説明

吐水速度調整弁付き水栓

【課題】吐水管の先端から真下に吐水する従来の水栓では、水受容器の上に張り出した吐水管が長ければ作業の障害になり、単に短くするだけでは作業範囲が狭まるという問題があった。
【解決手段】障害となる吐水管を短くすると共に、吐水口を作業者方向に向け、吐水口に吐水速度調整弁を設けて、常に一定の勢いで放物線状に吐水させる。
つまり水量が少ないときは細く、水量が多い時は太く吐水させることで、作業の障害となる吐水管の張り出しがなく、給水量の増減にかかわらず、水受容器の中央で作業できる水栓を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水受容器上への吐水管の張り出しがない水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な水栓は、水栓本体から水受容器上へ長く張り出した吐水管の先端から下方に向けて吐水し、その吐水管の下で作業する構造であった。
【0003】
しかし、吐水管の下で作業を行う為、洗浄する物や水を入れる容器が吐水管に当たる、又は作業する手元が吐水管に隠れる等、作業者と作業場所の間に張り出した吐水管が作業の障害になるという欠点があった。
【0004】
この作業の障害になる吐水管には、短くすれば作業範囲が狭まり、長くすれば作業の障害になるという相反する問題があった。
【0005】
この改善策として、吐水管先端の位置を高くしたり、移動可能にする等の改良がなされているが、いずれも吐水管の下で作業する構造であった。
一部に、吐水管の先端の吐水口を回転して上方向に向けられるものがあるが、給水量が増えると水が高く上がり、吐水が水受容器の縁を越えて外に出るという問題があった。
特許としては、吐水管を水平方向より垂直方向に長くする発明があり(例えば特許文献1参照)、その解決しようとする課題は本発明に近いものがあるが、吐水速度を制御していない為、給水量の増減によって吐水を利用できる位置が変化する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2010−37711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、作業者と作業場所の間に張り出している吐水管が作業の障害となっている点、並びに、吐水管の張り出しを少なくする、あるいは吐水口を回転して上に向ける等の改良だけでは、給水量が少ないと吐水が吐水口からほぼ真下に落ちて作業が困難となり、多いと吐水が水受容器の縁を越えて外に出る等の解決されなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吐水管が作業者と作業場所の間に張り出して作業の障害にならないよう、かつ、給水量の多少に影響されず同じ位置で作業できるよう常に一定した勢いで吐水させるため、吐水管を短くし、吐水口に吐水速度を一定にする、吐水速度調整弁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吐水速度調整弁付き水栓は、作業の障害となる吐水管の張り出しが無く、広い空間で自由に作業ができる。
又、吐水速度調整弁によって、常に一定の吐水速度で吐水される為、給水量の多少にかかわらず常に同じ位置で作業できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】吐水速度調整弁の動作が、給水量に連動する方式の実施例1を示した断面図である。
【図2】吐水速度調整弁の動作が、給水量に連動する方式の実施例2を示した断面図である。
【図3】吐水速度調整弁の動作が、給水量に連動する方式の実施例3を示した断面図である。
【図4】吐水速度調整弁の動作を、手動で調整する方式の実施例4を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、給水量を制御する水栓本体に、作業の障害にならない短い吐水管を組み合わせ、給水量の多少にかかわらず常に水が一定の勢いで吐水されるよう吐水口に吐水速度調整弁を設けたものである。
水栓本体は、本体1がその下端において給水設備配管の末端に接続され、ハンドル7と一体のスピンドル5を回転操作することにより、給水量調整弁4のパッキン2と弁座2の間隔が変化して、給水配管から吐水管12方向への給水量を制御する既存の技術である。
吐水速度調整弁10は、吐水口14に勘合する形状を持ち、給水量に合わせて吐水口14との相対距離を変化させて、吐水口14の開口面積つまり吐水の径を変化させることで、吐水の速度と飛距離を一定に調整するものである。
吐水口の向きは吐水口の高さにもよるが、吐水管を短くする為、従来の下向きではなく、少なくとも水平か水平より上向きとなる。
以下に述べる実施例は、いずれも原理の説明を主目的とし、既存の技術は容易に類推できるものを含めて省略するか例示に留め、詳細な構造や製造技術についても誇張、抽象化又は省略してある。
一部を挙げれば、水栓本体内で給水量調整弁4を制御する構造としてスピンドル方式を例にしているが、給水量を調整できれば良く、それに限定されない。
水栓本体と吐水管12の組み合わせは、図の如く一体成形する他に、水栓本体に対して吐水口14を上下左右移動可能に接続する、又、一体構造とせず、各々独立させて設置し、配管で接続することもできる。
吐水口14とそれに勘合する吐水速度調整弁10の形状は円形で説明されているが、相互の位置関係によって吐水口14の開口面積が調整できる組み合わせであれば円形である必要はなく、同軸形状である必要もなく、水門のように一方向から順次閉塞、開放していく形状でも良く、形状は限定されない。
吐水口14の数については、単口とすることもできるが、吐水口の断面を複数に仕切り、それぞれの部分からの吐水流の方向にやや角度を持たせることによって、各々の水流が縄を糾う形で絡み合った一本の吐水となって水流が広がらず、纏まるような構造とすることもできる。
これは吐水口14が単口であっても、吐水口14の内面と吐水速度調整弁10の外面の少なくとも一方の表面に螺旋状の溝を設けることでも可能であるが、双方の溝が互いに勘合するように設けることでより有効となり、より少ない給水量にも対応できる。
また、吐水流内に空気を気泡状に導入して泡沫栓とすることで吐水の飛散を少なくすることも既存の技術である。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例1の断面図であって、
給水量を制御するハンドル7に固定されたスピンドル5の下部にテーパーカム8が設けてあり、
吐水速度調整弁10が吐水管12の管内にその軸方向に習動自在に勘合し、
吐水速度調整弁10に一体となって設けられたロッド9の末端がテーパーカム8に接するよう配されおり、
中央に吐水口14を持つ吐水口キャップ13は、その周囲内周の雌ねじが吐水管12の先端外周の雄ねじに螺合するとともに吐水管12内に納めたバネ11を介して吐水速度調整弁10と一体のロッド9をテーパーカム8側に付勢している。
上記の変形としての既存技術の例を挙げれば、上記テーパーカム8とロッド9から成る追従カムは、スピンドル5の回転角度が一定以下の場合は、バネ11を廃してスピンドル5の軸周りの確動カムとすることもできる。
テーパーカム8を円錐形としてスピンドル5と同軸、一体に配する形としているが、テーパーカム8はスピンドル5の回転には連動せず、上下動のみに連動するよう配することもでき、その場合は円錐形でなくても良い。
ロッド9を介しているが、結果的に給水量調整弁4と吐水速度調整弁10の動作が連携すれば良く、リンクや連続した複数のボール、フレキシブルロッド、水圧、油圧等を仲介して連携させることもできる。
【0013】
その動作は、ハンドル7と一体のスピンドル5を反時計方向に回転操作することでスピンドル5が上昇し、給水量調整弁4と一体のパッキン3が弁座2から離れ、その移動量に応じた水量が給水設備配管から吐水管12方向に給水される。
この時、テーパーカム8がスピンドル5と共に上昇し、それに伴いロッド9と一体の吐水速度調整弁10が、バネ11の付勢力によりテーパーカム8の円錐面に沿ってスピンドル5の中心軸方向に吐水管12内を移動する。
結果、吐水速度調整弁10と吐水口14の間隙が広がり、吐水口14の開口面積つまり吐水流の径が太くなる為、順次給水量が増えても吐水口14での吐水速度は変わらない。
ハンドル7を時計方向に回転操作した場合は、上記と逆の動作となり、吐水速度調整弁10と吐水口14の間隙が狭まって、吐水流の径が細くなり、順次給水量は減るが、吐水口14での吐水速度は変わらない。
このように、ハンドル7の操作に伴う給水量の増減に比例して吐水口14の開口面積が増減する為、吐水速度は常に一定となり、吐水はやや上向きに設けられた吐水口14から一定の勢いで水受容器内に放物線状に吐水される。
つまり、給水量が少なくても吐水口14から真下に落ちることはなく、給水量が多くても、水受容器の外に出ることが無い。
なお、吐水管12の先端の雄ねじに螺合している吐水口キャップ13を回転させることで、吐水口14と吐水速度調整弁10との間隔つまり吐水口14での吐水速度を現地の水圧や作業内容に合わせて微調整することができる。
【0014】
上記の原理と動作により、障害となる吐水管の張り出しがない広い空間で給水量の変化に関係なく常に一定の速度、勢いで吐水される水で作業することができ、目的に応じてその勢いを調整することもできる。
【0015】
図2の実施例は、吐水管12を斜め上方に向けて設け、吐水速度調整弁10を吐水管12の軸と垂直方向に張り出した4枚の羽で吐水管12の内壁に勘合固定し、所要の自重が下方への付勢力となっている吐水口キャップ13を、吐水管12の先端に習動自在に勘合させたものである。
止水状態では、吐水口キャップ13は、その自重により吐水管12に沿って、吐水口14が吐水速度調整弁10にほぼ接する位置まで降りている。
ハンドル7を反時計方向に回転操作すると、給水による吐水管12内部の水圧上昇に伴って、吐水口キャップ13は吐水管12の外周に沿って斜めに押し上げられ、吐水口14と吐水速度調整弁10との間隔が開いて吐水キャップ13の自重と吐水管12内部の水圧が釣り合った位置で停止する。
上記に関する既存技術の例を挙げれば、、吐水口キャップ13には外れ止めのストッパーを設けることが望ましい、又、勘合方式以外にも、吐水口キャップ13の一点をピン固定した揺動方式にすることもできる。
吐水口キャップ13をその自重によって下方へ付勢する代わりにバネの力で近似の動作をさせることもできる。この場合、位置による付勢力の変化が少ないバネが望ましい。
吐水口キャップ13と吐水速度調整弁10は相対的に動作すればよく、吐水口キャップ13を固定して、揺動可能に配され、バネで付勢した吐水速度調整弁10が給水管12内部の水圧によって吐水管12内部を移動する方式でも良い。
【0016】
図3の実施例は、図1の実施例に対して、吐水速度調整弁10に対するバネ11による付勢方向を逆に配し、吐水管12内部に給水流量検知板15を給水方向に揺動自在にピン固定すると共に、その一端を吐水速度調整弁10とリンク16で連携させたものである。
止水状態では、吐水速度調整弁10がバネ11の付勢力により吐水口14にほぼ接する位置まで押し上げられており、ハンドル7を反時計方向に回転操作して給水することによる吐水管12内部への給水の水流によって、給水流量検知板15が押され、リンク16を介して吐水速度調整弁10を吐水口14とは反対方向に引き下げ、給水流量検知板15への水流とバネ11の付勢力が釣り合った位置で停止する為、吐水口は給水量に比例した開口面積となる。
【0017】
図4の実施例は、本発明の基本要素のみの形態であり、吐水速度調整弁10が、吐水管12の軸と垂直方向に張り出した4枚の羽で吐水管12の内壁に勘合固定され、中央に吐水口14を持つ吐水口キャップ13は、その周囲内周の雌ねじが吐水管12の先端外周の雄ねじに螺合している。
この吐水口キャップ13を手動で回転させて、吐水口14と吐水速度調整弁10との間隔を、通常使用する給水量に合うよう調整することで必要な吐水速度で吐水させることができる。給水量の変化の影響は受けるが、簡単な構造で一定の効果を得られる。
【符号の説明】
【0018】
1 本体
2 弁座
3 パッキン
4 給水量調整弁
5 スピンドル
6 キャップナット
7 ハンドル
8 テーパーカム
9 ロッド
10 吐水速度調整弁
11 バネ
12 吐水管
13 吐水口キャップ
14 吐水口
15 給水流量検知板
16 リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水設備配管の末端に接続される一次側の給水部から、二次側の吐水管への給水を、給水量調整弁の開閉で制御する水栓において、吐水管先端の吐水口に吐水速度調整弁を設けたことを特徴とする、吐水速度調整弁付き水栓。
【請求項2】
前記吐水速度調整弁の開閉が、前記給水量調整弁の開閉に連動することを特徴とする、請求項1記載の、吐水速度調整弁付き水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2189(P2013−2189A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135838(P2011−135838)
【出願日】平成23年6月19日(2011.6.19)
【出願人】(591184596)
【Fターム(参考)】