吸収体製品
【課題】腰部や腹部での締め付けによる不快感が無く、漏れや蒸れも無く、コストも安いウエスト締付けフリーの吸収体製品を提供する。
【解決手段】吸収部を含むシート積層体からなり、着用者の股下部と前身頃と後身頃とを覆うように形成された吸収体本体と、この吸収体本体を着用者に固定するための固定部材とから構成される吸収体製品において、上記固定部材は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の近傍に位置して、着用者の大腿部の全周に弾性的に密着させて固定するための大腿部固定部と、吸収体本体の前身頃と後身頃とに係止されて、着用者の肩又は首に掛け回して吸収体本体を吊り上げて固定するための吊り上げバンドとでなり、上記吊り上げバンドは、その両端末部の一端が吸収体本体の後身頃に固定されるとともに、両端末部の他端が吸収体本体の前身頃に着脱自在に係止可能である吸収体製品。
【解決手段】吸収部を含むシート積層体からなり、着用者の股下部と前身頃と後身頃とを覆うように形成された吸収体本体と、この吸収体本体を着用者に固定するための固定部材とから構成される吸収体製品において、上記固定部材は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の近傍に位置して、着用者の大腿部の全周に弾性的に密着させて固定するための大腿部固定部と、吸収体本体の前身頃と後身頃とに係止されて、着用者の肩又は首に掛け回して吸収体本体を吊り上げて固定するための吊り上げバンドとでなり、上記吊り上げバンドは、その両端末部の一端が吸収体本体の後身頃に固定されるとともに、両端末部の他端が吸収体本体の前身頃に着脱自在に係止可能である吸収体製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部や腹部での締め付けによる不快感が無く、漏れや蒸れも無く、コストも安くできるウエスト締付けフリーの吸収体製品に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児用や成人用のおむつのような吸収体製品としては、オープン型式とパンツ型式が知られている。
【0003】
オープン型式の吸収体製品は、腰部の両側で分離されて平らに展開でき、装着時に前身頃と後身頃の両側部をテープ等で着脱可能に連結するものである。
【0004】
パンツ型式の吸収体製品は、前身頃と後身頃の両側部を予め接合して、腰回り開口部と一対の脚周り開口部とを形成したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの型式の吸収体製品であっても、ずれや脱落、尿等の漏れを防止するために、テープ等やウエストギャザーで腰部や腹部を強く締め付ける必要があるから、着用者には苦痛が伴い、しかも身体にも悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、腰部や腹部での締め付けによる不快感が無く、漏れや蒸れも無く、コストも安くできるウエスト締付けフリーの吸収体製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、吸収部を含むシート積層体からなり、着用者の股下部と前身頃と後身頃とを覆うように形成された吸収体本体と、この吸収体本体を着用者に固定するための固定部材とから構成される吸収体製品において、上記固定部材は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の近傍に位置して、着用者の大腿部の全周に弾性的に密着させて固定するための大腿部固定部と、吸収体本体の前身頃と後身頃とに係止されて、着用者の肩又は首に掛け回して吸収体本体を吊り上げて固定するための吊り上げバンドとでなることを特徴とする吸収体製品を提供するものである。
【0008】
本発明によれば、吸収体製品を使用する場合には、着用者の左右の足を左右の大腿部固定部にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、左右の大腿部固定部が広がりながら左右の大腿部の全周に弾性的に密着するようになる。
【0009】
その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0010】
上記吊り上げバンドは、その両端末部が吸収体本体の両身頃の双方に固定されている構成、又はその両端末部の一端が吸収体本体の両身頃の一方に固定されるとともに、両端末部の他端が吸収体本体の両身頃の他方に着脱自在に係止可能である構成のいずれかを選択することができる。
【0011】
特に、後者の構成を選択した場合には、吊り上げバンドの着脱自在な他端に粘着テープが設けられるとともに、両身頃の他方の外面側シートに、上記粘着テープを着脱自在に貼付け可能な貼付け部が設けられている構成、吊り上げバンドの着脱自在な他端に機械式ファスナーの雄部が設けられるとともに、両身頃の他方の外面側シートの表面に、上記雄部を着脱自在に係止可能な機械式ファスナーの雌部が設けられている構成、外面側シートは、表面にループ状繊維組織を有する不織布を用いて、機械式ファスナーの雌部として使用する構成、吊り上げバンドの着脱自在な他端にバンド側結束具が設けられるとともに、両身頃の他方に、バンド側結束具を着脱自在に結束可能な身頃側結束具が設けられている構成のいずれかを選択することができる。
【0012】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体のレッグギャザー存在部位に大腿部挿入穴を開口させてなる構成とするのが好ましく、特に、レッグギャザー存在部位は、複数本の弾性糸が添設されて、弾性糸の間にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすれば、左右の大腿部挿入穴が左右の大腿部の全周に弾性糸の弾性でより緊密に密着するようになる。
【0013】
上記レッグギャザー存在部位は、立体状レッグギャザー部が設けられてなり、この立体状レッグギャザー部にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成としたり、平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部とが併設されてなり、この平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部の境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすることができる。
【0014】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に弾性シート体が取付けられて、この弾性シート体に大腿部挿入穴を開口させてなる構成としたり、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴としてなる構成としたり、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴とするとともに、弾性バンドに切り込みが形成されて、この切り込みの両端末部が着脱自在に係止可能である構成としたりすることができる。
【0015】
上記大腿部固定部は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の弾性部分と股下部の左右両側に延在する伸縮性の吊り上げバンドとで構成されるようにすることができる。
【0016】
これを具体化して、上記吸収体本体の平面状レッグギャザー部に、大腿部相当部位を除いて両身頃に跨って、吊り上げバンドが移動・伸縮可能に挿通されるトンネル部が設けられ、このトンネル部に挿通された吊り上げバンドの一端が両身頃の一方に固定されるとともに、大腿部相当部位でトンネル部から露出した吊り上げバンドを外方に引き出して、この引き出した吊り上げバンドと平面状レッグギャザー部とで大腿部挿入穴が形成されてなる構成とすることができる。
【0017】
この構成であれば、吸収体製品を使用する場合には、トンネル部から外部に露出した吊り上げバンドを外方に引き出して、この引き出した吊り上げバンドと平面状レッグギャザー部との間の大腿部挿入穴に着用者の左右の足をそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴の内側となる平面状レッグギャザー部が大腿部のほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴の外側となる伸縮性の吊り上げバンドが大腿部のほぼ外半周部分に弾性的に密着するようになる。
【0018】
その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0019】
また、上記吸収体本体の立体状レッグギャザー相当部位に、股下部と両身頃に跨って、吊り上げバンドが移動・伸縮可能に挿通するトンネル部が設けられ、このトンネル部に挿通された吊り上げバンドの一端が両身頃の一方に固定されるとともに、トンネル部と平面状レッグギャザー部との境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすることもできる。
【0020】
この構成であれば、吸収体製品を使用する場合には、平面状レッグギャザー部を外方に引っ張り伸ばして、この引っ張り伸ばした平面状レッグギャザー部とトンネル部内の吊り上げバンドとの間の大腿部挿入穴に着用者の左右の足をそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴の内側となるトンネル部内の吊り上げバンドが大腿部のほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴の外側となる平面状レッグギャザー部が大腿部のほぼ外半周部分に弾性的に密着するようになる。
【0021】
その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0022】
上記吊り上げバンドに、大腿部の締め付けが必要以上に弛んだり、締め付け過ぎたりのいずれかまたは両方を阻止するストッパーが設けられている構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、吸収体製品を使用する場合には、着用者の左右の足を左右の大腿部固定部にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、左右の大腿部固定部が広がりながら左右の大腿部の全周に弾性的に密着するようになり、その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0024】
したがって、着用者に対しては、吸収体本体の大腿部固定部が着用者の大腿部の全周に弾性的に密着することで、大腿部固定部が着用者の大腿部に固定され、吊り上げバンドを着用者の首又は肩に掛け回すことで、吸収体本体が着用者の首又は肩に固定されるようになるから、着用者が動き回ったり体位を変えても、ずれたり脱落することが無く、尿等の漏れも無くなる。また、着用者の腰部や側部には吸収体本体が存在しないので、通気・換気性が良くなって蒸れも無くなる。さらに、腰部や腹部への締め付けが全く無いので(ウエスト締付けフリー)、身体にも良くて不快感も無くなる。
【0025】
ケアをする人に対しては、着用者の身体サイズに対する融通性が高く、位置決めも簡単なために、誰にでも交換し易い。また、脱がせる際に腰部は広がるので、便等が身体に付着することが少なくてケアがし易い。さらに、捨てる際に伸縮性の吊り上げバンドをラッピングバンドとして利用できるので、密閉シールし易い。さらにまた、ウエスト用ギャザーやシャーリングギャザー等が無いので、おむつ構造がシンプルでコストが安くなる。
【0026】
一方、レッグギャザー存在部位に複数本の弾性糸を添設して、弾性糸の間にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすれば、左右の大腿部挿入穴が左右の大腿部の全周に弾性糸の弾性でより緊密に密着するようになるとともに、レッグギャザー用弾性糸を合理的に利用できるので別の弾性糸を添設する必要がなくなって、コストアップにならない。
【0027】
また、吸収体本体の平面状レッグギャザー部に設けたトンネル部に吊り上げバンドを挿通させて、大腿部相当部位でトンネル部から露出した吊り上げバンドを外方に引き出して、この引き出した吊り上げバンドと平面状レッグギャザー部とで大腿部挿入穴を形成する構成であれば、吊り上げバンドを着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドが伸長して引っ張られるから、吊り上げバンドが大腿部により強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0028】
さらに、吸収体本体の立体状レッグギャザー相当部位に設けたトンネル部に吊り上げバンドを挿通させて、トンネル部と平面状レッグギャザー部との境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させた構成であれば、吊り上げバンドを着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドが伸長して引っ張られるから、吊り上げバンドが大腿部により強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0029】
さらにまた、吊り上げバンドに、大腿部の締め付けが必要以上に弛んだり、締め付け過ぎたりのいずれかまたは両方を阻止するストッパーを設けた構成であれば、吊り上げバンドが必要以上に弛むと大腿部に弾性的に密着しにくくなって、ずれや漏れが生じやすくなるところ、ストッパー部で吊り上げバンドが必要以上に弛むのが阻止されるから、吊り上げバンドが常に大腿部に弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなるとともに、吊り上げバンドを大腿部に締め付け過ぎることをも阻止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態の吸収体製品の使用時の正面図である。
【図2】吸収体製品であり、(a)は展開時の平面図、(b)は使用時の正面図である。
【図3】吸収体製品の分解斜視図である。
【図4】吸収体製品の変形例の展開時の平面図である。
【図5】(a)〜(e)は、それぞれ吊り上げバンドの配置構造例の平面図である。
【図6】(a)(b)(c)は、それぞれ吊り上げバンドの固定構造例の平面図、(d)は粘着テープによる固定構造例の側面図、(e)は(d)の正面斜視図である。
【図7】(a)は機械式ファスナーによる固定構造例の側面図、(b)は(a)の正面斜視図、(c)はランディングゾーンを設けた吊り上げバンドの固定構造例の正面斜視図である。
【図8】(a)は、結束具と結束穴による固定構造例の正面斜視図、(b)は吸収体本体の展開平面図、(c)はカフスボタン状結束具の断面図、(d)はフック状結束具の断面図である。
【図9】(a)は大腿部挿入穴を平面状レッグギャザー部の間に形成した平面図、(b)は大腿部挿入穴を立体状レッグギャザー部に形成した側面図、(c)は(b)の要部平面図、(d)は大腿部挿入穴を立体状レッグギャザー部と平面状レッグギャザー部との境部分に形成した側面図、(e)は(d)の平面図である。
【図10】(a)は弾性シート体で大腿部挿入穴を形成した平面図、(b)は環状の弾性バンドで大腿部挿入穴を形成した平面図、(c)は開閉可能な環状の弾性バンドで大腿部挿入穴を形成した平面図、(d)は(c)の環状の弾性バンドの拡大図である。
【図11】(a)は吸収体製品の変形例の平面図、(b)は(a)の断面図、(c)は(a)の使用時の斜視図である。
【図12】(a)〜(c)は、それぞれ吸収体製品の変形例の平面図である。
【図13】(a)は吸収体製品の変形例の使用時の正面図、(b)は弾性シート体の平面図、(c)は(b)の使用時の斜視図である。
【図14】第2実施形態の吸収体製品の展開時の平面図である。
【図15】(a)は図14のP−P線拡大断面図、(b)は図14のQ−Q線拡大断面図、(c)は図14のR−R線拡大断面図である。
【図16】吸収体製品の使用時の斜視図である。
【図17】第3実施形態の吸収体製品の展開時の平面図である。
【図18】(a)は図17のP−P線拡大断面図、(b)は図17のQ−Q線拡大断面図、(c)は図17のR−R線拡大断面図である。
【図19】吸収体製品の使用時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1〜図3に示すように、第1実施形態の吸収体製品である使い捨ておむつ1は、外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4と左右一対の吊り上げバンド5とで基本構成されている。
【0033】
上記外面側シート2と肌面側シート3とでおむつ本体(吸収体本体)が構成され、長方形状の両シート2,3には、股下部Dと前身頃Fと後身頃Bとがそれぞれ形成されている。
【0034】
上記外面側シート2は、液不透過性のポリエチレンフィルムのような熱可塑性フイルム素材が適当であり、特に熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸して得られた(即ち多孔性とした)液不透過性で蒸気透過性のシートであれば、蒸れ感を減少できる点で好ましい。また、おむつの外表面に出る素材となるから、肌着に近い手触りのよい素材が好ましく、熱可塑性樹脂フイルムの上に不織布等の布帛を貼り合わせた複合シートとすることもできる。
【0035】
上記肌面側シート3は、尿等の体液を透過させるとともに、着用者の肌に接触するものであるから、液透過性シートで肌着に近い感触を有するものが好ましい。このような液透過性シートとしては、例えば織布、不織布、多孔性フィルム等があるが、総合的には不織布が好ましい。
【0036】
上記外面側シート2の上面には左右各縁部に沿って、長さ方向に伸長状態で複数本のレッグギャザー用弾性糸7がそれぞれ添設され、この状態で外面側シート2の上面に肌面側シート3の下面が重ね合わされて、接着又は融着されている。上記レッグギャザー用弾性糸7は、帯状や糸状の天然ゴムまたは合成ゴムで形成されている。
【0037】
上記吸収体4は、天然パルプ繊維、合成樹脂繊維や高吸収性樹脂材料などを混合または積層したものが扁平に成形され、外周が薄葉紙で包まれ、さらにその上面がトップシートで覆われるとともに下面がバックシートで覆われて、その周縁部がシールされた構造になっており、また吸水材が高吸水性樹脂粉末主体からなる場合には、該粉末を2枚の不織布間に挟み固定したり、1枚の不織布上に接着剤で接着固定したり、あるいはまた接着剤を用いず、強い親和性を示す例えばセルローズ系の極細繊維状物と共に不織布上に担持した形態の構造になっている。
【0038】
この吸収体4は、不透液性バックシートとしての外面側シート2と透液性トップシートとしての肌面側シート3との間に挟み込むタイプ(図3の矢印a参照)と、予めトップシートとバックシートとの間に挟んで一体化し、その一体化物のバックシート側を肌面側シート3の上面に接着するタイプ(図3の矢印b参照)、さらに高吸水性樹脂粉末主体の吸水材を用いる場合には、該粉末を不織布間または不織布上に接着固定した形態のままで採用することができる。なお、吸収体4のバックシートを肌面側シート3の上面に着脱可能に固定すれば、吸収体4を交換するだけで、次述する吸収体本体8を繰り返して使用することもできる。
【0039】
上記外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4とレッグギャザー用弾性糸7とを組み付けてなるもので吸収体本体8が構成され、この吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部における複数本のレッグギャザー用弾性糸7の添設部位において、ほぼ均等の本数を隔てた弾性糸7(A)と7(B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させる。
【0040】
このように、弾性糸7(A)と7(B)の間に大腿部挿入穴9を開口させることで、大腿部挿入穴9に着用者が大腿部Mを挿入したとき、図1に示すように、大腿部挿入穴9の内側となる弾性糸7(A)が大腿部Mのほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴9の外側となる弾性糸7(B)が大腿部Mのほぼ外半周部分に弾性的に密着することにより、大腿部挿入穴9が大腿部Mの全周に弾性的に密着して、大腿部挿入穴9が大腿部Mに固定されるようになる。
【0041】
上記左右一対の吊り上げバンド(サスペンダー)5は、着用者の肌に接触するものであるから、肌着に近い感触を有する不織布が好ましく、2枚の長尺帯状不織布5a,5bの間に、長さ方向に伸長状態で複数本の吊り上げ用弾性糸10が添設された状態で、両不織布5a,5bが重ね合わされて、接着又は融着されている。上記吊り上げ用弾性糸10は、帯状や糸状の天然ゴムまたは合成ゴムで形成されている。
【0042】
この吊り上げバンド5の全長Lは、両端末部5c,5dを上記吸収体本体8の前身頃Fの上部と後身頃Bの上部とにそれぞれ固定して、着用者の首又は肩に掛け回した状態で、吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着して固定される長さに設定される。なお、吊り上げバンド5の配置構造例は図5で、固定構造例は図6〜図8でそれぞれ詳細に説明する。
【0043】
この吊り上げバンド5は、弾性糸10によって長さ方向の全長にわたって伸縮性に富むものであるから、着用者の身体サイズに対する融通性が高いという長所があるが、年齢が同じ幼児等のように、着用者の身体サイズがほぼ一定であれば、弾性糸10を省略することも可能である。なお、吊り上げバンド5の一部のみに伸縮部を介設することもできる。
【0044】
上記のように構成した第1実施形態の使い捨ておむつ1を使用する場合には、吸収体本体8の肌面側シート3を着用者に向けた状態で、着用者の左右の足を左右の大腿部挿入穴9にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体8の股下部Dが着用者の股部分に当たるように引き上げると、左右の大腿部挿入穴9が広がりながら左右の大腿部Mの全周に弾性的に密着するようになる。
【0045】
その後、ループ状の左右の吊り上げバンド5に着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、伸縮性の吊り上げバンド5で吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0046】
そして、着用者に対しては、吸収体本体8の大腿部挿入穴9が着用者の大腿部Mの全周にレッグギャザー用弾性糸7で弾性的に密着することで、大腿部挿入穴9が着用者の大腿部Mに固定され、伸縮性の吊り上げバンド5を着用者の首又は肩に掛け回すことで、吸収体本体8が着用者の首又は肩に固定されるようになるから、着用者が動き回ったり体位を変えても、ずれたり脱落することが無く、尿等の漏れも無くなる。また、着用者の腰部や側部には吸収体本体8が存在しないので、通気・換気性が良くなって蒸れも無くなる。さらに、腰部や腹部への締め付けが全く無いので(ウエスト締付けフリー)、身体にも良くて不快感も無くなる。なお、吸収体本体8の肌面側シート3側の前身頃Fと後身頃Bの各端末を折り返してポケットを形成しておけば、ウエスト側からの尿等の漏れを防止することが可能である。
【0047】
一方、ケアをする人に対しては、着用者の身体サイズに対する融通性が高く、位置決めも簡単なために、誰にでも交換し易い。また、脱がせる際に腰部は広がるので、便等が身体に付着することが少なくてケアがし易い。さらに、捨てる際に伸縮性の吊り上げバンド5をラッピングバンドとして利用できるので、密閉シールし易い。さらにまた、ウエスト用ギャザーやシャーリングギャザー等が無いので、おむつ構造がシンプルでコストが安くなる。
【0048】
さらに、吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部における複数本のレッグギャザー用弾性糸7の添設部位において、ほぼ均等の本数を隔てた弾性糸7(A)と7(B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させることにより、左右の大腿部挿入穴9が左右の大腿部Mの全周に弾性糸7の弾性でより緊密に密着するようになるとともに、レッグギャザー用弾性糸7を合理的に利用できるので別の弾性糸を添設する必要がなくなって、コストアップにならない。
【0049】
なお、図4に示すように、吸収体本体8の前身頃Fと後身頃Bの両側にフラップ部11をそれぞれ設けて、後身頃Bのフラップ部11に取付けた粘着テープ12を前身頃Fの外面側シート2に接着するオープン型式の使い捨ておむつであっても良い。この場合には、粘着テープで腰部や腹部を強く締め付ける必要がない。また、具体的に図示しないが、パンツ型式の使い捨ておむつ(使い捨てパンツ)であっても、ウエストギャザーで腰部や腹部を強く締め付ける必要がない。
【0050】
図5に示すように、上記吸収体本体8に対する吊り上げバンド5の配置構造例は、同図(a)のように、左右の吊り上げバンド5が並行となる並行型、同図(b)のように、前身頃F側の間隔が後身頃B側の間隔よりも狭くなる三角型、同図(c)のように、同図(b)の逆配置の逆三角型、同図(d)のように、前身頃F側で交差させる前交差型、同図(e)のように、後身頃B側で交差させる後交差型のいずれかを選択すれば良い。
【0051】
図6に示すように、上記吸収体本体8に対する吊り上げバンド5の固定構造例は、同図(a)のように、両端末部5c,5dを前身頃Fと後身頃Bにそれぞれ接合固定する場合(両サイド固定)と、同図(b)のように、両端末部5c,5dの一端、例えば端末部5dを後身頃Bに固定し、他端、例えば端末部5cを前身頃Fに着脱自在に係止する場合(片サイド固定)、さらには同図(c)のように、前後身頃の内の一方、例えば後身頃Bから左右の吊り上げバンド5R,5Lが立ち上がり、その各上端が、首を回って前身頃側に固定できる他の1本の吊り上げバンド5Mを固定し、該バンド5Mの端末部5cを前身頃Fに接合固定または着脱自在に係止する方法などがあり、いずれかを選択すれば良い。
【0052】
特に、後者の場合は、端末部5cの係止位置を自由に選択できて、サイズの調節が容易になる点で好ましく、例えば、同図(d)(e)のように、端末部5cに粘着テープ14を設けて、吸収体本体8の外面側シート2の表面を貼付け部として着脱自在に貼付けるようにすれば良い。
【0053】
また、図7(a)(b)のように、端末部5cに機械式ファスナーの雄部15を設けて、吸収体本体8の外面側シート2の表面にループ状繊維組織を有する不織布を用いて、機械式ファスナーの雌部として使用することにより、端末部5cの雄部15を外面側シート2の雌部に着脱自在に係止すれば良い。なお、図7(c)のように、図6(d)(e)の粘着テープ14の貼付け部としての粘着テープ受けシートや図7(a)(b)の機械式ファスナーの雌部としてのループ状繊維組織を有するシートのようなランディングゾーン16を外面側シート2の表面に設けても良い。
【0054】
さらに、図8(a)(b)のように、端末部5cに結束具17を設けるとともに、吸収体本体8の前身頃Fに結束穴18を設けて、端末部5cの結束具17を前身頃Fの結束穴18に着脱自在に結束すれば良い。この場合の結束具17としては、カフスボタン状突起(同図(c))やフック(同図(d))とすれば良い。なお、端末部5cに結束穴18を設け、前身頃Fに結束具17を設けるようにしても良い(同図(c))。また、両端末部5c,5dに結束具17(又は結束穴18)をそれぞれ設け、前身頃Fと後身頃Bに結束穴18(又は結束具17)をそれぞれ設けて、吊り上げバンド5の両端末部5c,5dを吸収体本体8に着脱自在に係止することもできる。
【0055】
図9(a)のように、上記大腿部挿入穴9は、吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部における複数本のレッグギャザー用弾性糸7の添設部位において、ほぼ均等の本数を隔てた弾性糸7(A)と7(B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させたが、弾性糸7(A)を添設した弾性シート体と弾性糸7(B)を添設した弾性シート体を吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部にそれぞれ固定して、弾性糸7(A)を添設した弾性シート体と弾性糸7(B)を添設した弾性シート体との間の大腿部挿入穴に相当する部位を接合しないことにより、この部位を大腿部挿入穴9とすることもできる。
【0056】
また、同図(b)(c)のように、吸収体本体8に立体状レッグギャザー部20が設けられている場合には、この立体状レッグギャザー部20にスリット状の大腿部挿入穴9を開口させたり、同図(d)(e)のように、平面状レッグギャザー部21と立体状レッグギャザー部20とが併設されている場合には、平面状レッグギャザー部21と立体状レッグギャザー部20との境部分にスリット状の大腿部挿入穴9を開口させることもできる。
【0057】
さらに、図10(a)のように、弾性ポリマーからなる糸状体を網状のシートにした弾性シート体22の中間部に大腿部挿入穴9を設けたり、弾性ポリマーからなる弾性シート体22の中間部に大腿部挿入穴9を設けたりして、この弾性シート体22を吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定しても良い。
【0058】
また、同図(b)のように、弾性ポリマーからなる糸状体を網状のシートにした環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたり、弾性ポリマーからなる環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたりして、この環状の弾性バンド23を吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定しても良い。
【0059】
さらに、同図(c)(d)のように、弾性ポリマーからなる糸状体を網状のシートにした環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたり、弾性ポリマーからなる環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたりして、この環状の弾性バンド23を吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定するとともに、弾性バンド23に切り込み23aを形成して、この切り込み23aの両端末部を上述したような粘着テープや機械式ファスナーのような係止部23b,23bで相互に着脱自在に係止するようにしても良い。同図(c)(d)では、大腿部挿入穴9を解放できるので、おむつの装着時、着用者の大腿部Mを大腿部挿入穴9に挿入する作業が容易になる。
【0060】
図11は、不透液性バックシートとなる外面側シート2と透液性トップシートとなる肌面側シート3との間に吸収体4を挟み込むタイプの失禁製品の具体的な実施形態であり、レッグギャザー用弾性糸7を添設した弾性シート体26を設けて、所定の本数を隔てた弾性糸7(A,B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させたものを吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定したものである。
【0061】
そして、内側となる弾性糸7(A)の一部を大腿部挿入穴9の方向へ台形状に窪ませることにより、この窪み部分が周囲の弾性糸7(A)により引っ張られて、同図(b)(c)のように立ち上がって立体レッグギャザー26aを形成するようになって、体液の横漏れを有効に防止することができる。図11の失禁製品1は、図13(a)のような装着状態となる。
【0062】
図12は、図11の変形例であり、同図(a)は、弾性シート体26を吸収体本体8の前身頃F側に接合したもの、同図(b)は、吸収体本体8の後身頃Bを大きくして吸収面積を増大させたもの、同図(c)は、弾性シート体26に切り込み26bを形成して、この切り込み26bの両端末部を上述したような粘着テープや機械式ファスナーのような係止部26c,26cで相互に着脱自在に係止するようにしたものである。同図(c)では、大腿部挿入穴9を解放できるので、おむつの装着時、着用者の大腿部Mを大腿部挿入穴9に挿入する作業が容易になる。
【0063】
また、図12(c)の弾性シート体26としては、図13(b)(c)のように、大腿部挿入穴9の片側を切り離し可能な切り離し線26dを予め形成しておき、使用時に切り離し線26dを指で切り離して、大腿部挿入穴9を着用者の大腿部Mに挿入した後に、切り離し部分の両端末部を上述したような粘着テープや機械式ファスナーのような係止部26cで着脱自在に係止することもできる。
【0064】
図14〜図16は、第2実施形態の吸収体製品である使い捨ておむつ30を説明するものであり、該おむつ30は、第1実施形態と同様に、外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4と左右一対の吊り上げバンド5とで基本構成されている。
【0065】
上記外面側シート2と肌面側シート3の間には、図15に示すように、左右各縁部に沿ってレッグギャザー用弾性糸7がそれぞれ添設されて、接着又は融着されている。
【0066】
上記レッグギャザー用弾性糸7により吸収体本体8に平面状レッグギャザー部21が形成され、この平面状レッグギャザー部21に、大腿部相当部位、つまり股下部Dを除いて、前身頃Fと後身頃Bの左右各部に、平面状レッグギャザー部21を左右方向に跨ぐようにトンネル用不織布31がそれぞれ配置され、各トンネル用不織布31は、図15(a)(b)のように、内端31aが肌面側シート3の上面に接着又は融着されるとともに、外端31bが外面側シート2の下面に接着又は融着されている。
【0067】
これにより、股下部Dを除いて、前身頃Fと後身頃Bに跨って、中空のトンネル部32が形成されるとともに、前身頃Fと後身頃Bのトンネル部32の間に切欠き部33が形成されることになる。
【0068】
上記吊り上げバンド5には、吊り上げ用弾性糸10が添設されて、この吊り上げバンド5は、一端の端末部5d側が後身頃B側のトンネル部32から挿通されて、股下部Dの切欠き部33で外部に露出した後に、再び前身頃F側のトンネル部32に挿通されて、この端末部5dが前身頃Fに接合固定されている(図14の符合a参照)。これにより、吊り上げバンド5は、トンネル部32に移動・伸縮可能に挿通されることになる。
【0069】
また、股下部Dの切欠き部33で外部に露出した吊り上げバンド5は、該バンド5が引き出された状態では図15(c)の状態であるが、図14に二点鎖線bで示したように、吊り上げバンド5の移動・伸縮作用により外方Sに引き出すことができ、この引き出した吊り上げバンド5と平面状レッグギャザー部21とで大腿部挿入穴9が形成されるようになる。
【0070】
上記吊り上げバンド5の他端の端末部5cには、第1実施形態と同様に、粘着テープや機械式ファスナーのような係止部5fが設けられ、この係止部5fで前身頃Fの外面側シート2の表面に着脱自在に係止することができる。
【0071】
上記吊り上げバンド5には、前後方向に延在するスリット5gが形成されるとともに、後身頃Bのトンネル部32内には、このスリット5gに入り込むストッパー部32aが形成されている(図15(b)参照)。このストッパー部32aは、スリット5g内で対向するトンネル用不織布31と肌面側シート3をスポット状に接着又は融着で固定して、このスポット状固定部でもって形成することができる。
【0072】
上記のように構成した第2実施形態の使い捨ておむつ30を使用する場合には、図16に示すように、吸収体本体8の股下部Dの切欠き部33で外部に露出した吊り上げバンド5を外方Sに引き出して、この引き出した吊り上げバンド5と平面状レッグギャザー部21とで大腿部挿入穴9を形成する。また、吊り上げバンド5の他端の端末部5cの係止部5fを前身頃Fの外面側シート2の表面に係止してループ状にする。
【0073】
そして、吸収体本体8の肌面側シート3を着用者に向けた状態で、着用者の左右の足を左右の大腿部挿入穴9にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体8の股下部Dが着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴9の内側となる平面状レッグギャザー部21が大腿部Mのほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴9の外側となる伸縮性の吊り上げバンド5が大腿部Mのほぼ外半周部分に弾性的に密着することにより、大腿部挿入穴9が大腿部Mの全周に弾性的に密着して、大腿部挿入穴9が大腿部Mに固定されるようになる。
【0074】
その後、ループ状の左右の吊り上げバンド5に着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、伸縮性の吊り上げバンド5で吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0075】
この吊り上げによって、吊り上げバンド5が伸長して引っ張られるから、吊り上げバンド5が大腿部Mにより強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。また逆に、吊り上げバンド5のスリット5gの後端(符号省略)がストッパー部32aで阻止され、吸収体本体8の外方Sに引き出した吊り上げバンド5を大腿部Mに締め付け過ぎることをも阻止するようになっている。
【0076】
また、吸収体本体8の切欠き部33で外部に露出した吊り上げバンド5が必要以上に外方Sに引き出されて弛むと、大腿部Mの外半周部分に弾性的に密着しにくくなって、ずれや漏れが生じやすくなる。そこで、吊り上げバンド5が必要以上に外方Sに引き出される前に、吊り上げバンド5のスリット5gの前端5hがストッパー部32aで当て止められて、それ以上は外方Sに引き出されるのが阻止されるから、引き出された吊り上げバンド5が弛むことなく常に大腿部Mに弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0077】
図17〜図19は、第3実施形態の吸収体製品である使い捨ておむつ35を説明するためのものであり、該おむつ35は、第1実施形態と同様に、外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4と左右一対の吊り上げバンド5とで基本構成されている。
【0078】
上記外面側シート2と肌面側シート3の間には、図18に示すように、左右各縁部に沿ってレッグギャザー用弾性糸7がそれぞれ添設されて、接着又は融着されている。
【0079】
上記レッグギャザー用弾性糸7により吸収体本体8に平面状レッグギャザー部21が形成されるとともに、この平面状レッグギャザー部21の内側に位置すべき立体状レッグギャザー相当部位に、股下部Dと前身頃Fと後身頃Bに跨って、外面側シート2と肌面側シート3との間に中空のトンネル部32が形成されている。
【0080】
上記吊り上げバンド5には、吊り上げ用弾性糸10が添設されて、この吊り上げバンド5は、一端の端末部5d側が後身頃B側のトンネル部32から挿通されて、股下部Dのトンネル部32を通って前身頃F側のトンネル部32に挿通されて、この端末部5dが前身頃Fに固定されている(図17の符合a参照)。これにより、吊り上げバンド5は、トンネル部32に移動・伸縮可能に挿通されることになる。
【0081】
また、トンネル部32と平面状レッグギャザー部21との境部分には、股下部Dに位置してスリット状の大腿部挿入穴9が形成されて、平面状レッグギャザー部21を図17及び図18(c)に二点鎖線bで示したように外方Sに引っ張り伸ばすことにより、この引っ張り伸ばした平面状レッグギャザー部21とトンネル部32内の吊り上げバンド5とで大腿部挿入穴9が拡大されるようになる。
【0082】
上記吊り上げバンド5の他端の端末部5cには、第1実施形態と同様に、粘着テープや機械式ファスナーのような係止部5fが設けられ、この係止部5fで前身頃Fの外面側シート2の表面に着脱自在に係止することができる。
【0083】
上記吊り上げバンド5には、前後方向に延在するスリット5gが形成されるとともに、後身頃Bのトンネル部32内には、このスリット5gに入り込むストッパー部32aが形成されている(図18(b)参照)。
【0084】
上記のように構成した第3実施形態の使い捨ておむつ35を使用する場合には、吊り上げバンド5の他端の端末部5cの係止部5fを前身頃Fの外面側シート2の表面に係止してループ状にする。
【0085】
そして、吸収体本体8の肌面側シート3を着用者に向けた状態で、平面状レッグギャザー部21を外方Sに引っ張り伸ばして大腿部挿入穴9を拡大し、着用者の左右の足を左右の大腿部挿入穴9にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体8の股下部Dが着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴9の内側となるトンネル部32内の伸縮性の吊り上げバンド5が大腿部Mのほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴9の外側となる平面状レッグギャザー部21が大腿部Mのほぼ外半周部分に弾性的に密着することにより、大腿部挿入穴9が大腿部Mの全周に弾性的に密着して、大腿部挿入穴9が大腿部Mに固定されるようになる。
【0086】
その後、ループ状の左右の吊り上げバンド5に着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、伸縮性の吊り上げバンド5で吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0087】
この吊り上げによって、吊り上げバンド5が伸長して引っ張られるから、吊り上げバンド5が大腿部Mにより強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0088】
また、吊り上げバンド5が弛むと、大腿部Mの内半周部分に弾性的に密着しにくくなって、ずれや漏れが生じやすくなる。そこで、吊り上げバンド5が必要以上に弛む前に、吊り上げバンド5のスリット5gの前端5hがストッパー部32aで当て止められて、それ以上の弛みが阻止されるから、吊り上げバンド5が弛むことなく常に大腿部Mに弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0089】
上記各実施形態では、吸収体製品として使い捨ておむつ又は失禁パンツを前提としたが、本発明はこれに限られるものではなく、生理用ナプキン、生理帯、ショーツ等にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1,30,35 使い捨ておむつ、失禁製品(吸収体製品)
2 外面側シート
3 肌面側シート
5 吊り上げバンド
8 吸収体本体
9 大腿部挿入穴
20 立体状レッグギャザー部
21 平面状レッグギャザー部
B 後身頃
D 股下部
F 前身頃
M 大腿部
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部や腹部での締め付けによる不快感が無く、漏れや蒸れも無く、コストも安くできるウエスト締付けフリーの吸収体製品に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児用や成人用のおむつのような吸収体製品としては、オープン型式とパンツ型式が知られている。
【0003】
オープン型式の吸収体製品は、腰部の両側で分離されて平らに展開でき、装着時に前身頃と後身頃の両側部をテープ等で着脱可能に連結するものである。
【0004】
パンツ型式の吸収体製品は、前身頃と後身頃の両側部を予め接合して、腰回り開口部と一対の脚周り開口部とを形成したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの型式の吸収体製品であっても、ずれや脱落、尿等の漏れを防止するために、テープ等やウエストギャザーで腰部や腹部を強く締め付ける必要があるから、着用者には苦痛が伴い、しかも身体にも悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、腰部や腹部での締め付けによる不快感が無く、漏れや蒸れも無く、コストも安くできるウエスト締付けフリーの吸収体製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、吸収部を含むシート積層体からなり、着用者の股下部と前身頃と後身頃とを覆うように形成された吸収体本体と、この吸収体本体を着用者に固定するための固定部材とから構成される吸収体製品において、上記固定部材は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の近傍に位置して、着用者の大腿部の全周に弾性的に密着させて固定するための大腿部固定部と、吸収体本体の前身頃と後身頃とに係止されて、着用者の肩又は首に掛け回して吸収体本体を吊り上げて固定するための吊り上げバンドとでなることを特徴とする吸収体製品を提供するものである。
【0008】
本発明によれば、吸収体製品を使用する場合には、着用者の左右の足を左右の大腿部固定部にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、左右の大腿部固定部が広がりながら左右の大腿部の全周に弾性的に密着するようになる。
【0009】
その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0010】
上記吊り上げバンドは、その両端末部が吸収体本体の両身頃の双方に固定されている構成、又はその両端末部の一端が吸収体本体の両身頃の一方に固定されるとともに、両端末部の他端が吸収体本体の両身頃の他方に着脱自在に係止可能である構成のいずれかを選択することができる。
【0011】
特に、後者の構成を選択した場合には、吊り上げバンドの着脱自在な他端に粘着テープが設けられるとともに、両身頃の他方の外面側シートに、上記粘着テープを着脱自在に貼付け可能な貼付け部が設けられている構成、吊り上げバンドの着脱自在な他端に機械式ファスナーの雄部が設けられるとともに、両身頃の他方の外面側シートの表面に、上記雄部を着脱自在に係止可能な機械式ファスナーの雌部が設けられている構成、外面側シートは、表面にループ状繊維組織を有する不織布を用いて、機械式ファスナーの雌部として使用する構成、吊り上げバンドの着脱自在な他端にバンド側結束具が設けられるとともに、両身頃の他方に、バンド側結束具を着脱自在に結束可能な身頃側結束具が設けられている構成のいずれかを選択することができる。
【0012】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体のレッグギャザー存在部位に大腿部挿入穴を開口させてなる構成とするのが好ましく、特に、レッグギャザー存在部位は、複数本の弾性糸が添設されて、弾性糸の間にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすれば、左右の大腿部挿入穴が左右の大腿部の全周に弾性糸の弾性でより緊密に密着するようになる。
【0013】
上記レッグギャザー存在部位は、立体状レッグギャザー部が設けられてなり、この立体状レッグギャザー部にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成としたり、平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部とが併設されてなり、この平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部の境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすることができる。
【0014】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に弾性シート体が取付けられて、この弾性シート体に大腿部挿入穴を開口させてなる構成としたり、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴としてなる構成としたり、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴とするとともに、弾性バンドに切り込みが形成されて、この切り込みの両端末部が着脱自在に係止可能である構成としたりすることができる。
【0015】
上記大腿部固定部は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の弾性部分と股下部の左右両側に延在する伸縮性の吊り上げバンドとで構成されるようにすることができる。
【0016】
これを具体化して、上記吸収体本体の平面状レッグギャザー部に、大腿部相当部位を除いて両身頃に跨って、吊り上げバンドが移動・伸縮可能に挿通されるトンネル部が設けられ、このトンネル部に挿通された吊り上げバンドの一端が両身頃の一方に固定されるとともに、大腿部相当部位でトンネル部から露出した吊り上げバンドを外方に引き出して、この引き出した吊り上げバンドと平面状レッグギャザー部とで大腿部挿入穴が形成されてなる構成とすることができる。
【0017】
この構成であれば、吸収体製品を使用する場合には、トンネル部から外部に露出した吊り上げバンドを外方に引き出して、この引き出した吊り上げバンドと平面状レッグギャザー部との間の大腿部挿入穴に着用者の左右の足をそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴の内側となる平面状レッグギャザー部が大腿部のほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴の外側となる伸縮性の吊り上げバンドが大腿部のほぼ外半周部分に弾性的に密着するようになる。
【0018】
その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0019】
また、上記吸収体本体の立体状レッグギャザー相当部位に、股下部と両身頃に跨って、吊り上げバンドが移動・伸縮可能に挿通するトンネル部が設けられ、このトンネル部に挿通された吊り上げバンドの一端が両身頃の一方に固定されるとともに、トンネル部と平面状レッグギャザー部との境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすることもできる。
【0020】
この構成であれば、吸収体製品を使用する場合には、平面状レッグギャザー部を外方に引っ張り伸ばして、この引っ張り伸ばした平面状レッグギャザー部とトンネル部内の吊り上げバンドとの間の大腿部挿入穴に着用者の左右の足をそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴の内側となるトンネル部内の吊り上げバンドが大腿部のほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴の外側となる平面状レッグギャザー部が大腿部のほぼ外半周部分に弾性的に密着するようになる。
【0021】
その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0022】
上記吊り上げバンドに、大腿部の締め付けが必要以上に弛んだり、締め付け過ぎたりのいずれかまたは両方を阻止するストッパーが設けられている構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、吸収体製品を使用する場合には、着用者の左右の足を左右の大腿部固定部にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体の股下部が着用者の股部分に当たるように引き上げると、左右の大腿部固定部が広がりながら左右の大腿部の全周に弾性的に密着するようになり、その後、吊り上げバンドに着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドで吸収体本体が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0024】
したがって、着用者に対しては、吸収体本体の大腿部固定部が着用者の大腿部の全周に弾性的に密着することで、大腿部固定部が着用者の大腿部に固定され、吊り上げバンドを着用者の首又は肩に掛け回すことで、吸収体本体が着用者の首又は肩に固定されるようになるから、着用者が動き回ったり体位を変えても、ずれたり脱落することが無く、尿等の漏れも無くなる。また、着用者の腰部や側部には吸収体本体が存在しないので、通気・換気性が良くなって蒸れも無くなる。さらに、腰部や腹部への締め付けが全く無いので(ウエスト締付けフリー)、身体にも良くて不快感も無くなる。
【0025】
ケアをする人に対しては、着用者の身体サイズに対する融通性が高く、位置決めも簡単なために、誰にでも交換し易い。また、脱がせる際に腰部は広がるので、便等が身体に付着することが少なくてケアがし易い。さらに、捨てる際に伸縮性の吊り上げバンドをラッピングバンドとして利用できるので、密閉シールし易い。さらにまた、ウエスト用ギャザーやシャーリングギャザー等が無いので、おむつ構造がシンプルでコストが安くなる。
【0026】
一方、レッグギャザー存在部位に複数本の弾性糸を添設して、弾性糸の間にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる構成とすれば、左右の大腿部挿入穴が左右の大腿部の全周に弾性糸の弾性でより緊密に密着するようになるとともに、レッグギャザー用弾性糸を合理的に利用できるので別の弾性糸を添設する必要がなくなって、コストアップにならない。
【0027】
また、吸収体本体の平面状レッグギャザー部に設けたトンネル部に吊り上げバンドを挿通させて、大腿部相当部位でトンネル部から露出した吊り上げバンドを外方に引き出して、この引き出した吊り上げバンドと平面状レッグギャザー部とで大腿部挿入穴を形成する構成であれば、吊り上げバンドを着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドが伸長して引っ張られるから、吊り上げバンドが大腿部により強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0028】
さらに、吸収体本体の立体状レッグギャザー相当部位に設けたトンネル部に吊り上げバンドを挿通させて、トンネル部と平面状レッグギャザー部との境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させた構成であれば、吊り上げバンドを着用者の首又は肩に掛け回すと、吊り上げバンドが伸長して引っ張られるから、吊り上げバンドが大腿部により強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0029】
さらにまた、吊り上げバンドに、大腿部の締め付けが必要以上に弛んだり、締め付け過ぎたりのいずれかまたは両方を阻止するストッパーを設けた構成であれば、吊り上げバンドが必要以上に弛むと大腿部に弾性的に密着しにくくなって、ずれや漏れが生じやすくなるところ、ストッパー部で吊り上げバンドが必要以上に弛むのが阻止されるから、吊り上げバンドが常に大腿部に弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなるとともに、吊り上げバンドを大腿部に締め付け過ぎることをも阻止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態の吸収体製品の使用時の正面図である。
【図2】吸収体製品であり、(a)は展開時の平面図、(b)は使用時の正面図である。
【図3】吸収体製品の分解斜視図である。
【図4】吸収体製品の変形例の展開時の平面図である。
【図5】(a)〜(e)は、それぞれ吊り上げバンドの配置構造例の平面図である。
【図6】(a)(b)(c)は、それぞれ吊り上げバンドの固定構造例の平面図、(d)は粘着テープによる固定構造例の側面図、(e)は(d)の正面斜視図である。
【図7】(a)は機械式ファスナーによる固定構造例の側面図、(b)は(a)の正面斜視図、(c)はランディングゾーンを設けた吊り上げバンドの固定構造例の正面斜視図である。
【図8】(a)は、結束具と結束穴による固定構造例の正面斜視図、(b)は吸収体本体の展開平面図、(c)はカフスボタン状結束具の断面図、(d)はフック状結束具の断面図である。
【図9】(a)は大腿部挿入穴を平面状レッグギャザー部の間に形成した平面図、(b)は大腿部挿入穴を立体状レッグギャザー部に形成した側面図、(c)は(b)の要部平面図、(d)は大腿部挿入穴を立体状レッグギャザー部と平面状レッグギャザー部との境部分に形成した側面図、(e)は(d)の平面図である。
【図10】(a)は弾性シート体で大腿部挿入穴を形成した平面図、(b)は環状の弾性バンドで大腿部挿入穴を形成した平面図、(c)は開閉可能な環状の弾性バンドで大腿部挿入穴を形成した平面図、(d)は(c)の環状の弾性バンドの拡大図である。
【図11】(a)は吸収体製品の変形例の平面図、(b)は(a)の断面図、(c)は(a)の使用時の斜視図である。
【図12】(a)〜(c)は、それぞれ吸収体製品の変形例の平面図である。
【図13】(a)は吸収体製品の変形例の使用時の正面図、(b)は弾性シート体の平面図、(c)は(b)の使用時の斜視図である。
【図14】第2実施形態の吸収体製品の展開時の平面図である。
【図15】(a)は図14のP−P線拡大断面図、(b)は図14のQ−Q線拡大断面図、(c)は図14のR−R線拡大断面図である。
【図16】吸収体製品の使用時の斜視図である。
【図17】第3実施形態の吸収体製品の展開時の平面図である。
【図18】(a)は図17のP−P線拡大断面図、(b)は図17のQ−Q線拡大断面図、(c)は図17のR−R線拡大断面図である。
【図19】吸収体製品の使用時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1〜図3に示すように、第1実施形態の吸収体製品である使い捨ておむつ1は、外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4と左右一対の吊り上げバンド5とで基本構成されている。
【0033】
上記外面側シート2と肌面側シート3とでおむつ本体(吸収体本体)が構成され、長方形状の両シート2,3には、股下部Dと前身頃Fと後身頃Bとがそれぞれ形成されている。
【0034】
上記外面側シート2は、液不透過性のポリエチレンフィルムのような熱可塑性フイルム素材が適当であり、特に熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸して得られた(即ち多孔性とした)液不透過性で蒸気透過性のシートであれば、蒸れ感を減少できる点で好ましい。また、おむつの外表面に出る素材となるから、肌着に近い手触りのよい素材が好ましく、熱可塑性樹脂フイルムの上に不織布等の布帛を貼り合わせた複合シートとすることもできる。
【0035】
上記肌面側シート3は、尿等の体液を透過させるとともに、着用者の肌に接触するものであるから、液透過性シートで肌着に近い感触を有するものが好ましい。このような液透過性シートとしては、例えば織布、不織布、多孔性フィルム等があるが、総合的には不織布が好ましい。
【0036】
上記外面側シート2の上面には左右各縁部に沿って、長さ方向に伸長状態で複数本のレッグギャザー用弾性糸7がそれぞれ添設され、この状態で外面側シート2の上面に肌面側シート3の下面が重ね合わされて、接着又は融着されている。上記レッグギャザー用弾性糸7は、帯状や糸状の天然ゴムまたは合成ゴムで形成されている。
【0037】
上記吸収体4は、天然パルプ繊維、合成樹脂繊維や高吸収性樹脂材料などを混合または積層したものが扁平に成形され、外周が薄葉紙で包まれ、さらにその上面がトップシートで覆われるとともに下面がバックシートで覆われて、その周縁部がシールされた構造になっており、また吸水材が高吸水性樹脂粉末主体からなる場合には、該粉末を2枚の不織布間に挟み固定したり、1枚の不織布上に接着剤で接着固定したり、あるいはまた接着剤を用いず、強い親和性を示す例えばセルローズ系の極細繊維状物と共に不織布上に担持した形態の構造になっている。
【0038】
この吸収体4は、不透液性バックシートとしての外面側シート2と透液性トップシートとしての肌面側シート3との間に挟み込むタイプ(図3の矢印a参照)と、予めトップシートとバックシートとの間に挟んで一体化し、その一体化物のバックシート側を肌面側シート3の上面に接着するタイプ(図3の矢印b参照)、さらに高吸水性樹脂粉末主体の吸水材を用いる場合には、該粉末を不織布間または不織布上に接着固定した形態のままで採用することができる。なお、吸収体4のバックシートを肌面側シート3の上面に着脱可能に固定すれば、吸収体4を交換するだけで、次述する吸収体本体8を繰り返して使用することもできる。
【0039】
上記外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4とレッグギャザー用弾性糸7とを組み付けてなるもので吸収体本体8が構成され、この吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部における複数本のレッグギャザー用弾性糸7の添設部位において、ほぼ均等の本数を隔てた弾性糸7(A)と7(B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させる。
【0040】
このように、弾性糸7(A)と7(B)の間に大腿部挿入穴9を開口させることで、大腿部挿入穴9に着用者が大腿部Mを挿入したとき、図1に示すように、大腿部挿入穴9の内側となる弾性糸7(A)が大腿部Mのほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴9の外側となる弾性糸7(B)が大腿部Mのほぼ外半周部分に弾性的に密着することにより、大腿部挿入穴9が大腿部Mの全周に弾性的に密着して、大腿部挿入穴9が大腿部Mに固定されるようになる。
【0041】
上記左右一対の吊り上げバンド(サスペンダー)5は、着用者の肌に接触するものであるから、肌着に近い感触を有する不織布が好ましく、2枚の長尺帯状不織布5a,5bの間に、長さ方向に伸長状態で複数本の吊り上げ用弾性糸10が添設された状態で、両不織布5a,5bが重ね合わされて、接着又は融着されている。上記吊り上げ用弾性糸10は、帯状や糸状の天然ゴムまたは合成ゴムで形成されている。
【0042】
この吊り上げバンド5の全長Lは、両端末部5c,5dを上記吸収体本体8の前身頃Fの上部と後身頃Bの上部とにそれぞれ固定して、着用者の首又は肩に掛け回した状態で、吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着して固定される長さに設定される。なお、吊り上げバンド5の配置構造例は図5で、固定構造例は図6〜図8でそれぞれ詳細に説明する。
【0043】
この吊り上げバンド5は、弾性糸10によって長さ方向の全長にわたって伸縮性に富むものであるから、着用者の身体サイズに対する融通性が高いという長所があるが、年齢が同じ幼児等のように、着用者の身体サイズがほぼ一定であれば、弾性糸10を省略することも可能である。なお、吊り上げバンド5の一部のみに伸縮部を介設することもできる。
【0044】
上記のように構成した第1実施形態の使い捨ておむつ1を使用する場合には、吸収体本体8の肌面側シート3を着用者に向けた状態で、着用者の左右の足を左右の大腿部挿入穴9にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体8の股下部Dが着用者の股部分に当たるように引き上げると、左右の大腿部挿入穴9が広がりながら左右の大腿部Mの全周に弾性的に密着するようになる。
【0045】
その後、ループ状の左右の吊り上げバンド5に着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、伸縮性の吊り上げバンド5で吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0046】
そして、着用者に対しては、吸収体本体8の大腿部挿入穴9が着用者の大腿部Mの全周にレッグギャザー用弾性糸7で弾性的に密着することで、大腿部挿入穴9が着用者の大腿部Mに固定され、伸縮性の吊り上げバンド5を着用者の首又は肩に掛け回すことで、吸収体本体8が着用者の首又は肩に固定されるようになるから、着用者が動き回ったり体位を変えても、ずれたり脱落することが無く、尿等の漏れも無くなる。また、着用者の腰部や側部には吸収体本体8が存在しないので、通気・換気性が良くなって蒸れも無くなる。さらに、腰部や腹部への締め付けが全く無いので(ウエスト締付けフリー)、身体にも良くて不快感も無くなる。なお、吸収体本体8の肌面側シート3側の前身頃Fと後身頃Bの各端末を折り返してポケットを形成しておけば、ウエスト側からの尿等の漏れを防止することが可能である。
【0047】
一方、ケアをする人に対しては、着用者の身体サイズに対する融通性が高く、位置決めも簡単なために、誰にでも交換し易い。また、脱がせる際に腰部は広がるので、便等が身体に付着することが少なくてケアがし易い。さらに、捨てる際に伸縮性の吊り上げバンド5をラッピングバンドとして利用できるので、密閉シールし易い。さらにまた、ウエスト用ギャザーやシャーリングギャザー等が無いので、おむつ構造がシンプルでコストが安くなる。
【0048】
さらに、吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部における複数本のレッグギャザー用弾性糸7の添設部位において、ほぼ均等の本数を隔てた弾性糸7(A)と7(B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させることにより、左右の大腿部挿入穴9が左右の大腿部Mの全周に弾性糸7の弾性でより緊密に密着するようになるとともに、レッグギャザー用弾性糸7を合理的に利用できるので別の弾性糸を添設する必要がなくなって、コストアップにならない。
【0049】
なお、図4に示すように、吸収体本体8の前身頃Fと後身頃Bの両側にフラップ部11をそれぞれ設けて、後身頃Bのフラップ部11に取付けた粘着テープ12を前身頃Fの外面側シート2に接着するオープン型式の使い捨ておむつであっても良い。この場合には、粘着テープで腰部や腹部を強く締め付ける必要がない。また、具体的に図示しないが、パンツ型式の使い捨ておむつ(使い捨てパンツ)であっても、ウエストギャザーで腰部や腹部を強く締め付ける必要がない。
【0050】
図5に示すように、上記吸収体本体8に対する吊り上げバンド5の配置構造例は、同図(a)のように、左右の吊り上げバンド5が並行となる並行型、同図(b)のように、前身頃F側の間隔が後身頃B側の間隔よりも狭くなる三角型、同図(c)のように、同図(b)の逆配置の逆三角型、同図(d)のように、前身頃F側で交差させる前交差型、同図(e)のように、後身頃B側で交差させる後交差型のいずれかを選択すれば良い。
【0051】
図6に示すように、上記吸収体本体8に対する吊り上げバンド5の固定構造例は、同図(a)のように、両端末部5c,5dを前身頃Fと後身頃Bにそれぞれ接合固定する場合(両サイド固定)と、同図(b)のように、両端末部5c,5dの一端、例えば端末部5dを後身頃Bに固定し、他端、例えば端末部5cを前身頃Fに着脱自在に係止する場合(片サイド固定)、さらには同図(c)のように、前後身頃の内の一方、例えば後身頃Bから左右の吊り上げバンド5R,5Lが立ち上がり、その各上端が、首を回って前身頃側に固定できる他の1本の吊り上げバンド5Mを固定し、該バンド5Mの端末部5cを前身頃Fに接合固定または着脱自在に係止する方法などがあり、いずれかを選択すれば良い。
【0052】
特に、後者の場合は、端末部5cの係止位置を自由に選択できて、サイズの調節が容易になる点で好ましく、例えば、同図(d)(e)のように、端末部5cに粘着テープ14を設けて、吸収体本体8の外面側シート2の表面を貼付け部として着脱自在に貼付けるようにすれば良い。
【0053】
また、図7(a)(b)のように、端末部5cに機械式ファスナーの雄部15を設けて、吸収体本体8の外面側シート2の表面にループ状繊維組織を有する不織布を用いて、機械式ファスナーの雌部として使用することにより、端末部5cの雄部15を外面側シート2の雌部に着脱自在に係止すれば良い。なお、図7(c)のように、図6(d)(e)の粘着テープ14の貼付け部としての粘着テープ受けシートや図7(a)(b)の機械式ファスナーの雌部としてのループ状繊維組織を有するシートのようなランディングゾーン16を外面側シート2の表面に設けても良い。
【0054】
さらに、図8(a)(b)のように、端末部5cに結束具17を設けるとともに、吸収体本体8の前身頃Fに結束穴18を設けて、端末部5cの結束具17を前身頃Fの結束穴18に着脱自在に結束すれば良い。この場合の結束具17としては、カフスボタン状突起(同図(c))やフック(同図(d))とすれば良い。なお、端末部5cに結束穴18を設け、前身頃Fに結束具17を設けるようにしても良い(同図(c))。また、両端末部5c,5dに結束具17(又は結束穴18)をそれぞれ設け、前身頃Fと後身頃Bに結束穴18(又は結束具17)をそれぞれ設けて、吊り上げバンド5の両端末部5c,5dを吸収体本体8に着脱自在に係止することもできる。
【0055】
図9(a)のように、上記大腿部挿入穴9は、吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部における複数本のレッグギャザー用弾性糸7の添設部位において、ほぼ均等の本数を隔てた弾性糸7(A)と7(B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させたが、弾性糸7(A)を添設した弾性シート体と弾性糸7(B)を添設した弾性シート体を吸収体本体8のレッグギャザー存在部位である左右各縁部にそれぞれ固定して、弾性糸7(A)を添設した弾性シート体と弾性糸7(B)を添設した弾性シート体との間の大腿部挿入穴に相当する部位を接合しないことにより、この部位を大腿部挿入穴9とすることもできる。
【0056】
また、同図(b)(c)のように、吸収体本体8に立体状レッグギャザー部20が設けられている場合には、この立体状レッグギャザー部20にスリット状の大腿部挿入穴9を開口させたり、同図(d)(e)のように、平面状レッグギャザー部21と立体状レッグギャザー部20とが併設されている場合には、平面状レッグギャザー部21と立体状レッグギャザー部20との境部分にスリット状の大腿部挿入穴9を開口させることもできる。
【0057】
さらに、図10(a)のように、弾性ポリマーからなる糸状体を網状のシートにした弾性シート体22の中間部に大腿部挿入穴9を設けたり、弾性ポリマーからなる弾性シート体22の中間部に大腿部挿入穴9を設けたりして、この弾性シート体22を吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定しても良い。
【0058】
また、同図(b)のように、弾性ポリマーからなる糸状体を網状のシートにした環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたり、弾性ポリマーからなる環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたりして、この環状の弾性バンド23を吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定しても良い。
【0059】
さらに、同図(c)(d)のように、弾性ポリマーからなる糸状体を網状のシートにした環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたり、弾性ポリマーからなる環状の弾性バンド23の中心を大腿部挿入穴9としたりして、この環状の弾性バンド23を吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定するとともに、弾性バンド23に切り込み23aを形成して、この切り込み23aの両端末部を上述したような粘着テープや機械式ファスナーのような係止部23b,23bで相互に着脱自在に係止するようにしても良い。同図(c)(d)では、大腿部挿入穴9を解放できるので、おむつの装着時、着用者の大腿部Mを大腿部挿入穴9に挿入する作業が容易になる。
【0060】
図11は、不透液性バックシートとなる外面側シート2と透液性トップシートとなる肌面側シート3との間に吸収体4を挟み込むタイプの失禁製品の具体的な実施形態であり、レッグギャザー用弾性糸7を添設した弾性シート体26を設けて、所定の本数を隔てた弾性糸7(A,B)の間に、前後方向にスリット状の大腿部挿入穴9をそれぞれ開口させたものを吸収体本体8の股下部Dの左右各縁部に固定したものである。
【0061】
そして、内側となる弾性糸7(A)の一部を大腿部挿入穴9の方向へ台形状に窪ませることにより、この窪み部分が周囲の弾性糸7(A)により引っ張られて、同図(b)(c)のように立ち上がって立体レッグギャザー26aを形成するようになって、体液の横漏れを有効に防止することができる。図11の失禁製品1は、図13(a)のような装着状態となる。
【0062】
図12は、図11の変形例であり、同図(a)は、弾性シート体26を吸収体本体8の前身頃F側に接合したもの、同図(b)は、吸収体本体8の後身頃Bを大きくして吸収面積を増大させたもの、同図(c)は、弾性シート体26に切り込み26bを形成して、この切り込み26bの両端末部を上述したような粘着テープや機械式ファスナーのような係止部26c,26cで相互に着脱自在に係止するようにしたものである。同図(c)では、大腿部挿入穴9を解放できるので、おむつの装着時、着用者の大腿部Mを大腿部挿入穴9に挿入する作業が容易になる。
【0063】
また、図12(c)の弾性シート体26としては、図13(b)(c)のように、大腿部挿入穴9の片側を切り離し可能な切り離し線26dを予め形成しておき、使用時に切り離し線26dを指で切り離して、大腿部挿入穴9を着用者の大腿部Mに挿入した後に、切り離し部分の両端末部を上述したような粘着テープや機械式ファスナーのような係止部26cで着脱自在に係止することもできる。
【0064】
図14〜図16は、第2実施形態の吸収体製品である使い捨ておむつ30を説明するものであり、該おむつ30は、第1実施形態と同様に、外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4と左右一対の吊り上げバンド5とで基本構成されている。
【0065】
上記外面側シート2と肌面側シート3の間には、図15に示すように、左右各縁部に沿ってレッグギャザー用弾性糸7がそれぞれ添設されて、接着又は融着されている。
【0066】
上記レッグギャザー用弾性糸7により吸収体本体8に平面状レッグギャザー部21が形成され、この平面状レッグギャザー部21に、大腿部相当部位、つまり股下部Dを除いて、前身頃Fと後身頃Bの左右各部に、平面状レッグギャザー部21を左右方向に跨ぐようにトンネル用不織布31がそれぞれ配置され、各トンネル用不織布31は、図15(a)(b)のように、内端31aが肌面側シート3の上面に接着又は融着されるとともに、外端31bが外面側シート2の下面に接着又は融着されている。
【0067】
これにより、股下部Dを除いて、前身頃Fと後身頃Bに跨って、中空のトンネル部32が形成されるとともに、前身頃Fと後身頃Bのトンネル部32の間に切欠き部33が形成されることになる。
【0068】
上記吊り上げバンド5には、吊り上げ用弾性糸10が添設されて、この吊り上げバンド5は、一端の端末部5d側が後身頃B側のトンネル部32から挿通されて、股下部Dの切欠き部33で外部に露出した後に、再び前身頃F側のトンネル部32に挿通されて、この端末部5dが前身頃Fに接合固定されている(図14の符合a参照)。これにより、吊り上げバンド5は、トンネル部32に移動・伸縮可能に挿通されることになる。
【0069】
また、股下部Dの切欠き部33で外部に露出した吊り上げバンド5は、該バンド5が引き出された状態では図15(c)の状態であるが、図14に二点鎖線bで示したように、吊り上げバンド5の移動・伸縮作用により外方Sに引き出すことができ、この引き出した吊り上げバンド5と平面状レッグギャザー部21とで大腿部挿入穴9が形成されるようになる。
【0070】
上記吊り上げバンド5の他端の端末部5cには、第1実施形態と同様に、粘着テープや機械式ファスナーのような係止部5fが設けられ、この係止部5fで前身頃Fの外面側シート2の表面に着脱自在に係止することができる。
【0071】
上記吊り上げバンド5には、前後方向に延在するスリット5gが形成されるとともに、後身頃Bのトンネル部32内には、このスリット5gに入り込むストッパー部32aが形成されている(図15(b)参照)。このストッパー部32aは、スリット5g内で対向するトンネル用不織布31と肌面側シート3をスポット状に接着又は融着で固定して、このスポット状固定部でもって形成することができる。
【0072】
上記のように構成した第2実施形態の使い捨ておむつ30を使用する場合には、図16に示すように、吸収体本体8の股下部Dの切欠き部33で外部に露出した吊り上げバンド5を外方Sに引き出して、この引き出した吊り上げバンド5と平面状レッグギャザー部21とで大腿部挿入穴9を形成する。また、吊り上げバンド5の他端の端末部5cの係止部5fを前身頃Fの外面側シート2の表面に係止してループ状にする。
【0073】
そして、吸収体本体8の肌面側シート3を着用者に向けた状態で、着用者の左右の足を左右の大腿部挿入穴9にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体8の股下部Dが着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴9の内側となる平面状レッグギャザー部21が大腿部Mのほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴9の外側となる伸縮性の吊り上げバンド5が大腿部Mのほぼ外半周部分に弾性的に密着することにより、大腿部挿入穴9が大腿部Mの全周に弾性的に密着して、大腿部挿入穴9が大腿部Mに固定されるようになる。
【0074】
その後、ループ状の左右の吊り上げバンド5に着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、伸縮性の吊り上げバンド5で吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0075】
この吊り上げによって、吊り上げバンド5が伸長して引っ張られるから、吊り上げバンド5が大腿部Mにより強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。また逆に、吊り上げバンド5のスリット5gの後端(符号省略)がストッパー部32aで阻止され、吸収体本体8の外方Sに引き出した吊り上げバンド5を大腿部Mに締め付け過ぎることをも阻止するようになっている。
【0076】
また、吸収体本体8の切欠き部33で外部に露出した吊り上げバンド5が必要以上に外方Sに引き出されて弛むと、大腿部Mの外半周部分に弾性的に密着しにくくなって、ずれや漏れが生じやすくなる。そこで、吊り上げバンド5が必要以上に外方Sに引き出される前に、吊り上げバンド5のスリット5gの前端5hがストッパー部32aで当て止められて、それ以上は外方Sに引き出されるのが阻止されるから、引き出された吊り上げバンド5が弛むことなく常に大腿部Mに弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0077】
図17〜図19は、第3実施形態の吸収体製品である使い捨ておむつ35を説明するためのものであり、該おむつ35は、第1実施形態と同様に、外面側シート2と肌面側シート3と吸収体4と左右一対の吊り上げバンド5とで基本構成されている。
【0078】
上記外面側シート2と肌面側シート3の間には、図18に示すように、左右各縁部に沿ってレッグギャザー用弾性糸7がそれぞれ添設されて、接着又は融着されている。
【0079】
上記レッグギャザー用弾性糸7により吸収体本体8に平面状レッグギャザー部21が形成されるとともに、この平面状レッグギャザー部21の内側に位置すべき立体状レッグギャザー相当部位に、股下部Dと前身頃Fと後身頃Bに跨って、外面側シート2と肌面側シート3との間に中空のトンネル部32が形成されている。
【0080】
上記吊り上げバンド5には、吊り上げ用弾性糸10が添設されて、この吊り上げバンド5は、一端の端末部5d側が後身頃B側のトンネル部32から挿通されて、股下部Dのトンネル部32を通って前身頃F側のトンネル部32に挿通されて、この端末部5dが前身頃Fに固定されている(図17の符合a参照)。これにより、吊り上げバンド5は、トンネル部32に移動・伸縮可能に挿通されることになる。
【0081】
また、トンネル部32と平面状レッグギャザー部21との境部分には、股下部Dに位置してスリット状の大腿部挿入穴9が形成されて、平面状レッグギャザー部21を図17及び図18(c)に二点鎖線bで示したように外方Sに引っ張り伸ばすことにより、この引っ張り伸ばした平面状レッグギャザー部21とトンネル部32内の吊り上げバンド5とで大腿部挿入穴9が拡大されるようになる。
【0082】
上記吊り上げバンド5の他端の端末部5cには、第1実施形態と同様に、粘着テープや機械式ファスナーのような係止部5fが設けられ、この係止部5fで前身頃Fの外面側シート2の表面に着脱自在に係止することができる。
【0083】
上記吊り上げバンド5には、前後方向に延在するスリット5gが形成されるとともに、後身頃Bのトンネル部32内には、このスリット5gに入り込むストッパー部32aが形成されている(図18(b)参照)。
【0084】
上記のように構成した第3実施形態の使い捨ておむつ35を使用する場合には、吊り上げバンド5の他端の端末部5cの係止部5fを前身頃Fの外面側シート2の表面に係止してループ状にする。
【0085】
そして、吸収体本体8の肌面側シート3を着用者に向けた状態で、平面状レッグギャザー部21を外方Sに引っ張り伸ばして大腿部挿入穴9を拡大し、着用者の左右の足を左右の大腿部挿入穴9にそれぞれ挿入しながら、吸収体本体8の股下部Dが着用者の股部分に当たるように引き上げると、大腿部挿入穴9の内側となるトンネル部32内の伸縮性の吊り上げバンド5が大腿部Mのほぼ内半周部分に弾性的に密着するととともに、大腿部挿入穴9の外側となる平面状レッグギャザー部21が大腿部Mのほぼ外半周部分に弾性的に密着することにより、大腿部挿入穴9が大腿部Mの全周に弾性的に密着して、大腿部挿入穴9が大腿部Mに固定されるようになる。
【0086】
その後、ループ状の左右の吊り上げバンド5に着用者の左右の腕をそれぞれ通して、着用者の首又は肩に掛け回すと、伸縮性の吊り上げバンド5で吸収体本体8が吊り上げられて、着用者の股等に弾性的に密着するようになる。
【0087】
この吊り上げによって、吊り上げバンド5が伸長して引っ張られるから、吊り上げバンド5が大腿部Mにより強く弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0088】
また、吊り上げバンド5が弛むと、大腿部Mの内半周部分に弾性的に密着しにくくなって、ずれや漏れが生じやすくなる。そこで、吊り上げバンド5が必要以上に弛む前に、吊り上げバンド5のスリット5gの前端5hがストッパー部32aで当て止められて、それ以上の弛みが阻止されるから、吊り上げバンド5が弛むことなく常に大腿部Mに弾性的に密着するようになって、ずれや漏れがなくなる。
【0089】
上記各実施形態では、吸収体製品として使い捨ておむつ又は失禁パンツを前提としたが、本発明はこれに限られるものではなく、生理用ナプキン、生理帯、ショーツ等にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1,30,35 使い捨ておむつ、失禁製品(吸収体製品)
2 外面側シート
3 肌面側シート
5 吊り上げバンド
8 吸収体本体
9 大腿部挿入穴
20 立体状レッグギャザー部
21 平面状レッグギャザー部
B 後身頃
D 股下部
F 前身頃
M 大腿部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収部を含むシート積層体からなり、着用者の股下部と前身頃と後身頃とを覆うように形成された吸収体本体と、この吸収体本体を着用者に固定するための固定部材とから構成される吸収体製品において、
上記固定部材は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の近傍に位置して、着用者の大腿部の全周に弾性的に密着させて固定するための大腿部固定部と、吸収体本体の前身頃と後身頃とに係止されて、着用者の肩又は首に掛け回して吸収体本体を吊り上げて固定するための吊り上げバンドとでなり、
上記吊り上げバンドは、その両端末部の一端が吸収体本体の後身頃に固定されるとともに、両端末部の他端が吸収体本体の前身頃に着脱自在に係止可能であることを特徴とする吸収体製品。
【請求項2】
上記吊り上げバンドの着脱自在な他端に粘着テープが設けられるとともに、前身頃の外面側シートに、上記粘着テープを着脱自在に貼付け可能な貼付け部が設けられている請求項1に記載の吸収体製品。
【請求項3】
上記吊り上げバンドの着脱自在な他端に機械式ファスナーの雄部が設けられるとともに、前身頃の外面側シートの表面に、上記雄部を着脱自在に係止可能な機械式ファスナーの雌部が設けられている請求項1に記載の吸収体製品。
【請求項4】
上記外面側シートは、表面にループ状繊維組織を有する不織布を用いて、機械式ファスナーの雌部として使用する請求項3に記載の吸収体製品。
【請求項5】
上記吊り上げバンドの着脱自在な他端にバンド側結束具が設けられるとともに、前身頃にバンド側結束具を着脱自在に結束可能な身頃側結束具が設けられている請求項1に記載の吸収体製品。
【請求項6】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体のレッグギャザー存在部位に大腿部挿入穴を開口させてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項7】
上記レッグギャザー存在部位は、複数本の弾性糸が添設されて、弾性糸の間にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる請求項6に記載の吸収体製品。
【請求項8】
上記レッグギャザー存在部位は、立体状レッグギャザー部が設けられてなり、この立体状レッグギャザー部にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる請求項6に記載の吸収体製品。
【請求項9】
上記レッグギャザー存在部位は、平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部とが併設されてなり、この平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部の境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる請求項6に記載の吸収体製品。
【請求項10】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に弾性シート体が取付けられて、この弾性シート体に大腿部挿入穴を開口させてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項11】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴としてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項12】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴とするとともに、弾性バンドに切り込みが形成されて、この切り込みの両端末部が着脱自在に係止可能である請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項1】
吸収部を含むシート積層体からなり、着用者の股下部と前身頃と後身頃とを覆うように形成された吸収体本体と、この吸収体本体を着用者に固定するための固定部材とから構成される吸収体製品において、
上記固定部材は、吸収体本体の股下部の左右各縁部の近傍に位置して、着用者の大腿部の全周に弾性的に密着させて固定するための大腿部固定部と、吸収体本体の前身頃と後身頃とに係止されて、着用者の肩又は首に掛け回して吸収体本体を吊り上げて固定するための吊り上げバンドとでなり、
上記吊り上げバンドは、その両端末部の一端が吸収体本体の後身頃に固定されるとともに、両端末部の他端が吸収体本体の前身頃に着脱自在に係止可能であることを特徴とする吸収体製品。
【請求項2】
上記吊り上げバンドの着脱自在な他端に粘着テープが設けられるとともに、前身頃の外面側シートに、上記粘着テープを着脱自在に貼付け可能な貼付け部が設けられている請求項1に記載の吸収体製品。
【請求項3】
上記吊り上げバンドの着脱自在な他端に機械式ファスナーの雄部が設けられるとともに、前身頃の外面側シートの表面に、上記雄部を着脱自在に係止可能な機械式ファスナーの雌部が設けられている請求項1に記載の吸収体製品。
【請求項4】
上記外面側シートは、表面にループ状繊維組織を有する不織布を用いて、機械式ファスナーの雌部として使用する請求項3に記載の吸収体製品。
【請求項5】
上記吊り上げバンドの着脱自在な他端にバンド側結束具が設けられるとともに、前身頃にバンド側結束具を着脱自在に結束可能な身頃側結束具が設けられている請求項1に記載の吸収体製品。
【請求項6】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体のレッグギャザー存在部位に大腿部挿入穴を開口させてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項7】
上記レッグギャザー存在部位は、複数本の弾性糸が添設されて、弾性糸の間にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる請求項6に記載の吸収体製品。
【請求項8】
上記レッグギャザー存在部位は、立体状レッグギャザー部が設けられてなり、この立体状レッグギャザー部にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる請求項6に記載の吸収体製品。
【請求項9】
上記レッグギャザー存在部位は、平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部とが併設されてなり、この平面状レッグギャザー部と立体状レッグギャザー部の境部分にスリット状の大腿部挿入穴を開口させてなる請求項6に記載の吸収体製品。
【請求項10】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に弾性シート体が取付けられて、この弾性シート体に大腿部挿入穴を開口させてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項11】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴としてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【請求項12】
上記大腿部固定部は、上記吸収体本体の股下部の左右各縁部に環状の弾性バンドが取付けられて、この弾性バンドを大腿部挿入穴とするとともに、弾性バンドに切り込みが形成されて、この切り込みの両端末部が着脱自在に係止可能である請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
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【図8】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−82737(P2009−82737A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5864(P2009−5864)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【分割の表示】特願2001−1651(P2001−1651)の分割
【原出願日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【分割の表示】特願2001−1651(P2001−1651)の分割
【原出願日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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