説明

吸い戻し防止を有する医療用タービンハンドピース

【課題】外部空気の取入れを最小限に抑える対策を提供する。
【解決手段】ハンドピース100の前方の端部領域内に回転可能に軸承された、工具と結合可能な駆動軸105と、駆動軸上に相対回動不能に配置されたタービンホィール110とを有し、タービンホィールが、端部領域内に形成されたタービンチャンバ120内に配置されており、入口開口部122においてタービンチャンバ内へタービンホィールを駆動するための流れる圧力手段用の供給導管が連通しており、かつ出口開口部124においてタービンチャンバから排出導管が延びている、医療用、特に歯科医療用のタービンハンドピースに関するものであって、その場合にタービンチャンバの壁内に、圧力手段のための少なくとも1つの横接続通路160が形成されており、横接続通路がタービンチャンバの軸から遠い端縁領域をタービンチャンバの、駆動軸に対して軸に近い領域と接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する医療用工具を駆動するための医療用ハンドピースに関するものであって、その場合に工具が駆動軸と結合可能であり、その駆動軸は、ハンドピース内に配置されたタービンによって圧力手段を用いて駆動される。圧力手段は、好ましくは圧縮空気である。
【背景技術】
【0002】
この種のタービンハンドピースにおいて、タービンホィールは、実質的に丸いタービンチャンバ内に回転自在に軸承されている。圧力手段は、ハンドピース内に長手方向に延びる供給導管を通して供給され、タービンチャンバ内の入口開口部を通してタービンホィール上へ流れ、タービンホィールを回転させて、出口開口部とそれに連続する排出導管を通ってタービンチャンバを出て行く。タービンの駆動は、供給導管内の弁を閉鎖することによって遮断される。ハンドピースは極めて高い回転数で駆動されるので、タービンは、圧力手段供給が遮断された後も、まだかなりの時間回転し続け、その場合に圧力手段をタービンチャンバから排出導管内へ押し出し、従ってポンプとして作用する。その場合にタービンチャンバ内に生じる負圧は、特に医療用工具のためのホルダの領域内ないしタービンホィールの軸受の領域内のエアギャップ内に吸引作用をもたらす。これは、望ましくない。というのは、ハンドピースの領域内へ病原体が吸い込まれることがあり、それが不十分な殺菌しか可能にせず、あるいは最悪の場合には、通常の殺菌措置では達成できないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に、吸引作用は優先してタービンホィールの軸に近い領域内で発生し、軸から離れた端縁領域内には過圧が発生するので、駆動軸の領域ないし付属の軸受領域が、病原菌によって汚染されることが、明らかにされた。従って本発明の課題は、外部空気の取入れを最小限に抑える対策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立請求項1と5の特徴を用いて解決される。展開が、従属請求項の対象である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ハンドピースの前方の端部領域内に回転可能に軸承された、工具と結合可能な駆動軸および駆動軸上に相対回動不能に配置されたタービンホィールを有する医療用、特に歯科医療用のタービンハンドピースが設けられており、そのタービンホィールが、端部領域内に形成されたタービンチャンバ内に配置されており、そのタービンチャンバ内へ入口開口部において、タービンホィールを駆動するための流れる圧力媒体のための供給導管が連通しており、かつタービンチャンバから出口開口部において排出導管が延びており、その場合にタービンチャンバの壁内に圧力手段のための少なくとも1つの横接続通路が形成されており、その横接続通路がタービンチャンバの端縁領域をタービンチャンバの駆動軸に対して軸に近い領域と接続する。
【0006】
従って本発明は、タービンチャンバの、タービンホィールまたは工具の駆動軸ないし回転軸に対して軸に近い領域内の圧力状況を、軸から遠い領域の圧力状況に同化させ、その場合にタービンチャンバ内への外部空気の侵入を阻止する、という考えに基づいている。これは、好ましくは短い、すなわち実質的にタービンチャンバの壁部分に従う接続通路によって実現され、その接続通路が上述した2つの領域の間で圧力交換を可能にする。
【0007】
本発明の展開において、横接続通路はタービンチャンバから分離されて、タービンチャンバの壁を通って延びている。
【0008】
これは特に、接続ルートの延長をもたらし、それによって迅速な空気交換を阻止することになる、タービンチャンバの壁部分において有意義であり得る。
【0009】
好ましくは、タービンチャンバの壁部分は、幾つかに分けて形成されている。たとえばタービンハンドピースのハウジングがタービンチャンバの1つの壁部分とタービンホィールないし駆動軸のためのホルダ部材も形成し、その場合にホルダ部材は、好ましくはハウジングと圧力手段密に結合可能に形成されている。この場合において、横接続通路は、少なくとも部分的に、タービンホィールないし然るべき軸受手段を有する駆動軸のためのホルダ部材の壁部分内に配置されている。
【0010】
本発明の展開において、ホルダ部材は、医療用流体を放出するためのスプレイ部材として形成されている。
【0011】
従ってタービンハンドピースの形成と組立において、空気ガイドと圧力補償を改良する可能性を著しく増大させる、種々の利点が生じる。たとえば、同時に駆動軸のためのホルダ部材として形成されている、スプレイ部材に1つまたは複数の横接続通路を設けることが可能であるので、駆動軸ないしタービンホィールのホルダ領域は、タービンチャンバないしタービンホィールの軸から遠い端縁領域からの圧力手段と迅速に連通することができる。特に、適切な軸受手段を有する駆動軸の領域は殺菌が困難であることが明らかであり、従ってこの領域内への外部空気ないし血清の侵入を阻止することが、特に効果的である。
【0012】
特に好ましくは、横接続通路は圧力手段のための入口開口部と出口開口部を有しており、その場合にたとえば開口部の横断面は、横接続通路の長さよりも小さくすることができる。従って、横接続通路内の圧力手段の案内を好ましくは層状の流れとして形成する可能性が生じ、それが上述した2つの領域間の迅速な圧力手段交換を可能にする。
【0013】
本発明の他の視点は、ハンドピースの前方の端部領域内に回転可能に軸承された、工具と結合可能な駆動軸および駆動軸上に相対回動不能に配置されたタービンホィールを有する医療用、特に歯科医療用のタービンハンドピースに関するものであって、そのタービンホィールが、端部領域内に形成されたタービンチャンバ内に配置されており、そのタービンチャンバ内へ入口開口部において、タービンホィールを駆動するための流れる圧力媒体のための供給導管が連通しており、かつタービンチャンバから出口開口部において排出導管が延びており、その場合にタービンホィールは、タービンホィールの軸に近い領域から軸から遠い領域まで閉鎖面によって圧力手段密に限定され、かつタービンホィールの壁と閉鎖面との間に横接続通路が形成されており、その横接続通路がタービンチャンバの端縁領域を、タービンチャンバの駆動軸に対して軸に近い領域と接続する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、横接続通路の壁領域が互いに対して平行な面によって実質的に平坦に形成されているので、それによって層状の流れ挙動も促進することができる。これは、たとえばタービンホィールの閉鎖面によって実現することができ、その閉鎖面は、たとえばタービンハウジングの壁部分に実質的に平行に従う。それによってたとえば、環状通路の形式の横接続通路を実現することができる。
【0015】
本発明の展開において、横接続通路の壁部分は、複数の同種の突出部ないし凹部を有している。
【0016】
好ましくは、壁領域の平坦な領域の面寸法は、突出部ないし凹部の面寸法を上回る。
【0017】
従って流れは、同様に方向付けることができ、かつ迅速な圧力補償を促進する。たとえば、好ましくは優先的広がりの共通の方向を有する突出部ないし凹部を用いて所定の方向への、たとえば突出部ないし凹部の優先的広がりに対して横方向の、圧力手段の循環を阻止し、あるいは抑圧することができるので、圧力手段循環の優先方向を得ることができる。たとえばこれは、その入口開口部が出口開口部よりも大きく形成されている、横接続通路のために有意義であり得る。特に好ましくは、突出部ないし凹部は、横接続通路の壁部分内に配置されており、横接続通路の対向する壁は、流れを横接続通路に対して最適に成形するために、平坦に形成されている。
【0018】
上述したすべての実施形態および本発明の視点において、特に、タービンチャンバの軸に近い領域と軸から遠い領域の間の圧力差の補償が、軸に近い領域内への外部空気の侵入よりも迅速に行なわれると、有益である。さらに強調すべきことは、横接続通路は常に、入口開口部と出口開口部の接続の他に形成された、タービンチャンバの軸に近い領域と軸から遠い領域の付加的な接続であって、その場合に入口開口部と出口開口部の接続は、タービンホィール自体内の空気ガイドによって実現することもできる。
【0019】
以下、添付図面を用いて本発明を詳細に説明し、その場合にすべての表示において同一の部材には、同一の参照符号が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に基づくタービンハンドピースの実施例を示している。
【図2】図2と2aは、タービンハンドピース内の圧力手段循環の詳細を示している。
【図3】本発明に基づくタービンハンドピースの他の実施例を示している。
【図4】タービンホィールのための保持部材の詳細を示している。
【図5】保持部材の他の実施例の詳細を示している。
【図6】タービンハンドピースの実施例内の、図5に示す保持部材の配置を示している。
【図7】図6に示す保持部材の配置の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
医療用機器の使用において、それらを衛生的に完璧な状態に保持できることが、不可欠である。回転する医療用工具を駆動するための医療用、特に歯科医療用のハンドピースにおいて、これは特に困難である。
【0022】
これらハンドピースは、たとえば駆動部材ないしその収容部とホルダによって形成される、関連する中空室の複雑な配置を有することが多い。しかしさらに、手入れ措置によってハンドピースのきちんとした機能性を保証するために、この収容部ないしホルダの部分への接近を形成することが、不可避である。特に、分当たり300、000と450、000回転の間の工具回転を保証しなければならない、歯科医療用のハンドピースにおいては、ハンドピースのすべての中空室を媒体密ないし血清密に閉鎖することは、ほぼ排除されている。
【0023】
特に歯科医両領域においては、いわゆるタービンハンドピースの使用は一般的であって、そのタービンハンドピースは、回転する工具を駆動するための、実質的に回転自在のタービンホィールをタービンチャンバ内に収容する。その場合にタービンホィールの駆動は、圧力手段を用いて行なわれる。圧力手段は、ハンドピース内に長手方向に延びる供給導管を通してタービンチャンバの入口開口部を介して供給され、タービンチャンバ内の入口開口部を通してタービンホィール上へ流れて、タービンホィールを回転させ、出口開口部とそれに連続する排出導管を介してタービンチャンバを出て行く。周囲圧力に対して増大された固有圧力を有する圧力手段を使用することのポジティブな副次効果は、中空室への外部空気または血清の侵入とそれに伴って病原体による中空室の汚染が効果的に阻止されることである。
【0024】
タービンの駆動は、タービンの入口開口部への圧力手段供給を中断することによって停止させることができる;タービンホィールの質量慣性によって、タービンホィールは、圧力手段供給の中断後もかなりの期間にわたってさらに回転し、従って後回転するので、タービンは、特に医療用工具のためのホルダの領域の間隙内で、吸引作用を展開するので、外部の病原体の侵入の危険が、著しく増大している。
【0025】
本発明は、そのためにここで対策を提供する。
【0026】
図1は、いわゆるアングルハンドピースとしての、歯科医療用タービンハンドピース100の実施例を示している。ハンドピースは、細長いグリップ領域を備えたハウジング150を有しており、そのグリップ領域は歯科医療用の工具の回転軸Rに対して傾斜している。強調すべきことは、本発明がアングルハンドピースに限定されないことである;たとえば医療用工具による処置箇所の接近性を高めることができる、他の実施形態も考えられる。ハンドピースの前端部領域内で、ハウジング150内に、工具の回転軸Rを中心に回転可能に軸承された駆動軸105が配置されており、医療用工具、たとえば孔あけ工具または研磨工具がその駆動軸と結合可能である。駆動軸105は、高性能転がり軸受ないし玉軸受140によってハウジング150に対して回転可能に軸承されており、その場合に転がり軸受ないし玉軸受140と従って間接的に駆動軸105も、保持部材130によってハウジングと結合されている。駆動軸105に、タービンホィール110が相対回動不能に結合されており、そのタービンホィールは、端部領域内に形成されたタービンチャンバ120内に配置されている。タービンホィール110とそれに伴ってタービンを駆動するための流れる圧力手段用の、図1では見えない入口開口部122が、タービンチャンバ120内へ開口しており、その圧力手段は、ハンドピースの後方の端部領域を通って延びる供給導管を介してタービンチャンバ120へ案内される。さらに、タービンチャンバは、出口開口部124を有しており、その出口開口部から、同様にハンドピースの後方の端部領域内に配置された、圧力手段のための排出導管が延びている。
【0027】
図示されたすべての実施例において、圧力手段として圧縮空気が設けられているが、本発明は圧力手段としての圧縮空気に限定されるものではない。たとえば、他のガス、特に窒素、あるいはたとえば水のような、液状の圧力手段を設けることもできる;好ましくはこれは、たとえば特殊な工具が同時に冷却を必要とし、あるいはタービンの回転数制御を、たとえば圧力手段の粘性を用いて達成しようとする場合に、タービンハンドピースの適用場合にも依存する。
【0028】
本発明によれば、タービンチャンバ120の壁内に、圧力手段のための少なくとも1つの横接続通路160が形成されており、その横接続通路がタービンチャンバ120の、回転軸Rに対して軸から遠い端縁領域をタービンチャンバ120の、回転軸Rないし駆動軸105に対して軸に近い領域と接続する。その場合に、「軸に近い」ないし「軸から遠い」という概念は、軸から遠い領域が、軸に近い領域よりも、回転軸Rないし駆動軸105から径方向にさらに離れて配置されていることを意味する。
【0029】
特に、タービンホィール110の幾何学配置に従って、タービンの「後回転」の間、タービンホィール110の軸から遠い端縁領域内には圧力手段の過圧が生じ、軸に近い領域内には負圧が形成されることが、明らかにされている。本発明は、この圧力差を、それが異媒体の吸引をもたらす前に、迅速に補償するという考えに基づいており、特に軸から遠い領域を軸に近い領域と好ましくは最短のルートで接続しようとしている。以下で明らかになるように、圧力補償を促進する、さらに他のないしは付加的な措置も考えられる。
【0030】
図示の実施例において、たとえば外部空気が駆動軸105ないし転がり軸受または玉軸受140とハウジング150の間の間隙を介して吸い込まれ、たとえば転がり軸受140内へ侵入し、その転がり軸受は、駆動軸105を回転軸Rを中心に回転可能に軸承し、かつ広範な措置なしでは殺菌のために条件付きでしか接近できない。
【0031】
その場合に、タービンチャンバ120の壁領域は、タービンホィール110の周形状に実質的に従い、従って実質的に円筒状に形成されており、その場合に工具の回転軸Rないし駆動軸105は、タービンホィール110ないしタービンチャンバ120の円筒状の周形状の長手軸と一致する。タービンチャンバ120は、横接続通路160を有しており、その横接続通路は、実質的に径方向に方向付けされており、タービンチャンバの壁内でたとえばスリットの形状で案内されている。
【0032】
図2と2aは、これを、図1の実施例を修正して示している。その場合に横接続通路160ないしスリットは、入口開口部164と出口開口部165を有している。この場合において、入口開口部ないし出口開口部164ないし165の直径は、スリットの長さないし軸から遠い領域と軸に近い領域の間の径方向の距離よりも小さい。その場合に、横接続通路160とタービンチャンバ120の間の、横通路160の第1の壁領域162を実現する、比較的肉薄の分離ウェブを用いて、圧力手段がタービンチャンバ120内の圧力手段ガイドから、特にタービンチャンバ120内の圧力手段を出口開口部124へ供給する還流通路170から、分離されるので、横通路160内に自立した流れ状況を形成することができ、その場合にこれは、上述したスリットの幾何学的状況によっても支援される。
【0033】
この場合において、軸から遠い領域と軸に近い領域の間の圧力差を補償するために層状の圧力手段流が生じると、特に効果的である。というのは、この場合においては、特に速い圧力手段流が可能だからである。これは、特に横接続通路160の第2の壁部分161が、第1の壁部分161に実質的に平行に従うことによって、支援することができる。第1と第2の壁部分162ないし161は、実質的に平坦に形成されているが、後に明らかにされるように、優先流れ方向を調節し、ないしは意図されない流れを阻止するために、壁部分161ないし162の構造化を設けると、有用な場合がある。本発明は、図1からも明らかなように、横通路160の平坦な、好ましくは平行の壁面を有する上述した場合に限定されるものではない。たとえば、横接続通路160は、丸い、あるいは長円形の横断面を有することもできるので、速い圧力手段流のための好ましい流れ技術的に効果的な状況を達成することができる。
【0034】
図1、2および2aに示唆されるように、タービンチャンバ120の壁は、幾つかに分かれて実現されている。その場合に、実質的にタービンチャンバ120の円筒形状の周面を定める、タービンチャンバ120の第1の壁部分は、ハウジング150によって形成されている。その場合にタービンチャンバ120の天井面は、駆動軸105ないしタービンホィール110の転がり軸受ないし玉軸受140のためのホルダ部材130によって閉鎖されており、それが、特にタービンハンドピース100の組立と形成において一連の利点をもたらすので、それによって圧力手段ガイドないし横接続通路の形成の効果的形状を実現することができる。
【0035】
特に、横接続通路160は、少なくとも部分的に、駆動軸105ないしその軸受140のための1つまたは複数のホルダ部材130内で案内することができる。これは、たとえば図3の実施例において、再度明白に示されている。
【0036】
図3に示すタービンハンドピースは、第1と第2のホルダ部材130を有しており、そのホルダ部材は、それぞれ円筒形状のタービンチャンバ120の天井側を閉鎖し、かつ軸受手段、特に転がり軸受または玉軸受を支持し、それがタービンホィール110ないし対応づけられた駆動軸105を回転可能に軸承する。その場合にホルダ部材130の外周面は、円錐台形状に近似しており、その場合に複数の横接続通路160の入口開口部164が、それぞれ円錐台の外側面に、ないしはホルダ部材130の外周に、たとえば回転軸Rに対して横方向ないし直交して、取り付けられている。
【0037】
ホルダ部材130は、回転軸Rに対して平行ないし同心に配置された、軸受手段を収容するための1つまたは複数の孔を有している。その場合に横接続通路160の該当する出口開口部165が、前記孔と接続されており、ないしはその中へ開口している。これは、特に図4からも詳細に読み取れる。
【0038】
図3の実施例に示されるタービンホィール110は、タービンチャンバ120内に、タービンホィール110と結合された、タービンホィール120のタービン羽根から隔たって配置されたリングフランジ171を用いて、圧力手段のためのリング形状の還流通路170を実現しており、従ってその圧力手段は、タービンの駆動中に出口開口部124へ供給することができる。
【0039】
特に、横接続通路160は、還流通路170に対して自立して形成されているので、還流通路170内の流れ状況からの横接続通路160の独立を達成することができる。
【0040】
横接続通路160の入口開口部164は、この場合において、横接続通路160の出口開口部165の該当する横断面積よりも大きい横断面積を有している。従って、横接続通路160の横断面をその長さにわたって連続的に適合させることにより、横接続通路160の推移を介して圧力手段の加速が生じる。その場合に入口開口部ないし出口開口部164ないし165の周ラインのほぼ線形の結合が、回転軸Rに対して径方向にほぼ台形の、横接続通路160の横断面を定めるので、横接続通路160の横断面積が、その推移の長さにわたって減少される。
【0041】
さらに、実施例において、タービンチャンバ120の周面にわたって分配して複数の横接続通路160が形成されている。従って、特に独立した流れ条件を有する、複数の独立したルートが、軸に近い領域と軸から遠い領域を接続するのに寄与することができ、それらのルートは、タービンチャンバ120の端縁領域内の圧力状況が不均一である場合でも、圧力補償の最適化を達成する。特に図4に示すように、ホルダ部材130は、その外側面ないし外表面の周面にわたって複数の、この場合には3つの、入口開口部164を有しており、それらがそれぞれホルダ部材130内で別々に案内される横接続通路160と接続されている。横接続通路160の該当する出口開口部165が、駆動軸105ないしタービンホィール110のための軸受手段を収容するための共通の孔内へ連通している。
【0042】
このコンセプトの展開と本発明の他の視点が、図5から7の実施例に示されている。図5は、ホルダ部材130を示しており、そのホルダ部材は同時に、タービンハンドピース100から流体を流出させるためのスプレイ挿入片として形成されている。そのために、流体通路190がホルダ部材130内に設けられており、その流体通路は駆動中に、ハンドピース100内に配置されている供給導管と接続されている。その場合にホルダ部材130は、流体通路を接続するための自立したシールを有している。従って同時に流体を工具の近傍へ案内することができ、タービンが後回転する場合に流体がタービンチャンバ120内へ吸い込まれる危険が、それと結びつくことはない。
【0043】
さらに、ホルダ部材130は、タービンチャンバ120の実質的に平坦な壁面161を形成し、この場合においてその壁面は、ホルダ部材130の円形の底面によって実現される。
【0044】
圧力手段の還流通路170から独立した横接続通路160は、この場合において、タービンホィール110の特殊な形成を用いて実現することができるので、ホルダ部材130ないしタービンチャンバ120の壁は、横接続通路160の壁部分161の1つのみを形成する。
【0045】
特に図6と7の実施例に示されるように、タービンホィール110は、駆動軸105に関して軸に近い領域から軸から遠い端縁領域まで、閉鎖面によって圧力手段密に限定される。
【0046】
この閉鎖面は、横接続通路160の他の壁部分162を形成するので、タービンチャンバ120の壁と閉鎖面との間に、横接続通路160が形成されており、その横接続通路がタービンチャンバ120の軸から遠い端縁領域をタービンチャンバ120の軸に近い領域と接続する。従って図示の実施例は、平坦な壁部分を有する他の環状通路を実現し、その環状通路は、還流通路170から分離された、独立した空気ガイドを可能にし、それによって迅速な圧力補償に寄与する。特に、閉鎖面は、その面の広がり全体にわたって、対向するタービンチャンバ120の壁部分に対して実質的に平行に延びており、その壁部分がリング形状の横接続通路160を完全なものにしている。
【0047】
リング形状の横接続通路160の展開が、同様に図5から7に示されている。ホルダ部材130ないしタービンチャンバ120の壁の周面にわたって、好ましくは同様に分配されて、複数の同種の隆起部ないし凹部161aを、タービンチャンバ120の平坦な、そしてこの例においては円環形状の壁面に形成することができる。その場合に隆起部ないし凹部161aは、優先流れ方向を形成するために利用することができる。
【0048】
上述した実施例のリング形状の横接続通路160の場合において、たとえば、回転軸Rを中心に回転して流れる多大な割合の圧力手段が考慮される。しかし、迅速な圧力補償のためには、圧力手段の好ましくは層状の、径方向の流れが望ましい。そのためにタービンチャンバ120の壁ないしホルダ部材130は、この場合においてリング形状の横接続通路160の径方向の長さ全体にわたって径方向に延びる凹部スリットを有しており、その凹部スリットが、たとえばローカルな渦センターを形成することによって、回転軸Rを中心に回転する圧力手段の流れ成分の形成を緩和し、ないしは阻止する。
【0049】
上述した凹部スリットの他に、同じ箇所に、凹部スリットに対して逆に形成された、径方向に配置された隆起部を設けることができる。
【0050】
各場合において、多数のほぼ独立した優先流れ方向を形成する、多数の隆起部ないし凹部161aによって、同様にタービンチャンバ120の周面にわたって分配して多数の横接続通路160が定められ、それが独立した圧力補償を可能にする。
【0051】
従って本発明を用いて、タービンチャンバ120の端縁領域と回転軸Rに対して軸に近い領域との間の圧力補償を迅速に実現する効果的な可能性が提供されるので、ハンドピースの開口部を通しての異媒体の吸込みを抑圧することができる。その場合に強調すべきことは、本発明のすべての実施例ないし視点の開示された特徴が互いに組み合わせることができることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドピース(100)の前方の端部領域内に回転可能に軸承された、工具と結合可能な駆動軸(105)、および
駆動軸(105)上に相対回動不能に配置されたタービンホィール(110)、
を有し、前記タービンホィールが、前記端部領域内に形成されたタービンチャンバ(120)内に配置されており、
入口開口部(122)において前記タービンチャンバ内へタービンホィール(110)を駆動するための流れる圧力手段用の供給導管が連通しており、かつ
出口開口部(124)において前記タービンチャンバから排出導管が延びている、
医療用、特に歯科医療用のタービンハンドピース(100)において、
タービンチャンバ(120)の壁内に、圧力手段のための少なくとも1つの横接続通路(160)が形成されており、前記横接続通路がタービンチャンバ(120)の軸から遠い端縁領域をタービンチャンバ(120)の、駆動軸(105)に対して軸に近い領域と接続することを特徴とする医療用、特に歯科医療用のタービンハンドピース。
【請求項2】
横接続通路(160)が、タービンチャンバ(120)から分離されて、タービンチャンバ(120)の壁を通って延びていることを特徴とする請求項1に記載の医療用のタービンハンドピース。
【請求項3】
タービンチャンバ(120)の壁領域が、幾つかに分かれて形成されており、かつ横接続通路(160)が少なくとも部分的に、タービンホィール(110)のためのホルダ部材(130)の壁部分内に配置されており、その場合に好ましくはホルダ部材(130)が、医療用流体を放出するためのスプレイ部材として形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用のタービンハンドピース。
【請求項4】
横接続通路(160)が、圧力手段のための入口開口部(164)と出口開口部(165)を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医療用のタービンハンドピース。
【請求項5】
ハンドピース(100)の前方の端部領域内に回転可能に軸承された、工具と結合可能な駆動軸(105)、および
駆動軸(105)上に相対回動不能に配置されたタービンホィール(110)、
を有し、前記タービンホィールが、前記端部領域内に形成されたタービンチャンバ(120)内に配置されており、
入口開口部(122)において前記タービンチャンバ内へ、タービンホィール(110)を駆動するための流れる圧力手段用の供給導管が連通しており、かつ
出口開口部(124)において前記タービンチャンバから排出導管が延びている、
医療用、特に歯科医療用のタービンハンドピース(100)において、
タービンホィール(110)が、駆動軸(105)に関して軸から遠い領域から軸に近い領域まで閉鎖面によって圧力手段密に限定されており、かつタービンチャンバ(120)の壁と閉鎖面との間に横接続通路(160)が形成されており、
前記横接続通路がタービンチャンバ(120)の軸から遠い端縁領域を、タービンチャンバ(120)の軸に近い領域と接続する、
ことを特徴とする医療用のタービンハンドピース。
【請求項6】
横接続通路(160)の壁領域が、互いに対して平行な面によって実質的に平坦に形成されており、その場合に横接続通路(160)の壁領域内に好ましくは複数の同種の突出部ないし凹部(161a)が配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の医療用のタービンハンドピース。
【請求項7】
タービンチャンバ(120)の周面にわたって分配して複数の横接続通路(160)が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1個に記載の医療用のタービンハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196450(P2012−196450A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63300(P2012−63300)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(305039194)カルテンバッハ ウント ホイクト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (36)
【氏名又は名称原語表記】Kaltenbach & Voigt GmbH
【Fターム(参考)】