説明

吸収体の製造方法

【課題】吸水性ポリマーが設計通りに散布されているか否かを高精度且つ簡便に確認でき、高品質の吸収体を経済的に製造することのできる吸収体の製造方法を提供すること。
【解決手段】搬送される帯状の繊維集合体2上に間欠散布装置3により吸水性ポリマー30を間欠的に散布し、該吸水性ポリマー30を散布した後の繊維集合体2(具体的には吸収体連続体10A)を切断装置6で間欠的に切断して吸収体10を得る吸収体の製造方法であって、ポリマー散布後の繊維集合体の搬送路に配置した、ポリマーの密度に比例した信号を出力するセンサー74の出力値を記録し、各ポリマー散布領域3aがセンサー74の配置位置を通過している間の該センサー74の出力値を記録及び積算して各ポリマー散布領域3aに存する吸水性ポリマー30の量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品用の吸収体として好ましく用いられる吸収体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体として、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体と吸水性ポリマーとを含む吸収体が汎用されている。
このような吸収体の製造工程においては、連続搬送される繊維集合体上に吸水性ポリマーを間欠的に散布し、該繊維集合体を、コアラップシートで被覆した後、ポリマーが散布されていない部分で切断することが広く行われている(特許文献1、2参照)。
また、吸水性ポリマーを間欠的に散布するに当たり、吸水性ポリマーを不均一に散布することも行われている(特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−215629号公報
【特許文献2】特開2002−178429号公報
【特許文献3】特開2004−65929号公報
【特許文献4】特開2002−272782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吸水性ポリマーを、該吸水性ポリマーが流れ方向に不均一に分布しているポリマー散布領域が形成されるように間欠散布する場合、そのポリマーが設計通りに散布されているか否かを高精度に確認することは困難であった。
【0005】
従って、本発明の第1の目的は、吸水性ポリマーが設計通りに散布されているか否かを高精度且つ簡便に確認でき、高品質の吸収体を経済的に製造することのできる、吸収体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、第1吸収層と第2吸収層との積層状態の良否を簡便に判定でき、第1吸収層と第2吸収層とが積層された構造の吸収体を高精度に製造することができる、吸収体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、搬送される帯状の繊維集合体上に間欠散布装置により吸水性ポリマーを間欠的に散布し、該吸水性ポリマーを散布した後の繊維集合体を切断装置で間欠的に切断して吸収体を得る、吸収体の製造方法であって、ポリマー散布後の繊維集合体の搬送路に配置した、ポリマーの密度に比例した信号を出力するセンサーの出力値を記録し、前記吸収性ポリマーの散布により形成されるポリマー散布領域が前記センサーの配置位置を通過している間の該センサーの出力値を記録及び積算して前記各ポリマー散布領域に存する吸水性ポリマーの量を求める、吸収体の製造方法を提供することにより前記第1の目的を達成したものである(以下、第1発明というときはこの発明をいう)
【0007】
本発明は、所定の間隔を開けて搬送される非連続の第1吸収層上に、非連続の第2吸収層を重ねる積層工程を具備する吸収体の製造方法であって、前記第1吸収層及び第2吸収層は吸水性ポリマーを含んでおり、第1吸収層と第2吸収層との積層状態を、ポリマーの密度に比例した信号を出力するセンサーを用いて検査する検査工程を具備し、該検査工程においては、前記センサーの配置位置を、第1及び第2吸収層の積層体が通過している間の該センサーの出力値を記録し、該出力値の変動パターンから、第1吸収層と第2吸収層との間のずれの有無及び程度を検査する、吸収体の製造方法を提供することにより前記第2の目的を達成したものである(以下、第2発明というときはこの発明をいう)
【発明の効果】
【0008】
第1発明の吸収体の製造方法によれば、吸水性ポリマーが設計通りに散布されているか否かを高精度且つ簡便に確認でき、高品質の吸収体を経済的に製造することができる。特に、吸水性ポリマーが不均一に分布するポリマー散布領域が間欠的に形成されるように散布する場合に効果的である。
第2発明の吸収体の製造方法によれば、第1吸収層と第2吸収層との積層状態の良否を簡便に判定でき、第1吸収層と第2吸収層とが積層された構造の吸収体を高精度に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1発明の一実施態様に用いた吸収体の製造装置の概略を示す図である。
【図2】図2は、吸水性ポリマーが不均一に分布するように散布されたポリマー散布領域を有する繊維集合体を示す平面図である。
【図3】図3は、図1のII−II線断面図である。
【図4】図4は、図1に示す製造装置におけるポリマー間欠散布装置を示す断面図である。
【図5】図5は、図1に示す製造装置における制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】図6は、変速カムパターンの例を示す図である。
【図7】図7は、静電容量式のセンサーの出力値の経時的変化をエンコーダから得られるパルス信号と共に示す図である。
【図8】図8は、静電容量式のセンサーの出力値の積算方法を説明する図である。
【図9】図9は、多数のポリマー散布領域についてのポリマー量の変動を示すグラフである。
【図10】図10は、第2発明の一実施態様に用いた吸収体の製造装置の概略を示す図である。
【図11】第2発明の一実施態様における静電容量式のセンサーの出力値の経時的変化をエンコーダから得られるパルス信号と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
第1発明の吸収体の製造方法の一実施態様においては、図1に示すように、搬送される帯状の繊維集合体2上に間欠散布装置3により吸水性ポリマー30を間欠的に散布し、該吸水性ポリマー30を散布した後の繊維集合体2(具体的には吸収体連続体10A)を切断装置6で間欠的に切断して吸収体10を得る。
本製造方法においては、図1に示すように、吸水性ポリマー30を、該ポリマー30の散布により繊維集合体2に形成されるポリマー散布領域3a,3a・・それぞれの流れ方向に該ポリマー30が不均一に分布するように散布する。また、ポリマー散布後の繊維集合体の搬送路に配置した静電容量式のセンサー74の出力値を記録し、前記各ポリマー散布領域3aが該センサー74の配置位置を通過している間の該センサーの出力値を記録及び積算して各ポリマー散布領域3aに存する吸水性ポリマー30の量を求める。尚、ポリマー散布領域の流れ方向は、繊維集合体の長手方向と同方向である。
【0011】
図1には、本実施態様の実施に用いる吸収体の製造装置1が示されている。
吸収体の製造装置1は、吸水性ポリマーの散布対象である帯状の繊維集合体を連続的に搬送する繊維集合体2の搬送機構(図示せず)と、吸水性ポリマー30を、連続搬送される繊維集合体2上に間欠的に散布するポリマー間欠散布装置3と、ポリマー30を散布する前の繊維集合体2の下面側に第1のコアラップシート21を供給する第1のコアラップシート供給機構(図示せず)と、ポリマー30を散布した後の繊維集合体2における吸水性ポリマー30を散布した側の面(以下、ポリマー散布面ともいう)上に第2のコアラップシート51を供給する、第2のコアラップシートの供給機構5と、第1のコアラップシート21と第2のコアラップシート51との間に、ポリマー30が散布された繊維集合体2が介在した構成の吸収体連続体10A(図3参照)を、幅方向に亘って間欠的に切断する切断装置6と、これらの動作を制御する制御装置7とを備えている。
【0012】
繊維集合体2の搬送機構は、ベルトコンベア、従動ロール、駆動ロール等の公知の搬送要素が適宜に組合されてなり、少なくとも、帯状の繊維集合体2を、ポリマー間欠散布装置3によるポリマーの散布位置3Sから、後述する静電容量式のセンサー74の配置位置74Sを通って、切断装置6により切断される位置6Sに達するまで搬送するように構成されている。本製造装置1における繊維集合体2の搬送機構は、帯状の繊維集合体2を第1のコアラップシート21上に載せた状態で搬送する。また、帯状の繊維集合体2の搬送速度は一定である。
【0013】
ポリマー間欠散布装置3は、図4に示すように、ポリマーの供給口31、ポリマーの散布口32、及び周面にポリマー保持用の凹部34を有するローター(回転体)35を備え、該サーボモータ39(図1参照)によって該ローターが回転駆動され、供給口31から凹部34に供給された吸水性ポリマー30が、該ローター35の回転により散布口32まで搬送され、該散布口32から散布するようになされている。
ローター35は、サーボモータ39によって回転駆動されるため、一回転する間にその回転速度を増減変化させることができる。それにより、ポリマーを一回散布する間にポリマー散布量を増減変化させることができる。ポリマー保持用の凹部34内には、ローター35の長手方向に延びる断面三角形状の突条(突起)34aが多数形成されており、凹部34内における吸水性ポリマーの移動が制限されている。
【0014】
ポリマー間欠散布装置3についてより具体的に説明する。
ポリマー間欠散布装置3は、図1及び図4に示すように、ポリマーの供給口31及びポリマーの散布口32を周壁部に有し且つ略水平に配設された円筒状のケーシング33と、外周面に平面視して矩形形状の凹部34を有し、ケーシング33内に、該ケーシング33と軸を等しくし且つ該軸回りに回転自在に配設された円筒状のローター35と、供給口31を下端部に備えたポリマー導入部36と、ホッパ37内に収容された吸水性ポリマー30を、内部のスクリュー(図示せず)の回転により開口部38aまで移動させ、ポリマー導入部36に投入するスクリューフィーダ38とを具備した構成とされている。
【0015】
ケーシング33は、奥面部において中空の支持体(図示せず)によって支持されており、この支持体内にローター35の回転軸体(図示せず)が配設されている。
ローター25及びスクリューフィーダ38内の前記スクリューは、それぞれサーボモータ39,40によって回転駆動され、制御装置7から出力される制御信号S1,S2によりその回転を制御されている。即ち、入力される制御信号S1,S2の内容に応じて、サーボモータ39,40は、回転を開始したり、回転速度を増減させたり、回転速度を一定に維持したり、回転を停止したりする。
【0016】
ローター35の周壁部には、平面視して矩形状の開口部35aが形成されており、供給口31を介して供給された吸水性ポリマー30の一部(散布されないポリマー)を、凹部34内に保持させずに、該開口部35aを介して落下させるようになしてある。ローター35内には、開口部35aから落下するポリマーを回収する回収フード(回収器)41が配設されている。そして、ローター35の開口部35aがケーシング33の供給口31の下方に達したときに、散布されないポリマーが回収フード41に落下して回収されるようになしてある。
【0017】
ポリマー間欠散布装置3を作動させると、スクリューフィーダ38により吸水性ポリマー30が、ポリマー導入部36に投入され、その吸水性ポリマー30が供給口31を通じてローター35の外周面上(より具体的には前記凹部34内)に供給される。
そして、ローター35の外周面上に供給されたポリマー30は、該ローター35の回転により散布口32にまで搬送され、該散布口32から、該散布口32の下方を連続的に搬送される繊維集合体2上に、所定の散布パターン(矩形状の間欠散布)にて散布される。尚、本実施形態で用いたポリマーの間欠散布装置3の詳細については、特開平8−215629号公報に記載されている。
【0018】
第2コアラップシートの供給機構5は、繊維集合体2のポリマー散布面上に連続的に第2のコアラップシート51を合流させる。合流させる第2のコアラップシート51は、ポリマーの散布前に接着剤塗工機52によって塗布された接着剤を介して、繊維集合体2及び第1のコアラップシート21と一体化され、吸収体連続体10Aとなる。
【0019】
切断装置6は、周面に切断刃を備えたカッターロール61と、前記切断刃を周面に受けるアンビルロール62とを備えたロータリーカッターである。
本実施形態において、カッターロール61は、サーボモータ63によって回転駆動されるようになされている。アンビルロール62は、カッターロール61と軸同士がギアで連結され、カッターロール61の回転に連動して回転するようになされている。アンビルロール62は、その周速度が、帯状の繊維集合体2や吸収体連続体10Aの搬送速度と同速度、または増減変化も可能であり、本実施態様においては、このアンビルロールが、繊維集合体の搬送速度に応じた速度で回転する回転体である。
吸収体連続体10Aの切断により、吸収体10が得られる。
【0020】
制御装置7は、アンビルロール62の所定回転量毎にパルス信号を出力するロータリー式のエンコーダ71と、エンコーダ71から出力される前記パルス信号をカウントするカウンター72と、切断装置6による切断時刻を定めるための所定の検知位置(カッターロールの切断刃の位置等)を検知する検知手段73と、繊維集合体2の搬送路におけるポリマーの散布位置3Sより下流に配置され、吸収体連続体10A中に含まれるポリマー量に応じて出力値が変動する静電容量式のセンサー74と、これらから得られる測定データに基づき、後述する種々の分析を行う演算処理手段75とを備えている。
【0021】
エンコーダ71は、オープンコレクタ出力形式のエンコーダで構成することが好ましいが、ラインドライバ出力形式のエンコーダで構成することもできる。この場合には、エンコーダとコントローラーとの間にパルス変換器(オープンコレクタ出力形式への変換)を介装する。
【0022】
検知手段73は、カッターロール61のカッター刃を検出できる位置へ配設されており、カッターロール61の刃の最も近接した位置を前記検知位置として検知して出力信号(パルス信号)をコントローラー76に出力する。検知手段73は、市販の近接センサーで構成することができる。
【0023】
静電容量式のセンサー74は、物体の静電容量を測定するものであり、吸収体連続体に含まれる吸水性ポリマーの量に応じてその出力値が変動する。本実施態様で用いた静電容量式のセンサー74は、センサーギャップ間を通過する物体の静電容量を測定し、該物体の密度等を測定可能である。
本実施態様における静電容量式のセンサー74は、帯状の繊維集合体21の流れ方向(図中X方向)における、吸水性ポリマーの散布位置3Sと吸収体連続体10Aの切断位置との間、より具体的には、第2コアラップシート51の合流位置と吸収体連続体10Aの切断位置との間に配置されている。静電容量式のセンサー74としては、各種公知のものを用いることができ、例えばHossbach社の「QMS70−O−540」等が好ましく用いられる。静電容量は、例えば、誘電率と真空の誘電率と面積との積を、測定距離(センサーと物体との離間距離)で除して求められる。
【0024】
カウンター72は、コントローラー76で構成されており、演算処理手段75はコンピュータ77でそれぞれ構成される。コントローラー76は、ケーブル86を介してコンピュータ77に接続されている。
【0025】
コントローラー76は、多チャンネル式のプログラマブルコントローラで構成されており、図5に示すように、カウンター72、処理装置(CPU)78、記憶装置79及び内部時計80を具備するハードウェアと、測定用ソフトウェア及び制御用ソフトウェアとを備えたマイクロコンピュータを備えている。測定用ソフトウェア及び制御用ソフトウェアは記憶装置79に記憶されている。記憶装置79の記録域にはエンコーダ71の分解能、製品長、エンコーダパルス数に応じて設定された最大カウント数が予め記録される。コントローラー76は、測定用ソフトウェアとハードウェアとが協働して以下のように機能する。
【0026】
即ち、コントローラー76は、前記測定用ソフトウェアが起動した状態で、エンコーダ71からパルス信号が出力されると、当該パルス信号がカウンター72でカウントされ、処理装置78がそのカウント時の時刻を内部時計80から読み取り、当該カウント数が当該カウント時刻と関連づけられて記憶装置79の記録域に記録される。処理装置78は、カウンター72によるパルス信号のカウントが進み、そのカウント数が最大カウント数に達した場合にはカウンター72をリセットする。
この間に、検知手段73からパルス信号が出力されると、割り込み処理がかけられてその割り込み時刻を切断装置6による切断時刻として内部時計80から読み取り、当該割り込み時刻とともに当該割り込み時刻におけるカウンター72のカウント数が記憶装置79の記録域に記録される。
また、センサー74からの出力値は、カウンター72がカウントする個々のパルス毎に、その強度(例えば0〜10Vの間で変動する電圧)が、内部時計80から読み取られた各カウント時のカウント数と関連づけられて、記憶装置79の記録域に記録される。
コントローラー76は、記憶装置79の記録域に記録されたこれらの測定データを、コンピュータ77からの指示に基づいてコンピュータ77に送信する。
【0027】
また、コントローラー76は、制御用ソフトウェアとハードウェアとが協働して、演算処理手段75から出力される信号を、サーボモータ39,40に入力可能な制御信号S1,S2に変換してサーボモータ39,40に対して出力するサーボモータの回転制御部としても機能する。
【0028】
カウンター72は、エンコーダ71からのパルス信号を高速でカウントできる処理能力を有していればよい。コントローラー76は、その後のコンピュータ77における演算処理を考慮すると、高速通信機能〔例えば、イーサネット(登録商標)〕を有する物が好ましい。コントローラー76は、マイクロコンピュータを備えた市販のプログラマブルロジックコントローラで構成することができる。
【0029】
コンピュータ77は、処理装置(CPU)81、主記憶装置(RAM)82、補助記憶装置83、入力装置84及び出力装置85を具備するハードウェアと、基本ソフトウェア、該基本ソフトウェア上で動作してコントローラー76から前記測定データを収集するデータ収集ソフトウェア、データ収集ソフトウェアで収集した前記測定データを利用して後述する各種の分析を行う分析用ソフトウェアとを含むソフトウェアとを備えたコンピュータシステムで構成される。前記ソフトウェアは、主記憶装置82又は補助記憶装置83の記録域に記録される。
また、コンピュータ77はグラフィックパネルに組み込まれたものでも良い。
【0030】
本実施態様の製造方法は、例えば以下のように実施される。
先ず、制御装置7を起動し、変速カムパターンを選択する。変速カムパターンは、ポリマー間欠散布装置3のローター35を予め設定された所定のパターンで非等速回転させるものである。変速カムパターンは、幾つかの変速カムパターンのデータとそれを選択させるためのソフトウェアを上述した制御用ソフトウェアに組み込んでおき、該ソフトウェアにより提示された選択肢のなかから選択する形で入力するようにする。
図6は、変速カムパターンのいくつかの例を示す図であり、各分図中、aは変速カムパターンに対応するサーボモータ39の回転数の変動パターン、bは変速カムパターンに対応するポリマー散布量の変動パターンである。各分図中には、吸収体一枚分の回転数及びポリマー散布量の経時的変化が示されている。
尚、図6(a)に示す変速カムパターンは、図2に示すように、各ポリマー散布領域3aの流れ方向の中央部に吸水性ポリマーを多く偏在させるパターンであり、図6(b)及び図6(c)に示すパターンは、各ポリマー散布領域3aの流れ方向の前端又は後端寄りの部位に吸水性ポリマーを多く偏在させるパターンである。
【0031】
そして、ラインの運転を開始する。
具体的には、繊維集合体2の搬送機構(図示せず)、ポリマー間欠散布装置3、第1及び第2のコアラップシート供給機構、切断装置6等を作動させる。
ポリマー間欠散布装置3の作動により、吸水性ポリマー30が、選択した変速カムパターンに対応するパターンで、連続的に搬送される繊維集合体2上に散布される。ポリマーが散布された繊維集合体2は、第1及び第2のコアラップシート21,51間に挟まれて吸収体連続体10Aとされた状態で、静電容量式のセンサーの配置位置74Sを通り、次いで、切断装置6により切断される。
【0032】
このようにして、吸収体10が連続的に製造されている間、制御装置7は、主としてコントローラ76のハードウェア及びソフトウェアにより、以下に示す制御を行う。
先ず、制御装置7は、ポリマー散布領域の位置と繊維集合体の切断位置とを検出し、両者のずれを求める。
コントローラー76は、図7に示すように、静電容量式のセンサーからの出力値を、個々のパルス(各カウント)毎に記録しており、各ポリマー散布領域の所定の基準位置が該センサーの配置位置の通過する通過時刻を求める。
例えば、静電容量式のセンサーからの出力値が所定値を上回った時刻を、ポリマー散布領域の先端がセンサーの配置部位を通過した時刻として求めたり、静電容量式のセンサーからの出力値が所定値を下回った時点を、ポリマー散布領域の後端がセンサーの配置部位を通過した時刻として求める。センサーからの出力値と比較する前記所定値は、ポリマーが散布されていない領域がセンサーの配置部位を通っている間の出力値よりやや高めに設定する。あるいは、ポリマーが散布されていない領域がセンサーの配置部位を通っている間の出力値を、静電容量式のセンサーからの出力値として記録させても良い。
【0033】
図7は、エンコーダにより求められるパルス信号cと共に、静電容量式のセンサーの出力値dの経時的な変化を示すグラフであり、T1が、ポリマー散布領域の先端がセンサーの配置部位を通過した時刻であり、T2が、ポリマー散布領域の後端がセンサーの配置部位を通過した時刻である。
また、コントローラ76は、前記測定データを用いて、切断装置に取り付けた検知手段からのパルス信号が入力された時刻を繊維集合体の切断時刻T3として求める。
そして、コントローラ76は、通過時刻T1及び/又はT2に対応するパルス信号P1と前記切断時刻T3に対応するパルス信号P3のカウント数の差eから、各ポリマー散布領域の位置と繊維集合体の切断位置との間のずれを求める。具体的には、通過時刻として記録されたカウント数と、切断時刻として記録されたカウント数の差を、エンコーダ71の分解能から長さに変換し、これを各ポリマー散布領域の位置と繊維集合体の切断位置との間のずれとする。
本実施形態によれば、このようにして、各ポリマー散布領域の位置と繊維集合体の切断位置との間のずれを、繊維集合体や吸収体連続体の表面の凹凸の影響を受けずに、高精度且つ簡便に確認できる。
【0034】
このずれ量が、予め決められた所定の範囲から外れる場合には、コントローラ76は、ずれ量が所定の範囲に入るようにサーボモータの回転速度を補正する制御信号S1,S2を、サーボモータ39に対して出力する。
【0035】
また、制御装置7は、個々の各ポリマー散布領域3a内に存する吸水性ポリマーの量を求める。具体的には、図8に示すように、静電容量式のセンサー74の配置位置を各ポリマー散布領域3aが通過している間(P1とP2との間)の該センサーからの出力値dの記録を利用する。即ち、個々のパルスに対応する該センサーの出力値dを積算して、各ポリマー散布領域に存する吸水性ポリマーの量を求める。この吸水性ポリマーの量は、絶対量でなくてもよいが、ポリマー量が既知の複数のスタンダードの結果と照合して実際のポリマー量(坪量)等を求めることもできる。
このようにして求めたポリマー量が予め設定した所定の範囲から外れる場合には、対応するポリマー散布領域を含む吸収体を、他の正常な吸収体を搬送する搬送路から公知の仕分け手段により排除し、正常な吸収体のみを吸収性物品の製造ライン等に送ることが好ましい。
【0036】
コンピュータ77は、コントローラー76から送信される前記測定データを取り込んで主記憶装置82又は補助記憶装置83の記録域に記録し、該測定データを収集する。本実施態様においては、上述のようにして求めた各ポリマー散布領域の吸水性ポリマーの量の変化を記録し、該記録に基づき、多数のポリマー散布領域についてのポリマー量の変動の傾向を求めた。ポリマーの変動の傾向は、例えば図9に示すようにグラフとして表示手段により表示される。図9は、ポリマー量の変動を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が、ポリマー散布領域中のポリマー量である。そして、ポリマー量の変動を示す曲線fが、上方に向かう場合には、間欠散布装置により散布されるポリマー量が漸増する傾向にあると判断して、間欠散布装置3に供給するポリマー量を減少させる。具体的には、制御装置7が、スクリューフィーダのスクリューを回転させるサーボモータ40に対してその回転速度を減少させるための制御信号S2を出力する。反対に、ポリマー量を示す曲線が、下方に向かう場合には、間欠散布装置により散布されるポリマー量が漸減する傾向にあると判断して、間欠散布装置3に供給するポリマー量を増加させる。具体的には、制御装置7が、サーボモータ40に対してその回転速度を増加させるための制御信号S2を出力する。
このような制御を行うことで、ポリマーの量が予め設定した所定の範囲Hから外れることを未然に防止することができる。
【0037】
本実施態様においては、静電容量式のセンサーの出力値の記録から、各ポリマー散布領域における吸水性ポリマーの分布パターンを求め、求めた分布パターンが、予め設定した分布パターンと異なる場合には、予め設定した分布パターンに近づくように間欠散布装置の散布パターンを変更している。具体的には、図7や図8に示すように、センサー74の出力値の経時的変化をグラフ化し、該グラフの特徴的な値と、予め設定した分布パターンの特徴的な値とを比較して、両者が一致するか否かを判断する。特徴的な値としては、静電容量式のセンサーの出力値がピークを示す時刻T4と、上述したポリマー散布領域の所定の基準位置がセンサーの配置位置を通過した時刻T1,T2との差等が挙げられる。例えば、図7中のP4とP1とのカウント数の差の、P2とP1とのカウント数の差に対する割合等を、特徴的な値として利用することができる。例えば、この割合の差が所定値以内であれば同一、所定値以上であれば異なると判断し、この割合が近づくように、サーボモータ39の速度等を加減速する。
【0038】
本実施態様によれば、このようにして、吸水性ポリマーを、該吸水性ポリマーが不均一に分布するポリマー散布領域が間欠的に形成されるように散布する場合においても、そのポリマーが設計通りに散布されているか否かを高精度且つ簡便に確認でき、高品質の吸収体を経済的に製造することができる。
【0039】
図10は、第2発明の一実施態様を説明する図である。
第2発明の実施態様においては、図10に示すように、第1の積繊ドラム18によって成形され、所定の間隔を開けて搬送される非連続の第1吸収層181上に、第2の積繊ドラム9によって成形された非連続の第2吸収層91を重ねている。第1及び第2の積繊ドラム18,9は、何れも一方向に連続的に回転し、飛散状態にて供給された吸水性ポリマー及びパルプ繊維を、それぞれの周面に形成された凹部182,92内に吸引堆積させ、その堆積物を、第1吸収層181又は第2吸収層91として排出するものである。
図10に示す吸収体の製造装置1’においては、図示しない搬送機構によって図中X方向に連続的に搬送されるコアラップシート180上に、第1の積繊ドラム18によって成形された第1吸収層181が順次載置され、それらの第1吸収層181上に、第2の積繊ドラム9によって成形された第2吸収層91が順次載置される。そして、互いに積層された第1及び第2吸収層は、コアラップシート180に上下面を被覆された後、切断装置(図示せず)によって切断されて吸収体(図示せず)となる。
【0040】
本実施態様においては、第1及び第2吸収層の積層体10Bの搬送路に、上述した構成の静電容量式のセンサー74を配し、該センサーの配置位置74Sを、第1及び第2吸収層の積層体10Bが通過している間の該センサーの出力値を制御装置7に記録し、該出力値の変動パターンから、第1吸収層181と第2吸収層91との間のずれの有無及び程度を検査する。
より具体的には、第1の積繊ドラム18は、コアラップシート180と同一の周速度で回転しており、第1の積繊ドラム18に、所定回転量に応じたパルス信号を発生するエンコーダ71が取り付けられている。そして、センサーの配置位置74Sからの出力値が、パルス信号のカウント時刻と関連付けられて制御装置7に記録される。また、静電容量式のセンサー74の出力値が所定値を上回った時点及びその後に所定値を下回った時点を、第1及び第2吸収層の積層体10Bの前端と後端がセンサー74の配置位置の通過する通過時刻として検出し、それぞれの時刻に対応するパルス信号のカウント数の差を検出する。
【0041】
図11(b)に示すように、第1吸収層と第2吸収層とが正しく重なっている場合の、パルス信号のカウント数の差H1に対して、図11(a)に示すように、第1吸収層と第2吸収層とが正しく重なっていない場合の、パルス信号のカウント数の差H2は大きくなる。
従って、第1及び第2吸収層の積層体10Bの前端と後端がセンサー74の配置位置の通過する時刻に対応するパルス信号のカウント数の差を監視することで、ずれの発生や発生したずれの大きさを検査することができる。
本実施態様においては、ずれが発生を検出したときには、制御手段7から、第2の積繊ドラムを駆動するサーボモータ93の回転を増加又は減少させる制御信号S3を出力させ、それにより、その後の積層体10Bにずれが生じないように補正している。
尚、図10中符合184で示すものは、近接スイッチであり、積繊ドラム18の各凹部に対応して設けられた所定の検出部を検出し、制御装置7に対して間欠的にパルス信号を出力するようになされている。制御装置7は、近接スイッチ184からのパルス信号P5を利用することで、出力値の変動パターンの対比が容易となり、より高精度にずれの有無や大きさの検査が可能である。
【0042】
以上、本発明(第1及び第発明)の一実施態様について説明したが、本発明は上記実施態様に制限されず、適宜変更可能である。
例えば、切断装置としては、帯状の繊維集合体2を一定の間隔で順次切断し得る各種公知のものを用いることができる。
第1発明における繊維集合体としては、従来、吸収体の製造に用いられている各種の材料を用いることができ、不織布化されていないウエブや、各種製法による不織布、織物、これらの積層体等を用いることができる。吸水性ポリマーとしては、従来、吸収体に用いられている各種のものを用いることができる。コアラップシートも同様であるが、例えば、液透過性の紙や不織布等を用いることができる。また、吸収性ポリマーを、各ポリマー散布領域それぞれの流れ方向に該ポリマーが不均一に分布するように散布するのに代えて、各ポリマー散布領域それぞれの流れ方向に該ポリマーが均一に分布するように散布しても良い。
【0043】
第1発明におけるポリマーの間欠散布装置は、変速カムパターンにより電気的に回転を非等速回転させるものに代え、偏芯カムを用いて機械的に回転を非等速回転させるものであっても良い。
また、第2発明において、出力値の変動パターンから、第1吸収層と第2吸収層との間のずれの有無及び程度を検査する方法は、図11(a)に示すような両側に肩のある変動パターン及び図11(b)に示すような両側に型のない変動パターンの何れであるかを制御装置により判別させ、肩のある変動パターンの場合にはずれがあり、肩のない変動パターンの場合にはずれがないと判定させることもできる。また、第2発明における第1及び第2吸収層として、吸水性ポリマーを含む吸収層と吸水性ポリマーを含まない吸収層との組み合わせても良い。
また、第1及び第2発明における吸収体は、コアラップシートを含まないものであっても良い。
【0044】
また、第1及び第2発明における、ポリマーの密度に比例した信号を出力するセンサーとして、静電容量センサーに代えて、透過光量を出力する光電センサー、画像処理装置、色検出センサー(有色のポリマーの場合)、蛍光体検出装置(例えば、特開平10−38541号に記載の蛍光発光体検出装置等を用いることもできる。
また、画像処理によりポリマーの密度に比例した信号を出力するようにしたもの等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1,1’ 吸収体の製造装置
2 帯状の繊維集合体
3 ポリマー間欠散布装置
30 吸水性ポリマー
6 切断装置
7 制御装置
74 静電容量式のセンサー
81 第1吸収層
91 第2吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される帯状の繊維集合体上に間欠散布装置により吸水性ポリマーを間欠的に散布し、該吸水性ポリマーを散布した後の繊維集合体を切断装置で間欠的に切断して吸収体を得る、吸収体の製造方法であって、
ポリマー散布後の繊維集合体の搬送路に配置した、ポリマーの密度に比例した信号を出力するセンサーの出力値を記録し、
前記吸収性ポリマーの散布により形成されるポリマー散布領域が前記センサーの配置位置を通過している間の該センサーの出力値を記録及び積算して前記各ポリマー散布領域に存する吸水性ポリマーの量を求める、吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記吸収性ポリマーを、前記各ポリマー散布領域それぞれの流れ方向に該ポリマーが不均一に分布するように散布する、請求項1記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記センサーが、静電容量式のセンサーである、請求項1又は2記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
繊維集合体の搬送速度に応じた速度で回転する回転体の回転量に応じたパルス信号をエンコーダで求めるとともに、前記各ポリマー散布領域が前記センサーの配置位置を通過している間の個々のパルスに対応する該センサーの出力値を記録及び積算して、各ポリマー散布領域に存する吸水性ポリマーの量を求める、請求項1〜3の何れか記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
繊維集合体の搬送速度に応じた速度で回転する回転体の回転量に応じたパルス信号をエンコーダで求めるとともに、静電容量式のセンサーの出力値より、各ポリマー散布領域の所定の基準位置が該センサーの配置位置を通過する通過時刻を求め、更に前記切断装置に取り付けた検知手段からの情報により、該切断装置による繊維集合体の切断時刻を求め、
前記通過時刻に対応するパルス信号と前記切断時刻に対応するパルス信号のカウント数の差から、各ポリマー散布領域の位置と繊維集合体の切断位置との間のずれを求める、請求項1〜4の何れか記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
各ポリマー散布領域の吸水性ポリマーの量を記録し、該記録に基づき、多数のポリマー散布領域についてのポリマー量の変動の傾向を求め、求めた傾向に応じて、間欠散布装置に供給するポリマー量を増減させ、あるいはそのままの量に維持する、請求項1〜5の何れか記載の吸収体の製造方法。
【請求項7】
前記静電容量式のセンサーの出力値の記録から、各ポリマー散布領域における吸水性ポリマーの分布パターンを求め、求めた分布パターンが、予め設定した分布パターンと異なる場合には、予め設定した分布パターンに近づくように間欠散布装置の散布パターンを変更する、請求項1〜6の何れかに記載の吸収体の製造方法。
【請求項8】
所定の間隔を開けて搬送される非連続の第1吸収層上に、非連続の第2吸収層を重ねる積層工程を具備する吸収体の製造方法であって、
前記第1吸収層及び第2吸収層は吸水性ポリマーを含んでおり、
第1吸収層と第2吸収層との積層状態を、ポリマーの密度に比例した信号を出力するセンサーを用いて検査する検査工程を具備し、該検査工程においては、前記センサーの配置位置を、第1及び第2吸収層の積層体が通過している間の該センサーの出力値を記録し、該出力値の変動パターンから、第1吸収層と第2吸収層との間のずれの有無及び程度を検査する、吸収体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−11235(P2012−11235A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227758(P2011−227758)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2006−350299(P2006−350299)の分割
【原出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】