説明

含油スラッジの減量化方法

【課題】1段の操作で、含油スラッジ中の油分及び有害物質の含有量を、埋立処分可能な量まで減少させることができる含油スラッジの減量化方法を提供する。
【解決手段】含油スラッジ71に水蒸気70a,70bを接触させてから、該含有スラッジを圧搾し、油水72と残渣物73に分離する含油スラッジの減量化方法であって、該含油スラッジに接触させる該水蒸気の温度が、130〜160℃であり、且つ、該水蒸気の圧力が0.27〜0.62MPaであること、を特徴とする含油スラッジの減量化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油スラッジ、原油掘削マッド等の含油スラッジから、油分及び有害物質を分離し、減量化するための含油スラッジの減量化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油をタンク中で貯蔵すると、原油中のワックス分やアルファルテン分が析出し、そして、これらと、原油中の水分、原油に混入した鉄さび、砂、泥等、微生物の分解により生成した分解物とが混ざり合ったものが汚泥となって沈降するので、原油タンクの底部には、油分を含有する汚泥が堆積する。このような汚泥は、一般に、原油スラッジと呼ばれている。また、原油を掘削した際にも、原油スラッジによく似た含油汚泥が生じる。このような汚泥は、一般に、掘削マッドと呼ばれている。また、該原油スラッジや該掘削マッドには、水溶性の水銀等の微量の有害物質が含まれている。
【0003】
従来、このような含油スラッジの処分は、油分が多い原油スラッジの場合、原油スラッジを中間処理後遠心分離して、原油スラッジから概ねの油分を分離した後、油分量が減少した含油スラッジを焼却することにより、また、油分が少ない原油スラッジや掘削マッドの場合、原油スラッジ又は掘削マッドを遠心分離して、原油スラッジ又は掘削マッドから概ねの油分を分離した後、油分量が減少した含油スラッジを焼却することにより、油分を除去し、次いで、油分の含有量が減少した残渣物を、埋立処分することにより行われてきた。
【0004】
環境への負荷という観点から、残渣物を埋立処分するためには、残渣物中の油分及び有害物質の含有量は、埋立処分に係る判定基準以下でなければならない。ところが、中間処理及び遠心分離だけでは、残渣物中の油分及び有害物質の含有量を、埋立処分に係る判定基準以下にすることはできないため、従来の含油スラッジの処分方法では、遠心分離の後に、含油スラッジの焼却操作が必須であった。
【0005】
そのため、従来の含油スラッジの処分方法では、遠心分離及び焼却、又は中間処理、遠心分離及び焼却という2〜3段の操作を行うため、処理コストが高くなるという問題及び装置スペースが広くなってしまうという問題があった。よって、1段の操作で、含油スラッジ中の油分量を、埋立処分可能な量まで減少させることができる方法の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、1段の操作で、含油スラッジ中の油分及び有害物質の含有量を、埋立処分可能な量まで減少させることができる含油スラッジの減量化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(1)含油スラッジに、特定の温度範囲且つ特定の圧力の水蒸気を接触させてから、該含油スラッジを圧搾し、油水と残渣を分離することにより、1段の操作で、含油スラッジ中の油分及び有害物質の含有量を良好に減量化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、含油スラッジに水蒸気を接触させてから、該含有スラッジを圧搾し、油水と残渣物に分離する含油スラッジの減量化方法であって、
該含油スラッジに接触させる該水蒸気の温度が130〜160℃であり、且つ、該水蒸気の圧力が0.27〜0.62MPaであること、
を特徴とする含油スラッジの減量化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1段の操作で、含油スラッジ中の油分及び有害物質の含有量を、埋立処分可能な量まで減少させることができる含油スラッジの減量化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置の模式的な断面図であり、圧搾ピストンの押し込み方向に平行な面で切ったときの断面図である。
【図2】圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置の模式的な断面図であり、圧搾ピストンの押し込み方向に対して垂直な面で切ったときの断面図である。
【図3】図1中の圧搾ピストンの圧搾前後の位置を示す図である。
【図4】スクリュー型の含油スラッジの減量化装置の模式的な断面図であり、含油スラッジの移動方向に平行な面で切ったときの断面図である。
【図5】スクリュー型の含油スラッジの減量化装置の模式的な断面図であり、含油スラッジの移動方向に対して垂直な面で切ったときの断面図である。
【図6】図4及び図5中のスクリューの側面図である。
【図7】図4の内筒及び外筒を記載した断面図である。
【図8】スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31を用いて含油スラッジを処理している様子を示す、スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の含油スラッジの減量化方法は、含油スラッジに水蒸気を接触させてから、該含有スラッジを圧搾し、油水と残渣物に分離する含油スラッジの減量化方法であって、
該含油スラッジに接触させる該水蒸気の温度が130〜160℃であり、且つ、該水蒸気の圧力が0.27〜0.62MPaである含油スラッジの減量化方法である。なお、本発明では、該含油スラッジは、該含油スラッジ中の油分、有害物質及び水分、並びに供給した水蒸気が凝縮した水分と、該残渣物とに分離されるが、該含油スラッジ中の油分、有害物質及び水分、並びに供給した水蒸気が凝縮した水分を全て含めて、「油水」とも記載する。
【0012】
本発明の含油スラッジの減量化方法としては、バッチ式の含油スラッジの減量化方法(以下、本発明の含油スラッジの減量化方法Aとも記載する。)と、連続式の含油スラッジの減量化方法(以下、本発明の含油スラッジの減量化方法Bとも記載する。)とが挙げられる。
【0013】
先ず、本発明の含油スラッジの減量化方法Aについて説明する。本発明の含油スラッジの減量化方法Aは、例えば、図1〜図3に示す圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置により行われる。図1及び図2は、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置の模式的な断面図であり、図1は、圧搾ピストンの押し込み方向に平行な面で切ったときの断面図であり、また、図2は、圧搾ピストンの押し込み方向に対して垂直な面で切ったときの断面図である。また、図3は、図1中の圧搾ピストンの圧搾前後の位置を示す図である。図1中、圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10は、内筒11内を上下に移動可能に設置され、該内筒11内の含油スラッジを圧搾するための圧搾ピストン18と、円筒形状の該内筒11と、該内筒11の外側に、該内筒11との間に油水の排出隙間13aが形成されるようにして設置される外筒12と、該外筒12が固定される台座17と、該内筒11及び該外筒12の上側を塞ぐための上部フランジ19と、該台座17のとの間に油水の排出隙間13bが形成されるようにして、該内筒11内の下方に設置され、該内筒11が固定される底壁111と、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10内に水蒸気を供給するための水蒸気供給口14と、該油水の排出隙間13a、13bに排出された油水を、装置外へ排出するための油水排出口15と、該外筒12内のガスを、装置外へ排出するための排気口16と、を有する。
【0014】
該圧搾ピストン18は、該内筒11内を押し込むことにより、該内筒11内の該含油スラッジを圧搾するための部材である。該圧搾ピストン18の外径は、該内筒11の内径と同じ長さであってもよく、あるいは、該内筒11の内径より若干小さくてもよい。該圧搾ピストン18の外径が、該内筒11の内径より小さい場合、該圧搾ピストン18と該内筒11との隙間は、通常、3mm以下、好ましくは2mm以下、特に好ましくは1mm以下である。
【0015】
該内筒11は、縦置きの円筒形状である。該内筒11の下側の筒端は、該底壁111に固定されており、該内筒11の上側の筒端は、該上部フランジ19により塞がれている。そして、該内筒11内の下方には、該台座17のとの間に油水の排出隙間13bが形成されるように、該底壁111が設置されている。
【0016】
該内筒11の筒壁及び該底壁111には、含油スラッジを圧搾することにより、該含油スラッジから分離する油水が、該内筒11及び該底壁111から該油水排出隙間13a、13bに排出されるように、油水の通過孔(図示しない。)が形成されている。この油水の通過孔は、水蒸気の通過孔でもある。なお、該底壁111のうちの該油水の排出隙間13aと該油水の排出隙間13bとの間に位置する部分112にも、油水の通過孔が形成されており、油水及び水蒸気が通過できるようになっている。
【0017】
該内筒11の筒壁及び該底壁111に形成されている該油水の通過孔の大きさは、該内筒11内に、直接該含油スラッジを投入するか、あるいは、該含油スラッジをろ布等に包んだものを投入するかによって、異なる。
【0018】
該内筒11内に、直接該含油スラッジを投入する場合、該内筒11の筒壁及び該底壁111に形成される該油水の通過孔の径は、処理される含油スラッジ中の残渣物の径より小さい範囲で、適宜選択され、通常、0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.0mmである。該内筒11の筒壁及び該底壁111としては、上記範囲の径の通過孔が形成されているものであればよく、例えば、金網、パンチングメタルのような孔が打ち抜かれた板材、スクリーン用金網等が挙げられる。なお、該内筒11の筒壁及び該底壁111が金網の場合、該油水の通過孔の径は、該金網の目開きの長さを指し、また、該内筒11の筒壁がパンチングメタルの場合、該油水の通過孔の径は、打ち抜かれた孔の径を指す。
【0019】
また、該内筒11内に、該含油スラッジをろ布等に包んだものを投入する場合、残渣物が該油水の通過孔を通って該内筒11及び該底壁111の外へ漏れることはないので、該油水の通過孔の径は、水蒸気が効率良く該含油スラッジに供給される範囲で適宜選択される。該内筒11の筒壁及び該底壁111としては、例えば、金網、パンチングメタルのような孔が打ち抜かれた板材、スクリーン用金網等が挙げられる。
【0020】
該外筒12は、縦置きの円筒形状である。該外筒12の下側の筒端は、該台座17に固定されており、該外筒12の上側の筒端は該上部フランジ19により塞がれている。
【0021】
該内筒11と該外筒12とにより形成される該油水の排出隙間13aの幅、言い換えると、該内筒11の外側と該外筒12の内側との距離は、含油スラッジを圧搾することにより、該含油スラッジから分離する油分、有害物質及び水分並びに供給した水蒸気が凝縮した水分、すなわち、該油水が排出されて、該油水排出口15へ流動できる程度であれば、特に制限されない。また、該底壁111と該台座17により形成される該油水の排出隙間13bの幅、言い換えると、該底壁111の下側と該台座17の上側との距離は、含油スラッジを圧搾することにより、該含油スラッジから分離する油分、有害物質及び水分並びに供給した水蒸気が凝縮した水分、すなわち、該油水が排出されて、該油水排出口15へ流動できる程度であれば、特に制限されない。
【0022】
なお、図1及び図2に示す該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10では、該内筒11及び該外筒12の形状が、含油スラッジの移動方向に対して垂直な面で切ったときの断面形状が円形であり、該圧搾ピストン18の圧搾面の形状が円形であるものを示しているが、該内筒11及び該外筒12の形状並びに該圧搾ピストンの圧搾面の形状は、これに限定されるものではなく、該内筒11及び該圧搾ピストン18の形状は、該内筒11内で該圧搾ピストン18が下方に押し込まれることにより、該含油スラッジを圧搾できるものであれば、特に制限されず、また、該外筒12の形状は、内側に該内筒11を設置でき且つ油水が排出されて、該油水排出口15へ流動するための油水の排出隙間を形成できるものであればよい。
【0023】
該水蒸気供給口14は、該内筒11内の含油スラッジに対して水蒸気を供給するための水蒸気の供給口である。該水蒸気供給口14の設置位置は、図1では、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10の底部であるが、これに制限されず、例えば、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10の側面、すなわち、該外筒12に設置することもできる。該水蒸気供給口14を、該外筒12に設置する場合、該圧搾ピストン18の押し込み方向における、該水蒸気供給口14の設置位置は、特に制限されず、該外筒12の最下方に設置することや、該圧搾ピストン18の移動範囲を考慮して、例えば、該圧搾ピストン18の圧搾後の位置22(図3)よりも下方に設置することや、該排気口16の設置位置を考慮して、該圧搾ピストン18の押し込み方向に平行な面で切った外筒の断面図において、該排気口16を上方に該水蒸気供給口14を下方に設置すること等、適宜選択される。また、該水蒸気供給口14の数は、特に制限されず、1であっても、2以上であってもよい。そして、該水蒸気供給口14の設置位置が、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10の底部であることが、含油スラッジと水蒸気の接触効率が高くなる点で好ましい。
【0024】
該油水排出口15は、該油水の排出隙間13に排出される油水を、装置外へ排出するための排出口である。該油水排出口15の設置位置は、図1では、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10の底部であるが、これに制限されず、例えば、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10の側面の下方、すなわち、該外筒12の下方に設置することもできる。そして、該油水排出口15の設置位置が、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10の底部であることが、該油水を排出し易くなる点で好ましい。また、該油水排出口15の設置数は、特に制限されず、適宜選択される。
【0025】
該排気口16は、装置内の水蒸気等のガスを装置外に排出するためのガスの排出口である。該圧搾ピストンの押し込み方向における、該排気口16の設置位置及び該排気口16の設置数は、特に制限されず、適宜選択される。
【0026】
該油水排出口15には、該油水に混入した細かい残渣物を分離するためのストレーナーが設置されていてもよい。また、該含油スラッジに水蒸気を接触させると、炭化水素等の蒸気が発生するので、それらを回収するために、該排気口16に、冷却手段を設置することが好ましい。
【0027】
該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10には、該圧搾ピストン18を下方に押し込むための荷重負荷手段(図示しない。)が設置されている。
【0028】
なお、図1〜図3では、縦置きの該含油スラッジの減量化装置10を示しているが、本発明の含油スラッジの減量化方法Aを行うための該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置は、横置きの装置であってもよい。
【0029】
該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10を用いて、本発明の含油スラッジの減量化方法Aを行うためには、先ず、該圧搾ピストン18及び該上部フランジ19を外して、該内筒11内に該含油スラッジ115を投入する。このとき、1以上の仕切り板113を用いて、該含油スラッジ115を2以上の部分に区画する。次いで、該圧搾ピストン18及び該上部フランジ19を取り付ける。次いで、該水蒸気供給口14から、130〜160℃且つ0.27〜0.62MPaの水蒸気を供給し、該含油スラッジ115に水蒸気を接触させる。次いで、図3に示すように、該圧搾ピストン18を、圧搾前の位置21から圧搾後の位置22まで押し込むことにより、該含油スラッジ115の圧搾を行う。この圧搾により、該内筒11内の被圧搾物は、該油水と該残渣物とに分離され、該油水が該油水の排出隙間13a、13bへと排出される。該圧搾ピストン18を該圧搾後の位置22まで押し込んだ後は、圧搾を止め、該圧搾ピストン18及び該上部フランジ19を外し、該内筒11内から、該残渣物を取り出す。
【0030】
このように、本発明の含油スラッジの減量化方法Aは、該含油スラッジに水蒸気を接触させてから、該含油スラッジを圧搾し、該油水と該残渣物に分離する含油スラッジの減量化方法である。本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、該含油スラッジは、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10内に供給する水蒸気により加熱される。供給する該水蒸気の温度は、130〜160℃、好ましくは130〜150℃である。供給する該水蒸気の温度が、上記範囲未満だと、該含油スラッジ中の油分と残渣物が分離し難くなるか、又は分離に時間がかかり処理効率が悪くなり、また、上記範囲を超えると、該含油スラッジ中の油分が蒸気となる量が多くなり過ぎる。また、供給する該水蒸気の圧力は、0.27〜0.62MPa、好ましくは0.27〜0.48MPaである。供給する該水蒸気の圧力が上記範囲内であることにより、高圧の水蒸気が該含油スラッジに衝突することになるので、該含油スラッジと該水蒸気との接触効率が高くなる。そして、本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、供給する該水蒸気の温度及び圧力が、上記範囲内であることにより、該含油スラッジ中の油分及び有害物質を、良好に減量化することができる。
【0031】
また、供給する該水蒸気の量は、該含油スラッジの供給量に対する該水蒸気の供給量の比(水蒸気の供給量(トン)/含油スラッジの供給量(m))は、好ましくは0.5〜1.5トン/m、特に好ましくは1.0〜1.5トン/mとなる量である。なお、本発明の含油スラッジの減量化方法Aにおいて、該含油スラッジの供給量とは、該内筒内に投入した該含油スラッジの量である。
【0032】
また、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10内の温度は、定常状態の温度で、110〜160℃、好ましくは120〜150℃である。該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10内の温度が上記範囲内にあることにより、該含油スラッジ中の油分及び有害物質を、良好に減量化することができる。なお、該圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置10内の温度は、該油水の排出隙間13aのうち、供給される水蒸気に直接接触しない位置に熱電対等を設置して、該油水の排出隙間13aの温度を測定して得られる。
【0033】
該圧搾の際、該含油スラッジを圧搾する圧搾圧力は、含油スラッジの種類により適宜選択される。
【0034】
該圧搾の際の該含油スラッジの圧搾時間、すなわち、該圧搾ピストン18を、該圧搾前の位置21から該圧搾後の位置22まで押し込む時間は、好ましくは1時間以上、特に好ましくは1〜3時間、更に好ましくは2〜3時間である。該圧搾の際の該含油スラッジの圧搾時間が上記範囲内にあることにより、該含油スラッジ中の油分及び有害物質を減量化する効果が高くなる。なお、該圧搾時間は長過ぎても、本発明の効果は得られるものの、本発明の効果の向上が頭打ちになり、処理効率が悪くなる。
【0035】
本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、図1に示すように、圧搾の際に、該内筒11内に、1又は2以上の仕切り板を設置することができる。つまり、該仕切り板により、含油スラッジが、該内筒11内で2又は3以上に区画される。そして、該仕切り板を設置することにより、圧搾の際に、含油スラッジに対し、均一に圧力をかけ且つ含油スラッジ全体に水蒸気を接触させることができるので、熱効率及び圧搾効率が高まる。該仕切り板の形状としては、水蒸気及び油水が通過できるような通過孔114を有するものであれば、特に制限されないが、図1に示すように、中空のものが、該含油スラッジに均一に該水蒸気を接触させる効果が高くなる点で、好ましい。
【0036】
本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、圧搾前に該含油スラッジに水蒸気を接触させてから、該含油スラッジの圧搾を行うが、該含油スラッジの圧搾中も該水蒸気供給口14から水蒸気を供給することにより、該含油スラッジに水蒸気を接触させながら、圧搾を行なうこともできる。そして、本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、該含油スラッジの圧搾中も該含油スラッジに該水蒸気を接触させることにより、該含油スラッジ中の油分及び有害物質を減量化する効果を高くすることができる。なお、該含油スラッジの圧搾中も該水蒸気供給口14から水蒸気を供給する場合、該含油スラッジの供給量に対する該水蒸気の供給量の比は、該含油スラッジを圧搾する前に該含油スラッジに接触させた水蒸気の量と、該含油スラッジの圧搾中に供給する水蒸気の量との合計量を、該水蒸気の供給量として計算される。
【0037】
本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、該含油スラッジに接触させる水蒸気の温度及び圧力を、特定の範囲とすることより、該含油スラッジが高温となるので、加温効果により、該含油スラッジ中の固形分と液体分とが分離し易くなる。そのため、本発明の含油スラッジの減量化方法Aでは、該含油スラッジの油分及び有害物質を効果的に減量化することができる。
【0038】
次に、本発明の含油スラッジの減量化方法Bについて説明する。本発明の含油スラッジの減量化方法Bは、例えば、以下のスクリュー型の含油スラッジの減量化装置、すなわち、水蒸気の供給孔を有するスクリュー軸、及び該スクリュー軸の少なくとも一部の外周に螺旋状に設けられるスクリュー羽根からなるスクリューと、
油水の通過孔を有し、該スクリューを囲む内筒と、
該内筒の外側に設置され、該内筒との間に油水の排出隙間を形成する外筒と、
該内筒内に、含油スラッジを供給するための含油スラッジ供給口と、
該外筒内に水蒸気を供給するための外筒側水蒸気供給口と、
該内筒の残渣物排出側の筒端近傍に設置され、該内筒の残渣物排出側の筒端との間に残渣物の排出隙間を形成するストッパーと、
該油水の排出隙間に排出された油水を、装置外に排出するための油水排出口と、
該油水排出口に付設されるストレーナーと、
該スクリューを回転駆動させる駆動手段と、
を有する含油スラッジの減量化装置を用いて行うことができる。
該含油スラッジの減量化装置では、該内筒の長さに対する該内筒の含油スラッジ供給側の筒端から該外筒側水蒸気供給口までの長さの比が、0.5以下である

【0039】
該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置について、図4〜図7を参照して説明する。図4及び図5は、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置の模式的な断面図であり、図4は、含油スラッジの移動方向に平行な面で切ったときの断面図であり、図5は、含油スラッジの移動方向に対して垂直な面で切ったときの断面図である。また、図6は、図4及び図5中のスクリューの側面図である。また、図7は、図4の内筒及び外筒を記載した断面図である。図4及び図5中、スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31は、スクリュー34と、該スクリュー34を囲む内筒35と、該内筒35の外側に、該内筒35との間に油水の排出隙間52が形成されるようにして設置される外筒36と、該内筒35の残渣物排出側の筒端48の近傍に設置されるストッパー37と、該内筒35及び該外筒36の含油スラッジ供給側に設置される含油スラッジ供給側フランジ38と、該内筒35及び該外筒36の残渣物排出側に残渣物排出室44を形成するようにして設置される残渣物排出側フランジ39と、該内筒35内に含油スラッジを供給するための含油スラッジ供給口40と、該外筒36内に水蒸気を供給するための外筒側水蒸気供給口41と、該残渣物排出室44から残渣物を装置外へ排出するための残渣物排出口42と、該油水の排出隙間52に排出された油水を、装置外へ排出するための油水排出口43と、該油水排出口43に付設されるストレーナー431と、該外筒36内のガスを、装置外へ排出するための排気口46と、を有する。
【0040】
図6に示すように、該スクリュー34は、スクリュー軸32と、スクリュー羽根33と、からなる。そして、該スクリュー羽根33は、該スクリュー軸32の少なくとも一部の外周に螺旋状に設けられている。該スクリュー軸32は、該含油スラッジ供給側フランジ38と該残渣物排出側フランジ39に、回転可能に固定される。
【0041】
該スクリュー軸32は、中空の管であり、該スクリュー軸32の一端58は、該スクリュー軸32の管内に水蒸気を供給するために開口になっており、一方、該スクリュー軸32の他端59は、封止されている。そして、該スクリュー軸32の軸壁には、軸内の空間から軸外へ水蒸気を放出するための、水蒸気供給孔57が形成されている。該水蒸気供給孔57は、該内筒35内の含油スラッジに対しスクリュー軸32側から、すなわち、該内筒35の中心から外に向けて水蒸気を供給するための水蒸気の供給孔である。
【0042】
該スクリュー軸側から供給される該水蒸気は、その温度により該含油スラッジを加熱する作用と、その圧力により該含油スラッジを該内筒内で飛散させ接触効率を高める作用とを、発揮する。
【0043】
該水蒸気供給孔57の孔径は、処理される含油スラッジ中の残渣物の大きさにより、適宜選択されるが、通常、5〜12mm、好ましくは8〜12mm、特に好ましくは8〜10mmである。図6中、該水蒸気供給孔57が形成される範囲54は、適宜選択されるが、通常、含油スラッジ供給側は、該含油スラッジ供給側フランジ38の近傍まであり、また、通常、残渣物排出側は、該内筒35により囲まれている部分53の長さに対する該水蒸気供給孔57が形成される範囲54の長さの比(符号54/符号53)が、0.5〜0.866、好ましくは0.66〜0.866、特に好ましくは0.76〜0.866となる位置までである。該内筒35により囲まれている部分53の長さに対する該水蒸気供給孔57が形成される範囲54の長さの比(符号54/符号53)が、上記範囲を超えると、残渣物中の水分量が多くなり易い。該水蒸気供給孔57の数は、含油スラッジの種類、装置のスケール等により、適宜選択される。
【0044】
該スクリュー羽根33は、該スクリュー軸32の外周に螺旋状に形成されており、該スクリュー34が回転することにより、該内筒35内の含油スラッジを、含油スラッジ供給側から残渣物排出側へと移動させることができる形状であれば、特に制限されない。
【0045】
該スクリュー羽根33の径55は、該内筒35の内径と同じ長さであってもよく、あるいは、該内筒35の内径より若干小さくてもよい。該スクリュー羽根33の径55が、該内筒35の内径より小さい場合、該スクリュー羽根33と該内筒35との隙間は、通常、1mm以下、好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.1mm以下である。
【0046】
該スクリュー羽根33の径55に対する該スクリュー羽根33のピッチ56の比(符号56/符号55)は、0.25〜1.25、好ましくは0.5〜1.25、特に好ましくは0.75〜1、更に好ましくは0.9〜1である。なお、本発明において、該スクリュー羽根33のピッチ56とは、図6中のスクリュー羽根の頂点561aと561b間の距離、すなわち、該スクリュー羽根33を側面視したときの、隣り合う羽根の頂点間の距離を指す。
【0047】
該スクリュー羽根33のピッチ56は、該スクリュー羽根33の全範囲に亘って同じであっても、異なっていてもよい。
【0048】
なお、本発明において、該スクリュー34の形状は、図4及び図6に示す形状に限定されるものではなく、他に例えば、残渣物排出側に向かってスクリュー軸の径が大きくなっているものや、残渣物排出側に向かってピッチが小さくなっているもの等が挙げられる。
【0049】
該内筒35は、円筒形状である。該内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49は、該含油スラッジ供給側フランジ38に固定されており、該筒端49は該含油スラッジ供給側フランジ38により塞がれている。一方、該内筒35の残渣物排出側の筒端48は、該残渣物排出側フランジ39に固定されており、該筒端48の開口は、該残渣物排出室44に繋がっている。つまり、該筒端48は、残渣物が該内筒の外へ排出されるように、開放されている。
【0050】
該内筒35の筒壁には、含油スラッジを圧搾することにより、該内筒35内の被圧搾物から分離する油水が、該内筒35から該油水排出隙間52に排出されるように、油水の通過孔(図示しない。)が形成されている。この油水の通過孔は、水蒸気の通過孔でもある。
【0051】
該内筒35の筒壁は、該油水の通過孔が形成されているものであれば、特に制限されず、該内筒35の筒壁としては、例えば、金網、パンチングメタルのような孔が打ち抜かれた板材、スクリーン用金網等が挙げられる。
【0052】
該内筒35の筒壁に形成される該油水の通過孔の径は、処理される含油スラッジ中の残渣物の大きさにより、適宜選択されるが、通常、0.1〜1.96mm、好ましくは0.2〜1.0mmである。なお、該内筒35の筒壁が金網の場合、該油水の通過孔の径は、該金網の目開きの長さを指し、また、該内筒35の筒壁がパンチングメタルの場合、該油水の通過孔の径は、打ち抜かれた孔の径を指す。
【0053】
該内筒35が、該スクリュー34を囲むようにして設置されることにより、該内筒35の内壁及び該スクリュー羽根34との間に、含油スラッジを圧搾するための圧搾空間47が形成される。
【0054】
該外筒36は、円筒形状である。該外筒36の含油スラッジ供給側の筒端50は、該含油スラッジ供給側フランジ38に固定されており、該筒端50は該含油スラッジ供給側フランジ38により塞がれている。一方、該外筒36の残渣物排出側の筒端51は、該残渣物排出側フランジ39に固定されており、該油水の排出隙間52と該残渣物排出室44とは、該残渣物排出側フランジ39により隔離されている。つまり、該油水の排出隙間52に排出された油水が、該残渣物排出室44に流れ込まないように、該油水の排出隙間52は、該残渣物排出側フランジ39により塞がれている。
【0055】
該内筒35と該外筒36とにより形成される該油水の排出隙間52の幅、言い換えると、該内筒35の外側と該外筒36の内側との距離は、含油スラッジを圧搾することにより、該内筒35内の被圧搾物から分離する油分、有害物質及び水分並びに供給した水蒸気が凝縮した水分、すなわち、該油水が排出されて、該油水排出口43へ流動できる程度であれば、特に制限されない。
【0056】
なお、図4及び図5では、該外筒36の形状が、含油スラッジの移動方向に対して垂直な面で切ったときの断面形状が円形であるものを示しているが、該外筒36の形状は、これに限定されるものではなく、内側に該内筒35を設置でき且つ油水が排出されて、該油水排出口43へ流動するための油水の排出隙間を形成できるものであればよい。他に、該外筒の形状としては、例えば、上側が平坦で下側に丸み帯びたカマボコ状のものが挙げられる。また、該外筒36の底部の筒壁は、該油水排出口43に向かって傾斜していてもよい。
【0057】
該ストッパー37は、該スクリュー軸32に固定されており、該内筒35の残渣物排出側の筒端48の近傍に設置されている。該ストッパー37は、残渣物が、該筒端48から該残渣物排出室44へ排出される際に、該残渣物の排出量を調節することにより、含油スラッジの圧縮率を調節する機能を果たす。具体的には、該ストッパー37の設置位置を調節することにより、該ストッパー37と該筒端48との間に形成される残渣物の排出隙間45の大きさを調節して、該残渣物の排出量を調節することができる。そして、該含油スラッジの供給量に対する該残渣物の排出量の比を調節することにより、該含油スラッジの圧縮率を調節することができる。なお、該ストッパー37の設置位置、あるいは、該ストッパー37と該筒端48により形成される該残渣物の排出隙間45は、含油スラッジの種類、含油スラッジの含油量、処理条件等により適宜選択される。
【0058】
また、該ストッパーとしては、図4に示すもの以外に、例えば、該スクリュー軸が挿通され、ベアリング等を介して該スクリュー軸に摺動可能に取り付けられ、且つ、背面に弾性体、油圧、空気圧等により圧力をかける調圧部材が取り付けられているストッパーが挙げられる。なお、該ストッパーの背面とは、該内筒との間で該排出隙間を形成する側とは反対側のことである。この調圧部材が取り付けられているストッパーを有する形態例では、該調圧部材で圧力調節することにより、排出隙間の大きさや圧搾の圧力の調節をして、残渣物の排出量、圧縮率等の処理条件を選択することができる。また、被処理物の種類や物性等により、処理条件を選択することもできる。
【0059】
該含油スラッジ供給口40は、該内筒35内へ含油スラッジを供給するための供給口である。含油スラッジの移動方向64における、該含油スラッジ供給口40の設置位置は、図7に示すように、該内筒35の長さ61に対する該内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49から該含油スラッジ供給口40までの長さ63の比(符号63/符号61)が、0.15以下、好ましくは0.125以下、特に好ましくは0.093〜0.125となる位置である。該内筒35の長さ61に対する該内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49から該含油スラッジ供給口40までの長さ63の比が上記範囲内にあることにより、含油スラッジの油分の減量化効果が高くなる。なお、本発明において、該内筒35の長さ61とは、該内筒の含油スラッジ供給側の筒端49から該内筒の残渣物排出側の筒端48までの距離を指し、また、該含油スラッジ供給口40の位置とは、該含油スラッジ供給口40の中央の位置を指す。また、該内筒35及び該外筒36の周方向における、該含油スラッジ供給口40の設置位置は、通常、図4及び図7に示すように、最上方であるが、これに制限されるものではなく、図示しない含油スラッジ供給管の位置等により適宜選択される。
【0060】
該外筒側水蒸気供給口41は、該内筒35内の含油スラッジに対して該内筒35側から、すなわち、該内筒35の外から中心に向けて水蒸気を供給するための水蒸気の供給口である。該含油スラッジの移動方向における、該外筒側水蒸気供給口41の設置位置は、図7に示すように、該内筒35の長さ61に対する該内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49から該外筒側水蒸気供給口41までの長さ62の比(符号62/符号61)が、0.5以下、好ましくは0.03〜0.5、特に好ましくは0.14〜0.3、更に好ましくは0.18〜0.25となる位置である。該内筒35の長さ61に対する該内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49から該外筒側水蒸気供給口41までの長さ62の比が、上記範囲内にあることにより、該内筒35内で該含油スラッジが圧搾される際の初期の段階で、多くの水蒸気を該含油スラッジに接触させることができるので、含油スラッジの油分の減量化効果が高くなる。なお、本発明において、該外筒側水蒸気供給口41の位置とは、該外筒側水蒸気供給口41の中央の位置を指す。
【0061】
また、該外筒36の周方向における、該外筒側水蒸気供給口41の設置位置は、図4及び図7では、最下方であるが、これに制限されるものではなく、図示しない水蒸気供給管の位置等により適宜選択される。また、該外筒側水蒸気供給口41の数は、特に制限されず、1であっても、2以上であってもよい。該外筒側水蒸気供給口から供給される水蒸気は、その温度により該含油スラッジを加熱する作用と、その圧力により、該含油スラッジを該内筒内で飛散させ接触効率を高める作用と、該内筒の該油水の通過孔の目詰まりを防ぐ作用とを、発揮する。
【0062】
該油水排出口43は、該油水の排出隙間52に排出される油水を、装置外へ排出するための排出口である。含油スラッジの移動方向における、該油水排出口43の設置位置及び該油水排出口43の設置数は、特に制限されず、適宜選択される。また、該外筒36の周方向における、該油水排出口43の設置位置は、通常、最下方である。また、該油水排出口43には、該油水に混入した細かい残渣物を分離するための該ストレーナー431が付設されている。
【0063】
該排気口46は、装置内の水蒸気等のガスを装置外に排出するためのガスの排出口である。含油スラッジの移動方向における、該排気口46の設置位置及び該排気口46の設置数は、特に制限されず、適宜選択される。
【0064】
該含油スラッジに水蒸気を接触させると、炭化水素等の蒸気が発生するので、それらを回収するために、該排気口46に、冷却手段を設置することが好ましい。
【0065】
該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31には、該スクリュー34を回転駆動させるための駆動手段(図示しない。)が設置されている。
【0066】
該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31においては、該スクリュー軸32及び該内筒35は水平であってもよく、含油スラッジの供給側に傾斜していてもよく、残渣物の排出側に傾斜していてもよく、あるいは、垂直であってもよい。
【0067】
該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31を用いて、本発明の含油スラッジの減量化方法Bを行う操作手順について、図8を参照して説明する。図8は、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31を用いて、本発明の含油スラッジの減量化方法Bを行っている様子を示す、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31の模式的な断面図である。
【0068】
該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31に、該含油スラッジ供給口40から、含油スラッジ71を供給して、該スクリュー34を回転させることにより、該含油スラッジ71を、該含油スラッジ供給口40から、該内筒の残渣物排出側の筒端48に向かって、該スクリュー軸32の周りに螺旋状に形成される該圧搾空間47を移動させて、該含油スラッジ71を押し込むことにより、該含油スラッジ71に高圧を与えて、該含油スラッジ71を圧搾する。そして、該含油スラッジを供給しつつ、該スクリュー軸32の一端58から130〜160℃且つ0.27〜0.62MPaの水蒸気70aを供給し、該外筒側水蒸気供給口41から130〜160℃且つ0.27〜0.62MPaの水蒸気70bを供給することにより、該含油スラッジ71に対し水蒸気を、該内筒35の中心から及び外側からの両方向から接触させる。
【0069】
そのため、該含油スラッジ供給口40から供給された該含油スラッジは、該内筒35への供給後直に、該スクリュー軸32の該水蒸気供給孔57からの水蒸気70a及び該外筒側水蒸気供給口41からの水蒸気70bに接触する。次いで、該含油スラッジ71は、該スクリュー34が回転することによって、圧搾されながら圧搾物排出側へ移動するが、その間も該水蒸気供給口57からの水蒸気70a及び該外筒側水蒸気供給口41からの水蒸気70bに接触している。つまり、圧搾中も該含油スラッジ41に該水蒸気を接触させている。
【0070】
そして、該スクリュー34を回転させながら、該水蒸気70a及び70bを供給しながら、該含油スラッジ71を連続的に供給しつつ、且つ該残渣物73を排出させることにより、連続的に、該含油スラッジ71の油分及び有害物質の減量化を行うことができる。その際、適宜、油水72を該油水排出口43から排出し、排気ガス75を該排気口46から排出する。
【0071】
このように、本発明の含油スラッジの減量化方法Bは、該含油スラッジに130〜160℃且つ0.27〜0.62MPaの水蒸気を接触させてから、該含油スラッジを圧搾し、該油水と該残渣物に分離する含油スラッジの減量化方法である。そして、本発明の含油スラッジの減量化方法Bは、連続的に、該含油スラッジの処理を行う方法である。
【0072】
該圧搾の際、該含油スラッジ71は、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31内に供給する水蒸気により加熱されるが、供給する該水蒸気の温度は、130〜160℃、好ましくは130〜150℃である。供給する該水蒸気の温度が、上記範囲未満だと、該含油スラッジ中の油分と残渣物が分離し難くなるか、又は分離に時間がかかり処理効率が悪くなり、また、上記範囲を超えると、該含油スラッジ中の油分が蒸気となる量が多くなり過ぎる。また、供給する該水蒸気の圧力は、0.27〜0.62MPa、好ましくは0.27〜0.48MPaである。供給する該水蒸気の圧力が上記範囲内であることにより、高圧の水蒸気が該含油スラッジに衝突することになるので、該含油スラッジが該内筒内で飛散するため、該含油スラッジと該水蒸気との接触効率が高くなると共に、外筒側からの高圧の水蒸気が、該内筒の油水の通過孔を通過することになるので、該油水の通過孔が詰まり難くなる。そして、本発明の含油スラッジの減量化方法Bでは、供給する該水蒸気の温度及び圧力が、上記範囲内であることにより、該含油スラッジ中の油分及び有害物質を、良好に減量化することができる。
【0073】
また、供給する該水蒸気の量は、該含油スラッジの供給量に対する該水蒸気の供給量の比(水蒸気の供給量(トン)/含油スラッジの供給量(m))が、好ましくは0.5〜1.5トン/m、特に好ましくは1.0〜1.5トン/mとなる量である。なお、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31のように、該スクリュー軸32の該水蒸気供給孔57と、該外筒側水蒸気供給口41との両方から、該水蒸気を供給する場合、該含油スラッジの供給量に対する該水蒸気の供給量の比は、該スクリュー軸32の該水蒸気供給孔57から供給する水蒸気の量と、該外筒側水蒸気供給口41から供給する水蒸気の量との合計量を、該水蒸気の供給量として計算される。
【0074】
また、該圧搾の際の該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31内の温度は、定常状態の温度で、110〜160℃、好ましくは120〜150℃である。該圧搾の際の該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31内の温度が上記範囲内にあることにより、該含油スラッジ71中の油分を、良好に減量化することができる。なお、該圧搾の際の該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31内の温度は、該油水の排出隙間52のうち、供給する水蒸気に直接接触しない位置に熱電対等を設置して、該油水の排出隙間52の温度を測定して得られる。
【0075】
該圧搾の際、該含油スラッジを圧搾する圧搾圧力は、含油スラッジの種類により適宜選択される。
【0076】
該圧搾の際の該含油スラッジ71の圧搾時間、すなわち、該含油スラッジ71が該含油スラッジ供給口40から供給されて、該残渣物の排出隙間45から該残渣物73として排出されるまでの時間は、好ましくは0.5時間以上、特に好ましくは0.5〜1.5時間、更に好ましくは1.0〜1.5時間である。該圧搾の際の該含油スラッジ71の圧搾時間が上記範囲内にあることにより、該含油スラッジ71中の油分及び有害物質を減量化する効果が高くなる。一方、該圧搾時間は長過ぎても、本発明の効果は得られるものの、本発明の効果の向上が頭打ちになり、処理効率が悪くなる。なお、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31では、該スクリュー34の回転速度、該含油スラッジ供給口40からの該含油スラッジ71の供給量、及び該残渣物の排出隙間45からの該残渣物73の排出量を、適宜選択することにより、該圧搾の際の該含油スラッジ71の圧搾時間を調節することができる。
【0077】
本発明の含油スラッジの減量化方法Bでは、該含油スラッジの供給直後及び圧搾中に該含油スラッジ71に、特定温度且つ特定圧力の水蒸気70を接触させることより、該含油スラッジは高温となり、加温効果により、該含油スラッジ71中の固形分と液体分とが分離し易くなる。そのため、本発明の含油スラッジの減量化方法Bは、該含油スラッジ71中の油分及び有害物質を、良好に減量化することができる。
【0078】
また、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31では、該スクリュー軸32に該水蒸気供給孔57が形成されており、且つ該内筒の長さに対する該内筒の含油スラッジ供給側の筒端から該外筒側水蒸気供給口までの長さの比が、0.5以下であるので、該含油スラッジを該内筒35内に投入すると直に、該含油スラッジに水蒸気を接触させることができるので、該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31は、本発明の含油スラッジの減量化方法Bに好適に用いられる。
【0079】
なお、本発明の含油スラッジの減量化方法では、一度、本発明の含油スラッジの減量化方法を行い得られた残渣スラッジに対し、再度、本発明の含油スラッジの減量化方法を実施してもよい。
【0080】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0081】
(スクリュー型の含油スラッジの減量化装置)
図4〜8に示すスクリュー型の含油スラッジの減量化装置31を用いて行った。なお、ストッパー37としては、スクリュー軸32に摺動可能に取り付けられ、且つ、空気圧により圧力を調圧する調圧部材を有するものを用いた。該スクリュー型の含油スラッジの減量化装置31の詳細は、以下のとおりである。
水蒸気供給孔が形成される範囲:含油スラッジ供給側の筒端から内筒の長さの2/3の位置まで
外筒側水蒸気供給口の数:3箇所
【0082】
(実施例1)
スクリューを回転させながら、該含油スラッジ供給口40から、含油スラッジを供給しつつ、スクリュー軸の水蒸気供給孔及び外筒側水蒸気供給口から水蒸気を供給し、以下の条件で、含油スラッジの圧搾を行った。その結果、回収された残渣物の量は、供給した含油スラッジの約1/200の量であった。
(条件)
含油スラッジ:原油スラッジ、油分含有量78.9重量%
含油スラッジの供給量:1m/時間
スクリューの回転速度:0.2rpm
調圧部材の圧力:1500kgf
水蒸気の温度:150℃
水蒸気の圧力:0.48MPa
水蒸気の供給量:1トン/時間
水蒸気の供給量/含油スラッジの供給量:1トン/m
処理時間:1.5時間1)
1)処理時間とは、含油スラッジを処理し始めてから、含油スラッジの排出を終えるまでの時間を指す。
【0083】
(実施例2)
以下の条件とする以外は、実施例1と同様に行った。その結果、回収された残渣物の量は、供給した含油スラッジの約1/195の量であった。
(条件)
含油スラッジ:原油スラッジ、油分含有量78.9重量%
含油スラッジの供給量:1m/時間
スクリューの回転速度:0.2rpm
調圧部材の圧力:1500kgf
水蒸気の温度:130℃
水蒸気の圧力:0.27MPa
水蒸気の供給量:1トン/時間
水蒸気の供給量/含油スラッジの供給量:1トン/m
処理時間:1.5時間
【0084】
(比較例1)
以下の条件とする以外は、実施例1と同様に行った。その結果、回収された残渣物の量は、供給した含油スラッジの約1/170の量であった。このとき、回収された残渣物中の含油量は、実施例1に比べ多かった。
(条件)
含油スラッジ:原油スラッジ、油分含有量78.9重量%
含油スラッジの供給量:1m/時間
スクリューの回転速度:0.2rpm
調圧部材の圧力:1500kgf
水蒸気の温度:100℃
水蒸気の圧力:0.1MPa
水蒸気の供給量:1トン/時間
水蒸気の供給量/含油スラッジの供給量:1トン/m
処理時間:1.5時間
なお、水蒸気の温度が100℃且つ圧力が0.1MPaの場合に、実施例1と同程度に、含油スラッジの量を減らすためには、処理時間を約2倍にする必要があり、処理効率が悪くなった。
【0085】
(比較例2)
以下の条件とする以外は、実施例1と同様に行った。その結果、回収された残渣物の量は、実施例1と同程度であった。しかし、多量の炭化水素のベーパーが発生した。
(条件)
含油スラッジ:原油スラッジ、油分含有量78.9重量%
含油スラッジの供給量:1m/時間
スクリューの回転速度:0.2rpm
調圧部材の圧力:1500kgf
水蒸気の温度:180℃
水蒸気の圧力:1.0MPa
水蒸気の供給量:1トン/時間
水蒸気の供給量/含油スラッジの供給量:1トン/m
処理時間:1.5時間
【符号の説明】
【0086】
10 圧搾ピストン型の含油スラッジの減量化装置
11、35 内筒
12、36 外筒
13a、13b、52 油水の排出隙間
14 水蒸気供給口
15、43 油水排出口
16、46 排気口
17 台座
18 圧搾ピストン
19 上部フランジ
21 圧搾前の位置
22 圧搾後の位置
31 スクリュー型の含油スラッジの減量化装置
32 スクリュー軸
33 スクリュー羽根
34 スクリュー
37 ストッパー
38 含油スラッジ供給側フランジ
39 残渣物排出側フランジ
40 含油スラッジ供給口
41 外筒側水蒸気供給口
42 残渣物排出口
44 残渣物排出室
45 残渣物の排出隙間
47 圧搾空間
48 内筒の残渣物排出側の筒端
49 内筒の含油スラッジ供給側の筒端
50 外筒の含油スラッジ供給側の筒端
51 外筒の残渣物排出側の筒端
53 内筒35により囲まれている部分
54 水蒸気供給孔57が形成される範囲
55 スクリュー羽根33の径
56 スクリュー羽根33のピッチ
57 水蒸気供給孔
58 スクリュー軸32の一端
59 スクリュー軸32の他端
61 内筒35の長さ
62 内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49から外筒側水蒸気供給口41までの長さ
63 内筒35の含油スラッジ供給側の筒端49から含油スラッジ供給口40までの長さ
64 含油スラッジの移動方向
70a、70b 水蒸気
71 含油スラッジ
72 油水
73 残渣物
75 排気ガス
111 底壁
431 ストレーナー
561a、561b スクリュー羽根の頂点
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、含油スラッジの処分を容易に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含油スラッジに水蒸気を接触させてから、該含有スラッジを圧搾し、油水と残渣物に分離する含油スラッジの減量化方法であって、
該含油スラッジに接触させる該水蒸気の温度が130〜160℃であり、且つ、該水蒸気の圧力が0.27〜0.62MPaであること、
を特徴とする含油スラッジの減量化方法。
【請求項2】
水蒸気の供給孔を有するスクリュー軸、及び該スクリュー軸の少なくとも一部の外周に螺旋状に設けられるスクリュー羽根からなるスクリューと、
油水の通過孔を有し、該スクリューを囲む内筒と、
該内筒の外側に設置され、該内筒との間に油水の排出隙間を形成する外筒と、
該内筒内に、含油スラッジを供給するための含油スラッジ供給口と、
該外筒内に水蒸気を供給するための外筒側水蒸気供給口と、
該内筒の残渣物排出側の筒端近傍に設置され、該内筒の残渣物排出側の筒端との間に残渣物の排出隙間を形成するストッパーと、
該油水の排出隙間に排出された油水を、装置外に排出するための油水排出口と、
該スクリューを回転駆動させる駆動手段と、
を有する含油スラッジの減量化装置を用い、
該スクリュー軸及び該外筒側水蒸気供給口から、130〜160℃且つ0.27〜0.62MPaの水蒸気を供給することにより、前記含油スラッジと前記水蒸気との接触を行うことを特徴とする請求項1記載の含油スラッジの減量化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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