説明

含フッ素重合用モノマーおよびその重合体

【課題】 フッ素基を持ち、開環メタセシス重合等の重合反応性に優れたノルボルネン化合物、およびその重合体を提供する。
【解決手段】 下式(1)で示される含フッ素重合用モノマー。
【化1】


ただし、式中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、Rf、Rf、RfおよびRfはそれぞれ独立にフッ素原子、または任意の場所に1つ以上のエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン骨格をもつ含フッ素重合用モノマーおよびその重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノルボルネン骨格をもつ化合物(以下「ノルボルネン化合物」という場合がある。)は、金属触媒によるメタセシス反応により開環重合させて重合体を得るためのモノマーとして広く使用されている。また、このノルボルネン化合物に基づく構成単位を含む重合体及びその水素添加物は、高ガラス転移温度(高耐熱性)、低吸水性、高光線透過率等の諸特性のバランスに優れているため、射出成形、押出成形、圧縮成形などの各種成形法により、電気・電子材料、半導体材料、光学材料等、多種多様な分野に利用されている。
フッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基(以下、併せて「フッ素基」と言う場合がある。)を持つノルボルネン化合物(以下「含フッ素ノルボルネン化合物」という場合がある。)が合成され、開環メタセシス重合のモノマーとして使用され、含フッ素重合体が合成されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
含フッ素ノルボルネン化合物の重合体は、フッ素基の特性により、他のノルボルネン化合物の重合体よりも化学的耐久性、耐候性、光透過性に優れることが期待される。
一方、付加反応研究の一環として、含フッ素ノルボルネン化合物の橋頭に酸素原子を有する含フッ素オキサノルボルネン化合物の合成例が報告されている(非特許文献2、非特許文献3参照)
【非特許文献1】POLYMER、2003年、第44号、p6111−6121
【非特許文献2】Journal of Fluorine Chemistry、2000年、第104号、p233−237
【非特許文献3】イズベスティア アカデミイ ナウク SSSR セリア キミシェスカイア(Izvestiia Akademii Nauk SSSR, Seriia Khimicheskaia )1988年、第4号、p897−900
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、非特許文献1の含フッ素ノルボルネン化合物は、開環メタセシスで得た重合体(以下、「開環メタセシス重合体」という場合がある。)の収率が30〜55%しかなく、他のノルボルネン化合物よりも開環メタセシス重合による重合体が効率良く得られない問題がある。
一方、非特許文献2、3には、含フッ素オキサノルボルネン化合物の合成例が示されるのみで、これらを重合させることについては、全く検討されていない。すなわち、これらの含フッ素オキサノルボルネン化合物が重合体のモノマーとなりうるか否かは全く明らかでなかった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、フッ素基を持ち、開環メタセシス重合等の重合反応性に優れたノルボルネン化合物、およびその重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]下式(1)で示される含フッ素重合用モノマー。
【0005】
【化1】

【0006】
ただし、式中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、Rf、Rf、RfおよびRfはそれぞれ独立にフッ素原子、または任意の場所に1つ以上のエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基である。
【0007】
[2]Rf、Rf、RfおよびRfのうち、何れか一がトリフルオロメチル基であり、他がフッ素原子である[1]に記載の含フッ素重合用モノマー。
【0008】
[3][1]または[2]に記載の含フッ素重合用モノマーに基づく構成単位を含む含フッ素重合体。
[4]開環メタセシス重合により得られる[3]に記載の含フッ素重合体。
【0009】
[5][1]または[2]に記載の含フッ素重合用モノマーを、開環メタセシス重合して得られる、下式(2)で示される含フッ素重合体。
【0010】
【化2】

【0011】
ただし、式(2)におけるR、R、Rf、Rf、RfおよびRfは前記と同じ意味であり、nは正の整数である。
【0012】
[6]数平均分子量がポリメタクリル酸メチル換算で1,000から500,000である[3]〜[5]の何れかに記載の含フッ素重合体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の含フッ素重合用モノマーは、フッ素基を持ち、重合反応性、特に開環メタセシス重合性に優れたノルボルネン化合物である。また、本発明の含フッ素重合体、特に開環メタセシス重合体は、フッ素基の優れた特性を備えると共に、効率良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[含フッ素重合用モノマー]
本発明の含フッ素重合用モノマーは、下式(1)で示される含フッ素オキサノルボルネン化合物である。なお、本明細書においては、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」のようにも記す。他の式で表される化合物についても同様に記す。
【0015】
【化3】

【0016】
前記式(1)中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、モノマーの二重結合近辺の立体的影響により重合性を低減させないためには、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0017】
前記式(1)中のRf、Rf、RfおよびRfは、それぞれ独立にフッ素原子、または任意の場所に1つ以上のエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素原子数は1〜20のポリフルオロアルキル基である。
すなわち、Rf、Rf、RfおよびRfは、ポリフルオロアルキル基である場合、エーテル性酸素原子を含んでいても含んでいなくてもよく、エーテル性酸素原子を含む場合には、任意の場所に含んでよい。
メタセシス重合性を高めるため、エーテル性酸素原子を含まない場合には炭素数が1〜8であることが好ましく、エーテル性酸素原子を含む場合には、炭素数が1〜10であることが好ましい。
【0018】
また、Rf、Rf、RfおよびRfは、ポリフルオロアルキル基の場合、アルキル基の水素原子が、フッ素原子によって置換されている割合の高い方が好ましく、パーフルオロアルキル基であることが特に好ましい。フッ素原子が多いほど、重合した際に、フッ素基の優れた特性が得られるからである。Rf、Rf、RfおよびRfにおけるフッ素原子以外の置換基としては塩素原子が挙げられるが、フッ素原子以外の置換基は存在しない方が好ましい。
Rf、Rf、RfおよびRfは直鎖状、分岐状、環状のいずれの構造でもよい。
【0019】
また、Rf、Rf、RfおよびRfは、得られる重合体の耐熱安定性、化学的耐久性およびモノマーの重合活性の両立の観点から、何れか一がポリフルオロアルキル基であり、他がフッ素原子であることが好ましく、何れか一がパーフルオロアルキル基であり、他がフッ素原子であることがより好ましく、何れか一がトリフルオロメチル基であり、他がフッ素原子であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の含フッ素重合用モノマーは、重合反応性、特に開環メタセシス重合性に優れる。これは、橋頭の酸素原子が電子供与性を有するため、フッ素原子の電子吸引性の影響を緩和して、二重結合の反応性を確保できるためではないかと推定される。
【0021】
[含フッ素重合用モノマーの製造方法]
化合物(1)は、下式(3)で示されるフラン誘導体と下式(4)で示される含フッ素アルケンとのディールス−アルダー反応により合成される。
下式(3)におけるRおよびRは、式(1)におけるRおよびRと同じである。また、下式(4)におけるRf、Rf、RfおよびRfは、式(1)におけるRf、Rf、RfおよびRfと同じである。
【0022】
【化4】

【0023】
化合物(3)は、市販品を容易に入手できる。また、化合物(4)は、4フッ化エチレン、あるいはポリフルオロアルカン酸フルオライドの熱分解反応等、従来公知の方法により簡便に合成できる。
【0024】
化合物(3)と化合物(4)とのディールス−アルダー反応を、副生成物の生成を抑え、かつ効率良く進行させるため、化合物(4)の使用量は、化合物(3)に対して、1〜1.5倍当量とすることが好まく、1〜1.2倍当量とすることがより好ましい。
【0025】
ディールス−アルダー反応を効率良く進行させるためには、無溶媒で反応させるのが特に好ましい。
化合物(4)の溶解性を考慮してフッ素含有の溶媒を使用してもよい。フッ素含有の溶媒としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルが好ましい。これらの化合物は、直鎖状、分岐状または環状の構造のいずれであってもよい。
具体的には、CFClCFCHClF、CFClCFCl等のハイドロクロロフルオロカーボン、CF(CFCHF、CF(CHF)CFCF、CFCHCFCH等のハイドロフルオロカーボン、CHFCFOCHCF、COCH等のハイドロフルオロエーテルが挙げられる。なかでも、環境負荷が低く、原料に対し不活性で、かつ取扱いの利便性が高いCFClCFCHClFが好ましい。
【0026】
化合物(4)は良いジエノフィルであり、化合物(3)とのディールス−アルダー反応は効率良く進行する。反応効率をより向上させるため、反応温度は100℃〜200℃とするのが好ましい。また、反応時間は、化合物(4)の種類により異なるが、40〜100時間反応させるのが好ましく、72〜100時間反応させるのがより好ましい。
【0027】
ディールス−アルダー反応終了後、反応液から化合物(1)を精製するには、カラムクロマトグラフィー、分留、再結晶等一般的な分離手法を用いることができる。簡便にかつ高純度の化合物(1)を抽出するには、減圧蒸留で分離を行うのが好ましい。
【0028】
[含フッ素重合体]
本発明の含フッ素重合体は、化合物(1)に基づく構成単位のみからなるホモポリマーであっても、化合物(1)と共重合可能なモノマー(以下「共重合モノマー」という場合がある。)に基づく構成単位を含む共重合体であってもよい。共重合体の場合、共重合モノマーは一種類でも複数種類の組み合わせでもよい。
また、本発明の重合体は、開環メタセシス重合により得られる開環メタセシス重合体であっても、ラジカル重合により得られる重合体(以下、ラジカル重合体という場合がある。)であってもよい。
含フッ素重合体の数平均分子量は、ポリメタクリル酸メチル換算で1,000−500,000であることが好ましい。これにより、機械的物性、物理的物性に優れ、加工性にも優れる含フッ素重合体を得ることができる。
【0029】
[開環メタセシス重合体]
化合物(1)は単独で開環メタセシス重合させることができる。化合物(1)のみを開環メタセシス重合して得られるホモポリマーは、以下の式で表される。
下式(2)におけるR、R、Rf、Rf、RfおよびRfは式(1)におけるR、R、Rf、Rf、RfおよびRfと同じ意味であり、nは正の整数である。
【0030】
【化5】

【0031】
化合物(1)は、その他の開環メタセス重合性モノマーと共重合させることができる。共重合モノマーとしては、ノルボルネン、または官能基含有もしくは無官能のノルボルネン誘導体が好適に用いられる。ノルボルネン誘導体としては、下記の化合物等が挙げられる。
【0032】
無官能のノルボルネン誘導体:ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン等
パーフルオロアルキル基を有するノルボルネン誘導体:5−トリフルオロメチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロエチル−2−ノルボルネン、5−ヘプタフルオロプロピル−2−ノルボルネン、5−トリフルオロメトキシー2−ノルボルネン等
その他の官能基を有するノルボルネン誘導:5−アセチル−2−ノルボルネン、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸モノメチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジメチルエステル、5,5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2−メタノール、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−オール等。
多環のノルボルネン誘導体:ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの三環ノルボルネン、トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの三量体)、テトラシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの四量体)などの五環以上のノルボルネン等。
【0033】
ノルボルネン、またはノルボルネン誘導体以外の共重合可能なモノマーとしては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン等のシクロアルケン類が挙げられる。
【0034】
化合物(1)、または化合物(1)と共重合モノマーを開環メタセシス重合させるためには、触媒を用いるのが好ましい。触媒としては、タングステン、モリブデン、レニウム、チタン、ルテニウム、レニウム、イリジウム等の遷移金属化合物とアルキルアルミニウム等の助触媒を組み合わせたもの、あるいは、タングステン、モリブデン、オスミウム及びルテニウムカルベン錯体等の従来公知の重合方法を用いることができる。なかでも、酸素や水分が存在しても十分な重合活性を示すルテニウムカルベン錯体及びオスミウムカルベン錯体を使用するのが好ましい。また、これらのメタセシス重合触媒はルテニウムカルベン触媒及びオスミウムカルベン触媒は、それぞれ単独で用いても、併用してもよい。
触媒の配合量は、モノマーの総量100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましい。
【0035】
開環メタセシス重合は、重合溶媒の存在下で行うことが好ましい。重合溶媒としては、触媒の活性を低下させない溶媒であれば特に制限はないが、化合物(1)の溶解性の観点から、フッ素系溶剤の使用が好ましい。
フッ素系溶媒としてはクロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、含フッ素芳香族化合物が好ましい。これらの化合物は、直鎖状、分岐状または環状の構造のいずれであってもよい。具体的には、CFCCl等のクロロフルオロカーボン、CFClCFCHClF、CFClCFCl等のハイドロクロロフルオロカーボン、CF(CFCHF、CF(CHF)CFCF、CFCHCFCH、ベンゾトリフルオライド等のハイドロフルオロカーボン、CHFCFOCHCF、COCH等のハイドロフルオロエーテル、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾフルオライド等の含フッ素芳香族化合物が挙げられる。
【0036】
溶媒に対するモノマーの濃度は1〜80質量%とすることが好ましく、1〜20質量%とすることがより好ましい。1〜20質量%とすることにより、重合後の反応溶液の粘度上昇を容易に抑制できる。
【0037】
重合体の分子量調節を目的に、連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤としては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、アリルアルコール、アリルイソシアナート、アリルグリシジルエーテル、アリルトリエトキシシラン、アリルメタクリレート、2−(アリルオキシ)エチルアルコール、マレイン酸ジアリル、o−アリルフェノール等のアリル化合物、スチレン、p−メトキシスチレン、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキサイド等のビニル化合物が挙げられる
連鎖移動剤の添加量は所望の分子量と触媒の種類によって異なるが、触媒に対して0〜100当量加えることで数平均分子量(ポリメタクリル酸メチル換算)1,000〜500,000のポリマーを容易に得ることができる。
【0038】
重合温度は、使用する重合溶媒により変化するが、0〜100℃であることが好ましい。また、急速な重合反応を抑制する観点から、0〜30℃であることがより好ましい。ただし、連鎖移動剤を併用する場合には、重合速度の加速化、反応収率の向上のため、40〜80℃で重合反応を行うのが好ましい。
反応は、モノマーが反応して全て消費されてしまうと自然に停止する。反応が終了するまでの時間は、モノマーの組成、触媒の種類および添加量、溶媒量、反応温度によって変化するが、通常10分〜24時間である。反応停止まで反応を継続させて行うことが好ましい。
【0039】
モノマーが反応して全て消費されてしまうと重合反応は自然に停止するが、触媒は活性を保持したまま存在する。このため、重合体同士がカップリングしたり、触媒成分が酸化されて重合体が着色したりする可能性がある。
これら触媒による悪影響を排除するために、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル等のビニル化合物を添加して触媒を不活性化させてもよい。また、アルミナ、セライト、活性炭等の吸着剤で吸着処理を行い、触媒成分を取り除いてもよい。
【0040】
[ラジカル重合体]
化合物(1)は、ラジカル重合性のモノマーとしても使用できる。また、その他のラジカル重合性モノマーとフリーラジカル存在下で共重合できる。
ラジカル重合の共重合モノマーとしては、置換または無置換のアルケン誘導体が好適に用いられる。共重合モノマーは複数を組み合わせて用いることができる。
具体例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン等の含フッ素アルケン化合物、エチレン、プロピレン等のアルケン化合物、パーフルオロ(n−メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)化合物、ペンタフルオロエチルエチレン、ノナフルオロブチルエチレン等のパーフルオロアルキルエチレン化合物、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル化合物が挙げられる。共重合モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合モノマーとしては、含フッ素モノマーが好ましく、テトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0041】
ラジカル重合では、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の種々の重合形態をとることができる。ラジカル発生源としては、種々の有機および無機の過酸化物化合物等の開始剤が使用でき、用いる重合様式により選ばれる。
【実施例】
【0042】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の実施例において、生成した化合物の同定には、NMRとガスクロマトグラフィー(以下、GCと記す。)を用いた。
GCによる分析では、DB−1301キャピラリーカラム (60m×0.25mmΦ J&W社製)を分析カラムとし、ヘリウムガスを移動相とした。また移動相流速は6.1mL/min、カラム温度は40〜200℃(昇温速度10℃/min)とし、検出器としてはFIDを用いた。
【0043】
数平均分子量、重量平均分子量は、東ソー株式会社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと記す。)HLC−8220 GPCによって測定した。
GPCによる測定では、CFClCFCHClF(以下、R−225と記す。)(旭硝子(株)製、商品名:アサヒクリンAK−225SECグレード1)およびテトラヒドロフラン(THF)の(体積比60:40)混合溶媒を移動相として用い、PLgel MIXED−Cカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を2本直列に連結して分析カラムとした。分子量測定用標準試料としては、ポリマーラボラトリーズ社製の、分子量分散(重量平均分子量/数平均分子量)が1.20未満で、数平均分子量が1944000,790000,281700,144000,79250,28900,13300,5720,1960,1020のポリメタクリル酸メチルの10種を用いた。また移動相流速は1.0mL/min、カラム温度は37℃とし、検出器としては、紫外吸収検出器を用いた。
【0044】
(実施例1)化合物(1a)、化合物(1b)(2−トリフルオロメチル−2,3,3−トリフルオロ−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン)の製造例
【化6】

【0045】
磁気撹拌子の入った100mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(3a)(フラン、関東化学(株)製)の30g(0.54mol)を入れて蓋をした。このオートクレーブを真空ポンプに接続し、液体窒素にて容器内の化合物(3a)が凍結するまで冷却した後、オートクレーブ内を真空脱気した。その後、オートクレーブを水浴にて昇温した。この冷却、脱気、昇温の操作をさらに2回繰り返し、オートクレーブ内を完全に脱気した後、化合物(4a)(6フッ化プロピレン、旭硝子(株)製)のボンベに接続し、容器内に化合物(4a)の85g(0.57mol)を充填した。次に、オートクレーブを180℃の油浴に入れ、スターラーで撹拌しながら、80時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを冷却し、残圧をパージした後、蓋を開けた。
反応液を取り出し、R−225(旭硝子(株)製)で2倍質量になるまで希釈して、分液ろうとに投入し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて2回、イオン交換水を加えて2回洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム粉末を加えて脱水した後、エバポレーターで濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物を減圧蒸留して、無色の溶液を得た(51.0g)。
留分をNMRとGCで分析した結果、上記化合物(1a)と化合物(1b)の混合物(純度98.6%、収率50.7%)の生成を確認した。混合物中における化合物(1a)(エキソ型)と化合物(1b)(エンド型)との比率は、33:67であった。
【0046】
化合物(1a)と化合物(1b)の混合物のNMRスペクトルは、以下のとおりである。
H−NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):4.88〜4.98(m,exo-1H+endo−1H)、5.01〜5.10(m,exo−1H)、5.17(s,endo−1H)、6.54〜6.59(m,exo−1H)、6.62〜6.72(m,endo−1H+exo−1H)。
19F−NMR(376.2MHz、溶媒:CDCl 基準:CFClCFCl)δ(ppm):−73.4(dd、J=11.5,8.6Hz,endo−3F)、−76.3(dd、J=11.5,8.6,exo−3F)、−107.8(d、J=236.2Hz,endo−1F)、−109.3(dd、J=236.1,8.7Hz,exo−1F)、−115.7(dd、J=236.1,14.4Hz,exo−1F)、−117.7(d、J=236.1,14.4Hz,endo−1F)、−170.8(s、endo−1F)、−176.7(s、exo−1F)。
【0047】
(実施例2)化合物(2a)(ポリ(2−トリフルオロメチル−2,3,3−トリフルオロ−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン))の製造例−1
【化7】

ただし、式中のnは正の整数である。
【0048】
アルゴンガスラインに接続した、磁気撹拌子入りの50mLのシュレンクチューブに、アルゴンガスを流入しながら、実施例1で得た化合物(1a)と化合物(1b)の混合物の2.96gを入れた。さらに、R−225(旭硝子(株)社製)の31.3gを、シリンジを用いて入れ、最後にビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロライド(関東化学(株)製)の2.1mgを入れて蓋をした。シュレンクチューブをスターラーにセットし、室温で24時間撹拌した。反応終了後、反応液にエチルビニルエーテル(関東化学(株)製)の1.0gを加え、さらに10分間撹拌した。
n−ヘキサン(関東化学(株)製)の200mLを500mLのプラスチック製容器に入れ、激しく撹拌しながら前記の反応液をゆっくり添加すると、ゴム状の白色ポリマーが析出した。析出物を吸引ろ過により取り出した後、真空乾燥機中、25℃で5時間乾燥し、化合物(2a)の2.21g(収率75%)を得た。この化合物(2a)のGPC分析を行ったところ、ポリアクリル換算の数平均分子量は419,000、分子量分散(重量平均分子量/数平均分子量)は1.79であった。
【0049】
化合物(2a)のNMRスペクトルは、以下のとおりである。
H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl/CFClCFCl)δ(ppm):4.50〜5.27(2H)、5.87〜6.21(2H)。
【0050】
(実施例3)化合物(2a)の製造例−2
【0051】
アルゴンガスラインに接続した、磁石製撹拌子入りの50mLのシュレンクチューブに、アルゴンガスを流入しながら実施例1で得た化合物(1a)と化合物(1b)の混合物の3.51gを入れた。さらに、ベンゾトリフルオライド(関東化学(株)製)の22.0g、および1−ヘキセンの4.4mgを、シリンジを用いて入れた。最後にビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロライド(関東化学(株)製)の10.2mgを入れて蓋をした。シュレンクチューブをスターラーにセットし、60℃で8時間撹拌した。反応終了後、反応液にエチルビニルエーテル(関東化学(株)製)の1.0gを加え、さらに10分間撹拌した。
n−ヘキサン(関東化学(株)製)の300mLを500mLのプラスチック製容器に入れ、激しく撹拌しながら前記の反応液をゆっくり添加すると、ゴム状の白色ポリマーが析出した。析出物を吸引ろ過により取り出した後、真空乾燥機中、25℃で5時間乾燥し、化合物(2a)の1.51g(収率43%)を得た。この化合物(2a)のGPC分析を行ったところ、ポリアクリル換算の数平均分子量は83,900、分子量分散(重量平均分子量/数平均分子量)は1.66であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の含フッ素ノルボルネニルエステル化合物の重合体は、必要な処理の後、電気・電子材料、半導体材料、光学材料、光ファイバー、光導波路材等、多種多様な用途に応用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で示される含フッ素重合用モノマー。
【化1】

ただし、式中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、Rf、Rf、RfおよびRfはそれぞれ独立にフッ素原子、または任意の場所に1つ以上のエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素原子数1〜20のポリフルオロアルキル基である。
【請求項2】
Rf、Rf、RfおよびRfのうち、何れか一がトリフルオロメチル基であり、他がフッ素原子である請求項1に記載の含フッ素重合用モノマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の含フッ素重合用モノマーに基づく構成単位を含む含フッ素重合体。
【請求項4】
開環メタセシス重合により得られる請求項3に記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の含フッ素重合用モノマーを、開環メタセシス重合して得られる、下式(2)で示される含フッ素重合体。
【化2】

ただし、式(2)におけるR、R、Rf、Rf、RfおよびRfは前記と同じ意味であり、nは正の整数である。
【請求項6】
数平均分子量がポリメタクリル酸メチル換算で1,000から500,000である請求項3から5の何れかに記載の含フッ素重合体。