吸入剤
吸入剤の粒子を調製するための製造方法が開示されている。この製造方法は、第1液体と第2液体とが相互作用して薬物の粒子を形成させるために高せん断領域において第1液体と第2液体とを混合する混合工程を含んでいる。第1液体および第2液体の内の一方に、薬物またはその前駆体が含まれている。前記第1液体および第2液体の一方に前躯体が含まれている場合は、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前躯体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれている。また、前記第1液体および第2液体の一方に薬物が含まれている場合には、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において薬物を含む液体を混合したときに、薬物の粒子を形成する液体が含まれている。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、吸入可能な形態の薬物、および、吸入可能な形態の薬物の製造方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
粒径を制御することは薬物の製造において重要な検討事項である。このことは、薬物が吸入によって送達されることを意図されているときに特に重要である。その理由は、粒径が、薬物の粒子を肺に送達すること、および、薬物の吸入によって引き起こされる気道の炎症の程度について重要な効果を持っているからである。
【0003】
吸入型の薬物療法では薬物と一緒に適切な担体が一般的に用いられている。これらの担体は、HFC(ヒドロフルオロカーボン)およびHFA(ヒドロフルオロアルカン)などのフッ素化材料であり、該フッ素化材料は低毒性、不活性、安定性、および、適切な物理特性に優れている。しかしながら、これらの担体は環境にとって有害であることが良く知られている。実際のところ、環境への配慮から過去にそのような用途に用いられているCFC(クロロフルオロカーボン)を廃止しなければならなかった。担体を用いる吸入療法の代わりの方法として、担体を必要とせずに微細粒子状の薬物を送達する吸入器を使用する方法が用いられている。
【0004】
したがって、適切な微細粒子状の薬物を製造する方法、および、そのよう薬物を疾患の治療に用いるための適切な方法が必要とされている。
【0005】
〔本発明の目的〕
本発明の目的は、上述した不利の少なくとも1つを実質的に改善する、または、克服することである。本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの上述した必要性を少なくとも部分的に満足させることを目的としている。
【0006】
〔発明の要旨〕
反応物の第1の態様として、第1液体と第2液体とが相互作用して薬物の粒子を形成させるために高せん断領域において第1液体と第2液体とを混合する混合工程を含む吸入剤の粒子を調製するための製造方法が提供される。第1液体および第2液体の内の一方に、薬物またはその前駆体が含まれており、前記第1液体および第2液体の一方に前躯体が含まれている場合は、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前躯体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれている。また、前記第1液体および第2液体の一方に薬物が含まれている場合には、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において薬物を含む液体を混合したときに、薬物の粒子を形成する(すなわち、薬物の粒子の形成を引き起こす)液体が含まれている。前記製造方法は、薬物の粒子を単離する単離工程を含んでいても良い。また、前記混合工程は、第1液体および第2液体を混合区域に注入する手順を含んでいても良い。なお、前記混合区域は、第1液体および第2液体を高せん断するせん断装置を備えている。第1液体および第2液体は、該せん断装置上の混合区域に直接注入されても良い。せん断装置は、第1液体および第2液体に高せん断を与えるために混合区域において、約100rpm〜15000rpmの間、約1000rpm以下と約10000以上との間、または約15000rpm以上で回転しても良い。第1液体は第2液体と混和しうるものであっても良い。第1液体の第2液体に対する比は、w/wまたはv/vを基準に約1:200と200:1との間であっても良い。せん断装置は、実質的に円筒形であっても良い。さらにせん断装置は、少なくとも1つのメッシュ層を備えていても良く、また、複数の重複するメッシュ層を備えていても良い。メッシュの網目の大きさは、約0.05mm〜約3mm、約0.1mm〜0.5mm、約0.5mm以下3.0mm以上であっても良い。また、メッシュの間隙率は、約75%よりも大きくても良いし、あるいは、90%よりも大きくても良い。せん断装置は回転式の充填床反応器(RPB)であっても良い。
【0007】
第1液体および第2液体は、複数の注入口を通して混合区域に注入されても良い。第1液体のための各注入口は、第2液体の注入口から15弧度以下の混合領域内に位置していても良い。第1液体および第2液体の注入速度は、約1m/sよりも速くてもよく、または、約1m/s〜約120m/sの間であっても良い。
【0008】
薬物の粒子の大きさおよび/または形状は、吸入投与にとって適切なものであっても良い。粒子の大きさおよび/または形状は、患者の病気の治療にために吸入によって投与されるときに、粒子が患者によって前記病気の治療に対して適切な速度で吸収されるものであっても良い。粒子の直径は、約10μmよりも小さくても良く、約0.5μm〜約10μmの間であっても良い。直径が約10μmよりも小さいか、または、直径が0.5μm〜約10μmの間の粒子の割合は、重量または数を基準にして50%よりも多くても良い。本明細書において規定された粒径は、平均粒径であると考えられても良い。薬物は吸入型の薬物であっても良く、抗生物質、β‐アンタゴニスト、気管支拡張薬、ステロイド、シクロスポリン、またはその他の種類の薬物であっても良い。薬物として、例えば、トブラマイシン、サルメトロール(プロピオン酸フルチカゾン)、ホルモトロール(formotrol)、ベクロメタゾン、ブタザミド(butazamide)もしくは硫酸サルブタモール、またはその他の薬物が挙げられる。
【0009】
1つの実施の形態として、第1液体は溶媒に溶解した薬物の溶液を含んでおり、第2液体は薬物のための非溶媒を含んでいる。非溶媒は溶媒と混和しても良く、溶液と混合したときに、薬物を沈殿させることができでも良いし、または、薬物の粒子を形成することができても良い。
【0010】
もう1つ別の実施の形態として、第1液体は必要に応じて第1溶媒に溶解した薬物の前駆体を含んでおり、第2液体は必要に応じて第2溶媒に溶解した試薬を含んでいる。それによって、試薬が前躯体と反応して薬物の粒子が形成される。試薬は前躯体と反応して薬物の粒子を形成することができるものであっても良い。また、試薬は酸‐塩基反応を通して前駆体と反応して薬物の粒子を形成することができるものであっても良い。前躯体の試薬に対する比は、モルを基準に約5:1以上〜約1:5以下の間であっても良く、モルを基準に約3:1〜約1:3の間であっても良い。第1液体は第2液体と混和するものであっても良い。第1溶媒と第2溶媒とが存在する場合には、第1溶媒は第2溶媒と同じ物であっても良いし、異なるものであっても良いし、さらに両者は混和性であっても良い。薬物は塩であっても良く、前躯体は薬物の遊離塩基であっても良く、試薬は酸であっても良い。例えば、薬物は硫酸サルブタモールであっても良く、前躯体はサルブタモールであっても良く、試薬は硫酸であっても良い。
【0011】
さらなる実施の形態において、本発明の製造方法は、複数の重複するメッシュ層を備える高せん断装置を具備する混合区域を提供する工程、前記高せん断装置を約100rpm〜約15000rpmの間で回転させる工程、v/vを基準に約1:200〜約200:1の間の比で第1液体と第2液体とを前記混合区域に提供する工程、および、薬物の粒子を単離する工程を含んでおり、前記各メッシュ層の網目の大きさは、約0.05mm〜約3mmの間であり、前記混合区域に提供する工程では、第1液体および第2液体の内の一方に薬物またはその前駆体が含まれており、(i)前記第1液体および第2液体の一方に前躯体が含まれている場合には、前記第1液体および第2液体の内のもう一方に、高せん断条件下において該前駆体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれており、(ii)前記第1液体および第2液体の一方に薬物が含まれている場合は、前記第1液体および第2液体の内のもう一方に、高せん断条件下において薬物を含有する液体と混合したときに薬物の粒子を形成する液体が含まれており、これによって粒径が約0.5μm〜10μmの間の薬物の粒子を形成する、製造方法である。
【0012】
本発明は、本発明の第1の態様の製造方法によって調製される粒子状の吸入剤も提供する。
【0013】
本発明の第2の態様として、直径が約10μmよりも小さい粒子状の吸入剤が提供される。粒子の直径は約0.5μm〜10μmの間であっても良い。直径が約10μmよりも小さい、または、直径が約0.5μm〜約10μmの間の粒子状の吸入剤の割合は、重量を基準に約50よりも大きくても良く、約80%よりも大きくても良い。粒子状の吸入剤の粒径分布は狭くても良い。平均粒径が約10%以内または約50%である粒子状の吸入剤の割合は、数または重さを基準にして約20%よりも大きくても良く、約50%よりも大きくても良い。粒子の大きさおよび/または形状は、患者の病気の治療にために吸入によって投与されるときに、粒子が患者によって前記容器の治療に対して適切な速度で吸収されるものであっても良い。粒子は、球状、細長い形状、針状、不規則な形状、またはその他の形状であっても良い。また、粒子は凝集体であっても良い。粒子は、本発明の第1の態様の方法によって調製されても良い。
【0014】
本発明の第3の態様として、粒子状の吸入剤を患者に提供する工程を含む、患者の病気を治療する方法であって、前記粒子は本発明の第1の態様によって調製される方法が提供される。また、本発明は粒子状の吸入剤を患者に提供する工程を含む患者の病気を治療する方法であって、前記吸入剤は本発明の第2の態様である方法を提供する。吸入剤は吸入器において提供されても良い。薬物を患者に提供する手順は、薬物の粒子を有する吸入器を患者に提供する工程を含んでいる。吸入剤は、病気の治療のために適したものまたは必要なものであっても良いし、そして、吸入による病気の治療のために適したものまたは必要なものであっても良い。病気としては、例えば、喘息、癌、肺感染症などの感染症、または、薬物の吸入によって治療可能なその他の病気であっても良い。
【0015】
本発明によれば、喘息、癌、および、感染症からなる群より選ばれる病気の治療のための吸入剤が提供される。吸入剤は、上述したような粒子の形状であっても良い。
【0016】
本発明の第4の態様として、粒子状の吸入剤を備える、患者の病気を治療するための吸入器であって、前記吸入剤は病気に対して適したものであるかまたは必要なものであり、前記粒径は10μmよりも小さいものである吸入器が提供される。粒子の直径は、約0.5μm〜10μmの間であっても良い。粒子は、本発明の第1の態様における製造方法によって調製されても良い。吸入剤は、本発明の第2の態様の吸入剤であっても良い。また、本発明は、患者の病気を治療するための第4の態様の吸入器の使用が提供される。その使用は、患者に吸入器を提供すること、および、患者に吸入器から吸入させることを含んでいる。なお、患者はヒトの患者であっても良い。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の好ましい形態が、添付の図面を参照する実施例を用いて記載されている。
【0018】
図1は、実施例に記載されている実験のフローチャートを示す図である。
【0019】
図2は、硫酸とサルブタモール塩基とを反応させて硫酸サルブタモールを製造するスキームである。
【0020】
図3は、実施例において形成された原物の沈殿物の写真である。
【0021】
図4は、2.5時間放置した後の図3の沈殿物の写真である。
【0022】
図5は、実施例に記載されているビーカーを用いた合成方法を示す概略図である。
【0023】
図6は、RPB(回転式の充填床反応器)の概略図である。
【0024】
図7は、MSLI(多段形液体インピンジャー:multi−stage liquid impinger)の概略図である。
【0025】
図8は、濃度と276nmにおける硫酸サルブタモール溶液の吸光度との関係を示すグラフである。
【0026】
図9は、実施例の実験における反応時間と容積中間粒径(volume medium particle size)との関係を示すグラフである。
【0027】
図10は、実施例の実験における異なる濃度のサルブタモールを用いたときの、硫酸濃度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【0028】
図11は、実施例の実験における反応温度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【0029】
図12は、実施例の実験における攪拌速度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【0030】
図13は、硫酸サルブタモール懸濁液の試料を示す概略図である。
【0031】
図14は、実施例の実験における異なる攪拌速度での、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【0032】
図15は、実施例の実験における異なる硫酸濃度を用いたときの、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【0033】
図16は、実施例において用いられる小型の攪拌器のヘッドの写真である。
【0034】
図17は、実施例において用いられるより大型の攪拌器のヘッドの写真である。
【0035】
図18は、マルバーン粒径装置を用いて測定された、様々な反応時間において沈殿した硫酸サルブタモールの容積中間粒径分布を示すグラフである。
【0036】
図19は、マルバーン粒径装置を用いて測定された、硫酸サルブタモールの容積中間粒径と反応時間との関係を示すグラフである。
【0037】
図20は、実施例の実験における排出口温度とFPF(総計)およびFPF(放出)との関係を説明するグラフである(FPFは、微細粒子画分を意味する)。
【0038】
図21は、市販品の産硫酸サルブタモールの結果を説明する棒グラフである。
【0039】
図22は、異なる硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末を用いた分散の結果を説明する棒グラフである。
【0040】
図23は、保管時間に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【0041】
図24は、異なる吸入装置に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【0042】
図25は、分散結果に対するラクトース混合の効果を説明する棒グラフである。
【0043】
図26は、異なる反応温度から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【0044】
図27は、異なる反応時間から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【0045】
図28は、異なる吸入装置の分散結果に対する効果を説明する棒グラフである。
【0046】
図29は、実施例における9月7日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0047】
図30は、実施例における9月7日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0048】
図31は、実施例における9月8日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0049】
図32は、実施例における9月8日の試料を20.0kV、32,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0050】
図33は、実施例における9月13日の試料を5kV、30,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0051】
図34は、実施例における9月13日の試料を5kV、50,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0052】
図35は、実施例における9月30日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0053】
図36は、実施例における9月30日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0054】
図37は、非溶媒法を用いて噴霧乾燥した後の硫酸サルブタモール乾燥粉末の異なる形状を示す電子顕微鏡写真である。(A)はルーズ粉末を示し、(B)は球状粉末を示す。
【0055】
図38は、非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(11月23日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【0056】
図39は、非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(12月13日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【0057】
図40は、実施例に記載されている2つの硫酸サルブタモール乾燥粉末の分散結果を説明する棒グラフである。
【0058】
図41は、実施例に記載されている2種類の硫酸サルブタモール乾燥粉末の粒径分布を説明するグラフである。
【0059】
図42は、実施例に記載されている9月13日の試料における電子顕微鏡写真である。
【0060】
図43は、実施例に記載されている10月29日の試料における電子顕微鏡写真である。
【0061】
〔好ましい実施の形態の詳細な説明〕
粒径が適切に制御される粒子を製造するための便利な製造方法が、WO02/089970に記載されており、その内容は相互参照することによって本明細書に組み込まれる。また、WO02/089970には、本発明の製造方法を実施するための適切なせん断装置が記載されている。せん断装置は回転式の充填床反応器(RPB)であっても良い。
【0062】
粒子状の物質をその粒径を適切に制御して製造するための1つの製造方法は、溶媒に溶解した物質の溶液(第1液体)と該物質のための非溶媒(または貧溶媒)(第2液体)とを高せん断領域において混合する混合工程を含んでおり、これによって、物質の粒子状化が引き起こされる。
【0063】
物質である粒子をその粒径を適切に制御して製造するための1つの製造方法は、粒子状の物質を形成するために、溶媒に物質が溶解した溶液(第1液体)と該物質のための非溶媒(または貧溶媒)(第2液体)とを高せん断領域において混合する工程を含んでいる。この一般的な製造方法は、本発明において粒子状の吸入剤を製造するために用いられても良い。もう1つの方法として、第1液体および第2液体の内の一方に薬物の前躯体が含まれていても良く、前記第1液体および第2液体のもう一方に高せん断条件下において前躯体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれていても良い。本発明において、溶媒は、水性であっても非水性であっても良く、水、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノールもしくはその他の溶媒またはいくつかの溶媒の混合物を含んでいても良い。非溶媒は溶媒と混和しうるものであっても良い。非溶媒は、高せん断条件下において第1液体と混合された場合に、粒子状の物質が形成される(すなわち、粒子が形成される)所望の非溶媒であり、溶媒および物質の性質に応じて、水、エタノール、アセトン、イソプロパノールもしくはその他の液体または液体の混合物を含んでいても良い。混合工程は、第1液体および第2液体を混合区域に注入する工程を含んでいても良く、該混合区域は、第1液体および第2液体を高せん断するせん断装置を備えている。第1液体および第2液体は、該せん断装置上の混合区域に直接注入されても良い。せん断装置は、第1液体および第2液体に高せん断を与えるために混合区域において、約100rpm〜15000rpmの間、約1000rpm〜約10000rpmの間、約1000rpm〜5000rpmの間、1000rpm〜2000rpmの間、2000rpm〜10000rpmの間、5000rpm〜10000rpmの間、または、2000rpm〜5000rpmの間で回転しても良いし、あるいは、約100rpm、200rpm、300rpm、400rpm、500rpm、1000rpm、1500rpm、2000rpm、2500rpm、3000rpm、3500rpm、4000rpm、4500rpm、5000rpm、5500rpm、6000rpm、6500rpm、7000rpm、7500rpm、8000rpm、8500rpm、9000rpm、9500rpm、10000rpm、11000rpm、12000rpm、13000rpm、14000rpm、または、15000rpmで回転しても良いし、あるいは、15000rpmよりも速く回転しても良い。せん断速度は、第1液体および第2液体の比に依存しても良い。第1液体は第2液体と混和しうるものであっても良い。第1液体の第2液体に対する比は、約1:200〜200:1の間、約1:200〜1:1の間、1:1〜200:1の間、1:100〜100:1の間、1:20〜20:1の間、1:20〜10:1の間、1:20〜10:1の間、1:20〜5:1の間、1:20〜2:1の間、1:20〜1:1の間、1:20〜1:5の間、1:20〜1:10の間、1:10〜20:1の間、1:1〜20:1の間、1:2〜20:1の間、1:1〜20:1の間、2:1〜20:1の間、5:1〜20:1の間、10:1〜20:1の間、1:10〜10:1の間、1:5〜5:1の間、1:3〜3:1の間、1:2〜2:1の間、2:3〜3:2の間、1:10〜1:1の間、1:1〜10:1の間、または、1:2〜2:1の間であっても良いし、あるいは、約1:20、1:15、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、2:3、1:1、3:2、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、または、20:1であっても良いし、あるいは、その他の比であっても良い。
【0064】
粒子が溶媒/非溶媒沈殿によって形成される場合(すなわち、第1液体および第2液体の内の一方に薬物が含まれる場合)、そのとき第1液体および第2液体の比ならびに/またはそれらのどちらかに含まれている薬物の濃度は、第1液体および第2液体の組合せが、粒子が形成される薬物に対して十分な貧溶媒になるようなものであっても良い。粒子が化学反応によって形成される場合(すなわち、第1液体および第2液体の内の一方に薬物の前躯体が含まれ、もう一方に試薬が含まれる場合)、そのとき第1液体および第2液体の比ならびに前躯体の濃度および試薬の濃度は、前躯体が完全にまたは略完全に反応して薬物の粒子が形成されるようなものであっても良い。一般的に、薬物は試薬と比べて比較的高価である。このため、前躯体に対して過剰モルの試薬を用いることが有利である。過剰モルとしては、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%であっても良いし、あるいは、100%よりも大きくても良い。本明細書において、モル当量は、試薬および前躯体のどちらか一方に反応することができない余分なものが存在しない試薬と前躯体との比のことをいう。それ故、例えば、前躯体がジアミンであり試薬が単官能基の酸である場合、モル当量はジアミン1モルに対して2モルの試薬を必要とする。
【0065】
薬物は、第1液体および第2液体が混合される比におけるそれらの組合せにおいて不溶性のものであっても良いし、または、やや溶けにくいものであっても良い。
【0066】
せん断装置は、実質的に円筒形であっても良いし、または、その他の形状(例えば、円錐状、双円錐状、楕円形状、もしくは、卵形状)であっても良い。せん断装置は、少なくとも1つのメッシュ層を備えていても良く、また、複数の重複するメッシュ層を備えていても良い。メッシュ層は、約2層〜1000層の間、約2層〜500層の間、2層〜100層の間、2層〜50層の間、2層〜10層の間、5層〜1000層の間、10層〜1000層の間、50層〜1000層の間、100層〜1000層の間、500層〜1000層の間、5層〜500層の間、10層〜100層の間、10層〜50層の間、5層〜50層の間、50層〜500層の間、もしくは、50層〜100層の間であっても良いし、または、約2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層、15層、20層、25層、30層、35層、40層、45層、50層、60層、70層、80層、90層、100層、150層、200層、250層、300層、350層、400層、450層、500層、600層、700層、800層、900層、もしくは、1000層であっても良い。メッシュの網目の大きさは、約0.05mm〜約3mm、約0.1mm〜0.5mm、または、約0.5mm〜3.0mmであっても良いし、あるいは、約0.5mmもしくは2.0mm、0.5mmおよび1.0mm、1.0mmおよび3.0mm、2.0mmおよび3.0mm、または、1.0mmおよび2.0mmであっても良いし、あるいは、約0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、または3.0mmであっても良い。また、メッシュの間隙率は、約75%よりも大きくても良いし、または、約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%よりも大きくても良いし、または、約75、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であっても良い。
【0067】
高せん断区域における組み合わされた液体の製造方法は、せん断手段を備える混合区域に液体を中注することによって達成される。注入は、約1m/sよりも速い高注入速度で注入されることが好ましく、3m/sよりも速い高注入速度で注入されることがより好ましく、5m/sよりも速い高注入速度で注入されることが最も好ましい。高せん断は、液体のせん断を誘導する混合区域においてせん断手段を急速回転することにより行われることが好ましい。せん断は、分子混合ユニットを用いて行われ、該分子混合ユニットは(a)混合区域を規定する外部本体、(b)該混合区域においてせん断を行うためのせん断手段、(c)第1液体のための少なくとも1つの流体注入口手段、(d)第2液体のための少なくとも1つの流体注入口手段、および、(e)流体排出口手段を備えている。そのような分子混合ユニットを用いることにより、分子混合ユニットが第2液体(例えばコアセルベーション剤)を第1液体(例えば薬物を含有している第1液体)に添加する手順を制御することによって、核生成および粒子成長を制御するときに、沈殿手順が制御されても良い。粒径は、(i)混合区域においてせん断手段の回転速度を調節することによって、(ii)せん断手段の異なる構造的特徴によって、ならびに、(iii)異なる注入比率で混合区域に第1液体および第2液体のシェア(shear)を注入することによって、μmまたはnmの範囲のどちらか一方に制御されることができる。分子混合ユニットの外部本体は、多くの材料から作製されている。適切な材料は、ステンレス鋼である。外部本体は混合区域を規定するように設計されている。混合区域は、理論上多くの寸法のいずれかであっても良いし、選択される大きさは実行される処理速度、および、処理される材料の量に依存する。混合区域には、該混合区域内に位置し該混合区域内に注入された液体に高せん断を与えるせん断手段が設けられている。原理上、せん断手段は流体に高せん断を与える所望の装置であっても良い。
【0068】
本発明の製造方法の1実施形態において、せん断手段は混合区域において回転しており、第1液体および第2液体が回転しているせん断手段に直接注入される。液体は、別々の注入口より同時に注入されても良いし、複数の注入口を介してそれぞれ注入されても良い。注入口は混合区域の外側の一方の周りに位置していても良いし、または、液体を混合区域の中央に送達するように位置していても良い。液体は、回転しているせん断手段に取り囲まれる混合領域の中央に位置する分配器を通して注入されても良い。
【0069】
本発明の製造方法は、混合区域において2つの液体に高せん断を与えるためのせん断手段の使用を含んでいる。このことは、2つの液体が十分に混合されて所望の大きさの沈殿の形成を誘導する密接な混合物(intimate mixture)を形成するという利点がある。せん断手段は好ましくは充填剤(packing)を備えており、充填剤の表面積は約200m2/m3〜3000m2/m3、約200m2/m3〜1000m2/m3、200m2/m3〜500m2/m3、500m2/m3〜300m2/m3、1000m2/m3〜3000m2/m3、500m2/m3〜2000m2/m3、もしくは、500m2/m3〜1000m2/m3であり、または、約200m2/m3、300m2/m3、400m2/m3、500m2/m3、600m2/m3、700m2/m3、800m2/m3、900m2/m3、10000m2/m3、1500m2/m3、2000m2/m3、2500m2/m3、もしくは、3000m2/m3である。充填剤は構造をもつ充填剤であっても良いし、不揃いな充填剤であっても良い。用いられても良い充填剤は、ワイヤーメッシュ型充填剤であって、該ワイヤーメッシュ型充填剤はステンレス鋼、プレイン合金(plain metal alloy)、チタン金属、もしくは、プラスチック、または、その他の適切な材料から作製される。せん断手段は、円筒形状のせん断手段を形成するための回転メッシュによって形成されていても良く、円筒形状のセクションの側面は、複数の重複するメッシュ層から形成されている。もしもそれが用いられる場合には、メッシュの網目の大きさは、約0.05mm〜約3mmであっても良く、約0.1mm〜0.5mmであることがより好ましい。また、メッシュの好ましい間隙率は、少なくとも約75%、もしくは、少なくとも約90%であり、95%よりも大きいことが好ましい。せん断手段は、混合区域のシャフトに取り付けられていても良く、該混合区域において回転しても良い。また、せん断手段は円筒形状であっても良く、液体のための注入口に対応する窪みを規定しても良い。しかしながら、2つの液体が組合される容器の形状は、液体にせん断を与えるために用いられもすると理解される。せん断手段は、高せん断を液体に混合区域において与えるような十分な速度で混合区域において回転することが好ましい。回転速度は、一般的には100rpm〜1500rpmであり、好ましくは500rpm〜12000rpmであり、さらに最も好ましくは5000rpm〜8000rpmである。そのようなせん断手段の強い回転を用いることによって、混合区域における2つの液体が注入中すぐに強くせん断されることができる。本発明の製造方法では、液体は、液体分配器によって混合領域に注入されることが好ましい。液体分配器は、回転するせん断手段によって規定される窪みにある混合領域の中央に位置する。各液体は、複数の注入口を介して注入されることが好ましい。
【0070】
一旦、液体が混合されれば、混合物から生産される粒子が混合区域から排出され、粒子が単離される。もし本発明の製造方法が、好ましい連続工程として実施される場合、処理される液体は混合区域から絶えず回収され、固体が単離される。粒子は、ろ過、遠心、または液体から固体を単離するその他の所望の方法によって単離される。
【0071】
理論に拘束されることを望まない一方で、ユニットにおける高せん断装置を使用することにより、溶液は、2つの液体の分離した粒子にばらばらに粉砕される。これにより、2うの液体の間に表面積の大きい接触が誘導され、速い沈殿と所望の粒子の形成とが誘導される。それは、2つの液体が別々の流体注入口を介して混合区域に注入される場合に特に効果的であることが分かる。したがって、好ましい分子混合装置は、各第1液体および第2液体の流体が流入するための少なくとも1つの流体注入口をそれぞれ備えている。好ましくは、各液体に対して複数の注入口が存在する。これらの液体注入口は、混合器の構造設計に応じて多くの通路が配置されている。液体注入口は、前記せん断手段によって規定される窪みに好ましくは位置する分配器に位置していても良い。分配器は、各第1液体および第2液体のための複数の注入口を規定しても良い。1つの実施の形態において、液体注入口は、分配器において交替する(alternate)。さらに、回文式または連続式のどちらか一方の様式で、分子混合装置から排水するための液体排出手段が少なくとも1つ存在するべきである。
【0072】
せん断装置は、特定の雰囲気(例えば、無酸素雰囲気、低酸素雰囲気、または不活性雰囲気)において本発明の製造方法が実施されるための気体注入口と気体排出口とを備えていても良い。したがって、本発明の製造方法は、第1液体および第2液体を組合わせる手順の間および/またはその前に、高せん断領域を通して、気体(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、2酸化炭素、またはその他の適切な気体)を通過させる工程を含んでいても良い。
【0073】
第1液体および第2液体は、複数の注入口を通して混合区域に注入されても良い。各注入口の直径は独立に、約0.5mm〜10mmの間であっても良く、あるいは、約0.5mm〜5mm、0.5mm〜2mm、1mm〜10mm、1mm〜5mm、2mm〜5mm、5mm〜10mm、または、1mm〜3mmであっても良いし、あるいは、約0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmであっても良い。第1液体用の各注入口は、第2液体用の注入口から15弧度以下の混合領域内に位置していても良いし、あるいは、第2液体用の注入口から約15弧度、14弧度、13弧度、12弧度、11弧度、10弧度、9弧度、8弧度、7弧度、6弧度、または、5弧度よりも小さくても良いし、あるいは、第2液体用の注入口から約3弧度、4弧度、5弧度、6弧度、7弧度、8弧度、9弧度、10弧度、11弧度、12弧度、13弧度、14弧度、または、15弧度であっても良い。第1液体および第2液体の注入速度は、約1m/sよりも速くても良いし、あるいは、約2m/s、3m/s、4m/s、5m/s、6m/s、7m/s、8m/s、9m/s、10m/s、15m/s、20m/s、25m/s、30m/s、35m/s、40m/s、45m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、または、120m/sであっても良いし、あるいは、約1m/s〜120m/sの間、1m/s〜100m/sの間、1m/s〜50m/sの間、1m/s〜20m/sの間、5m/s〜120m/sの間、10m/s〜120m/sの間、50m/s〜120m/sの間、50m/s〜100m/sの間、5m/s〜50m/sの間、5m/s〜20m/sの間、10m/s〜50m/sの間、1m/s〜10m/sの間、1m/s〜5m/sの間、1m/s〜2m/sの間、2m/s〜10m/sの間、5m/s〜10m/sの間、2m/s〜5m/sの間であっても良いし、あるいは、約1m/s、1.5m/s、2m/s、2.5m/s、3m/s、3.5m/s、4m/s、4.5m/s、5m/s、6m/s、7m/s、8m/s、9m/s、10m/s、15m/s、20m/s、25m/s、30m/s、35m/s、40m/s、45m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、または、120m/sであっても良い。注入流速は、約0.5L/分〜10L/分の間であっても良いし、あるいは、約0.5L/分〜5L/分の間、0.5L/分〜2L/分の間、1L/分〜10L/分の間、1L/分〜5L/分の間、2L/分〜5L/分の間、5L/分〜10L/分、または、1L/分〜3L/分の間であっても良いし、あるいは、約0.5L/分、1L/分、1.5L/分、2L/分、2.5L/分、3L/分、3.5L/分、4L/分、4.5L/分、5L/分、6L/分、7L/分、8L/分、9L/分、または10L/分であっても良い。
【0074】
本発明の製造方法は、薬物の粒子を単離する手順を含んでいても良い。単離する手順は、ろ過、精密ろ過、限外ろ過、遠心、超遠心、沈殿、またはこれらの組合わせを備えていても良いし、分離するためのその他の方法を備えていても良い。単離する手順の後に、粒子は乾燥される。乾燥方法としては、例えば真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、または、粒子上をもしくは粒子を通して気流(一般的には乾燥した気流)を通過させる方法が挙げられる。気体は、例えば、空気、窒素、2酸化炭素、アルゴンまたは、その他の気体、あるいは、気体の混合物が挙げられる。
【0075】
本発明のための適切な薬物は、吸入剤を含んでいる。それらは、喘息、癌、肺感染症などの感染症、または、その他の病気を治療するために適切なものであるか、あるいは、必要なものであっても良い。適切な薬物は、薬物の前躯体に試薬を反応させることによって得られるものであっても良い。前躯体および試薬は、それらが一緒に反応して薬物が作製されるものであっても良い。それらは、高せん断領域に関する条件下、例えば、高せん断領域における温度および圧力の条件下において、一緒に反応して薬物が作製されるものであっても良い。
【0076】
前躯体または薬物あるいはそれらの両方は、溶解していても良い。前躯体の試薬に対する割合は、約5:1以上〜1:5以下の間であっても良く、あるいは、モルを基準にして約3:1〜1:3の間であっても良いし、あるいは、モルを基準にして約3:1〜1:1の間、1:1〜1:3の間、または、2:1〜1:2の間であっても良いし、あるいは、モルを基準にして約3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、または、1:3であっても良いし、あるいは、その他の割合であっても良い。割合は、前躯体を薬物に完全に返還することを促進するまたは確実にするような値であっても良い。前躯体または薬物あるいはそれらの両方が溶解している場合、溶液の濃度は独立に、溶媒中の溶質(すなわち、前躯体または薬物)の溶解度に応じて、w/wもしくはw/vを基準に約0.1%〜50%の間であっても良いし、あるいは、約0.1%〜25%の間、0.1%〜10%の間、0.1%〜5%の間、0.1%〜1%の間、0.1%〜0.5%の間、1%〜50%の間、5%〜50%の間、10%〜50%の間、1%〜25%の間、または、1%〜10%の間であっても良いし、w/wもしくはw/vを基準に約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%であっても良いし、その他の濃度であっても良い。前躯体または前躯体の溶液は、前躯体または前躯体の溶液と混和するものであっても良い。溶媒は、水溶性であっても良いし、非水溶性であっても良い。また前躯体用の溶媒は、試薬用の溶媒と同じであっても良いし、異なっていても良い。前躯体用の溶媒および試薬用の溶媒は、独立に、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトンまたはその他の溶媒を含んでいても良いし、溶媒の混合物を含んでいても良い。
【0077】
薬物は塩であっても良いし、前躯体は薬物の遊離塩であっても良いし、試薬は酸であっても良い。試薬のpKaおよび前躯体のpKaは、それらが、反応して薬物を精製するようなものであっても良い。それ故、好都合な前躯体はアミン官能基前躯体であり、この場合薬物はアンモニウム塩である。適切な薬物は、サルブタモール、アミノフィリン、テオフィリン、オルシプレナリン、テルブタリン、サルメトロール(salmetrol)、ホルモトロール、ベクロメタゾン、ブタザミド、マンニトール、シクロスポリン、または、トブラマイシンの塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩、またはその他の塩)であっても良い。薬物は吸入可能なステロイド、吸入可能なシクロスポリン、吸入可能な抗喘息剤、吸入可能な気管支拡張薬、吸入可能な抗生物質、吸入可能なβ‐アゴニスト、またはその他の吸入剤であっても良い。
【0078】
他の実施の形態として、前躯体は薬物の塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩、またはその他の塩)であっても良く、試薬は塩基(例えば、水酸化物、アミン、アンモニア)であっても良く、これにより、薬物は前躯体の遊離塩となる。この場合、薬物は、アミン官能基薬物などの塩基性薬物であっても良い。試薬は、薬物よりも強い塩基であっても良い。
【0079】
もう1つ別の実施の形態として、薬物は、例えばカルボキシ官能基薬物などの酸性薬物であっても良い。この場合、前躯体は薬物の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、またはトリアルキルアンモニウム塩)であっても良く、試薬は、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸、またはトリフルオロ酢酸などの有機酸)であっても良い。
【0080】
もう1つ別の実施の形態として、薬物は酸性前躯体の塩であっても良く、試薬は塩基であっても良い。
【0081】
全ての場合において、試薬のpKaおよび前躯体のpKaは、試薬および前躯体の反応によって薬物が生産されるようなものであるべきである。
【0082】
本発明は、約10μm、約9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、または、1μmよりも小さい直径(例えば平均粒径)を有する粒子状の吸入剤を提供する。約10μmよりも大きい粒子は、吸入されたときに一般的に口または喉において捕捉され、それ故、肺まで効果的に送達されない。約0.5μmよりも小さい粒子は、肺への沈着が弱く、そのため、効果的に患者に吸収されない。本発明によれば粒子の粒径は、約0.5μm〜約10μmの間であっても良いし、約0.5μm〜5μmの間、0.5μm〜1μmの間、1μm〜10μmの間、5μm〜10μmの間、または1μm〜5μmの間であっても良いし、約0.5μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、または、10μmであっても良い。直径が10μmよりも小さい(または、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、もしくは、1μmよりも小さい)、または、直径が0.5〜10μmである吸入剤の粒子の割合は、重量を基準に約50%よりも大きくても良いし、あるいは、約60%、70%、80%、90%、または95%よりも大きくても良いし、あるいは、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%であっても良い。吸入剤の粒子の粒径分布は、狭くても良い。平均粒径の10%以内(または15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または、50%)である粒径を有する吸入剤の粒子の割合は重量を基準に約20%よりも大きくても良いし、あるいは、数もしくは重量を基準に約20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または、99%であっても良い。粒子は、所望の適切な形状であっても良い。例えば、粒子は、球状、楕円形状、環状体(toroid)、卵形、変形型卵形、錘状、円錐台状、ドーム状、半球体状、円筒形状、先端が球状の円筒形状、カプセル形状、カプレット形状、フルストコニカル形状(frustconical shape)、円盤状(disc)、円板状(discoid)、平板状、角柱状、針状、および、(規則的なまたは不規則的な)多面体からなる群より選ばれる形状であっても良いし、その他の形状(例えば不規則な形状)であっても良い。前記多面体としては、6面体、直方柱、直方体、三角柱、6角柱、菱形、もしくは、4面〜60面以上の多面体などが挙げられる。粒子は、凝集体であっても良いし、さらに、その他の形状を有する粒子もしくは様々な異なる形状を有する粒子の前記形状のいずれかを有する粒子の凝集体であっても良い。
【0083】
本発明の薬物は、患者の病気を治療するために経口で送達されても良い。薬物は、例えば吸入器を用いて経口で送達されても良い。また薬物は、乾燥粉末として送達されても良く、液体の担体を用いることなく送達されても良い。
【0084】
〔実施例〕
〈試験物質〉
<反応方法>
溶質:サルブタモール塩基(ナノマテリアルズ テクノロジー Pte.Ltd.(NanoMaterials Technology Pte.Ltd.)、シンガポール)
溶媒:イソプロピルアルコール(IPA、AR、バイオラボ(BIOLAB)、オーストラリア)
反応物質:硫酸(AR、フォーン ポウレンク(Phone Poulenc)、オーストラリア)
脱イオン水
<非溶媒法>
溶質:硫酸サルブタモール(インターケミカル Ltd.(Inter−Chemical Ltd.)、中国)
溶媒:脱イオン水
非溶媒:IPA(AR、バイオラボ(BIOLAB)、オーストラリア)
アセトン(AR、バイオラボ(BIOLAB)、オーストラリア)
〈器具〉
ビーカー(50ml、250ml、500ml、1000ml)
ピペット(5000μl、エッペンドルフ、ドイツ)
シリンジ(テルモ、アメリカ)
電熱板電磁攪拌器(IEC、オーストラリア)
高せん断混合器(シルバーソン(Silverson)、イギリス)
超音波洗浄機(ユニソニックス(Unisonics)、オーストラリア)
レーザー回折(マルバーン マスタシザー(Malvern Mastersizer)、マルバーン インストルメント(Malvern Instrument)、イギリス)
回転式の充填床反応器(工業化学北京大学(Bejing University of Chemical Technology)、中国)
ブチミニ噴霧乾燥器B−191(ブチラボラトリー‐テクニックス(Buechi laboratory−techniques)、スイス)
蠕動ポンプ(マスターフレックスC/L、エクステック イクイップメント(Masterflex C/L, Extech equipment)、ビクトリア(Victoria))
顕微鏡(プリンパスCH40(Plympus CH40)、日本)
走査電子顕微鏡(SEM)
多段形液体インピンジャー(MSLI、コプレイ サイエンティフィック(Copley Scientific)、ノッティンガム、イギリス)
オシロスコープ(アギレント(Agilent)54621A)
オリオン乾燥ポンプ(オリオン機械、日本)
A/Eガラスろ紙(76mm、PALL ゲルマン サイエンス(German Sciences)、アメリカ)
H3CR−A8タイマー(オムロン、日本)
流量計(TSI4000シリーズ、アメリカ)
遠心機(ミニスピン、エッペンドルフ、ドイツ)
紫外および可視吸収スペクトロフォトメーター(UV、日立U−2000、日本)
混合機(ターブラ(Turbula)、スイス)
秤(メットラー トレド AG245(Mettler Toledo AG245)、オーストラリア)
〈流出実験〉
実験は、6手順の操作を含むように企画されている(図1)。
【0085】
[沈殿]
<反応方法>
硫酸サルブタモールを合成する経路はいくつかあるが、最終手順は全て同じであり、サルブタモール塩基が、硫酸と反応して硫酸サルブタモールが生成する(図2)。
【0086】
<非溶媒法>
非溶媒再結晶法は、ナノ材料を生成するために用いられる一般的な物理的方法である。本方法では、溶質がわずかに溶解する非溶媒(貧溶媒)を添加してシステムの飽和率を変化させることにより、溶質を溶媒から析出させる。一般的に、非溶媒における溶質の溶解度が低いほど、溶質は析出は早くなる。しかしながら、結晶の成長速度があまりにも速い場合は、粒径が大きくなると考えられる。それ故、微細粒子を得るためには、適切な非溶媒を選択することが非常に重要である。
【0087】
[溶媒および非溶媒の選択]
<反応方法における溶媒の選択>
本実験の目的は、微細な硫酸サルブタモール沈殿を含む懸濁液を得ることである。それ故、サルブタモール塩基が溶解し、硫酸サルブタモールが微かに溶解する溶媒が、反応のための適切な溶媒である。イギリスの薬局方に記載されているように、サルブタモール塩基は、水にやや溶けにくく、アルコールに溶解し、エーテルに微かに溶解する。硫酸サルブタモールは、水に溶け易く、アルコールおよびエーテルに微かに溶け、塩化メチレンに非常に微かに溶ける。それ故、用いられる溶媒の安全性を考えた場合、アルコール(エタノール)を選択することが最良であると考えられる。固体の溶解度は、式1にしたがって固体の粒径の関数で表される。
【0088】
【数1】
【0089】
式中、Rは気体定数であり、Tは絶対温度であり、SおよびSrは、それぞれ大きい固体粒子の溶解度および小さい半径(r)を有する粒子の溶解度であり、M、σおよびdは、それぞれ分子量、表面張力、および固体密度を表す。式1より、粒子径が減少すれば、固体の溶解度は増加することが分かる。それ故、アルコールにおける(本発明の製造方法によって製造される)微細な硫酸サルブタモール生成物の溶解度は、より大きな粒径である市販品と比較して幾分か大きくなっていると考えられる。このため、本発明の製造方法における収率を考えたときに、アルコールは適切な溶媒ではないといえる。したがって、製造方法における溶媒として、アルコールの代わりにイソプロピルアルコール(IPA)が選択される。IPAにおける硫酸サルブタモールの溶解度は、アルコールよりも低く、サルブタモール塩基の溶解度はIPAとアルコールとにおいて同様である。さらに、IPAは一般的に用いられる有機溶媒である。
【0090】
<非溶媒法における非溶媒の選択>
約1gの硫酸サルブタモール(市販品)を4mlの水に溶解して、硫酸サルブタモールがほぼ飽和した飽和水溶液を作製した。IPAとアセトンとを次の比で混合した。100:0、80:20、60:40、40:60、20:80、および、0:100。各有機溶媒の混合物の1mlを非溶媒として別々の2mlのガラス瓶に設置した。その後、0.01mlの硫酸サルブタモール溶液を非溶媒を含む各ガラス瓶に、できるだけ素早く加えた。そして、ガラス瓶を覆って、手を使ってできるだけ激しく振盪した。溶液の非溶媒に対する比は、1:100(0.01ml:1ml)である。溶液を加えると白色沈殿が生じ始め、時間が経つにつれて白色沈殿の量は増加した。その後、ガラス瓶を放置し、IPAのアセトンに対する最良の容積比を決定するために各ガラス瓶における沈殿を観察した。
【0091】
沈殿速度に基づけば、80:20、60:40、および、0:100というIPAのアセトンに対する比は、同様であると考えられ、さらに、他の3つよりも良いと考えられる。これら3つの試料から生じた沈殿を顕微鏡を用いて調べると、80:20の試料における粒径が最も小さく、最も分散された粒子であると考えられる。よって、IPA:アセトン=80:20という溶媒混合物を非溶媒として選択されることが決定した。
【0092】
[ビーカーを用いた合成]
約70°でIPAにサルブタモール塩基を溶解し、室温(約21℃)まで溶液を冷却することにより、10mg/mlの溶液を調製した。20mlのこの溶液を50mlのビーカーに設置した。沈殿を形成させるために、3000rpmに設定された頭上式攪拌機を用いて2分を超えて溶液を攪拌している間に、エッペンドルフピペットチップを用いて溶液に0.2mlの2mol/L硫酸(サルブタモール塩基と硫酸との反応を完全に達成するために計算された)を加えた(図5)。図5において、器具2は、シャフト6によって回転翼5を備え、250mlビーカー7に浸されている頭上式攪拌機4を具備している。ビーカー7にある溶液8は、IPAに溶解しているサルブタモール塩基の溶液である。硫酸は、エッペンドルフピペット9を用いて添加されても良い。
【0093】
[RPB(回転式の充填床反応器)による合成を用いた製造方法]
図6によれば、RPB100は、動かない骨組み(stationary shell)12の内部に取り付けられ1分間に数百〜千回転数の速度で回転する、ひとまとまりの回転装置10を備えている。液体は液体注入口14から回転装置10のアイスペース(eye space)に導入され、組み込まれた液体分配器16を通して回転装置10の刃(edge)の内側に噴霧される。基板(bed)における液体は、遠心力下で刃の内側から刃の外側まで半径方向に流れ、最終的に液体排出口18を介してRPBから離れて収集される。気体は、気体注入口20を通して導入され、回転装置10のパッキング22における液体と反対方向に中心に向かって流れ、最終的に気体排出口24から流れ出る。シャフト26は、図示しないモーターから回転エネルギーを与えるために回転装置10に連結している。充填剤28は基板から液体が漏れることを防ぐために備えられている。ウォータージャケット32を用いて反応炉100を冷却する、または、加熱するために水注入口30を通して水が必要に応じて注入される。また、水は、水排出口34を通してジャケット32から排出される。
【0094】
RPBの基本原理は、遠心力の作用を介する高重力環境を作製することであり、これにより、質量移動およびマイクロ混合が増強される。パッキングを通過する液体は、RPBにおける高重力環境下においてマイクロ小滴状、ナノ小滴状、糸状、または、薄いフィルム状に広がるか、あるいは、分裂する。なお、RPBにおける高重力環境下は、地球の重力加速度よりも数百〜数千倍大きいものであっても良い。それ故、気体と液体との間または液体とRPBにおける液体との間の質量移動の速度は、従来の充填床反応器よりも1〜3倍速く、必要とされる反応時間が劇的に短縮される。
【0095】
[RPBの操作の態様]
手順1:全ての電源を入れる。
【0096】
手順2:システム全体が汚れていないことを確認した後、100mlのサルブタモール塩基/IPA溶液をRPBに上端注入口を介して加える。その後、ゴム栓をきつく差し込む。必要に応じて、冷却/加熱システムの電源を入れる。
【0097】
手順3:RPBを通してRPBの後ろから排出されるものを再利用するために、蠕動ポンプに適合する再利用チューブを接続する。なお、本実施例に用いられているRPBは、サルブタモール塩基/IPA溶液を供給するための注入口と、酸を注入するための注入ポートとを備えている。再利用チューブが連結される再利用ポートが存在し、RPBから排出されるものを再利用することができる。
【0098】
手順4:蠕動ポンプを2000ml/分の速度で作動させ、RPBを約3000rpmの最大速度で作動させる。
【0099】
手順5:RPBが設定された速度に達した後に、シリンジポンプまたはシリンジを用いてRPBに硫酸を供給する。酸の容積は一般的に非常に小さいので、それは大抵すぐに、すなわち数秒間で添加される。
【0100】
手順6:液体は、必要な時間の間反応炉を通して再利用される。反応時間が経過した後、RPBの電源を切り、そしてポンプの電源を切る。その後、懸濁液を適切な大きさの容器(例えば250mlビーカー)に回収する。このことは、排出口チューブの連結を解除して、重力によってRPBから懸濁液が流れ出ることによって達成される。
【0101】
[粒径の測定]
沈殿のすぐ後に得られた試料の容積中間粒径D(v、0.5)および粒径分布を、キャリブレーションと30分間の暖機運転とを行った2.4mmの活性ビーム長を用いるレーザー回折(マルバーン マスタシザー)によって測定した。また、以下の設定を行った:
設定範囲:300RF(0.05−900μm)
試料ユニット:MS17
計器ポート:2
分析モデル:多分散
データチャネル:低−0、高‐0
プレゼンテーション:3_SALB_3(η硫酸サルブタモール=1.5530、仮定屈折率(imagine refractive index)=0.1000、ηIPA=1.378)。
【0102】
沈殿としての粒径を測定するために、小容量の試料分散ユニットを70〜100mlのブランク溶液(イソプロピルアルコール(プロパン2オール)、IPA)で満たし、試料分散ユニットの制御装置を2000rpmで混合するように設定して、バックグラウンドを測定することによってキャリブレーションを初めに行った。その後、不明瞭(obscuration)が約10%〜30%の間にあるときに、懸濁液を分散ユニットに導入した。これにより、乾燥粒子の粒径を測定することができた。粒径分布は、引用される大きさが50%の完全容積分布である、容積(または質量)中間直径(volume (or mass) median diameter)(D(v,0.5))を用いて表される。分布の幅または範囲は、式2を用いて計算される。式2において、D(v、0.9)、およびD(v、0.1)は、それぞれ90%および10%の累積容積(cumulative volume)における直径である。
【0103】
【数2】
【0104】
[噴霧乾燥]
7mmのノズルを備えるブチミニ噴霧乾燥器B−191を、懸濁液から粉末を回収する方法として選択した。掃除フィルターバッグが組み立てられており、空気除湿機(コンプエアー(CompAir) SAM35)のスイッチが入っていることを確認した後、注入口の温度を150℃に前もって調節するために初めに加熱し、噴霧器を800L/時に設定し、少なくとも30分間吸引を行った。硫酸サルブタモール懸濁液を、5ml/分で作動している蠕動ポンプを用いてチュービングを介して、噴霧乾燥器の噴霧器のノズルに供給した。その後、懸濁液を霧状にし、IPAを蒸発させて乾燥した硫酸サルブタモール粒子を分離した。さらに、これらの粒子を、少量高効率のサイクロンおよび収集管(collection vessel)に真空ポンプを用いて収集した。噴霧乾燥機のノズルを、常に確認し、乾燥粉末による閉塞を防ぐために蒸留水を用いて掃除した。粉末を使用するまでシリカゲルが敷かれている乾燥器に保管し、保管している間に、粒子が凝集することおよび湿気の吸着を避けた。
【0105】
[走査電子顕微鏡(SEM)]
製造された粒子の形態を調べるために走査電子顕微鏡が用いられ、マルバーンの信頼性を確認する手段として物質の大きさを確かめた。試料を銅板に搭載し、分析する前にプラチナでコートした。
【0106】
[分散実験]
インビトロにおける粒径を測定することにより、空気力学的な粒径分布の簡単な評価を行うことができる。この処理には、異なるDaの粉末の分離と収集とを通して粒径分布の細分化を提供するための多段形液体インピンジャー(MSLI)(図7)のようなカスケードまたはインパクター装置が利用される。
【0107】
MSLIは、あるDaの粉末を収集するために60ml/分でキャリブレーションされた5つの段階を備えている。あるDaはカットオフDaとして知られ、
段階1では、13.0μm
段階2では、6.8μm
段階3では、3.1μm
段階4では、1.7μm
である。
【0108】
段階が高いほど、大きいDaが収集される。異なる流速(Q2)における各段階のキャリブレーションされたDa(D1)を転換するために、式3を用いて新しいカットオフ空気力学的直径D2を見つけた。
【0109】
【数3】
【0110】
60〜100L/分の流速において、5μmよりも小さいDaを有する粒子は、口腔咽頭の沈着および式3からMSLIのフィルターをしのぐと期待される。MSLIの結果から、FPF(微細粒子画分)が計算され、2つの異なる形式で表される。
【0111】
【数4】
【0112】
【数5】
【0113】
FPF総量値は、理論的に患者に吸引される粉末の総量に関して肺の沈着に最適な大きさである粉末量を表す。この値は、分散せずにカプセルおよび装置に残っている粉末が考慮されている。この値は、インビボの状況を最も実践的に予測する材料を表しており、それ故、2つの中でより引用される結果である。それにもかかわらず、FPF放出が、エアロゾル供給のもう1つの記述子として計算されている。また、FPF放出では、分散せずに残っている粉末は考慮されていない。
【0114】
回収率は、カプセルに搭載された質量と比較して説明される粉末の質量を表す各分散について計算される(式6)。
【0115】
【数6】
【0116】
<分散の態様>
分散実験を行うために用いられる装置は、前述したMSLIである。硫酸サルブタモールに関する操作の通常の態様を以下に記載する。
【0117】
手順1:秤を用いて10.00±0.50mgの硫酸サルブタモール粉末で満たされたカプセル(植物性カプセル)を精確に秤量した。
【0118】
手順2:5000μlのエッペンドルフピペットを用いて、既知の容積(20ml)の純水を各4つの段階に加えた。MSLIを振盪し各段階の底面、特に焼結ガラスはめ込み板(sintered glass impaction plate)を完全に濡らした。
【0119】
手順3:A/E型のガラスろ紙(76mm)を1枚、段階5に配置した。
【0120】
手順4:MSLIに、吸入流れを生成するオリオン乾燥ポンプおよび、空気が流れる時間を制御するH3CR−A8タイマーを取り付けた。
【0121】
手順5:気流パターンをオシロスコープを用いて確認し、オシロスコープのパターンにおいて、インピンガーを通して閉塞されて制限された流量(blockage restricting flow)を意味する、上向きのスパイクがないことを確かめた。
【0122】
手順6:気流速度を、空のカプセルおよびろ紙が内部に備えられたMSLIを含む吸入器を通して流量計を用いて60L/分に調節した。
【0123】
手順7:硫酸サルブタモールで満たされたカプセルの装填と分散とを、4秒間ごと行った。
【0124】
手順8:分散後、4つの段階を綿密に回転させて(swirled)、詰め込まれた粉末を底面、上面、および側壁から溶解した。
【0125】
手順9:通路、アダプターを備える装置、およびカプセルを20mlの純水を用いて個々に洗浄した。
【0126】
手順10:ろ紙を20mlの純水を用いて洗浄し、洗浄水を遠心機に設置して、20分間13.4×1000rpmにて回転する。その後、上清を収集した。
【0127】
手順11:全ての洗浄物を標識されたガラス瓶に別々に収集し、収集された濃度を過剰評価してしまう蒸発効果を最小にするために素早くUVによって分析した。
【0128】
<紫外および可視吸収スペクトロフォトメーター(UV)>
既知の濃度を有する水性の硫酸サルブタモール標準を調製し、各標準の276nmにおける吸収を純水を用いてバックグラウンドとして測定した。硫酸サルブタモール水溶液の標準のキャリブレーション曲線(図8)は、吸光度と濃度とのデータに基づいて作製された。
【0129】
[結果および考察]
反応方法における要因のどれが生成物の粒径に影響するのかを調査するために、いくつかの反応条件を変化させた。5つの要因を調査した。すなわち、(1)頭上式攪拌機の攪拌速度、(2)反応温度、(3)反応時間、(4)サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度、(5)硫酸濃度である。
【0130】
<反応時間の効果>
表1のように、本実験では、反応時間を変化させて、サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度、硫酸濃度、頭上式攪拌機の攪拌速度を一定に維持した。
【0131】
【表1】
【0132】
図9に示すように、反応時間、特に短い反応時間は、D(v、0.5)において著しい効果を有している。容積中間粒子径は、初めの30秒の間に約30μmから8μmに素早く減少している。その後、容積中間粒子径は、約5μmまで徐々に減少している。これにより、長時間の反応は微細粒子に有利に働くと考えられる。時間を確保するために、その後の実験では2分を用いた。
【0133】
<硫酸濃度およびサルブタモール塩基/IPA溶液の濃度の効果>
硫酸濃度およびサルブタモール塩基/IPA溶液の濃度は、実験結果に影響を与えると考えられた。以下の実験では、硫酸濃度を0.5mol/Lから5mol/Lに変化させて、10mg/mlおよび15mg/mlのサルブタモール塩基/IPA溶液と別々に反応させた。反応時間を2分に一定に維持し、反応温度を20℃にして、攪拌速度を5000rpmに設定した(表2)。
【0134】
【表2】
【0135】
硫酸濃度およびサルブタモール塩基の濃度の両方がより高い方が、微細粒子を製造するためには好ましいと考えられる(図10)。本発明者らは、このことをより高い濃度のために、反応システムにより高い過飽和が引き起こされたためであると考えている。より高濃度の酸は腐食性質を有することおよび装置に対して当然の効果が及ぼされることを考えると、2mol/Lが反応に対する適切な濃度であると考えられる。さらに、サルブタモール/IPA溶液の濃度が増加したとき、硫酸サルブタモール懸濁液の流動性は低下する。このことは、乾燥粉末を単離するための噴霧乾燥という次の工程にとって不利な効果を与える。したがって、10mg/mlのサルブタモール塩基/IPA溶液が、15mg/mlのサルブタモール塩基/IPA溶液よりも良いと考えられる。
【0136】
<反応温度の効果>
表3に示された一定の反応条件を用いて、反応温度だけを5℃から35℃まで変化させた。
【0137】
【表3】
【0138】
図11は、D(v、0.5)における反応温度の影響を説明している。硫酸サルブタモールのD(v、0.5)は、温度が室温(約20℃)よりも高くなると急激に増加するが、温度が低温から室温まで増加するときには微かに増加する。この説明として、IPAに溶解している硫酸サルブタモールの溶解度が高温よりも低温の方がより低いということが考えられる。それ故、低温において溶液の過飽和度がすぐに高くなると考えられる。これは、微細粒子の製造に必要とされる主要な要因の1つである。粒径は20℃の反応温度よりも5℃の反応温度の方が幾分か小さいが、反応温度を低くするという不便さは、得られる微かな利益を上回る。このため、反応を室温で頻繁に行った。
【0139】
<攪拌速度の効果>
攪拌速度の効果を調べるために、表4に示されるようにその他の4つのパラメーターを一定に維持して、攪拌速度のみがパラメーターを変化された。
【0140】
【表4】
【0141】
容積中間粒径(D(v、0.5))は、頭上式攪拌機の攪拌速度が増加するにつれて減少した。このことは、攪拌速度を速めることによって、粒子の核形成および結晶化を制御するためのより良好なマイクロ混合(micro−mixing、すなわち分子レベルでの混合)が引き起こされたためであると考えられる。このため、機械が実施することができる最大速度を微細粒子を得るために選択した。
【0142】
<超音波処理の効果>
顕微鏡用試料を作製する反応を行った後、小標本が硫酸サルブタモール懸濁液から回収されたとき、分離した粒子よりも凝集した粒子の方が多く観察された(図13)。
【0143】
それ故、マルバーンによって測定される容積中間粒子径は、個々の粒子の容積中間粒子径というよりも凝集体の容積中間粒子径であると考えられた。このことを調べるために、粒径を測定する前に、試料を超音波浴に置いて超音波処理を30分間行った。硫酸サルブタモールの粒径が温度の影響を受けることを避けるために、超音波処理の間、氷を浴槽に加えて浴槽の水温を制御した。結果を図14および図15に示す。超音波処理後、各試料のD(v、0.5)は減少しており、超音波処理後の値は顕微鏡下で測定した単一粒径とより一致している。このように、超音波処理によって個々の粒子の大部分を凝集体から分離させられると考えられる。したがって、凝集体が存在し、乾燥手法(噴霧乾燥)ではこの凝集体を完全に粉砕することはできないことが明らかである。これによれば、本発明の製造方法において凝集体を粉砕することができる新しい手法が適用されるまで、凝集体の大きさの方が、凝集体を構成する個々の粒子の大きさよりもより該当するといえる。
【0144】
<要因配置実験>
濃度、温度などの最適反応条件を前記実験から選択した。部分的な34の要因配置実験を行って、どの要因が、粒径に最も影響を与える反応過程に関係しているかを調べた。調べられた4つの要因は、(A)サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度、(B)硫酸濃度、(C)攪拌速度、(D)反応時間である。各要因に関する調査されたレベルを表5に示す。反応温度は、室温で一定に維持した。
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
Rjは、どの要因が結果に最も影響を与えるのかを示す値である。値がより大きければ、より感度がよく、その要因への感度がより大きい。表6において計算されているように、Rjの値はD>A>C>Bの順番になっており、4つの要因の中で反応時間が最も重要であることを強調している。硫酸濃度が1mol/Lから3mol/Lまでであれば、D(v、0.5)に対する効果を最小にすることができる。
【0148】
【数7】
の最小値は、各要因のどのレベルが最適であるかを示す値である。表6では、A2、B2、C3およびD3が最良の条件であることが示されている。表5によれば、これらは、Cサルブタモール15mg/ml、CH2SO42mol/L、攪拌速度8000rpm、および反応時間2分である。これらの条件は、上述した実験と一致する。
【0149】
<合成のスケールアップ>
さらなる実験のために噴霧乾燥を通して十分な粉末を得るために硫酸サルブタモールのビーカーを用いた合成をスケールアップした。
【0150】
1)前述の50mlのビーカーに20mlのサルブタモール塩基/IPA溶液を加える代わりに、250mlのビーカーに100mlのサルブタモール塩基/IPA溶液を加えた。
【0151】
2)より大型の頭上式攪拌機を用いた。2つの攪拌ヘッドを比較すると、大きさだけでなく種類も異なっている(図16、17)。より大型のヘッドを用いることにより、微細粒子を得るためのより良好な効果が得られる。
【0152】
3)要因配置実験から、反応時間が粒径を決定するための最も重要な要因であると判明した。そのため、反応時間を2分から20分まで延ばして、5分毎に粒径を測定した(図18、19)。反応が進行すれば、粒径分布曲線は複峰性になった。すなわち、約5分後に小さいピークが現れ、この小さいピークは徐々に大きくなった。したがって、20分の反応の後、D(v、0.5)は3.50μmから1.97μmまで減少した。これによって、反応時間を長くすることによってより粒径が小さくなることが確かめられた。
【0153】
結論として、スケールアップ後の反応条件を表7に示した。
【0154】
【表7】
【0155】
<噴霧乾燥の条件>
マルバーンによって測定される容積中間粒径および分散実験のFPF(微細粒子画分)の値という2つの値を用いて、噴霧乾燥後の乾燥粉末の品質を示した。
【0156】
噴霧乾燥の原理は、温風と合わせてノズルを通して懸濁液を霧状にすることによって、高温のために溶媒(本実施例ではIPA)を蒸発させるというものである。これにより、懸濁システムに懸濁している固体を、収集されてもよい乾燥粉末にしておくことができる。それ故、注入口および排出口の温度を、溶媒が完全に蒸発するほど高くするべきである。噴霧乾燥の排出口温度は、注入口温度と関連しており、前もって調整することや制御することを独立に行うことはできない。IPAの沸点は73℃であるので、注入口および排出口の温度をこの値よりも高くするべきである。図20は、排出口温度とFPF(総量)およびFPF(放出)との間の関係を示している。
【0157】
図20に示すように、排出口温度が60℃よりも低くなると粉末は完全に乾燥しないと考えられ、このため両方のFPF値は低くなる。注入口温度が150℃である場合、対応する排出口温度が約100℃に達しても良いこと、および、これは高品質の乾燥粉末を得るために用いられるべき最大値であることを示す実験を行った。
【0158】
<分散実験>
〈市販品〉
市販品の硫酸サルブタモールを、ナノマテリアルズ テクノロジー Pte.Ltd.(NanoMaterials Technology Pte.Ltd.)(シンガポール)から入手した。分散実験を上述したように2回行った。これらの実験結果を図21および図22に示す。マルバーン マスタシザーによって測定されたD(v、0.5)は15.12μmであり、この値はMSLIの段階1のカットオフよりも大きい値である。FPF値のどちらも20%を超えておらず、このことは現状の硫酸サルブタモールの市販品の20%未満が、肺の深い領域に沈着することができることを意味している。この結果はまったく満足できないものである。
【0159】
〈同一の反応条件および噴霧乾燥条件下においてビーカーで合成される、異なる硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末の比較〉
【0160】
【表8】
【0161】
図22は、硫酸サルブタモール乾燥粉末を生成するために用いられる方法が、分散結果に関して非常に良好な再現性を有していることを示している。市販品と比較して、噴霧乾燥によって得られる粉末の両方のFPF値が著しく改善されており、今まではめったに得られない値になっている。この結果の主な原因は、噴霧乾燥された粉末のD(v、0.5)が、2μmよりも小さくなっているということであり、この値は、段階3のカットオフ(3.1μm)よりも小さい値である。それ故、粉末の大部分は段階3および段階4を通過することができ、段階5におけるろ紙に収集されることができる。粉末の回収率は90%よりも大きかった。D(v、0.5)が懸濁液における物理的な粒径である間、空気力学的に粒子はより小さい粒子のように振舞うことに注意するべきである。
【0162】
<保管の効果>
噴霧乾燥後の粉末は、ガラス瓶に収集され、乾燥粉末に対する湿気の影響を最小にするために乾燥器に保管された。すぐに測定された分散結果と、4ヵ月後の同じ試料を測定した分散結果とを比較することにより、4ヵ月の保管後では、保管前の測定結果と比較して粉末の沈着分布が幾分か変化していることが示される(図23)。4ヵ月後では、段階3に沈着する粉末がより多く、一方段階5のろ紙に沈着する粉末はより少なかった。このように、1.7μmよりも小さい粒子の割合は減少しているが、一方3.1μmよりも大きい粒子の割合は増加していた。粒子は4ヶ月の保管間に少し大きくなっていた。FPF(総量)およびFPF(放出)はそれぞれ、約11%および6%までに減少していたが、それらの値は市販品の値と比較してもいまだに大きく、粉末は吸入法に対して高い性能をいまだに有していると考えられる。
【0163】
<異なる吸入装置の効果>
ロータハラー(Rotahaler(登録商標))は、効率性の低い吸入装置である。前で実証したように、粉末の性能は優れているので、粉末は前の実験に用いられる効率の高いエアロライザー(Aeroliser(登録商標))と比較して効率の低いロータハラー(登録商標)のような吸入装置においてさえも、合理的に機能するような十分な品質を有していると考えられた。2つの異なる吸入装置を用いること以外は、同一の条件(60L/分の流速、4秒の各時間、同じ量の硫酸サルブタモール)で粉末を分散させた(図24)。期待されたように、ロータハラー(登録商標)の性能は、エアロライザー(登録商標)ほど良くはなかった。FPFにおいて約20%および30%の減少が、それぞれFPF(総量)およびFPF(放出)に関して観測された。しかしながら、これらの値はエアロライザー(登録商標)を用いる市販品の値よりも約2〜3倍大きくなっている。このため、効率の低い吸入装置を用いても微細粒子の性能は高いということが考えられる。
【0164】
<ラクトースを混合することの効果>
ラクトースは乾燥粉末の吸入における担体として一般的に用いられる。硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末にラクトース(市販品)を10:90の割合で混合した。実験の詳細を以下に示す。
【0165】
手順1:100mgのラクトースを小型のガラス瓶に加える。そして、100mgの硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末を加える。混合機を用いてそれらを1分間混合する。
【0166】
手順2:200mgのラクトースを混合粉末に加え、さらに1分間一緒に混合する。
【0167】
手順3:400mgのラクトースを加え、上述のように混合する。
【0168】
手順4:200mgのラクトースを加え、上述のように混合する。
【0169】
100mgの硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末と900mgのラクトースとを含む1000mgの混合粉末が得られる。
【0170】
図25に示される結果によれば、ラクトースが混合された場合の混合物の性能は純粋な粉末の性能ほど良くないことが示されている。担体としてのラクトースの機能により吸入性能が改善されることが知られている。しかしながら、本実験において両方のFPF値は減少した。微細な硫酸サルブタモールは、大きいラクトース粒子の表面に吸着して捕捉されると考えられ、ラクトースの粒径のために微細な硫酸サルブタモールはラクトースと一緒に主に通路および段階1に送達されることになる。
【0171】
<RPBを用いた合成の反応条件>
ビーカーを用いた合成とRPBを用いた合成との間の違いを説明するために、5つの反応パラメーターの内の2つ(サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度および硫酸濃度)を変化させずに用いた。上述したように攪拌速度をRPBが実施できる最大速度に設定した。反応温度および反応時間を別々に調べた。
【0172】
<反応温度の効果>
冷水を用いてシステムを冷やし、熱湯を用いてシステムを温めた(表9)。
【0173】
【表9】
【0174】
図26および表9は、ビーカーを用いた合成に関して、微細粒子が低温度において得られることを示している。
【0175】
<反応時間の効果>
【0176】
【表10】
【0177】
表10から、反応時間が増加するに連れて、粒径が減少しFPFが増加することがわかる。しかしながら、20分と30分との間では大きな違いはなかった。
【0178】
反応時間が異なれば、試料の粒径分布が異なることが示された。曲線の主要ピークは、領域内において移動し減少していた。そして、次第に増加する小さいピークが約5分から現れた。D(v、0.5)は時間とともに減少した。結論として、より長い反応時間を用いることによって微細粒子が得られた。
【0179】
<異なる吸入装置の効果>
RPBを用いて合成された硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末の性能を調べるために、ロータハラー(登録商標)を用いて前述のようにエアロライザー(登録商標)と比較した。前において観察されるように、ロータハラー(登録商標)の性能は、エアロライザー(登録商標)の性能よりも劣っていた。FPF(総量)およびFPF(放出)の両方において約30%の減少が観測された。しかしながら、それでもこれらの値は、中程度の性能を有すると見なされている50%を超えている。このように、RPBを用いて合成された硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末の性能は、ビーカーにおいて合成された硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末とほとんど同程度であることが示された。
【0180】
<走査電子顕微鏡(SEM)写真>
【0181】
【表11】
【0182】
9月8日、13日、および、30日から得られた試料の形態は、走査電子顕微鏡下では、全て同様であるように考えられ、個々の棒状の粒子が球状の凝集体を形成している。個々の粒子の長さは2μmよりも短く、幅および厚みは約100nm〜200nmであった。9月7日の試料における凝集体は、その他の試料の凝集体よりも大きい。この試料の個々の粒子は、長さが約10μmでありその他の2つの寸法が1μmであるという針状のような形状になっている。このことは、より小さい粒径がより大きいFPFと関連があるので、9月7日の試料におけるFPFが4つの試料の内で最も小さいという事実と一致する。
【0183】
<非溶媒法>
噴霧乾燥のパラメーターは、前で用いられているパラメーターと同じである。噴霧乾燥器の収集用ガラス瓶における乾燥粉末に関して、興味深い現象が観察された。粉末は2つの部分に分けられ、一つは球状でありもう一方はルーズであり、ガラス瓶の側壁に貼りついている。粉末のこれら2つの部分の質量および容積を測定することによって、球状粉末の密度が、ルーズ粉末の密度よりも2倍大きいことが分かった。粒径分布をマルバーン マスタシザーを用いて測定した。
【0184】
乾燥粉末の形状が異なれば走査電子顕微鏡下の形状が異なると考えられる。前に議論したように、短い棒状の粒子の方が長い針状の粒子よりも性能が良い。それ故、これらの異なる形状の粉末部分の分散は異なる結果になり、ルーズ粉末の方が球状粉末よりも性能が良いことが仮定された。
【0185】
<分散結果>
噴霧乾燥器から得られた、貼りついたルーズ粉末および球状粉末を含む2つの別々のカプセルを分散実験のために調製した。結果を図37に示す。
【0186】
これらの結果は、先に仮定した分散結果に合致していた。異なる粒径を有しているために、MSLIにおける異なるFPF値および粉末分配が得られた。比較的大きい粒径のために、これらの2つの試料の両方は低いFPF値を示した。球状粉末の値は、市販の値と同じであった。
【0187】
2004年11月23日に調製された(合成されて噴霧乾燥された)試料を用いて前記結果を確かめるために一組の実験を行った。ルーズ粉末、球状粉末、および破砕された球状粉末を含む3つの別々のカプセルが作製された。これらを個々に分散させた。その結果を図38に示す。
【0188】
球状粉末に関する値は非常に低かったが、ルーズ粉末および破砕された球状粉末は同じ性能を示した。このことは、これら2つの粉末における凝集していない形状の間に大きな違いがないことを示唆している。球状粉末が段階1において多量に残った理由は、凝集体が非常に堅く速度60L/分の空気では破砕されないからであり、エアロライザー(登録商標)吸入器によって作製されたカプセルにおける穴は、カプセルから脱出できるほど十分に凝集体を粉砕するが、カプセルはその他と同様の機能をするほど十分ではない。十分に破砕されていないままのそれらの凝集体は、それがルーズ粉末および破砕された球状粉末である場合より多く、カプセルの中に捕捉される。
【0189】
<2つの方法によって生成した粉末の比較>
<パラメーター>
表11は、沈殿処理および噴霧乾燥処理に用いられたパラメーターを示している。
【0190】
【表12】
【0191】
<分散結果>
表11に示すように、硫酸サルブタモールの乾燥粉末を生成するために2つの方法において用いられたパラメーターは、非常に良く似ている。非溶媒法を用いて作製された乾燥粉末の性能の方が、反応方法を用いて作製された乾燥粉末の性能よりも著しく劣っていることが示された。粉末(非溶媒法)の大部分は段階3および4ならびにろ紙の代わりに吸入器に沈着していた。10月29日の試料において15μmよりも大きい粒子がいくつか存在したと考えられる。FPF(総量)と比較して、2つの試料のFPF(放出)の間には約6%だけの違いが存在する。このことは、MSLIに放出された粉末の性能が良いこと、すなわち、乾燥粉末に微細粒子がまだ存在していること、および/または、気流が吸入器から放出される凝集体を粉砕して分散させるほど十分強いことを示している。
【0192】
<粒径分配>
前記結果によって示されているように、2つの試料の容積中間直径はほとんど同じであるが、それぞれの分配曲線はまったく異なる(図41)。9月13日の試料は2つのピークを示しており、それぞれのピーク幅は狭い。しかしながら、10月29日の試料は1つのピークを有する比較的幅の広い分配になっている。図が示すように、9月13日の試料の粒子の全ては10μmよりも小さいが、10月29日の試料の最大粒径は約30μmであり、この値は9月13日の試料における最大粒径よりも3倍大きい。このことにより、10月29日の試料は性能が低いという説明ができる。
【0193】
<走査電子顕微鏡(SEM)写真>
走査電子顕微鏡写真により分散結果をさらに説明した。先に議論したように、粒径および粒子形状がFPF値に影響を与えると期待される。10月29日の試料に関して、走査電子顕微鏡の試料を調製する前にルーズ粉末と球状粉末とを分離した。これにより、図43の電子顕微鏡写真において2つの異なる形状および粒径が観察された。小さい粒子は反応試料によって調製された試料に類似しており、MSLIにおける段階3および4ならびにろ紙に沈着した。大きい粒子は、表面積が大きいために吸入器の側面に貼りついた。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】実施例に記載されている実験のフローチャートを示す図である。
【図2】硫酸とサルブタモール塩基とを反応させて硫酸サルブタモールを製造するスキームである。
【図3】実施例において形成された原物の沈殿物の写真である。
【図4】2.5時間放置した後の図3の沈殿物の写真である。
【図5】実施例に記載されているビーカーを用いた合成方法を示す概略図である。
【図6】RPB(回転式の充填床反応器)の概略図である。
【図7】MSLI(多段形液体インピンジャー:multi−stage liquid impinger)の概略図である。
【図8】濃度と276nmにおける硫酸サルブタモール溶液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例の実験における反応時間と容積中間粒径(volume medium particle size)との関係を示すグラフである。
【図10】実施例の実験における異なる濃度のサルブタモールを用いたときの、硫酸濃度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【図11】実施例の実験における反応温度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【図12】実施例の実験における攪拌速度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【図13】硫酸サルブタモール懸濁液の試料を示す概略図である。
【図14】実施例の実験における異なる攪拌速度での、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【図15】実施例の実験における異なる硫酸濃度を用いたときの、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【図16】実施例において用いられる小型の攪拌器のヘッドの写真である。
【図17】実施例において用いられるより大型の攪拌器のヘッドの写真である。
【図18】マルバーン粒径装置を用いて測定された、様々な反応時間において沈殿した硫酸サルブタモールの容積中間粒径分布を示すグラフである。
【図19】マルバーン粒径装置を用いて測定された、硫酸サルブタモールの容積中間粒径と反応時間との関係を示すグラフである。
【図20】実施例の実験における排出口温度とFPF(総計)およびFPF(放出)との関係を説明するグラフである(FPFは、微細粒子画分を意味する)。
【図21】市販品の産硫酸サルブタモールの結果を説明する棒グラフである。
【図22】異なる硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末を用いた分散の結果を説明する棒グラフである。
【図23】保管時間に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【図24】異なる吸入装置に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【図25】分散結果に対するラクトース混合の効果を説明する棒グラフである。
【図26】異なる反応温度から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【図27】異なる反応時間から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【図28】異なる吸入装置の分散結果に対する効果を説明する棒グラフである。
【図29】実施例における9月7日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図30】実施例における9月7日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図31】実施例における9月8日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図32】実施例における9月8日の試料を20.0kV、32,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図33】実施例における9月13日の試料を5kV、30,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図34】実施例における9月13日の試料を5kV、50,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図35】実施例における9月30日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図36】実施例における9月30日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図37】非溶媒法を用いて噴霧乾燥した後の硫酸サルブタモール乾燥粉末の異なる形状を示す電子顕微鏡写真である。(A)はルーズ粉末を示し、(B)は球状粉末を示す。
【図38】非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(11月23日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【図39】非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(12月13日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【図40】実施例に記載されている2つの硫酸サルブタモール乾燥粉末の分散結果を説明する棒グラフである。
【図41】実施例に記載されている2種類の硫酸サルブタモール乾燥粉末の粒径分布を説明するグラフである。
【図42】実施例に記載されている9月13日の試料における電子顕微鏡写真である。
【図43】図43は、実施例に記載されている10月29日の試料における電子顕微鏡写真である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、吸入可能な形態の薬物、および、吸入可能な形態の薬物の製造方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
粒径を制御することは薬物の製造において重要な検討事項である。このことは、薬物が吸入によって送達されることを意図されているときに特に重要である。その理由は、粒径が、薬物の粒子を肺に送達すること、および、薬物の吸入によって引き起こされる気道の炎症の程度について重要な効果を持っているからである。
【0003】
吸入型の薬物療法では薬物と一緒に適切な担体が一般的に用いられている。これらの担体は、HFC(ヒドロフルオロカーボン)およびHFA(ヒドロフルオロアルカン)などのフッ素化材料であり、該フッ素化材料は低毒性、不活性、安定性、および、適切な物理特性に優れている。しかしながら、これらの担体は環境にとって有害であることが良く知られている。実際のところ、環境への配慮から過去にそのような用途に用いられているCFC(クロロフルオロカーボン)を廃止しなければならなかった。担体を用いる吸入療法の代わりの方法として、担体を必要とせずに微細粒子状の薬物を送達する吸入器を使用する方法が用いられている。
【0004】
したがって、適切な微細粒子状の薬物を製造する方法、および、そのよう薬物を疾患の治療に用いるための適切な方法が必要とされている。
【0005】
〔本発明の目的〕
本発明の目的は、上述した不利の少なくとも1つを実質的に改善する、または、克服することである。本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの上述した必要性を少なくとも部分的に満足させることを目的としている。
【0006】
〔発明の要旨〕
反応物の第1の態様として、第1液体と第2液体とが相互作用して薬物の粒子を形成させるために高せん断領域において第1液体と第2液体とを混合する混合工程を含む吸入剤の粒子を調製するための製造方法が提供される。第1液体および第2液体の内の一方に、薬物またはその前駆体が含まれており、前記第1液体および第2液体の一方に前躯体が含まれている場合は、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前躯体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれている。また、前記第1液体および第2液体の一方に薬物が含まれている場合には、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において薬物を含む液体を混合したときに、薬物の粒子を形成する(すなわち、薬物の粒子の形成を引き起こす)液体が含まれている。前記製造方法は、薬物の粒子を単離する単離工程を含んでいても良い。また、前記混合工程は、第1液体および第2液体を混合区域に注入する手順を含んでいても良い。なお、前記混合区域は、第1液体および第2液体を高せん断するせん断装置を備えている。第1液体および第2液体は、該せん断装置上の混合区域に直接注入されても良い。せん断装置は、第1液体および第2液体に高せん断を与えるために混合区域において、約100rpm〜15000rpmの間、約1000rpm以下と約10000以上との間、または約15000rpm以上で回転しても良い。第1液体は第2液体と混和しうるものであっても良い。第1液体の第2液体に対する比は、w/wまたはv/vを基準に約1:200と200:1との間であっても良い。せん断装置は、実質的に円筒形であっても良い。さらにせん断装置は、少なくとも1つのメッシュ層を備えていても良く、また、複数の重複するメッシュ層を備えていても良い。メッシュの網目の大きさは、約0.05mm〜約3mm、約0.1mm〜0.5mm、約0.5mm以下3.0mm以上であっても良い。また、メッシュの間隙率は、約75%よりも大きくても良いし、あるいは、90%よりも大きくても良い。せん断装置は回転式の充填床反応器(RPB)であっても良い。
【0007】
第1液体および第2液体は、複数の注入口を通して混合区域に注入されても良い。第1液体のための各注入口は、第2液体の注入口から15弧度以下の混合領域内に位置していても良い。第1液体および第2液体の注入速度は、約1m/sよりも速くてもよく、または、約1m/s〜約120m/sの間であっても良い。
【0008】
薬物の粒子の大きさおよび/または形状は、吸入投与にとって適切なものであっても良い。粒子の大きさおよび/または形状は、患者の病気の治療にために吸入によって投与されるときに、粒子が患者によって前記病気の治療に対して適切な速度で吸収されるものであっても良い。粒子の直径は、約10μmよりも小さくても良く、約0.5μm〜約10μmの間であっても良い。直径が約10μmよりも小さいか、または、直径が0.5μm〜約10μmの間の粒子の割合は、重量または数を基準にして50%よりも多くても良い。本明細書において規定された粒径は、平均粒径であると考えられても良い。薬物は吸入型の薬物であっても良く、抗生物質、β‐アンタゴニスト、気管支拡張薬、ステロイド、シクロスポリン、またはその他の種類の薬物であっても良い。薬物として、例えば、トブラマイシン、サルメトロール(プロピオン酸フルチカゾン)、ホルモトロール(formotrol)、ベクロメタゾン、ブタザミド(butazamide)もしくは硫酸サルブタモール、またはその他の薬物が挙げられる。
【0009】
1つの実施の形態として、第1液体は溶媒に溶解した薬物の溶液を含んでおり、第2液体は薬物のための非溶媒を含んでいる。非溶媒は溶媒と混和しても良く、溶液と混合したときに、薬物を沈殿させることができでも良いし、または、薬物の粒子を形成することができても良い。
【0010】
もう1つ別の実施の形態として、第1液体は必要に応じて第1溶媒に溶解した薬物の前駆体を含んでおり、第2液体は必要に応じて第2溶媒に溶解した試薬を含んでいる。それによって、試薬が前躯体と反応して薬物の粒子が形成される。試薬は前躯体と反応して薬物の粒子を形成することができるものであっても良い。また、試薬は酸‐塩基反応を通して前駆体と反応して薬物の粒子を形成することができるものであっても良い。前躯体の試薬に対する比は、モルを基準に約5:1以上〜約1:5以下の間であっても良く、モルを基準に約3:1〜約1:3の間であっても良い。第1液体は第2液体と混和するものであっても良い。第1溶媒と第2溶媒とが存在する場合には、第1溶媒は第2溶媒と同じ物であっても良いし、異なるものであっても良いし、さらに両者は混和性であっても良い。薬物は塩であっても良く、前躯体は薬物の遊離塩基であっても良く、試薬は酸であっても良い。例えば、薬物は硫酸サルブタモールであっても良く、前躯体はサルブタモールであっても良く、試薬は硫酸であっても良い。
【0011】
さらなる実施の形態において、本発明の製造方法は、複数の重複するメッシュ層を備える高せん断装置を具備する混合区域を提供する工程、前記高せん断装置を約100rpm〜約15000rpmの間で回転させる工程、v/vを基準に約1:200〜約200:1の間の比で第1液体と第2液体とを前記混合区域に提供する工程、および、薬物の粒子を単離する工程を含んでおり、前記各メッシュ層の網目の大きさは、約0.05mm〜約3mmの間であり、前記混合区域に提供する工程では、第1液体および第2液体の内の一方に薬物またはその前駆体が含まれており、(i)前記第1液体および第2液体の一方に前躯体が含まれている場合には、前記第1液体および第2液体の内のもう一方に、高せん断条件下において該前駆体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれており、(ii)前記第1液体および第2液体の一方に薬物が含まれている場合は、前記第1液体および第2液体の内のもう一方に、高せん断条件下において薬物を含有する液体と混合したときに薬物の粒子を形成する液体が含まれており、これによって粒径が約0.5μm〜10μmの間の薬物の粒子を形成する、製造方法である。
【0012】
本発明は、本発明の第1の態様の製造方法によって調製される粒子状の吸入剤も提供する。
【0013】
本発明の第2の態様として、直径が約10μmよりも小さい粒子状の吸入剤が提供される。粒子の直径は約0.5μm〜10μmの間であっても良い。直径が約10μmよりも小さい、または、直径が約0.5μm〜約10μmの間の粒子状の吸入剤の割合は、重量を基準に約50よりも大きくても良く、約80%よりも大きくても良い。粒子状の吸入剤の粒径分布は狭くても良い。平均粒径が約10%以内または約50%である粒子状の吸入剤の割合は、数または重さを基準にして約20%よりも大きくても良く、約50%よりも大きくても良い。粒子の大きさおよび/または形状は、患者の病気の治療にために吸入によって投与されるときに、粒子が患者によって前記容器の治療に対して適切な速度で吸収されるものであっても良い。粒子は、球状、細長い形状、針状、不規則な形状、またはその他の形状であっても良い。また、粒子は凝集体であっても良い。粒子は、本発明の第1の態様の方法によって調製されても良い。
【0014】
本発明の第3の態様として、粒子状の吸入剤を患者に提供する工程を含む、患者の病気を治療する方法であって、前記粒子は本発明の第1の態様によって調製される方法が提供される。また、本発明は粒子状の吸入剤を患者に提供する工程を含む患者の病気を治療する方法であって、前記吸入剤は本発明の第2の態様である方法を提供する。吸入剤は吸入器において提供されても良い。薬物を患者に提供する手順は、薬物の粒子を有する吸入器を患者に提供する工程を含んでいる。吸入剤は、病気の治療のために適したものまたは必要なものであっても良いし、そして、吸入による病気の治療のために適したものまたは必要なものであっても良い。病気としては、例えば、喘息、癌、肺感染症などの感染症、または、薬物の吸入によって治療可能なその他の病気であっても良い。
【0015】
本発明によれば、喘息、癌、および、感染症からなる群より選ばれる病気の治療のための吸入剤が提供される。吸入剤は、上述したような粒子の形状であっても良い。
【0016】
本発明の第4の態様として、粒子状の吸入剤を備える、患者の病気を治療するための吸入器であって、前記吸入剤は病気に対して適したものであるかまたは必要なものであり、前記粒径は10μmよりも小さいものである吸入器が提供される。粒子の直径は、約0.5μm〜10μmの間であっても良い。粒子は、本発明の第1の態様における製造方法によって調製されても良い。吸入剤は、本発明の第2の態様の吸入剤であっても良い。また、本発明は、患者の病気を治療するための第4の態様の吸入器の使用が提供される。その使用は、患者に吸入器を提供すること、および、患者に吸入器から吸入させることを含んでいる。なお、患者はヒトの患者であっても良い。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の好ましい形態が、添付の図面を参照する実施例を用いて記載されている。
【0018】
図1は、実施例に記載されている実験のフローチャートを示す図である。
【0019】
図2は、硫酸とサルブタモール塩基とを反応させて硫酸サルブタモールを製造するスキームである。
【0020】
図3は、実施例において形成された原物の沈殿物の写真である。
【0021】
図4は、2.5時間放置した後の図3の沈殿物の写真である。
【0022】
図5は、実施例に記載されているビーカーを用いた合成方法を示す概略図である。
【0023】
図6は、RPB(回転式の充填床反応器)の概略図である。
【0024】
図7は、MSLI(多段形液体インピンジャー:multi−stage liquid impinger)の概略図である。
【0025】
図8は、濃度と276nmにおける硫酸サルブタモール溶液の吸光度との関係を示すグラフである。
【0026】
図9は、実施例の実験における反応時間と容積中間粒径(volume medium particle size)との関係を示すグラフである。
【0027】
図10は、実施例の実験における異なる濃度のサルブタモールを用いたときの、硫酸濃度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【0028】
図11は、実施例の実験における反応温度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【0029】
図12は、実施例の実験における攪拌速度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【0030】
図13は、硫酸サルブタモール懸濁液の試料を示す概略図である。
【0031】
図14は、実施例の実験における異なる攪拌速度での、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【0032】
図15は、実施例の実験における異なる硫酸濃度を用いたときの、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【0033】
図16は、実施例において用いられる小型の攪拌器のヘッドの写真である。
【0034】
図17は、実施例において用いられるより大型の攪拌器のヘッドの写真である。
【0035】
図18は、マルバーン粒径装置を用いて測定された、様々な反応時間において沈殿した硫酸サルブタモールの容積中間粒径分布を示すグラフである。
【0036】
図19は、マルバーン粒径装置を用いて測定された、硫酸サルブタモールの容積中間粒径と反応時間との関係を示すグラフである。
【0037】
図20は、実施例の実験における排出口温度とFPF(総計)およびFPF(放出)との関係を説明するグラフである(FPFは、微細粒子画分を意味する)。
【0038】
図21は、市販品の産硫酸サルブタモールの結果を説明する棒グラフである。
【0039】
図22は、異なる硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末を用いた分散の結果を説明する棒グラフである。
【0040】
図23は、保管時間に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【0041】
図24は、異なる吸入装置に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【0042】
図25は、分散結果に対するラクトース混合の効果を説明する棒グラフである。
【0043】
図26は、異なる反応温度から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【0044】
図27は、異なる反応時間から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【0045】
図28は、異なる吸入装置の分散結果に対する効果を説明する棒グラフである。
【0046】
図29は、実施例における9月7日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0047】
図30は、実施例における9月7日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0048】
図31は、実施例における9月8日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0049】
図32は、実施例における9月8日の試料を20.0kV、32,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0050】
図33は、実施例における9月13日の試料を5kV、30,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0051】
図34は、実施例における9月13日の試料を5kV、50,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0052】
図35は、実施例における9月30日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0053】
図36は、実施例における9月30日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【0054】
図37は、非溶媒法を用いて噴霧乾燥した後の硫酸サルブタモール乾燥粉末の異なる形状を示す電子顕微鏡写真である。(A)はルーズ粉末を示し、(B)は球状粉末を示す。
【0055】
図38は、非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(11月23日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【0056】
図39は、非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(12月13日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【0057】
図40は、実施例に記載されている2つの硫酸サルブタモール乾燥粉末の分散結果を説明する棒グラフである。
【0058】
図41は、実施例に記載されている2種類の硫酸サルブタモール乾燥粉末の粒径分布を説明するグラフである。
【0059】
図42は、実施例に記載されている9月13日の試料における電子顕微鏡写真である。
【0060】
図43は、実施例に記載されている10月29日の試料における電子顕微鏡写真である。
【0061】
〔好ましい実施の形態の詳細な説明〕
粒径が適切に制御される粒子を製造するための便利な製造方法が、WO02/089970に記載されており、その内容は相互参照することによって本明細書に組み込まれる。また、WO02/089970には、本発明の製造方法を実施するための適切なせん断装置が記載されている。せん断装置は回転式の充填床反応器(RPB)であっても良い。
【0062】
粒子状の物質をその粒径を適切に制御して製造するための1つの製造方法は、溶媒に溶解した物質の溶液(第1液体)と該物質のための非溶媒(または貧溶媒)(第2液体)とを高せん断領域において混合する混合工程を含んでおり、これによって、物質の粒子状化が引き起こされる。
【0063】
物質である粒子をその粒径を適切に制御して製造するための1つの製造方法は、粒子状の物質を形成するために、溶媒に物質が溶解した溶液(第1液体)と該物質のための非溶媒(または貧溶媒)(第2液体)とを高せん断領域において混合する工程を含んでいる。この一般的な製造方法は、本発明において粒子状の吸入剤を製造するために用いられても良い。もう1つの方法として、第1液体および第2液体の内の一方に薬物の前躯体が含まれていても良く、前記第1液体および第2液体のもう一方に高せん断条件下において前躯体と反応して薬物の粒子を形成する試薬が含まれていても良い。本発明において、溶媒は、水性であっても非水性であっても良く、水、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノールもしくはその他の溶媒またはいくつかの溶媒の混合物を含んでいても良い。非溶媒は溶媒と混和しうるものであっても良い。非溶媒は、高せん断条件下において第1液体と混合された場合に、粒子状の物質が形成される(すなわち、粒子が形成される)所望の非溶媒であり、溶媒および物質の性質に応じて、水、エタノール、アセトン、イソプロパノールもしくはその他の液体または液体の混合物を含んでいても良い。混合工程は、第1液体および第2液体を混合区域に注入する工程を含んでいても良く、該混合区域は、第1液体および第2液体を高せん断するせん断装置を備えている。第1液体および第2液体は、該せん断装置上の混合区域に直接注入されても良い。せん断装置は、第1液体および第2液体に高せん断を与えるために混合区域において、約100rpm〜15000rpmの間、約1000rpm〜約10000rpmの間、約1000rpm〜5000rpmの間、1000rpm〜2000rpmの間、2000rpm〜10000rpmの間、5000rpm〜10000rpmの間、または、2000rpm〜5000rpmの間で回転しても良いし、あるいは、約100rpm、200rpm、300rpm、400rpm、500rpm、1000rpm、1500rpm、2000rpm、2500rpm、3000rpm、3500rpm、4000rpm、4500rpm、5000rpm、5500rpm、6000rpm、6500rpm、7000rpm、7500rpm、8000rpm、8500rpm、9000rpm、9500rpm、10000rpm、11000rpm、12000rpm、13000rpm、14000rpm、または、15000rpmで回転しても良いし、あるいは、15000rpmよりも速く回転しても良い。せん断速度は、第1液体および第2液体の比に依存しても良い。第1液体は第2液体と混和しうるものであっても良い。第1液体の第2液体に対する比は、約1:200〜200:1の間、約1:200〜1:1の間、1:1〜200:1の間、1:100〜100:1の間、1:20〜20:1の間、1:20〜10:1の間、1:20〜10:1の間、1:20〜5:1の間、1:20〜2:1の間、1:20〜1:1の間、1:20〜1:5の間、1:20〜1:10の間、1:10〜20:1の間、1:1〜20:1の間、1:2〜20:1の間、1:1〜20:1の間、2:1〜20:1の間、5:1〜20:1の間、10:1〜20:1の間、1:10〜10:1の間、1:5〜5:1の間、1:3〜3:1の間、1:2〜2:1の間、2:3〜3:2の間、1:10〜1:1の間、1:1〜10:1の間、または、1:2〜2:1の間であっても良いし、あるいは、約1:20、1:15、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、2:3、1:1、3:2、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、または、20:1であっても良いし、あるいは、その他の比であっても良い。
【0064】
粒子が溶媒/非溶媒沈殿によって形成される場合(すなわち、第1液体および第2液体の内の一方に薬物が含まれる場合)、そのとき第1液体および第2液体の比ならびに/またはそれらのどちらかに含まれている薬物の濃度は、第1液体および第2液体の組合せが、粒子が形成される薬物に対して十分な貧溶媒になるようなものであっても良い。粒子が化学反応によって形成される場合(すなわち、第1液体および第2液体の内の一方に薬物の前躯体が含まれ、もう一方に試薬が含まれる場合)、そのとき第1液体および第2液体の比ならびに前躯体の濃度および試薬の濃度は、前躯体が完全にまたは略完全に反応して薬物の粒子が形成されるようなものであっても良い。一般的に、薬物は試薬と比べて比較的高価である。このため、前躯体に対して過剰モルの試薬を用いることが有利である。過剰モルとしては、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%であっても良いし、あるいは、100%よりも大きくても良い。本明細書において、モル当量は、試薬および前躯体のどちらか一方に反応することができない余分なものが存在しない試薬と前躯体との比のことをいう。それ故、例えば、前躯体がジアミンであり試薬が単官能基の酸である場合、モル当量はジアミン1モルに対して2モルの試薬を必要とする。
【0065】
薬物は、第1液体および第2液体が混合される比におけるそれらの組合せにおいて不溶性のものであっても良いし、または、やや溶けにくいものであっても良い。
【0066】
せん断装置は、実質的に円筒形であっても良いし、または、その他の形状(例えば、円錐状、双円錐状、楕円形状、もしくは、卵形状)であっても良い。せん断装置は、少なくとも1つのメッシュ層を備えていても良く、また、複数の重複するメッシュ層を備えていても良い。メッシュ層は、約2層〜1000層の間、約2層〜500層の間、2層〜100層の間、2層〜50層の間、2層〜10層の間、5層〜1000層の間、10層〜1000層の間、50層〜1000層の間、100層〜1000層の間、500層〜1000層の間、5層〜500層の間、10層〜100層の間、10層〜50層の間、5層〜50層の間、50層〜500層の間、もしくは、50層〜100層の間であっても良いし、または、約2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層、15層、20層、25層、30層、35層、40層、45層、50層、60層、70層、80層、90層、100層、150層、200層、250層、300層、350層、400層、450層、500層、600層、700層、800層、900層、もしくは、1000層であっても良い。メッシュの網目の大きさは、約0.05mm〜約3mm、約0.1mm〜0.5mm、または、約0.5mm〜3.0mmであっても良いし、あるいは、約0.5mmもしくは2.0mm、0.5mmおよび1.0mm、1.0mmおよび3.0mm、2.0mmおよび3.0mm、または、1.0mmおよび2.0mmであっても良いし、あるいは、約0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、または3.0mmであっても良い。また、メッシュの間隙率は、約75%よりも大きくても良いし、または、約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%よりも大きくても良いし、または、約75、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であっても良い。
【0067】
高せん断区域における組み合わされた液体の製造方法は、せん断手段を備える混合区域に液体を中注することによって達成される。注入は、約1m/sよりも速い高注入速度で注入されることが好ましく、3m/sよりも速い高注入速度で注入されることがより好ましく、5m/sよりも速い高注入速度で注入されることが最も好ましい。高せん断は、液体のせん断を誘導する混合区域においてせん断手段を急速回転することにより行われることが好ましい。せん断は、分子混合ユニットを用いて行われ、該分子混合ユニットは(a)混合区域を規定する外部本体、(b)該混合区域においてせん断を行うためのせん断手段、(c)第1液体のための少なくとも1つの流体注入口手段、(d)第2液体のための少なくとも1つの流体注入口手段、および、(e)流体排出口手段を備えている。そのような分子混合ユニットを用いることにより、分子混合ユニットが第2液体(例えばコアセルベーション剤)を第1液体(例えば薬物を含有している第1液体)に添加する手順を制御することによって、核生成および粒子成長を制御するときに、沈殿手順が制御されても良い。粒径は、(i)混合区域においてせん断手段の回転速度を調節することによって、(ii)せん断手段の異なる構造的特徴によって、ならびに、(iii)異なる注入比率で混合区域に第1液体および第2液体のシェア(shear)を注入することによって、μmまたはnmの範囲のどちらか一方に制御されることができる。分子混合ユニットの外部本体は、多くの材料から作製されている。適切な材料は、ステンレス鋼である。外部本体は混合区域を規定するように設計されている。混合区域は、理論上多くの寸法のいずれかであっても良いし、選択される大きさは実行される処理速度、および、処理される材料の量に依存する。混合区域には、該混合区域内に位置し該混合区域内に注入された液体に高せん断を与えるせん断手段が設けられている。原理上、せん断手段は流体に高せん断を与える所望の装置であっても良い。
【0068】
本発明の製造方法の1実施形態において、せん断手段は混合区域において回転しており、第1液体および第2液体が回転しているせん断手段に直接注入される。液体は、別々の注入口より同時に注入されても良いし、複数の注入口を介してそれぞれ注入されても良い。注入口は混合区域の外側の一方の周りに位置していても良いし、または、液体を混合区域の中央に送達するように位置していても良い。液体は、回転しているせん断手段に取り囲まれる混合領域の中央に位置する分配器を通して注入されても良い。
【0069】
本発明の製造方法は、混合区域において2つの液体に高せん断を与えるためのせん断手段の使用を含んでいる。このことは、2つの液体が十分に混合されて所望の大きさの沈殿の形成を誘導する密接な混合物(intimate mixture)を形成するという利点がある。せん断手段は好ましくは充填剤(packing)を備えており、充填剤の表面積は約200m2/m3〜3000m2/m3、約200m2/m3〜1000m2/m3、200m2/m3〜500m2/m3、500m2/m3〜300m2/m3、1000m2/m3〜3000m2/m3、500m2/m3〜2000m2/m3、もしくは、500m2/m3〜1000m2/m3であり、または、約200m2/m3、300m2/m3、400m2/m3、500m2/m3、600m2/m3、700m2/m3、800m2/m3、900m2/m3、10000m2/m3、1500m2/m3、2000m2/m3、2500m2/m3、もしくは、3000m2/m3である。充填剤は構造をもつ充填剤であっても良いし、不揃いな充填剤であっても良い。用いられても良い充填剤は、ワイヤーメッシュ型充填剤であって、該ワイヤーメッシュ型充填剤はステンレス鋼、プレイン合金(plain metal alloy)、チタン金属、もしくは、プラスチック、または、その他の適切な材料から作製される。せん断手段は、円筒形状のせん断手段を形成するための回転メッシュによって形成されていても良く、円筒形状のセクションの側面は、複数の重複するメッシュ層から形成されている。もしもそれが用いられる場合には、メッシュの網目の大きさは、約0.05mm〜約3mmであっても良く、約0.1mm〜0.5mmであることがより好ましい。また、メッシュの好ましい間隙率は、少なくとも約75%、もしくは、少なくとも約90%であり、95%よりも大きいことが好ましい。せん断手段は、混合区域のシャフトに取り付けられていても良く、該混合区域において回転しても良い。また、せん断手段は円筒形状であっても良く、液体のための注入口に対応する窪みを規定しても良い。しかしながら、2つの液体が組合される容器の形状は、液体にせん断を与えるために用いられもすると理解される。せん断手段は、高せん断を液体に混合区域において与えるような十分な速度で混合区域において回転することが好ましい。回転速度は、一般的には100rpm〜1500rpmであり、好ましくは500rpm〜12000rpmであり、さらに最も好ましくは5000rpm〜8000rpmである。そのようなせん断手段の強い回転を用いることによって、混合区域における2つの液体が注入中すぐに強くせん断されることができる。本発明の製造方法では、液体は、液体分配器によって混合領域に注入されることが好ましい。液体分配器は、回転するせん断手段によって規定される窪みにある混合領域の中央に位置する。各液体は、複数の注入口を介して注入されることが好ましい。
【0070】
一旦、液体が混合されれば、混合物から生産される粒子が混合区域から排出され、粒子が単離される。もし本発明の製造方法が、好ましい連続工程として実施される場合、処理される液体は混合区域から絶えず回収され、固体が単離される。粒子は、ろ過、遠心、または液体から固体を単離するその他の所望の方法によって単離される。
【0071】
理論に拘束されることを望まない一方で、ユニットにおける高せん断装置を使用することにより、溶液は、2つの液体の分離した粒子にばらばらに粉砕される。これにより、2うの液体の間に表面積の大きい接触が誘導され、速い沈殿と所望の粒子の形成とが誘導される。それは、2つの液体が別々の流体注入口を介して混合区域に注入される場合に特に効果的であることが分かる。したがって、好ましい分子混合装置は、各第1液体および第2液体の流体が流入するための少なくとも1つの流体注入口をそれぞれ備えている。好ましくは、各液体に対して複数の注入口が存在する。これらの液体注入口は、混合器の構造設計に応じて多くの通路が配置されている。液体注入口は、前記せん断手段によって規定される窪みに好ましくは位置する分配器に位置していても良い。分配器は、各第1液体および第2液体のための複数の注入口を規定しても良い。1つの実施の形態において、液体注入口は、分配器において交替する(alternate)。さらに、回文式または連続式のどちらか一方の様式で、分子混合装置から排水するための液体排出手段が少なくとも1つ存在するべきである。
【0072】
せん断装置は、特定の雰囲気(例えば、無酸素雰囲気、低酸素雰囲気、または不活性雰囲気)において本発明の製造方法が実施されるための気体注入口と気体排出口とを備えていても良い。したがって、本発明の製造方法は、第1液体および第2液体を組合わせる手順の間および/またはその前に、高せん断領域を通して、気体(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、2酸化炭素、またはその他の適切な気体)を通過させる工程を含んでいても良い。
【0073】
第1液体および第2液体は、複数の注入口を通して混合区域に注入されても良い。各注入口の直径は独立に、約0.5mm〜10mmの間であっても良く、あるいは、約0.5mm〜5mm、0.5mm〜2mm、1mm〜10mm、1mm〜5mm、2mm〜5mm、5mm〜10mm、または、1mm〜3mmであっても良いし、あるいは、約0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmであっても良い。第1液体用の各注入口は、第2液体用の注入口から15弧度以下の混合領域内に位置していても良いし、あるいは、第2液体用の注入口から約15弧度、14弧度、13弧度、12弧度、11弧度、10弧度、9弧度、8弧度、7弧度、6弧度、または、5弧度よりも小さくても良いし、あるいは、第2液体用の注入口から約3弧度、4弧度、5弧度、6弧度、7弧度、8弧度、9弧度、10弧度、11弧度、12弧度、13弧度、14弧度、または、15弧度であっても良い。第1液体および第2液体の注入速度は、約1m/sよりも速くても良いし、あるいは、約2m/s、3m/s、4m/s、5m/s、6m/s、7m/s、8m/s、9m/s、10m/s、15m/s、20m/s、25m/s、30m/s、35m/s、40m/s、45m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、または、120m/sであっても良いし、あるいは、約1m/s〜120m/sの間、1m/s〜100m/sの間、1m/s〜50m/sの間、1m/s〜20m/sの間、5m/s〜120m/sの間、10m/s〜120m/sの間、50m/s〜120m/sの間、50m/s〜100m/sの間、5m/s〜50m/sの間、5m/s〜20m/sの間、10m/s〜50m/sの間、1m/s〜10m/sの間、1m/s〜5m/sの間、1m/s〜2m/sの間、2m/s〜10m/sの間、5m/s〜10m/sの間、2m/s〜5m/sの間であっても良いし、あるいは、約1m/s、1.5m/s、2m/s、2.5m/s、3m/s、3.5m/s、4m/s、4.5m/s、5m/s、6m/s、7m/s、8m/s、9m/s、10m/s、15m/s、20m/s、25m/s、30m/s、35m/s、40m/s、45m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、または、120m/sであっても良い。注入流速は、約0.5L/分〜10L/分の間であっても良いし、あるいは、約0.5L/分〜5L/分の間、0.5L/分〜2L/分の間、1L/分〜10L/分の間、1L/分〜5L/分の間、2L/分〜5L/分の間、5L/分〜10L/分、または、1L/分〜3L/分の間であっても良いし、あるいは、約0.5L/分、1L/分、1.5L/分、2L/分、2.5L/分、3L/分、3.5L/分、4L/分、4.5L/分、5L/分、6L/分、7L/分、8L/分、9L/分、または10L/分であっても良い。
【0074】
本発明の製造方法は、薬物の粒子を単離する手順を含んでいても良い。単離する手順は、ろ過、精密ろ過、限外ろ過、遠心、超遠心、沈殿、またはこれらの組合わせを備えていても良いし、分離するためのその他の方法を備えていても良い。単離する手順の後に、粒子は乾燥される。乾燥方法としては、例えば真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、または、粒子上をもしくは粒子を通して気流(一般的には乾燥した気流)を通過させる方法が挙げられる。気体は、例えば、空気、窒素、2酸化炭素、アルゴンまたは、その他の気体、あるいは、気体の混合物が挙げられる。
【0075】
本発明のための適切な薬物は、吸入剤を含んでいる。それらは、喘息、癌、肺感染症などの感染症、または、その他の病気を治療するために適切なものであるか、あるいは、必要なものであっても良い。適切な薬物は、薬物の前躯体に試薬を反応させることによって得られるものであっても良い。前躯体および試薬は、それらが一緒に反応して薬物が作製されるものであっても良い。それらは、高せん断領域に関する条件下、例えば、高せん断領域における温度および圧力の条件下において、一緒に反応して薬物が作製されるものであっても良い。
【0076】
前躯体または薬物あるいはそれらの両方は、溶解していても良い。前躯体の試薬に対する割合は、約5:1以上〜1:5以下の間であっても良く、あるいは、モルを基準にして約3:1〜1:3の間であっても良いし、あるいは、モルを基準にして約3:1〜1:1の間、1:1〜1:3の間、または、2:1〜1:2の間であっても良いし、あるいは、モルを基準にして約3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、または、1:3であっても良いし、あるいは、その他の割合であっても良い。割合は、前躯体を薬物に完全に返還することを促進するまたは確実にするような値であっても良い。前躯体または薬物あるいはそれらの両方が溶解している場合、溶液の濃度は独立に、溶媒中の溶質(すなわち、前躯体または薬物)の溶解度に応じて、w/wもしくはw/vを基準に約0.1%〜50%の間であっても良いし、あるいは、約0.1%〜25%の間、0.1%〜10%の間、0.1%〜5%の間、0.1%〜1%の間、0.1%〜0.5%の間、1%〜50%の間、5%〜50%の間、10%〜50%の間、1%〜25%の間、または、1%〜10%の間であっても良いし、w/wもしくはw/vを基準に約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%であっても良いし、その他の濃度であっても良い。前躯体または前躯体の溶液は、前躯体または前躯体の溶液と混和するものであっても良い。溶媒は、水溶性であっても良いし、非水溶性であっても良い。また前躯体用の溶媒は、試薬用の溶媒と同じであっても良いし、異なっていても良い。前躯体用の溶媒および試薬用の溶媒は、独立に、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトンまたはその他の溶媒を含んでいても良いし、溶媒の混合物を含んでいても良い。
【0077】
薬物は塩であっても良いし、前躯体は薬物の遊離塩であっても良いし、試薬は酸であっても良い。試薬のpKaおよび前躯体のpKaは、それらが、反応して薬物を精製するようなものであっても良い。それ故、好都合な前躯体はアミン官能基前躯体であり、この場合薬物はアンモニウム塩である。適切な薬物は、サルブタモール、アミノフィリン、テオフィリン、オルシプレナリン、テルブタリン、サルメトロール(salmetrol)、ホルモトロール、ベクロメタゾン、ブタザミド、マンニトール、シクロスポリン、または、トブラマイシンの塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩、またはその他の塩)であっても良い。薬物は吸入可能なステロイド、吸入可能なシクロスポリン、吸入可能な抗喘息剤、吸入可能な気管支拡張薬、吸入可能な抗生物質、吸入可能なβ‐アゴニスト、またはその他の吸入剤であっても良い。
【0078】
他の実施の形態として、前躯体は薬物の塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩、またはその他の塩)であっても良く、試薬は塩基(例えば、水酸化物、アミン、アンモニア)であっても良く、これにより、薬物は前躯体の遊離塩となる。この場合、薬物は、アミン官能基薬物などの塩基性薬物であっても良い。試薬は、薬物よりも強い塩基であっても良い。
【0079】
もう1つ別の実施の形態として、薬物は、例えばカルボキシ官能基薬物などの酸性薬物であっても良い。この場合、前躯体は薬物の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、またはトリアルキルアンモニウム塩)であっても良く、試薬は、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸、またはトリフルオロ酢酸などの有機酸)であっても良い。
【0080】
もう1つ別の実施の形態として、薬物は酸性前躯体の塩であっても良く、試薬は塩基であっても良い。
【0081】
全ての場合において、試薬のpKaおよび前躯体のpKaは、試薬および前躯体の反応によって薬物が生産されるようなものであるべきである。
【0082】
本発明は、約10μm、約9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、または、1μmよりも小さい直径(例えば平均粒径)を有する粒子状の吸入剤を提供する。約10μmよりも大きい粒子は、吸入されたときに一般的に口または喉において捕捉され、それ故、肺まで効果的に送達されない。約0.5μmよりも小さい粒子は、肺への沈着が弱く、そのため、効果的に患者に吸収されない。本発明によれば粒子の粒径は、約0.5μm〜約10μmの間であっても良いし、約0.5μm〜5μmの間、0.5μm〜1μmの間、1μm〜10μmの間、5μm〜10μmの間、または1μm〜5μmの間であっても良いし、約0.5μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、または、10μmであっても良い。直径が10μmよりも小さい(または、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、もしくは、1μmよりも小さい)、または、直径が0.5〜10μmである吸入剤の粒子の割合は、重量を基準に約50%よりも大きくても良いし、あるいは、約60%、70%、80%、90%、または95%よりも大きくても良いし、あるいは、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%であっても良い。吸入剤の粒子の粒径分布は、狭くても良い。平均粒径の10%以内(または15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または、50%)である粒径を有する吸入剤の粒子の割合は重量を基準に約20%よりも大きくても良いし、あるいは、数もしくは重量を基準に約20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または、99%であっても良い。粒子は、所望の適切な形状であっても良い。例えば、粒子は、球状、楕円形状、環状体(toroid)、卵形、変形型卵形、錘状、円錐台状、ドーム状、半球体状、円筒形状、先端が球状の円筒形状、カプセル形状、カプレット形状、フルストコニカル形状(frustconical shape)、円盤状(disc)、円板状(discoid)、平板状、角柱状、針状、および、(規則的なまたは不規則的な)多面体からなる群より選ばれる形状であっても良いし、その他の形状(例えば不規則な形状)であっても良い。前記多面体としては、6面体、直方柱、直方体、三角柱、6角柱、菱形、もしくは、4面〜60面以上の多面体などが挙げられる。粒子は、凝集体であっても良いし、さらに、その他の形状を有する粒子もしくは様々な異なる形状を有する粒子の前記形状のいずれかを有する粒子の凝集体であっても良い。
【0083】
本発明の薬物は、患者の病気を治療するために経口で送達されても良い。薬物は、例えば吸入器を用いて経口で送達されても良い。また薬物は、乾燥粉末として送達されても良く、液体の担体を用いることなく送達されても良い。
【0084】
〔実施例〕
〈試験物質〉
<反応方法>
溶質:サルブタモール塩基(ナノマテリアルズ テクノロジー Pte.Ltd.(NanoMaterials Technology Pte.Ltd.)、シンガポール)
溶媒:イソプロピルアルコール(IPA、AR、バイオラボ(BIOLAB)、オーストラリア)
反応物質:硫酸(AR、フォーン ポウレンク(Phone Poulenc)、オーストラリア)
脱イオン水
<非溶媒法>
溶質:硫酸サルブタモール(インターケミカル Ltd.(Inter−Chemical Ltd.)、中国)
溶媒:脱イオン水
非溶媒:IPA(AR、バイオラボ(BIOLAB)、オーストラリア)
アセトン(AR、バイオラボ(BIOLAB)、オーストラリア)
〈器具〉
ビーカー(50ml、250ml、500ml、1000ml)
ピペット(5000μl、エッペンドルフ、ドイツ)
シリンジ(テルモ、アメリカ)
電熱板電磁攪拌器(IEC、オーストラリア)
高せん断混合器(シルバーソン(Silverson)、イギリス)
超音波洗浄機(ユニソニックス(Unisonics)、オーストラリア)
レーザー回折(マルバーン マスタシザー(Malvern Mastersizer)、マルバーン インストルメント(Malvern Instrument)、イギリス)
回転式の充填床反応器(工業化学北京大学(Bejing University of Chemical Technology)、中国)
ブチミニ噴霧乾燥器B−191(ブチラボラトリー‐テクニックス(Buechi laboratory−techniques)、スイス)
蠕動ポンプ(マスターフレックスC/L、エクステック イクイップメント(Masterflex C/L, Extech equipment)、ビクトリア(Victoria))
顕微鏡(プリンパスCH40(Plympus CH40)、日本)
走査電子顕微鏡(SEM)
多段形液体インピンジャー(MSLI、コプレイ サイエンティフィック(Copley Scientific)、ノッティンガム、イギリス)
オシロスコープ(アギレント(Agilent)54621A)
オリオン乾燥ポンプ(オリオン機械、日本)
A/Eガラスろ紙(76mm、PALL ゲルマン サイエンス(German Sciences)、アメリカ)
H3CR−A8タイマー(オムロン、日本)
流量計(TSI4000シリーズ、アメリカ)
遠心機(ミニスピン、エッペンドルフ、ドイツ)
紫外および可視吸収スペクトロフォトメーター(UV、日立U−2000、日本)
混合機(ターブラ(Turbula)、スイス)
秤(メットラー トレド AG245(Mettler Toledo AG245)、オーストラリア)
〈流出実験〉
実験は、6手順の操作を含むように企画されている(図1)。
【0085】
[沈殿]
<反応方法>
硫酸サルブタモールを合成する経路はいくつかあるが、最終手順は全て同じであり、サルブタモール塩基が、硫酸と反応して硫酸サルブタモールが生成する(図2)。
【0086】
<非溶媒法>
非溶媒再結晶法は、ナノ材料を生成するために用いられる一般的な物理的方法である。本方法では、溶質がわずかに溶解する非溶媒(貧溶媒)を添加してシステムの飽和率を変化させることにより、溶質を溶媒から析出させる。一般的に、非溶媒における溶質の溶解度が低いほど、溶質は析出は早くなる。しかしながら、結晶の成長速度があまりにも速い場合は、粒径が大きくなると考えられる。それ故、微細粒子を得るためには、適切な非溶媒を選択することが非常に重要である。
【0087】
[溶媒および非溶媒の選択]
<反応方法における溶媒の選択>
本実験の目的は、微細な硫酸サルブタモール沈殿を含む懸濁液を得ることである。それ故、サルブタモール塩基が溶解し、硫酸サルブタモールが微かに溶解する溶媒が、反応のための適切な溶媒である。イギリスの薬局方に記載されているように、サルブタモール塩基は、水にやや溶けにくく、アルコールに溶解し、エーテルに微かに溶解する。硫酸サルブタモールは、水に溶け易く、アルコールおよびエーテルに微かに溶け、塩化メチレンに非常に微かに溶ける。それ故、用いられる溶媒の安全性を考えた場合、アルコール(エタノール)を選択することが最良であると考えられる。固体の溶解度は、式1にしたがって固体の粒径の関数で表される。
【0088】
【数1】
【0089】
式中、Rは気体定数であり、Tは絶対温度であり、SおよびSrは、それぞれ大きい固体粒子の溶解度および小さい半径(r)を有する粒子の溶解度であり、M、σおよびdは、それぞれ分子量、表面張力、および固体密度を表す。式1より、粒子径が減少すれば、固体の溶解度は増加することが分かる。それ故、アルコールにおける(本発明の製造方法によって製造される)微細な硫酸サルブタモール生成物の溶解度は、より大きな粒径である市販品と比較して幾分か大きくなっていると考えられる。このため、本発明の製造方法における収率を考えたときに、アルコールは適切な溶媒ではないといえる。したがって、製造方法における溶媒として、アルコールの代わりにイソプロピルアルコール(IPA)が選択される。IPAにおける硫酸サルブタモールの溶解度は、アルコールよりも低く、サルブタモール塩基の溶解度はIPAとアルコールとにおいて同様である。さらに、IPAは一般的に用いられる有機溶媒である。
【0090】
<非溶媒法における非溶媒の選択>
約1gの硫酸サルブタモール(市販品)を4mlの水に溶解して、硫酸サルブタモールがほぼ飽和した飽和水溶液を作製した。IPAとアセトンとを次の比で混合した。100:0、80:20、60:40、40:60、20:80、および、0:100。各有機溶媒の混合物の1mlを非溶媒として別々の2mlのガラス瓶に設置した。その後、0.01mlの硫酸サルブタモール溶液を非溶媒を含む各ガラス瓶に、できるだけ素早く加えた。そして、ガラス瓶を覆って、手を使ってできるだけ激しく振盪した。溶液の非溶媒に対する比は、1:100(0.01ml:1ml)である。溶液を加えると白色沈殿が生じ始め、時間が経つにつれて白色沈殿の量は増加した。その後、ガラス瓶を放置し、IPAのアセトンに対する最良の容積比を決定するために各ガラス瓶における沈殿を観察した。
【0091】
沈殿速度に基づけば、80:20、60:40、および、0:100というIPAのアセトンに対する比は、同様であると考えられ、さらに、他の3つよりも良いと考えられる。これら3つの試料から生じた沈殿を顕微鏡を用いて調べると、80:20の試料における粒径が最も小さく、最も分散された粒子であると考えられる。よって、IPA:アセトン=80:20という溶媒混合物を非溶媒として選択されることが決定した。
【0092】
[ビーカーを用いた合成]
約70°でIPAにサルブタモール塩基を溶解し、室温(約21℃)まで溶液を冷却することにより、10mg/mlの溶液を調製した。20mlのこの溶液を50mlのビーカーに設置した。沈殿を形成させるために、3000rpmに設定された頭上式攪拌機を用いて2分を超えて溶液を攪拌している間に、エッペンドルフピペットチップを用いて溶液に0.2mlの2mol/L硫酸(サルブタモール塩基と硫酸との反応を完全に達成するために計算された)を加えた(図5)。図5において、器具2は、シャフト6によって回転翼5を備え、250mlビーカー7に浸されている頭上式攪拌機4を具備している。ビーカー7にある溶液8は、IPAに溶解しているサルブタモール塩基の溶液である。硫酸は、エッペンドルフピペット9を用いて添加されても良い。
【0093】
[RPB(回転式の充填床反応器)による合成を用いた製造方法]
図6によれば、RPB100は、動かない骨組み(stationary shell)12の内部に取り付けられ1分間に数百〜千回転数の速度で回転する、ひとまとまりの回転装置10を備えている。液体は液体注入口14から回転装置10のアイスペース(eye space)に導入され、組み込まれた液体分配器16を通して回転装置10の刃(edge)の内側に噴霧される。基板(bed)における液体は、遠心力下で刃の内側から刃の外側まで半径方向に流れ、最終的に液体排出口18を介してRPBから離れて収集される。気体は、気体注入口20を通して導入され、回転装置10のパッキング22における液体と反対方向に中心に向かって流れ、最終的に気体排出口24から流れ出る。シャフト26は、図示しないモーターから回転エネルギーを与えるために回転装置10に連結している。充填剤28は基板から液体が漏れることを防ぐために備えられている。ウォータージャケット32を用いて反応炉100を冷却する、または、加熱するために水注入口30を通して水が必要に応じて注入される。また、水は、水排出口34を通してジャケット32から排出される。
【0094】
RPBの基本原理は、遠心力の作用を介する高重力環境を作製することであり、これにより、質量移動およびマイクロ混合が増強される。パッキングを通過する液体は、RPBにおける高重力環境下においてマイクロ小滴状、ナノ小滴状、糸状、または、薄いフィルム状に広がるか、あるいは、分裂する。なお、RPBにおける高重力環境下は、地球の重力加速度よりも数百〜数千倍大きいものであっても良い。それ故、気体と液体との間または液体とRPBにおける液体との間の質量移動の速度は、従来の充填床反応器よりも1〜3倍速く、必要とされる反応時間が劇的に短縮される。
【0095】
[RPBの操作の態様]
手順1:全ての電源を入れる。
【0096】
手順2:システム全体が汚れていないことを確認した後、100mlのサルブタモール塩基/IPA溶液をRPBに上端注入口を介して加える。その後、ゴム栓をきつく差し込む。必要に応じて、冷却/加熱システムの電源を入れる。
【0097】
手順3:RPBを通してRPBの後ろから排出されるものを再利用するために、蠕動ポンプに適合する再利用チューブを接続する。なお、本実施例に用いられているRPBは、サルブタモール塩基/IPA溶液を供給するための注入口と、酸を注入するための注入ポートとを備えている。再利用チューブが連結される再利用ポートが存在し、RPBから排出されるものを再利用することができる。
【0098】
手順4:蠕動ポンプを2000ml/分の速度で作動させ、RPBを約3000rpmの最大速度で作動させる。
【0099】
手順5:RPBが設定された速度に達した後に、シリンジポンプまたはシリンジを用いてRPBに硫酸を供給する。酸の容積は一般的に非常に小さいので、それは大抵すぐに、すなわち数秒間で添加される。
【0100】
手順6:液体は、必要な時間の間反応炉を通して再利用される。反応時間が経過した後、RPBの電源を切り、そしてポンプの電源を切る。その後、懸濁液を適切な大きさの容器(例えば250mlビーカー)に回収する。このことは、排出口チューブの連結を解除して、重力によってRPBから懸濁液が流れ出ることによって達成される。
【0101】
[粒径の測定]
沈殿のすぐ後に得られた試料の容積中間粒径D(v、0.5)および粒径分布を、キャリブレーションと30分間の暖機運転とを行った2.4mmの活性ビーム長を用いるレーザー回折(マルバーン マスタシザー)によって測定した。また、以下の設定を行った:
設定範囲:300RF(0.05−900μm)
試料ユニット:MS17
計器ポート:2
分析モデル:多分散
データチャネル:低−0、高‐0
プレゼンテーション:3_SALB_3(η硫酸サルブタモール=1.5530、仮定屈折率(imagine refractive index)=0.1000、ηIPA=1.378)。
【0102】
沈殿としての粒径を測定するために、小容量の試料分散ユニットを70〜100mlのブランク溶液(イソプロピルアルコール(プロパン2オール)、IPA)で満たし、試料分散ユニットの制御装置を2000rpmで混合するように設定して、バックグラウンドを測定することによってキャリブレーションを初めに行った。その後、不明瞭(obscuration)が約10%〜30%の間にあるときに、懸濁液を分散ユニットに導入した。これにより、乾燥粒子の粒径を測定することができた。粒径分布は、引用される大きさが50%の完全容積分布である、容積(または質量)中間直径(volume (or mass) median diameter)(D(v,0.5))を用いて表される。分布の幅または範囲は、式2を用いて計算される。式2において、D(v、0.9)、およびD(v、0.1)は、それぞれ90%および10%の累積容積(cumulative volume)における直径である。
【0103】
【数2】
【0104】
[噴霧乾燥]
7mmのノズルを備えるブチミニ噴霧乾燥器B−191を、懸濁液から粉末を回収する方法として選択した。掃除フィルターバッグが組み立てられており、空気除湿機(コンプエアー(CompAir) SAM35)のスイッチが入っていることを確認した後、注入口の温度を150℃に前もって調節するために初めに加熱し、噴霧器を800L/時に設定し、少なくとも30分間吸引を行った。硫酸サルブタモール懸濁液を、5ml/分で作動している蠕動ポンプを用いてチュービングを介して、噴霧乾燥器の噴霧器のノズルに供給した。その後、懸濁液を霧状にし、IPAを蒸発させて乾燥した硫酸サルブタモール粒子を分離した。さらに、これらの粒子を、少量高効率のサイクロンおよび収集管(collection vessel)に真空ポンプを用いて収集した。噴霧乾燥機のノズルを、常に確認し、乾燥粉末による閉塞を防ぐために蒸留水を用いて掃除した。粉末を使用するまでシリカゲルが敷かれている乾燥器に保管し、保管している間に、粒子が凝集することおよび湿気の吸着を避けた。
【0105】
[走査電子顕微鏡(SEM)]
製造された粒子の形態を調べるために走査電子顕微鏡が用いられ、マルバーンの信頼性を確認する手段として物質の大きさを確かめた。試料を銅板に搭載し、分析する前にプラチナでコートした。
【0106】
[分散実験]
インビトロにおける粒径を測定することにより、空気力学的な粒径分布の簡単な評価を行うことができる。この処理には、異なるDaの粉末の分離と収集とを通して粒径分布の細分化を提供するための多段形液体インピンジャー(MSLI)(図7)のようなカスケードまたはインパクター装置が利用される。
【0107】
MSLIは、あるDaの粉末を収集するために60ml/分でキャリブレーションされた5つの段階を備えている。あるDaはカットオフDaとして知られ、
段階1では、13.0μm
段階2では、6.8μm
段階3では、3.1μm
段階4では、1.7μm
である。
【0108】
段階が高いほど、大きいDaが収集される。異なる流速(Q2)における各段階のキャリブレーションされたDa(D1)を転換するために、式3を用いて新しいカットオフ空気力学的直径D2を見つけた。
【0109】
【数3】
【0110】
60〜100L/分の流速において、5μmよりも小さいDaを有する粒子は、口腔咽頭の沈着および式3からMSLIのフィルターをしのぐと期待される。MSLIの結果から、FPF(微細粒子画分)が計算され、2つの異なる形式で表される。
【0111】
【数4】
【0112】
【数5】
【0113】
FPF総量値は、理論的に患者に吸引される粉末の総量に関して肺の沈着に最適な大きさである粉末量を表す。この値は、分散せずにカプセルおよび装置に残っている粉末が考慮されている。この値は、インビボの状況を最も実践的に予測する材料を表しており、それ故、2つの中でより引用される結果である。それにもかかわらず、FPF放出が、エアロゾル供給のもう1つの記述子として計算されている。また、FPF放出では、分散せずに残っている粉末は考慮されていない。
【0114】
回収率は、カプセルに搭載された質量と比較して説明される粉末の質量を表す各分散について計算される(式6)。
【0115】
【数6】
【0116】
<分散の態様>
分散実験を行うために用いられる装置は、前述したMSLIである。硫酸サルブタモールに関する操作の通常の態様を以下に記載する。
【0117】
手順1:秤を用いて10.00±0.50mgの硫酸サルブタモール粉末で満たされたカプセル(植物性カプセル)を精確に秤量した。
【0118】
手順2:5000μlのエッペンドルフピペットを用いて、既知の容積(20ml)の純水を各4つの段階に加えた。MSLIを振盪し各段階の底面、特に焼結ガラスはめ込み板(sintered glass impaction plate)を完全に濡らした。
【0119】
手順3:A/E型のガラスろ紙(76mm)を1枚、段階5に配置した。
【0120】
手順4:MSLIに、吸入流れを生成するオリオン乾燥ポンプおよび、空気が流れる時間を制御するH3CR−A8タイマーを取り付けた。
【0121】
手順5:気流パターンをオシロスコープを用いて確認し、オシロスコープのパターンにおいて、インピンガーを通して閉塞されて制限された流量(blockage restricting flow)を意味する、上向きのスパイクがないことを確かめた。
【0122】
手順6:気流速度を、空のカプセルおよびろ紙が内部に備えられたMSLIを含む吸入器を通して流量計を用いて60L/分に調節した。
【0123】
手順7:硫酸サルブタモールで満たされたカプセルの装填と分散とを、4秒間ごと行った。
【0124】
手順8:分散後、4つの段階を綿密に回転させて(swirled)、詰め込まれた粉末を底面、上面、および側壁から溶解した。
【0125】
手順9:通路、アダプターを備える装置、およびカプセルを20mlの純水を用いて個々に洗浄した。
【0126】
手順10:ろ紙を20mlの純水を用いて洗浄し、洗浄水を遠心機に設置して、20分間13.4×1000rpmにて回転する。その後、上清を収集した。
【0127】
手順11:全ての洗浄物を標識されたガラス瓶に別々に収集し、収集された濃度を過剰評価してしまう蒸発効果を最小にするために素早くUVによって分析した。
【0128】
<紫外および可視吸収スペクトロフォトメーター(UV)>
既知の濃度を有する水性の硫酸サルブタモール標準を調製し、各標準の276nmにおける吸収を純水を用いてバックグラウンドとして測定した。硫酸サルブタモール水溶液の標準のキャリブレーション曲線(図8)は、吸光度と濃度とのデータに基づいて作製された。
【0129】
[結果および考察]
反応方法における要因のどれが生成物の粒径に影響するのかを調査するために、いくつかの反応条件を変化させた。5つの要因を調査した。すなわち、(1)頭上式攪拌機の攪拌速度、(2)反応温度、(3)反応時間、(4)サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度、(5)硫酸濃度である。
【0130】
<反応時間の効果>
表1のように、本実験では、反応時間を変化させて、サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度、硫酸濃度、頭上式攪拌機の攪拌速度を一定に維持した。
【0131】
【表1】
【0132】
図9に示すように、反応時間、特に短い反応時間は、D(v、0.5)において著しい効果を有している。容積中間粒子径は、初めの30秒の間に約30μmから8μmに素早く減少している。その後、容積中間粒子径は、約5μmまで徐々に減少している。これにより、長時間の反応は微細粒子に有利に働くと考えられる。時間を確保するために、その後の実験では2分を用いた。
【0133】
<硫酸濃度およびサルブタモール塩基/IPA溶液の濃度の効果>
硫酸濃度およびサルブタモール塩基/IPA溶液の濃度は、実験結果に影響を与えると考えられた。以下の実験では、硫酸濃度を0.5mol/Lから5mol/Lに変化させて、10mg/mlおよび15mg/mlのサルブタモール塩基/IPA溶液と別々に反応させた。反応時間を2分に一定に維持し、反応温度を20℃にして、攪拌速度を5000rpmに設定した(表2)。
【0134】
【表2】
【0135】
硫酸濃度およびサルブタモール塩基の濃度の両方がより高い方が、微細粒子を製造するためには好ましいと考えられる(図10)。本発明者らは、このことをより高い濃度のために、反応システムにより高い過飽和が引き起こされたためであると考えている。より高濃度の酸は腐食性質を有することおよび装置に対して当然の効果が及ぼされることを考えると、2mol/Lが反応に対する適切な濃度であると考えられる。さらに、サルブタモール/IPA溶液の濃度が増加したとき、硫酸サルブタモール懸濁液の流動性は低下する。このことは、乾燥粉末を単離するための噴霧乾燥という次の工程にとって不利な効果を与える。したがって、10mg/mlのサルブタモール塩基/IPA溶液が、15mg/mlのサルブタモール塩基/IPA溶液よりも良いと考えられる。
【0136】
<反応温度の効果>
表3に示された一定の反応条件を用いて、反応温度だけを5℃から35℃まで変化させた。
【0137】
【表3】
【0138】
図11は、D(v、0.5)における反応温度の影響を説明している。硫酸サルブタモールのD(v、0.5)は、温度が室温(約20℃)よりも高くなると急激に増加するが、温度が低温から室温まで増加するときには微かに増加する。この説明として、IPAに溶解している硫酸サルブタモールの溶解度が高温よりも低温の方がより低いということが考えられる。それ故、低温において溶液の過飽和度がすぐに高くなると考えられる。これは、微細粒子の製造に必要とされる主要な要因の1つである。粒径は20℃の反応温度よりも5℃の反応温度の方が幾分か小さいが、反応温度を低くするという不便さは、得られる微かな利益を上回る。このため、反応を室温で頻繁に行った。
【0139】
<攪拌速度の効果>
攪拌速度の効果を調べるために、表4に示されるようにその他の4つのパラメーターを一定に維持して、攪拌速度のみがパラメーターを変化された。
【0140】
【表4】
【0141】
容積中間粒径(D(v、0.5))は、頭上式攪拌機の攪拌速度が増加するにつれて減少した。このことは、攪拌速度を速めることによって、粒子の核形成および結晶化を制御するためのより良好なマイクロ混合(micro−mixing、すなわち分子レベルでの混合)が引き起こされたためであると考えられる。このため、機械が実施することができる最大速度を微細粒子を得るために選択した。
【0142】
<超音波処理の効果>
顕微鏡用試料を作製する反応を行った後、小標本が硫酸サルブタモール懸濁液から回収されたとき、分離した粒子よりも凝集した粒子の方が多く観察された(図13)。
【0143】
それ故、マルバーンによって測定される容積中間粒子径は、個々の粒子の容積中間粒子径というよりも凝集体の容積中間粒子径であると考えられた。このことを調べるために、粒径を測定する前に、試料を超音波浴に置いて超音波処理を30分間行った。硫酸サルブタモールの粒径が温度の影響を受けることを避けるために、超音波処理の間、氷を浴槽に加えて浴槽の水温を制御した。結果を図14および図15に示す。超音波処理後、各試料のD(v、0.5)は減少しており、超音波処理後の値は顕微鏡下で測定した単一粒径とより一致している。このように、超音波処理によって個々の粒子の大部分を凝集体から分離させられると考えられる。したがって、凝集体が存在し、乾燥手法(噴霧乾燥)ではこの凝集体を完全に粉砕することはできないことが明らかである。これによれば、本発明の製造方法において凝集体を粉砕することができる新しい手法が適用されるまで、凝集体の大きさの方が、凝集体を構成する個々の粒子の大きさよりもより該当するといえる。
【0144】
<要因配置実験>
濃度、温度などの最適反応条件を前記実験から選択した。部分的な34の要因配置実験を行って、どの要因が、粒径に最も影響を与える反応過程に関係しているかを調べた。調べられた4つの要因は、(A)サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度、(B)硫酸濃度、(C)攪拌速度、(D)反応時間である。各要因に関する調査されたレベルを表5に示す。反応温度は、室温で一定に維持した。
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
Rjは、どの要因が結果に最も影響を与えるのかを示す値である。値がより大きければ、より感度がよく、その要因への感度がより大きい。表6において計算されているように、Rjの値はD>A>C>Bの順番になっており、4つの要因の中で反応時間が最も重要であることを強調している。硫酸濃度が1mol/Lから3mol/Lまでであれば、D(v、0.5)に対する効果を最小にすることができる。
【0148】
【数7】
の最小値は、各要因のどのレベルが最適であるかを示す値である。表6では、A2、B2、C3およびD3が最良の条件であることが示されている。表5によれば、これらは、Cサルブタモール15mg/ml、CH2SO42mol/L、攪拌速度8000rpm、および反応時間2分である。これらの条件は、上述した実験と一致する。
【0149】
<合成のスケールアップ>
さらなる実験のために噴霧乾燥を通して十分な粉末を得るために硫酸サルブタモールのビーカーを用いた合成をスケールアップした。
【0150】
1)前述の50mlのビーカーに20mlのサルブタモール塩基/IPA溶液を加える代わりに、250mlのビーカーに100mlのサルブタモール塩基/IPA溶液を加えた。
【0151】
2)より大型の頭上式攪拌機を用いた。2つの攪拌ヘッドを比較すると、大きさだけでなく種類も異なっている(図16、17)。より大型のヘッドを用いることにより、微細粒子を得るためのより良好な効果が得られる。
【0152】
3)要因配置実験から、反応時間が粒径を決定するための最も重要な要因であると判明した。そのため、反応時間を2分から20分まで延ばして、5分毎に粒径を測定した(図18、19)。反応が進行すれば、粒径分布曲線は複峰性になった。すなわち、約5分後に小さいピークが現れ、この小さいピークは徐々に大きくなった。したがって、20分の反応の後、D(v、0.5)は3.50μmから1.97μmまで減少した。これによって、反応時間を長くすることによってより粒径が小さくなることが確かめられた。
【0153】
結論として、スケールアップ後の反応条件を表7に示した。
【0154】
【表7】
【0155】
<噴霧乾燥の条件>
マルバーンによって測定される容積中間粒径および分散実験のFPF(微細粒子画分)の値という2つの値を用いて、噴霧乾燥後の乾燥粉末の品質を示した。
【0156】
噴霧乾燥の原理は、温風と合わせてノズルを通して懸濁液を霧状にすることによって、高温のために溶媒(本実施例ではIPA)を蒸発させるというものである。これにより、懸濁システムに懸濁している固体を、収集されてもよい乾燥粉末にしておくことができる。それ故、注入口および排出口の温度を、溶媒が完全に蒸発するほど高くするべきである。噴霧乾燥の排出口温度は、注入口温度と関連しており、前もって調整することや制御することを独立に行うことはできない。IPAの沸点は73℃であるので、注入口および排出口の温度をこの値よりも高くするべきである。図20は、排出口温度とFPF(総量)およびFPF(放出)との間の関係を示している。
【0157】
図20に示すように、排出口温度が60℃よりも低くなると粉末は完全に乾燥しないと考えられ、このため両方のFPF値は低くなる。注入口温度が150℃である場合、対応する排出口温度が約100℃に達しても良いこと、および、これは高品質の乾燥粉末を得るために用いられるべき最大値であることを示す実験を行った。
【0158】
<分散実験>
〈市販品〉
市販品の硫酸サルブタモールを、ナノマテリアルズ テクノロジー Pte.Ltd.(NanoMaterials Technology Pte.Ltd.)(シンガポール)から入手した。分散実験を上述したように2回行った。これらの実験結果を図21および図22に示す。マルバーン マスタシザーによって測定されたD(v、0.5)は15.12μmであり、この値はMSLIの段階1のカットオフよりも大きい値である。FPF値のどちらも20%を超えておらず、このことは現状の硫酸サルブタモールの市販品の20%未満が、肺の深い領域に沈着することができることを意味している。この結果はまったく満足できないものである。
【0159】
〈同一の反応条件および噴霧乾燥条件下においてビーカーで合成される、異なる硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末の比較〉
【0160】
【表8】
【0161】
図22は、硫酸サルブタモール乾燥粉末を生成するために用いられる方法が、分散結果に関して非常に良好な再現性を有していることを示している。市販品と比較して、噴霧乾燥によって得られる粉末の両方のFPF値が著しく改善されており、今まではめったに得られない値になっている。この結果の主な原因は、噴霧乾燥された粉末のD(v、0.5)が、2μmよりも小さくなっているということであり、この値は、段階3のカットオフ(3.1μm)よりも小さい値である。それ故、粉末の大部分は段階3および段階4を通過することができ、段階5におけるろ紙に収集されることができる。粉末の回収率は90%よりも大きかった。D(v、0.5)が懸濁液における物理的な粒径である間、空気力学的に粒子はより小さい粒子のように振舞うことに注意するべきである。
【0162】
<保管の効果>
噴霧乾燥後の粉末は、ガラス瓶に収集され、乾燥粉末に対する湿気の影響を最小にするために乾燥器に保管された。すぐに測定された分散結果と、4ヵ月後の同じ試料を測定した分散結果とを比較することにより、4ヵ月の保管後では、保管前の測定結果と比較して粉末の沈着分布が幾分か変化していることが示される(図23)。4ヵ月後では、段階3に沈着する粉末がより多く、一方段階5のろ紙に沈着する粉末はより少なかった。このように、1.7μmよりも小さい粒子の割合は減少しているが、一方3.1μmよりも大きい粒子の割合は増加していた。粒子は4ヶ月の保管間に少し大きくなっていた。FPF(総量)およびFPF(放出)はそれぞれ、約11%および6%までに減少していたが、それらの値は市販品の値と比較してもいまだに大きく、粉末は吸入法に対して高い性能をいまだに有していると考えられる。
【0163】
<異なる吸入装置の効果>
ロータハラー(Rotahaler(登録商標))は、効率性の低い吸入装置である。前で実証したように、粉末の性能は優れているので、粉末は前の実験に用いられる効率の高いエアロライザー(Aeroliser(登録商標))と比較して効率の低いロータハラー(登録商標)のような吸入装置においてさえも、合理的に機能するような十分な品質を有していると考えられた。2つの異なる吸入装置を用いること以外は、同一の条件(60L/分の流速、4秒の各時間、同じ量の硫酸サルブタモール)で粉末を分散させた(図24)。期待されたように、ロータハラー(登録商標)の性能は、エアロライザー(登録商標)ほど良くはなかった。FPFにおいて約20%および30%の減少が、それぞれFPF(総量)およびFPF(放出)に関して観測された。しかしながら、これらの値はエアロライザー(登録商標)を用いる市販品の値よりも約2〜3倍大きくなっている。このため、効率の低い吸入装置を用いても微細粒子の性能は高いということが考えられる。
【0164】
<ラクトースを混合することの効果>
ラクトースは乾燥粉末の吸入における担体として一般的に用いられる。硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末にラクトース(市販品)を10:90の割合で混合した。実験の詳細を以下に示す。
【0165】
手順1:100mgのラクトースを小型のガラス瓶に加える。そして、100mgの硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末を加える。混合機を用いてそれらを1分間混合する。
【0166】
手順2:200mgのラクトースを混合粉末に加え、さらに1分間一緒に混合する。
【0167】
手順3:400mgのラクトースを加え、上述のように混合する。
【0168】
手順4:200mgのラクトースを加え、上述のように混合する。
【0169】
100mgの硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末と900mgのラクトースとを含む1000mgの混合粉末が得られる。
【0170】
図25に示される結果によれば、ラクトースが混合された場合の混合物の性能は純粋な粉末の性能ほど良くないことが示されている。担体としてのラクトースの機能により吸入性能が改善されることが知られている。しかしながら、本実験において両方のFPF値は減少した。微細な硫酸サルブタモールは、大きいラクトース粒子の表面に吸着して捕捉されると考えられ、ラクトースの粒径のために微細な硫酸サルブタモールはラクトースと一緒に主に通路および段階1に送達されることになる。
【0171】
<RPBを用いた合成の反応条件>
ビーカーを用いた合成とRPBを用いた合成との間の違いを説明するために、5つの反応パラメーターの内の2つ(サルブタモール塩基/IPA溶液の濃度および硫酸濃度)を変化させずに用いた。上述したように攪拌速度をRPBが実施できる最大速度に設定した。反応温度および反応時間を別々に調べた。
【0172】
<反応温度の効果>
冷水を用いてシステムを冷やし、熱湯を用いてシステムを温めた(表9)。
【0173】
【表9】
【0174】
図26および表9は、ビーカーを用いた合成に関して、微細粒子が低温度において得られることを示している。
【0175】
<反応時間の効果>
【0176】
【表10】
【0177】
表10から、反応時間が増加するに連れて、粒径が減少しFPFが増加することがわかる。しかしながら、20分と30分との間では大きな違いはなかった。
【0178】
反応時間が異なれば、試料の粒径分布が異なることが示された。曲線の主要ピークは、領域内において移動し減少していた。そして、次第に増加する小さいピークが約5分から現れた。D(v、0.5)は時間とともに減少した。結論として、より長い反応時間を用いることによって微細粒子が得られた。
【0179】
<異なる吸入装置の効果>
RPBを用いて合成された硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末の性能を調べるために、ロータハラー(登録商標)を用いて前述のようにエアロライザー(登録商標)と比較した。前において観察されるように、ロータハラー(登録商標)の性能は、エアロライザー(登録商標)の性能よりも劣っていた。FPF(総量)およびFPF(放出)の両方において約30%の減少が観測された。しかしながら、それでもこれらの値は、中程度の性能を有すると見なされている50%を超えている。このように、RPBを用いて合成された硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末の性能は、ビーカーにおいて合成された硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末とほとんど同程度であることが示された。
【0180】
<走査電子顕微鏡(SEM)写真>
【0181】
【表11】
【0182】
9月8日、13日、および、30日から得られた試料の形態は、走査電子顕微鏡下では、全て同様であるように考えられ、個々の棒状の粒子が球状の凝集体を形成している。個々の粒子の長さは2μmよりも短く、幅および厚みは約100nm〜200nmであった。9月7日の試料における凝集体は、その他の試料の凝集体よりも大きい。この試料の個々の粒子は、長さが約10μmでありその他の2つの寸法が1μmであるという針状のような形状になっている。このことは、より小さい粒径がより大きいFPFと関連があるので、9月7日の試料におけるFPFが4つの試料の内で最も小さいという事実と一致する。
【0183】
<非溶媒法>
噴霧乾燥のパラメーターは、前で用いられているパラメーターと同じである。噴霧乾燥器の収集用ガラス瓶における乾燥粉末に関して、興味深い現象が観察された。粉末は2つの部分に分けられ、一つは球状でありもう一方はルーズであり、ガラス瓶の側壁に貼りついている。粉末のこれら2つの部分の質量および容積を測定することによって、球状粉末の密度が、ルーズ粉末の密度よりも2倍大きいことが分かった。粒径分布をマルバーン マスタシザーを用いて測定した。
【0184】
乾燥粉末の形状が異なれば走査電子顕微鏡下の形状が異なると考えられる。前に議論したように、短い棒状の粒子の方が長い針状の粒子よりも性能が良い。それ故、これらの異なる形状の粉末部分の分散は異なる結果になり、ルーズ粉末の方が球状粉末よりも性能が良いことが仮定された。
【0185】
<分散結果>
噴霧乾燥器から得られた、貼りついたルーズ粉末および球状粉末を含む2つの別々のカプセルを分散実験のために調製した。結果を図37に示す。
【0186】
これらの結果は、先に仮定した分散結果に合致していた。異なる粒径を有しているために、MSLIにおける異なるFPF値および粉末分配が得られた。比較的大きい粒径のために、これらの2つの試料の両方は低いFPF値を示した。球状粉末の値は、市販の値と同じであった。
【0187】
2004年11月23日に調製された(合成されて噴霧乾燥された)試料を用いて前記結果を確かめるために一組の実験を行った。ルーズ粉末、球状粉末、および破砕された球状粉末を含む3つの別々のカプセルが作製された。これらを個々に分散させた。その結果を図38に示す。
【0188】
球状粉末に関する値は非常に低かったが、ルーズ粉末および破砕された球状粉末は同じ性能を示した。このことは、これら2つの粉末における凝集していない形状の間に大きな違いがないことを示唆している。球状粉末が段階1において多量に残った理由は、凝集体が非常に堅く速度60L/分の空気では破砕されないからであり、エアロライザー(登録商標)吸入器によって作製されたカプセルにおける穴は、カプセルから脱出できるほど十分に凝集体を粉砕するが、カプセルはその他と同様の機能をするほど十分ではない。十分に破砕されていないままのそれらの凝集体は、それがルーズ粉末および破砕された球状粉末である場合より多く、カプセルの中に捕捉される。
【0189】
<2つの方法によって生成した粉末の比較>
<パラメーター>
表11は、沈殿処理および噴霧乾燥処理に用いられたパラメーターを示している。
【0190】
【表12】
【0191】
<分散結果>
表11に示すように、硫酸サルブタモールの乾燥粉末を生成するために2つの方法において用いられたパラメーターは、非常に良く似ている。非溶媒法を用いて作製された乾燥粉末の性能の方が、反応方法を用いて作製された乾燥粉末の性能よりも著しく劣っていることが示された。粉末(非溶媒法)の大部分は段階3および4ならびにろ紙の代わりに吸入器に沈着していた。10月29日の試料において15μmよりも大きい粒子がいくつか存在したと考えられる。FPF(総量)と比較して、2つの試料のFPF(放出)の間には約6%だけの違いが存在する。このことは、MSLIに放出された粉末の性能が良いこと、すなわち、乾燥粉末に微細粒子がまだ存在していること、および/または、気流が吸入器から放出される凝集体を粉砕して分散させるほど十分強いことを示している。
【0192】
<粒径分配>
前記結果によって示されているように、2つの試料の容積中間直径はほとんど同じであるが、それぞれの分配曲線はまったく異なる(図41)。9月13日の試料は2つのピークを示しており、それぞれのピーク幅は狭い。しかしながら、10月29日の試料は1つのピークを有する比較的幅の広い分配になっている。図が示すように、9月13日の試料の粒子の全ては10μmよりも小さいが、10月29日の試料の最大粒径は約30μmであり、この値は9月13日の試料における最大粒径よりも3倍大きい。このことにより、10月29日の試料は性能が低いという説明ができる。
【0193】
<走査電子顕微鏡(SEM)写真>
走査電子顕微鏡写真により分散結果をさらに説明した。先に議論したように、粒径および粒子形状がFPF値に影響を与えると期待される。10月29日の試料に関して、走査電子顕微鏡の試料を調製する前にルーズ粉末と球状粉末とを分離した。これにより、図43の電子顕微鏡写真において2つの異なる形状および粒径が観察された。小さい粒子は反応試料によって調製された試料に類似しており、MSLIにおける段階3および4ならびにろ紙に沈着した。大きい粒子は、表面積が大きいために吸入器の側面に貼りついた。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】実施例に記載されている実験のフローチャートを示す図である。
【図2】硫酸とサルブタモール塩基とを反応させて硫酸サルブタモールを製造するスキームである。
【図3】実施例において形成された原物の沈殿物の写真である。
【図4】2.5時間放置した後の図3の沈殿物の写真である。
【図5】実施例に記載されているビーカーを用いた合成方法を示す概略図である。
【図6】RPB(回転式の充填床反応器)の概略図である。
【図7】MSLI(多段形液体インピンジャー:multi−stage liquid impinger)の概略図である。
【図8】濃度と276nmにおける硫酸サルブタモール溶液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例の実験における反応時間と容積中間粒径(volume medium particle size)との関係を示すグラフである。
【図10】実施例の実験における異なる濃度のサルブタモールを用いたときの、硫酸濃度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【図11】実施例の実験における反応温度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【図12】実施例の実験における攪拌速度と容積中間粒径との関係を示すグラフである。
【図13】硫酸サルブタモール懸濁液の試料を示す概略図である。
【図14】実施例の実験における異なる攪拌速度での、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【図15】実施例の実験における異なる硫酸濃度を用いたときの、容積中間粒径に対する超音波処理の効果を説明するグラフである。
【図16】実施例において用いられる小型の攪拌器のヘッドの写真である。
【図17】実施例において用いられるより大型の攪拌器のヘッドの写真である。
【図18】マルバーン粒径装置を用いて測定された、様々な反応時間において沈殿した硫酸サルブタモールの容積中間粒径分布を示すグラフである。
【図19】マルバーン粒径装置を用いて測定された、硫酸サルブタモールの容積中間粒径と反応時間との関係を示すグラフである。
【図20】実施例の実験における排出口温度とFPF(総計)およびFPF(放出)との関係を説明するグラフである(FPFは、微細粒子画分を意味する)。
【図21】市販品の産硫酸サルブタモールの結果を説明する棒グラフである。
【図22】異なる硫酸サルブタモールの噴霧乾燥粉末を用いた分散の結果を説明する棒グラフである。
【図23】保管時間に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【図24】異なる吸入装置に応じた分散結果を説明する棒グラフである。
【図25】分散結果に対するラクトース混合の効果を説明する棒グラフである。
【図26】異なる反応温度から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【図27】異なる反応時間から生じる粒径分布を説明するグラフである。
【図28】異なる吸入装置の分散結果に対する効果を説明する棒グラフである。
【図29】実施例における9月7日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図30】実施例における9月7日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図31】実施例における9月8日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図32】実施例における9月8日の試料を20.0kV、32,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図33】実施例における9月13日の試料を5kV、30,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図34】実施例における9月13日の試料を5kV、50,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図35】実施例における9月30日の試料を20.0kV、4,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図36】実施例における9月30日の試料を20.0kV、16,000×の条件で撮影した電子顕微鏡写真である。
【図37】非溶媒法を用いて噴霧乾燥した後の硫酸サルブタモール乾燥粉末の異なる形状を示す電子顕微鏡写真である。(A)はルーズ粉末を示し、(B)は球状粉末を示す。
【図38】非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(11月23日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【図39】非溶媒法を用いて作製された硫酸サルブタモール(12月13日の試料)の分散結果を説明する棒グラフである。
【図40】実施例に記載されている2つの硫酸サルブタモール乾燥粉末の分散結果を説明する棒グラフである。
【図41】実施例に記載されている2種類の硫酸サルブタモール乾燥粉末の粒径分布を説明するグラフである。
【図42】実施例に記載されている9月13日の試料における電子顕微鏡写真である。
【図43】図43は、実施例に記載されている10月29日の試料における電子顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入剤の粒子を調製するための製造方法であって、該製造方法は、第1液体と第2液体とが相互作用して薬物の粒子を形成させるために、高せん断領域において前記第1液体と第2液体とを混合する混合工程を含み、
前記第1液体および第2液体の内の一方に、前記薬物またはその前駆体が含まれており、
前記第1液体および第2液体の一方に前記前躯体が含まれている場合は、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前記前躯体と反応して前記薬物の粒子を形成することができる試薬が含まれており、
前記第1液体および第2液体の一方に前記薬物が含まれている場合には、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前記薬物を含む液体と混合したときに、前記薬物の粒子を形成する液体が含まれている、製造方法。
【請求項2】
前記粒子が吸入による投与に適した大きさである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記粒子の直径が約10μmよりも小さい、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記粒子の直径が約0.5μm〜約10μmの間である、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1液体が前記薬物の前躯体を含み、前記第2液体が前記前躯体と反応して前記薬物を形成することができる試薬を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記試薬は、酸‐塩基反応を通して前記前駆体と反応して前記薬物を形成することができる、請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記前躯体の前記試薬に対する比がモルを基準に約3:1〜約1:3の間である、請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記薬物が塩であり、前記前駆体が該薬物の遊離塩であり、前記試薬が酸である、請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記薬物が硫酸サルブタモールであり、前記前躯体がサルブタモールであり、前記試薬が硫酸である、請求項1〜8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記高せん断が、混合区域において回転するせん断装置によって提供される、請求項1〜9の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記せん断装置が、前記混合区域において約1000rpm〜約10000rpmの間で回転する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
約0.5μm〜約10μmの間の直径を有する粒子状の吸入剤。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか1項に記載の製造方法によって作製される吸入剤。
【請求項14】
狭い粒径分布を有する請求項12または13に記載の吸入剤。
【請求項15】
前記薬物が吸入可能なステロイド、吸入可能なシクロスポリン、吸入可能な抗喘息剤、吸入可能な気管支拡張薬、吸入可能な抗生物質、および、吸入可能なβ‐アゴニストからなる群より選ばれる請求項12〜14の何れか1項に記載の吸入剤。
【請求項16】
患者に粒子状の吸入剤を提供する工程を含み、該吸入剤は請求項12〜15の何れか1項に記載の吸入剤である、患者の病気を治療する方法。
【請求項17】
前記吸入剤が液体の担体を含んでいない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記病気が、喘息、癌および感染症からなる群より選ばれる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
吸入剤の粒子を備える、患者の病気を治療するための吸入器であって、前記吸入剤は前記病気に対して適したものであるかまたは必要なものであり、前記粒子の粒径は約0.5μm〜約10μmである、吸入器。
【請求項20】
前記吸入剤が、請求項12〜15の何れか1項に記載の吸入剤である、吸入器。
【請求項21】
喘息、癌および感染症からなる群より選ばれる病気を治療するために用いられる請求項19または20に記載の吸入器。
【請求項22】
喘息、癌および感染症からなる群より選ばれる病気を治療するための、請求項1に記載の製造方法によって作製された吸入剤の使用。
【請求項1】
吸入剤の粒子を調製するための製造方法であって、該製造方法は、第1液体と第2液体とが相互作用して薬物の粒子を形成させるために、高せん断領域において前記第1液体と第2液体とを混合する混合工程を含み、
前記第1液体および第2液体の内の一方に、前記薬物またはその前駆体が含まれており、
前記第1液体および第2液体の一方に前記前躯体が含まれている場合は、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前記前躯体と反応して前記薬物の粒子を形成することができる試薬が含まれており、
前記第1液体および第2液体の一方に前記薬物が含まれている場合には、第1液体および第2液体のもう一方に、高せん断条件下において前記薬物を含む液体と混合したときに、前記薬物の粒子を形成する液体が含まれている、製造方法。
【請求項2】
前記粒子が吸入による投与に適した大きさである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記粒子の直径が約10μmよりも小さい、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記粒子の直径が約0.5μm〜約10μmの間である、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1液体が前記薬物の前躯体を含み、前記第2液体が前記前躯体と反応して前記薬物を形成することができる試薬を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記試薬は、酸‐塩基反応を通して前記前駆体と反応して前記薬物を形成することができる、請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記前躯体の前記試薬に対する比がモルを基準に約3:1〜約1:3の間である、請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記薬物が塩であり、前記前駆体が該薬物の遊離塩であり、前記試薬が酸である、請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記薬物が硫酸サルブタモールであり、前記前躯体がサルブタモールであり、前記試薬が硫酸である、請求項1〜8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記高せん断が、混合区域において回転するせん断装置によって提供される、請求項1〜9の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記せん断装置が、前記混合区域において約1000rpm〜約10000rpmの間で回転する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
約0.5μm〜約10μmの間の直径を有する粒子状の吸入剤。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか1項に記載の製造方法によって作製される吸入剤。
【請求項14】
狭い粒径分布を有する請求項12または13に記載の吸入剤。
【請求項15】
前記薬物が吸入可能なステロイド、吸入可能なシクロスポリン、吸入可能な抗喘息剤、吸入可能な気管支拡張薬、吸入可能な抗生物質、および、吸入可能なβ‐アゴニストからなる群より選ばれる請求項12〜14の何れか1項に記載の吸入剤。
【請求項16】
患者に粒子状の吸入剤を提供する工程を含み、該吸入剤は請求項12〜15の何れか1項に記載の吸入剤である、患者の病気を治療する方法。
【請求項17】
前記吸入剤が液体の担体を含んでいない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記病気が、喘息、癌および感染症からなる群より選ばれる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
吸入剤の粒子を備える、患者の病気を治療するための吸入器であって、前記吸入剤は前記病気に対して適したものであるかまたは必要なものであり、前記粒子の粒径は約0.5μm〜約10μmである、吸入器。
【請求項20】
前記吸入剤が、請求項12〜15の何れか1項に記載の吸入剤である、吸入器。
【請求項21】
喘息、癌および感染症からなる群より選ばれる病気を治療するために用いられる請求項19または20に記載の吸入器。
【請求項22】
喘息、癌および感染症からなる群より選ばれる病気を治療するための、請求項1に記載の製造方法によって作製された吸入剤の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公表番号】特表2008−533055(P2008−533055A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501105(P2008−501105)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000302
【国際公開番号】WO2006/096906
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507311843)ナノマテリアルズ テクノロジー ピーティーイー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000302
【国際公開番号】WO2006/096906
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507311843)ナノマテリアルズ テクノロジー ピーティーイー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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