説明

含窒素複素環化合物及びその製造方法

【課題】インドール環又はピロール環と、アジン環とが連結されてなり、医農薬化合物等の製造原料、配位子源化合物等の形成に好適な含窒素複素環化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される含窒素複素環化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の含窒素複素環が連結した化合物である含窒素複素環化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含窒素複素環化合物は、工業的に多様な用途に好適な化合物であり、特に、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料等の製造原料、配位子源化合物(不斉配位子源化合物を含む)等として広く用いられている。
例えば、生物活性物質であって、下記式で表されるドラグマサイジンDを製造するための中間体としては、下記一般式(X)で表される化合物が知られている(非特許文献1参照)。
【化1】

【化2】

上記一般式(X)で表される化合物は、特定のホウ素化合物及び含ハロゲン化合物を用いた、いわゆる、鈴木カップリング反応の利用により製造されている。
上記用途に好適な含窒素複素環化合物は、ドラグマサイジンDをはじめとして、通常、その構造が比較的嵩高いことから、上記一般式(X)で表される化合物等の中間体を製造する場合には、複数の反応工程を備えることが不可欠となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.AM.CHEM.SOC. 124(2002) 13179−13184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ピロール環又はインドール環のβ位と、アジン環を構成する炭素原子とを、効率的に、直接、結合させることが困難であったが、鈴木カップリング反応では、特定のホウ素化合物及び含ハロゲン化合物を製造原料として用いるので、(1)2つの芳香族化合物を、環を構成する炭素原子どうしで結合すること、(2)芳香族化合物及び複素環化合物を、環を構成する炭素原子どうしで結合すること等に好適である。
しかしながら、鈴木カップリング反応を行うためには、上記のように、特定のホウ素化合物及び含ハロゲン化合物を製造原料として用いる必要がある。これらの製造原料は、いずれも、入手又は形成が容易なものではないため、結果として、上記一般式(X)で表される化合物の製造に多大なコストを要することとなる。
【0005】
本発明の目的は、インドール環又はピロール環と、特定のアジン環とが連結されてなり、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料等の製造原料、配位子源化合物(不斉配位子源化合物を含む)等として好適な含窒素複素環化合物、及び、それを効率的に製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、下記の知見から、本発明を完結するに至った。即ち、触媒の存在下、ピロール化合物及びピリジンN−オキシド化合物を反応させることにより、ピロール化合物を構成するピロール環の3位(β位)のC−H結合における炭素原子と、ピリジンN−オキシド化合物を構成するピリジン環の2位のC−H結合における炭素原子とが結合して、2つの複素環が連結された化合物を得た。そして、この反応生成物が、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料等の製造原料、配位子源化合物(不斉配位子源化合物を含む)等として好適な構造を有することが分かった。このような反応では、ピロール化合物におけるピロール環の2位(α位)のC−H結合における炭素原子に対する選択性が高くなるものと予想されたが、意外にも、ピロール環の3位(β位)のC−H結合における炭素原子に対する高い選択性を得ることができた。
また、ピロール化合物に代えて、インドール化合物を用いた場合にも、インドール化合物を構成するインドール環の3位のC−H結合における炭素原子と、ピリジンN−オキシド化合物を構成するピリジン環の2位のC−H結合における炭素原子とが結合して、上記のような製造原料として好適な構造を有することが分かった。
【0007】
本発明は、以下に示される。尚、本明細書において、「1価の有機基」は、炭素原子と、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等から選ばれた少なくとも1種の原子とを含む基であって、それ自身で一般的な慣用名のないものをいう。例えば、アルコキシ基における水素原子が、ハロゲン原子に置換されてなる基等の誘導体基が含まれる。
1.2種の含窒素複素環が連結した化合物であって、下記一般式(1)で表されることを特徴とする含窒素複素環化合物。
【化3】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。R及びRは、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。)
2.上記化合物が、下記一般式(1−1)で表される化合物である上記1に記載の含窒素複素環化合物。
【化4】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヒドロキシル基、又は、1価の有機基であり、R10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R11は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R12は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。)
3.上記1に記載の含窒素複素環化合物の製造方法であって、
触媒の存在下、下記一般式(5)で表される化合物と、下記一般式(7)で表される化合物とを反応させる工程を備えることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化5】

(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基である。R及びRは、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。)
【化6】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。)
4.上記触媒がパラジウム化合物である上記3に記載の含窒素複素環化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の含窒素複素環化合物は、従来にない構造を有し、且つ、化学的に安定であり、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料等の製造原料、配位子源化合物(不斉配位子源化合物も含む)等として好適である。
また、本発明の含窒素複素環化合物の製造方法によれば、高い収率(例えば、好ましい態様においては30%以上)で、含窒素複素環化合物を効率よく製造することができる。従来、ピロール環の3位(β位)又はインドール環の3位のC−H結合における炭素原子と、ピリジン環の2位のC−H結合における炭素原子とを、直接、結合させるには、特定の製造原料を必要とするだけでなく、多くの工程を要する等の問題があり、結果として、収率が20%程度に留まっていた。これに対して、本発明により、製造原料及び触媒として、汎用な化合物を用い、反応工程を1つのみとして進めることができるので、経済的である。
従って、本発明の含窒素複素環化合物を製造原料として用い、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料等を製造する場合に、本発明の含窒素複素環化合物の製造から、最終製品の製造が完了するまでに要する反応工程の数を確実に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の含窒素複素環化合物は、下記一般式(1)で表される、2種の含窒素複素環が連結した化合物である。
【化7】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。R及びRは、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。)
【0010】
本発明において、上記一般式(1)に示す構造は、下記に例示する構造等を含むものとし、R及びRが、互いに結合して2価の有機基を形成した場合も同様とする。
【化8】

【0011】
上記一般式(1)において、Xは、炭素原子又は窒素原子である。Xが窒素原子である場合、Rは存在しない。
【0012】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。Rが1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
は、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基である。
は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基である。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。また、Rが1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
また、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基である。Rが1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
【0013】
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基である。Rが1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。り、ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。また、Rが1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
また、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。また、Rが1価の有機基である場合、上記アリール基等の誘導体基とすることができる。
【0014】
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、又は、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、1価の有機基である。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0015】
インドリル基としては、5−クロロインドリル基、5−フルオロインドリル基、5−ブロモインドリル基、5−エチニルインドリル基、5−メチルインドリル基、5−クロロ−4−フルオロインドリル基、5−クロロ−3−フルオロインドリル基、5−フルオロ−3−クロロインドリル基、5−エチニル−3−フルオロインドリル基、5−クロロ−3−(N,N−ジメチルカルバモイル)インドリル基、5−フルオロ−3−(N,N−ジメチルカルバモイル)インドリル基、5−クロロ−3−ホルミルイミドリル基、5−フルオロ−3−ホルミルインドリル基、6−クロロインドリル基、6−フルオロインドリル基、6−ブロモインドリル基、6−エチニルインドリル基、6−メチルインドリル基等が挙げられる。
【0016】
チエニル基としては、4−クロロ−2−チエニル基、4−フルオロ−2−チエニル基、4−ブロモ−2−チエニル基、4−エチニル−2−チエニル基、5−クロロ−2−チエニル基、5−フルオロ−2−チエニル基、5−ブロモ−2−チエニル基、5−エチニル−2−チエニル基等が挙げられる。
【0017】
ピリジル基としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、4−クロロ−2−ピリジル基、4−フルオロ−2−ピリジル基、4−ブロモ−2−ピリジル基、4−エチニル−2−ピリジル基、4−クロロ−3−ピリジル基、4−フルオロ−3−ピリジル基、4−ブロモ−3−ピリジル基、4−エチニル−3−ピリジル基、5−クロロ−2−ピリジル基、5−フルオロ−2−ピリジル基、5−ブロモ−2−ピリジル基、5−エチニル−2−ピリジル基、4−クロロ−5−フルオロ−2−ピリジル基、5−クロロ−4−フルオロ−2−ピリジル基、5−クロロ−3−ピリジル基、5−フルオロ−3−ピリジル基、5−ブロモ−3−ピリジル基、5−エチニル−3−ピリジル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等が挙げられる。
【0018】
ピリミジニル基としては、5−クロロ−2−ピリミジル基、5−フルオロ−2−ピリミジル基、5−ブロモ−2−ピリミジル基、5−エチニル−2−ピリミジル基等が挙げられる。
【0019】
ピリダジニル基としては、4−クロロ−3−ピリダジニル基、4−フルオロ−3−ピリダジニル基、4−ブロモ−3−ピリダジニル基、4−エチニル−3−ピリダジニル基、6−クロロ−3−ピリダジニル基、6−フルオロ−3−ピリダジニル基、6−ブロモ−3−ピリダジニル基、6−エチニル−3−ピリダジニル基等が挙げられる。
【0020】
キノリル基としては、6−クロロキノリニル基、6−フルオロキノリニル基、6−ブロモキノリニル基、6−エチニルキノリニル基等が挙げられる。
【0021】
イソキノリル基としては、6−クロロイソキノリニル基、6−フルオロイソキノリニル基、6−ブロモイソキノリニル基、6−エチニルイソキノリニル基等が挙げられる。
【0022】
ベンゾイミダゾリル基としては、5−クロロベンゾイミダゾリル基、5−フルオロベンゾイミダゾリル基、5−ブロモベンゾイミダゾリル基、5−エチニルベンゾイミダゾリル基、6−クロロベンゾイミダゾリル基、6−フルオロベンゾイミダゾリル基、6−ブロモベンゾイミダゾリル基、6−エチニルベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。
【0023】
また、Rが1価の有機基である場合、上記例示した誘導体基以外の基とすることができる。
【0024】
尚、本明細書において、アルキル基及びアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1〜20である。また、アリール基、アラルキル基及びアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6〜40である。
【0025】
本発明の含窒素複素環化合物は、上記一般式(1)におけるR及びRが、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。この形態は、2価の有機基と、Rに結合する炭素原子と、Rに結合する炭素原子とから、環構造を形成していることを意味する。
上記2価の有機基において、環構造を構成する原子は、炭素原子のみであってよいし、炭素原子と、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれた少なくとも1種の原子とからなるものであってもよい。炭素原子及び窒素原子においては、官能基又は1価の有機基が結合していてもよい。
また、上記2価の有機基において、環構造を構成する原子どうしの結合形態は、特に限定されず、一重結合及び/又は二重結合とすることができる。
更に、上記2価の有機基において、環構造を構成する炭素原子には、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、1価の有機基等の官能基が結合していてもよい。
【0026】
本発明において、上記一般式(1)におけるR及びRが、互いに結合して2価の有機基を形成している含窒素複素環化合物としては、下記一般式(1−1)で表される化合物が好ましい。
【化9】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヒドロキシル基、又は、1価の有機基であり、R10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R11は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R12は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。)
【0027】
上記一般式(1−1)において、X及びXは、いずれも、炭素原子又は窒素原子である。Xが窒素原子である場合、Rは存在せず、Xが窒素原子である場合、Rは存在しない。
また、R、R、R及びRは、上記一般式(1)におけるものと同様である。
【0028】
上記一般式(1−1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヒドロキシル基、又は、1価の有機基である。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。Rが1価の有機基である場合、上記アリール基等の誘導体基とすることができる。
10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。R10が1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
11は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。また、R11が1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
また、R12は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。R12が1価の有機基である場合、上記アルキル基等の誘導体基とすることができる。
【0029】
本発明の含窒素複素環化合物は、R〜R12の種類によらず、化学的に安定な化合物であり、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料、配位子源化合物(不斉配位子源化合物を含む)等の形成に好適である。
【0030】
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、触媒の存在下、下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(A)」という。)と、下記一般式(7)で表される化合物(以下、「化合物(B)」という。)とを反応させる工程(以下、「反応工程」という。)を備える。
【化10】

(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基である。R及びRは、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。)
【化11】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。)
【0031】
上記化合物(A)を表す一般式(5)において、R、R、R及びRは、上記一般式(1)における説明が適用される。
また、上記化合物(B)を表す一般式(7)において、R、R、R及びRは、上記一般式(1)における説明が適用される。
【0032】
本発明において、上記一般式(5)におけるR及びRが、互いに結合して2価の有機基を形成している化合物(A)としては、下記一般式(5−1)で表される化合物が好ましい。
【化12】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヒドロキシル基、又は、1価の有機基であり、R10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R11は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R12は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。)
【0033】
上記一般式(5−1)において、R、R10、R11及びR12は、上記一般式(1−1)における説明が適用される。
【0034】
上記反応工程における化合物(A)及び(B)の使用割合は、含窒素複素環化合物の収率の観点から、以下のとおりである。即ち、上記化合物(B)の使用量は、上記化合物(A)1モルに対して、好ましくは1〜6モル、より好ましくは1.5〜5モル、更に好ましくは2〜4.5モルである。
【0035】
本発明に係る反応工程は、上記化合物(A)及び(B)を、触媒の存在下、反応させる工程である。
上記触媒は、含窒素複素環化合物の収率の観点から、パラジウム化合物が好ましい。
【0036】
上記パラジウム化合物としては、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリtert−ブチルホスフィノ)パラジウム(0)、(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、含窒素複素環化合物の収率の観点から、Pd(OAc)が好ましい。
【0037】
上記触媒の使用量は、含窒素複素環化合物の収率の観点から、上記化合物(A)1モルに対して、好ましくは0.05〜0.35モル、より好ましくは0.1〜0.3モル、更に好ましくは0.15〜0.28モルである。
【0038】
上記反応工程においては、触媒以外に、酸化剤、配位子源化合物、溶媒等を用いてもよい。
【0039】
上記酸化剤としては、酢酸銀、炭酸銀、酸化銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等の銀化合物;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)等の銅化合物;過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、1,4−ジフェノキノン、テトラメチルジフェノキノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、塩化チオニル、過酸化水素、オキソン(登録商標)、オキソンテトラブチルアンモニウム塩、硝酸第二鉄、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、硝酸、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸アンモニウム、過ホウ酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、アンモニウム過ヨウ素酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、塩素酸テトラメチルアンモニウム、ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過ホウ酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過硫酸テトラメチルアンモニウム、尿素過酸化水素、ペルオキシ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、含窒素複素環化合物の収率の観点から、銀化合物が好ましく、特に、酢酸銀及び炭酸銀が好ましい。
【0040】
上記酸化剤の使用量は、含窒素複素環化合物の収率の観点から、上記化合物(A)1モルに対して、好ましくは1〜3モル、より好ましくは1.5〜3モル、更に好ましくは2〜3モルである。
【0041】
上記配位子源化合物としては、ピコリン(α−、β−、又は、γ−ピコリン)、ルチジン(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、又は、3,5−ルチジン)、コリジン(2,4,6−、又は、3,5,6−トリメチルピリジン)、トリフルオロメチルピリジン、フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、メトキシピリジン、ニトロピリジン、クロロピリジン(2−、3−、又は、4−クロロピリジン)、ブロモピリジン(2−、3−、又は、4−ブロモピリジン)、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、PPh、トリフリルホスフィン、トリエチルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ−イソプロピルホスファイト等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、含窒素複素環化合物の収率の観点から、ルチジンが好ましい。
【0042】
上記配位子源化合物の使用量は、含窒素複素環化合物の収率の観点から、上記触媒1モルに対して、好ましくは1〜5モルであり、上記化合物(A)1モルに対して、好ましくは0.1〜1モル、より好ましくは0.2〜0.9モル、更に好ましくは0.3〜0.8モルである。
【0043】
また、上記溶媒としては、1,4−ジオキサン、N−メチルピロリドン、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジクロロエタン等が挙げられる。
【0044】
上記反応工程における反応温度は、溶媒の種類により、適宜、選択されるが、通常、25℃以上であり且つ上記溶剤の沸点温度以下である範囲から選択される。
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは、不活性ガス雰囲気である。
【0045】
上記反応工程において、化合物(A)及び(B)を反応させることにより、ピロール環の3位(β位)又はインドール環の3位のC−H結合における炭素原子と、ピリジン環の2位のC−H結合における炭素原子とを、直接、結合することができる。このように、多段階反応を必要とするものではなく、極めて単純である。
【0046】
本発明の製造方法は、上記反応工程の後、必要に応じて、精製工程を備えることができる。即ち、溶媒の除去、反応生成物(含窒素複素環化合物)の分離及び洗浄等といった一般的な後処理に供することができる。
【0047】
本発明の製造方法によれば、含窒素複素環化合物を高収率で製造することができる。収率は、好ましい態様においては30%以上、より好ましい態様においては40%以上、更に好ましい態様においては50%以上とすることができる。尚、上記「収率」とは、反応基質として用いた化合物(A)のモル量に基づき算出される値である。
【0048】
本発明の含窒素複素環化合物は、特に、生物活性物質の製造原料として好適であり、以下に示される、モノテルペノイド系インドールアルカノイド、ビス(インドリル)−ピペラジンアルカノイド、インドール/キナゾリンアルカノイド、ピリドピロロピリミジンアルカノイド、ピロロイミノキノンアルカロイド、ピリドアクリジンアルカロイド等の製造原料として有用である。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0049】
上記モノテルペノイド系インドールアルカノイドとしては、以下に例示される。
【化19】

【0050】
上記ビス(インドリル)−ピペラジンアルカノイドとしては、以下に例示される。
【化20】

【化21】

【化22】

【0051】
上記インドール/キナゾリンアルカノイドとしては、以下に例示される。
【化23】

【0052】
上記ピリドピロロピリミジンアルカノイドとしては、以下に例示される。
【化24】

【0053】
上記ピロロイミノキノンアルカロイドとしては、以下に例示される。
【化25】

【0054】
上記ピリドアクリジンアルカロイドとしては、以下に例示される。
【化26】

【0055】
以下、本発明の含窒素複素環化合物を用いて、生物活性物質であるドラグマサイジンDの製造する方法の一例について、簡単に説明する。
化合物(A)として、上記一般式(5−1)におけるXが炭素原子であり、R、R、R10、R11及びR12が水素原子であるインドール化合物を用い、化合物(B)として、上記一般式(7)におけるXが窒素原子であり、R及びRが水素原子であり、Rが下記に示される基である化合物を用いる。
【化27】

【0056】
これらを反応させて、上記一般式(1−1)で表される化合物を得た後、例えば、ジメチルスルホキシドを溶媒として、トリフルオロ酢酸無水物を作用させることにより、下記一般式(Y)で表される化合物が得られる。この化合物を用い、公知の方法により、ドラグマサイジンDの製造することができる。
【化28】

【実施例】
【0057】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0058】
実施例1
50mg(0.25mmol)のN−ピバロイルインドールと、94.6mg(1.0mmol)のピリジンN−オキシドと、5.6mg(0.025mmol)の酢酸パラジウムと、124.5mg(0.75mmol)の酢酸銀とを、0.67mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に29μL(0.25mmol)の2,6−ルチジンを加えて、マイクロウェーブ反応器を用いて、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140℃で反応させた。5時間後、得られた反応液(懸濁液)を、セライト濾過し(酢酸エチル)、溶媒を減圧留去した。
次いで、粗生成物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:メタノール/クロロホルム=1/20)を用いて精製し、下記式で表されるインドール誘導体を得た(38.8mg、収率53%)。
【化29】

【0059】
実施例2
217mg(0.8mmol)のN−パラトルエンスルホニルインドールと、304mg(3.2mmol)のピリジンN−オキシドと、36mg(0.16mmol)の酢酸パラジウムと、660mg(2.4mmol)の炭酸銀とを、2.1mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に93μL(0.8mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、105℃で16時間反応させた以外は、実施例1と同様にして、下記式で表されるインドール誘導体を得た(170.5mg、収率58%)。
【化30】

【0060】
実施例3
54.9mg(0.2mmol)のN−パラトルエンスルホニルインドールと、90.1mg(0.8mmol)の2−メチルピリジンN−オキシドと、14mg(0.06mmol)の酢酸パラジウムと、162.7mg(0.6mmol)の炭酸銀とを、0.57mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に23.2μL(0.2mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、115℃で12時間反応させた以外は、実施例1と同様にして、下記式で表されるインドール誘導体を得た(30.5mg、収率40%)。
【化31】

【0061】
実施例4
54.0mg(0.2mmol)のN−パラトルエンスルホニルインドールと、111.0mg(0.8mmol)の4−ニトロピリジンN−オキシドと、13.9mg(0.06mmol)の酢酸パラジウムと、165.9mg(0.6mmol)の炭酸銀とを、0.57mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に23.2μL(0.2mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、120℃で12時間反応させた以外は、実施例1と同様にして、下記式で表されるインドール誘導体を得た(31.4mg、収率39%)。
【化32】

【0062】
実施例5
53.5mg(0.2mmol)のN−パラトルエンスルホニルインドールと、95.1mg(0.8mmol)の2−シアノピリジンN−オキシドと、14.3mg(0.06mmol)の酢酸パラジウムと、165.9mg(0.6mmol)の炭酸銀とを、0.57mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に23.2μL(0.2mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、120℃で12時間反応させた以外は、実施例1と同様にして、下記式で表されるインドール誘導体を得た(27.7mg、収率36%)。
【化33】

【0063】
実施例6
60.2mg(0.2mmol)のN−ピバロイルインドールと、76mg(0.8mmol)のピラジンN−オキシドと、4.5mg(0.02mmol)の酢酸パラジウムと、100mg(0.6mmol)の酢酸銀とを、0.57mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に23.2μL(0.2mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、125℃で51時間反応させた以外は、実施例1と同様にして、下記式で表されるインドール誘導体を得た(38.8mg、収率49%)。
【化34】

【0064】
実施例7
388.5mg(1.29mmol)の7−メトキシインドールと、490mg(5.16mmol)のピラジンN−オキシドと、28.9mg(0.129mmol)の酢酸パラジウムと、1.06g(3.87mmol)の酢酸銀とを、3.5mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に149.3μL(1.29mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、125℃で72時間反応させ、実施例1と同様にして、粗生成物を得た。
次いで、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ジクロロメタン=1/6〜1/4)を用いて精製し、下記式で表されるインドール誘導体を得た(269mg、収率53%)。
【化35】

【0065】
実施例8
67.7mg(0.25mmol)のアザインドールと、94.6mg(1.0mmol)のピリジンN−オキシドと、5.5mg(0.025mmol)の酢酸パラジウムと、124.5mg(0.75mmol)の酢酸銀とを、0.67mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に24.2μL(0.2mmol)の2,6−ルチジンを加えて、シュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、105℃で40時間反応させ、実施例1と同様にして、粗生成物を得た。
次いで、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトン/メタノール=9/1)を用いて精製し、下記式で表されるインドール誘導体を得た(41.5mg、収率46%)。
【化36】

【0066】
実施例9
43.6mg(0.2mmol)の1−(p−トルエンスルホニル)ピロールと、72.9mg(0.8mmol)のピリジンN−オキシドと、4.5mg(0.02mmol)の酢酸パラジウムと、100mg(0.6mmol)の酢酸銀とを、0.57mLの1,4−ジオキサンに溶解させた。その後、この溶液に23.2μL(0.2mmol)の2,6−ルチジンを加えて、遮光したシュレンク管において、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、120℃で12時間反応させ、実施例1と同様にして、粗生成物を得た。
次いで、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:メタノール/クロロホルム=1/20)を用いて精製し、下記式で表されるピロール誘導体を得た(21.5mg、収率35%)。
【化37】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の含窒素複素環化合物は、生物活性物質を含む医農薬化合物、染料、顔料、電子材料、光記録材料等の製造原料、配位子源化合物(不斉配位子源化合物も含む)等として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の含窒素複素環が連結した化合物であって、下記一般式(1)で表されることを特徴とする含窒素複素環化合物。
【化1】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。R及びRは、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。)
【請求項2】
上記化合物が、下記一般式(1−1)で表される化合物である請求項1に記載の含窒素複素環化合物。
【化2】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヒドロキシル基、又は、1価の有機基であり、R10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R11は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、R12は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、又は、1価の有機基である。)
【請求項3】
請求項1に記載の含窒素複素環化合物の製造方法であって、
触媒の存在下、下記一般式(5)で表される化合物と、下記一般式(7)で表される化合物とを反応させる工程を備えることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化3】

(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アミノ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、トシル基、ピバロイル基、又は、アセチル基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アセチル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、又は、1価の有機基である。R及びRは、互いに結合して2価の有機基を形成していてもよい。)
【化4】

(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子であり、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、又は、1価の有機基であり、Xが窒素原子であるとき、Rは存在せず、Xが炭素原子であるときのRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−COOR(Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基)、インドリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又は、1価の有機基であり、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル基、シアノ基、アミノ基、又は、1価の有機基である。)
【請求項4】
上記触媒がパラジウム化合物である請求項3に記載の含窒素複素環化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−178752(P2011−178752A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46887(P2010−46887)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】