説明

含フッ素共重合体組成物およびこれを用いた塗料組成物

【課題】高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い塗料を実現できるとともに、貯蔵安定性および希釈性に優れた含フッ素共重合体組成物、およびこれを用いた塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)(a1)フルオロオレフィンから選ばれる1種以上の単量体と(a2)ビニルエーテル、ビニルエステル、プロペニルエーテルおよびプロペニルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を重合させてなる含フッ素共重合体、(B)炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を主成分とする芳香族炭化水素混合物、および(C)前記(B)芳香族炭化水素混合物以外の有機溶媒からなる含フッ素共重合体組成物であって、前記(B)芳香族炭化水素混合物中に含まれるナフタレン量が1質量%以下であることを特徴とする含フッ素共重合体組成物およびこれを用いた塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含フッ素共重合体組成物およびこれを用いた塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素共重合体を塗膜成分として用いた塗料組成物は、その塗膜寿命の長さから、躯体の寿命における塗り替え回数を格段に削減できる点、また製品寿命において発生するVOC(揮発性有機化合物)量の少ない、環境にやさしい塗料として需要が増大している。
特に、金属コイルを連続で塗装し、その後最終商品へと加工するPCM(プレコートメソッド)では、塗装焼付け時に発生するVOCを外界に放出しないで処理できるアフターバーナーといった設備を設置しやすい点で、含フッ素共重合体塗料組成物の需要が増大している。
【0003】
PCM塗装では、生産性の観点から、230℃以上で数十秒間という高温短時間の塗装焼付けが行われるが、熱硬化性溶剤系塗料であって単一の溶媒が使用されている塗料では該溶媒の沸点以上に急速に加熱されることから、溶媒が突沸し、塗膜に気泡痕などの欠陥が生じやすい。
そのため、190〜220℃の高沸点の芳香族炭化水素の混合物が、沸点緩和による蒸発速度の制御が容易なため、溶媒として好適に使用されてきた。また芳香族炭化水素混合物だけでは樹脂の溶解性に劣り、40質量%以上の固形分濃度を維持するのが難しいため、シクロヘキサノン等の高沸点のケトン系溶媒も同時に使用されている(例えば、下記特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2004−82120号公報
【特許文献2】特開2004−115792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗料組成物にあっては、貯蔵中に樹脂の一部が反応するなどして増粘することがある。その場合、塗装作業性が低下したり、塗膜性能が低下するおそれがあるため、良好な貯蔵安定性が求められる。
また塗料組成物の調製時または塗装時に、必要に応じて希釈を行う際、溶剤の溶解力に応じた一定の希釈度以上になると、本来溶解していた含フッ素共重合体が溶解できなくなって白濁する現象が生じる。そのため、希釈度が高くなっても白濁が生じ難い、良好な希釈性が求められる。
しかしながら、従来の高沸点の芳香族炭化水素混合物を用いた含フッ素共重合体組成物は、貯蔵安定性および希釈性の点で充分とは言い切れなかった。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い塗料を実現できるとともに、貯蔵安定性および希釈性に優れた含フッ素共重合体組成物、およびこれを用いた塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
高沸点の芳香族炭化水素混合物は原油より蒸留工程を経て製造されるが、この製造の際にナフタレンが混入してしまう。本発明者等は、この混入ナフタレンに着目して鋭意研究を重ねた結果、芳香族炭化水素混合物におけるナフタレンの含有量を低減させることによって、含フッ素共重合体組成物およびこれを用いた塗料組成物における、貯蔵安定性および希釈性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の含フッ素共重合体組成物は、(A)(a1)フルオロオレフィンから選ばれる1種以上の単量体と(a2)ビニルエーテル、ビニルエステル、プロペニルエーテルおよびプロペニルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を重合させてなる含フッ素共重合体、(B)炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を主成分とする芳香族炭化水素混合物、および(C)前記(B)芳香族炭化水素混合物以外の有機溶媒からなる含フッ素共重合体組成物であって、前記(B)芳香族炭化水素混合物中に含まれるナフタレン量が1質量%以下であることを特徴とする。
また本発明は、本発明の含フッ素共重合体組成物を含有する塗料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の含フッ素共重合体組成物は、貯蔵安定性および希釈性に優れるとともに、これを塗料に用いると、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い塗料が得られる。
本発明の塗料組成物は、貯蔵安定性および希釈性に優れるとともに、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<含フッ素共重合体組成物>
本発明の含フッ素共重合体組成物は(A)(a1)フルオロオレフィンから選ばれる1種以上の単量体と(a2)ビニルエーテル、ビニルエステル、プロペニルエーテルおよびプロペニルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を重合させてなる含フッ素共重合体、(B)炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を主成分とする芳香族炭化水素混合物、および(C)前記(B)芳香族炭化水素混合物以外の有機溶媒からなる。
【0010】
[(A)含フッ素共重合体]
本発明における(A)含フッ素共重合体は、(a1)フルオロオレフィンから選ばれる1種以上の単量体と、(a2)ビニルエーテル、ビニルエステル、プロペニルエーテルおよびプロペニルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体とを重合させて得られる共重合体である。
【0011】
単量体(a1)のフルオロオレフィンとしては、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等が好ましく挙げられる。単量体(a1)として用いるフルオロオレフィンは1種でもよく、2種以上でもよい。
単量体(a1)の使用量は、含フッ素共重合体(A)を構成する単量体全体のうちの40〜60モル%が好ましく、45〜55モル%がより好ましい。単量体(a1)の使用量が上記範囲の下限値以上であると共重合体中のフッ素含有量が充分となり耐候性に優れ、上記範囲の上限値以下であると有機溶媒への溶解性に優れる。
【0012】
単量体(a2)は、ビニルエーテル、ビニルエステル、プロペニルエーテルおよびプロペニルエステルからなる群より選ばれる。
ビニルエーテルは、一般式:CH=CH(OR)…(1)で表される化合物である。上記Rは、例えばアルキル基であり、具体例としては、メチル、エチル、ブチル、ドデシル等の直鎖状アルキル基;tert−ブチル、iso−ブチル、2−エチルヘキシル等の分岐状アルキル鎖;シクロヘキシル等の環状アルキル基が挙げられる。
ビニルエステルは、カルボン酸ビニルエステルが好ましく、該カルボン酸の例としては安息香酸、ピバリン酸、イタコン酸等が挙げられる。
プロペニルエーテルは、一般式:CH=CHCH(OR)…(2)または
CH=C(OR)CH…(3)で表される化合物である。上記R、Rは、例えばアルキル基であり、前記Rとしてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
プロペニルエステルは、カルボン酸プロペニルエステルが好ましく、該カルボン酸の例としては安息香酸、ピバリン酸、イタコン酸等が好ましく挙げられる。
【0013】
また、単量体(a2)の一部として、必要に応じて、架橋反応可能な官能基を有する単量体(a2’)を用いてもよい。該単量体(a2’)は、架橋反応可能な官能基を有するビニルエーテル、架橋反応可能な官能基を有するビニルエステル、架橋反応可能な官能基を有するプロペニルエーテル、および架橋反応可能な官能基を有するプロペニルエステルからなる群より選ばれる。
単量体(a2’)としては水酸基を有するビニルエーテルが好ましく、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルジメタノールビニルエーテル等が好適である。
架橋反応可能な官能基を有する単量体(a2’)を用いて調製された含フッ素共重合体組成物は、硬化剤と組み合わせて塗料組成物を構成することにより、塗膜形成工程において該官能基と硬化剤とが反応して架橋結合が形成され、物性に優れた塗膜が得られる。
【0014】
単量体(a2)は、1種でもよく、2種以上使用してもよい。
単量体(a2)の使用量は、含フッ素共重合体(A)を構成する単量体全体のうちの40〜60モル%が好ましく、45〜55モル%がより好ましい。単量体(a2)の使用量が上記範囲内であると、有機溶剤への溶解性に優れ、塗膜の耐候性に優れる。
また、単量体(a2)の一部として、前記架橋反応可能な官能基を有する単量体(a2’)を使用する場合、該単量体(a2’)の使用量は、単量体(a2)の全使用量のうちの5〜20モル%が好ましく、6〜15モル%がより好ましい。単量体(a2’)の使用量が上記範囲の下限値以上であると、共重合体に充分な官能基が導入され、形成された塗膜の架橋状態が良好となり、塗膜性能に優れる。また上記範囲の上限値以下であると、共重合体の極性が適度となり、芳香族炭化水素混合物への溶解性に優れ、シクロヘキサノン等の助溶媒の量が適度となりPCM塗装においてワキ等が発生しにくい。
【0015】
含フッ素共重合体(A)は、単量体(a1)および単量体(a2)を所定割合で含有する混合物に、重合媒体の存在下または非存在下で、重合開始剤または電離性放射線などの重合開始源を作用させて共重合反応を行うことによって製造できる。
【0016】
含フッ素共重合体(A)の、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される質量平均分子量(Mw)は45,000〜75,000が好ましく、45,000〜70,000がより好ましい。該質量平均分子量が上記範囲の下限値以上であるとPCM用途としての塗装物品の加工性能に優れ、上記範囲の上限値以下であると芳香族炭化水素混合物への溶解性に優れ、シクロヘキサノン等の助溶媒の量が多くならずPCM塗装においてワキ等が発生しにくい。
【0017】
[(B)芳香族炭化水素混合物]
本発明における(B)芳香族炭化水素混合物は、炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を主成分とするもので、ナフタレンの含有量が1質量%以下である。ナフタレンの含有量は少ない方がより好ましい。
本発明において、炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を「主成分とする」混合物とは、該混合物全体のうち「炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物」が占める割合が99質量%を超えることを意味する。
かかる(B)芳香族炭化水素混合物は市販品から入手できる。具体例としては、ジャパンエナジー社製のカクタスソルベントP−140(製品名)、エクソンモービル社製のSolvesso150ND(製品名)、DHC社製のHydrosolA200ND(製品名)等が挙げられる。
【0018】
なお、炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を主成分とする芳香族炭化水素混合物であって、ナフタレンの含有量が1質量%を超える市販品として、エクソンモービル社製のSolvesso150(製品名)、ジャパンエナジー社製のカクタスソルベントP−150(製品名)等が挙げられる。
【0019】
[(C)有機溶媒]
本発明の含フッ素共重合体組成物は、前記(B)芳香族炭化水素混合物以外の(C)有機溶媒を含有する。該(C)有機溶媒は、含フッ素共重合体が溶解するものであればよく、特に制限されない。具体例としては、トルエン、キシレン等の炭素数8以下の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、イソホロン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類等が挙げられる。
特に、PCM焼付けで突沸による発泡痕を発生させにくい点で、沸点が、同時に使用する芳香族炭化水素混合物の沸点範囲に近い150〜220℃のものが好ましく、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、イソホロン等のケトン類が好ましい。
(C)有機溶媒は、1種でもよく、2種以上使用してもよい。
【0020】
本発明の含フッ素共重合体組成物における(B)芳香族炭化水素混合物と(C)有機溶媒の含有量の合計は、特に限定されず、含フッ素共重合体組成物の固形分濃度が所望の範囲となるように設定される。
【0021】
本発明の含フッ素共重合体組成物における(B)芳香族炭化水素混合物と(C)有機溶媒の含有量の比率は、両者の合計のうち(B)芳香族炭化水素混合物が70〜90質量%であることが好ましく、75〜85質量%であることがより好ましい。(B)芳香族炭化水素混合物の含有量が上記範囲の下限値以上であると単一の沸点を持つケトン溶媒の比率が適度となり、(B)芳香族炭化水素混合物による沸点緩和の効果が充分に得られ、突沸が抑えられるため、急熱時の発泡性が低下しない。また上記範囲の上限値以下であると含フッ素共重合体の溶解性に優れる。
【0022】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、本発明の含フッ素共重合体組成物を含有する。具体的には、本発明の含フッ素共重合体組成物に、必要に応じた塗料用添加剤等を添加して塗料組成物が得られる。塗料組成物の調製は公知の方法で行える。
【0023】
上記塗料用添加剤としては、一般的に知られているものが適宜用いられる。具体的には、硬化剤、顔料、表面調整剤、脱泡剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤、および金属石鹸、酸、アミン等の硬化触媒が挙げられる。
使用する含フッ素共重合体組成物に、架橋反応可能な官能基を有する単量体(a2’)を用いて合成された含フッ素共重合体が含まれている場合は、一般に該官能基と反応する硬化剤が添加され、さらに必要に応じて硬化触媒が添加される。
これらは必要に応じて1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0024】
含フッ素共重合体組成物を用いて塗料組成物を調製する際に、必要であれば該含フッ素共重合体組成物に含まれている溶剤を添加して希釈してもよい。また塗料組成物を調製後、これを塗装に用いる際に、該塗料組成物に含まれている溶剤を添加して希釈してもよい。
希釈に用いる溶剤としては、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い特性を良好に得るうえで(B)芳香族炭化水素混合物を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の含フッ素共重合体組成物は、これに含まれる(B)芳香族炭化水素混合物の沸点が190〜220℃程度と高く、10種類以上の異なる沸点を持つものの混合物であるため、沸点緩和現象が生じ、該含フッ素共重合体組成物を熱硬化性塗料に用いた場合に、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い。
また本発明の含フッ素共重合体組成物は、(B)芳香族炭化水素混合物中のナフタレン含有量が低減されているため、貯蔵中の反応が抑えられ、貯蔵安定性が向上する。したがって、貯蔵中における分子量の増加が緩和される。ナフタレンは置換基を多く持ち、分子量増大の要因となる物質へと変化しやすいため、これを低減させたことにより貯蔵安定性が向上するものと考えられる。
また本発明の含フッ素共重合体組成物は、(B)芳香族炭化水素混合物中のナフタレン含有量が低減されているため、(B)芳香族炭化水素混合物に対する含フッ素共重合体の溶解性が向上し、芳香族炭化水素混合物を添加して希釈することができ、希釈による白濁が抑えられる。したがって、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難い特性を損なわずに、良好な希釈性を得ることができる。ナフタレンは含フッ素共重合体の溶解力に乏しいため、これを低減させたことにより希釈性が向上するものと考えられる。
さらに含フッ素共重合体組成物は、溶剤として(B)芳香族炭化水素混合物の他に(C)有機溶媒を含有しているため、含フッ素共重合体の良好な溶解性が得られる。
【0026】
このような本発明の含フッ素共重合体組成物を含有する本発明の塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、希釈性に優れるとともに、高温短時間の焼付けを行っても塗膜に気泡痕が生じ難く、含フッ素共重合体の溶解性も良好である。よって、特にPCM塗装に好適である。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」を表す。
【0028】
[製造例1:含フッ素共重合体(1)の製造]
内容積2500mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、エチルビニルエーテル(EVE)の317g(約40モル%)とヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の128g(約10モル%)との混合物、キシレンの642g、エタノールの180g、炭酸カリウムの10g、tert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)の50%キシレン溶液の7g、およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の665g(約50モル%)を導入して、徐々に昇温した。65℃に達した後、20時間保持し、その後冷却を行い、ろ過により残渣の除去を行った。
こうして得られた含フッ素共重合体のキシレン溶液から、エタノールおよび残留したモノマー除去を行い、含フッ素共重合体(1)のキシレン溶液を得た。
得られた含フッ素共重合体(1)のゲル透過クロマトグラフ(GPC)による質量平均分子量(Mw)は50,000であった。
【0029】
[実施例1:塗料組成物(1)の製造]
上記製造例で得られた含フッ素共重合体(1)のキシレン溶液500gを、1Lナスフラスコに入れ、そこに芳香族炭化水素混合物(ジャパンエナジー社製、製品名:カクタスソルベントP140(ナフタレン含有量1%以下))の300gを投入した。
次いで、60℃で減圧してキシレンの除去を行い、シクロヘキサノンの75gを投入して含フッ素共重合体組成物を得た。
これを撹拌機付ガラス容器に移液し、無水コハク酸の2.2gを投入した後、90℃に加温し、トリエチルアミン(TEA)の0.19gを投入し、3時間撹拌して、不揮発分40%、GPCによる質量平均分子量(Mw)51,580の塗料組成物(1)を得た。
【0030】
[比較例1:塗料組成物(2)の製造]
上記実施例1において、芳香族炭化水素混合物を「エクソンモービル社製、製品名:Solvesso150(ナフタレン含有量1%超)」に変更した他は、実施例1と同様の操作を行い、不揮発分40%、GPCによる質量平均分子量(Mw)51,280の塗料組成物(2)を得た。
【0031】
[塗料組成物の評価]
実施例1および比較例1で得られた塗料組成物(1)、(2)について、それぞれ以下の試験を行った。結果を表1に示す。
(希釈性試験)
得られた塗料組成物を、それぞれに使用した芳香族炭化水素混合物で希釈し、白濁が発生した希釈率を測定した。
なお希釈率は不揮発分40%の塗料組成物(原液)を100%として、同量の芳香族炭化水素混合物で希釈した場合200%とする。
(貯蔵安定性試験)
得られた塗料組成物を、50℃の恒温槽で保管し、4週間後までの質量平均分子量(Mw)の変化を測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
[実施例2:塗料組成物(3)の製造]
上記実施例1で得た塗料組成物(1)の84.6gに、ヘキサメチレンジイソシアネートベースのメチルエチルケトンオキシムブロックの硬化剤(住化バイエルウレタン社製、商品名:スミジュールBL3175)の9.3g、およびジブチルスズジラウレート(DBTDL)のアセトン10,000倍希釈溶液の3部を混合し、塗料組成物(3)を得た。
【0034】
[比較例2:塗料組成物(4)の製造]
上記実施例2において、塗料組成物(1)の84.6gを、上記比較例1で得た塗料組成物(2)の84.6gに変更した他は、実施例2と同様の操作を行い、塗料組成物(4)を得た。
【0035】
[塗料組成物の評価および結果]
実施例2および比較例2で得られた塗料組成物(3)、(4)について、それぞれ以下の溶剤揮発性試験を行った。
まず、厚さ0.5mmのアルミニウム板に塗料組成物を塗装して塗板を形成した。塗装は、溶液膜厚55μmのバーコーターで行い、乾燥後の膜厚は24±1μmであった。
日本テストパネル社製の自動排出型乾燥器を用い、60秒後の最高到達温度が260℃になる加熱条件(設定温度300℃)で、上記で形成した塗板を焼付けし、塗膜に発泡跡が生じたかどうかを目視で確認した。
その結果、塗料組成物(3)、(4)のいずれにおいても、発泡跡は生じなかった。
【0036】
表1の結果より、ナフタレン含有量が1%以下の(B)芳香族炭化水素混合物を使用した含フッ素共重合体組成物を含む塗料組成物(1)は、ナフタレン含有量が1%超の芳香族炭化水素混合物を使用した含フッ素共重合体組成物を含む塗料組成物(2)に比べて、希釈性試験において希釈率が向上した。また、貯蔵安定性試験では、両者の初期分子量(Mw)はほぼ同等であるが、50℃保管後の分子量増大が、塗料組成物(1)の方が緩やかであった。
また溶剤揮発性試験では、塗料組成物(3)、(4)のいずれも、PCM塗装における実用膜厚24μm近辺での急熱による発泡跡は無く、塗装作業性は同等に良好であると言える。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)フルオロオレフィンから選ばれる1種以上の単量体と(a2)ビニルエーテル、ビニルエステル、プロペニルエーテルおよびプロペニルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を重合させてなる含フッ素共重合体、(B)炭素数9〜11の芳香族炭化水素化合物を主成分とする芳香族炭化水素混合物、および(C)前記(B)芳香族炭化水素混合物以外の有機溶媒からなる含フッ素共重合体組成物であって、
前記(B)芳香族炭化水素混合物中に含まれるナフタレン量が1質量%以下であることを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の含フッ素共重合体組成物を含有する塗料組成物。



【公開番号】特開2007−291261(P2007−291261A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121831(P2006−121831)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】