吐出ヘッド
【課題】静電力を用いて液状物質を吐出するのに適した吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】吐出ヘッド50は、液状物質55Lを吐出するためのノズル52であって、メニスカス20がノズル52の開口端32eより後退した位置に形成されるノズル52を含む。吐出ヘッド50は、さらに、ノズル52の内部の圧力を変動することによりメニスカス20をノズル52の開口端32eに移動させるためのピエゾ素子と、ノズル52の先端51を形成するガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eの外側に設けられた電極端部53eとを含む。メニスカス20がノズル52の開口端32eに移動すると、液状物質55Lが電極端部53eに接し帯電し、静電力により吐出される。
【解決手段】吐出ヘッド50は、液状物質55Lを吐出するためのノズル52であって、メニスカス20がノズル52の開口端32eより後退した位置に形成されるノズル52を含む。吐出ヘッド50は、さらに、ノズル52の内部の圧力を変動することによりメニスカス20をノズル52の開口端32eに移動させるためのピエゾ素子と、ノズル52の先端51を形成するガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eの外側に設けられた電極端部53eとを含む。メニスカス20がノズル52の開口端32eに移動すると、液状物質55Lが電極端部53eに接し帯電し、静電力により吐出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物質を吐出する吐出ヘッドおよび吐出ヘッドを含む装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微小液滴を形成することを目的とした液体吐出装置が開示されている。この装置は、帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置であって、液滴の吐出を受ける受け面を有する基材にその先端部を対向させて配置されると共に当該先端部から液滴を吐出する先端部の内部直径が30μm以下のノズルと、このノズル内に溶液を供給する溶液供給手段と、ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段と、を備え、ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−136651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット記録方式(インクジェット方式)としては、ノズル内の圧力を変動させる方式として、圧電素子の振動によりインク流路を変形させることによりインク液滴を吐出させるピエゾ方式と、インク流路内に発熱体を設け、その発熱体を発熱させて気泡を発生させ、気泡によるインク流路内の圧力変化に応じてインク液滴を吐出させるサーマル方式とが知られている。また、静電力を用いた方式としては、インク流路内のインクを帯電させてインクの静電吸引力によりインク液滴を吐出させる静電吸引方式が知られている。静電吸引方式は、微小液滴をターゲットに形成するのに適している。しかしながら、インクなどの吐出の対象となる液状物質を帯電させる必要がある。
【0005】
現在、インクジェット方式を用いて、インクに限らず多種多様な物質を吐出しようとしている。たとえば、液状物質としては、インク、水などの液体に限らず、液体と微粒子との混合物、水溶液、溶剤、ナノ粒子液、UV硬化液、イオン流体、オイル、液晶、接着剤、試薬、細胞や遺伝子などの生物材料を含む物質などを挙げることができる。これらの液状物質は、帯電させることにより濃度分布が変わり、また、物質の特性が変動する可能性がある。また、液状物質を帯電させるためには液状物質と電極とを接触させる必要があるが、ガラスなどの絶縁性(非導電性)の部材に対して、様々な腐食性の液状物質に耐えられる導電性の部材を選択することは容易ではない。さらに、電極と接触することにより液状物質の特性が変化する可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、液状物質を吐出するためのノズルであって、液状物質の自由表面がノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、ノズルの内部の圧力を変動することにより、液状物質の自由表面をノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、自由表面がノズルの開口端に移動すると、液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッドである。
【0007】
この吐出ヘッドにおいては、液状物質の自由表面(メニスカス)がアクチュエータによる圧力変動により動かされない定常状態においてはノズルの開口端より後退した位置にある。静電方式(静電吸引方式)で液滴を吐出するために用いられる電極はノズルの開口端の外側に設けられており、ノズルの少なくとも先端は非導電性部材により形成されている。したがって、アクチュエータの圧力変動によりメニスカスがノズル開口端に移動したときにのみ液状物質は電極に接して帯電させられ、静電方式により吐出される。このため、ノズル内の液状物質はほとんど帯電されることはなく、電極と液状物質とが接触する時間は限られる。したがって、この吐出ヘッドにより、帯電および電極との接触による液状物質への影響を抑制でき、静電方式で液状物質を吐出できる。
【0008】
非導電性部材の端面の、ノズルの開口端の外周に疎液性の層が形成されており、電極は疎液性の層の上に設けられていることが望ましい。また、非導電性部材の、ノズルの開口端の内側に、外周の疎液性の層と連続するように形成された内側の疎液性の層をさらに有することが望ましい。疎液性の層は、疎水性の層、疎溶媒性の層などであって、吐出する液状物質に対し撥水性または撥液性を示す層を含む。
【0009】
電極を、非導電性部材の端面の、ノズルの開口端から外側へ後退した位置に設け、非導電性部材の端面の、ノズルの開口端と電極とを連結するように、開口端の外側に親液性の層を設けることも有効である。非導電性部材の、ノズルの開口端の内側に、外側に設けられた親液性の層と連結するように、内側の親液性の層をさらに設けることが好ましい。親液性の層は、吐出する液状物質に対して親水性または親溶媒性を示す層を含む。
【0010】
電極は、ノズルの開口端に沿った外側の一部に設けてもよく、ノズルの開口端を囲うように設けてもよい。
【0011】
定常状態において液状物質の自由表面(メニスカス)をノズルの開口端より後退した位置に保持する方法の1つは、ノズルの内側に、ノズルの開口端から後退した位置が終端となるように芯または溝を設けることである。また、ノズルの内部を外気に対して負圧に維持する圧力制御ユニットを設けてもよい。液状物質を収納したタンクをノズルの開口端より下側に配置してもよい。
【0012】
アクチュエータは、ピエゾ方式のアクチュエータであってもサーマル方式のアクチュエータであってもよい。この吐出ヘッドにおいて、電界を形成するための電位はメニスカスがノズルの開口端に達した付近において瞬時に液状物質に印加される。したがって、静電方式により吐出される方向を安定させるためには、ノズルの開口端に達したときのメニスカスの形状が安定していることが好ましく、いわゆる「押し打ち」あるいは「加圧方式」ではなく、いわゆる「引き打ち」でメニスカスをノズルの開口端に移動させることが望ましい。すなわち、アクチュエータは、ノズルの内容積を膨張させてから復元し、液状物質の自由表面をノズルの開口端からさらに後退させてから液状物質の自由表面がノズルの開口端に到達するようにすることが望ましい。したがって、アクチュエータはピエゾアクチュエータのような、圧電素子であることが望ましい。
【0013】
非導電性部材の端面に複数のノズルの開口端が形成されていてもよい。複数のノズルの開口端の外側に複数の電極をそれぞれ設けることが可能であり、これら複数の電極は電気的に繋がっていることが望ましい。各々のノズル内のメニスカスをアクチュエータにより制御することにより、各々のノズル内の液状物質の帯電を制御でき、静電力による液状物質の吐出を制御できる。したがって、複数の電極にはコンスタントな電位を印加してもよく、共通のパルス状の電位を印加してもよい。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、上記の吐出ヘッドと、複数の電極に共通のパルス電圧を印加する静電駆動ユニットと、複数のノズルのそれぞれのアクチュエータに、それぞれ駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置である。
【0015】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、上記の吐出ヘッドと、吐出ヘッドにより液状物質が吐出されるターゲットを吐出ヘッドに対して相対的に移動させる移動機構とを有する装置である。ターゲットおよび/または移動機構は、吐出ヘッドに設けられた電極に対する対向電極としての機能を含み、静電方式による液滴の吐出を可能とする。
【0016】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、上記の吐出ヘッドと、電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置である。圧力制御ユニットは、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給する機能と、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端を越して液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給する機能とを含むことが望ましい。共通のノズルの先端から、静電吸引方式と、静電アシスト方式および/または圧力変動方式とにより液滴を吐出できる。
【0017】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、液状物質を吐出するためのノズルであって、液状物質の自由表面がノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、ノズルの内部の圧力を変動することにより、液状物質の自由表面をノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、自由表面がノズルの開口端に移動すると、液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッドにより液状物質を吐出する方法である。この方法は、以下のステップを含む。
・アクチュエータにより液状物質の自由表面がノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせること。
・アクチュエータにより液状物質の自由表面がノズルの開口端を越して液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせること。
【0018】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、少なくとも1つのノズルを含む上記の吐出ヘッドを有する装置を制御する方法である。装置は、さらに、電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有し、この方法は以下のステップを含む。
・圧力制御ユニットが、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給し、静電駆動ユニットが、電極に静電吐出のための電圧を供給すること。
・圧力制御ユニットが、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端を越して液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給すること。
【0019】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、複数のノズルを含む上記の吐出ヘッドを有する装置を制御する方法である。すなわち、吐出ヘッドは、液状物質を吐出するための複数のノズルであって、液状物質の自由表面が複数のノズルのそれぞれの開口端より後退した位置に形成される複数のノズルと、複数のノズルの内部の圧力をそれぞれ変動することにより、液状物質の自由表面を複数のノズルのそれぞれの開口端に移動させるための複数のアクチュエータと、複数のノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、複数のノズルの開口端の外側にそれぞれ設けられた複数の電極であって、自由表面が複数のノズルのそれぞれの開口端に移動すると、液状物質が接するように設けられた複数の電極とを含む。
【0020】
この装置は、さらに、複数の電極にパルス電圧を印加するための静電駆動ユニットと、複数のアクチュエータに駆動パルスを供給するための圧力制御ユニットとを有し、この装置を制御するための方法は以下のステップを含む。
・静電駆動ユニットが、複数の電極に共通のパルス電圧を印加し、圧力制御ユニットが複数のアクチュエータのそれぞれに独立した駆動パルスを供給すること。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の吐出装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】吐出ヘッドの概略構成を示す図。
【図3】ノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は先端方向から見た図。
【図4】ノズルから液が吐出される様子を示す図であり、図4(a)はメニスカスが引き込まれた状態を示し、図4(b)はメニスカスが開口端に移動した状態を示す。
【図5】異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図。
【図6】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図6(a)は断面図、図6(b)は先端方向から見た図。
【図7】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図7(a)は断面図、図7(b)は先端方向から見た図。
【図8】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図8(a)は断面図、図8(b)は先端方向から見た図。
【図9】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図9(a)は断面図、図9(b)は先端方向から見た図。
【図10】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図10(a)は断面図、図10(b)は先端方向から見た図。
【図11】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図11(a)は断面図、図11(b)は先端方向から見た図。
【図12】吐出ヘッドを動作させるためのパルス電位および駆動パルスを供給する様子を示すタイミングチャート。
【図13】吐出装置の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、本発明の実施形態の吐出装置の一例を示している。この吐出装置1は、フェムトリットルオーダーの液滴をターゲット2の狙った位置に吐出させる静電方式(静電吸引方式)のインクジェットヘッド(静電ヘッド)と、ピコリットルオーダーの液滴をターゲット2の狙った位置に吐出させる圧力変動方式のピエゾ型インクジェットヘッド(ピエゾヘッド)としての機能を備えた一体型の吐出ヘッド50と、吐出ヘッド50を搭載したヘッドブロック10とを備えている。吐出ヘッド50は、静電力を用いてノズル52の先端51よりタンク55に収納された液状物質55Lを吐出するための電極53を備えている。タンク55に収納された液状物質55Lは、パイプ54を介してノズル52に供給され、ノズル52の先端51に導かれる。タンク55を省略し、ノズル52に予めセットされた液状物質55Lのみを吐出するタイプであってもよい。
【0023】
この吐出ヘッド50は、さらに、ノズル52の内部圧力の変動を用いてノズル52の先端51よりタンク55に収納された液状物質55Lを吐出するためのピエゾアクチュエータ(圧電素子、ピエゾ素子)58を備えている。ノズル52は樹脂、セラミックスまたはガラス板の積層構造、であってもよく、ガラス管であってもよい。この例ではノズル52は、耐久性および耐腐食性のガラス管またはガラス材により構成されており、全体が非導電性(絶縁性)である。さらに、ノズル52は、ピエゾアクチュエータ58の伸縮により内容積の変動する圧力室(キャビティ)を備えている。
【0024】
液状物質55Lは、液体に限らず、液体と微粒子との混合物、水溶液、溶剤、ナノ粒子液、UV硬化液、イオン流体、オイル、液晶、接着剤、試薬、細胞や遺伝子などの生物材料を含む物質などであってもよい。ターゲット2は、これらの液状物質55Lを塗布、印刷、分注、混合などするための媒体、容器、トレイなどである。
【0025】
吐出装置1は、ターゲット2とヘッドブロック10とを第1の方向(Z方向)に動かしてノズル52の先端51とターゲット2との距離(間隔、ギャップ)を制御するためのギャップ制御機構16と、ターゲット2をヘッドブロック10に対し、Z方向に対して垂直な方向(XY方向)に移動するための移動機構17とを備えている。ターゲット2および/または移動機構17は、静電方式で吐出するための電極53と対をなす対向電極としての機能を備えており、吐出ヘッド50の電極53に電位(パルス状または一定の)を印加することにより電極53とターゲット2との間に電界を形成し、静電吐出(静電吸引液滴形成)が可能となっている。
【0026】
ギャップ制御機構16の一例はZ方向に移動可能なZステージであり、ボールねじやリニアモーター、リニアスケール制御モーターなどの公知のアクチュエータを用いて実現できる。移動機構17の一例はXY移動テーブルである。移動機構17は、Y方向またはX方向にのみターゲット2を移動するための機構であってもよい。また、ギャップ制御機構16およびXY移動機構17を1つのXYZ移動テーブルで実現することも可能である。
【0027】
この吐出装置1では、移動機構17により吐出位置を決め、その位置に液状物質55Lを吐出して着滴することにより描画などの処理を実行できるインクジェットオンデマンド描画装置である。さらに、この吐出装置1は、ターゲット2に対する処理で要求される解像度あるいは液滴の径により静電方式と、圧力変動方式を使い分ける。さらに、使用する方式によりターゲット2に対しヘッドブロック10を上下(前後)に動かして、ノズル先端51とターゲット2とのギャップを制御する。
【0028】
吐出装置1は、さらに、ノズル52の内圧を大気圧に対して負圧0〜20kPaの範囲、より好ましくは負圧0〜10kPa、さらに好ましくは負圧1〜5kPaの範囲に維持するための真空ポンプ11と、初期設定などに用いられるステージ観察カメラ15と、電極53へパルス的な電圧変動を加えて静電方式による吐出を行わせるための静電駆動ユニット(静電コントローラ)13と、圧電素子58に駆動パルス(多くの場合はパルス的な電圧変動)を供給して静電方式および圧力変動方式の吐出を制御するための圧力制御ユニット(ピエゾコントローラ)12とを含む。吐出装置1は、また、XY移動テーブル17を制御するステージコントローラ18と、吐出装置1の全体的な制御を行うコントローラユニット40とを含む。コントローラユニット40はモード切替機能41と、描画機能42とを含む。
【0029】
図2に、ヘッド50の概略構成を拡大して示している。一体型の吐出ヘッド50は、タンク55に連通したノズル52を備えており、ノズル52の先端51がターゲット2に対向するようにヘッドブロック10に搭載されている。このノズル52は、ガラス管30により構成されており、ノズル52の先端51を構成する、ガラス管30のターゲット2に対向した端面31には、ノズル52に連通した開口32が設けられている。ガラス管30は先端の開口32から後退した部分が圧力室(キャビティ)35となり、ガラス管30の外側に駆動用の電極58eを介してピエゾ素子58が装着されている。
【0030】
この一体型のヘッド50においては、真空ポンプ11によりノズル52の内圧が外気圧より3kPa程度低くなるように設定されている。このため、液状物質55Lの自由表面(メニスカス)20がノズル52の開口端、すなわち、ガラス管30の端面31の開口32の外側のエッジ(開口端)32eより後退した位置に形成される。また、このヘッド50は、ピエゾ素子58によりキャビティ35の容積を変更することによりノズル52の内部の圧力を変動することが可能であり、液状物質55Lのメニスカス20をノズル52の開口端32eに移動させることができる。
【0031】
さらに、ノズル52の先端51を形成する非導電性部材のガラス管30の外面に電極53が形成されており、電極53の端53eがガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eの外側に延びている。したがって、メニスカス20がノズル52の開口端32eに移動すると、液状物質55Lが電極端部53eに接して液状物質55Lが帯電させられる。このため、対向電極となるように接地電位に接続されたターゲット2に液状物質55Lが静電吸引され、ノズル52の先端51から液状物質55Lがターゲット2の表面に滴下される。
【0032】
図3にノズル52の先端51の構成を拡大して示している。図3(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図3(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。なお、ターゲット2の方向から見た図においては、示している部材を明確にするために、断面図ではないが断面と同じ表示を部分的に付している。以下においても同様である。
【0033】
このノズル52においては、その先端51を構成するガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eの外周に、液状物質55Lに対して撥液性(撥水性)を示す疎液性の層60が形成されており、電極53の端(電極端部)53eは疎液性の層60の上に設けられている。
【0034】
疎液性の層60は、疎水性の層、疎溶媒性の層などであって、吐出する液状物質55Lに対し撥水性または撥液性を示す層であればよい。疎液性の層60は、たとえば、フッ素系またはシリコン系の樹脂またはコーティング液、フルオロシラン系の液剤等の撥液材料を塗布したり、PTFEを含有する共析メッキを施したり、金チオール処理を施したり、CVD法等によりフッ素系物質を蒸着することにより形成できる。疎液性の層60を設けることにより、端面31における液切れが向上する。このため、液状物質55Lが電極端部53eと接触する時間を短縮でき、また、液状物質55Lが吐出した後に液状物質55Lと電極端部53eとが確実に切断されやすくなる。
【0035】
このノズル52においては、電極端部53eは、ガラス管30の端面31の、ノズル52の円形の開口端32eの外周の一部に設けられており、開口端32eの内側、すなわち、ガラス管30の開口32の内面(内壁面)には設けられていない。一方、液状物質55Lのメニスカス20は、ノズル52の内圧が外気圧力より若干低いので、開口端32eから後退した位置にある。したがって、通常状態(定常状態)では、液状物質55Lは電極端部53eには接しない。また、ガラス管30は、耐腐食性の部材であるとともに良好な非導電性(絶縁性)部材なので、液状物質55Lは電極端部53eにより帯電することは少ない。
【0036】
図4(a)に示すように、このノズル52において、ピエゾコントローラ12から適当な電圧の駆動パルスを供給してピエゾ素子58を変形させてキャビティ35を膨張させると、ノズル52の先端51はさらに負圧になり、メニスカス20はノズル52の内部に引き込まれる。次に、図4(b)に示すように、ピエゾ素子58の形状が復帰するとキャビティ35も復元され、その結果、メニスカス20はノズル52の開口端32eに向かって押し出される。ノズル開口32に連通するインク室(キャビティ)35を膨張させてから収縮させるという方式は、ピエゾを用いたインクジェット方式では「引き打ち」方式と呼ばれており、吐出されるインク滴の重量を少なくできるというメリットと、吐出前後のメニスカスの形状を制御し易いというメリットとを備えており、液滴を飛散させずに所定の方向に吐出するために有用な方式である。たとえば、特開2005−104163号などに駆動パルスなどを含めて記載されている。
【0037】
図4(b)に示したようにメニスカス20が開口端32eの付近に到達したり、メニスカス20が開口端32eから突出したような状態になると、液状物質55Lは電極端部53eに接する。このタイミングで、または若干前後して、静電コントローラ13から電極53にパルス状の電圧(電位)が印加されると、液状物質55Lの開口端32eに達した部分が帯電される。引き打ち方式で開口端32eに移動されたメニスカス20は、多くの場合、メニスカス20の中心部分21がターゲット2に向けて突出した形状となる。このため、メニスカス20の先端22に電界が集中するので、先端22から対向電極であるターゲット2に向けたジェット流25が生じる。これにより、液状物質55Lの一部がターゲット2である基板などに移動して液滴として着弾あるいは塗布された状態となる。
【0038】
したがって、この一体型のヘッド50においては、ノズル52の内部の液状物質55Lはほとんど帯電されることはなく、電極53と液状物質55Lとが接触する時間はごく短時間に限られる。さらに、パルス状の電位が電極53に供給される場合は、液状物質55Lの帯電した部分はターゲット2に移動した後、ターゲット2とノズル先端51とは瞬間的に同電位、すなわち、接地電位になる。したがって、この吐出ヘッド50により、液状物質55Lが帯電することにより変質したり、濃度分布が偏ったりすることはなく、さらに、液状物質55Lが電極53との接触により影響を受けることもほとんどない。さらに、ガラス管30は、多種多様な液状物質55Lに対して安定している。このため、この吐出ヘッド50により多種多様な液状物質を、微小量、たとえば、フェムトリットルの単位で精度よくターゲット2に塗布したり、分注したりすることができる。
【0039】
さらに、この一体型ヘッド50においては、図2に示すように、ピエゾコントローラ12からパルス幅および/または高さの小さい駆動パルス(第1の駆動パルス)12P1と、パルス幅および/またはパルス高さの大きな駆動パルス(第2の駆動パルス)12P2とをピエゾ素子58に供給できる。メニスカス20がノズル開口端32eに達する程度の小エネルギーの駆動パルス12P1をピエゾ素子58に供給し、圧力変動をピエゾ素子58により得ることにより、上記のように静電吸引方式あるいは静電アシスト方式で、液状物質55Lをターゲット2に吐出できる。すなわち、一体型ヘッド50を静電ヘッドとして使用できる。圧力変動のみであればノズル先端51から分離されないような液柱を、静電力によりターゲット2に向けて射出する方式を、静電アシスト方式と呼ぶことがある。
【0040】
また、液状物質55Lのメニスカス20がノズル開口端32eを越えて液状物質55Lが静電力がなくても吐出されるような大エネルギーの駆動パルス12P2をピエゾ素子58に供給することにより、オンデマンドのピエゾヘッドとして、一体型ヘッド50を使用できる。一体型ヘッド50をピエゾヘッドとして使用することにより、ピコリットル程度の比較的容量の大きな液滴をターゲット2に吐出できる。さらに、この一体型のヘッド50においては、上記の範囲で、様々なエネルギーの駆動パルスとパルス電位とを組み合わせることにより、様々な量の液滴をターゲット2に吐出することが可能となる。
【0041】
図5に、一体型ヘッド50の異なる例を示している。上記のヘッドと共通する構成については同じ符号を付している。以下の実施例においても同様である。この一体型の吐出ヘッド50においては、ノズル52の開口端32eの内面33に、外周の疎液性の層60と連続するように形成された内側の疎液性の層61をさらに備えている。疎液性の層60を内側まで設けることにより、液状物質55Lの液切れをさらに促進でき、より安定した吐出性能が得られる。また、このヘッド50においても、ノズル52の内圧を下げてメニスカス20を開口端32eから後退させているが、ノズル先端51の内面33に設けた疎液性の層61によってもメニスカス20を開口端32eから後退させることができる。また、ノズル52の内圧を下げる方法は、真空ポンプ11を設けることに代わり、タンク55の設置高さをノズル52の先端51に対して低くすることであってもよい。
【0042】
図6に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図6(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図6(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、ノズル52の内側であるガラス管30の内面33に、ノズル52の開口端32eから後退した位置が終端65eとなるように芯65を設けている。芯(ロッド)65は、典型的にはガラス棒であり、断面は円、楕円、多角形のいずれであってもよい。芯65とガラス管30の内面33との毛管現象により液面(メニスカス)20を芯65の終端65eの位置に制御できる。したがって、定常状態において液状物質55Lの自由表面(メニスカス)20をノズル52の開口端32eより後退した位置に保持できる。終端65eと開口端32eとの距離hは、300μm以内であることが望ましい。
【0043】
また、電極端部53eは、ガラス管30の端面31の、開口端32eから若干後退した位置に配置している。これにより、液状物質55Lの液切れをさらに促進でき、より安定した吐出性能が得られる。
【0044】
図7に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図7(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図7(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、ノズル52の内側であるガラス管30の内面33に、ノズル52の開口端32eから後退した位置が終端66eとなるように溝66を設けている。溝66の断面は半円、多角形のいずれであってもよい。溝66とガラス管30の内面33との毛管現象により液面(メニスカス)20を溝66の終端66eの位置に制御できる。したがって、定常状態において液状物質55Lの自由表面(メニスカス)20をノズル52の開口端32eより後退した位置に保持できる。終端66eと開口端32eとの距離hは、300μm以内であることが望ましい。
【0045】
図8に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図8(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図8(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、液状物質55Lに静電力を付与するための電極端部53eを、ガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eから外側へ後退した位置に設け、その内側にノズル52の開口端32eと電極端部53eとを連結し、液状物質55Lが電極端部53eに到達しやすいように、開口端32eの外側に限定して親液性の層62を設けている。ノズル内の圧力変動により開口端32eの近傍に達した液状物質55Lを、親液性の層62により電極端部53eに導き、液状物質55Lを確実に帯電させることができる。
【0046】
親液性の層62は、吐出する液状物質55Lに対して親水性または親溶媒性を示す層であればよい。親液層62は、プラズマ処理やオゾン処理等により端面31を部分的に親液状態にして親液層62を形成する方法や、酸化チタンTiO2をコーティングし、紫外線を照射することにより、端面31の上に親液層62を形成(積層)する方法を採用することが可能である。本装置1に、親液性を持続的に維持するために、水銀の紫外線照射装置を搭載したり、UV−LEDランプを搭載して、本ヘッド50のノズル先端部51を定期的に照射する機構を設けることは有用である。
【0047】
図9に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図9(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図9(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、ノズル52の開口端32eの内面33に、外側に設けられた親液性の層62と連結するように、内側の親液性の層63を設けている。ノズル内の圧力変動により開口端32eの近傍に達した液状物質55Lを、親液性の層63および62により電極端部53eに導き、液状物質55Lをさらに確実に帯電させることができる。
【0048】
さらに、この一体型ヘッド50においては、円形の開口端32eの全周に沿って親液性の層62および63を設け、さらにその外側に、円形の開口端32eの全周に沿って電極端部53eを設けている。したがって、ノズル内の圧力変動により開口端32eの近傍に達した液状物質55Lのいずれかの部分を、親液性の層63および62により電極端部53eに導くことができ、液状物質55Lをさらに確実に帯電させ、いっそう容易に静電吸引により液状物質55Lを吐出できる。
【0049】
図10に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図10(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図10(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。ノズル52においては、端面31に対して疎液性および親液性の処理を施さずに電極端部53eを形成している。ノズル52を形成する部材30が液状物質55Lに対してある程度の接触角を有し、疎液性を示す場合は、撥液性(疎液性)を持つ層60または61を形成しなくても疎液性の層を形成したのと同様の効果が得られる。また、ノズル52を形成する部材30が液状物質55Lに対して親液性を示す場合は、親液性の層62または63を形成しなくても親液性の層を形成したのと同様の効果が得られる。
【0050】
図11に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図11(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図11(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50は、複数のノズル52を含み、端面31に複数の開口端32eが形成されている。
【0051】
すなわち、この吐出ヘッド50は、液状物質55Lを吐出するための複数のノズル52と、複数のノズル52の内部の圧力をそれぞれ変動することにより、液状物質55Lのメニスカス20を複数のノズル52のそれぞれの開口端32eに移動させるための複数のアクチュエータ(不図示)と、複数のノズル52の先端51を形成する非導電性部材(この例ではガラス加工品)の端面31の、複数のノズル52の開口端32eの外側に設けられたそれぞれ複数の電極端部53eとを有する。それぞれのノズル52において、それぞれのノズル52の内部の自由表面(メニスカス)20が、それぞれのノズル52の開口端32eに移動すると、それぞれのノズル52内の液状物質55Lが、それぞれのノズル52の外側に設けられた電極端部53eにそれぞれ接して帯電させられる。なお、電極端部53eを共通の電極とせず、個別独立の電極として形成しても良い。
【0052】
さらに、端面31の開口端32eの外側には疎液性の層60が設けられ、各ノズル52の内部には、ガラス製の芯65が取り付けられており、各ノズル52内のメニスカス20が各ノズル52の開口端32eからノズル52の内部に後退した位置になるようにしている。また、各ノズル52の開口端32eに設けられた静電力を付与するための電極端部53eは、共通の電極53cに電気的に接続されている。したがって、複数のノズル52の電極端部53eには静電コントローラ13から共通のパルス電位13pが印加されるようになっている。
【0053】
図12に、複数のノズル52を含む吐出ヘッド50にパルス電位13pと、駆動パルス12p1とを供給する様子をタイミングチャートにより示している。時刻t1に、n番目とn+1番目のノズル52にピエゾコントローラ12から駆動パルス12p1が供給される。この駆動パルス12p1により、n番目とn+1番目のノズル52においてメニスカス20がノズル開口端32eに移動する。メニスカス20がノズル開口端32eに達したいタイミングの時刻t2にn番目とn+1番目を含めたすべてのノズル52の電極端部53eに静電コントローラ13からパルス電位13pが供給される。メニスカス20がノズル開口端32eに到達し、液状物質55Lが電極端部53eに接しているn番目とn+1番目のノズル52においては液状物質55Lが帯電させられて吐出される。液状物質55Lが吐出されると、メニスカス20が定常状態のノズル開口端32eから後退した位置に戻る。このため、時刻t3においては、液状物質55Lは、n番目とn+1番目のノズル52においても電気的に電極端部53eから遮断される。
【0054】
時刻t4においては、n+1番目のノズル52にのみピエゾコントローラ12から駆動パルス12p1が供給される。この駆動パルス12p1により、n+1番目のノズル52のメニスカス20がノズル開口端32eに移動し、n番目のノズル52のメニスカス20は移動しない。したがって、時刻t5にすべてのノズル52の電極端部53eに静電コントローラ13からパルス電位13pが供給されると、n+1番目のノズル52から液状物質55Lが吐出され、n番目のノズル52からは液状物質は吐出されない。時刻t7においては、上記と逆に、n番目のノズル52にのみピエゾコントローラ12から駆動パルス12p1が供給され、時刻t8にn番目のノズル52から液状物質55Lが吐出され、n+1番目のノズル52からは液状物質55Lが吐出されない。
【0055】
このように、この吐出ヘッド50を備えた吐出装置1においては、ピエゾコントローラ12により供給される駆動パルス12p1により各ノズル52からの静電吸引による液滴の吐出を制御できる。したがって、ピエゾ型のインクジェットプリンタと同様または類似の制御で、静電吸引方式または静電アシスト方式により液滴を吐出または分注などを行う装置を制御できる。さらに、常時は、吐出対象の液状物質55Lを帯電させることなく、また、電極に接触させることなく静電吸引方式または静電アシスト方式により液滴を吐出できる。
【0056】
さらに、時刻t10には、n番目のノズル52に小エネルギーの駆動パルス12p1を供給し、n+1番目のノズル52には大エネルギーの駆動パルス12p2を供給している。したがって、n番目のノズル52からは静電方式により液滴が吐出され、n+1番目のノズル52からはオンデマンドのピエゾ駆動方式(圧力変動方式)により液体が吐出される。
【0057】
また、時刻t11には、n番目およびn+1番目のノズル52に大エネルギーの駆動パルス12p2を供給している。このため、n番目およびn+1番目のノズル52からオンデマンドのピエゾ駆動方式(圧力変動方式)により液体が吐出される。このように、本例の吐出ヘッド50を備えた吐出装置1においては、静電方式による吐出(液滴の形成)と、圧力変動方式による吐出(液滴の形成)とをピエゾ素子58を駆動するパルスのエネルギーを変えるだけで簡単に制御できる。さらに、複数の吐出ヘッド50を含む吐出装置1においては、それぞれの吐出ヘッド50の吐出方法を、吐出ヘッド50の単位でバリアブルに選択することが可能である。
【0058】
図13に、吐出装置1のコントローラユニット40の制御動作の概要をフローチャートにより示している。ステップ81において、モード切替機能41はパーソナルコンピュータ5のアプリケーションからの描画あるいは分注などの要求により静電方式による吐出か、圧力変動方式による吐出かを選択する。静電方式が選択されると、描画機能42は、ステップ82で、ピエゾコントローラ(圧力制御ユニット)12により小エネルギーの駆動パルス12p1を吐出ヘッド50のピエゾ素子58に供給する。複数のノズル52を含む吐出ヘッド50においては、吐出が要求されるノズル52のピエゾ素子58に駆動パルス12p1を供給する。
【0059】
次いで、ステップ83において、描画機能42は、静電コントローラ(静電駆動ユニット)13により静電駆動用のパルス電位13pを吐出ヘッド50の静電駆動用の電極53に供給する。複数のノズル52を含む吐出ヘッド50においては、各ノズル52の電極端部53eに共通のタイミングでパルス電位13pを供給するか、または、各ノズル52の電極端部53eに共通の電極53cへパルス電位13pを供給する。これにより、ターゲット2に対して所望のノズル52から微小な、フェムトリットル程度の液滴が吐出される。
【0060】
一方、ステップ81において圧力変動方式が選択されると、描画機能42は、ステップ84で、ピエゾコントローラ12を介して大エネルギーの駆動パルス12p2を吐出ヘッド50のピエゾ素子58に供給する。複数のノズル52を含む吐出ヘッド50においては、吐出が要求されるノズル52のピエゾ素子58に駆動パルス12p2を供給する。これにより、ターゲット2に対して所望のノズル52からピコリットル程度の液滴が吐出される。
【0061】
ステップ84において吐出される液滴が電極端部53eにより得られる静電力によりそれほど影響を受けないのであれば、小エネルギーの駆動パルス12p1と、大エネルギーの駆動パルス12p2とを同時に、並行して所望のノズル52のピエゾ素子58に供給することも可能である。したがって、フェムトリットル程度の微小の液滴と、ピコリットル程度の比較的大きな液滴とを同時にターゲット2に向けて吐出することも可能である。
【0062】
このように、この吐出ヘッド50を搭載した装置1においては、各ノズル52をノズル単位で静電方式の吐出と、圧力変動方式による吐出とを自由に使い分けることができ、様々なアプリケーションの要求に答えることができる。
【0063】
さらに、静電吸引および静電アシストを含む静電方式で液状物質を吐出するために、通常状態では帯電させる必要がなく、さらに、電極とも接触させる必要がない。したがって、吐出対象の液状物質としては、インク、水などの液体に限らず、液体と微粒子との混合物、水溶液、溶剤、ナノ粒子液、UV硬化液、イオン流体、オイル、液晶、接着剤、試薬、細胞や遺伝子などの生物材料を含む物質など、様々な物質を、その物質の特性や成分に影響をほとんど与えずに静電方式で吐出できる。さらに、ノズル全体をガラスなどの絶縁性で耐食性の高い部材で形成することが可能となり、この点でも、さまざまな物質を、静電方式を用いて吐出するのに適している。
【0064】
なお、以上では、幾つかの例を用いて本発明を説明しているが、たとえば、上述した幾つかの例を組み合わせたり、一部のみを適用して本発明を実現することは当業者であれば可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 吐出装置、 10 ヘッドブロック、 50 吐出ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物質を吐出する吐出ヘッドおよび吐出ヘッドを含む装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微小液滴を形成することを目的とした液体吐出装置が開示されている。この装置は、帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置であって、液滴の吐出を受ける受け面を有する基材にその先端部を対向させて配置されると共に当該先端部から液滴を吐出する先端部の内部直径が30μm以下のノズルと、このノズル内に溶液を供給する溶液供給手段と、ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段と、を備え、ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−136651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット記録方式(インクジェット方式)としては、ノズル内の圧力を変動させる方式として、圧電素子の振動によりインク流路を変形させることによりインク液滴を吐出させるピエゾ方式と、インク流路内に発熱体を設け、その発熱体を発熱させて気泡を発生させ、気泡によるインク流路内の圧力変化に応じてインク液滴を吐出させるサーマル方式とが知られている。また、静電力を用いた方式としては、インク流路内のインクを帯電させてインクの静電吸引力によりインク液滴を吐出させる静電吸引方式が知られている。静電吸引方式は、微小液滴をターゲットに形成するのに適している。しかしながら、インクなどの吐出の対象となる液状物質を帯電させる必要がある。
【0005】
現在、インクジェット方式を用いて、インクに限らず多種多様な物質を吐出しようとしている。たとえば、液状物質としては、インク、水などの液体に限らず、液体と微粒子との混合物、水溶液、溶剤、ナノ粒子液、UV硬化液、イオン流体、オイル、液晶、接着剤、試薬、細胞や遺伝子などの生物材料を含む物質などを挙げることができる。これらの液状物質は、帯電させることにより濃度分布が変わり、また、物質の特性が変動する可能性がある。また、液状物質を帯電させるためには液状物質と電極とを接触させる必要があるが、ガラスなどの絶縁性(非導電性)の部材に対して、様々な腐食性の液状物質に耐えられる導電性の部材を選択することは容易ではない。さらに、電極と接触することにより液状物質の特性が変化する可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、液状物質を吐出するためのノズルであって、液状物質の自由表面がノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、ノズルの内部の圧力を変動することにより、液状物質の自由表面をノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、自由表面がノズルの開口端に移動すると、液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッドである。
【0007】
この吐出ヘッドにおいては、液状物質の自由表面(メニスカス)がアクチュエータによる圧力変動により動かされない定常状態においてはノズルの開口端より後退した位置にある。静電方式(静電吸引方式)で液滴を吐出するために用いられる電極はノズルの開口端の外側に設けられており、ノズルの少なくとも先端は非導電性部材により形成されている。したがって、アクチュエータの圧力変動によりメニスカスがノズル開口端に移動したときにのみ液状物質は電極に接して帯電させられ、静電方式により吐出される。このため、ノズル内の液状物質はほとんど帯電されることはなく、電極と液状物質とが接触する時間は限られる。したがって、この吐出ヘッドにより、帯電および電極との接触による液状物質への影響を抑制でき、静電方式で液状物質を吐出できる。
【0008】
非導電性部材の端面の、ノズルの開口端の外周に疎液性の層が形成されており、電極は疎液性の層の上に設けられていることが望ましい。また、非導電性部材の、ノズルの開口端の内側に、外周の疎液性の層と連続するように形成された内側の疎液性の層をさらに有することが望ましい。疎液性の層は、疎水性の層、疎溶媒性の層などであって、吐出する液状物質に対し撥水性または撥液性を示す層を含む。
【0009】
電極を、非導電性部材の端面の、ノズルの開口端から外側へ後退した位置に設け、非導電性部材の端面の、ノズルの開口端と電極とを連結するように、開口端の外側に親液性の層を設けることも有効である。非導電性部材の、ノズルの開口端の内側に、外側に設けられた親液性の層と連結するように、内側の親液性の層をさらに設けることが好ましい。親液性の層は、吐出する液状物質に対して親水性または親溶媒性を示す層を含む。
【0010】
電極は、ノズルの開口端に沿った外側の一部に設けてもよく、ノズルの開口端を囲うように設けてもよい。
【0011】
定常状態において液状物質の自由表面(メニスカス)をノズルの開口端より後退した位置に保持する方法の1つは、ノズルの内側に、ノズルの開口端から後退した位置が終端となるように芯または溝を設けることである。また、ノズルの内部を外気に対して負圧に維持する圧力制御ユニットを設けてもよい。液状物質を収納したタンクをノズルの開口端より下側に配置してもよい。
【0012】
アクチュエータは、ピエゾ方式のアクチュエータであってもサーマル方式のアクチュエータであってもよい。この吐出ヘッドにおいて、電界を形成するための電位はメニスカスがノズルの開口端に達した付近において瞬時に液状物質に印加される。したがって、静電方式により吐出される方向を安定させるためには、ノズルの開口端に達したときのメニスカスの形状が安定していることが好ましく、いわゆる「押し打ち」あるいは「加圧方式」ではなく、いわゆる「引き打ち」でメニスカスをノズルの開口端に移動させることが望ましい。すなわち、アクチュエータは、ノズルの内容積を膨張させてから復元し、液状物質の自由表面をノズルの開口端からさらに後退させてから液状物質の自由表面がノズルの開口端に到達するようにすることが望ましい。したがって、アクチュエータはピエゾアクチュエータのような、圧電素子であることが望ましい。
【0013】
非導電性部材の端面に複数のノズルの開口端が形成されていてもよい。複数のノズルの開口端の外側に複数の電極をそれぞれ設けることが可能であり、これら複数の電極は電気的に繋がっていることが望ましい。各々のノズル内のメニスカスをアクチュエータにより制御することにより、各々のノズル内の液状物質の帯電を制御でき、静電力による液状物質の吐出を制御できる。したがって、複数の電極にはコンスタントな電位を印加してもよく、共通のパルス状の電位を印加してもよい。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、上記の吐出ヘッドと、複数の電極に共通のパルス電圧を印加する静電駆動ユニットと、複数のノズルのそれぞれのアクチュエータに、それぞれ駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置である。
【0015】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、上記の吐出ヘッドと、吐出ヘッドにより液状物質が吐出されるターゲットを吐出ヘッドに対して相対的に移動させる移動機構とを有する装置である。ターゲットおよび/または移動機構は、吐出ヘッドに設けられた電極に対する対向電極としての機能を含み、静電方式による液滴の吐出を可能とする。
【0016】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、上記の吐出ヘッドと、電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置である。圧力制御ユニットは、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給する機能と、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端を越して液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給する機能とを含むことが望ましい。共通のノズルの先端から、静電吸引方式と、静電アシスト方式および/または圧力変動方式とにより液滴を吐出できる。
【0017】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、液状物質を吐出するためのノズルであって、液状物質の自由表面がノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、ノズルの内部の圧力を変動することにより、液状物質の自由表面をノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、自由表面がノズルの開口端に移動すると、液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッドにより液状物質を吐出する方法である。この方法は、以下のステップを含む。
・アクチュエータにより液状物質の自由表面がノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせること。
・アクチュエータにより液状物質の自由表面がノズルの開口端を越して液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせること。
【0018】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、少なくとも1つのノズルを含む上記の吐出ヘッドを有する装置を制御する方法である。装置は、さらに、電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有し、この方法は以下のステップを含む。
・圧力制御ユニットが、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給し、静電駆動ユニットが、電極に静電吐出のための電圧を供給すること。
・圧力制御ユニットが、アクチュエータに対して液状物質の自由表面がノズルの開口端を越して液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給すること。
【0019】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、複数のノズルを含む上記の吐出ヘッドを有する装置を制御する方法である。すなわち、吐出ヘッドは、液状物質を吐出するための複数のノズルであって、液状物質の自由表面が複数のノズルのそれぞれの開口端より後退した位置に形成される複数のノズルと、複数のノズルの内部の圧力をそれぞれ変動することにより、液状物質の自由表面を複数のノズルのそれぞれの開口端に移動させるための複数のアクチュエータと、複数のノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、複数のノズルの開口端の外側にそれぞれ設けられた複数の電極であって、自由表面が複数のノズルのそれぞれの開口端に移動すると、液状物質が接するように設けられた複数の電極とを含む。
【0020】
この装置は、さらに、複数の電極にパルス電圧を印加するための静電駆動ユニットと、複数のアクチュエータに駆動パルスを供給するための圧力制御ユニットとを有し、この装置を制御するための方法は以下のステップを含む。
・静電駆動ユニットが、複数の電極に共通のパルス電圧を印加し、圧力制御ユニットが複数のアクチュエータのそれぞれに独立した駆動パルスを供給すること。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の吐出装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】吐出ヘッドの概略構成を示す図。
【図3】ノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は先端方向から見た図。
【図4】ノズルから液が吐出される様子を示す図であり、図4(a)はメニスカスが引き込まれた状態を示し、図4(b)はメニスカスが開口端に移動した状態を示す。
【図5】異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図。
【図6】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図6(a)は断面図、図6(b)は先端方向から見た図。
【図7】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図7(a)は断面図、図7(b)は先端方向から見た図。
【図8】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図8(a)は断面図、図8(b)は先端方向から見た図。
【図9】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図9(a)は断面図、図9(b)は先端方向から見た図。
【図10】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図10(a)は断面図、図10(b)は先端方向から見た図。
【図11】さらに異なる例のノズルの先端の構成を拡大して示す図であり、図11(a)は断面図、図11(b)は先端方向から見た図。
【図12】吐出ヘッドを動作させるためのパルス電位および駆動パルスを供給する様子を示すタイミングチャート。
【図13】吐出装置の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、本発明の実施形態の吐出装置の一例を示している。この吐出装置1は、フェムトリットルオーダーの液滴をターゲット2の狙った位置に吐出させる静電方式(静電吸引方式)のインクジェットヘッド(静電ヘッド)と、ピコリットルオーダーの液滴をターゲット2の狙った位置に吐出させる圧力変動方式のピエゾ型インクジェットヘッド(ピエゾヘッド)としての機能を備えた一体型の吐出ヘッド50と、吐出ヘッド50を搭載したヘッドブロック10とを備えている。吐出ヘッド50は、静電力を用いてノズル52の先端51よりタンク55に収納された液状物質55Lを吐出するための電極53を備えている。タンク55に収納された液状物質55Lは、パイプ54を介してノズル52に供給され、ノズル52の先端51に導かれる。タンク55を省略し、ノズル52に予めセットされた液状物質55Lのみを吐出するタイプであってもよい。
【0023】
この吐出ヘッド50は、さらに、ノズル52の内部圧力の変動を用いてノズル52の先端51よりタンク55に収納された液状物質55Lを吐出するためのピエゾアクチュエータ(圧電素子、ピエゾ素子)58を備えている。ノズル52は樹脂、セラミックスまたはガラス板の積層構造、であってもよく、ガラス管であってもよい。この例ではノズル52は、耐久性および耐腐食性のガラス管またはガラス材により構成されており、全体が非導電性(絶縁性)である。さらに、ノズル52は、ピエゾアクチュエータ58の伸縮により内容積の変動する圧力室(キャビティ)を備えている。
【0024】
液状物質55Lは、液体に限らず、液体と微粒子との混合物、水溶液、溶剤、ナノ粒子液、UV硬化液、イオン流体、オイル、液晶、接着剤、試薬、細胞や遺伝子などの生物材料を含む物質などであってもよい。ターゲット2は、これらの液状物質55Lを塗布、印刷、分注、混合などするための媒体、容器、トレイなどである。
【0025】
吐出装置1は、ターゲット2とヘッドブロック10とを第1の方向(Z方向)に動かしてノズル52の先端51とターゲット2との距離(間隔、ギャップ)を制御するためのギャップ制御機構16と、ターゲット2をヘッドブロック10に対し、Z方向に対して垂直な方向(XY方向)に移動するための移動機構17とを備えている。ターゲット2および/または移動機構17は、静電方式で吐出するための電極53と対をなす対向電極としての機能を備えており、吐出ヘッド50の電極53に電位(パルス状または一定の)を印加することにより電極53とターゲット2との間に電界を形成し、静電吐出(静電吸引液滴形成)が可能となっている。
【0026】
ギャップ制御機構16の一例はZ方向に移動可能なZステージであり、ボールねじやリニアモーター、リニアスケール制御モーターなどの公知のアクチュエータを用いて実現できる。移動機構17の一例はXY移動テーブルである。移動機構17は、Y方向またはX方向にのみターゲット2を移動するための機構であってもよい。また、ギャップ制御機構16およびXY移動機構17を1つのXYZ移動テーブルで実現することも可能である。
【0027】
この吐出装置1では、移動機構17により吐出位置を決め、その位置に液状物質55Lを吐出して着滴することにより描画などの処理を実行できるインクジェットオンデマンド描画装置である。さらに、この吐出装置1は、ターゲット2に対する処理で要求される解像度あるいは液滴の径により静電方式と、圧力変動方式を使い分ける。さらに、使用する方式によりターゲット2に対しヘッドブロック10を上下(前後)に動かして、ノズル先端51とターゲット2とのギャップを制御する。
【0028】
吐出装置1は、さらに、ノズル52の内圧を大気圧に対して負圧0〜20kPaの範囲、より好ましくは負圧0〜10kPa、さらに好ましくは負圧1〜5kPaの範囲に維持するための真空ポンプ11と、初期設定などに用いられるステージ観察カメラ15と、電極53へパルス的な電圧変動を加えて静電方式による吐出を行わせるための静電駆動ユニット(静電コントローラ)13と、圧電素子58に駆動パルス(多くの場合はパルス的な電圧変動)を供給して静電方式および圧力変動方式の吐出を制御するための圧力制御ユニット(ピエゾコントローラ)12とを含む。吐出装置1は、また、XY移動テーブル17を制御するステージコントローラ18と、吐出装置1の全体的な制御を行うコントローラユニット40とを含む。コントローラユニット40はモード切替機能41と、描画機能42とを含む。
【0029】
図2に、ヘッド50の概略構成を拡大して示している。一体型の吐出ヘッド50は、タンク55に連通したノズル52を備えており、ノズル52の先端51がターゲット2に対向するようにヘッドブロック10に搭載されている。このノズル52は、ガラス管30により構成されており、ノズル52の先端51を構成する、ガラス管30のターゲット2に対向した端面31には、ノズル52に連通した開口32が設けられている。ガラス管30は先端の開口32から後退した部分が圧力室(キャビティ)35となり、ガラス管30の外側に駆動用の電極58eを介してピエゾ素子58が装着されている。
【0030】
この一体型のヘッド50においては、真空ポンプ11によりノズル52の内圧が外気圧より3kPa程度低くなるように設定されている。このため、液状物質55Lの自由表面(メニスカス)20がノズル52の開口端、すなわち、ガラス管30の端面31の開口32の外側のエッジ(開口端)32eより後退した位置に形成される。また、このヘッド50は、ピエゾ素子58によりキャビティ35の容積を変更することによりノズル52の内部の圧力を変動することが可能であり、液状物質55Lのメニスカス20をノズル52の開口端32eに移動させることができる。
【0031】
さらに、ノズル52の先端51を形成する非導電性部材のガラス管30の外面に電極53が形成されており、電極53の端53eがガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eの外側に延びている。したがって、メニスカス20がノズル52の開口端32eに移動すると、液状物質55Lが電極端部53eに接して液状物質55Lが帯電させられる。このため、対向電極となるように接地電位に接続されたターゲット2に液状物質55Lが静電吸引され、ノズル52の先端51から液状物質55Lがターゲット2の表面に滴下される。
【0032】
図3にノズル52の先端51の構成を拡大して示している。図3(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図3(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。なお、ターゲット2の方向から見た図においては、示している部材を明確にするために、断面図ではないが断面と同じ表示を部分的に付している。以下においても同様である。
【0033】
このノズル52においては、その先端51を構成するガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eの外周に、液状物質55Lに対して撥液性(撥水性)を示す疎液性の層60が形成されており、電極53の端(電極端部)53eは疎液性の層60の上に設けられている。
【0034】
疎液性の層60は、疎水性の層、疎溶媒性の層などであって、吐出する液状物質55Lに対し撥水性または撥液性を示す層であればよい。疎液性の層60は、たとえば、フッ素系またはシリコン系の樹脂またはコーティング液、フルオロシラン系の液剤等の撥液材料を塗布したり、PTFEを含有する共析メッキを施したり、金チオール処理を施したり、CVD法等によりフッ素系物質を蒸着することにより形成できる。疎液性の層60を設けることにより、端面31における液切れが向上する。このため、液状物質55Lが電極端部53eと接触する時間を短縮でき、また、液状物質55Lが吐出した後に液状物質55Lと電極端部53eとが確実に切断されやすくなる。
【0035】
このノズル52においては、電極端部53eは、ガラス管30の端面31の、ノズル52の円形の開口端32eの外周の一部に設けられており、開口端32eの内側、すなわち、ガラス管30の開口32の内面(内壁面)には設けられていない。一方、液状物質55Lのメニスカス20は、ノズル52の内圧が外気圧力より若干低いので、開口端32eから後退した位置にある。したがって、通常状態(定常状態)では、液状物質55Lは電極端部53eには接しない。また、ガラス管30は、耐腐食性の部材であるとともに良好な非導電性(絶縁性)部材なので、液状物質55Lは電極端部53eにより帯電することは少ない。
【0036】
図4(a)に示すように、このノズル52において、ピエゾコントローラ12から適当な電圧の駆動パルスを供給してピエゾ素子58を変形させてキャビティ35を膨張させると、ノズル52の先端51はさらに負圧になり、メニスカス20はノズル52の内部に引き込まれる。次に、図4(b)に示すように、ピエゾ素子58の形状が復帰するとキャビティ35も復元され、その結果、メニスカス20はノズル52の開口端32eに向かって押し出される。ノズル開口32に連通するインク室(キャビティ)35を膨張させてから収縮させるという方式は、ピエゾを用いたインクジェット方式では「引き打ち」方式と呼ばれており、吐出されるインク滴の重量を少なくできるというメリットと、吐出前後のメニスカスの形状を制御し易いというメリットとを備えており、液滴を飛散させずに所定の方向に吐出するために有用な方式である。たとえば、特開2005−104163号などに駆動パルスなどを含めて記載されている。
【0037】
図4(b)に示したようにメニスカス20が開口端32eの付近に到達したり、メニスカス20が開口端32eから突出したような状態になると、液状物質55Lは電極端部53eに接する。このタイミングで、または若干前後して、静電コントローラ13から電極53にパルス状の電圧(電位)が印加されると、液状物質55Lの開口端32eに達した部分が帯電される。引き打ち方式で開口端32eに移動されたメニスカス20は、多くの場合、メニスカス20の中心部分21がターゲット2に向けて突出した形状となる。このため、メニスカス20の先端22に電界が集中するので、先端22から対向電極であるターゲット2に向けたジェット流25が生じる。これにより、液状物質55Lの一部がターゲット2である基板などに移動して液滴として着弾あるいは塗布された状態となる。
【0038】
したがって、この一体型のヘッド50においては、ノズル52の内部の液状物質55Lはほとんど帯電されることはなく、電極53と液状物質55Lとが接触する時間はごく短時間に限られる。さらに、パルス状の電位が電極53に供給される場合は、液状物質55Lの帯電した部分はターゲット2に移動した後、ターゲット2とノズル先端51とは瞬間的に同電位、すなわち、接地電位になる。したがって、この吐出ヘッド50により、液状物質55Lが帯電することにより変質したり、濃度分布が偏ったりすることはなく、さらに、液状物質55Lが電極53との接触により影響を受けることもほとんどない。さらに、ガラス管30は、多種多様な液状物質55Lに対して安定している。このため、この吐出ヘッド50により多種多様な液状物質を、微小量、たとえば、フェムトリットルの単位で精度よくターゲット2に塗布したり、分注したりすることができる。
【0039】
さらに、この一体型ヘッド50においては、図2に示すように、ピエゾコントローラ12からパルス幅および/または高さの小さい駆動パルス(第1の駆動パルス)12P1と、パルス幅および/またはパルス高さの大きな駆動パルス(第2の駆動パルス)12P2とをピエゾ素子58に供給できる。メニスカス20がノズル開口端32eに達する程度の小エネルギーの駆動パルス12P1をピエゾ素子58に供給し、圧力変動をピエゾ素子58により得ることにより、上記のように静電吸引方式あるいは静電アシスト方式で、液状物質55Lをターゲット2に吐出できる。すなわち、一体型ヘッド50を静電ヘッドとして使用できる。圧力変動のみであればノズル先端51から分離されないような液柱を、静電力によりターゲット2に向けて射出する方式を、静電アシスト方式と呼ぶことがある。
【0040】
また、液状物質55Lのメニスカス20がノズル開口端32eを越えて液状物質55Lが静電力がなくても吐出されるような大エネルギーの駆動パルス12P2をピエゾ素子58に供給することにより、オンデマンドのピエゾヘッドとして、一体型ヘッド50を使用できる。一体型ヘッド50をピエゾヘッドとして使用することにより、ピコリットル程度の比較的容量の大きな液滴をターゲット2に吐出できる。さらに、この一体型のヘッド50においては、上記の範囲で、様々なエネルギーの駆動パルスとパルス電位とを組み合わせることにより、様々な量の液滴をターゲット2に吐出することが可能となる。
【0041】
図5に、一体型ヘッド50の異なる例を示している。上記のヘッドと共通する構成については同じ符号を付している。以下の実施例においても同様である。この一体型の吐出ヘッド50においては、ノズル52の開口端32eの内面33に、外周の疎液性の層60と連続するように形成された内側の疎液性の層61をさらに備えている。疎液性の層60を内側まで設けることにより、液状物質55Lの液切れをさらに促進でき、より安定した吐出性能が得られる。また、このヘッド50においても、ノズル52の内圧を下げてメニスカス20を開口端32eから後退させているが、ノズル先端51の内面33に設けた疎液性の層61によってもメニスカス20を開口端32eから後退させることができる。また、ノズル52の内圧を下げる方法は、真空ポンプ11を設けることに代わり、タンク55の設置高さをノズル52の先端51に対して低くすることであってもよい。
【0042】
図6に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図6(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図6(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、ノズル52の内側であるガラス管30の内面33に、ノズル52の開口端32eから後退した位置が終端65eとなるように芯65を設けている。芯(ロッド)65は、典型的にはガラス棒であり、断面は円、楕円、多角形のいずれであってもよい。芯65とガラス管30の内面33との毛管現象により液面(メニスカス)20を芯65の終端65eの位置に制御できる。したがって、定常状態において液状物質55Lの自由表面(メニスカス)20をノズル52の開口端32eより後退した位置に保持できる。終端65eと開口端32eとの距離hは、300μm以内であることが望ましい。
【0043】
また、電極端部53eは、ガラス管30の端面31の、開口端32eから若干後退した位置に配置している。これにより、液状物質55Lの液切れをさらに促進でき、より安定した吐出性能が得られる。
【0044】
図7に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図7(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図7(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、ノズル52の内側であるガラス管30の内面33に、ノズル52の開口端32eから後退した位置が終端66eとなるように溝66を設けている。溝66の断面は半円、多角形のいずれであってもよい。溝66とガラス管30の内面33との毛管現象により液面(メニスカス)20を溝66の終端66eの位置に制御できる。したがって、定常状態において液状物質55Lの自由表面(メニスカス)20をノズル52の開口端32eより後退した位置に保持できる。終端66eと開口端32eとの距離hは、300μm以内であることが望ましい。
【0045】
図8に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図8(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図8(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、液状物質55Lに静電力を付与するための電極端部53eを、ガラス管30の端面31の、ノズル52の開口端32eから外側へ後退した位置に設け、その内側にノズル52の開口端32eと電極端部53eとを連結し、液状物質55Lが電極端部53eに到達しやすいように、開口端32eの外側に限定して親液性の層62を設けている。ノズル内の圧力変動により開口端32eの近傍に達した液状物質55Lを、親液性の層62により電極端部53eに導き、液状物質55Lを確実に帯電させることができる。
【0046】
親液性の層62は、吐出する液状物質55Lに対して親水性または親溶媒性を示す層であればよい。親液層62は、プラズマ処理やオゾン処理等により端面31を部分的に親液状態にして親液層62を形成する方法や、酸化チタンTiO2をコーティングし、紫外線を照射することにより、端面31の上に親液層62を形成(積層)する方法を採用することが可能である。本装置1に、親液性を持続的に維持するために、水銀の紫外線照射装置を搭載したり、UV−LEDランプを搭載して、本ヘッド50のノズル先端部51を定期的に照射する機構を設けることは有用である。
【0047】
図9に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図9(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図9(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50においては、ノズル52の開口端32eの内面33に、外側に設けられた親液性の層62と連結するように、内側の親液性の層63を設けている。ノズル内の圧力変動により開口端32eの近傍に達した液状物質55Lを、親液性の層63および62により電極端部53eに導き、液状物質55Lをさらに確実に帯電させることができる。
【0048】
さらに、この一体型ヘッド50においては、円形の開口端32eの全周に沿って親液性の層62および63を設け、さらにその外側に、円形の開口端32eの全周に沿って電極端部53eを設けている。したがって、ノズル内の圧力変動により開口端32eの近傍に達した液状物質55Lのいずれかの部分を、親液性の層63および62により電極端部53eに導くことができ、液状物質55Lをさらに確実に帯電させ、いっそう容易に静電吸引により液状物質55Lを吐出できる。
【0049】
図10に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図10(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図10(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。ノズル52においては、端面31に対して疎液性および親液性の処理を施さずに電極端部53eを形成している。ノズル52を形成する部材30が液状物質55Lに対してある程度の接触角を有し、疎液性を示す場合は、撥液性(疎液性)を持つ層60または61を形成しなくても疎液性の層を形成したのと同様の効果が得られる。また、ノズル52を形成する部材30が液状物質55Lに対して親液性を示す場合は、親液性の層62または63を形成しなくても親液性の層を形成したのと同様の効果が得られる。
【0050】
図11に、一体型ヘッド50のさらに異なる例を示している。図11(a)は、ノズル52の先端51の構成を、ノズル52の軸方向に沿って切った断面図により示している。図11(b)はノズル52の先端51をターゲット2の方向から見た様子を示している。このヘッド50は、複数のノズル52を含み、端面31に複数の開口端32eが形成されている。
【0051】
すなわち、この吐出ヘッド50は、液状物質55Lを吐出するための複数のノズル52と、複数のノズル52の内部の圧力をそれぞれ変動することにより、液状物質55Lのメニスカス20を複数のノズル52のそれぞれの開口端32eに移動させるための複数のアクチュエータ(不図示)と、複数のノズル52の先端51を形成する非導電性部材(この例ではガラス加工品)の端面31の、複数のノズル52の開口端32eの外側に設けられたそれぞれ複数の電極端部53eとを有する。それぞれのノズル52において、それぞれのノズル52の内部の自由表面(メニスカス)20が、それぞれのノズル52の開口端32eに移動すると、それぞれのノズル52内の液状物質55Lが、それぞれのノズル52の外側に設けられた電極端部53eにそれぞれ接して帯電させられる。なお、電極端部53eを共通の電極とせず、個別独立の電極として形成しても良い。
【0052】
さらに、端面31の開口端32eの外側には疎液性の層60が設けられ、各ノズル52の内部には、ガラス製の芯65が取り付けられており、各ノズル52内のメニスカス20が各ノズル52の開口端32eからノズル52の内部に後退した位置になるようにしている。また、各ノズル52の開口端32eに設けられた静電力を付与するための電極端部53eは、共通の電極53cに電気的に接続されている。したがって、複数のノズル52の電極端部53eには静電コントローラ13から共通のパルス電位13pが印加されるようになっている。
【0053】
図12に、複数のノズル52を含む吐出ヘッド50にパルス電位13pと、駆動パルス12p1とを供給する様子をタイミングチャートにより示している。時刻t1に、n番目とn+1番目のノズル52にピエゾコントローラ12から駆動パルス12p1が供給される。この駆動パルス12p1により、n番目とn+1番目のノズル52においてメニスカス20がノズル開口端32eに移動する。メニスカス20がノズル開口端32eに達したいタイミングの時刻t2にn番目とn+1番目を含めたすべてのノズル52の電極端部53eに静電コントローラ13からパルス電位13pが供給される。メニスカス20がノズル開口端32eに到達し、液状物質55Lが電極端部53eに接しているn番目とn+1番目のノズル52においては液状物質55Lが帯電させられて吐出される。液状物質55Lが吐出されると、メニスカス20が定常状態のノズル開口端32eから後退した位置に戻る。このため、時刻t3においては、液状物質55Lは、n番目とn+1番目のノズル52においても電気的に電極端部53eから遮断される。
【0054】
時刻t4においては、n+1番目のノズル52にのみピエゾコントローラ12から駆動パルス12p1が供給される。この駆動パルス12p1により、n+1番目のノズル52のメニスカス20がノズル開口端32eに移動し、n番目のノズル52のメニスカス20は移動しない。したがって、時刻t5にすべてのノズル52の電極端部53eに静電コントローラ13からパルス電位13pが供給されると、n+1番目のノズル52から液状物質55Lが吐出され、n番目のノズル52からは液状物質は吐出されない。時刻t7においては、上記と逆に、n番目のノズル52にのみピエゾコントローラ12から駆動パルス12p1が供給され、時刻t8にn番目のノズル52から液状物質55Lが吐出され、n+1番目のノズル52からは液状物質55Lが吐出されない。
【0055】
このように、この吐出ヘッド50を備えた吐出装置1においては、ピエゾコントローラ12により供給される駆動パルス12p1により各ノズル52からの静電吸引による液滴の吐出を制御できる。したがって、ピエゾ型のインクジェットプリンタと同様または類似の制御で、静電吸引方式または静電アシスト方式により液滴を吐出または分注などを行う装置を制御できる。さらに、常時は、吐出対象の液状物質55Lを帯電させることなく、また、電極に接触させることなく静電吸引方式または静電アシスト方式により液滴を吐出できる。
【0056】
さらに、時刻t10には、n番目のノズル52に小エネルギーの駆動パルス12p1を供給し、n+1番目のノズル52には大エネルギーの駆動パルス12p2を供給している。したがって、n番目のノズル52からは静電方式により液滴が吐出され、n+1番目のノズル52からはオンデマンドのピエゾ駆動方式(圧力変動方式)により液体が吐出される。
【0057】
また、時刻t11には、n番目およびn+1番目のノズル52に大エネルギーの駆動パルス12p2を供給している。このため、n番目およびn+1番目のノズル52からオンデマンドのピエゾ駆動方式(圧力変動方式)により液体が吐出される。このように、本例の吐出ヘッド50を備えた吐出装置1においては、静電方式による吐出(液滴の形成)と、圧力変動方式による吐出(液滴の形成)とをピエゾ素子58を駆動するパルスのエネルギーを変えるだけで簡単に制御できる。さらに、複数の吐出ヘッド50を含む吐出装置1においては、それぞれの吐出ヘッド50の吐出方法を、吐出ヘッド50の単位でバリアブルに選択することが可能である。
【0058】
図13に、吐出装置1のコントローラユニット40の制御動作の概要をフローチャートにより示している。ステップ81において、モード切替機能41はパーソナルコンピュータ5のアプリケーションからの描画あるいは分注などの要求により静電方式による吐出か、圧力変動方式による吐出かを選択する。静電方式が選択されると、描画機能42は、ステップ82で、ピエゾコントローラ(圧力制御ユニット)12により小エネルギーの駆動パルス12p1を吐出ヘッド50のピエゾ素子58に供給する。複数のノズル52を含む吐出ヘッド50においては、吐出が要求されるノズル52のピエゾ素子58に駆動パルス12p1を供給する。
【0059】
次いで、ステップ83において、描画機能42は、静電コントローラ(静電駆動ユニット)13により静電駆動用のパルス電位13pを吐出ヘッド50の静電駆動用の電極53に供給する。複数のノズル52を含む吐出ヘッド50においては、各ノズル52の電極端部53eに共通のタイミングでパルス電位13pを供給するか、または、各ノズル52の電極端部53eに共通の電極53cへパルス電位13pを供給する。これにより、ターゲット2に対して所望のノズル52から微小な、フェムトリットル程度の液滴が吐出される。
【0060】
一方、ステップ81において圧力変動方式が選択されると、描画機能42は、ステップ84で、ピエゾコントローラ12を介して大エネルギーの駆動パルス12p2を吐出ヘッド50のピエゾ素子58に供給する。複数のノズル52を含む吐出ヘッド50においては、吐出が要求されるノズル52のピエゾ素子58に駆動パルス12p2を供給する。これにより、ターゲット2に対して所望のノズル52からピコリットル程度の液滴が吐出される。
【0061】
ステップ84において吐出される液滴が電極端部53eにより得られる静電力によりそれほど影響を受けないのであれば、小エネルギーの駆動パルス12p1と、大エネルギーの駆動パルス12p2とを同時に、並行して所望のノズル52のピエゾ素子58に供給することも可能である。したがって、フェムトリットル程度の微小の液滴と、ピコリットル程度の比較的大きな液滴とを同時にターゲット2に向けて吐出することも可能である。
【0062】
このように、この吐出ヘッド50を搭載した装置1においては、各ノズル52をノズル単位で静電方式の吐出と、圧力変動方式による吐出とを自由に使い分けることができ、様々なアプリケーションの要求に答えることができる。
【0063】
さらに、静電吸引および静電アシストを含む静電方式で液状物質を吐出するために、通常状態では帯電させる必要がなく、さらに、電極とも接触させる必要がない。したがって、吐出対象の液状物質としては、インク、水などの液体に限らず、液体と微粒子との混合物、水溶液、溶剤、ナノ粒子液、UV硬化液、イオン流体、オイル、液晶、接着剤、試薬、細胞や遺伝子などの生物材料を含む物質など、様々な物質を、その物質の特性や成分に影響をほとんど与えずに静電方式で吐出できる。さらに、ノズル全体をガラスなどの絶縁性で耐食性の高い部材で形成することが可能となり、この点でも、さまざまな物質を、静電方式を用いて吐出するのに適している。
【0064】
なお、以上では、幾つかの例を用いて本発明を説明しているが、たとえば、上述した幾つかの例を組み合わせたり、一部のみを適用して本発明を実現することは当業者であれば可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 吐出装置、 10 ヘッドブロック、 50 吐出ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物質を吐出するためのノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、
前記ノズルの内部の圧力を変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、
前記ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、前記自由表面が前記ノズルの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外周に疎液性の層が形成されており、前記電極は前記疎液性の層の上に設けられている、吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記非導電性部材の、前記ノズルの開口端の内側に、前記外周の疎液性の層と連続するように形成された内側の疎液性の層をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1において、前記電極は、前記非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端から外側へ後退した位置に設けられており、
前記非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端と前記電極とを連結するように、前記開口端の外側に設けられた親液性の層をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4において、前記非導電性部材の、前記ノズルの開口端の内側に、前記外側に設けられた親液性の層と連結するように設けられた内側の親液性の層をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記電極は、前記ノズルの開口端に沿った外側に、前記ノズルの開口端を囲うように設けられている、吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記ノズルの内側に、前記ノズルの開口端から後退した位置が終端となるように設けられた芯または溝をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記ノズルの内部を外気に対して負圧に維持する圧力制御ユニットをさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記液状物質を収納したタンクであって、前記ノズルの開口端より下側に配置されたタンクをさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記アクチュエータは、前記ノズルの内容積を膨張させてから復元し、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端からさらに後退させてから前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に到達するようにする、吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、前記非導電性部材の端面に複数の前記ノズルの開口端が形成されている、吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項11において、前記複数のノズルの開口端の外側に複数の前記電極がそれぞれ設けられており、前記複数の電極は電気的に繋がっている、吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項12に記載の吐出ヘッドと、
前記複数の電極に共通のパルス電圧を印加する静電駆動ユニットと、
前記複数のノズルのそれぞれの前記アクチュエータに、それぞれ駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれかに記載の吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドにより前記液状物質が吐出されるターゲットを前記吐出ヘッドに対して相対的に移動させる移動機構とを有する装置。
【請求項15】
請求項1ないし12のいずれかに記載の吐出ヘッドと、
前記電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、
前記アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置。
【請求項16】
請求項15において、前記圧力制御ユニットは、前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給する機能と、
前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端を越して前記液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給する機能とを含む、装置。
【請求項17】
液状物質を吐出するためのノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、前記ノズルの内部の圧力を変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、前記ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、前記自由表面が前記ノズルの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッドにより前記液状物質を吐出する方法であって、
前記アクチュエータにより前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせることと、
前記アクチュエータにより前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端を越して前記液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせることとを含む方法。
【請求項18】
吐出ヘッドを有する装置を制御する方法であって、
前記吐出ヘッドは、液状物質を吐出するためのノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、
前記ノズルの内部の圧力を変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、
前記ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、前記自由表面が前記ノズルの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた電極とを含み、
前記装置は、さらに、前記電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、前記アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有し、
当該方法は、
前記圧力制御ユニットが、前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給し、前記静電駆動ユニットが、前記電極に静電吐出のための電圧を供給することと、
前記圧力制御ユニットが、前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端を越して前記液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給することとを有する、方法。
【請求項19】
吐出ヘッドを有する装置を制御する方法であって、
前記吐出ヘッドは、液状物質を吐出するための複数のノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記複数のノズルのそれぞれの開口端より後退した位置に形成される複数のノズルと、
前記複数のノズルの内部の圧力をそれぞれ変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記複数のノズルのそれぞれの開口端に移動させるための複数のアクチュエータと、
前記複数のノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記複数のノズルの開口端の外側にそれぞれ設けられた複数の電極であって、前記自由表面が前記複数のノズルのそれぞれの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた複数の電極とを含み、
前記装置は、さらに、前記複数の電極にパルス電圧を印加するための静電駆動ユニットと、前記複数のアクチュエータに駆動パルスを供給するための圧力制御ユニットとを有し、
当該方法は、
前記静電駆動ユニットが、前記複数の電極に共通のパルス電圧を印加し、前記圧力制御ユニットが前記複数のアクチュエータのそれぞれに独立した駆動パルスを供給することを有する方法。
【請求項1】
液状物質を吐出するためのノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、
前記ノズルの内部の圧力を変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、
前記ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、前記自由表面が前記ノズルの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外周に疎液性の層が形成されており、前記電極は前記疎液性の層の上に設けられている、吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記非導電性部材の、前記ノズルの開口端の内側に、前記外周の疎液性の層と連続するように形成された内側の疎液性の層をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1において、前記電極は、前記非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端から外側へ後退した位置に設けられており、
前記非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端と前記電極とを連結するように、前記開口端の外側に設けられた親液性の層をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4において、前記非導電性部材の、前記ノズルの開口端の内側に、前記外側に設けられた親液性の層と連結するように設けられた内側の親液性の層をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記電極は、前記ノズルの開口端に沿った外側に、前記ノズルの開口端を囲うように設けられている、吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記ノズルの内側に、前記ノズルの開口端から後退した位置が終端となるように設けられた芯または溝をさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記ノズルの内部を外気に対して負圧に維持する圧力制御ユニットをさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記液状物質を収納したタンクであって、前記ノズルの開口端より下側に配置されたタンクをさらに有する、吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記アクチュエータは、前記ノズルの内容積を膨張させてから復元し、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端からさらに後退させてから前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に到達するようにする、吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、前記非導電性部材の端面に複数の前記ノズルの開口端が形成されている、吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項11において、前記複数のノズルの開口端の外側に複数の前記電極がそれぞれ設けられており、前記複数の電極は電気的に繋がっている、吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項12に記載の吐出ヘッドと、
前記複数の電極に共通のパルス電圧を印加する静電駆動ユニットと、
前記複数のノズルのそれぞれの前記アクチュエータに、それぞれ駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれかに記載の吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドにより前記液状物質が吐出されるターゲットを前記吐出ヘッドに対して相対的に移動させる移動機構とを有する装置。
【請求項15】
請求項1ないし12のいずれかに記載の吐出ヘッドと、
前記電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、
前記アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有する装置。
【請求項16】
請求項15において、前記圧力制御ユニットは、前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給する機能と、
前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端を越して前記液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給する機能とを含む、装置。
【請求項17】
液状物質を吐出するためのノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、前記ノズルの内部の圧力を変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、前記ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、前記自由表面が前記ノズルの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた電極とを有する吐出ヘッドにより前記液状物質を吐出する方法であって、
前記アクチュエータにより前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせることと、
前記アクチュエータにより前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端を越して前記液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせることとを含む方法。
【請求項18】
吐出ヘッドを有する装置を制御する方法であって、
前記吐出ヘッドは、液状物質を吐出するためのノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端より後退した位置に形成されるノズルと、
前記ノズルの内部の圧力を変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記ノズルの開口端に移動させるためのアクチュエータと、
前記ノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記ノズルの開口端の外側に設けられた電極であって、前記自由表面が前記ノズルの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた電極とを含み、
前記装置は、さらに、前記電極に電圧を印加する静電駆動ユニットと、前記アクチュエータに駆動パルスを供給する圧力制御ユニットとを有し、
当該方法は、
前記圧力制御ユニットが、前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端に達する程度の圧力変動を生じさせる第1の駆動パルスを供給し、前記静電駆動ユニットが、前記電極に静電吐出のための電圧を供給することと、
前記圧力制御ユニットが、前記アクチュエータに対して前記液状物質の自由表面が前記ノズルの開口端を越して前記液状物質を吐出する程度の圧力変動を生じさせる第2の駆動パルスを供給することとを有する、方法。
【請求項19】
吐出ヘッドを有する装置を制御する方法であって、
前記吐出ヘッドは、液状物質を吐出するための複数のノズルであって、前記液状物質の自由表面が前記複数のノズルのそれぞれの開口端より後退した位置に形成される複数のノズルと、
前記複数のノズルの内部の圧力をそれぞれ変動することにより、前記液状物質の自由表面を前記複数のノズルのそれぞれの開口端に移動させるための複数のアクチュエータと、
前記複数のノズルの先端を形成する非導電性部材の端面の、前記複数のノズルの開口端の外側にそれぞれ設けられた複数の電極であって、前記自由表面が前記複数のノズルのそれぞれの開口端に移動すると、前記液状物質が接するように設けられた複数の電極とを含み、
前記装置は、さらに、前記複数の電極にパルス電圧を印加するための静電駆動ユニットと、前記複数のアクチュエータに駆動パルスを供給するための圧力制御ユニットとを有し、
当該方法は、
前記静電駆動ユニットが、前記複数の電極に共通のパルス電圧を印加し、前記圧力制御ユニットが前記複数のアクチュエータのそれぞれに独立した駆動パルスを供給することを有する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−188581(P2010−188581A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34288(P2009−34288)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(509046572)浜松ナノテクノロジー株式会社 (1)
【出願人】(598086589)株式会社マイクロジェット (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(509046572)浜松ナノテクノロジー株式会社 (1)
【出願人】(598086589)株式会社マイクロジェット (16)
【Fターム(参考)】
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