチレンまたは(メタ)アクリレートの乳化重合である。かかる方法の欠点は、さらにわずかな水溶性しか有さない成分が、不完全にしかカプセル化され得ないことである。コアの大きさの相対的に広い分布もしくは凝集物形成の欠点も示されることがある。
【0009】
反応性成分、もしくは溶液または分散液のカプセル化のためのかかる有機シェル材料のための例は、とりわけ、自然に得られるポリマー、例えばゼラチン(Gelantine)、カラゲーン(Carragen)、アラビアガムまたはキサンタンガム、もしくは、これらのベースに化学変性された材料、例えばメチルセルロースまたはゼラチン−ポリスルフェートである。WO9826865号内に、カプセル化された酸と、ゼラチンおよび他の天然ポリマーからのシェルを有する、コアシェル粒子の製造が記載されている。最大100μmの大きさを有するカプセルは、超音波を用いた混合処理によって生成される。しかしながら、かかる方法の際、粒径にわずかな影響しか有さない。さらに、該カプセル化は、水中で反応性成分の溶解性が粗悪であるか、またはその溶解が不可能である。
【0010】
US4808639号内に、かかる天然ポリマーを使用した様々な確立したカプセル化方法にわたる概要が示されている。殊に、500μmより大きな粒径を有する、より大きな粒子の合成のためには、液体噴射法が挙げられ、その際、沈殿媒体に液体噴流がもたらされ、且つその際、個々の粒子が硬化される。しかしながら従来技術によるこの方法の欠点は、個々の粒子が大抵、沈殿媒体中に導入された噴流の切断によって形成され、且つ、それに応じて、生じる粒子は丸くなく、且つ、広い大きさの分布を有し得ることである。しかしながら、丸くない粒子は、理想的な丸よりも不安定であり、従ってそれらは剪断下での配合の際に、時期尚早に開きかねない。さらに、古典的な液体噴射法の際、カプセル化される成分と、シェル材料とからの混合物が添加される。しかし、これは、該成分が、コア材料よりも低い沈殿媒体との混合性を有している場合に機能するのみであることがある。この関係が、液体噴射法をさらに制限する。
【0011】
カプセル化のさらなる方法は、コアセルベーションであり、その際、コロイド溶液の化学的または物理的パラメータが相分離をみちびく。適したプロセスパラメータによって、該方法は、粒子が形成されるように変化され得る。前もってカプセル化される成分が溶液中に分散されると、この周りに、硬化され得るコロイドの殻が形成される。複合コアセルベーションの際、異なる電荷を有する2つの材料が、互いに自発的にシェルを形成しながら結合される。そのための例は、ゼラチンおよびアラビアガムからの確立された組み合わせである。当業者にとっては、かかるコロイド溶液から500μmより大きい粒径を有する粒子を、制御されない沈殿を引き起こさずに形成できないことが容易に読み取れる。さらに、この方法の際も、個々の成分の組み合わせ可能性は強く制限される。複合コアセルベーションは、例えばGB1117178号またはMcFarland et al. (Polymer Preprints、2004、45(1)、1ページ以降)内に記載されている。
【0012】
より小さな粒子の製造のためには、そのための重合法、たとえば乳化重合、界面重合またはマトリックス重合が提案されている。当業者にとっては、かかる方法では、500μmを明らかに下回る粒径を有する非常に小さな粒子しか実際には製造できず、且つ、該方法はその都度、特定の材料の組み合わせのためだけにしか使用可能ではないことが容易に読み取れる。NL6414477号内に、例えば、分散液中での界面重合が記載されている。重縮合物は、ポリエステルまたはポリアミドである。しかしながら、かかるカプセルは、コア中に閉じこめられた材料についてあまりに透過性であるか、または再度開くことがあまりに困難であるかのいずれかである。さらに、カプセル化される反応性成分の存在中での縮合重合のカプセル化機構は、費用がかかり且つ大抵は不完全な方法である。
【0013】
かかる乳化重合または懸濁重合と類似した界面重合についての用途分野は、例えば歯科用途のための生体適合性のあるカプセル材料の合成である。それについての例は、ポリエチルメタクリレート(Fuchigami et al.、Dental Material Journal、2008、27(1)、35〜48ページ)からのシェルである。しかしながら、当業者にとっては、かかるコアシェル粒子が開くのが困難であり、且つ、かかる狭い適用範囲もしくは適用領域にのみ制限された用途の際に、極めて小さくなければならないことが容易に読み取れる。
【0014】
WO0224755号内に、ジビニルベンゾールで架橋されたポリスチロールからの、特に狭い単峰性のサイズ分布を有する微細粒子が記載されている。このために、架橋剤の装入下でスチレンをプレポリマー化し、引き続き、さらなる開始剤と共に同軸ノズルの内側の水溶液に滴下する。この液滴は、外側の層を有する同軸の液滴化される分離液体および保護液体を通じて準備され、それにより大きさが安定化される。適した成分を水相に添加することによって、この外側の殻が硬化し、且つ、ラジカル硬化工程の間、内部領域を保護する。合成に次いで、その外側の保護殻が、洗浄または類似の工程によって取り除かれる。さらにここで反応性成分のカプセル化のための一時的な保護殻を記載する場合、それは本来の意味でのコアシェル粒子では決してない。むしろ、このポリエーテルおよびアルギン酸ナトリウムに基づく保護液体層は、機械的に安定でも不浸透性でもない。さらに、それは必然的に非常に薄く、且つ貯蔵安定性ではない。微細粒子の硬化の間の一時的な安定性は、プレポリマー化による微細粒子のポリマー特性に起因する。
【0015】
貯蔵安定性の、液体で満たされたコアシェル粒子の合成のための同軸ノズルの使用は、Berklandらによって記載されている(Pharmaceutical Research、24、no.5、1007−13ページ、2007)。同軸ノズルを介して、内側から外側にみて、カプセル化される液相、シェルが形成されるポリマー溶液、および担体流としてはたらき且つ受容液体と同一であり得る液体とを滴下し、且つその際、増幅器によって、前もって液滴に類似した構造に切り離す。その液滴は、水性ポリビニルアルコール溶液中に滴下され、そこでシェル材料が硬化する。ここで目標設定は、例えば医療用途のための生分解性粒子の合成である。相応して、分解性ポリマー、例えばポリラクチド−グリコシドからのシェルがある。コアは医学的な作用物質の溶液で、且つ、技術的な反応性物質、例えば開始剤、架橋剤、触媒または促進剤を用いないで充填されている。
【0016】
相応して、さらに、粒子は200μm未満を有し、非常に小さい。たしかに、ここで、コロイド系の欠点を有さず、且つ同時に、重合段階なく本当に速く硬化する方法はある。しかしながら、工業的な用途、例えば反応性成分のカプセル化についての欠点は、大きさおよびかかる有機材料の機械的な不安定性である。生分解物が開く機構も、非常に緩慢な作用物質放出を狙って設計されている。それに対して、産業上の用途の際は、しばしば、反応性成分の同時の迅速な解放が必須である。
【0017】
課題
本発明の課題は、一成分コーティング系、以下で略して1−K系として示す、のための反応性成分含有コアシェル粒子を提供するための方法を詳述することである。
【0018】
殊に、該課題は、可能な限り容易な機構によって迅速に開かれ得るコアシェル粒子を提供することである。殊に、コアシェル粒子は、コア中に含有される反応性成分を極めて短い時間でほぼ完全に解放されるように、活性化され得るべきである。
【0019】
さらなる課題は、容易に実施可能であり、且つ調節可能な、従来技術に対して大きな直径および理想的には単峰性のサイズ分布を有する粒子の製造が可能である、コアシェル粒子の製造方法を提供することである。
【0020】
殊に、共に配合されること、および粘性の1−K系中での貯蔵について充分に安定であり、例えば道路マーキング法としての使用が見出され、且つ同時に機械的なエネルギーによって開かれる、反応性成分を含有するコアシェル粒子を製造できる方法を提供することが課題である。
【0021】
明示的に挙げられていないさらなる課題は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲および実施例の全体の脈絡から判明する。
【0022】
解決手段
括弧内の数字は、添付図の図1に関連する。
【0023】
該課題は、コアシェル粒子の製造のための新式のカプセル化方法を提供することによって解決される。この新式の方法は、以下の種々の態様の組み合わせによって特徴付けられる:
a) 同軸ノズル(図1)を用いて、2または3層からなる液体噴流を形成する。
【0024】
b) 液体噴流の2または3層の最内部(2a)は、純物質として、または好ましくは安定な溶液または分散液として存在する反応性成分である。
【0025】
c) 中央(3a)もしくは、2層だけしかない場合は外の層は、無機成分の溶液である。
【0026】
d) 3層の場合、最外層(4a)は、溶剤である。この3番目の層は、任意に存在するのみである。
【0027】
e) 装置を通じて、自由落下する噴流から(2a+3aからなる)液滴が形成される。液滴の切り取りは、((1)と一緒の)周波数発振器および増幅器によって促進される。
【0028】
f) 落下して形成された液滴は、溶剤(6)内に落ち、該溶剤は、無機成分と、これが固化されるように相互作用する。
【0029】
g) 液滴が落下する溶剤(6)は、生じる粒子の沈殿を防ぐまたは減速する、追加的な成分を含有する。
【0030】
殊に該課題は、無機材料がケイ酸塩の水溶液(3)、好ましくはケイ酸ナトリウムであることで解決される。
【0031】
特に好ましくは、そこから、固化の際に物理的硬化によって適した溶剤中で水ガラスが形成される。前記の溶剤は、水と良好に混合できること、並びに吸湿特性を有すること、且つ同時に、液滴の水性部分中に溶解されたケイ酸塩については非溶剤であって、該ケイ酸塩が、溶剤(6)中への滴下直後に、溶解されたケイ酸塩と脱水素されたケイ酸塩との間の平衡を、それが自発的に硬化し、ひいてはコアシェル粒子のシェルが形成されるようにシフトする点で際立っていなければならない。それゆえ、前記の溶剤は、相互作用の際、液滴の衝突後に、無機材料の水溶液(3もしくは3a)についての乾燥剤のように作用する。溶剤(6)として、そのために好ましい極性アルコール、例えばメタノール、エタノールまたはn−プロパノールもしくはイソプロパノール; ケトン、例えばアセトン; および無機成分がもはや溶解性でなく、且つ形成されている水ガラスの殻から水を取り去るような濃度および性質である塩の水溶液が考慮される。好ましくは、溶剤は、アルコール、特に好ましくはエタノールである。
【0032】
液滴が落下する溶剤(以降で受容液体(6)として示される)は、生じる粒子の沈殿を防ぐまたは少なくとも減速する、追加的な成分を含有する。この沈殿を減速するまたは防ぐ成分は、好ましくは極性アルコールである溶剤と混和性の増粘剤である。また、非常に重要なのは、溶剤と水との混和性、および無機成分の溶剤中での非溶解性が、増粘剤の添加によって、全く、最小限にしか影響されない、または無機成分の沈殿をより良い方向にするように影響されることである。増粘剤は、例えばカルボキシビニルポリマー、例えばTego Carbomer(登録商標) 340 FDであってよい。好ましくは、0.01質量%〜3質量%、特に好ましくは1質量%〜2質量%の増粘剤を使用する。
【0033】
随意に、液体噴流は3つの層(2a、3aおよび4a)から構成されていてもよい。追加的な外側の層(4a)、担体流は、受容液体(6)と良好に混合可能な溶剤であってよい。好ましくは、受容液体(6)として使用されるものと同じ溶剤もしくは同じ溶剤混合物である。この随意の担体流(4a)によって、液体噴流が安定化され、且つ液滴の形成が促進される。システム次第で、かかる担体流によって、得られるコアシェル粒子の形態の均一性に影響を及ぼすことができる。
【0034】
従来技術に比した特別な態様は、コアもしくはその内容物と、シェルとの間の質量比である。シェルは、例えば配合、輸送または他の生成物に特異性の方法段階の間に破れず、且つ反応性成分を時期尚早に解放しないために、特定の最小厚さを有さなければならない。粒子の相対的な大きさに基づき、一方では充分な厚さのシェルを有し、それにもかかわらず他方では、相対的に多くの溶液、分散液または純物質を含有できるような大きさのコアを有する、粒子を提供することが可能である。この方式で、開いた後に相対的に少ないシェル材料を生成物マトリックス中に残し、それにもかかわらず、粘性の塊、例えばクリームまたは反応性樹脂に、攪拌により入り込む際、剪断エネルギーを与えながらでも、充分な安定性を伴い、開かないように安定である、コアシェル粒子を実現できる。本発明によれば、厚さ30〜1000μm、好ましくは50〜500μmにわたるシェルが利用可能である。
【0035】
無機材料、好ましくは水ガラスからなるシェルを有するコアシェル粒子の相対的な大きさは、本発明のさらなる特別な特徴である。該コアシェル粒子は、最小100μm、好ましくは最小300μm、特に好ましくは500μm、および、最大3000μm、特に好ましくは最大1500μmの粒子サイズ直径を有する。粒径分布は好ましくは単峰性である。
【0036】
粒径とは、本願においては、本来の平均一次粒径であると理解される。凝集物の形成が排除されているので、平均一次粒径は実際の粒径に相当する。該粒径は、さらに、ほぼ丸く見える粒子の直径にほぼ相当する。丸い外観ではない粒子の際、平均直径は、最短直径と最長直径からの平均値として算出される。直径とは、この文脈では、粒子の縁の1つの点から他の点への距離であると理解される。さらには、この線は粒子の中心を通らなければならない。
【0037】
該粒径を、当業者は画像分析または静的光散乱を用いて見つけ出すことができる。
【0038】
該コアシェル粒子は、理想的にはほぼ球状、もしくは同義の球形である。しかしながら、該粒子は棒状、液滴状、円板状またはカップ状であってもよい。粒子の表面は、通常、円形であるが、しかしながら、合体していてもよい。球形についての幾何学的なアプローチの尺度として、公知の手段でのアスペクト比のデータを利用できる。その際、生じる最大アスペクト比は、平均アスペクト比から最大50%だけ逸脱する。
【0039】
本発明は、殊に、最大で3、好ましくは最大で2、特に好ましくは最大1.5の最大平均アスペクト比を有するコアシェル粒子の製造に適している。粒子の最大アスペクト比とは、3つの寸法 長さ、幅および高さのうちの2つの、形成され得る最大の相対的な比のことであると理解される。その際、それぞれ、最大寸法の、他の2つの寸法の小さい方に対する比が形成される。長さ150μm、幅50μm、および高さ100μmを有する粒子は、例えば最大アスペクト比(長さに対する幅)3を有している。最大アスペクト比3を有する粒子は、例えば短い棒状または円板状、錠剤のような粒子であり得る。粒子の最大のアスペクト比が、例えば最大1.5またはそれ未満である場合、粒子は多かれ少なかれ球に類似した、または粒子状の形態を有する。
【0040】
該粒子は、溶剤中への液体噴流の滴下およびそこで起きるコアの硬化の後、ろ過および同一または他の溶剤を用いた粒子表面の随意の洗浄によって、単離され且つ精製される。その際、反応性成分の残りを、可能な限り完全にシェル表面から除去することが重要である。引き続き、反応性成分について反応性の溶液もしくは溶剤を用いた洗浄を行い、気密性を検査する。ペルオキシドの場合、例えばメチルメタクリレートが使用される。
【0041】
この処理の際、一次粒子は、20〜30までの一次粒子からなり得る癒着物を形成するように相互作用することができる。通常、容易な機械的処理によって、それらは、シェルが開くことなく部分的に再度一次粒子に分離される。この癒着物は、個々の一次粒子が互いに合体している従来の意味でのアグリゲートではない。
【0042】
処理の終わりの方、もしくは貯蔵の際の癒着を妨げるために、コアシェル粒子をさらに、エアロジル(Evonik Degussa社)を用いたパウダリング(Puderung)によって処理してよい。同様に、パウダリングは乾燥剤として役立つ。パウダリングの適用のために、種々の方法がある。例として、硬化の際に溶剤中へ粉末材料を装入すること、例えばエタノールまたはMA中での粉末含有分散液を用いた追加的な洗浄段階、またはドラム内または気流内での乾燥粒子の受粉が挙げられる。
【0043】
コアシェル粒子のコアは、作用物質、好ましくは反応性成分の溶液または分散液、および特に好ましくはオイル中のペルキシドの分散液を含有する。
【0044】
オイルとして、例えばDrakesol 260 AT、Polyoel 130およびDegaroute W3、特に好ましくはDagaroute W3 (Evonik Roem GmbH社)を使用できる。オイルが水をもはや含有していないことを確実にするために、使用前に、例えば乾燥器内での熱処理によってこれを乾燥させることができる。例えば水ガラスの硬化は、含まれるオイルが無水の場合により迅速且つ良好に行われる。
【0045】
本願において、反応性成分の用語は、特段説明されない限り、作用物質の概念と同等であると認識される。作用物質とは、解放後に望ましい効果を引き起こす物質であると理解される。その際、それは例えば塗料またはコーティング用途における色素、顔料、効果顔料または増粘剤などの種々の物質であってよい。ビタミン、風味物質、動物の飼料の栄養補給剤、微量元素、または食品または動物用飼料のための他の添加剤であって、通常の貯蔵条件下では安定ではなかったものであってもよい。それはさらに、化粧品用途、例えばクリーム、歯磨き粉、整髪用製品、石鹸またはローションにおいて使用できるもののための、風味物質、芳香物質または作用物質であってよい。それは例えば、制御されて解放される医薬品の医療用作用物質であってもよい。
【0046】
特に好ましくは、本発明によるコアシェル粒子中に含有される反応性成分は、開始剤、促進剤、または触媒、特に好ましくは、1−K系の硬化のための開始剤、促進剤または触媒である。
【0047】
反応性成分が開始剤である場合、好ましくは、それはラジカル開始剤、特に好ましくは有機ペルオキシドである。かかるペルオキシドについての例は、本発明を何らかの形で限定することなく、ラウロイルペルオキシドまたはベンゾイルペルオキシドである。
【0048】
前記の促進剤は、例えばアミン、好ましくは芳香族置換tert−アミンであってよい。例えば、ここでもまた、限定されることなく、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジンまたはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンである。
【0049】
本発明によるコアシェル粒子は、反応性成分の解放のために、圧力または何らかの他の形態の機械的エネルギーの作用によって破られる。この機械的エネルギーは、例えば1次元、2次元または3次元で及ぼされる圧力、剪断、穿孔、圧搾、粉砕、硬質表面への吹き付け、または渦の形態でもたらすことができる。このエネルギーをもたらすことによって、コアシェル粒子が破れ、そして作用物質が解放される。その際、機械的なエネルギーをもたらす形態は、自由に選択可能であり、且つ、それについて本発明を何らかの性質に制限するには適さない。代替的に、本発明によるコアシェル粒子は、適した溶剤の添加によって、殊に水の添加によって、開かれることができる。
【0050】
それに対して、コアシェル粒子を開くために適切ではないのは、従来の放射線、反応性成分の反応点より高い熱エネルギーまたは化学的な影響、例えば有機溶剤、酸化剤、または極性の変化である。本発明による粒子の長所は、むしろ、かかる環境要因に対して特に安定であるということである。これは、本発明による粒子を含有する配合物の処理、貯蔵および輸送を容易にする。
【0051】
本発明によるコアシェル粒子を、極めて種々の用途領域において使用でき、以下の実施例が、何らかの形で用途を限定すると理解されるわけではない。
【0052】
好ましくは開始剤、触媒または促進剤で満たされたコアシェル粒子は、例えば道路マーキングのための、床の据え付けのための、橋梁工事において、または迅速な試作品のための、反応性樹脂混合物中で使用される。しかしながら、かかる粒子は、封止剤、化学埋込剤、接着剤または他のコーティングにおいて使用することもできる。
【0053】
反応性物質、例えばモノマーで満たされたコアシェル粒子は、自己修復材料において使用できる。
【0054】
色素で満たされた粒子を、効果塗料において、または安全性におけるコーティングもしくは成形体において、例えば圧力、応力または材料の疲労の検出のために使用できる。
【0055】
作用物質で満たされた粒子は、例えば化粧品、医薬または動物の飼料において使用を見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】同軸ノズル
【0057】
図1の図の記号
(1) 周波数発振器および増幅器
(2) 反応性成分(純物質、溶液または分散液)の装入
(2a) (2)の移送のためのポンプ
(2b) 液体噴流もしくは液滴中での成分(2)
(3) 溶液または無機成分の装入
(3a) 液体噴流もしくは液滴中での成分(3)((4a)中で不溶性)
(3b) (3)の移送のためのポンプ
(4) 随意の担体流のための溶剤の装入
(4a) 担体流(随意)
(4b) (4)の移送のためのポンプ
(5) ランプ
(6) 受容液体もしくは溶剤
(7) 攪拌棒
(8) 磁気攪拌機
(9) 受容器(ビーカー)。
【0058】
実施例
装置
括弧内の数字は、添付図の図1に関連する。
【0059】
レオメータ: Haake RheoStress 600
測定体: プレート(溶剤トラップ)/コーン、DC 60/2°
充填試料容器: 5.9mL ケイ酸ナトリウム溶液
測定温度: 23.0℃
測定: 500回転/秒にて120秒後
周波数発振器: Black Star 1325およびJupiter 2000 (1)
変圧器: Heinzinger LNG 16−6 (または類似の装置) (1)
ランプ (5): Drelloscop 2008
ポンプ: ピストンメンブレンポンプ+脈動ダンパ: LEWA EEG 40−13 (2b)
歯車ポンプ: Gather CD 71K−2 (3b)
ポンプ流量: ノズル 350/500μmにて、
ピストンメンブレンポンプ+脈動ダンパ (ケイ酸ナトリウム溶液用): 1.5〜5 l/時間
歯車ポンプ (開始剤とオイルとの懸濁液用): 1〜2 l/時間。
【0060】
ケイ酸ナトリウム溶液の前処理
固体含有率40質量%および動粘度110mPasを有する、1.3Lの市販のケイ酸ナトリウム溶液を、直径19cmを有する結晶シャーレにもたらす。攪拌のために、攪拌棒(長さ: 2cm)を備えた磁気攪拌機を使用する。表面全体が振動の中にあり、且つ明らかな攪拌渦流(Ruehrtrombe)が形成されるように、常に非常に強く攪拌しなければならない。24時間後、粘度をレオメータ内でプレート/コーンシステム(DC 60/2°)を用いて計測する。必要に応じて、45質量%の固体含有率へと、後で希釈するか、もしくはさらに乾燥させる。その際、動粘度は110mPasから310mPasに上昇する。
【0061】
開始剤懸濁液の製造
懸濁液の製造のために、500mLの試料ボトルを採用し、そしてそれをDegaroute W3で満たす。引き続き、慎重に20質量%のBPO 75 (ベンゾイルペルオキシド、以下で略してBPO)を段階的に添加する。木べらを用いて、表面に浮かんでいるBPOを混ぜ入れる。後処理のために、懸濁液を氷浴中でUltraturrax(選択的に超音波)を用いて処理する。段階1では1分、段階2では10分、最後に段階3では3分である。
【0062】
方法の手引き−ペルオキシドで満たされた粒子の製造
ケイ酸ナトリウム溶液(3)と、BPOおよびDegaroute W3による開始剤懸濁液(2)を、相応する装入容器に入れる。周波数発振器(1)と光源(5)とを、16kHzの周波数で始動させる。その後、ケイ酸ナトリウム溶液用のポンプ(3b)および懸濁液用のポンプ(2b)を時間的に近接して起動させ、そして連続流を制御する。受容器(9)として、内径7.6cmを有する600mLのビーカーを利用する。これは、100対1.5の比での工業用エタノールとTego Carbomer 340 FDとからなる、受容媒体300mLを含有する。受容媒体を、磁気攪拌機(8)および攪拌棒(7)を用いて、攪拌速度650〜1200回転/分で攪拌する。ノズルヘッドと受容媒体との間の滴下高さは16cmである。攪拌によって渦流が形成されるまで待って、滴下を開始する。2ないし3分毎に、溶液が飽和したときに、さらなる新しい受容媒体を含有するビーカーと交換する。
【0063】
粒子を含有する受容溶液を1つにまとめ、そして該粒子を、500μmより小さい孔径を有するふるいを介してろ過してわける。引き続き、該粒子を初めに工業用エタノールを用いて洗浄し、引き続きメチルメタクリレートを用いて洗浄する。個々の洗浄プロセスの間に、該粒子をその都度、空気乾燥させる。洗浄され且つ乾燥された粒子を最後に、1質量%のエアロジル200と混合する。
【0064】
結果の表:
【表1】

【0065】
直径は画像解析を用いて顕微鏡で測定した。
【0066】
貯蔵安定性の調査
それぞれ20mLの、スナップ蓋付きガラス容器に、1/3まで、実施例1〜3によるコアシェル粒子を満たし、そしてMMAでいっぱいにする。ガラス容器の1つを室温で、他を40℃で貯蔵する。1週間、2週間および3週間の貯蔵毎に、顕著な粘度上昇またはさらにはMMAの硬化が生じているかどうかを検査する。さらに、粒子が、大きさ、形状、および色に関して、変化したかどうかを検査する。
【0067】
実施例のいずれも、3週間以内で、重合または粘度上昇を生じない。比較試験において、該粒子を鋤で押しつぶし、そして配合物がもはや流動性ではなくなった時間の後に、室温で観察する。7〜8分後、全ての試料はもはや流動性ではなく、従って硬化していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル粒子の製造方法であって、
a) 同軸ノズルを用いて、2または3層からなる液体噴流を形成すること、
b) 最内層は、反応性成分の安定な溶液または分散液であること、
c) 中央または外側の層は、無機成分の溶液であること、
d) 最外層は、溶剤であり、且つ、この層は随意にのみ存在すること、
e) 装置を介して自由落下する噴流から液滴を形成すること、
f) 該液滴が溶剤中に落下し、該溶剤が無機成分と、これが固体になるように相互作用すること、および
g) 該溶剤が、生じる粒子の沈殿を妨げるか、または減速する、追加的な成分を含有すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
無機材料が、ケイ酸塩、好ましくはケイ酸ナトリウムの水溶液であり、且つ、特に好ましくはそこから固化の際に水ガラスが形成されることを特徴とする、請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項3】
反応性成分が、1−K系の硬化のための開始剤、促進剤または触媒であることを特徴とする、請求項1または2に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項4】
反応性成分が、ラジカル開始剤、好ましくは有機ペルオキシドであることを特徴とする、請求項3に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項5】
無機材料と相互作用する溶剤が、無機材料の水溶液のための乾燥剤であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項6】
溶剤が、アルコール、好ましくはエタノールであることを特徴とする、請求項5に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項7】
随意に使用される最外層の溶剤が、請求項5または6のいずれか1項に記載の溶剤であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項8】
沈殿を減速する、または防ぐ成分が、アルコールと混和性の増粘剤であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項9】
シェルが無機材料からなること、
コアシェル粒子が最大で3の平均アスペクト比および少なくとも100μmおよび最大3000μmの粒径を有すること、および
コアが反応性成分の溶液または分散液を含有すること
を特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法によって製造可能なコアシェル粒子。
【請求項10】
シェルが水ガラスからなること、
コアシェル粒子が最大で2の平均アスペクト比および少なくとも500μmおよび最大3000μmの粒径を有すること、および
コアがオイル中のペルオキシドの分散液を含有すること
を特徴とする、請求項9に記載のコアシェル粒子。
【請求項11】
シェルが、厚さ30〜1000μm、好ましくは50〜500μmを有することを特徴とする、請求項9または10に記載のコアシェル粒子。
【請求項12】
シェルが、圧力または他の形態の機械的エネルギーの影響によって破られることができ、その際に作用物質が解放されることを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項に記載のコアシェル粒子。

【図1】
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【公表番号】特表2013−509287(P2013−509287A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535704(P2012−535704)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063068
【国際公開番号】WO2011/051033
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】