説明

吸収体及び血液吸収性物品

【課題】 血液を含む液体に対する吸収特性を改善し、向上させた白色の吸収体を提供することにある。
【解決手段】 カルボキシル基と不飽和結合とを有し、数平均分子量が500〜50,000のビニル重合体(A)と、(メタ)アクリル酸(B)及び必要に応じてこれに2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体又は(メタ)アクリル酸(B)の有するカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物を併用した共重合体からなる吸収性樹脂を構成成分として含んでなる吸収体及びこの吸収体から構成される血液吸収性物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた性能を有する吸水性樹脂を用いた吸収体及び血液吸収性物品に関する。更に詳しくは、血液や体液、さらには食品からしみ出る血液を含む肉汁等の吸収特性を改善した吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液を含む液体、すなわち血液を含む体液や生肉のブロック、生魚の切り身等からしみでた血液や肉汁(ドリップ)を吸収させる製品としては、生理用ナプキン、ドリップ吸収材、さらには手術用の血液吸収シート等がそれぞれの用途に応じ使用されている。
それらの吸収体は、血液を含む液体を吸収させ保持させることにより、吸収容量を向上させると共に、吸収後の液戻りを防止することが求められている。
【0003】
かかる吸収体に用いられる吸水性樹脂としては、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物やカルボキシメチルセルロース架橋体、ポリアクリル酸(塩)架橋体、アクリル酸(塩)−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド架橋体等が知られている。
しかし、これらの従来からある吸収性樹脂は、吸水性や保水性、漏れ防止性等が不充分であり、特に吸収される液が血液等の場合には血液に含まれる成分により、吸水性樹脂の吸収特性が著しく低下するため、吸収体としての吸収特性が低いという欠点がある。
【0004】
このことから、吸水性樹脂の血液吸収性を改良する目的で、吸水性樹脂と陰イオン性界面活性剤及び/またはHLB7以上の非イオン性界面活性剤からなる吸水性組成物(例えば特許文献1参照)、ポリエーテルにより表面処理をした吸水性材料(例えば特許文献2参照)、特定の物性を有する界面活性剤、あるいは該界面活性剤とカルボン酸類とを吸水性樹脂に処理した吸収剤組成物(例えば特許文献3参照)などが提案されているが、血液に対する濡れ性は若干改善されるものの繰り返し吸血性、吸血後のドライ感など不十分であった。
また、ポリアミノ酸又はその塩を含む吸水性樹脂からなる吸水性材料(例えば特許文献4参照)、それらを含む生理用ナプキン(例えば特許文献5参照)、血液吸収シート(例えば特許文献6参照)、ドリップ吸収剤(例えば特許文献7参照)が提案されている。しかし、これらのポリアミノ酸を用いて得られる吸収性樹脂は、吸血性に優れるものの、茶色系の色相を有するという問題があった。吸水性樹脂が利用される生理用品やおむつ等の医療、衛生分野は、ことさら清潔で衛生的であることが求められる分野であり、前記吸水性樹脂が茶色系の色相を呈するということは、清潔感が損なわれ不衛生な印象を与えることから致命的な欠陥といえ、当該分野の産業上の利用価値は著しく低いものとなる。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−32641号公報
【特許文献2】特開昭54−70694号公報
【特許文献3】特開2002−35580号公報
【特許文献4】特開2003−245544号公報
【特許文献5】特開2002−253611号公報
【特許文献6】特開2002−263132号公報
【特許文献7】特開2002−263487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、血液を含む液体に対する吸収特性を改善し、向上させた白色の吸収体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カルボキシル基と不飽和結合を有し、特定の分子量を有するビニル重合体と(メタ)アクリル酸との共重合体からなる吸収性樹脂を用いると、血液を含む液体に対する吸収特性を格段に改善し、向上させることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、カルボキシル基と不飽和結合とを有し、数平均分子量が500〜50,000のビニル重合体(A)と(メタ)アクリル酸(B)との共重合体からなる吸収性樹脂を構成成分として含んでなる吸収体及びこの吸収体から構成される血液吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収体は、血液を含む液体の吸収特性に優れるので、生理用ナプキン、タンポン、医療用血液吸収性シート、ドリップ吸収剤等の血液吸収性物品に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するにあたり、必要な事項を以下に具体的に述べる。
本発明の吸収体は、少なくともその一部に吸水性樹脂を含む吸収体である。
本発明における吸収性樹脂は、その一部又は全部が、カルボキシル基と不飽和結合とを有し、数平均分子量が500〜50,000のビニル重合体(A)と(メタ)アクリル酸(B)との共重合体からなるものである。
前記ビニル重合体(A)は、得られる吸収性樹脂の吸血性等の観点から、カルボキシル基を有するものである。これにより、得られる吸収性樹脂の吸血性や血液保持安定性を向上でき、血液を繰り返し吸収させた場合の吸血性の低下を抑制することができる。
また、ビニル重合体(A)は、水溶性のエチレン性不飽和単量体と反応する為の不飽和結合を有するものである。かかる不飽和結合は、得られる高吸収性樹脂からなる粒子同士の凝集を抑制する観点から、ビニル重合体1分子中に1〜3個存在することが好ましい。
【0011】
前記ビニル重合体(A)は、500〜50,000の数平均分子量を有するものである。かかる数平均分子量が500未満の場合又は50,000を超える場合、高吸収性樹脂の吸血性や、血液を繰り返し吸収させた場合の吸血性が低下してしまう。したがって、前記ビニル重合体の数平均分子量は、1,000〜5,000の範囲内であることが好ましく、2,000〜4,000の範囲内であることがより好ましい。
前記ビニル重合体(A)は、例えばカルボキシル基を有するビニル重合体の水溶液と、エポキシ基及び不飽和結合を有する化合物とを混合攪拌することで製造することができる。この場合、40℃〜90℃で10分〜1時間反応させることが好ましい。
【0012】
前記エポキシ基及び不飽和結合を有する化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、グリシジルメタクリレートが、前記カルボキシル基を有するビニル重合体と水中で反応させる際の副反応を抑制できることから好ましい。
カルボキシル基を有するビニル重合体は、1種のビニル単量体を重合して得られるホモビニル重合体であっても、2種以上のビニル単量体を重合して得られるブロック共重合体又はランダム共重合体であっても良い。
【0013】
前記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。その他のビニル単量体として使用できるものは、例えば(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアミド基又は水酸基を有するビニル重合体を挙げることができる。
前記カルボキシル基を有するビニル重合体は、例えば水溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下、前記カルボキシル基を有するビニル単量体及び必要に応じて前記その他のビニル単量体をラジカル重合することで製造できる。
【0014】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物や、2,2'−アゾビス−(2−アミノジプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス−(N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾ化合物等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上併用することができる。
前記ビニル重合体は、そのカルボキシル基が塩基性化合物で中和されていても良い。かかる塩基性化合物として使用できるものは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム等であり、なかでも水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用することが好ましい。
【0015】
本発明に使用する(メタ)アクリル酸(B)は、(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含むものである。かかる(メタ)アクリル酸(B)は、単独でもよく、あるいは必要によりこれに(メタ)アクリル酸以外の親水性基を有するビニル系単量体を併用することもできる。併用する場合、吸収性に優れた高吸収性樹脂を製造する上で、(メタ)アクリル酸を50重量%以上用いることが好ましい。親水性基を有するビニル系単量体としては、例えばイオン性単量体、非イオン性単量体が挙げられる。 イオン性単量体としては、例えばアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、4−スルホブチルメタクリレートソーダ塩等が挙げられる。非イオン性単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0016】
前記(メタ)アクリル酸(B)は、それらの有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和したものが好ましい。このとき、前記カルボキシル基の20〜100モル%を中和することが好ましく、30〜60モル%中和することがより好ましい。これにより、得られる高吸水性樹脂の吸収性を更に向上させることができる。塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム等が挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用することが好ましい。
【0017】
本発明に使用する(メタ)アクリル酸(B)は、2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体又は前記(メタ)アクリル酸(B)の有するカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物を架橋剤として併用することが好ましい。これらは、前記(メタ)アクリル酸(B)が重合した重合体同士を架橋させるものである。前記(メタ)アクリル酸(B)が重合した重合体同士は、前記架橋剤を使用せずとも自己架橋する場合があるが、架橋剤を用いることにより、吸収性、特に吸血性に優れた高吸水性樹脂を製造することができる。
【0018】
2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、例えばジ(メタ)アクリル酸エステル、トリ(メタ)アクリル酸エステル、ビスアクリルアミド、多価アリル化合物などが挙げられる。ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステルなどが挙げられる。トリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ビスアクリルアミドとしては、例えばN,N'−メチレンビスアクリルアミド、N,N'−エチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。多価アリル化合物としては、例えば、ジアリルフタレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。前記2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体のなかでも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドを使用することが好ましい。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸(B)の有するカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物としては、例えばエポキシ基を2個以上有する化合物、イソシアネート基を2個以上有する化合物等が挙げられ、なかでもジグリシジルエーテル化合物を使用することが好ましい。
エポキシ基を2個以上有する化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられ、なかでもエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。
イソシアネート基を2個以上有する化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
前記2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体及び前記(メタ)アクリル酸(B)の有するカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物は、前記(メタ)アクリル酸(B)100重量部に対して0.01〜1重量部の範囲内で使用する必要がある。このうち0.01〜0.5重量部の範囲内であることが好ましい。0.01重量部より少ない場合は充分な架橋構造が得られず、また0.5重量部より多い場合は吸収性能が低下する。
【0021】
ビニル重合体(A)と(メタ)アクリル酸(B)との共重合体からなる吸収性樹脂は、例えば非イオン性界面活性剤を含む疎水性有機溶媒中に、アニオン性界面活性剤とラジカル重合開始剤とを含有する水溶液を逐次供給して油中水滴型の逆相懸濁重合を行い、次いで前記ビニル重合体を含有する水溶液を供給し、油中水滴型の逆相懸濁重合を行い、得られる重合体スラリーを乾燥することにより製造することができる。この方法は、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との相乗効果により多数の微小な粒子同士が結着した表面多孔質な粒子が形成される点で好ましい。
【0022】
本発明で使用する疎水性有機溶媒としては、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。なかでも沸点が水よりも低く、水との共沸混合物を形成できるn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンを使用することが好ましい。前記疎水性有機溶媒は、前記(メタ)アクリル酸(B)に対して、0.5〜10倍使用することが好ましく、0.8〜3倍使用することがより好ましい。これにより、得られる吸水性樹脂の粒子が凝集するのを抑制できる。
【0023】
前記疎水性有機溶媒中の界面活性剤としては、逆相懸濁重合法による吸水性樹脂の製造方法で公知の非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれの界面活性剤、非イオン性共重合体、アニオン性共重合体、カチオン性共重合体等の共重合体、およびその他無機塩等が挙げられる。これらのうち、疎水性有機溶媒に対する溶解性、分散性に優れるため、疎水性有機溶媒中における前記(メタ)アクリル酸(B)、2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、又は前記(メタ)アクリル酸(B)の有する官能基と反応する官能基を2個以上有する化合物、およびラジカル重合開始剤を含む水溶液の分散性に優れる点で非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0024】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、リグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、リン酸トリエステル等が挙げられる。ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、好ましくは下記定義式により求められるHLBが9〜11の、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。
【0025】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えばHLBが4〜9のソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等が挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えばHLBが4〜13のショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリル酸エステル等が挙げられる。ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステルとしては、例えばHLBが10.5のポリオキシエチレンソルビトールテトラオレート等が挙げられる。ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばHLBが9〜10のポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノオレート等が挙げられる。ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、例えばHLBが7〜13のポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリル酸エステル等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばHLBが5〜13のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。リン酸トリエステルとしては、例えばHLBが7〜14のポリオキシエチレン鎖長の異なる、トリジオキシエチレン(C12-C15)アルキルエーテルリン酸、トリヘキサオキシエチレン(C12-C15)アルキルエーテルリン酸、トリオクタオキシエチレン(C12-C15)アルキルエーテルリン酸、トリデカオキシエチレン(C12-C15)アルキルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0026】
本発明で使用するラジカル重合開始剤としては、例えば過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物や、2,2'−アゾビス−(2−アミノジプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス−(N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾ化合物が挙げられ、これらを単独又は2種以上併用することができる。このとき、前記過酸化物に亜硫酸塩、L−アスコルビン酸等の還元性物質やアミン塩等を併用しレドックス系の開始剤としても使用できる。ラジカル重合開始剤は、前記(メタ)アクリル酸(B)100重量部に対して0.1〜1重量部使用する必要がある。
【0027】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えばN−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン重縮合物、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル塩、硫酸化油等が挙げられる。
この中で、一般式(I)で表されるα−オレフィンスルホン酸塩を使用することが釜壁や攪拌羽根への重合物の付着を低減できる上で好ましい。
【0028】
【化1】

一般式(I)中のR’は、炭素原子数8〜30のアルケニル基又は炭素原子数8〜24のヒドロキシアルキル基を示す。Mは、アルカリ金属、第4級アンモニウム又は第4級アミンを示すものである。
炭素原子数8〜30のアルケニル基としては、例えばヘキサデセニル基、テトラデセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、デセニル基、オクテニル基等が挙げられる。また、炭素原子数8〜24のヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシラウリル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシデシル基等が挙げられる。
一般式(I)中におけるMは、入手のし易さの観点から、アルカリ金属であるものが好ましい。
【0029】
前記炭素原子数8〜30のアルケニル基を有するα−オレフィンスルホン酸塩としてはアルケン(C〜C30)モノスルホン酸塩が好ましく、例えばオクタデセンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデセンスルホン酸ナチリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ドデセンスルホン酸ナトリウム、デセンスルホン酸ナトリウム、オクテンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
前記炭素原子数8〜24のヒドロキシアルキル基を有するα−オレフィンスルホン酸塩としてはヒドロキシアルカン(C〜C24)スルホン酸塩が好ましく、例えばヒドロキシラウリルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシオクチルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシテトラデシルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシオクタデシルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシデシルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらα−オレフィンスルホン酸塩は、工業的にはα−オレフィンのスルホン化によって得られるので、通常入手できるのは前記アルケン(C〜C30)モノスルホン酸塩とヒドロキシアルカン(C〜C24)スルホン酸塩の混合物であり、本発明にこれら通常入手可能な混合物も好適に使用することができる。
【0030】
次に本発明の吸水性樹脂の製造方法のさらに具体的な実施態様について説明する。
まず界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を含有する疎水性有機溶媒を、適度な重合反応温度である40〜150℃の範囲、好ましくは60〜90℃の範囲内に調整する。次いで、かかる疎水性有機溶媒中に、(メタ)アクリル酸、必要によりこれにその他の親水性基を有するビニル系単量体を併せて100重量部に対して2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体又は前記(メタ)アクリル酸の有するカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物、ラジカル重合開始剤、必要に応じさらにアニオン性界面活性剤を含有する水溶液(以下「単量体水溶液」と省略する。)を逐次供給しながら撹拌する。これにより前記単量体を疎水性有機溶媒中に微分散することができ、油中水滴型の逆相懸濁重合する。
疎水性有機溶媒中に単量体水溶液を逐次供給した後、カルボキシル基と不飽和結合とを有し、500〜10000の重量平均分子量を有するビニル重合体(以下「ビニル重合体と省略する。」(A)を疎水性有機溶媒中に供給する。このときの供給方法は、一括添加でも、逐次供給であってもよい。
【0031】
ビニル重合体(A)の水溶液は、単量体水溶液を逐次供給し終えた直後から2時間以内に供給することが好ましい。これにより単量体が重合して得られる重合体の粒子表面が安定化し、粒子同士が融着することを防止できる。
ビニル重合体(A)の水溶液を供給した後、60℃〜80℃で10分〜3時間攪拌を継続することで、膨潤したビーズ状の吸水性樹脂、疎水性有機溶媒及び界面活性剤を含有するスラリー状の混合物を得ることができる。前記スラリー状混合物から例えば共沸脱水法、加熱乾燥法等で吸水性樹脂を分離することができる。
【0032】
共沸脱水法としては、例えば前記スラリー状混合物とシクロヘキサン等の有機溶媒を混合し、水と有機溶媒の共沸温度に保ちながら、樹脂固形分に対する含水率が25〜5重量%になるまで脱水する方法が挙げられる。共沸脱水後、例えばデカンテーション法や濾過法で吸水性樹脂とシクロヘキサンとを分離し、次いで、乾燥することで粉末状の高吸水性樹脂を製造することができる。
加熱乾燥法としては、例えば、真空乾燥機、熱風乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機、ドラムドライヤー等を用いる方法が挙げられる。乾燥温度は50℃以上であることが好ましく、60〜200℃の範囲内であることがより好ましく、70℃〜180℃の範囲内であることがさらに好ましい。かかる温度範囲内で乾燥させることで、熱による高吸水性樹脂の分解を防止し、その結果、吸収性の低下を防止できる。
【0033】
本発明における吸収体は、前記吸水性樹脂を構成成分として含むものである。
吸収体の構造としては、高拡散で且つ透過性の高いシートで前記吸水性樹脂を挟持させたシート構造が例示される。ここで、高拡散で且つ透過性の高いシートとしては、有孔または無孔の紙、不織布が好適に用いられる。紙をシートとして用いる場合は、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、コウゾ、ミツマタを原料とする紙、及びこれらにレーヨン、ポリエチレン、コットン繊維を混抄したものであってよい。また、不織布の原料としては、綿、パルプ、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の合成高分子から製造した合成繊維を挙げることができる。これら繊維は単独で用いてもよく、混合複合化してもよい。合成繊維を不織布の原料とする場合、用いる繊維としては異種ポリマーをブレンドした繊維、芯鞘構造とした繊維、あるいはバイメタル構造にした繊維であってもよい。また、繊維の断面も円型の通常の繊維以外に異型断面構造を有していてもよい。不織布の製造法は特に限定されず、従来公知の方法により製造したものであってよい。使用する繊維に応じてケミカルボンド法、ファイバーロック法、エアレイ法、ステッチボンド法、スパンボンド法、メルトブロー法、スパンレース法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、湿式法などの公知の技術がいずれも採用し得る。
【0034】
高拡散で且つ透過性の高いシートと吸水性樹脂から一体の吸収体を加工する方法としては、予め水で湿らせておいたシート上に吸水性樹脂を均一に散布するか、もしくはシート上に吸水性樹脂を均一に散布した後、蒸気もしくは霧状の水を散布し吸水性樹脂を糊状化させ、さらに高拡散で且つ透過性の高いシートで圧着することにより一体化することができる。このとき、1枚の高拡散で且つ透過性の高いシートの半面に吸水性樹脂を散布し1枚のみで吸収性樹脂を包んで一体化しても良いし、吸収性樹脂を高拡散で且つ透過性の高いシート一面に散布し別のシートで挟持することにより一体化しても良い。また、吸水性樹脂の接着性が弱く強度を保てない場合はバインダーを併用して用いることができる。高拡散で且つ透過性の高いシートに対し吸水性樹脂の配合割合は吸水性樹脂10〜500g/mが好ましい。
【0035】
さらに、吸収体の構造としては、吸水性繊維に吸水性樹脂を分散混入してなるものであってもよい。吸水性繊維としては、フラッフパルプ、即ちセルロース繊維の他、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが好適材として挙げられる。更に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の疎水性合成繊維を併用してもよい。パルプは、化学パルプ、機械パルプ、あるいは化学機械パルプのシートを粉砕機で綿状にしたものである。パルプ原料としては針葉樹に限らず、広葉樹も使用できる。また、古紙パルプ、わら、竹、ケナフ等も使用することができる。
【0036】
吸収体は前述の吸水性繊維と吸収性樹脂を混合してなる単層構造であっても良く、また、吸収性樹脂層の上に吸水性繊維層を積層した構造であっても良く、あるいは、吸水性繊維層の上に高吸収性ポリマーと吸水性繊維を混合してなる層を積層した構造であっても良く、二つの吸水性繊維層の間に高吸収性ポリマーと吸水性繊維を混合してなる層を積層した構造であっても良い。吸水性繊維と高吸収ポリマーの配合割合は吸水性繊維100重量部に対して吸水性樹脂10〜1000重量部が好ましく、さらに吸水性繊維100重量部に対して吸水性樹脂10〜500重量部が好ましい。吸水性繊維をシート状に形成する方法としては公知の乾式パルプエヤーレイド方式を採用することが望ましい。この方法を採用することによって吸水性樹脂を吸水性繊維中に均一に分散させることが出来る。乾式パルプエヤーレイド方式は、吸水性繊維および吸収性樹脂を空気の流れにのせて搬送しウエブを形成させる方法である。上述のような材料から構成された液体吸収用シートを圧縮成形する場合、密度が均一になるように表面を平滑に成形したり、あるいは液体を長手方向および斜め方向に導くエンボス加工を施し密度が部分的に異なるようにしたりしても良い。
【0037】
本発明における吸収体は、血液吸収性に優れるので、液体透過性シートを有する袋状のものに入れ、血液吸収性物品として用いることができる。液体透過性シートを有する袋としては、例えば、液透過性シートと液体を透過しないかあるいは透過し難い非液透過性シートとからなるものを挙げることが出来、この場合、前記液透過性シートにより構成された部分が、液体透過可能な部位となる。液透過性シートと非液透過性シートとを上下に積層して、これら液透過性シート及び非液透過性シートの周囲をシールすることで袋状としており、一方面全体または一部が液体透過可能な部位となり、他方面全体が液体を透過しないかあるいは透過し難い面となっている。
【0038】
その他の袋の態様としては、例えば、前記液透過性シートを2枚上下に積層して周囲をシールすることで袋状としたもの、前記非透液シートを2枚上下に積層して周囲をシールすることで袋状としたものであって、一方の非液透過性シートに多数のスリット又は細孔を形成して、液透過性にしたもの等を挙げることが出来る。液透過性シートは、液体が透過可能な透過性と、耐水性と、本発明の吸収剤が滲出しない程度の密度(孔径)とを有し、且つ人体に悪影響を与えない素材で構成されるものが好ましく、具体的には、湿式不織布、スパンポンド不織布、水流絡合不織布等の不織布、又は紙等を挙げることが出来る。また、非液透過性シートは液体を透過しないかあるいは透過し難い非透過性と耐水性とを有し、且つ人体に悪影響を与えない素材で構成されるものが好ましい。非透液性シートを例示すれば、好ましくは厚さ10〜50ミクロン、より好ましくは20〜30ミクロンの範囲のポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルム、ポリアミドフィルム等の合成樹脂フィルム、又はポリプロピレンフィルムとポリエチレンフィルムとで構成された、好ましくは厚さ20〜100ミクロン、より好ましくは25〜40ミクロンの範囲の2層フィルム等を好適に用いることが出来る。尚、この場合、非液透過性シートには液透過性シートよりも液体の透過性が低い範囲で小孔やスリットを形成しても良い。
【0039】
さらに、前記血液吸収性物品は、不織布、多孔性プラスチックシート等からなる液透過性シートと、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などからなる非液透過性の防漏材の間に、吸収体を配置し、外縁部をホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段により接合された構造であってもよい。また、必要に応じ横漏れ防止用の部位、例えば生理用ナプキンの場合ギャザーと呼ばれる部位を両側部に装着しても良い。
本発明の血液吸収性物品は、生理用ナプキン、タンポン、手術用血液吸収シート、魚介類や食肉から出るドリップ吸収用シート、創傷部位の保護用パッド、創傷被覆剤、高機能性ガーゼ、止血剤、歯科用前掛け、ペット用シート、動物実験・解剖用血液・廃液吸収シート等として用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。以下において、%は、特にことわりのない限り、全て重量基準であるものとする。尚、樹脂の諸性質は以下の方法で測定した。
【0041】
[樹脂血液吸収量の測定方法]
内径95mmのシャーレ中に、後記実施例で得られた重合体粒子約1.0gを秤量し、馬脱繊血20gを加え1分間血液を吸収させた。1分後シャーレ内容物を5枚重ねした20cm径濾紙上に取り出し、上から5枚重ねした20cm径濾紙ではさむことにより余分な血液を濾紙に吸収させた。残りのゲル物の重さを秤量し、ゲル物の重さから最初の重合体粒子の重さ1.0gを差し引くことにより、重合体粒子1gが吸収した血液吸収量の測定を行った。
【0042】
[吸収体の血液吸収量の測定方法]
フラスコ内に馬脱繊維血50g秤量し、その中に4×4cmに裁断した吸収体を5分間漬けることにより血液を吸収させた。血液を吸収させた後、吸収体をピンセットでつまみ上げ、血液が垂れなくなるまで空中で保持した。吸収体の重さを測定し、血液吸液前のシートの重さを差し引くことにより、血液吸引量(g)を算出した。
【0043】
(参考例1)(カルボキシル基と不飽和結合とを有するビニル重合体(a)の調製例)
攪拌器、滴下装置、還流装置、および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イオン交換水の187.7部を仕込み、窒素雰囲気下、93℃まで昇温した。
次いで、同温度で、アクリル酸の124.3部と、過硫酸ナトリウムの9.8部とイオン交換水の61.29部とからなる溶液とを、各々2時間に亘って滴下した。滴下終了後も、同温度に、6時間のあいだ保持した後、25℃まで降温した。ここに、水酸化ナトリウムの30%水溶液を加えて、樹脂固形分(以下、N.V.と略記する。)が35%で、ガードナー粘度(以下、VIS.と略記する。)がC−Dで、pHが2.61の、ポリアクリル酸樹脂を得た。次いで、攪拌器、滴下装置、還流装置、および空気導入管を備えた別の反応容器に、得られたポリアクリル酸樹脂100部を仕込み、空気雰囲気下、70℃まで昇温した。同温度で、メタクリル酸グリシジル(以下、GMAと略記する。)の2.4部を加えて、同温度に1時間の間保持した。反応後、水酸化ナトリウムの30%水溶液の24.4部を加えて、pHが5.07の、カルボキシル基と不飽和結合とを有するビニル重合体(a)の溶液を得た。分子量を東ソー株式会社製液体クロマトグラフCCPMにTSKGELカラムG5000PSXとG3000PSXの2本連結カラムを装着しリン酸緩衝液(pH=7.0)を媒体とし測定を行ったところ、数平均分子量が3,000であった。
【0044】
(参考例2)(カルボキシル基と不飽和結合とを有するビニル重合体(b)の調製例)
攪拌器、滴下装置、還流装置、および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イオン交換水の187.7部を仕込み、窒素雰囲気下、93℃まで昇温した。
次いで、同温度で、アクリル酸の124.3部と、過硫酸ナトリウムの3.7部とイオン交換水の61.29部とからなる溶液とを、各々2時間に亘って滴下した。滴下終了後も、同温度に、6時間のあいだ保持した後、25℃まで降温した。ここに、水酸化ナトリウムの30%水溶液を加えて、N.V.が35%で、VIS.がH−Iで、pHが2.57の、ポリアクリル酸樹脂を得た。次いで、攪拌器、滴下装置、還流装置、および空気導入管を備えた別の反応容器に、上で得られたポリアクリル酸樹脂100部を仕込み、空気雰囲気下、70℃まで昇温した。同温度で、GMA0.9部を加えて、同温度に1時間の間保持した。反応後、水酸化ナトリウムの30%水溶液の24.4部を加えて、pHが5.02の、カルボキシル基と不飽和結合とを有するビニル重合体(b)の溶液を得た。分子量の測定を行ったところ、数平均分子量が8,000であった。
【0045】
(参考例3)(カルボキシル基と不飽和結合とを有するビニル重合体(c)の調製例)
攪拌器、滴下装置、還流装置、および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イオン交換水の319.9部を仕込み、窒素雰囲気下、93℃まで昇温した。
次いで、同温度で、アクリル酸の65.1部とヒドロキシエチルアクリレートの195.2部、過硫酸ナトリウムの20.2部とイオン交換水の105部とからなる溶液とを、各々2時間に亘って滴下した。滴下終了後も、同温度に、6時間のあいだ保持した後、25℃まで降温した。ここに、水酸化ナトリウムの30%水溶液を加えて、N.V.が35%で、VIS.がHで、pHが2.61の、樹脂溶液を得た。次いで、攪拌器、滴下装置、還流装置、および空気導入管を備えた別の反応容器に、上で得られたポリアクリル酸樹脂80部を仕込み、空気雰囲気下、70℃まで昇温した。同温度で、GMA2.0部を加えて、同温度に1時間の間保持した。反応後、水酸化ナトリウムの30%水溶液の5.2部を加えて、pHが5.22の、カルボキシル基と不飽和結合とを有するビニル重合体(c)の溶液を得た。分子量の測定を行ったところ、数平均分子量が4,000であった。
【0046】
(参考例4)(エチレン性不飽和基を有するポリアスパラギン酸の調製例)
攪拌装置、温度計、還流装置、窒素ガス吹き込み装置を装着した1Lの4ツ口フラスコに、無水マレイン酸96g、イオン交換水50gを加えた。次いで55℃に加温し無水マレイン酸を溶解させた後、一旦冷却して無水マレイン酸のスラリーを得た。再び系内を加温し、55℃になったところで、28%アンモニア水60.8gを添加した。その後、系内の温度を80℃に昇温した。3時間反応させた後、得られた水溶液を乾燥し反応中間体を得た。2Lのナスフラスコに反応中間体100gおよび85%燐酸10gを仕込み、エバポレーターを用い、オイルバス浴温中で、200℃で減圧の下、4時間反応させた。得られた生成物を水およびメタノールで数回洗浄することによりポリこはく酸イミドの粉末を得た。得られたポリこはく酸イミドをGPCで測定した結果、重量平均分子量は3000であった。
次いで、攪拌装置、温度計、還流装置、窒素ガス吹き込み装置を装着した別の反応器に、水酸化ナトリウム20.6gを溶解させた水溶液75gを加えた後、参考例1で得られたポリこはく酸イミドの粉末50gを添加することによりポリこはく酸イミドの水溶液を得た。次いで、温度を90℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート5.0gを加え、1時間反応を行うことにより、メタクリロイル基を導入したポリアスパラギン酸の加水分解物を含有する水溶液を得た。
【0047】
《参考例5》吸水性樹脂1の製造方法
500mlの三角フラスコにアクリル酸30gを加え、外部より冷却しつつ水酸化リチウム・1水和物8.74gを溶解した水酸化リチウム水溶液81.5gを滴下してアクリル酸の50モル%を中和した。この液に、ラテムルPS(アルカンスルホン酸ナトリウム 花王株式会社製)1.89gを添加し溶解した。更に、この液にN,N’−メチレンビスアクリルアミド23.4mg、過硫酸アンモニウム0.05gを加えて溶解した。
これとは別に、攪拌装置、温度計、還流装置、窒素ガス吹き込み装置を装着した500mlの4ツ口フラスコに、シクロヘキサン164gを加え、これにレオドールTW−O106V(ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート(EO;6モル付加体)(HLB=10.0)花王株式会社製)0.41gを添加して500rpmで撹拌しながら分散させた。次に、フラスコを窒素置換した後、75℃に昇温し、前記で調製したアクリル酸水溶液を60分間で滴下した。滴下後、先に得られたカルボキシル基含有ビニル重合体(a)8gを一括添加した。次いで70〜75℃で3時間保持した後、シクロヘキサンとの共沸によって生成した樹脂の含水率が10%になるまで脱水を行った。尚、攪拌は500rpmの回転数で一定して行った。反応終了後、デカンテーションでシクロヘキサン相を分離し、続いて得られた含水重合体粒子から70℃で3時間減圧乾燥しさらに180℃で1時間減圧乾燥することにより水を含水率が5%になるまで除去し、吸水性樹脂1を得た。
【0048】
《参考例6》吸水性樹脂2の製造方法
カルボキシル基含有ビニル重合体(a)を(b)に変更した以外は参考例5と同様の操作により吸水性樹脂2を得た。
《参考例7》吸水性樹脂3の製造方法
カルボキシル基含有ビニル重合体(a)を(c)に変更した以外は参考例5と同様の操作により吸水性樹脂3を得た。
《参考例8》吸水性樹脂4の製造方法
カルボキシル基含有ビニル重合体(a)をエチレン性不飽和基を有するポリアスパラギン酸に変更した以外は参考例1と同様の操作により褐色の吸水性樹脂4を得た。
【0049】
《参考例9》吸水性樹脂5の製造方法
500Lのデスカップにアクリル酸150gを加え、外部より冷却しつつ水酸化ナトリウム33.3gを溶解した水酸化ナトリウム水溶液341.5gを滴下してアクリル酸の50モル%を中和した。次いで、N,N’−メチレンビスアクリルアミド468mg、過硫酸アンモニウム620mg添加溶解させた。攪拌装置、温度計、還流装置、窒素ガス吹き込み装置を装着した2Lの4ツ口フラスコに、シクロヘキサン820gを加え、これにレオドールスーパーSP−S10(ソルビタンモノステアレート、花王株式会社製)3.75gを添加して350rpmで撹拌しながら分散させた。次に、フラスコ内を窒素置換した後、調製したアクリル酸水溶液を添加混合した。添加後フラスコを80℃のウオーターバス中で加熱することにより昇温したところ、70℃を超えた時点で発熱がおこった。65〜75℃で3時間保持した後、シクロヘキサンとの共沸によって生成した樹脂の含水率が10%になるまで脱水を行った。尚、攪拌は350rpmの回転数で一定して行った。反応終了後、デカンテーションでシクロヘキサン相を分離し、続いて得られた含水重合体粒子から減圧乾燥により水を含水率が5%になるまで除去し、吸水性樹脂5を得た。
【0050】
《実施例1〜3》
参考例5〜7で得られた吸水性樹脂1、2、および3を目付15g/mの紙シートに90g/mの目付になるように均一に散布した。散布後霧吹きを用い吸水性樹脂を湿潤させた後、別の目付15g/mの紙シートにより圧着させ、吸収体を得た。得られた吸収体を4cm×4cmに裁断し血液吸収量の測定を行った。吸収体は、表−1に示すように優れた血液吸収力を有することが判る。
《実施例4》
参考例5で得られた吸水性樹脂1を目付15g/mの紙シートに35g/mの目付になるように均一に散布した。散布後霧吹きを用い吸水性樹脂を湿潤させた後、別の目付15g/mの紙シートにより圧着させることにより吸収体が得られた。得られた吸収体を4cm×4cmに裁断し血液吸収量の測定を行った。吸収体は、表−1に示すように優れた血液吸収力を有することが判る。
【0051】
《比較例1》
目付15g/mの紙シート2枚を重ね、4cm×4cmに裁断し血液吸収量の測定を行った。
《比較例2》
参考例5、6および7で得られた吸水性樹脂の代わりに、参考例8で得られた吸水性樹脂4を用いた以外は実施例1〜3と同様の操作により吸収体を調製し、血液吸収量の測定を行った。本吸収体は血液吸収性には優れるものの、表面に樹脂の褐色が透けて見えた。
《比較例3》
参考例5、6および7で得られた吸水性樹脂の代わりに、参考例9で得られた吸水性樹脂5を用いた以外は実施例1〜2と同様の操作により吸収体を調製し、血液吸収量の測定を行った。
【0052】
【表1】

【0053】
《実施例5》
リードックッキングペーパー(ライオン株式会社製)を10cm×20cmに裁断し、3枚を重ね、ティッシュ2枚で夾み、5kg/cmでプレスすることによりシートを作成した。作成したシートの2枚目と3枚目の間に吸水性樹脂1を180g/mの目付になるように均一に散布することにより吸収体を作成した。吸収体上に10cm×20cm液透過性の多孔性ポリエチレンシートを重ね、下にポリエチレンシートを敷き、周りを接着することにより生理用ナプキンの作成を行った。中央部から馬脱繊血4gを添加し3分間吸収させた。5枚重ねした20cm径濾紙を血液吸収後の生理用ナプキン上にのせ、さらに同径の5kgのおもりを5分間のせた。5分後濾紙に血液の戻りがあるか観察を行ったところ、濾紙には血液の付着がなかった。
【0054】
《実施例6》
実施例1において吸水性樹脂1を用いた吸収体を不織布からなる液透過性シートとポリエチレンからなる液非透過性シートで夾み、周囲をシールすることによりドリップ吸収シートを作成した。本ドリップ吸収シートは優れた血液吸収性を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基と不飽和結合とを有し、数平均分子量が500〜50,000のビニル重合体(A)と(メタ)アクリル酸(B)との共重合体からなる吸収性樹脂を構成成分として含んでなる吸収体。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸(B)が、2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体又は(メタ)アクリル酸(B)の有するカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物を併用する請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
前記共重合体が、非イオン性界面活性剤を含む疎水性有機溶媒中に、(メタ)アクリル酸(B)とアニオン性界面活性剤とラジカル重合開始剤とを含有する水溶液を逐次供給して油中水滴型の逆相懸濁重合を行い、次いで前記ビニル重合体(A)を含有する水溶液を供給し油中水滴型の逆相懸濁重合を行い、得られる重合体スラリーを乾燥してなるものである請求項1又は2記載の吸収体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体と液透過性シートとから構成される血液吸収性物品。


【公開番号】特開2006−169284(P2006−169284A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359735(P2004−359735)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】