説明

吸上げパイプ付き容器

【課題】コスト低減が図れ、かつ底壁の強度が大で、しかも残量を極力少なくすることが可能な吸上げパイプ付き容器を提供する。
【解決手段】胴部2上端から起立する口頸部へ液体吐出ポンプ30を装着させ、該液体吐出ポンプから胴部内へ吸上げパイプ50を垂下させ、胴部2はその下部の一部に縮径により形成された周方向へのV溝17を備え、胴部底壁4は胴部下方へ突出する第1形態Aと、胴部内へ折り返された第2形態Bとを備え、該第2形態Bは前記胴部下端から胴部内へ円錐台状の周壁5を起立させて、該周壁上面を斜め下前方へ傾斜させると共に、該周壁上面を凹設して液留め部7に形成し、かつ前記V溝17の底部より下方の胴部部分を前記円錐台状の周壁5へ水密に接触させて脚筒20に形成すると共に、該脚筒20上面を斜め下前方へ傾斜するテーパ面21に形成し、前記液留め部7内へ前記吸上げパイプ50を直線状に垂下させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形後に底壁を胴部内へ折り返す吸上げパイプ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ポンプから液体吸上げパイプを胴部内へ垂下した吸上げパイプ付き容器が従来技術として知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−230961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は胴部内液体の残量をできるだけ少なくするべく、吸上げパイプを折曲してその下端を胴部の底部周縁へ位置させるようにしているが、吸上げパイプを折曲するためには専用の設備が必要となってコスト増大をもたらすという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、コスト低減が図れ、かつ底壁の強度が大で、しかも残量を極力少なくすることが可能な吸上げパイプ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、胴部2上端から起立する口頸部へ液体吐出ポンプ30を装着させ、該液体吐出ポンプから胴部内へ吸上げパイプ50を垂下させた吸上げパイプ付き容器であって、
前記胴部2はその下部の一部に縮径により形成された周方向へのV溝17を備え、
前記胴部底壁4は胴部下方へ突出する第1形態Aと、胴部内へ折り返された第2形態Bとを備え、
該第2形態Bは前記胴部下端から胴部内へ円錐台状の周壁5を起立させて、該周壁上面を斜め下前方へ傾斜させると共に、該周壁上面を凹設して液留め部7に形成し、かつ前記V溝17の底部より下方の胴部部分を前記円錐台状の周壁5へ水密に接触させて脚筒20に形成すると共に、該脚筒20上面を斜め下前方へ傾斜するテーパ面21に形成し、
前記液留め部7内へ前記吸上げパイプ50を直線状に垂下させたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記液留め部7における前記吸上げパイプ50下方の底面部分に凹部60を形成し、かつ前端が該凹部に開口すると共に、後端が前記円錐台状の周壁5の前部上端に開口する流路用凹溝61を設けたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記底壁4と胴部2との境界部を折曲して外方へ凸の折返し溝15を周設し、前記底壁4を前記胴部2内へ折り返す際に、折返し線が前記折返し溝15の開口上縁16に形成されることが可能に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、脚筒上面を斜め下前方へ傾斜するテーパ面に形成したので、V溝より上方の胴部部分内面と円錐台状の周壁外面との間隙は、円錐台状の周壁の最も低い部分より上方に位置することとなり、したがって該間隙内の液体はすべて液留め部内へ流入するため、残量を極力少なくすることができる。
【0010】
また、本発明は、吸上げパイプを直線状に垂下させるため、該パイプを折曲する必要がなく、したがってコスト低減を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明は、吸上げパイプ下方の底面部分に凹部と流路用凹溝を形成したので、液体が溜まる凹部内へ吸上げパイプ下端を位置させておくことにより、上記と相まって残量をさらに少なくすることができる。
【0012】
さらに、本発明は、底壁と胴部との境界部を折曲して外方へ凸の折返し溝15を周設したので、底壁と胴部との肉厚を変えることなく底壁を胴部内へ折り返すことができ、したがって肉厚の変動に起因する折返し部の高低差が解消されることとなって容器の安定性が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る吸上げパイプ付き容器の第1の形態Aを示す正面図である。
【図2】第2の形態Bを示す図1相当図である。
【図3】第2の形態Bの容器に液体吐出ポンプを装着した状態を示す正面図である。
【図4】第1および第2形態を示す要部断面図である。
【図5】他の実施形態を示すもので、第1の形態Aの要部断面図である。
【図6】第2の形態Bを示す図5相当図である。
【図7】図6の底壁の前部上面を示すもので、液体の流れを示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
1は容器で、胴部2上端から肩部を介して口頸部3を起立し、該口頸部3へ後述する液体吐出ポンプを装着させている。
【0016】
胴部2の下端面を閉塞する底壁4は、図1に示すように胴部下面より下方へ突出する第1形態Aと、図2に示すように胴部内へ折り返された第2形態Bとを有する。まず、最終形態としての第2形態Bについて説明する。
【0017】
第2形態Bにおける底壁4は、胴部2下端から該胴部内へ円錐台状の周壁5を起立させて、該周壁5上面6を斜め下前方へ傾斜させ、さらに該周壁上面6を凹設して液留め部7を形成する。
【0018】
液留め部7は斜め下後方へ傾斜する底面8と、該底面8の周縁から斜め上外方へ立ち上がって周壁5上端へ交わる周面9とから形成されている。
【0019】
周壁5は円錐台状であるから、周壁5外面と胴部2内面との間には間隙Sが形成されるが、その大部分は後述の脚筒20の形成によりなくすことが可能である。
【0020】
次に成形時における形態を示す第1形態Aについて説明する。第1形態Aにおける底壁4は、胴部2下端から円錐台状の周壁10を垂下して、該周壁10下面11を斜め上前方へ傾斜させた後、該周壁下面11を下方へ突設して、斜め上前方へ傾斜する液留め部底面8形成用面12と、該底面形成用面12の周縁から斜め上外方へ立ち上がって周壁10下端へ交わる液留め部周面9形成用面13とを形成する。
【0021】
また、胴部2と底壁4との境界部を折曲して外方へ凸の折返し溝15を周方向へ形成させる。折返し溝15は、底壁4を折返しのために胴部2内へ押圧した場合に、底壁4が折返し溝15の開口上縁16を折返し線として、胴部2内へ折り返されることを可能にするために設けられる。
【0022】
折返し溝15の断面形状は、開口上縁16が底壁4の折返し線となることが可能であれば特に限定はないが、典型的にはU字状ないしコ字状が好ましい。
【0023】
さらに、胴部2の下端部に、縮径により周方向へのV溝17を形成して、該V溝の底部より下方の胴部2部分を円錐台状の周壁5へ水密に接触させて脚筒20に形成すると共に、該脚筒上面を斜め下前方へ傾斜するテーパ面21に形成する。その際、脚筒20と周壁5とのそれぞれの前端の高さはほぼ一致させるが、脚筒20後端の高さは周壁5後端の高さより低くする。
【0024】
30は液体吐出ポンプで、シリンダを備えている。シリンダは胴部2内へ垂下するシリンダ本体31の上部外面に付設された外向きフランジ32を口頸部3上端へ載置させ、さらにシリンダ本体31下部に吸込弁を付設すると共に、シリンダ本体31下端から吸上げパイプ嵌合用の嵌合筒33を垂下している。
【0025】
34はシリンダ31内へ上下動自在に嵌挿された作動部材で、シリンダ31内へ上下動自在に嵌合された筒状ピストン35からステム36を起立させている。
【0026】
40はノズルヘッドで、ステム36上端へヘッド本体41を嵌合させると共に、該ヘッド本体41からノズル42を前方へ突設している。45はキャップで、口頸部3外面へ螺合させた筒体上端に内向きフランジを設けて、該内向きフランジでシリンダ本体31の外向きフランジ32を口頸部3上端へ圧接させている。
【0027】
50は吸上げパイプで、シリンダ本体31下端から垂下する嵌合筒33内へ上部を嵌合させて下端を底壁4の液留め部7内へ垂下させている。吸上げパイプ50としては従来品のようなくの字状に屈曲したものではなく、直線状に伸長するものを使用する。
【0028】
次に作用について説明する。
成形時においては、底壁4は第1形態Aとなるように成形する。成形後、第1形態Aにおける底壁4を胴部2内へ押圧すると、折返し溝15の開口上縁16を折返し線として底壁4が胴部2内へ折り返される。
【0029】
第2形態Bの状態でノズルヘッド40を押下げると、吸上げパイプ50および作動部材34を介してノズル42から胴部内液体が所望の態様で吐出する。胴部内液体が減少して間隙S内の液体の水位が周壁5後端の高さより低くなっても周壁5上面は斜め下前方へ傾斜しているため、間隙内の液体は液留め部7内へ流入可能である。また脚筒20上面は斜め下前方へ傾斜するテーパ面21に形成されているため、換言すれば、脚筒20上端より上方に位置する間隙Sの底部は周壁5前端の上端より高い位置にあるから、間隙S内の液体はすべて液留め部7内へ流入することになり、したがって残量をほぼ皆無にすることができる。
【0030】
図5ないし図7は第2の実施形態を示すもので、本実施形態では、第2形態Bの状態で液留め部7における吸上げパイプ50下方の底面部分に凹部60を形成し、かつ前端が凹部60に開口すると共に、後端が円錐台状の周壁5の前部上端に開口し、かつ図7に示すように左右の幅が凹部60の左右の幅よりもやや小さい前後方向への流路用凹溝61を設けている。凹部60の後端は底面8の後端と一致させてもよく、あるいは底面8の後端からやや前方へ離間させてもよい。なお、第1形態Aでは、図5に示すように凹部60は底面8の後端部を斜め下前方へ突設して形成する。その他の点は第1実施形態と同一であるから、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
このように形成することで、残量が減少した場合、液留め部7内の液体は流路用凹溝61を介して凹部60内へ流入して貯留するため、吸上げパイプ50下端を凹部60内へ位置させておくことにより残量のさらなる減少化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、成形後に底壁を胴部内へ折り返す吸上げパイプ付き容器の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 容器
2 胴部
3 口頸部
4 底壁
A 第1形態
B 第2形態
5 円錐台状の周壁
6 周壁上面
7 液留め部
S 間隙
11 周壁下面
12 液留め部底面8形成用面
13 液留め部周面9形成用面
15 凹溝
16 開口上縁
30 液体吐出ポンプ
31 シリンダ本体
35 筒状ピストン
40 ノズルヘッド
50 吸上げパイプ
60 凹部
61 流路用凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部2上端から起立する口頸部へ液体吐出ポンプ30を装着させ、該液体吐出ポンプから胴部内へ吸上げパイプ50を垂下させた吸上げパイプ付き容器であって、
前記胴部2はその下部の一部に縮径により形成された周方向へのV溝17を備え、
前記胴部底壁4は胴部下方へ突出する第1形態Aと、胴部内へ折り返された第2形態Bとを備え、
該第2形態Bは前記胴部下端から胴部内へ円錐台状の周壁5を起立させて、該周壁上面を斜め下前方へ傾斜させると共に、該周壁上面を凹設して液留め部7に形成し、かつ前記V溝17の底部より下方の胴部部分を前記円錐台状の周壁5へ水密に接触させて脚筒20に形成すると共に、該脚筒20上面を斜め下前方へ傾斜するテーパ面21に形成し、
前記液留め部7内へ前記吸上げパイプ50を直線状に垂下させた
ことを特徴とする吸上げパイプ付き容器。
【請求項2】
前記液留め部7における前記吸上げパイプ50下方の底面部分に凹部60を形成し、かつ前端が該凹部に開口すると共に、後端が前記円錐台状の周壁5の前部上端に開口する流路用凹溝61を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の吸上げパイプ付き容器。
【請求項3】
前記底壁4と胴部2との境界部を折曲して外方へ凸の折返し溝15を周設し、前記底壁4を前記胴部2内へ折り返す際に、折返し線が前記折返し溝15の開口上縁16に形成されることが可能に設けた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の吸上げパイプ付き容器。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−51594(P2011−51594A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199688(P2009−199688)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】