説明

吐出された一酸化窒素を決定する方法及び装置

吐出された一酸化窒素(NO)のレベルを決定するための方法及び装置が開示されている。前記方法は、対象者によって事項された安静呼吸過程の1つ以上の呼気における、吐出されたNOのレベル及びそれに対応する呼気の流量を測定することを伴う。データは、ある固定された流量に対応する吐出NOに関する値、特に、50ml/sの固定された流量に対応する吐出NOレベルを導き出すために、吐出NOの流量依存性を述べるモデルで使用される。その過程の間、流量制限における変動が、呼気の全体の流量を変更するために、適用されても良い。前記方法は、優れた正確性を有して、吐出NOレベルを決定するための、単純かつ迅速な方法を提供し、子供への使用に適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安静呼吸過程に基づいて肺内での一酸化窒素の産生を決定する方法及び装置に関し、具体的には、実行する又は使用するのが比較的迅速かつ単純であり、子供への使用に適する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度が、種々の病態の指標として使用され得るということが知られている。例えば、吐出されたNOの濃度は、気道炎症に関する非侵襲性のマーカーである。気道の炎症は、通常、喘息を有する人に存在し、高濃度の吐出されたNOをモニタリングすることは、喘息を特定するときに役立つ検査内で使用され得る。さらに、吐出されたNOの測定は、抗炎症性の喘息の管理における、吸入されたコルチコステロイドの効果をモニタするために使用され得る。
【0003】
吐出されたNOを測定する標準化された方法は、少なくとも5cmHOの超過気圧で、少なくとも10秒(又は子供では6秒)間、50ml/sの固定された呼気流量での単一の呼気検査を必要とする。American Thoracic Society及びEuropean Respirator Societyによる、標準化された方法に関する勧告(Recommendations)は、“ATS/ERS Recommendations for Standardized Procedures for the Online and Offline Measurement of Exhaled Lower Respiratory Nitric Oxide and Nasal Nitric Oxide, 2005”American Journal of Respiratory and Critical Medicine Vol. 171, pp912−930 2005の論文内に設定される。
【0004】
一定の流量での呼気は、大人やより低年齢の小児にとって、依然として困難である又は不可能である。結果として、U.S.FDAは、吐出NOの測定は、訓練された医療従事者による指導を必要とし、幼児又は7歳未満の子供に使用することができないと、言及している(FDA 510(k)summary NIOX MINO, Aerocrine AB)。
【0005】
安静呼吸(tidal breathing)、息止め及び複数の固定したフローでの呼気(multiple fixed flow exhalations)といった、別の呼吸手順が提案されている。特許出願US2007/0282214は、一連の、1回呼吸の呼気を伴う方法を述べ、各々の呼気は、一定の流量で維持されるが、異なる流量が、異なる呼気に関して使用される。したがって、この方法では、対象者は、一連の、種々の一定の流量を維持する必要があり、結果として検査の実行の複雑性を増大させる。これらの別の工程の更なる困難は、成果が、現在の標準化された方法と容易に比較することができないということである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、上述した課題の少なくともいくつかを軽減する、吐出されたNOレベルを測定する方法を供することが、本発明の目的である。
【0007】
したがって、本発明によると:
安静呼吸過程(tidal breath manoeuvre)の間に得られた、呼気中の一酸化窒素のレベル及びそれに対応する呼気流量の複数の測定を行う、測定段階;
前記測定を、吐出された一酸化窒素の流量依存性を説明するモデルに適用する、適用段階;及び
固定の流量に対応する吐出された一酸化窒素の値を導くよう、前記モデルを使用する、使用段階;
を含む、吐出された一酸化窒素測定する方法が提供される。
【0008】
この方法は、安静呼吸過程の間に得られた測定を使用する。安静呼吸は、よりずっと素直で、自然な呼吸プロセスであり、したがって、固定のフローでの1回呼吸の呼気を使用する検査又はある時間止められた呼吸を必要とする検査よりも、対象者が実行するのがはるかに単純である。したがって、安静呼吸過程を使用する吐出されたNOの測定を、指導なしで、高い確実性で、3歳を超えた子供と協力して、対象者自身によって実行することができる。安静呼吸は、通常、大人で1分あたり4−20息の呼吸、子供で1分あたり20−40息の呼吸、大人で1息あたり300−1000mlの吐出量(exhaled volumes)、子供で100−500mlを伴う。
【0009】
吐出されたNOに関する安静呼吸の測定は、標準化された検査に対して複数の重大な相違点を有する。標準化された、吐出されたNOの測定の条件、即ち、50ml/sの流量での1回呼吸過程において、吐出されたNOは、大きく流量依存性である。結果として、標準化された検査における流量は、正確に制御される必要があり、ガイドラインでは、流量は、+/− 10%以内に制御される必要がある。安静呼吸測定において、流量に関するそのような特別な制御は必要とされず、それ故、検査を実行するのがより容易である。
【0010】
安静呼吸過程の間の呼気フローは、一般的により高く、1分あたり4−10及び20−40息の呼吸速度(各々、大人及び子供に関して)を仮定すると、通常、100ml/sから1000ml/sまでの範囲である。NO濃度は、これらのより高い流量において、より低くなり、吐出されたNOのモニタリングシステムの、より高い感度を必要とする。さらに、デバイスは、呼気の間の、吐出されたNO呼吸のプロファイルを得るために、十分に高い時間分解能で機能しなければならない。
【0011】
本発明のこの様態の方法は、安静呼吸の間に得られた測定を使用し、前記測定を肺内のNO産生を述べる正確なモデルへと適用する。前記測定の各々は、呼気内の検出されたNOのレベル、即ち、検出されたNOの濃度若しくは量及びNO測定がなされた時点での若しくはその時点頃での、呼気の流量、の測定から成る。これらの測定は、固定の流量に対応する吐出されたNOの値を導くための、吐出された一酸化窒素の流量依存性を述べるモデル内で使用される。言い換えると、安静呼吸測定は、固定の流量で予想されるレベルに対応する、吐出されたNOレベルへと変換される。
【0012】
結果として、導かれた、吐出NOの値は、およそ50ml/sの流速、例えば、45−55ml/sの範囲内での流速に対応する。前で説明されたように、50ml/sの固定された流量は、American Thoracic Society(ATS)及びEuropean Respirator Society(ERS)による、現在推奨され、広く受け入れられている基準である。したがって、50ml/sの固定の流速に対応している吐出NOのレベルは、現在、喘息おける気道の炎症を評価するときの基準として使用される。本発明のこの様態の方法は、したがって、ATS及びERSによって推奨された、標準化された手順を使用して得られた測定と、直接比較可能である、吐出NOに関する値を供する。しかしながら、その値は、安静呼吸過程を使用して取得される測定を使用して得られる。
【0013】
肺中における、NO産生及び拡散の種々異なるモデルが知られており、本発明のこの様態の方法中において、吐出NOの流量依存性を述べるモデルとして使用され得る。これらのモデル内の重要な要素は:i)しばしば、単純化された区画形態での、肺系統の幾何学情報(geometry)の説明、ii)NO産生及びiii)NO拡散、である。例えば、NO取引(excahge)の動力学の、2区画(two−compartment)のモデルは、剛性のある気道の区画及び柔軟な肺胞の区画によって、肺を表現する−例えば、Tsoukias et al. “A two−compartment model of pulmonary nitric oxide exchange dynamics” J. Appl. Physiol, Vol. 85, pp 653−999, 1998参照。3区画のモデルは、”Characterizing airway and alveolar nitric oxide exchange during tidal breathing using a three−compartment model”, P. Condorelli et al., J. Appl. Physiol. Vol 96, pp 1832−1842, 2004内で述べられる。別のモデルは、気道のトランペット形状を考慮し、軸方向拡散が、支配的なNO拡散機構であると仮定する、軸方向拡散を有するトランペット型の(trumpet)モデルである−例えば、US2007/0282214又はP.Condorelli et al., J. Appl. Physiol. Vol 102, pp 417−425, 2007参照。軸方向拡散を有するトランペット型のモデルは、は意中の流速依存性NO産生の優れた表現を供することができるが、2及び3区画モデルよりも、数学的により複雑であり、おおよその分析的解法又は数値解法の使用を必要とする。前述の全てのモデルは、3次元非対称の気道構造が、変化している直径を有する、軸方向に対称なチューブを通るフローにマッピングされる、偏微分移流拡散方程式によって、気道システム内の種々のガスの発生及び輸送を説明する、より一般的なモデルに対して、近似値(approximations)を形成する。現在、軸方向拡散を含むモデルが好ましいが、如何なる適切なモデルを使用した方法が、適用されても良い。
【0014】
吐出NOの流量依存性を述べるモデルは、通常、種々の流量依存性であるパラメータに基づく。例えば、2区画のモデルは、3つの流量依存性であるパラメータ、定常状態の肺胞内濃度、気管壁の拡散容量及び気管壁の濃度(或いは、気管壁の濃度のパラメータの代わりに、NOについての、気管壁の最大流束を使用することができる)を有する。定常状態の肺胞内濃度及び気管壁の濃度は、如何なる気道炎症の深刻度で変わるであろう一方で、気管壁の拡散容量は、気管壁とガス流との間のNOの移動に関連する、ガスの拡散パラメータであり、健康な人と喘息の人に関して、わずかだけ異なる。軸方向拡散を有するトランペット型のモデルに対する、コンドレッリ(Condorelli)の近似は、3つのフロー依存性パラメータを有し、そのうち2つは、肺の炎症の深刻度で変わる、即ち、定常状態の肺胞内の濃度及びNOについての、気管壁の最大流束であり、1つは、軸方向のガス拡散を述べる。2区画のモデル及び軸方向拡散が支配的であるトランペット型のモデルから、炎症の深刻度と関係がある流量依存性のパラメータは、同様の名称を有するが、それらの実際の値は、モデル依存性であり、値を、ある流量範囲内に、ある単純な方法でただ変換することができる。
【0015】
方法は、炎症の深刻度で変わるモデルの少なくとも1つの流量依存性のパラメータを決定するために、測定(即ち、呼気中の一酸化窒素のレベル及びそれに対応する呼気流量の測定)を使用することを伴う。モデルの適切な選択及び関連する流量依存性のパラメータを有して、たった1つの前述のパラメータによって、安静呼吸測定の、固定されたフローに対応する吐出NOレベルへの、合理的な転換が可能になり、したがって、方法は、前記測定から、1つだけの流量依存性のパラメータを決定することを含み得る。後でより詳細に述べられるように、たった1つの流量依存性のパラメータを決定するために必要であるモデルの使用は、強制流量制限又は小さい一定流量制限のない、安静呼吸過程内で得られた測定が、その1つのパラメータを決定するために使用され得るということを意味する。
【0016】
モデルは、便宜上、軸方向拡散を包含するモデルであっても良い。なぜなら、炎症の深刻度は、主に、気管壁の最大流束のパラメータに関係し、定常状態の肺胞内濃度は、軸方向拡散を軽視するモデルと比して、小さい。したがって、軸方向拡散を包含するモデルにおいて、定常状態の肺胞内濃度のパラメータは、軽視される又はある一定値に設定される、のいずれであっても良い。したがって、方法は、定常状態の肺胞内NO濃度に関して、定数である又は寄与がないモデルを使用することを含む。
【0017】
方法は、ガス拡散に関連するモデルパラメータの少なくとも1つ及び/又は炎症に関連する少なくとも1つの他のパラメータを、一定値に設定することを伴っても良い。パラメータの少なくとも1つは、母集団の平均値、即ち、その母集団に関して、予め決定された平均値、に設定されても良い。複数のパラメータに関して、種々の母集団の平均値が、性別、年齢などに基づいて存在し得、対象者に関する適切な値を選択することができる。これらのパラメータを母集団平均に設定することは、明らかに、ある不正確さをもたらすが、発明者らは、固定された流量での、吐出NOのレベルの十分に正確な値を、依然として得ることができるということを、発見した。追加的に又は代案として、流量依存性のパラメータの少なくとも1つは、特定の被験者に関して予め得られた又は見積もられた、個人に関する値に設定されても良い。方法は、特定の被験者に関して、固定されたフローでの(fixed−flow)NO値における、毎日の又はそれより長い期間変動をモニタするよう使用されても良い。1つ以上の流量依存性のパラメータに関する値を、対象者に関して決定することができ、あらゆる連続計測で使用することができる。
【0018】
モデルは、したがって、吐出NOのレベル及びそれに対応する流量の測定から決定される、炎症で変化する、1つ以上の流量依存性のパラメータを包含する。残りのパラメータは、定数として、対象者に関して関係のある若しくは予め見積もられた母集団平均として、のいずれかに設定され、対象者に関する決定値が使用される。したがって、一度、関連する、流量依存性のパラメータが決定されると、モデルを、固定された流量、特に、50ml/sの固定された流量、に対応する、吐出NOに関する値を供するよう使用することができる。結果として、モデルは、分析的解法を有する。
【0019】
一実施形態において、モデル中での、吐出一酸化窒素Cの流量依存性は、分析的な表現に基づき、次のように与えられる。
【0020】
【数1】

式中、
【0021】
【数2】

は、呼気の流量を意味し、Dawは気管壁の拡散係数を意味し、Dawは一酸化窒素に関する軸方向拡散定数を意味する。Calvは、定常状態の肺胞内濃度に関連する、流量依存性の寄与(contribution)である。C,C,C及びCは、気道樹内の一酸化窒素産生、伝達及び拡散を述べる、微分方程式の数値解に対する適合度(fits)から導かれる、正定数である。あるモデルにおいて、Cは、おおよそ1の値を有し得、Cは、0.4の値を有し得、Cは、おおよそ2200の値を有し得、Cは、おおよそ0.25の値を有し得る。
【0022】
は、対象者に対して固有であり、吐出NOのレベル及び流量の測定から決定される、流量依存性のパラメータである。方法は、したがって、測定に基づいてJの値を決定すること及びその後、具体的な流量
【0023】
【数3】

、例えば、50ml/sで、吐出一酸化窒素Cに関する値を見つけるために、この分析的表現を使用することを伴う。
【0024】
便宜上、安静呼吸過程は、検査中、いかなる実質的な流量制限なしで、実行される。安静呼吸過程は、例えば、測定装置に固有の如何なる流量制限以外の、強制された流量制限なしで、実行され得る。あるいは、方法は、小さい一定の流量制限での得られた測定を含んでも良い(comprise obtained measurements)。しかしながら、ある実施形態において、方法は、前記測定の少なくとも1つが、少なくとも1つの他の測定に対して、異なる流量制限の条件下で得られるよう、呼気に適用された流量制限を変化させることを伴って、安静呼吸過程の間に得られた複数の測定を使用しても良い。
【0025】
安静呼吸過程の間の、測定しているNOのレベルに伴う、NOの低減されたレベルと、比較的短い測定時間の組み合わせは、測定システムからのノイズが、現在利用可能である最良の検出器として考えても、かなりになり得る。多くの数の呼気から測定することは、正確性を改善するが、標準化された検査よりも、かなり長い、測定時間を伴う。
【0026】
本発明の方法の一実施形態は、呼気中のNOのレベル、即ち、検出されたNOの量又は濃度、が、少なくとも2つの異なる流量制限条件に関して測定されるよう、流量制限の変化が、呼気フェーズ(exhalation phase)に適用される、安静呼吸過程の間に取得されたデータを使用する。これは、モデルから導か出された、結果である固定された流動値の正確性を改善することができ、適切なモデルの1つより多い流量依存性のパラメータの決定に役に立ち得る。
【0027】
本発明の方法は、一定の流量の呼気を達しすることを、必要としない又は求めず、測定が安静呼吸過程の間になされるので、流量は、各々の呼気の間中、変化しそうである、ということが、言及されるべきである。しかしながら、流量制限が変化することは、呼気の間、流量への結果として起こる影響を有するであろう。即ち、もし、同じ対象者から、2回の安静呼吸の呼気が、異なる流量制限で起こり、仮に、第1の呼気が、第2の呼気に関して適用されるよりも、適用されるより多くの流量制限を有するとしたら、両方の呼気は、流量域内で変動を有するであろうが、第1の呼気の間の平均の流量は、第2の呼気の間のそれよりも、低いであろう。
【0028】
したがって、ある安静呼吸過程内の呼気に適用された流量制限を変化させることは、呼気の間の、通常の流量変動に終わるであろう。上述されたように、NOレベルの検出は、流量に依存し、一方で、流量の変動を強制することは、測定された吐出NOレベルにおける、結果として生じる変動に終わるであろう。
【0029】
流量のこの誘発された変動及び検出されたNOレベルは、モデルの流量依存性のパラメータを決定するときに、役に立ち得る。しかし一方、通常の安静呼吸は、流量、したがって検出されるNOレベル、の変動を伴い、強制された流量制限は、通常、測定されているNOレベル及び流量のより広い範囲をもたらす、流量変調に繋がる。このより広い範囲の検出されたNOレベルは、モデリング(modelling)、故に、固定された流量に対応する吐出NOレベルについての、導かれた値、の正確性の改善に役に立ち得る。
【0030】
流量依存性のモデルを、異なる流量で取得された複数の測定に適用することによって、安静呼吸に伴われたより高い流量により、各々の測定に関して、ノイズ比に対して、ずっと低い信号にも関わらず、標準化された検査の正確性と同じくらいの正確性を達成することができる。
【0031】
上述されたように、通常の安静呼吸の間、流量は、呼気の間変化するであろうということが、理解されるであろう。したがって、流量制限の如何なる変動なしで、1回以上の安静呼吸の呼気の間になされた複数の測定は、通常、あるモデルで使用するには十分となり得る、得られている種々の流量でのNO値の範囲に終わるであろう。しかしながら、呼気の流量は、安静呼吸過程を実行している個々の間で、比較的広く変化する一方で、個々の流量域は、たいていの人々に関して比較的制限されるということがわかっている。可変の流量制限を適用することにより、個々に関する流量域は広げられ、モデリングで使用することができる追加的なデータが取得される。
【0032】
方法は、データを取得する、即ち、安静呼吸過程を実行するための被験者を得、前記過程の間、複数の測定を行う、段階を含んでも良い。吐出NOの従来の測定において標準であるように、安静呼吸過程の間、フィルタが、吸気からのNOを除去するために、便宜上使用される。
【0033】
流量制限における変動が適用されようが適用されまいが、比較的短い安静呼吸過程が実行され得る。便宜上、NOレベルが測定される、安静呼吸過程は、1分又はそれより短い持続時間を有する。即ち、全検査の持続時間は1分又はそれより短い。もし、流量制限における変動が課されるなら、合理的な量のデータを、各々の流量制限条件で取得できるように、課される。
【0034】
方法は、安静呼吸を伴うので、呼気中のNOレベルの各々の測定は、安静呼吸過程の比較的一定の呼気フロー部分に適用されるように、比較的短い期間で取得されることが好ましい。したがって、方法は、安静呼吸の間、NOパターンを測定するのに十分な時間分解能を有するNO検出器、例えば、短いサンプリング時間を有する、サンプリング型NO検出器、を使用することを伴っても良い。例えば、検出器は、吐出NO分析計の分野で良く知られているような、化学発光分析計とあることができる。本発明のこの様態の方法は、したがって、各々の呼気の間、複数の測定を行うことを伴っても良く、異なる流量制限の条件の各々で、複数の測定を行うことを伴っても良い。
【0035】
流量の特定の値を必要としないと仮定すると、本発明の方法を、したがって、対象者に供されている流量に関する、如何なるフィードバック無しで実行することができる。対象者は、単純に、測定装置を介して、できるだけ普通に、呼吸する。これにより、本発明の方法は、子供のための使用に特に適切になり、検査を、検査を管理している人に関して、専門家が訓練することを必要とせず、実行することができる、ということを意味する。
【0036】
安静呼吸過程は、便宜上、呼気に適用された、比較的小さい流量制限を有して、即ち、呼気に対して実質的な阻害なく、実行される。これは、かさねて、子供を含む対象者の大多数によって、容易に達成することができる、自然な呼吸過程をもたらす。安静呼吸過程は、したがって、5cmHO又はそれより少ない超過気圧及び便宜上2cmHO又はそれより少ない超過気圧を有する呼気の間取得された、少なくとも(複数の)測定を含んでも良い。2cmHO又はそれより少ない超過気圧は、大抵の対象者にとって、ほとんど目立たず、したがって、通常の安静呼吸に干渉しないであろう。方法は、如何なる特定の流量制限を必要としないが、細菌ろ過器/ウイルスろ過器を有するマウスピース又はマスク及び例えばブローチューブ(blow tube)といった、NOレベル及び流量を測定するための装置の使用は、ある小さな流量制限、故に、ある小さい超過気圧、に、本質的に繋がり得る。
【0037】
流量制限における変動が課されるとき、流量制限の条件の少なくとも1つは、2cmHO又はそれより少ない超過気圧に繋がる、流量制限を伴っても良い。好ましくは、各々の流量制限条件は、5cmHOより小さい又は好ましくは2cmHO若しくはそれより小さい、超過気圧を引き起こす。流量制限が呼気経路に適用されるという、このことは、5cmHOより小さい又は好ましくは2cmHO若しくはそれより小さい、超過気圧を引き起こすように、最大の流量制限が、十分に低くなければならないということを意味する。
【0038】
安静呼吸過程の少なくとも一部に関して、比較的低い超過気圧を有することは、多くの対象者に関して、唇弁(velum)が、呼気の間、閉じられなくても良いということを意味する。これは、流量が低いときに、呼気の始め及び呼気の終わりでの、鼻腔からの空気による汚染の可能性に繋がる。したがって、好ましくは、呼気の開始又は呼気の終了の間に取得された如何なる測定は、後の分析で使用されない。方法は、呼気フェーズの中間の間の、NOレベルの測定を取得することだけを伴っても良いが、呼気の間中測定を取得し、その後、呼気の始め及び/又は終わりに取得された測定を軽視することが、より単純かもしれない。測定はまた、呼吸過程が、咳又は息が詰まる動作といった、如何なる理由に関して妨害されるとき、軽視されても良い。そのような妨害された呼気は、対象者又は検査を管理している人が、気づき得る。残っている測定は、有効な測定(valid measurements)として見なすことができ、有効な測定が取得されている期間は、全有効分析時間である。
【0039】
安静呼吸過程の間、流量制限が課されるとき、流量変調を保証するために、流量制限における変動の大きさは、測定されたNOレベルにおける実質的な変動を与えるよう、手配されても良い。実質的な変動により、NO検出誤差よりも実質的に大きく、測定の数又は全有効分析時間を考慮に入れて、上述された、一定の流量での標準化された検査である、単一の呼吸の正確性に対して少なくとも比較可能である、正確性を与えるための、変動が意味される。ここで使用されるように、全有効分析時間なる用語は、後の分析で使用することができる測定が得られる、安静呼吸過程の間、各々の期間の全体の時間を参照する。したがって、全有効分析時間は、使用可能なデータが得られる呼気の間の、各々の期間の合計である。一定の速度のサンプリング時間を有するNO検出器に関して、全有効分析時間は、得られた測定の数を効率的な目安となる。
【0040】
ある実施形態において、流量制限における、変動の大きさは、全有効分析時間の平方根によって分類されたNO検出誤差(1σ)よりも実質的により大きい、例えば、少なくとも25倍より大きい、測定されたNOレベルにおける、変動を引き起こすのに十分であっても良い。
【0041】
流量変動は、対象者によって自ら課されても良い。方法は、安静呼吸に関連し、流量を、流量の相対的な変化を達成するが、一定の、特定の値に維持することへの懸念がないので、対象者は、呼気の相対速度における変化を、容易に課すことができる。例えば、対象者は、1回以上の呼気の間、普通に呼吸することができ、1回以上の他の呼気の間、流量において、自己強制で低減して(self imposed reduction)呼吸することもできる。そのような実施形態において、方法は、流量を測定し、現在の流量に関して、フィードバックを対象者に供する段階を含んでも良い。表示(indication)は、対象者に、どのように流量を変更するか、即ち、どれくらい多くの自己強制の流量変動を適用するか、に関するフィードバックを供しても良い。表示は、流量を増加させる又は減少させるための表示(indication)を含むことができる又は交差していない(crossed)、より高い及び/又はより低い閾値に関連して、現在の流量を示すことができる。指示は、現在の呼気の種々の流量又は流量域を達成している対象者を目的として、以前の呼気の実際の又は平均の流量又は流量域を示すことができる。表示は、可視式若しくは可聴式又はその両方であることができる。
【0042】
そのような表示は、一定の流量の吐出NO検出器で現在使用されるインジケータに基づいても良い。しかしながら、本発明の方法は、対象者が特定の、一定の流量を維持する必要がないという点で、従来の方法とは異なるということが理解されるであろう。
【0043】
しかしながら、好ましくは、流量制限を変更する段階は、測定装置の呼気経路の流量制限を変更することを含む。
【0044】
流量制限についての変動を課すことは、流量制限が、各々の測定の間、呼気経路内で課されることを、特別必要でないということが、前述から理解されるであろう。したがって、方法は、流量制限が適用されていない、少なくとも1つの測定を含むことを伴っても良い。即ち、少なくとも1つの測定は、流量制限についてのある条件で得られ、その条件は、適用されていない制限である。もちろん、分析のために呼気を収集する、マスク/マウスピース及びブローチューブといった装置の使用は、いくらかのわずかな程度の流量制限を供するかもしれない。しかしながら、超過気圧の程度は、小さく、安静呼吸に対して、妨害するものではないであろう。したがって、測定装置の呼気経路における、流量制限を変化させる段階は、測定装置の呼気経路への又は呼気経路からの、流量制限を導入する段階又は除去する段階を含んでも良い。これは、流量制限なしを適用するように変えることができる、呼気経路内に配置された可変の流量制限器によって達成され得る又は別の方法では、例えば、固定された流量制限を有しても良い、流量制限要素のスイッチを、呼気経路へと若しくは呼気経路から外へと、切替えることによって達成することができる。
【0045】
当業者は、測定装置の呼気経路の流量制限を変える種々の方法を十分承知しているであろう。例えば、バルブを開くこと及び閉じることによって、種々のレベルの流量制限を提供する種々の呼気経路を選択することができる。可変の流量制限、即ち、流量制限を変えることができる装置を、呼気経路内で使用することができる。要求された変動を供するために、一定の流量制限を、呼気経路へと導入する若しくは呼気経路から取り除くことができる。
【0046】
装置に依存して、流量制限は、例えば、バルブが開かれる又は閉じられる、のいずれかで、個別の量の流量制限の間で変更されても良い若しくは連続的に可変であっても良い。
【0047】
流量制限における変動は、手動で又は自動で引き起こされても良い。種々の流量制限を供するために、呼気経路内に流量制限が変えられる場合には、流量制限を引き起こすことは、制御装置によって自動で、又は、検査下にある対象者によって若しくは検査を管理している人によって手動で、のいずれかで、変動を適用することを含む。流量制限が自分で課される実施形態において、変動を引き起こすことは、流量の変化が必要とされる対象者に指示することを含む。この指示は、検査を管理している人が、与える若しくは変更することができる、又は、この指示を自動で供することができる。
【0048】
方法は、ある期間の後、流量制限における変動が適用されるように準備されても良い。例えば、検査をある1つの流量制限条件で開始して、あるセット時間、例えばおよそ20秒の後、流量制限は、第2の流量制限条件を供することができる。しかしながら、便宜上、流量制限における変動は、呼気の終わり又は呼気の間で適用される。言い換えると、1つ以上の呼気を、特定の流量制限で実行することができ、呼気フェーズの終わりで又は吸入フェーズの間、その後の1つ以上の呼気が、異なる流量制限で起こるように変えられた流量制限で実行することができる。これは、安静呼吸過程の適切な部分の間、手動の変動を、呼気経路の制限に適用して、被験者又は検査を管理している人によって達成され得る。同様に、検査を管理している人は、適切な時点で、自己強制の流量制限に関する指示を変更することができる。あるいは、流量制限は、呼気の間に、自動的に適用されても良い。方法は、したがって、例えば、呼気の終わりに流量における迅速な降下又は吸入の開始を示すゼロ交差を検出することにより、呼気の間の期間を検出することを伴っても良い。
【0049】
したがって、前述から、本発明の好ましい実施形態は、安静呼吸過程の複数の呼気のNOレベルを測定することを伴うということが、理解されるであろう。
【0050】
方法は、2つ以上の流量制限条件の間で、流量制限を繰り返し変えることを伴っても良い。例えば、第1の流量制限条件は、1つ以上の呼気に関して課され、第2の流量制限が、その後の1つ以上の呼気に関して、第1の流量制限条件に戻る前に、課される。方法はまた、3つ以上の異なる流量制限条件を伴っても良い。流量制限を、所定のパターン又は順番で、各々の流量制限の条件の間で、変えても良い。例えば、流量制限を、その後の呼気との間で、第1の流量制限条件と第2の流量制限との間で、変えることができる。もし一方流量制限条件が、わずかな流量制限で、他方が、より高い流量制限であるなら、このアレンジは、自然な呼吸リズムを維持するために、わずかな制限を有する呼気が組み入れられている、増加した流量制限を有する呼気をもたらすであろう。別の実施形態において、流量制限は、呼吸についての検出されたパターンに基づいて、種々の流量制限条件の間で変えられ、したがって、現在の呼吸に適合するよう修正される。呼気に適用された流量制限は、少なくとも一部において、1つ以上の以前の呼気の平均流量の大きさに基づいても良い。
【0051】
追加的に又は代案として、流量制限における少なくとも1つの変動は、単一の呼気の間、異なる流量制限の条件下で、2つ以上の測定が取得されるように、単一の呼気の間に適用されても良い。流量制限における、そのような変動は、流量制限における、1つ以上の離散的な変化を伴っても良い又は時間とともに流量制限における連続的な変動を伴っても良い。
【0052】
使用において、異なる対象者で、同じ流量制限を、各々の対象者に適用することができる。したがって、比較的単純な装置を、各々の対象者に関して、流量制限における、同じ変動を適用するように、又は、自己強制の流量制限の量を指示するように、使用することができる。しかしながら、分析のための適切な範囲を保証するために、平均の流量及び/又は個人の呼吸パターンにより、流量制限条件の少なくとも1つ及び流量制限における変動を変更することが、望ましいかもしれない。
【0053】
本発明のこの様態の方法は、したがって、検査下にある対象者が、如何なる困難な又は複雑な呼吸過程を実行する必要がない、吐出NOを決定するための、単純で容易な方法を供する。対象者は、安静呼吸過程で、単純に、普通に呼吸しても良い。述べられたように、このことは、本発明を、標準化された検査を実行することができないかもしれない子供を含む、広い範囲の対象者に使用することができるということを意味する。ある実施形態において、流量制限の使用を介して、流量変調を課すことは、検出されたNOレベル及び流量の範囲を増大させるために使用することができ、より正確に、モデルパラメータを決定するときに、役に立ち得る。
【0054】
本発明は、呼気中のNOのレベルを決定するための方法に関連し、したがって、特定の気体成分を測定するための、技術的な方法に関連するということが、言及されるであろう。方法は、専門家でない、医学的に訓練されていない操作者によって管理されても良い。方法によって決定される、吐出NOレベルに関する情報は、その後、喘息といった病気を同定するための、検査又は検査の一部として、使用されても良く、したがって、方法は、医学的に訓練された施術者に役に立ち得る情報を供する。
【0055】
複数の測定を行い、固定された流量に対応する吐出NOの値を導くための、適切な肺のモデルを使用する方法は、適切にプログラム化したコンピュータによって実行されても良く、本発明の他の様態において、適切なコンピュータ又はコンピュータシステムで動かされ、データ入力として複数の測定が与えられるとき、上述された方法を実行するコンピュータプログラムが供される。コンピュータプログラムは、コンピュータ可読の記憶媒体上に記憶されても良い。
【0056】
本発明はまた、適切な装置に関連し、したがって、本発明の他の様態において、
呼気経路;
前記呼気経路と流体連結し、呼気中の一酸化窒素のレベルの複数の測定を行うよう配置された、一酸化窒素検出器;
呼気流量の複数の測定を行うために、前記呼気経路と流体連結した、流量検出器;及び
安静呼吸過程中に得られた、一酸化窒素についての前記複数の測定と、呼気流量についての前記複数の測定と、を行うように、かつ、固定された流量に対応する吐出一酸化窒素の値を導くように、適合された処理装置;
を含む、吐出一酸化窒素のレベルを決定するための装置が供される。
【0057】
処理装置は、固定された流量での、吐出一酸化窒素の値を導くために、吐出一酸化窒素の流量依存性を述べるモデルを、安定呼吸過程で得られた測定に適用する。処理装置は、したがって、上述された方法の如何なる変化又は実施形態を含む、本発明の第1の様態に関して、上述されたような方法を実行するよう配置されても良い。具体的には、吐出一酸化窒素の導かれた値は、固定された流量での又はおよそ50ml/sに対応し得、値は、標準化された単一の呼吸過程を使用して得られた値と、直接比較可能である。
【0058】
処理装置は、上述の方程式1として与えられた分析的表現に基づいて、吐出NOを決定するよう配置されても良い。
【0059】
装置は、呼気経路上で操作可能である、可変流量制限器を含んでも良い。可変流量制限器を、上述されたような、流量制限における変動を適用するために使用することができる。変動は手動で課されても良く、自動で課されても良い。装置は、したがって、流量制限制御装置を含んでも良く、制御装置は、流量制限を変えるよう、可変流量制限器を制御するよう適合される。処理装置は、流量制限器制御装置の機能を果たすように適合されても良い。ある実施形態において、制御装置は、使用時において、呼気の終わりに又は呼気の間に、流量制限における、少なくとも1つの変動を適用するように、流量検出器に反応する。
【0060】
追加的に又は代案として、装置は、呼気流量に関して、対象者にフィードバックを供するための、流量検出器に反応する、フィードバックデバイスを含んでも良い。フィードバックデバイスは、現在の流量を表示する、少なくとも1つの可視ディスプレイ及び/又は現在の流量を音声で示す、少なくとも1つのオーディオ装置を含んでも良い。
【0061】
装置は、1人以上の対象者に関して、個人データを保持するためのメモリを含んでも良い。個人データは、吐出一酸化窒素の履歴データ即ち、1つ以上の以前の検査で記録された測定及び/又はそのような以前の検査から導かれた一酸化窒素の値、を含んでも良い。個人データは、特定の被験者に関して導かれている又は推定されている、1つ以上のモデルパラメータを含んでも良い。
【0062】
本発明のこれら及び他の様態は、この後に述べられる実施形態を参照して、明らかになり、かつ、更に述べられるであろう。
【0063】
本発明はこれより、以下の図面を参照して、ほんの例として、述べられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1a】図1aは、本発明の方法の実施形態に係る、吐出NOを決定するための方法を説明する。
【図1b】図1bは、本発明の方法の実施形態に係る、吐出NOを決定するための方法を説明する。
【図2a】図2aは、本発明に係る、吐出NOを決定するための方法の実施形態を更に説明する。
【図2b】図2bは、本発明に係る、吐出NOを決定するための方法の実施形態を更に説明する。
【図3】図3は、安静呼吸過程の2つの呼気に関して、流量、適用された流量制限及び測定されたNOレベルを示す。
【図4】図4は、流量の逆数に対する、測定された吐出NO濃度のプロットを示す。
【図5】図5は、安静呼吸過程から導かれた50ml/sでのNO値の、標準化された手順で得られた50ml/sでの値との比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1aは、本発明の第1の実施形態を説明する。検査下にある対象者は、マウスピース2を介して吸入し、吐出する。マウスピースは、現在のNO測定装置で使用されるような、標準的なマウスピースであっても良い。吸入の間、マウスピース内のバルブによって、吸入経路4に沿ったエアフローだけが可能であり、空気は、吸入空気からの一酸化窒素を除去するために、NOフィルタ6を介して吸入される。続いて、対象者は、呼気経路8を介して、息を吐く。呼気経路8は、それと関連する流量制限要素はなく、呼気経路によって供されるわずかな制限より他には、呼気に対する障害がないということが言及されるであろう。
【0066】
現在利用可能である、化学発光法によるNO分析器といった、NO分析器12は、吐出された空気の少なくともいくらかを受け、この呼気の間、NO濃度を測定する。分析器12はまた、高速回答の電気化学NOセンサ又は光音響NOセンサと組み合わされたNO−NO変換器に基づくことができる。後者の場合、フィルタユニット6は、吸入空気からNO及びNOの両方を除去するための、NOフィルタであるべきである。流量センサ14、例えば、呼気経路内のわずかな制限に亘る、圧力低下を測定するための、差圧センサは、また、呼気の間の流量を決定し、後の分析での使用のために、流量を記録する。圧力差を測定することの代わりに、流量センサ14は、制限が流路内で必要とされない場合に、超音波センサに基づくこともできる。流量センサ14はまた、安静呼吸のパターンの分析を改善するために、吸入経路の流量をモニタしても良い。ここで留意すべきは、NO検出器及び流量センサに対する、種々の経路長及び、これらの検出器の操作時の如何なる相対遅延に依存して、測定は、お互い対応するということを確かにするために、相対測定のタイミングに対して補正を適用する必要があるかもしれない。
【0067】
使用において、対象者は、普通に呼吸し、NOレベル及びそれに対応する流量は、1つ異常の呼気に関して、記録される。好ましくは、測定は、分析のための十分なNO及び流量測定を可能にするために、およそ30秒から1分までの測定期間の間取得される。
【0068】
本発明の一実施形態において、対象者は、測定期間の間、単に普通に呼吸し、NOレベル及び流量に関するデータが取得され、分析のために、処理装置15へと供される。処理装置は、データを記憶するための、メモリ17を有して配置されても良い。もし、検査下にある対象者が、予め検査されているなら、メモリは、その対象者についての、いくらかの個人データを記憶し、その対象者に関して適切である、種々のモデルパラメータを記憶していても良い。メモリは、処理装置に統合されても良いし、リムーバブル記憶装置であっても良い。
【0069】
しかしながら、他の実施形態において、検出された流量及びNOレベルの範囲を増大させるために、一般的な流量変調を、測定期間の間に適用する。図1aで示される実施形態において、流量変調を、対象者が、自己強制する。
【0070】
制御ディスプレイ16は、対象者18に対する流量を示し、また、安静呼吸過程の間、どのように流量が変遷するべきかも示す。便宜上、対象者は、1回以上の呼気の間、普通に呼吸し、その後、そのあとの1回以上の呼気の間、全体の流量の減少を自己強制する。インジケータは、低減された流量条件において、突破されないように閾値を、又は、標的平均値を含むことができる。例えば、当業者は、数多くの方法があるといことを理解するであろうが、流量における必要な変動は、対象者に伝達され得る。
【0071】
単純な実施形態において、例えば、正常な流量と、低減された流量の、2つだけの流量条件が必要とされ、全ての流量は、100ml/sを超える流量を有して、呼気の大部分を含んでも良い。(複数の)呼気は、両方の流量制限条件で実行されても良いが、検査の全期間は、1分より少なくなり得る。
【0072】
図1bは、わずかに低減された呼気流量を課すために、又は、流量における変動を供するために、流量制限が使用される別の配置を説明する。装置は、図1aに示される装置と同様であるが、この場合、呼気経路内に含まれた、流量制限器10がある。小さい流量制限は、呼気流量における、わずかな減少、したがって、検出された吐出NOレベルにおける、結果として起こる増大をもたらすであろう。したがって、わずかな流量制限を課すことは、測定精度を増大させるために、又は、安静呼吸過程に関して必要とされる時間を制限するために、使用され得る。制限は、安静呼吸を妨害しないよう、十分に小さく保たれるべきである。流量制限器10は、また、それが課す流量制限の程度を変えることができても良い。それが、流量制限を課さないある構成と、小さい流量制限を課す別の構成といったような方法で、配置されても良い。
【0073】
例えば、可変流量制限器は、対象者若しくは検査を管理している人によって手動で、又は、(図1bで示されていない)制御装置によって自動的に、第1の流量制限、例えば、流量制限なし、に設定されても良い。対象者はその後、普通に呼吸を開始し、ある時間期間の後、可変流量制御器は、適用される流量制限を、例えば、流量制限を増大させるように、変える。流量制限における変動の間の時間の長さは、固定されてもよく、制限が手動で変えられる場合は、対象者又は検査を管理している人が、ある数の呼気の後、流量制限を変えても良い。
【0074】
ここで留意すべきは、この配置において、フィードバックは、現在の流量に関して、対象者に供されない。そのようなフィードバックは、必要とされないので。
【0075】
他の実施形態において、図2a及び図2bに示されるように、流量制限における変動が、対象者の呼吸パターンに対して適合されても良い。図2aは、図1aで示されたものと同様の配置を示すが、ここで、ディスプレイ16は、流量センサ14に応答して、適応制御装置20によって制御される。図2a及び図2bで示された実施形態において留意すべきは、流量センサは、マウスピース2と一体となっているように説明され、これにより、吸入経路及び呼気経路の両方の流量を都合良くモニタできるが、他の配置も可能である。
【0076】
制御装置20は、検出された流量から、対象者の呼吸パターンを決定し、それに基づいた、適切な変動を決定する。これは、対象者が、流量における変動を課すべきであるおいうことを示す最善の時間を決定すること及び/又は低減された流量で、どれくらい多くの呼気が実行されるべきかを決定することを伴っても良い。追加的に又は代案として、閾値の流量又は測定された流量に基づく、標的の平均流量の指示を変えることを伴っても良い。
【0077】
図2bは、測定された流量に基づいて、可変流量制限器10を制御する制御装置20を有するが、図1bに示されたものと同様の配置を示す。この適応流量制御装置は、呼吸パターンに対して、流量制限変化のタイミングの調節を可能にし、対象者の個々の呼気フローに対して、流量域の最適化を許す。測定された吸入フロー及び呼気フローは、制限設定における変化を開始するために使用される。これは、急速なフロー低下又はゼロ交差である、呼気の終わりに、為され得る。
【0078】
本発明の全ての実施形態に関して、呼気に対する如何なる流量制限は、比較的小さくなり得る。上述されたように、測定期間が、全期間に関して、ありのままに、対象者の呼吸と伴う場合、即ち、流量制限における如何なる変動がない場合、例えば、マウスピース及びブローチューブの使用により課される、わずかな流量制限より他の、呼気経路内の流量制限は存在し得ない。ある実施形態に関して、追加的な流量制限が存在しても良いが、好ましくは、自然な呼吸に実質的に干渉しないように、低い流量制限を与える。測定期間の間に流量制限における変動があるときでさえ、1つの流量制限の条件は、流量制限がないことを含んでも良い。
【0079】
このことは、呼気の間、対象者が体験するマウスピースの圧力は、5cmHOより小さくなり得る、より好ましくは、2cmHO(98.067Pa)より小さくなり得るということを意味する。この低いレベルの圧力は、通常の安静呼吸過程に干渉しないので、好ましい。しかしながら、比較的小さい圧力は、対象者の唇弁が、安静呼吸過程の間、通常、開いたままであろうということを意味するであろう。したがって、通常高いNO濃度を有する、鼻腔からの空気による汚染は、フローが低い、吸入から吐出への、及び、吐出から吸入への、推移前後で起こり得る。呼気の中間の部分の間、フローは、実質的に高く、汚染を防ぐ。
【0080】
処理装置15は、したがって、呼気の開始フェーズ及び終了フェーズでの、場合によっては汚染された部分を捨てるために、分析窓を、測定されたNOプロファイルに適用する。さらに、例えば、咳又は息が詰まる動作によって、妨害された呼気は、分析から除外される。全有効分析時間は、妨害された呼気を軽視する分析窓に関する、時間期間の合計である。
【0081】
図3は、流量制限が、呼気経路に課された2つの呼気に関して、呼気流量及びそれに対応するNOレベルを説明する。図は、測定された流量、関連のある適用された流量制限及び吐出NOの測定された濃度を示す。図3はまた、2つの呼気に適用された分析窓も説明する。
【0082】
第1の呼気30の間、呼気の終わりで低減される、一定の流量制限31が適用される。この制限は、呼吸パターンをモニタリングすることや、流量の急速な低下又はゼロ交差を検出することによって、開始されても良い。低減された流量制限で起こる、第2の呼気32は、第1の呼気よりもより高い平均の大きさ(magnitude)を有する、流量を有して見受けられる。両方の呼気において、流量は、呼気の間中、変化する。第1の呼気30に関して、呼気の開始での迅速な増大の後、流量は、おおよそ200ml/sから150ml/sまで変化する。第2の呼気に関して、流量は、おおよそ400ml/sからおおよそ250ml/sまで変化する。したがって、比較的高い流量での測定が得られ、呼気の間、かなりの変動が存在するということが、明らかであろう。
【0083】
検出されたNO濃度への影響が、明らかに見受けられる。線34は、検出器によって取得されたデー^他を示し、測定された濃度は、第1の呼気におけるよりも、第2の呼気において、実質的に低いということが、見受けられる。これは、第2の呼気の、より高い流量によるものである。
【0084】
測定されたNOレベルは、吸入から吐出への推移前後での、気道内の増大した停留時間及び、低い呼気流量域内での、鼻からのNO汚染により、通常、吸入の開始において、より高いということも見受けられる。鼻からのNO汚染は、また、呼気の終わりにも、起こり得る。線36は、測定後のデータの窓が、有効データを識別するために適用され、適合(fit)が適用されているということを示す。これは呼気を識別し、呼気の開始又は終了に関連する如何なるデータを除外し、また、例えば、咳又は嚥下によって中断されている如何なる呼気も除外する。結果である窓38は、各々の呼気に関する分析時間を定義し、各々の分析の合計は、この例では、およそ13秒である、全有効分析時間を与える。
【0085】
2つの呼気は、30秒かそこらの期間で起こる。正常な安静呼吸のリズムを達成するための短い時間を考慮すれば、検査の期間は、容易に、30秒から1分又はそれ以下までのオーダーとなり得る。
【0086】
一度、処理装置が、有効データを確認すると、測定は、肺のモデル内の1つ以上の流量依存性のパラメータを決定するために使用される。
【0087】
種々の肺のモデルを使用することができる。肺中の一酸化窒素産生の2区画モデルが、よく知られ、例えば、Tsoukias et al. in “A two compartment model of pulmonary nitric oxide exchange dynamics”. J Appl Physiol 1998;85:653−666によって述べられる。
【0088】
この2区画モデルは、おおよそ150mlの容積を有する、円筒形状の剛性のある気道の区画と、柔軟な肺胞の区画として、肺を述べる。気道の区画は、気道の拡散能と、気管壁のNOの濃度又は気管壁のNOの最大流束のいずれかと、の、2つのパラメータによって述べられる。肺胞の区画は、NOについての、定常状態の肺胞内濃度である、単一のパラメータによって述べられる。2区画モデルに従う、フロー
【0089】
【数4】

の関数として、吐出NO濃度Cは:
【0090】
【数5】

によって与えられる。
【0091】
吐出NO濃度は、気道の拡散係数Daw及び前記フローに依存する条件(terms)によって重み付けられた、壁での濃度Cと肺胞内濃度Calvとに依存する。分析的表現は、即ち、安静呼吸領域より上から、50ml/sより下までの、全ての関連するフローに関して有効である。
【0092】
限られた流量域及び安静呼吸流量で検出されたNOレベルのノイズ比に対する比較的小さい信号は、標準的な安静呼吸過程は、2区画モデルに関する3つの流量依存性のパラメータC,Calv及びDaw全てを決定するには、十分ではないということを意味する。安静呼吸のデータから50ml/sでのNO値の決定において、C及びCalvは、最も関連のあるパラメータを形成する一方で、Dawに関する正確な値は、あまり重要でない。臨床研究において、気道の拡散能は、炎症の深刻度には直接は関連しないということが観察されている。気道の拡散能は、母集団の平均に基づいて推定され得る。安静呼吸のNO測定装置が、既に診断されている喘息の個人の繰り返し測定のために使用される場合、喘息の人のDawの母集団平均値を使用することができる。代案として、特定の対象者に関する気道の拡散能は、例えば種々の測定から、予め導き出され、処理装置内に入力されても良い又はメモリ17から得られても良い。
【0093】
もし、流量変調が、安静呼吸過程に適用されるなら、安静呼吸の流量における変動によって、2つの炎症に関連のあるパラメータC及びCalvの合理的な推定をなすことができる。図4は、図3で示された呼気の間に取得された、分析窓内の関連のあるNO及びフローのデータ点の散布図と、C及びCalvを導くために、上で与えられた表現及び固定されたDawに基づいた2つのパラメータの適合と、を示す。より高い流量制限が課されている、第1の呼気に対応するデータ点は、集団44として説明される。集団42は、より低い流量制限を有する第2の呼気に関するデータ点を説明する。検出されたNO濃度の全領域は、矢印40によって示され、およそ10ppbのNO濃度における変動に対応する。
【0094】
図は、吐出NO測定領域40は、1σのNO測定誤差46よりも実質的に大きく、本手順は、測定されたNOレベルにおける変動は、全有効分析時間の平方根によって分類された、NO検出誤差(1σ)よりも、好ましくは、少なくとも25倍大きいという、提案された条件に従うということを示す。およそ300ml/sから150ml/sまでの流量変動は、十分、実行が容易な干満の差の範囲内である。
【0095】
データと、推定された又は他のソースから得られた、のいずれかである気道の拡散に関するパラメータから導き出された2つの炎症に関連するパラメータで、モデルに対する分析的解法は、50ml/sの固定された流量又は他の如何なる固定された流量に対応する、吐出NOの値を決定するために、適用され得る。50ml/sの固定された流量に対応する吐出NOレベルは、現在受け入れられているATS/ERS基準に対応するので、最も役に立つ。
【0096】
安静呼吸の吐出NO検査が、特定の対象者に関して定期的に実行されるとき、一連の測定からの肺胞内濃度を、メモリ内に記憶することができる。これらの値は、2つのパラメータ適合において、例えば、移動平均を、これらの以前の肺胞内濃度及び現在の肺胞内濃度に適用することによって、考慮に入れられる。
【0097】
2区画モデルは、流量における十分な変動又は肺胞内濃度の予備知識で得られたデータで満足できる結果を与えるが、軸方向拡散を含むモデルは、NOについての気管壁の最大流束である、1つの炎症パラメータだけに基づいて、安静呼吸から50ml/sに至るまでの流量域内の、流量依存性あるNO産生の、十分に正確な表現を供することができるので、現在好まれている。軸方向拡散を組み込んでいるモデル内の、内在する(intrinsic)定常状態の肺胞内濃度の、ゼロに近い値により、気管壁の最大NO流束(maximum airway wall NO flux)だけの表現が、安静呼吸過程から、50ml/sといった固定された流量に対応しているNO値を決定するための良好な根拠を、供する。軸方向のガス拡散定数は、かなりの程度まで、一般的なガス拡散定数である。炎症が1つの支配的なパラメータによって表現されるモデルの使用は、安静呼吸のデータに対する1つのパラメータの適合が可能であり、流量変調が必要でないという、主要な利点を有する。測定の間の、小さい流量制限又は小さい流量変調は、(わずかに低減された流量による)わずかにより高い一酸化窒素値のサンプリングと、それによる正確性の増大をもたらすであろうから、依然として有利であるかもしれない。
【0098】
例えば、US2007/0282214で述べられるようなトランペット型モデルは、軸方向拡散、NOについての気管壁の最大流束及び定常状態の肺胞内濃度を含むモデルの例である。このモデルは更に、気道の拡散能及び、例えば、気道樹内の軸方向位置に依存する、NOについての気管壁の最大流束を含むように拡張することができる。軸方向拡散を含むモデルに関する、NOについての気管壁の最大流束、定常状態の肺胞内NO濃度及びNO拡散能の値は、例えば軸方向拡散なしの2区画モデル内の、それらの値と直接比較することができないということが言及されるべきである。
【0099】
軸方向拡散を含むトランペット型モデルは、微分方程式、NO産生を述べるソース項(source term)、肺胞及び口の領域に対する境界条件並びにトランペット形状の表現によって定義される。一般解は知られていないが、数値解を、全てのパラメータ値が知られているときに、得ることができる。実験データから1つ以上のパラメータ値を決定することは、近似の分析的解法又は時間がかかり、複雑な反復の数値的手法に基づいて、可能となるだけである。
【0100】
US2007/0282214は、NOについての気管壁の最大流束、定常状態の肺胞内の濃度及び軸方向拡散を含むトランペット型も出るに関して、流量依存性のNO産生の線形近似を開示する。線形近似は、100−250ml/sの流量域で有効である。大抵の安静呼吸過程は、この流量域の中であるが、ある対象者に関しては、安定呼吸は、より高いフローを伴う。また、近似は、50ml/sの流量に関して有効でなく、そのため、この近似を使用する、50ml/sの固定された流量に対応するNO値の決定は、かなりの誤差を有するであろう。
【0101】
トランペット型モデルのパラメータに関する典型的な値に関して、数値解法及び分析的近似を比較して、本発明者らは、次の分析的表現が、25ml/s及びそれより上のフローに関して、フロー
【0102】
【数6】

の関数として、かなり正確に、NO産生Cを述べるということを発見している:
【0103】
【数7】

ここで、Calvは、定常状態の肺胞内濃度を意味し、J’awは、NOについての気管壁の最大流束を意味し、Dawは、NOに関する気管壁の拡散能を意味し、Daxは、軸方向の拡散定数を意味する。およそ50ml/s及びそれより上のフロー、安静呼吸に伴う時間スケールに関して、Daw及び定常状態の肺胞内の値Calvは、ゼロに設定することができる。Daxに関する典型的な値として、0.23cm/sを選ぶことができる(The Properties of Gases and Liquids, RC Reid et al., New York: McGraw−Hill, 1988)。上で与えられた、近似された分析解は、その形態の拡散項(diffusion terms of the form)の(結果(product))を見つけることに基づいている:
【0104】
【数8】

定数C及びCを有し、トランペット形状の気道内の流量依存性のNO産生の優れた表現を供する。分析的近似は、実験データから1つ以上の流量依存性のパラメータの単純かつ迅速な決定及び固定された流量でのNO値の決定を可能にするので、測定データの分析において、非常に有用である。
【0105】
図5は、5人の健康な個体(H)及び3人の喘息患者(A)を含む、8人の対象者からの結果を示す。図において、安静呼吸過程から導かれた50ml/sでの値は、標準的な手順に従って得られた50ml/sでの値と比較される。円及びエラーバーは、NO値と、標準的な固定された流量での呼気過程から得られた、その標準偏差と、を意味する。十字(cross)は、安静呼吸過程から得られた結果を意味する。吐出NO値が、右軸上に表示される対象者8を除き、他の全ての吐出しNO値は、左軸上に表示される。安静呼吸過程は、5回の呼吸サイクルで構成される。空気は、NO除去フィルタを介して吸入され、流量幻聴は、呼気流路内に含まれた。分析は、呼気の間、達した最大体積の0.3から0.8倍までの呼気体積(時間平均流)に対応する、窓内の最後の4回の呼気の間に集められた、NO及びフローに基づいている。第1の呼気は、しばしば、肺の肺胞部内でまだ十分に除去されていない、前に吸入された鼻のNO又は環境大気からのNOによって汚染されるので、捨てられた。分析に関して、ある面で2区画モデル及びある面でトランペット型モデルを含む、モデルが使用された。気道の上部は、気管壁の最大流束及び気道の拡散能によって特徴付けられた、剛性のあるチューブ区画によって述べられる。気道の下部及び肺胞は、気管壁の最大流束及び気道に沿った軸方向拡散に起因する、定常状態の肺胞内の値によって特徴付けられた、第2の区画によって述べられる。
【0106】
【数9】

ここで、fは、定常状態の肺胞内濃度と気管壁の最大濃度との比を意味する。fの値は、軸方向拡散を含む微分方程式の数値解から導くことができる。分析に関して、fに関する0.01の値と、Dawに関する10ml/sが、使用された。気管壁の最大流束J’awは、測定窓の中で、フローに対してNO又はフローデータの逆数に対してNO、の1つのパラメータ適合から容易に得ることができる。
【0107】
モデルによって、全ての対象者に関して、標準化された固定された流量での検査を使用して測定された実際の値と、非常に近い、50ml/sでの吐出NOに関する値が生み出されるということが、見受けられる。このことは、データが安静呼吸過程で取得されるアプローチを、50ml/sの固定された流量に対応している、吐出NOに関する正確な値を決定するために、使用することができるということを示す。これにより、検査の結果は、標準化された方法を使用して得られた結果と直接比較することができ、それにも関わらず、データは、大多数の大人及び低年齢小児に関して適切な自然な呼吸過程で取得することができ、自己管理され得る。
【0108】
軸方向拡散の効果を含む2区画モデルに基づいたアプローチは、十分に受け入れられる結果を与えるけれども、更なる改良が可能であるということが理解されるべきである。例えば、気道形状の、より実際的な表現と、気道の種々の部分における、種々の大きさを有するNOソース項と、を含むことにより。一酸化窒素分析器の時間応答にモデルを包含することにより、測定窓を広げ、低減された数の呼気内の正確な分析を得ることができるであろう。
【0109】
制限変調(restriction modulation)が適用されるとき、単純な2つのレベルでの変動よりもより複雑な形態を取ることができるということが言及されるべきである。2つの異なる制限レベルの代わりに、3又はそれより多くのレベルを使用することができる。呼気の間、連続的な方法で、制限を変化させることも可能である。
【0110】
また、以前の呼気における、呼気フローの(平均の)大きさを、その後の呼気に関する制限を設定するときに、考慮に入れることができる。これにより、種々の対象者に関する種々の呼気フローを考慮に入れることができ、最適な流量域が、分析で利用できるよう保証する。
【0111】
上述され、図面で示されたような例及び実施形態は、単に、本発明を説明するために意図され、本発明は、上述された配置に制限されるように解釈されない。開示された実施形態に対する他の変更は、図面、開示内容及び添付の特許請求の範囲からクレーム化された発明を実行するときに、当業者によって達成され得る。
【0112】
添付の特許請求の範囲における、“含んでいる”及び“含む”なる語は、他の要素又は段階を除外せず、不定冠詞“a”又は“an”は複数を除外しない。説明中の如何なる参照符号は、その範囲を制限するよう解釈されるべきではない。一連の段階をある順序で列挙する方法クレームは、明示的に定められた場合を除き、それらの段階が、異なる順序で実行されることを除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安静呼吸過程で得られた、呼気中の一酸化窒素のレベルと、それに対応する呼気流量と、の複数の測定を行う、測定段階;
前記測定を、吐出された一酸化窒素の流量依存性を述べるモデルに適用する、適用段階;及び
固定された流量に対応する、吐出された一酸化窒素の値を導くために、前記モデルを使用する、使用段階;
を含む、吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項2】
前記固定された流量は、50ml/sの流量に対応する、請求項1に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項3】
前記適用段階は、前記モデルの少なくとも1つの流量依存性のパラメータを決定するために、前記測定を使用することを含む、
請求項1又は2に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項4】
前記方法は、前記測定を使用して、ただ1つの流量依存性のパラメータを決定することを含む、
請求項3に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項5】
吐出された一酸化窒素の流量依存性を述べる前記モデルは、一定値、対象者に関する母集団平均、又は、前記対象者に関する、以前の、個人に対する値、に予め設定されているガス拡散に関連する少なくとも1つの流量依存性のパラメータを含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項6】
吐出された一酸化窒素の流量依存性を述べる前記モデルは、一酸化窒素の軸方向拡散を包含し、
前記モデルは、定常状態の肺胞内NO濃度に関して、定数を包含する又は寄与がない、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項7】
前記モデルにおける、吐出された一酸化窒素Cの流量依存性は、
【数10】

によって与えられた分析的表現に基づき、
【数11】

は、流量を意味し、Dawは、気管壁での拡散係数を意味し、Daxは、一酸化窒素に関する軸方向の拡散定数を意味し、Calvは、流量依存性の寄与を意味し、C,C,C及びCは、正定数を意味し、
は、前記測定から決定される流量依存性のパラメータである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項8】
前記測定は、呼気に適用された流量制限を変えることを含む、安静呼吸過程で得られ、
前記測定の少なくとも1回は、少なくとも1回の別の測定に対して、異なる流量制限の条件下で得られる、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項9】
前記測定は、自らに課した流量変動を有する、安静呼吸過程で得られ、
前記測定の少なくとも1回は、少なくとも1回の別の測定に対して、異なる流量条件下で得られる、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項10】
呼気の開始;呼気の終了;安静呼吸過程の第1の呼気;中断された呼気;又は流量が所定の閾値を下回る場合;の少なくとも1つの間に取得される、一酸化窒素の前記測定を軽視する段階を更に含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素を測定する方法。
【請求項11】
適切なコンピュータ又はコンピュータシステムで動かされるとき、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【請求項12】
呼気経路;
前記呼気経路と流体連結し、呼気中の一酸化窒素のレベルについての、第1の複数の測定を行うよう配置された、一酸化窒素検出器;
前記呼気の流量についての、第2の複数の測定を行うために、前記呼気経路と流体連結する、流量検出器;及び
安静呼吸過程で得られた、一酸化窒素についての、前記第1の複数の測定及び前記呼気の流量についての、前記第2の複数の測定を行うよう、かつ、固定された流量に対応する、吐出された一酸化窒素の値を導き出すよう、適合された、処理装置;
を含む、吐出された一酸化窒素のレベルを決定するための装置。
【請求項13】
導き出された前記吐出された一酸化窒素の値は、50ml/sの固定された流量に対応する、請求項12に記載の吐出された一酸化窒素のレベルを決定するための装置。
【請求項14】
前記装置は、1人以上の対象者に関する個人データを保持するためのメモリを含み、
前記個人データは、検査についての特定の前記対象者に関して導き出されている又は推定されている1つ以上のモデルパラメータを含む、
請求項12又は13に記載の吐出された一酸化窒素のレベルを決定するための装置。
【請求項15】
前記装置は、
【数12】

によって与えられた分析的表現に基づいて、前記吐出された一酸化窒素Cの流量依存性を計算するよう適合された処理装置を含み、
【数13】

は、流量を意味し、Dawは、気管壁での拡散係数を意味し、Daxは、一酸化窒素に関する軸方向の拡散定数を意味し、Calvは、流量依存性の寄与を意味し、C,C,C及びCは、正定数を意味し、
は、前記測定から決定される流量依存性のパラメータである、
請求項12乃至14のいずれか一項に記載の吐出された一酸化窒素のレベルを決定するための装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−500116(P2013−500116A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522300(P2012−522300)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053361
【国際公開番号】WO2011/013046
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】