説明

含浸剤組成物の回収法

本発明は、含浸剤組成物の回収法において、含浸された金属部材を、少なくとも1の塩少なくとも0.7質量%を含む塩含有清浄化組成物と接触させることを特徴とする方法に関する。さらに本発明は、含浸剤の回収のための少なくとも1の工程を含む金属部材の含浸法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、重合性含浸剤組成物の回収法に関する。更に、本発明は金属部材の含浸法を記載する。
【0002】
種々の金属部材又は金属構成要素、例えばエンジンブロック、シリンダヘッド、ギヤケーシング等は、種々の金属又は金属合金の鋳造により製造される。一般に、そのようにして製造された金属部材は細孔を有しており、該細孔は不密性を招き得る。金属部材のわずかな質量がますます重視されている。さらに、肉薄な金属部材の製造は材料節約につながる。それに応じて、鋳造により生じる細孔を閉塞する必要性が高まっている。
【0003】
従来技術
以前から、このために、(メタ)アクリル酸のエステルの混合物を含む含浸剤組成物が使用されている。しかしながら実際には、使用されている含浸剤組成物のわずかな部分が細孔の閉塞に使用されるに過ぎない。大部分は金属表面から洗浄水により除去され、その後、細孔中に存在する含浸剤組成物は硬化される。洗浄水中に存在する含浸剤組成物は、引き続き費用を掛けて処理されねばならない。
【0004】
前記問題を解決するために、従来技術では、1.0を上回る密度を有する特定の含浸剤組成物を使用することが提案されている。このことは例えば刊行物US6,761,775及びUS6,712,910に説明されている。しかしながら、前記様式の欠点は、極めて特定の含浸剤組成物のみを使用できるに過ぎないことである。これにより、金属部材の品質が損なわれ得る。なぜならば、細孔封止の特性、例えばその耐化学薬品性は含浸剤組成物に大いに依存するためである。
【0005】
さらに、刊行物US5,518,632から、洗浄水を、水の密度を高める添加剤の添加によって処理する、含浸剤組成物の回収法は公知である。これにより、含浸剤組成物の水溶性成分が洗浄水から分離される。しかしながら、前記方法の欠点は、多量の洗浄水が必要であり、これを費用をかけて清浄化しなければならないことである。さらに、多量の添加剤、例えば食塩が必要である。さらに、US5,518,632に記載された方法による含浸剤の回収は連続的な運転が不可能である。
【0006】
さらに、刊行物DEA−4410193及びDE−A−10113278から、含浸剤を逆浸透法により洗浄水から分離する方法が公知である。しかしながらこの場合、該方法は極めてエネルギーコストがかかり、その際、装置には極めて高いメンテナンス費用がかかることが不利である。
【0007】
さらに、刊行物JP−A2004204201、JP−A−2005076014及びJP−A2005132971から、洗浄水から容易に分離することができる含浸剤組成物が公知である。洗浄組成物は極めて特定の界面活性剤を含有することができる。しかしながら、前記教示は極めて特定の組成物を用いた場合にのみ満足のいく分離をもたらすため、この刊行物にも上記のことが当てはまる。
【0008】
課題及び解決
従来技術に鑑み、本発明の課題は、多数の種々の含浸剤組成物の回収に用いることのできる含浸剤組成物の回収法を提供することであった。
【0009】
本発明のもう1つの課題は、含浸剤の回収を連続的に行うことができる方法を創作することであった。
【0010】
さらに、本発明の課題は、容易でかつ廉価に実施することのできる含浸剤組成物の回収法を提供することであった。この場合、該方法はわずかな水消費で実施できることが望まれ、その際、特に多量の添加剤の使用が回避されることが望まれていた。
【0011】
さらに、本発明の課題は、金属部材の含浸法を創作することであった。特に、前記方法は、含浸された金属部材の最適な品質を保証するために、多数の種々の含浸剤組成物を用いて実施できることが望まれていた。この場合、前記方法では出来る限りわずかな量の含浸剤が消費されることが望まれていた。
【0012】
前記の、及び明示はされていないものの本願明細書の冒頭で議論された文脈から容易に導出可能であるか又は推論可能である課題は、請求項1の全ての特徴を有する方法により解決される。本発明による方法の有利な変形は、請求項1を引用する従属請求項において保護される。金属部材の含浸法に関しては、請求項17が、基礎となる課題の解決を提供する。
【0013】
それに応じて、本発明の対象は、含浸剤組成物の回収法において、含浸された金属部材を、少なくとも1の塩少なくとも0.7質量%を含む塩含有清浄化組成物と接触させることを特徴とする方法である。
【0014】
これにより、予見不可能な様式で、多数の種々の含浸剤組成物の回収に用いることのできる含浸剤組成物の回収法の提供が達成される。
【0015】
さらに、本発明による方法により、含浸剤の回収を連続的に行うことができる。
【0016】
さらに、該含浸剤組成物の回収法は、容易でかつ廉価に実施することができる。この場合、水消費をわずかに保持することができ、その際、特に多量の添加剤の使用も回避することができる。
【0017】
更に、本発明による方法は、金属部材の含浸法における部分工程として実施することができる。それによって驚異的にも、多数の種々の含浸剤組成物を用いて実施することのできる金属部材の含浸法を設けることができる。過剰の含浸剤組成物の容易でかつ廉価な回収により、前記方法は、金属部材の含浸のための極めて環境に優しい変法を提供し、その際、前記利点は健康上懸念のあるモノマー組成物を使用する場合にも達成される。
【0018】
本発明による方法は、含浸剤組成物の回収に寄与する。通常の金属部材の含浸法の場合には、含浸剤組成物の少量の部分が細孔の充填に使用されるに過ぎない。より多くの部分、一般には90%超は、金属表面から、清浄化組成物、例えば洗浄水により除去される。本発明による方法は、過剰に使用された含浸剤組成物の回収に寄与する。本発明によれば、このために、含浸された金属部材が塩含有清浄化組成物と接触される。「含浸された金属部材」との用語は、この場合、金属部材の細孔が含浸剤組成物で充填されていることを意味し、その際、金属部材は一般に含浸剤組成物の硬化の前に塩含有清浄化組成物と接触され、それによって、過剰の含浸剤組成物が金属表面から除去される。
【0019】
本発明によれば、清浄化組成物は少なくとも1の塩を含む。「塩」との用語は当業界で十分に公知であり、かつ有機及び/又は無機であってよいイオン性化合物を表し、その際、無機塩が有利である。有機塩は無機塩とは異なり炭化水素基を有する。有利には、塩は環境に優しくかつ廉価であることが望ましい。有利な塩は、乳化作用をわずかにのみ示し、特に有利には乳化作用を示さない。更に、塩は可能な限り金属部材の腐食を招かないことが望ましい。有利な塩には、特に、ハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物及びフッ化物、硫酸塩、亜硫酸並びにリンの塩、例えばリン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩が含まれる。カチオンとして、有利な塩は特にアルカリ金属、例えばナトリウム、リチウム又はカリウム及びアルカリ土類金属、例えばマグネシウム又はカルシウムを含むことができる。例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)及び/又は硫酸カリウム(K2SO4)を使用することができる。特に有利に、本発明の清浄化組成物は特にアルカリ金属のリン酸塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸カリウムを含み、その際、前記塩はpH値に応じてリン酸二水素ナトリウムNaH2PO4、リン酸水素二ナトリウムNa2HPO4、リン酸二水素カリウムKH2PO4及び/又はリン酸水素二カリウムK2HPO4としても存在し得る。前記塩を混合物として使用することもできる。
【0020】
清浄化組成物の塩含分は、有利には4〜20質量%の範囲内、特に有利には8〜15質量%の範囲内にあり、その際、塩は前記量で清浄化組成物中に溶解して存在する。主成分として、清浄化組成物は有利には水を含む。
【0021】
特に重要なのは、特に、有利には1.005〜1.20g/lの範囲内、特に有利には1.04〜1.16g/lの範囲内の密度を有する清浄化組成物である。
【0022】
金属部材の含浸のための含浸剤組成物は従来公知であり、その際、この含浸剤組成物はいずれも原則的に本発明による方法によって回収可能である。特に有利なのは、特に(メタ)アクリレートを含む含浸剤組成物である。
【0023】
(メタ)アクリレートとの用語には、メタクリレート及びアクリレート並びに両者からの混合物が含まれる。含浸剤組成物中に含まれる(メタ)アクリレートは従来公知であり、その際、前記モノマーはとりわけ刊行物US6,761,775及びUS6,712,910において説明されている。
【0024】
有利な含浸剤組成物は、とりわけヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。これにはとりわけ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPMA)、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0025】
有利な実施態様には、特に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが含まれる。
【0026】
有利に、含浸剤組成物は、含浸剤組成物の質量に対して5質量%〜95質量%、特に有利に25〜60質量%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0027】
特に重要なのは、更に、架橋性(メタ)アクリレートを含む含浸剤組成物である。これには、特に、2個の二重結合を有する(メタ)アクリレート、例えば、不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、並びに、ジオール又は高級アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラ−及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、特に、ポリジオール−400−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート及びジウレタンジメタクリレート;3個以上の二重結合を有する(メタ)アクリレート、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリトリットペンタ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0028】
有利な変形は、例えば、含浸剤組成物の質量に対して5質量%〜75質量%、特に有利に20質量%〜50質量%の架橋性(メタ)アクリレートを含む。
【0029】
更に、有利な含浸剤組成物は、含浸剤組成物の質量に対して5質量%〜60質量%、特に有利には20質量%〜40質量%のコモノマーを含むことができる。コモノマーは、上記(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマーである。これには、例えば、飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレートが含まれる。前記モノマーは、特に、アルコール基中に1〜6個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート及びペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート;アルコール基中に7〜15個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート;アルコール基中に16〜30個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、例えば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレートを含む。
【0030】
さらに、含浸剤組成物は、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のアミド及びニトリル、例えば、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)(メタ)アクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えば、ベンジルメタクリレート又はフェニルメタクリレート(その際、アリール基はそれぞれ非置換か又は四置換までであってよい);カルボニル含有メタクリレート、例えば、2−カルボキシエチルメタクリレート、カルボキシメチルメタクリレート、オキサゾリジニルエチルメタクリレート、N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド;アセトニルメタクリレート、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシペンタデシル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシヘプタデシル)−2−ピロリジノン;グリシジルメタクリレート;リン−、ホウ素−及び/又はケイ素含有メタクリレート、例えば、2−(ジメチルホスファト)プロピルメタクリレート、2−(エチレンホスフィト)プロピルメタクリレート、ジメチルホスフィノメチルメタクリレート、ジメチルホスホノエチルメタクリレート、ジエチルメタクリロイルホスホネート、ジプロピルメタクリロイルホスフェート、2(ジブチルホスホノ)エチルメタクリレート、2,3−ブチレンメタクリロイルエチルボレート、メチルジエトキシメタクリロイルエトキシシラン、ジエチルホスファトエチルメタクリレート;ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデン;複素環式(メタ)アクリレート、例えば、2(1イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2(4モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート及び1(2メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル;スチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、α−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、ビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレン;複素環式ビニル化合物、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール;ビニル−及びイソプレニルエーテルを含むことができる。
【0031】
有利なコモノマーは、とりわけ、7〜15個の炭素原子又は16〜30個の炭素原子を有する飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレートである。
【0032】
上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、架橋性(メタ)アクリレート及びコモノマーは、単独でか又は混合物として使用することができる。
【0033】
有利な含浸剤組成物は、例えば以下のものを含む:
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は2−ヒドロキシプロピルメタクリレート5質量%〜95質量%、有利には25質量%〜60質量%;
架橋性(メタ)アクリレート、特にエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及び/又はトリメチロールプロパントリメタクリレート5質量%〜75質量%、有利には20質量%〜50質量%;及び
コモノマー、特にアルコール基中に7〜15個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、含浸剤組成物の質量に対してそれぞれ5質量%〜50質量%、有利には10質量%〜40質量%。
【0034】
他の有利な変形によれば、本発明による含浸剤組成物は、架橋性(メタ)アクリレート、特にエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及び/又はトリメチロールプロパントリメタクリレート、有利には40質量%〜80質量%、有利には50〜70質量%;及び
コモノマー、特にアルコール基中に7〜15個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、含浸剤組成物の質量に対してそれぞれ10質量%〜50質量%、有利には20質量%〜40質量%を含むことができる。
【0035】
特に重要なのは、更に、
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は2−ヒドロキシプロピルメタクリレート30質量%〜90質量%、有利には60〜85質量%;及び
架橋性(メタ)アクリレート、特にエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及び/又はトリメチロールプロパントリメタクリレート、含浸剤組成物の質量に対してそれぞれ1質量%〜70質量%、有利には5質量%〜50質量%
を含む含浸剤組成物である。
【0036】
硬化のために、含浸剤組成物は有利には少なくとも1の開始剤を有する。好適な開始剤は当業界で公知である。これにはとりわけ、アゾ化合物、ペルオキシ化合物、ペルスルフェート化合物又はアゾアミジンが含まれる。限定しない例は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクメンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過硫酸二カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(イソ酪酸アミジン)ヒドロクロリド、ベンゾピナコール、ジベンジル誘導体、メチルエチレンケトンペルオキシド、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシアセテート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、並びにDuPont社から(R)Vazo、例えば(R)Vazo V50及び(R)Vazo WSの商品名で入手可能なラジカル形成剤が含まれる。
【0037】
開始剤は、含浸剤組成物の質量に対して、通常0.01〜10質量%、有利には0.05〜5質量%、極めて特に有利には0.1〜1質量%の範囲内の量で使用される。
【0038】
さらに、低温硬化に使用される開始剤系も公知である。一般に、前記開始剤は、促進剤及び1以上の前記ペルオキシド系触媒又は開始剤からのレドックス系を有する。ここで使用される量は、含浸剤組成物が5〜50℃の範囲内の温度で5〜120分以内に硬化するように何度も計量して定められる。
【0039】
促進剤は、含浸剤組成物の質量に対して、通常0.01〜5質量%、有利には0.5〜1.5質量%の量で使用される。促進剤として特に好適な化合物には、とりわけ、アミン及びスルフィミド、例えば、トリブチルアミン及び安息香酸スルフィミド(サッカリン)が含まれる。
【0040】
更に、促進剤として有機金属塩を利用することができ、該有機金属塩は、含浸剤組成物の質量に対して、通常0.0001〜0.5質量%の範囲内で使用される。前記有機金属塩にはとりわけオクタン酸銅が含まれる。
【0041】
さらに、含浸剤組成物は少なくとも1の乳化剤を含むことができる。乳化剤の全量は、含浸剤組成物の全質量に対して、有利には0.1〜15質量%、特に2〜10質量%である。特に好適な乳化剤は、非イオン性乳化剤又はその混合物であり、特に、有利にアルキル基中の8〜20個の炭素原子と8〜40個のエチレンオキシド単位とを有するアルキルポリグリコールエーテル;有利にアルキル−ないしアルキルアリール基中の8〜20個の炭素原子と8〜40個のエチレンオキシド単位とを有するアルキルアリールポリグリコールエーテル;例えば8〜40個のエチレンオキシド−ないしプロピレンオキシド単位を有する、エチレンオキシド/プロピレンオキシド−コモノマー、有利にはブロックコポリマーである。
【0042】
特に重要なのは、特に塩含有清浄化組成物中での溶解性がせいぜい6質量%、特に有利にはせいぜい4質量%である含浸剤組成物である。有利には、塩含有清浄化組成物中でのヒドロキシプロピルメタクリレートの溶解性は、有利にはせいぜい5質量%、特に有利にはせいぜい4質量%である。清浄化組成物中の含浸剤組成物の溶解性は、とりわけ、清浄化組成物の塩含分を上回るように調節されることができる。
【0043】
特に重要なのは、特に、有利には0.9g/l〜1.2g/lの範囲内、特に有利には0.95g/l〜1.1g/lの範囲内の密度を有する含浸剤組成物である。
【0044】
本発明による方法の有利な変法によれば、清浄化組成物は、含浸剤組成物の密度とは明らかに異なる密度を有する。有利には、清浄化組成物と含浸剤組成物との密度差は少なくとも0.01g/l、特に有利には少なくとも0.05g/l、極めて特に有利には少なくとも0.1g/lである。
【0045】
本発明による措置により、該方法を有利には連続的に行うことができる。「連続的」という用語は、本発明の範囲内で、清浄化組成物を連続的に過剰の含浸剤組成物から分離し、かつ再利用することができることを意味する。
【0046】
有利には、清浄化組成物を循環させることができ、その際、清浄化組成物はまず、含浸された金属表面と接触される。これにより、過剰の含浸剤組成物が清浄化組成物から収容され、かつ金属部材から除去される。
【0047】
そのようにして得られた清浄化組成物は、引き続き含浸剤組成物から分離され得る。このために、清浄化組成物は金属表面との接触後に、有利には公知の装置、例えば、含浸剤組成物を清浄化組成物の表面から分離する油分離装置か、又は、含浸剤組成物を清浄化組成物の底部で集める構造物に導かれることができる。前記分離は特に、清浄化組成物中での含浸剤組成物の溶解性がわずかである場合に特に容易に成功する。
【0048】
そのようにして含浸剤組成物から減損された清浄化組成物は、引き続き、過剰の含浸剤組成物の回収に再度使用されてよい。
【0049】
回収工程により回収された含浸剤組成物は、他の金属部材の含浸に直接使用することができ、その際、場合により、溶解性に基づき清浄化組成物中に残留しているモノマーを補うことができる。しかしながら、有利な方法において、このためには極めてわずかな量が必要であるに過ぎず、それというのも、前記モノマーの溶解性は、塩含分に基づきわずかに保持され得るためである。
【0050】
本発明による含浸剤組成物の回収法は、特に、金属部材の含浸法において使用することができる。それに応じて、金属部材の含浸法も本発明の対象である。
【0051】
金属部材の含浸法は数十年にわたって実施されており、その際、該方法はとりわけ刊行物US6,712,910、US6,761,775、US5,518,632、DE2718770、EP−A−0014062及びGB−1547801に詳細に記載されている。
【0052】
一般に、含浸すべき金属部材はまず清浄化される。これは例えば蒸気によってか又はアルカリ溶液により行うことができ、その際、金属部材は引き続き乾燥される。
【0053】
清浄化の後に、金属部材は有利にはまず無水真空下におかれる。これにより、空気が細孔から除去される。引き続き、金属部材は含浸剤組成物に含浸される。このために、金属部材を真空中で含浸剤組成物に浸漬させることができる。真空は例えば0.1ミリバール〜100ミリバール、有利には1ミリバール〜20ミリバールであってよい。上記の工程には、これによって制限されるものではないが、一般に約1〜10分間を要する。
【0054】
引き続き、真空を終了し、かつ含浸剤組成物中に含浸された金属部材を常圧で一般に約2〜20分間、有利に5〜10分間貯蔵することができる。大気圧によって、細孔は完全に含浸剤組成物で充填される。
【0055】
金属部材の含浸後、含浸剤組成物の大部分を、遠心分離又は類似の方法により金属部材から分離することができる。
【0056】
引き続き、含浸された金属部材は本発明により塩含有清浄化組成物と接触される。このために、例えば清浄化溶液を金属部材に噴霧することができる。さらに、金属部材を清浄化組成物に含浸させることができる。付加的な清浄化作用は、清浄化組成物を加圧して金属部材の表面に移すことにより達成することができる。
【0057】
引き続き、過剰の清浄化組成物を遠心分離か又は類似の方法により金属部材から除去することができる。
【0058】
もう1つの工程において、清浄化組成物並びに含浸剤組成物の残留分を、洗浄水での洗浄により除去することができる。洗浄水は同様に遠心分離により金属部材から分離することができる。有利に、洗浄水を複数回使用することができる。なぜならば、含浸剤組成物のわずかな残分のみが前記工程により金属表面から除去されるためである。さらに洗浄水は、含浸剤組成物のわずかな含分に基づいて生物学的に清浄化されることができる。
【0059】
過剰の含浸剤組成物が金属部材から除去された後、金属部材中に含まれる含浸剤組成物が硬化される。開始剤系に応じて、これは室温でか又は加熱により行うことができる。有利には、含浸剤組成物を硬化するために、金属部材を、例えば40〜120℃、有利には60〜90℃の範囲内の温度に加熱することができる。さらに、硬化を5℃〜50℃の範囲内の温度で行うことができる。
【0060】
前記方法を実施するための装置は、本質的に、既に引用した従来技術において、特に刊行物US6,712,910、US6,761,775、US5,518,632、DE2718770、EP−A−0014062及びGB−1547801に記載されている装置に相応する。前記装置は一般に、個々の工程を実施するための複数の容器を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸剤組成物の回収法において、含浸された金属部材を、少なくとも1の塩少なくとも0.7質量%を含む塩含有清浄化組成物と接触させることを特徴とする方法。
【請求項2】
塩が無機塩である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
塩がホスフェートである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
清浄化組成物を循環させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
清浄化組成物が塩4〜20質量%を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
含浸剤組成物が(メタ)アクリレートを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
含浸剤組成物がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート5質量%〜95質量%を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
含浸剤組成物が架橋性(メタ)アクリレート5質量%〜75質量%を含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
含浸剤組成物がコモノマー5質量%〜60質量%を含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項10】
含浸剤組成物が少なくとも1の開始剤を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
含浸剤組成物が開始剤0.01〜10質量%を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
含浸剤組成物が少なくとも1の乳化剤を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
塩含有清浄化組成物中での含浸剤組成物の溶解性がせいぜい6質量%である、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
塩含有清浄化組成物中でのヒドロキシプロピルメタクリレートの溶解性がせいぜい4質量%である、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
含浸剤組成物の密度が0.9g/l〜1.2g/lの範囲内である、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
含浸剤組成物と清浄化組成物との密度差が少なくとも0.05g/lである、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の含浸剤組成物の回収のための少なくとも1の工程を含む、金属部材の含浸法。
【請求項18】
金属部材をまず含浸剤組成物に含浸させ、引き続き、含浸された金属部材を塩含有清浄化組成物と接触させ、その後、金属部材を水で清浄化し、かつ金属部材中に含まれる含浸剤組成物を硬化させる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
含浸剤組成物と金属部材とを0.1ミリバール〜100ミリバールの範囲内の圧力で接触させる、請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
金属部材を含浸前に真空に曝す、請求項17から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
過剰の含浸剤組成物を金属部材の含浸後に遠心分離により除去する、請求項17から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
金属部材中に含まれる含浸剤組成物を60〜120℃の範囲内の温度で硬化させる、請求項17から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
金属部材中に含まれる含浸剤組成物を5〜50℃の範囲内の温度で硬化させる、請求項17から21までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2011−501782(P2011−501782A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529310(P2010−529310)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060730
【国際公開番号】WO2009/049942
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】