説明

含フッ素重合体組成物

【課題】 圧縮永久歪特性や機械的特性にすぐれた軟質のフッ素樹脂が比較的簡便かつ廉価に得られる含フッ素重合体組成物を提供する。
【解決手段】 架橋点を導入しないフッ素樹脂95〜40重量%および架橋剤と反応する反応点を有する含フッ素エラストマー5〜60重量%よりなる含フッ素重合体組成物または共通の架橋剤と反応する反応点をそれぞれに有するフッ素樹脂95〜55重量%および含フッ素エラストマー5〜45重量%よりなる含フッ素重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、含フッ素重合体組成物に関する。更に詳しくは、フッ素樹脂と含フッ素エラストマーよりなる含フッ素重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】フッ素樹脂は、耐薬品性、耐油性、耐候性などにすぐれているため、その成形品は産業用から家庭用に至る迄幅広く用いられている。中でも、軟質フッ素樹脂は、その柔軟性の故に、シール材、チューブ・ホース類、ライニング材、建材、電線被覆材等の分野への有効利用の期待が高まっている。
【0003】一般に、汎用樹脂の柔軟化には可塑剤が用いられているが、フッ素樹脂の場合には相溶性が良好でかつ工業的に入手可能な可塑剤というものが知られていない。柔軟化のために、フッ素ゴムセグメントへフッ素樹脂セグメントをグラフト共重合させる方法(特開昭58-206615号公報)やブロック共重合させる方法(同53-3495号公報)は有効な手法であるが、これらは多段重合法によっており、生産コストの点で問題がある。
【0004】こうした方法とは別に、含フッ素エラストマーとして広く用いられているフッ化ビニリデン[VdF]-テトラフルオロエチレン[TFE]-ヘキサフルオロプロペン[HFP]3元共重合体において、ヘキサフルオロプロペン含量を低下させると共重合体に結晶性が付与され、柔軟なフッ素樹脂としての性質を持つようになることが知られている。
【0005】中でも、VdF/TFE/HFP=10〜45/50〜85/5〜40重量%(15.0〜56.9/40.4〜81.8/2.7〜28.9モル%に相当)の共重合組成を有する3元共重合体は、公報に具体的に例示された共重合体の場合、それは未架橋では熱可塑性材料としての性質を示し、またそれを架橋させることにより熱硬化性材料として使用できるとされている(特開昭52-22084号公報)。しかしながら、前記共重合組成領域、特にヘキサフルオロプロペン含量の低い結晶性領域の3元共重合体は、未架橋、架橋に拘らず圧縮永久歪特性が悪く、シール材への適用を困難なものとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは先に、共通の架橋剤と反応する反応点をそれぞれに有する含フッ素エラストマーおよびフッ素樹脂よりなる含フッ素共重合体組成物を提案しているが(特願平11-8644号)、それの目的とするところは含フッ素エラストマーのロール加工性と機械的特性を改善することにあり、そのためそのブレンド比も含フッ素エラストマーが主であってフッ素樹脂は従であり、フッ素樹脂の改良については何ら言及されていない。
【0007】本発明の目的とするところは、圧縮永久歪特性や機械的特性にすぐれた軟質のフッ素樹脂が比較的簡便かつ廉価に得られる含フッ素重合体組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、架橋点を導入しないフッ素樹脂95〜40重量%および架橋剤と反応する反応点を有する含フッ素エラストマー5〜60重量%よりなる含フッ素重合体組成物または共通の架橋剤と反応する反応点をそれぞれに有するフッ素樹脂95〜55重量%および含フッ素エラストマー5〜45重量%よりなる含フッ素重合体組成物によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】フッ素樹脂としては、その分子内にフッ素原子を有し、室温以上、好ましくは120℃以上、特に好ましくは140℃以上の軟化点を有するフッ素樹脂として公知の重合体をいずれも用いることができる。例えば、TFE単独重合体、TFE-HFP共重合体、TFE-FAVE〔パーフルオロ低級(アルキルビニルエーテル)〕共重合体、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)単独重合体、VdF単独重合体、VF(フッ化ビニル)単独重合体、E(エチレン)-TFE共重合体、E-CTFE共重合体、VdF-HFP共重合体、VdF-TFE-HFP3元共重合体,VdF-FAVE共重合体、VdF-CTFE共重合体等の室温以上に軟化点を有する重合体が用いられる。
【0010】フッ素樹脂としては、含フッ素エラストマーと共通の架橋剤と反応する反応点を有するものも用いられる。フッ素樹脂分子内に含フッ素エラストマーと共通の架橋剤と反応する反応点を導入するかしないかの選択は、圧縮永久歪特性を重視するかあるいは架橋成形体の再成形性を重視するかで決定される。
【0011】即ち、フッ素樹脂に架橋剤と反応する反応点を導入し、含フッ素エラストマーと共架橋させた場合には、圧縮永久歪特性は良好になるが、再成形は困難となる。一方、フッ素樹脂に架橋点を導入せず、ブレンドされた含フッ素エラストマー部分のみを架橋させた場合には、圧縮永久歪特性は多少劣るが、再成形性が良好な成形品が得られるようになる。
【0012】フッ素樹脂に架橋剤と反応する反応点を導入し、それの架橋系としてポリオール架橋系を選択する場合には、後記含フッ素エラストマーの場合と同様に、脱HF化反応し得る反応点を分子中に存在させていることが必要であり、好ましくはVdF-HFP共重合体、VdF-TFE-HFP3元共重合体等が用いられる。例えばVdF-HFP共重合体の場合には、共重合体中のHFPの共重合割合が約1〜10モル%、好ましくは約1〜5モル%であることが架橋速度の点などからみて望ましい。パーオキサイド架橋系を選択する場合には、その選択の自由度は広くなり、前記の如きフッ素樹脂として公知の重合体をいずれも用いることができる。
【0013】このような室温以上の軟化点を有するフッ素樹脂中へのパーオキサイド架橋性反応点の導入は、フッ素樹脂を製造する重合反応の際に、後記含ヨウ素臭素化合物InBrmRおよび/または後記含ヨウ素化合物RInを反応系に共存させることによって行われる。
【0014】フッ素樹脂を得るための重合反応は、後記含フッ素エラストマーの場合と同様に、乳化重合法によって行われることが好ましい。得られるフッ素樹脂の分子量は、その指標としての溶液粘度ηsp/cが約0.4〜3dl/g、好ましくは約0.7〜2.5dl/gであることからも分るように、含フッ素エラストマーの場合よりも、分子量が高くとも加工性への悪影響の程度は小さく、機械的諸特性の点からは適当に分子量が高い方が良い。
【0015】フッ素樹脂とブレンドされる含フッ素エラストマーとしては、分子内にフッ素原子を有する弾性状重合体であって、好ましくはフッ化ビニリデン(VdF)およびテトラフルオロエチレン(TFE)なる群から選ばれた少くとも一種の単量体と、含フッ素重合体に弾性を付与するヘキサフルオロプロペン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)(FAVE)およびプロピレン(P)なる群から選ばれた少くとも一種の単量体との共重合体を含む、公知のすべての含フッ素エラストマーを用いることができる。
【0016】具体的には、VdF-HFP共重合体、VdF-TFE-HFP3元共重合体、VdF-FAVE共重合体、VdF-TFE-FAVE3元共重合体、VdF-CTEF共重合体、VdF-TFE-CTFE3元共重合体、VdF-TFE-CTFE-FAVE4元共重合体、TFE-P共重合体、TFE-VdF-P3元共重合体、TFE-FAVE共重合体等が挙げられ、FAVEとしては好ましくはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)が用いられる。また、これらの共重合体または3元共重合体に、エチレンやアルキルビニルエーテル等を更に共重合させたものを用いることもできる。
【0017】これらの含フッ素エラストマー中に導入される、架橋剤と反応する反応点は、いずれの架橋系を選択するかによって決定される。架橋系としては、パーオキサイド架橋、ポリオール架橋、アミン架橋、イソシアネート架橋、エポキシ架橋等従来公知の架橋系から選択することが可能であるが、好ましくはパーオキサイド架橋系またはポリオール架橋系が用いられる。
【0018】パーオキサイド架橋系を選択する場合には、含フッ素エラストマー中にヨウ素基、臭素基、ペルオキシ基、不飽和基等の官能性基が結合されていることが必要であるが、官能性基導入の容易性からヨウ素基および/または臭素基の選択が好ましい。
【0019】ヨウ素および臭素基の導入は、共重合反応によって含フッ素エラストマーを製造するに際し、反応系内に一般式 InBrmR (ここで、Rは炭素数1〜10のフルオロ炭化水素基、クロロフルオロ炭化水素基、クロロ炭化水素基または炭化水素基であり、nおよびmはいずれも1または2である)で表わされる含ヨウ素臭素化合物を共存させることによって行われる。かかる含ヨウ素臭素化合物としては、飽和または不飽和の、脂肪族または芳香族の化合物であって、好ましくはnおよびmがそれぞれ1のものが使用される。
【0020】鎖状の含ヨウ素臭素化合物としては、例えば1-ブロモ-2-ヨードテトラフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロ(2-メチルプロパン)、モノブロモモノヨードパーフルオロシクロブタン、モノブロモモノヨードパーフルオロペンタン、モノブロモモノヨードパーフルオロ-n-オクタン、モノブロモモノヨードパーフルオロシクロヘキサン、1-ブロモ-1-ヨ−ド-2-クロロパーフルオロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-2-クロロパーフルオロエタン、1-ヨード-2-ブロモ-2-クロロパーフルオロエタン、1,1-ジブロモ-2-ヨ−ドパーフルオロエタン、1,2-ジブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1,2-ジヨード-2-ブロモパーフルオロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-1,2,2-トリフルオロエタン、1-ヨード-2-ブロモ-1,2,2-トリフルオロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-1,1-ジフルオロエタン、1-ヨード-2-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-1-フルオロエタン、1-ヨード-2-ブロモ-1-フルオロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロパン、1-ヨード-2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロパン、1-ブロモ-2-ヨード-3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタン、1-ヨード-2-ブロモ-3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタン、1,4-ジブロモ-2-ヨードパーフルオロブタン、2,4-ジブロモ-1-ヨードパーフルオロブタン、1,4-ジヨード-2-ブロモパーフルオロブタン、1,4-ジブロモ-2-ヨード-3,3,4,4-テトラフルオロブタン、1,4-ジヨード-2-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブタン、1,1-ジブロモ-2,4-ジヨードパーフルオロブタン、1-ブロモ-2-ヨード-1-クロロエタン、1-ヨード-2-ブロモ-1-クロロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-2-クロロエタン、1-ブロモ-2-ヨード-1,1-ジクロロエタン、1,3-ジブロモ-2-ヨードパーフルオロプロパン、2,3-ジブロモ-2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-ブロモパーフルオロプロパン、1-ブロモ-2-ヨードエタン、1-ブロモ-2-ヨードプロパン、1-ヨード-2-ブロモプロパン、1-ブロモ-2-ヨードブタン、1-ヨード-2-ブロモブタン、1-ブロモ-2-ヨード-2-トリフルオルメチル-3,3,3-トリフルオロプロパン、1-ヨード-2-ブロモ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロパン、1-ブロモ-2-ヨード-2-フェニルパーフルオロエタン、1-ヨード-2-ブロモ-2-フェニルパーフルオロエタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、3-ヨード-4-ブロモパーフルオロブテン-1、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、1-ヨード-4-ブロモパーフルオロブテン-1、3-ブロモ-4-ヨード-3,4,4-トリフルオロブテン-1、4-ブロモ-3-ヨード-3,4,4-トリフルオロブテン-1、3-ブロモ-4-ヨード-1,1,2-トリフルオロブテン-1、4-ブロモ-5-ヨードパーフルオロペンテン-1、4-ヨード-5-ブロモパーフルオロペンテン-1、4-ブロモ-5-ヨード-1,1,2-トリフルオロペンテン-1、4-ヨード-5-ブロモ-1,1,2-トリフルオロペンテン-1、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエチルパーフルオロメチルエーテル、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエチルパーフルオロエチルエーテル、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエチルパーフルオロプロピルエーテル、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロピルパーフルオロビニルエーテル、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテル、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエチルパーフルオロアリルエーテル、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエチルメチルエーテル、1-ヨード-2-ブロモパーフルオロエチルエチルエーテル、1-ヨード-2-ブロモエチルエチルエーテル、1-ブロモ-2-ヨードエチル-2′-クロロエチルエーテル等が挙げられる。これらの含ヨウ素臭素化合物は、適宜公知の方法により製造することができ、例えば含フッ素オレフィンに臭化ヨウ素を反応させることにより、モノブロモモノヨード含フッ素オレフィンが得られる。
【0021】また、芳香族の含ヨウ素臭素化合物としては、例えばベンゼンの1-ヨード-2-ブロモ、1-ヨード-3-ブロモ、1-ヨード-4-ブロモ、3,5-ジブロモ-1-ヨード、3,5-ジヨード-1-ブロモ、1-(2-ヨードエチル)-4-(2-ブロモエチル)、1-(2-ヨードエチル)-3-(2-ブロモエチル)、1-(2-ヨードエチル)-4-(2-ブロモエチル)、3,5-ビス(2-ブロモエチル)-1-(2-ヨードエチル)、3,5-ビス(2-ヨードエチル)-1-(2-ブロモエチル)、1-(3-ヨードプロピル)-2-(3-ブロモプロピル)、1-(3-ヨードプロピル)-3-(3-ブロモプロピル)、1-(3-ヨードプロピル)-4-(3-ブロモプロピル)、3,5-ビス(3-ブロモプロピル)-1-(3-ヨードプロピル)、1-(4-ヨードブチル)-3-(4-ブロモブチル)、1-(4-ヨードブチル)-4-(4-ブロモブチル)、3,5-ビス(4-ヨードブチル)-1-(4-ブロモブチル)、1-(2-ヨードエチル)-3-(3-ブロモプロピル)、1-(3-ヨードプロピル)-3-(4-ブロモブチル)、3,5-ビス(3-ブロモプロピル)-1-(2-ヨードエチル)、1-ヨード-3-(2-ブロモエチル)、1-ヨード-3-(3-ブロモプロピル)、1,3-ジヨード-5-(2-ブロモエチル)、1,3-ジヨード-5-(3-ブロモプロピル)、1-ブロモ-3-(2-ヨードエチル)、1-ブロモ-3-(3-ヨードプロピル)、1,3-ジブロモ-5-(2-ヨードエチル)、1,3-ジブロモ-5-(3-ヨードプロピル)などの各置換体、パーフルオロベンゼンの1-ヨード-2-ブロモ、1-ヨード-3-ブロモ、1-ヨード-4-ブロモ、3,5-ジブロモ-1-ヨード、3,5-ジヨード-1-ブロモ等の各置換体が用いられる。
【0022】また、ヨウ素基の導入は、共重合反応によって含フッ素エラストマーを製造するに際し、反応系内に一般式 RIn (ここで、Rは炭素数1〜10のフルオロ炭化水素基、クロロフルオロ炭化水素基、クロロ炭化水素基または炭化水素基であり、nは1または2である)で表わされる飽和または不飽和の含ヨウ素化合物を共存させることによって行われる。
【0023】上記一般式で表わされる飽和含ヨウ素化合物としては、例えば1,2-ジヨードパーフルオロエタン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン等が挙げられ、好ましくは1,4-ジヨードパーフルオロブタンが用いられる。また、不飽和含ヨウ素化合物としては、例えばヨードトリフルオロエチレン、1-ヨード-2,2-ジフルオロエチレン、パーフルオロ(2-ヨードエチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0024】更に、臭素基の導入は、共重合反応によって含フッ素エラストマーを製造するに際し、反応系内に飽和または不飽和の含臭素フッ素化化合物を共存させることによって行われる。これらの含臭素フッ素化化合物は、分子内に更に塩素原子を含むことができる。
【0025】かかる含臭素フッ素化化合物としては、例えば1,2-ジブロモ-1-フルオロエタン、1,2-ジブロモ-1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジブロモ-1,1,2-トリフルオロエタン、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン、2,3-ジブロモ-1,1,1-トリフルオロプロパン、1,2-ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2-ジブロモパーフルオロブタン、1,4-ジブロモパーフルオロブタン、1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタン、1,6-ジブロモパーフルオロヘキサン等の炭素数2〜10の飽和脂肪族化合物、2-ブロモ-1,1-ジフルオロエチレン、1,1-ジブロモジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、4-ブロモ-1,1,2-トリフルオロブテン-1、4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブテン-1等の炭素数2〜10の不飽和脂肪族化合物、あるいは1,2-ジブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン、1,2-ジブロモ-4,5-ジフルオロベンゼン、1,4-ジブロモ-2,5-ジフルオロベンゼン、2,4-ジブロモ-1-フルオロベンゼン、1,3-ジブロモ-5-フルオロベンゼン、1,4-ジブロモ-2-フルオロベンゼン、1,2-ジブロモパーフルオロベンゼン、1,3-ジブロモパーフルオロベンゼン、1,4-ジブロモパーフルオロベンゼン等の芳香族化合物が用いられる。
【0026】これらのヨウ素基および/または臭素基含有化合物は、単独または組合せて用いられるが、その選択は含フッ素エラストマーをフッ素樹脂とブレンドし、架橋成形する際の架橋条件やこれらの化合物の反応性などを考慮して決定される。
【0027】また、ポリオール架橋系を選択する場合には、含フッ素エラストマー中に、脱HF化反応して分子内二重結合を形成し得る反応点が存在することが必要である。このような反応点は、-CF2-CF(CF3)-CH2-CF2-〔HFP-VdFシーケンス〕結合であって、それを脱HF化反応することにより、-CF2-C(CF3)=CH-CF2-結合を形成させる。
【0028】用いられる含フッ素エラストマーの分子量は、含フッ素共重合体組成物の加工性や機械的諸特性を考慮して決定されるが、分子量の指標としての溶液粘度ηsp/cが、約0.3〜1.5dl/g、好ましくは約0.4〜1.3dl/gを有することが望ましい。
【0029】このような範囲の溶液粘度に相当する分子量の含フッ素エラストマーを得るためには、必要に応じて重合反応時にマロン酸エチル、アセトン、イソプロパノール等の連鎖移動剤が用いられるが、含ヨウ素臭素化合物が用いられる場合には、それ自体連鎖移動作用を有するので、特別な場合を除き、連鎖移動剤の添加は不要である。
【0030】含フッ素エラストマー製造のための共重合反応は、乳化重合、けん濁重合、溶液重合、塊状重合等の任意の重合法によって行うことができるが、重合度を高めかつ経済性の面からは乳化重合法が好ましい。乳化重合反応は、過硫酸アンモニウム等の水溶性無機過酸化物またはそれと還元剤とのレドックス系を触媒として、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロヘプタン酸アンモニウム、パーフルオロノナン酸アンモニウム等またはそれらの混合物、好ましくはパーフルオロオクタン酸アンモニウムを乳化剤に用いて、一般に圧力約0〜100kg/cm2G、好ましくは約10〜50kg/cm2G、温度約0〜100℃、好ましくは約20〜80℃の条件下で行われる。その際、重合系内のpHを調節するために、Na2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4等の緩衝能を有する電解質物質あるいは水酸化ナトリウムを添加して用いてもよい。
【0031】フッ素樹脂と含フッ素エラストマーとは、フッ素樹脂が架橋点を有しない場合には、前者が95〜40重量%、好ましくは80〜60重量%、また後者が5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%となるような割合でブレンドされて用いられ、またフッ素樹脂が含フッ素エラストマーと共通の架橋点と反応する反応点を有する場合には、前者が95〜55重量%、好ましくは80〜60重量%、また後者が5〜45重量%、好ましくは20〜40重量%となるような割合でブレンドされて用いられる。含フッ素エラストマーのブレンド割合がこれよりも少ないと、フッ素樹脂への軟質化の付与や圧縮永久歪特性の改善が十分に行われず、一方これよりも多い割合でブレンドされると、機械的特性、特に100%モジュラスの値や再成形性が低下するので好ましくない。
【0032】ブレンド物の製造は、いずれも固体状に単離されたフッ素樹脂と含フッ素エラストマーとを、ミキシングロール、ニーダ、バンバリーミキサ等で混合、混練することによって行うこともできるが、いずれも乳化重合法で得られたフッ素樹脂の水性ラテックスと含フッ素エラストマーの水性ラテックスとを、所望の固形分ブレンド割合になるような割合でラテックスブレンドし、それを凝析、洗浄および乾燥する方法をとった方が、(a)凝析、洗浄および乾燥が1回で済む、(b)混練時間が短かい、(c)含フッ素エラストマーのフッ素樹脂への分散性が向上するなどの利点がもたらされる。なお、水性ラテックスの凝析は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、カリミョウバン等の塩類水溶液中に、水性ラテックスを滴下することにより行われる。
【0033】フッ素樹脂および含フッ素エラストマーのブレンド物の架橋成形は、含フッ素エラストマーまたはそれとフッ素樹脂との両者に導入された反応点の種類に応じた架橋剤を用いることによって行われる。
【0034】フッ素樹脂および含フッ素エラストマー中に、それぞれ約0.005〜0.050ミリモル/gポリマー、好ましくは約0.01〜0.04ミリモル/gポリマーの割合で導入されたヨウ素基あるいはこのような割合のヨウ素基と共に約0.005〜0.050ミリモル、好ましくは約0.01〜0.04ミリモル/gポリマーの割合で導入された臭素基が存在する場合には、有機過酸化物が架橋剤として用いられる。
【0035】有機過酸化物としては、例えば2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシベンゼン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロキシパーオキサイド、α,α′-ビス(第3ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートが用いられる。
【0036】これらの有機過酸化物と共に、必要に応じて例えばトリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、亜リン酸トリアリル、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等の多官能性不飽和化合物共架橋剤が併用されることが好ましい。
【0037】パーオキサイド架橋系に配合される以上の各成分は、ブレンド物100重量部当り、有機過酸化物が約0.05〜10重量部、好ましくは約0.1〜5重量部の割合で、また共架橋剤が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合でそれぞれ用いられる。
【0038】また、ブレンド物の架橋成形にポリオール架橋系が用いられる場合には、架橋剤としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン[ビスフェノールAF]、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4´-ジヒドロキシジフェニル、4,4´-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどのポリヒドロキシ芳香族化合物あるいはそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が用いられ、これらの架橋剤はブレンド物100重量部当り約0.5〜10重量部、好ましくは約1〜5重量部の割合で用いられる。
【0039】架橋剤としてポリヒドロキシ芳香族化合物(金属塩)が用いられた場合には、各種の第4アンモニウム塩または第4ホスホニウム塩を、ブレンド物100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約0.1〜2重量部の割合で併用されることが好ましい。
【0040】ブレンド物には、以上の各成分よりなる架橋系に加えて、必要に応じてZnO、CaO、Ca(OH)2、MgO、PbO等の2価金属の酸化物または水酸化物、合成ハイドロタルサイト等の受酸剤が、ブレンド物100重量部当り約1〜20重量部、好ましくは約3〜15重量部の割合で添加して用いられる。
【0041】ブレンド物には更に、カーボンブラック、シリカ、グラファイト、クレー、タルク、けいそう土、硫酸バリウム、酸化チタン、ウォラストナイト等の充填剤または補強剤、滑剤、加工助剤、顔料などを適宜配合して用いることもできる。
【0042】以上の各成分は、ミキシングロール、ニーダ、バンバリーミキサ等を用いて混練され、組成物が調製される。調製された組成物は、プレス成形機、射出成形機等を用いて、約150〜220℃で約0.1〜10分間程度加熱することにより架橋成形されるが、必要に応じて約150〜250℃で約1〜20時間二次架橋が行われる。
【0043】
【発明の効果】フッ素樹脂を主成分とし、これに含フッ素エラストマーをブレンドした本発明の含フッ素重合体組成物は、圧縮永久歪特性や機械的特性にすぐれた軟質のフッ素樹脂を形成させる。フッ素樹脂として、含フッ素エラストマーと共通の架橋剤と反応する反応点を有するものを用いた場合には、圧縮永久歪特性にすぐれた架橋成形品が得られ、また架橋点を有しないフッ素樹脂が用いられた場合には、再成形性が良好な成形品が得られるようになる。
【0044】このように軟質フッ素樹脂としての特性を示す本発明の含フッ素重合体組成物は、その柔軟性を利用して、シール材、チューブ・ホース類、ライニング材、建材、電線被覆材等の成形材料として有効に用いられる。
【0045】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0046】参考例1内容積10Lのオートクレーブ内に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム10g、水酸化ナトリウム(pH調整用)2gおよび脱イオン水5Lを仕込み、内部空間を窒素ガスで十分に置換した後、1,4-ジヨードパーフルオロブタン14.98gを圧入した。その後、フッ化ビニリデン [VdF] 27.6モル%テトラフルオロエチレン [TFE] 52.4モル%ヘキサフルオロプロペン [HFP] 20.0モル%よりなる混合ガスを、内圧が10Kg/cm2Gになる迄圧入し、内温を70℃に昇温させた。
【0047】その後、過硫酸アンモニウム5gを水150mlに溶解させた重合開始剤水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合反応を開始させた。このときの内圧は、16Kg/cm2Gであった。内圧が13Kg/cm2G迄低下した時点で、VdF/HFP/TFE(モル比31:59:10)混合ガスを分添ガスとして、内圧が14Kg/cm2Gになる迄圧入する操作を、生成ラテックス中の固形分濃度が25重量%になる迄くり返した。所定の固形分濃度になったら、直ちにオートクレーブ内の未反応ガスをパージして反応を停止させた。
【0048】得られた水性ラテックスの一部に5重量%カリミョウバン水を添加して生成3元共重合体を凝析し、水洗、乾燥した。3元共重合体フッ素樹脂が1700g(重合率75%)得られた。なお、収量は得られた水性ラテックスを全量塩析したとした場合の回収量であり、重合率はその値に基いて算出されている。以下の参考例においても同様である。
【0049】このフッ素樹脂の共重合組成(元素分析、FT-IRによる)はVdF29モル%、TFE57モル%、HFP14モル%で、ヨウ素含量(元素分析による)は0.027ミリモル/gで、融点(DCS法によるピーク)は160℃で、融解熱量(△H;DSC法による)は8.0 J/gで、またメルトフローレート(265℃、荷重5Kg)は8.0であった。
【0050】参考例2参考例1において、1,4-ジヨードパーフルオロブタンの代りに、四塩化炭素が10.0g用いられた。得られたフッ素樹脂の共重合組成はVdF29モル%、TFE57モル%、HFP14モル%で、融点(ピーク)は160℃で、融解熱量△Hは8.0 J/gで、またメルトフローレートは9.1g/10分であった。
【0051】参考例3内容積10Lのオートクレーブ内に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム10g、水酸化ナトリウム(pH調整用)2gおよび脱イオン水5Lを仕込み、内部空間を窒素ガスで十分に置換した後、1,4-ジヨードパーフルオロブタン14.98gを圧入した。その後、フッ化ビニリデン [VdF] 22モル%テトラフルオロエチレン [TFE] 8モル%ヘキサフルオロプロペン [HFP] 70モル%よりなる混合ガスを、内圧が20Kg/cm2Gになる迄圧入し、内温を70℃に昇温させた。
【0052】その後、過硫酸アンモニウム5gを水150mlに溶解させた重合開始剤水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合反応を開始させた。このときの内圧は、32Kg/cm2Gであった。内圧が29Kg/cm2G迄低下した時点で、VdF/HFP/TFE(モル比47:34:19)混合ガスを分添ガスとして、内圧が30Kg/cm2Gになる迄圧入する操作を、生成ラテックス中の固形分濃度が25重量%になる迄くり返した。所定の固形分濃度になったら、直ちにオートクレーブ内の未反応ガスをパージして反応を停止させた。
【0053】得られた水性ラテックスの一部に5重量%カリミョウバン水を添加して生成3元共重合体を凝析し、水洗、乾燥した。得られた3元共重合体含フッ素エラストマー1685g(重合率50%)が得られた。この含フッ素エラストマーの共重合体組成(19F-NMRによる)はVdF54モル%、TFE20モル%、HFP26モル%で、ヨウ素含量(元素分析による)は0.033ミリモル/gで、溶液粘度ηsp/c[1重量%メチルエチルケトン(MEK)溶液の比粘度、35℃]は0.58dl/gであった。
【0054】実施例1参考例1で得られたフッ素樹脂水性ラテックスと参考例3で得られた含フッ素エラストマー水性ラテックスとを、それらの固形分重量比が80/20になるように混合し、撹拌した。この混合水性ラテックスを5%カリミョウバン水中に添加し、凝析、水洗、乾燥させて、含フッ素共重合体組成物を得た。
含フッ素共重合体組成物 100重量部 2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン 0.56 〃 トリアリルイソシアヌレート 4.02 〃以上の各配合成分をロール混練し、混練物について180℃、5分間のプレス架橋および200℃、4時間のオーブン架橋を行って、シートおよびOリングを架橋成形し、得られた架橋成形品について、次の各項目の測定を行った。
(1)常態物性:(a)硬さ(ショアーA) ASTM D-2240-81準拠(b)100%モジュラス ASTM D-412-83準拠(c)引張強さ ASTM D-412-83準拠(d)伸び ASTM D-412-83準拠(2)架橋特性(ODR):東洋精機製オシレーティング・ディスク・レオメータ ASTM-100型を用いて、180℃、10分間の加硫を行ない、最小トルク値(ML)、最大トルク値(MH)および最大トルク値の90%トルク値に到達する迄の時間(Tc90)を測定(3)圧縮永久歪:線形3.5mmのOリングを200℃、70時間または100℃、70時間、25%圧縮したものについて測定(4)再成形性の評価:得られた架橋成形品をカッタで粉砕した後、熱ロール(約100℃)で分出しを行ない、更にそれを180℃で5分間プレス成形して得られたシート(厚さ)について、次のような基準で評価した。
○:表面が平滑で、均一な厚さのシートを形成△:ほぼ均一な厚さのシートが得られるが、表面平滑性が悪い×:得られたプレス成形品がシート形状とはならない
【0055】実施例2実施例1において、固形分重量比が60/40に変更された。
【0056】実施例3実施例1において、フッ素樹脂水性ラテックスとして参考例2で得られたものが用いられ、有機過酸化物量が0.11重量部に、またトリアリルイソシアヌレート量が0.80重量部にそれぞれ変更された。
【0057】実施例4実施例3において、固形分重量比が60/40に、有機過酸化物量が0.22重量部に、またトリアリルイソシアヌレート量が1.61重量部にそれぞれ変更された。
【0058】実施例5実施例3において、固形分重量比が40/60に、有機過酸化物量が0.33重量部に、またトリアリルイソシアヌレート量が2.41重量部にそれぞれ変更された。
【0059】比較例1参考例1の水性ラテックスを5%カリミョウバン水で凝析して得られたフッ素樹脂を、小型射出成形機(カスタム サイエンティフィク インスッルメント社製モデルCS-183MNX)を用いて(可塑化条件240℃、時間5分間、金型温度140℃)の条件下で射出成形し、得られた射出成形品について、常態物性および圧縮永久歪の測定ならびに再成形性の評価が行われた。
【0060】比較例2実施例1において、含フッ素共重合体組成物の代りに、比較例1のフッ素樹脂が同量用いられた。
【0061】比較例3比較例1において、フッ素樹脂として参考例2の水性ラテックスから得られたものが用いられた。
【0062】比較例4実施例3において、固形分重量比が20/80に、有機過酸化物量が0.44重量部に、またトリアリルイソシアヌレート量が3.22重量部にそれぞれ変更された。
【0063】以上の各実施例および比較例における測定結果および評価結果は、次の表に示される。
実施例 比較例 測定・評価項目 1 2 3 4 5 1 2 3 4 [ODR] ML (dNm) 2.1 1.7 1.3 0.9 0.7 - 3.1 - 0.7 MH (dNm) 11.0 11.7 2.0 3.2 6.5 - 11.4 - 10.4 Tc90 (分) 1.16 1.20 2.40 1.61 1.52 - 1.44 - 1.36[常態物性] 硬さ (ショアA) 93 89 89 85 76 94 97 93 67 100%モジュラス(MPa) 10.1 7.7 7.4 5.4 3.8 9.8 12.4 8.8 2.5 引張強さ (MPa) 23.3 21.0 14.8 16.1 20.5 10.6 28.4 10.0 21.3 伸び (%) 300 310 430 470 470 240 300 180 440[圧縮永久歪] 100℃、70時間 (%) 61 52 63 57 47 95 73 94 45 200℃、70時間 (%) 82 72 86 79 64 100 91 98 50[再成形性] 評価 × × ○ ○ ○ ○ × ○ ×
【0064】これらの結果から、次のようなことがいえる。
[フッ素樹脂の軟質化と機械的強度の改善](1)実施例1〜2と比較例1〜2の対比(共架橋系):フッ素樹脂単独に含フッ素エラストマーをブレンドし、共架橋すると、引張強さおよび伸びの値が大幅に改善され、そのブレンド比に対応して硬さが低下(軟質化)する(実施例1〜2-比較例1)。なお、フッ素樹脂単独で架橋したもの(比較例2)は、引張強さの値こそ大幅に改善されるが、硬さも上昇し、本発明の目的とは反するものとなる。
(2)実施例3〜5と比較例3〜4の対比(単独架橋系):フッ素樹脂が架橋点を有さずに、含フッ素エラストマーのみを架橋させた場合にも、上記(1)と同様の関係が成立する。ただし、樹脂とエラストマーとのブレンド比が同一の場合には、軟質化効果は共架橋系の場合よりも大となる。また、エラストマーのブレンド比が最大である場合(比較例4)には、フッ素樹脂の軟質化という本発明の目的の一つから逸脱しているばかりではなく、100%モジュラスの値が低くすぎる傾向がみられ、好ましくない。
[圧縮永久歪と再成形性]実施例1〜2(共架橋系)と実施例3〜5(単独架橋系)とを比較した場合、同一ブレンド比ならば、共架橋系の方が圧縮永久歪特性が更に良好となる。因みに、樹脂単独で架橋した場合(比較例2)には、架橋成形品の圧縮永久歪特性は良いとはいえない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 架橋点を導入しないフッ素樹脂95〜40重量%および架橋剤と反応する反応点を有する含フッ素エラストマー5〜60重量%よりなる含フッ素重合体組成物。
【請求項2】 共通の架橋剤と反応する反応点をそれぞれに有するフッ素樹脂95〜55重量%および含フッ素エラストマー5〜45重量%よりなる含フッ素重合体組成物。
【請求項3】 フッ素樹脂がフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体である請求項1または2記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項4】 フッ素樹脂がフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン3元共重合体である請求項1または2記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項5】 フッ素樹脂がフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体である請求項1または2記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項6】 共通の架橋剤と反応する反応点が導入されたフッ素樹脂が、フッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンよりなる群から選ばれた少くとも一種の単量体と、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレンおよび炭素数1〜3の低級アルキル基を有するパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれた少くとも一種の単量体との共重合体である請求項2記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項7】 架橋剤と反応する反応点が導入された含フッ素エラストマーが、フッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンよりなる群から選ばれた少くとも一種の単量体と、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレンおよび炭素数1〜3の低級アルキル基を有するパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれた少くとも一種の単量体との共重合体である請求項1記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項8】 含フッ素エラストマーがフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン3元共重合体である請求項7記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項9】 含フッ素エラストマーがフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体である請求項7記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項10】 パーオキサイド系架橋剤と反応する反応点を有する含フッ素エラストマーまたはそれとフッ素樹脂が用いられた請求項1記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項11】 パーオキサイド系架橋剤と反応する反応点がヨウ素基および/または臭素基である請求項10記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項12】 ポリオール系架橋剤と反応する反応点を有する含フッ素エラストマーまたはそれとフッ素樹脂が用いられた請求項1記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項13】 ポリオール系架橋剤と反応する反応点が脱フッ化水素化反応で分子内二重結合を形成し得るヘキサフルオロプロペン-フッ化ビニリデン結合である請求項12記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項14】 フッ素樹脂水性ラテックスと含フッ素エラストマー水性ラテックスとを混合し、共凝析させることにより製造された請求項1記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項15】 フッ素樹脂と含フッ素エラストマーとをドライブレンドして製造された請求項1記載の含フッ素重合体組成物。
【請求項16】 シール材の成形材料として用いられる請求項1記載の含フッ素重合体組成物。

【公開番号】特開2001−11272(P2001−11272A)
【公開日】平成13年1月16日(2001.1.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−188833
【出願日】平成11年7月2日(1999.7.2)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】