説明

同軸構造を有し、金属化された合成発泡体から作られるマイクロ波フィルタ

本発明は、同軸構造を有するマイクロ波フィルタに係り、管状の外側導体(1)と、内側棒導体(2)から成る。本発明によれば、内側棒導体は、外側管の内部で軸方向(A)に延び、管と共に軸方向に一連の同心のスロット(3A乃至3D)を形成する。従って、低い特性インピーダンスを備えた連続する同軸ケーブルのセグメントと、高い特性インピーダンスを備えた同軸ケーブルのセグメントを定義する。上述した同心のスロットは、合成の発泡体ブロックに作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側導電性コア及び内側導電性コアを有する同軸構造のマイクロ波フィルタに係る。内側コアは、外側コア内を軸方向に従って延び、外側コアと共に軸方向に従って一連の同心の鋸歯状物を形成し、低い特性インピーダンスの同軸ケーブル及び高い特性インピーダンスの同軸ケーブルの連続する区分を定義する。
【背景技術】
【0002】
著作物「Microwave Filters, Impedance-Matching Networks and Coupling Structures」、Mgrawhill、1962年(非特許文献1)は、係るマイクロ波フィルタ、特にはローパス・フィルタを記載する。該著作物中、外側導電性コアは、通常、軸方向に従って間を空けられた同心の金属ディスクを有する円筒形の金属ロッドによって構成され、金属ロッドは、一連の同心の鋸歯状物を形成する。このように、内側コアの断面は、軸方向に従って変化するため、大きな直径の内側コアの各区分(金属ディスクに相当)は、非常に低いインピーダンスの同軸ケーブルの区分を定義し、より小さい直径の内側コアの各区分(2つの連続するディスクの間隔に相当)は、高インピーダンスの同軸ケーブルの区分を定義する。区分の寸法は調整され、フィルタの伝達関数が実現される。しかしながら、かかる同軸構造のマイクロ波フィルタの実現は、特にフィルタの内側コアと外側コアとの間の完全な同軸性の保持に関して、複雑且つ高コストであることが判明している。プラスチック又は他の誘電材料から作られるスペーサは、一般的には同軸性を保持するよう使用されるが、これは誘電損失を招く。
【非特許文献1】「Microwave Filters, Impedance-Matching Networks and Coupling Structures」、Mgrawhill、1962年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、低コストの大量生産に適しているより単純でより費用のかからない組立の同軸構造のマイクロ波フィルタを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる目的に関し、本発明は、合成の発泡体材料でできた管と、完全に金属化された剛性材料でできた棒によって構成された同軸構造のマイクロ波フィルタに係る。管は、一定の内径、及び、周期又は一定の関数に沿った側面を軸方向に備えた完全に金属化された外部表面を示す。棒は、一定の外部側面を備えるか、又は、周期関数に追随する。棒の最大径は管の内径と著しく等しいため棒は管に挿入され得、同時に、管と棒との間の同軸性を保持する。使用される発泡体は、望ましくはポリメタクリルイミド発泡体であり、空気の性質に似た電気的性質、剛性且つ軽量な機械的性質、及び低価格性で既知である。特には、「ROHACELL HF(登録商標)」の名称で市販されているポリメタクリルイミド発泡体が使用され得る。
【0005】
本発明によるフィルタの特殊性によれば、:
・ 部分ごとの周期関数又は定数関数は鋸歯状物に依存し、1つの鋸歯状物が他の鋸歯状物と異なる寸法を有することができ、
・ 管の厚さは、管の金属化された表面と棒との間の電気的絶縁を保持するよう選択される。
【0006】
この組立によって、マイクロ波フィルタは、モノポール・アンテナ又はダイポール・アンテナと容易に組み合わせられ得る。
【0007】
本発明は、上述された通り、マイクロ波フィルタを製造する方法に及び、該方法によれば、周期関数は、発泡体の管又は発泡体の棒を熱成形することによって実現され得る。熱成形技術として、特に加熱プレス成形が望ましくは使用され、大量低コスト生産の目的に適応される。
【0008】
発泡体の管又は発泡体の棒の金属化は、望ましくは、射出又はブラシによる非指向性の金属化である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に従ったフィルタの実施例は、以下に説明され、図面に例示される。
【0010】
本発明による同軸構造のマイクロ波フィルタの第1の例を、分解斜視図によって図1に示す。
【0011】
図1中、フィルタの外側導電管1及び内側導電棒2は、非常に明瞭にするために互いに引き離して図示されるが、内側棒2は、外側管1の内部で軸方向Aに従って延びることが理解されなければならない。
【0012】
フィルタの内側棒2は、剛性発泡体で作られた円筒形の棒によって構成され、その外側表面は、軸方向に従った周期関数に追随する。望ましくは、一連の同心の鋸歯状物3A乃至3Dを形成し、ローパス・フィルタの伝達関数等であるフィルタの伝達関数を、低い特性インピーダンス及び高い特性インピーダンスの連続する区分を定義付けることによって実現する。発泡体の棒2の形態は、熱成形によって、特には加熱プレス加工技術に従って実現される。発泡体の棒2の外側表面は、望ましくは射出又はブラシによって金属化される。
【0013】
フィルタの外側管1は、一定の内側断面を有する合成発泡体でできた円筒形の管によって構成される。管の内径は、発泡体の棒2の最大外径において極わずかにより大きく、棒が管に挿入され得るようにされる。円筒形の管1は、上述された技術に従って完全に金属化された外側表面を有する。管1の厚さは、その外側の金属化された面と棒との間の電気的絶縁を実現するよう選択される。
【0014】
使用される合成材料発泡体は、望ましくはポリメタクリレート・イミド発泡体である。
【0015】
図1に図示するフィルタの構造は、プラスチック材料又は合成発泡体材料で実現され得る管1を囲む2つの半殻(図示せず)によって補強され得る。
【0016】
当然のことながら、管1及び発泡体の棒2は、環状以外の断面、例えば長方形又は正方形の断面を、本発明の趣旨を逸脱することなく有し得る。
【0017】
図2は、本発明に従ったフィルタの他の実施例を図示する。フィルタの外側管1’は、合成発泡体材料でできた円筒形の管によって構成され、その外側の金属化された表面は、軸方向Aに従った一連の鋸歯状物3A’及び3B’を定義するよう適合される。その一方、フィルタの内側棒2’は、一定の断面の導電性の円筒形の棒によって構成される。このようにして、管の外側表面は、軸方向に従って、鋸歯状物の定数等の部分による周期関数又は定数関数に追随する側面を提示する。導電棒2’は、剛性又は中空の円筒形の金属管から成り得る。棒2’は、また、金属化された合成材料発泡体によって構成され得る。図2中、本発明に従ったマイクロ波フィルタは、フィルタの内側コア2’の伸長によって構成されたモノポール・アンテナ4に関連付けられる。
【0018】
図3は、本発明に従ったマイクロ波フィルタを図示する。これは、図1に図示するフィルタに類似しており、一定の断面図の外側の発泡体の管1’’及び軸方向Aに沿った可変の断面の発泡体の棒2’’によって構成された内側棒を備える。ここでは、フィルタは、ダイポール・アンテナ5に関連付けられる。
【0019】
金属化された発泡体技術の使用は、複雑な同軸構造のマイクロ波フィルタが低コストで実現されることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による同軸構造のマイクロ波フィルタの第1の実施例の非常に概略的な分解斜視図である。
【図2】モノポール・アンテナに関連付けられた本発明による同軸構造のマイクロ波フィルタの第2の実施例の軸部分を概略的に図示する。
【図3】ダイポール・アンテナに関連付けられた第1の実施例によるフィルタの軸部分を概略的に図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸構造のマイクロ波フィルタであって、合成発泡体でできた管と、完全に金属化された合成発泡体でできた内側棒によって構成され、
前記管は、一定の内径、及び、周期又は定数関数に従った側面を軸方向に備えた完全に金属化された外側表面を示し、
前記棒は、一定の外側側面を備えるか、又は、周期関数に追随し、前記棒の最大径は前記管の前記内径と著しく等しいため前記棒は前記管に挿入され、同時に、前記管と前記棒との間の同軸性を保持する、
フィルタ。
【請求項2】
前記周期関数は鋸歯状物の関数であり、前記鋸歯状物は1つの鋸歯状物が他と同一又は異なる寸法を有することを特徴とする、請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記管の厚さは、前記管と前記棒との前記金属化された表面の間の電気的絶縁を保持するよう選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載のフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項に従ったフィルタの製造に関する方法であって、
前記周期関数は、前記発泡体の管又は前記発泡体の棒を熱成形することによって実現される、
方法。
【請求項5】
前記発泡体の管又は前記発泡体の棒は、射出又はブラシによって表面を金属化される、請求項4記載の製造の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸構造のマイクロ波フィルタであって、
一定の内径、及び、周期又は定数関数に従った側面を軸方向に備えた完全に金属化された外側表面を示す管(1,1’,1’’)と、
一定の外側側面を備えるか、又は、周期関数に追随し、完全に金属化された内側棒(2,2’,2’’)とを有し、
前記管及び前記棒は、金属化可能な材料の発泡体で実現され、前記棒(3A乃至3D;3A’,3B’)の最大径は、前記管の前記内径と顕著に等しいことを特徴とする、
フィルタ。
【請求項2】
前記周期関数は鋸歯状物の関数であり、前記鋸歯状物は1つの鋸歯状物が他と同一又は異なる寸法を有することを特徴とする、請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルタを製造する方法であって、
前記周期関数が、前記発泡体の管又は前記発泡体の棒を熱成形することによって実現される、
方法。
【請求項4】
前記発泡体の管又は前記発泡体の棒は、射出又はブラシによって前記表面で金属化される、請求項3記載の製造の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513654(P2006−513654A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567028(P2004−567028)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2003/050200
【国際公開番号】WO2004/066429
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】