説明

吸収冷凍機

【課題】単純な構成で溶液の逆流を抑制する吸収冷凍機を提供すること。
【解決手段】冷媒蒸気Veを溶液Sdで吸収して希溶液Swとする吸収器31と、希溶液Swを濃溶液Saとする高温再生器32Aと、希溶液Swと濃溶液Saとで熱交換を行わせる溶液熱交換器37と、希溶液Swの溶液熱交換器37への流入を回避させる希溶液バイパス流路45Bと、定常運転時は希溶液バイパス弁65を閉とし、希釈運転時に希溶液バイパス弁65を開として希溶液Swを希溶液バイパス流路45Bに流入させるように希溶液Swの流れを制御する制御装置61とを備える吸収冷凍機30は、希釈運転時に、高温再生器32Aに流入する希溶液Swの温度の上昇を抑制することができ、これによって、高温再生器32A内の温度及び圧力を低下させることができて、高温再生器32Aから吸収器31への溶液Saの逆流を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収冷凍機に関し、特に溶液の逆流を抑制する吸収冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収冷凍機は、吸収溶液に吸収される冷媒が蒸発器において蒸発する際の蒸発潜熱を被冷却媒体から奪うことにより被冷却媒体を冷却する。冷媒を吸収した吸収溶液は、低圧の吸収器から高圧の再生器へ溶液ポンプで圧送され、再生器で加熱濃縮されて再び冷媒蒸気を吸収しうる濃度に再生された後、吸収器に戻されるサイクルを繰り返す。吸収冷凍機は、定常運転(被冷却媒体を冷却するための運転)から停止させる際、吸収溶液が結晶することを回避するために希釈運転が行われる。
【0003】
一般に、希釈運転によって再生器の圧力が低下するが、再生器の圧力低下が不十分のまま希釈運転が終了する場合がある。再生器の圧力が高すぎると、多量の吸収溶液が再生器から吸収器へ流入し、さらに吸収器に隣接する蒸発器に流入して冷媒を汚してしまい、以後の定常運転において所定の冷凍能力を発揮できないという不都合が生じうる。このような不都合を回避するために、加熱されると伸び冷却されると縮む伸縮部材でチェッキを動かして定常運転時は溶液を流通させ希釈運転完了後は溶液の流通を阻止する溶液逆流防止構造を溶液ラインに設けることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−94388号公報(図1−6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された溶液逆流防止構造のような複雑な機構の装置を設置すると、故障が生じやすいという問題があり、信頼性が低下することとなる。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑み、極力単純な構成で溶液の逆流を抑制する吸収冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収冷凍機は、例えば図1に示すように、冷媒蒸気Veを溶液Sdで吸収し、溶液Sdを濃度が低下した希溶液Swとする吸収器31と;被冷却媒体pの熱で冷媒液Vfを蒸発させて吸収器31に供給される冷媒蒸気Veを発生させると共に被冷却媒体pを冷却する蒸発器34と;希溶液Swを導入し加熱することにより冷媒を蒸発させて濃度が上昇した濃溶液Saとする高温再生器32Aと;吸収器31から高温再生器32Aへ向けて導出された希溶液Swと高温再生器32Aから吸収器31へ向けて導出された濃溶液Saとで熱交換を行わせる溶液熱交換器37と;希溶液Swの溶液熱交換器37への流入を回避させる、希溶液バイパス弁65を有する希溶液バイパス流路45Bと;被冷却媒体pを冷却する定常運転時は希溶液バイパス弁65を閉とし、定常運転から停止させる際の希釈運転時に、希溶液バイパス弁65を開として希溶液Swを希溶液バイパス流路45Bに流入させるように希溶液Swの流れを制御する制御装置61とを備える。
【0008】
ここで「吸収器から高温再生器へ向けて(高温再生器から吸収器へ向けて)導出された」には、吸収器(高温再生器)から導出された溶液が、高温再生器(吸収器)に直接流入される場合のほか、他の部位(例えば、高温再生器よりも作動温度が低い中温再生器や低温再生器)を経由して高温再生器(吸収器)に流入される場合も含む。
【0009】
このように構成すると、希釈運転時に、希溶液を希溶液バイパス流路に流入させるように希溶液の流れを制御するので、希釈運転時に、高温再生器に流入する希溶液の温度の上昇を抑制することができる。高温再生器に流入する希溶液の温度の上昇を抑制することによって、高温再生器内の温度を低下させることができ、高温再生器の内圧を低下させることができて、高温再生器から吸収器への溶液の逆流を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る吸収冷凍機は、例えば図4(a)(又は図4(c))に示すように、濃溶液Saの溶液熱交換器37への流入を回避させる、濃溶液バイパス弁66を有する濃溶液バイパス流路46B(又は濃溶液バイパス弁66Cを有する濃溶液バイパス流路46C)を備え;制御装置61(例えば図1参照)が、定常運転時は濃溶液バイパス弁66(又は66C)を閉とし、希釈運転時に、濃溶液バイパス弁66(又は66C)を開として濃溶液Saを濃溶液バイパス流路46B(又は46C)に流入させるように濃溶液Saの流れを制御する。
【0011】
また、本発明の第3の態様に係る吸収冷凍機として、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る吸収冷凍機30において、冷媒蒸気Veを吸収した溶液Swと高温再生器32Aで発生した高温冷媒蒸気Vaとを導入し、高温冷媒蒸気Vaの熱により導入した溶液Swの濃度を上昇させる、高温再生器32Aよりも作動温度が低い再生器32Mと;冷媒蒸気Vbを冷却凝縮させる凝縮器33と;高温冷媒蒸気Vaを、高温再生器32Aから吸収器31又は凝縮器33へ直接導く高温冷媒蒸気バイパス流路57Bとを備え;制御装置61が、希釈運転時に、高温冷媒蒸気Vaを、高温冷媒蒸気バイパス流路57Bを介して吸収器31又は凝縮器33へと導くように高温冷媒蒸気Vaの流れを制御することとしてもよい。ここで「直接導く」とは、吸収冷凍機の主要構成部(冷凍サイクルを作動させるために必要な吸収器、再生器(多重効用の場合は各再生器を含む)、凝縮器、蒸発器)の他の部位(例えば、高温再生器よりも作動温度が低い中温再生器や低温再生器等)を経由せずに目的の部位に導くことである。
【0012】
このように構成すると、希釈運転時に、余熱で発生した高温冷媒蒸気を、高温冷媒蒸気バイパス流路を介して吸収器又は凝縮器へと導くように高温冷媒蒸気の流れを制御するので、高温冷媒蒸気を介して高温再生器の熱を吸収器又は凝縮器から放散することができる。高温再生器の熱を吸収器又は凝縮器から放散することによって、高温再生器内の温度を低下させることができ、高温再生器の内圧を低下させることができて、高温再生器から吸収器への溶液の逆流を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の第4の態様に係る吸収冷凍機として、例えば図1、図4(b)(又は図4(c))に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収冷凍機30において、高温再生器32Aから吸収器31へ向けて導出された濃溶液Saを流す濃溶液流路46と;濃溶液流路46に配設され、濃溶液流路46を流れる濃溶液Saの流量を調節する流量調節手段75と;濃溶液Saの流量調節手段75への流入を回避させる流量調節バイパス流路76(又は46C)とを備え;制御装置61が、希釈運転時に流量調節バイパス流路76(又は46C)へ濃溶液Saを流すように濃溶液Saの流れを制御することとしてもよい。典型的には、定常運転時は濃溶液Saを流量調節バイパス流路76(又は46C)へ流さず、希釈運転時は濃溶液Saを流量調節バイパス流路76(又は46C)へ流す。
【0014】
このように構成すると、濃溶液が、希釈運転時に、流量調節手段に加えて流量調節バイパス流路をも流れることとなり、溶液の循環量が増加して、高温再生器内の温度及び圧力が低下するのを促進させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、希釈運転時に、希溶液を希溶液バイパス流路に流入させるように溶液の流れを制御するので、希釈運転時に、高温再生器に流入する希溶液の温度の上昇を抑制することができ、これによって、高温再生器内の温度を低下させることができ、高温再生器の内圧を低下させることができて、高温再生器から吸収器への溶液の逆流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の模式的系統図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機を構成する高温再生器の縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の希釈運転時の作用を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の高温溶液熱交換器まわりの変形例を示す部分詳細図である。(a)は第1の変形例、(b)は第2の変形例、(c)は第3の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の溶液フローの模式的ブロック図である。(a)は図1に示す実施の形態のフロー、(b)は第4の変形例のフロー、(c)は第5の変形例のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0018】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機30の構成を説明する。図1は吸収冷凍機30の系統図である。吸収冷凍機30は、三重効用吸収冷凍機であり、被冷却媒体としての冷水pの熱で冷媒液Vfを蒸発させて冷媒蒸気Veを発生させることにより冷水pを冷却する蒸発器34と、蒸発器34で発生した冷媒蒸気Veを混合濃溶液Sdで吸収する吸収器31と、吸収器31で冷媒蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swを導入し、希溶液Swを加熱し冷媒を蒸発させて濃度が上昇した高温濃溶液Saを生成する高温再生器32Aと、吸収器31から希溶液Swを導入し、高温再生器32Aで発生した高温冷媒蒸気Vaで希溶液Swを加熱し冷媒を蒸発させて濃度が上昇した中温濃溶液Smを生成する中温再生器32Mと、同じく吸収器31から希溶液Swを導入し、主に中温再生器32Mで発生した中温冷媒蒸気Vmで希溶液Swを加熱し冷媒を蒸発させて濃度が上昇した低温濃溶液Sbを生成する低温再生器32Bと、低温再生器32Bで希溶液Swから蒸発した低温冷媒蒸気Vbを冷却して凝縮させ、蒸発器34に送る冷媒液Vfを生成する凝縮器33と、吸収冷凍機30を制御する制御装置61とを備えている。中温再生器32Mは高温再生器32Aよりも作動温度が低く、低温再生器32Bは中温再生器32Mよりも作動温度が低い。吸収冷凍機30で使用される冷媒及び溶液は、典型的には、冷媒として水が、溶液として臭化リチウム(LiBr)が用いられるが、これに限らず他の冷媒、溶液(吸収剤)の組み合わせで使用してもよい。なお、以下の説明において各溶液(希溶液Swや高温濃溶液Sa等)の濃度を不問とするときは、総称して単に「溶液S」ということとする。
【0019】
蒸発器34には、冷却する対象である冷水pを流す冷水管34aが配設されている。冷水管34aは、エアハンドリングユニット等の冷水利用機器(不図示)と配管52を介して接続されている。また、蒸発器34には、冷媒液Vfを冷水管34aに向けて散布するための冷媒液散布ノズル34bが冷水管34aの上方に配設されている。蒸発器34の下部には、導入した冷媒液Vfを貯留する貯留部34cが形成されている。
【0020】
吸収器31には、混合濃溶液Sdで冷媒蒸気Veを吸収した際に発生する吸収熱を奪う冷却水qを流す冷却水管31aが内部に配設されている。冷却水管31aは、凝縮器33内の冷却水管33aと配管53を介して、及び冷却塔(不図示)と配管54を介して、それぞれ接続されている。また、吸収器31には、混合濃溶液Sdを冷却水管31aに向けて散布する濃溶液散布ノズル31bが冷却水管31aの上方に配設されている。濃溶液散布ノズル31bは、典型的には合成樹脂で形成されている。吸収器31は、冷却水管31aの下方に、冷媒蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swを貯留する貯留部31cが形成されている。
【0021】
吸収器31と蒸発器34とは共に1つの缶胴内にシェルアンドチューブ型に形成され、両者の間には仕切壁31dが設けられている。吸収器31と蒸発器34とは仕切壁31dの上部で連通しており、蒸発器34で発生した冷媒蒸気Veを吸収器31に移動させることができるように構成されている。缶胴外側の蒸発器34側には、貯留部34cに貯留されている冷媒液Vfを上部の冷媒液散布ノズル34bに導く循環冷媒管51が配設されている。循環冷媒管51には、貯留部34cに貯留している冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル34bに圧送する冷媒ポンプ39が配設されている。冷媒ポンプ39の下流側の循環冷媒管51には、希釈運転時に冷媒液Vfを希溶液管45に導く希釈冷媒管44が接続されている。
【0022】
吸収器31の底部には、貯留部31cの希溶液Swを高温再生器32Aに導く希溶液管45と、中温再生器32M及び低温再生器32Bに導く希溶液管55が接続されている。希溶液管45には、希溶液Swを高温再生器32Aに圧送する高温溶液ポンプ48が配設されている。希溶液管55には、希溶液Swを中温再生器32M及び低温再生器32Bに圧送する中温溶液ポンプ38が配設されている。高温溶液ポンプ48及び中温溶液ポンプ38は、典型的にはインバータ(不図示)により、回転速度を調節することが可能なように構成されており、冷凍負荷に応じた流量の希溶液Swを圧送することができるように構成されている。すなわち、高温溶液ポンプ48及び中温溶液ポンプ38は、吐出流量が調節可能に構成されている。なお、中温溶液ポンプ38とは別に、吸収器31から低温再生器32Bへ希溶液Swを圧送する溶液ポンプを設けてもよい。
【0023】
高温溶液ポンプ48の上流側の希溶液管45には、希釈運転時に冷媒液Vfを希溶液管45に導入する希釈冷媒管44が接続されている。希釈冷媒管44には、冷媒液Vfの流れを遮断可能な希釈冷媒弁44vが配設されている。高温溶液ポンプ48の下流側の希溶液管45には、希溶液Swと高温濃溶液Saとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器としての高温溶液熱交換器37が配設されている。高温溶液熱交換器37には、また、高温濃溶液Saを流す高温濃溶液流路としての高温濃溶液管46が接続されている。高温溶液熱交換器37は、典型的にはプレート型熱交換器が用いられるがシェルアンドチューブ型やその他の熱交換器であってもよい。
【0024】
希溶液管45には、高温溶液熱交換器37を迂回するように高温溶液熱交換器37の上流側と下流側とに接続された溶液バイパス流路としての希溶液バイパス管45Bが設けられている。希溶液バイパス管45Bには、希溶液Swの流通を遮断可能な希溶液バイパス弁65が設けられている。高温溶液熱交換器37よりも下流側の高温濃溶液管46には、高温濃溶液Saの流量を調節する流量調節手段としてのオリフィス75が設けられている。
【0025】
希溶液管45は、高温再生器32Aに接続されている。また、高温再生器32Aには、高温濃溶液管46が接続されている。また、高温再生器32Aには、発生した高温冷媒蒸気Vaを流す冷媒蒸気管57が接続されている。高温再生器32A近傍の冷媒蒸気管57には、冷媒蒸気管57の内部の圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ71が設けられている。高温再生器32A近傍とは、典型的には検出した圧力が高温再生器32Aの内圧と推定できる程度の近さである。つまり、圧力センサ71は、実質的に高温再生器32Aの内部圧力を検出することができるように配設されている。圧力センサ71は、高温再生器32Aに直に設けられていてもよい。高温再生器32Aと高温溶液熱交換器37との間の高温濃溶液管46には、高温再生器32Aから導出された高温濃溶液Saの温度を検出する温度検出手段としての温度センサ72が設けられている。また、高温溶液熱交換器37よりも下流側の高温濃溶液管46には、高温濃溶液管46の内部を流れる高温濃溶液Saの温度を検出する温度検出手段としての温度センサ73が設けられている。なお、図1では、高温再生器32Aを簡易に示しているため、以下に、高温再生器32Aの構成及び高温再生器32Aへの希溶液管45、高温濃溶液管46、冷媒蒸気管57の具体的な接続位置について説明する。
【0026】
図2は、高温再生器32Aの縦断面図である。高温再生器32Aは貫流式再生器であり、希溶液Swを導入する液室としての下部管寄せ14と、下部管寄せ14の希溶液Swを上方に向けて流す複数の液管10と、液管10内で高温濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとの混合流体Fmとなったものを収集する収集室としての上部管寄せ15と、液管10内の希溶液Swを加熱する燃焼ガスを生成する加熱装置としてのバーナー16と、これらの部材を収容する外容器13と、高温濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとを分離する気液分離器22と、気液分離器22と連通する液面制御ケース24とを備えている。
【0027】
下部管寄せ14は、希溶液Swを複数の液管10に分配する部材である。下部管寄せ14は、典型的には、水平断面が円環状に、鉛直断面が矩形状に形成されている。なお、水平断面は円形以外の多角形状にひとまわりしているものであってもよく、環状につながれずにC字状に形成されていてもよい。鉛直断面は矩形以外の円形あるいは楕円形であってもよい。また、下部管寄せ14の中心部に形成された空洞部分には、耐火材17が充填されている。下部管寄せ14には、希溶液Swを導入する希溶液管45と、気液分離器22から導出された高温濃溶液Saを導入する戻り管25とが接続されている。
【0028】
下部管寄せ14には、複数の液管10がほぼ鉛直に配設されている。液管10がほぼ鉛直とは、液管10の軸がほぼ鉛直の状態である。ほぼ鉛直は、液管10内で加熱されて希溶液Swから蒸発して生じた高温冷媒蒸気Vaが高温濃溶液Saと共に円滑に排出される程度であればよい。また、複数の液管10は、下部管寄せ14とほぼ同心円上にほぼ等間隔に配設されている。下部管寄せ14と同心円上にほぼ等間隔に配設された複数の液管10の内側には、燃料を燃焼して燃焼ガスGbを生成する燃焼室20が形成されている。
【0029】
複数の液管10の頂部には、上部管寄せ15が接続されている。上部管寄せ15は、下部管寄せ14と同様に、典型的には、水平断面が円環状に、鉛直断面が矩形状に形成されている。上部管寄せ15には、高温濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとの混合流体Fmを気液分離器22に導く混合流体管21が接続されている。上部管寄せ15の中心部に形成された空洞部分には、バーナー16が配設されている。バーナー16は、制御装置61(図1参照)からの信号を受信して点火及び停止することができるように構成されている。
【0030】
外容器13は、燃焼室20で生成された燃焼ガスGbを外部に漏らさないガスシール構造となっており、典型的には、円筒形状を有している。外容器13は、下部管寄せ14及び上部管寄せ15とほぼ同心円となっており、下部管寄せ14及び上部管寄せ15を嵌め込むことができるような内径を有している。外容器13には、燃焼ガスGbを排出する煙道18が接続されている。
【0031】
気液分離器22は、典型的には、円筒状に形成されているが、四角柱形状や多角形形状、その他の形状であってもよい。気液分離器22は、鉛直方向に長手方向がくるようにして上部管寄せ15に近接した位置に配設されている。気液分離器22は、混合流体管21で上部管寄せ15と接続されている。本実施の形態では、上部管寄せ15の上端よりも気液分離器22の上端の方が高くなり、上部管寄せ15の上面と気液分離器22の上部側面とを90°曲がった混合流体管21で接続するようにしている。気液分離器22内には、混合流体管21を介して導入した混合流体Fmを高温冷媒蒸気Vaと高温濃溶液Saとに分離する気液分離板としてのバッフル板22aが設けられている。バッフル板22aは、気液分離器22の上部を2分割するように気液分離器22の天板に取り付けられている。バッフル板22aによって分割された空間の、混合流体管21が接続されていない方の領域の気液分離器22の上面には、分離した高温冷媒蒸気Vaを導出する高温冷媒蒸気導出口22eが形成されており、高温冷媒蒸気導出口22eには冷媒蒸気管57が接続されている。高温冷媒蒸気導出口22eは、気液分離器22の上部側面に形成されていてもよいが、冷媒蒸気管57に溶液が混入するのを防ぐようにする観点から、気液分離器22の上方に形成されていることが好ましい。
【0032】
また、気液分離器22の底面には分離した高温濃溶液Saを導出する高温濃溶液導出口22nが形成されており、高温濃溶液導出口22nには高温濃溶液管46が接続されている。高温濃溶液導出口22nは、典型的には気液分離器22の底面に形成されているが、気液分離器22の下部側面に形成されていてもよい。さらに気液分離器22の底面の別の部分には、分離した高温濃溶液Saのうちの余剰分を下部管寄せ14に戻す戻り管25が接続されている。本実施の形態では、戻り管25により下部管寄せ14と気液分離器22とが連絡している。下部管寄せ14と気液分離器22とが連絡していると、気液分離器22内に貯留した高温濃溶液Saを下部管寄せ14に還流でき、気液分離器22内の液位の上昇を抑制して、気液分離器22から導出される高温冷媒蒸気Vaに同伴する溶液量を少なくすることができる。
【0033】
気液分離器22は、混合流体管21及び戻り管25並びに上部管寄せ15及び下部管寄せ14を介して液管10と接続されていて、高温再生器32Aの運転中は、液管10内の混合流体Fmの液位に対して気液分離器22内の高温濃溶液Saの液位は高く現れる。そして、液管10が過熱されることによる損傷を防ぐ観点から液管10内の溶液(希溶液Swから高温濃溶液Saに移行する溶液)の液位に応じて現れる気液分離器22内の高温濃溶液Saの液位が損傷防止液位Lpよりも高くなるように気液分離器22が配置され、高液位Lt及び低液位Lsが設定される。ここで、損傷防止液位Lpは、液管10内に溶液(希溶液Swから高温濃溶液Saに移行する溶液)がない状態で液管10を加熱することによって液管10が過熱されることによる損傷を防ぐために最低限液管10内に溶液を満たしておくべき液位に余裕分(高温再生器32Aが停止動作を開始してから停止するまでの間に液位が降下する分)だけ上方に設定した液管10内の液位が気液分離器22に現れる液位である。余裕分は適宜決定することができる。高液位Ltは、本実施の形態では下部管寄せ14に供給される希溶液Swの流量を減少させる信号を高温溶液ポンプ48(図1参照)に送信する液位である。低液位Lsは、本実施の形態では下部管寄せ14に供給される希溶液Swの流量を増加させる信号を高温溶液ポンプ48(図1参照)に送信する液位である。
【0034】
液面制御ケース24は、典型的には、円筒状に形成されているが、四角柱形状や多角形形状、その他の形状であってもよい。液面制御ケース24の内部には、損傷防止液位Lpを検出する損傷防止電極棒23pと、低液位Lsを検出する低液位電極棒23sと、高液位Ltを検出する高液位電極棒23tとが鉛直方向に延びるようにして収納されている。以下、損傷防止電極棒23p、低液位電極棒23s、高液位電極棒23tを総称して「液位検出電極棒23」ということもある。液位検出電極棒23は、それぞれ液面制御ケース24の天板に取り付けられている。損傷防止電極棒23pの下端は損傷防止液位Lpに位置している。低液位電極棒23sの下端は低液位Lsに位置している。高液位電極棒23tの下端は高液位Ltに位置している。なお、液面制御ケース24には、必要に応じて、高温濃溶液Saを介して液位検出電極棒23と電気回路を形成するコモン電極棒(不図示)も配設されるが、以降の説明では、コモン電極棒についての言及を特に行わない。液位検出電極棒23は、吸収冷凍機30(図1参照)の制御装置61(図1参照)と信号ケーブルで接続されており、気液分離器22の高液位信号及び低液位信号並びに損傷防止液位信号を制御装置に送信することができるように構成されている。
【0035】
液位検出電極棒23を収納する液面制御ケース24は、下端(下面)が損傷防止液位Lpよりも下方に、上端(上面)が少なくとも液管10の上端より上方で好ましくは上部管寄せ15の上端よりも上方に位置するように配設されている。液面制御ケース24の上端は気液分離器22の上端より下方であってもよい。このようにすると、液面制御ケース24をコンパクトにすることができる。液面制御ケース24の上面は、気液分離器22の上部側面と上部連通管29Aで接続されている。また、液面制御ケース24は、損傷防止液位Lpより下方の部分と戻り管25とが下部連通管29Cで接続されている。また、液面制御ケース24は、上部連通管29Aと下部連通管29Cとの間に配設された中間連通管29Bで、戻り管25と接続されている。このように、液面制御ケース24が、上部連通管29Aと中間連通管29Bと下部連通管29Cとで気液分離器22あるいは戻り管25と接続されていることにより、気液分離器22内の高温濃溶液Saの液位及び液管10内の溶液の液位が液面制御ケース24内に正しく現れることになる。このようにして、気液分離器22の下部と上部とを液面制御ケース24に連通しただけでは溶液の性状の変化によって気液分離器22内の高温濃溶液Saの液位が液面制御ケース24内に正確に現れないという不都合を解消している。
【0036】
再び図1に戻って、吸収冷凍機30の構成の説明を続ける。中温溶液ポンプ38の下流側の希溶液管55には、希溶液Swと混合濃溶液Scとの間で熱交換を行わせる低温溶液熱交換器36が配設されている。低温溶液熱交換器36には、また、混合濃溶液Scを流す濃溶液管56が接続されている。低温溶液熱交換器36は、典型的にはプレート型熱交換器が用いられるがシェルアンドチューブ型やその他の熱交換器であってもよい。
【0037】
希溶液管55は、低温溶液熱交換器36の下流側で、中温再生器32Mに接続される希溶液管55Aと、低温再生器32Bに接続される希溶液管55Bとに分岐している。希溶液管55Aには、希溶液Swと中温濃溶液Smとの間で熱交換を行わせる中温溶液熱交換器35が配設されている。中温溶液熱交換器35には、また、中温濃溶液Smを流す中温濃溶液管56Aが接続されている。中温溶液熱交換器35は、典型的にはプレート型熱交換器が用いられるがシェルアンドチューブ型やその他の熱交換器であってもよい。
【0038】
中温再生器32Mには、希溶液Swを加熱するための加熱源となる高温冷媒蒸気Vaを流す加熱蒸気管32Maが配設されている。加熱蒸気管32Maは、一端が冷媒蒸気管57に接続されている。他端は、凝縮冷媒管57Dに接続されている。中温再生器32Mには、導入した希溶液Swを加熱蒸気管32Maに向けて散布する希溶液散布ノズル32Mbが配設されている。希溶液散布ノズル32Mbは、希溶液管55Aに接続されている。中温再生器32Mの底部には、温度が上昇した中温濃溶液Smを通す中温濃溶液管56Aが接続されている。中温濃溶液管56Aは、中温溶液熱交換器35を経由して低温濃溶液管56Bに接続されている。また、中温再生器32Mには、発生した中温冷媒蒸気Vmを流す冷媒蒸気管58が接続されている。冷媒蒸気管58には、上述の凝縮冷媒管57Dが接続されている。
【0039】
低温再生器32Bには、希溶液Swを加熱するための加熱源となる混合冷媒蒸気Vnを流す加熱蒸気管32Baが配設されている。加熱蒸気管32Baは、一端が冷媒蒸気管58に接続されている。他端は、凝縮冷媒管59に接続されている。凝縮冷媒管59は、加熱蒸気管32Ba内で混合冷媒蒸気Vnが凝縮した冷媒液Vdを凝縮器33へと導く配管である。低温再生器32Bには、導入した希溶液Swを加熱蒸気管32Baに向けて散布する希溶液散布ノズル32Bbが配設されている。希溶液散布ノズル32Bbは、希溶液管55Bに接続されている。
【0040】
凝縮器33には、低温再生器32Bで発生した低温冷媒蒸気Vbを冷却するための冷却水qを流す冷却水管33aが配設されている。冷却水管33aは、一端が吸収器31内の冷却水管31aと配管53を介して、他端が冷却塔(不図示)と配管54を介して、それぞれ接続されている。
【0041】
凝縮器33と低温再生器32Bとは共に1つの缶胴内にシェルアンドチューブ型に形成され、両者の間には仕切壁33dが設けられている。凝縮器33と低温再生器32Bとは仕切壁33dの上部で連通しており、低温再生器32Bで発生した低温冷媒蒸気Vbを凝縮器33に移動させることができるように構成されている。凝縮器33と低温再生器32Bとが形成された缶胴は、吸収器31と蒸発器34とが形成された缶胴よりも上方に配設されており、低温再生器32B内の低温濃溶液Sbを吸収器31に、凝縮器33内の冷媒液Vfを蒸発器34に、それぞれ重力によって送液することができるように構成されている。
【0042】
低温再生器32Bの底部には、濃度が上昇した低温濃溶液Sbを通す低温濃溶液管56Bが接続されている。低温濃溶液管56Bには中温濃溶液管56Aが接続されて濃溶液管56となっている。濃溶液管56は、低温溶液熱交換器36を経由して濃溶液管86に接続されている。濃溶液管86は、濃溶液散布ノズル31bに接続されている。凝縮器33の底部には、冷媒液Vfを蒸発器34に向けて導出する冷媒液管60が接続されている。冷媒液Vfは、低温冷媒蒸気Vbが凝縮した冷媒液Vcと、加熱蒸気管32Ba内で混合冷媒蒸気Vnが凝縮し、凝縮器33で冷却された冷媒液Vdとが混合した冷媒液である。
【0043】
高温再生器32Aから中温再生器32Mへ高温冷媒蒸気Vaを導く冷媒蒸気管57には、高温冷媒蒸気バイパス流路としての冷媒蒸気バイパス管57Bの一端が接続されている。冷媒蒸気バイパス管57Bは、冷媒蒸気吸収器バイパス管57Baと冷媒蒸気凝縮器バイパス管57Bcとに分岐している。冷媒蒸気吸収器バイパス管57Ba及び冷媒蒸気凝縮器バイパス管57Bcも冷媒蒸気バイパス管57Bの一部である。冷媒蒸気吸収器バイパス管57Baは、吸収器31の気相部(典型的には濃溶液散布ノズル31bの上方)に接続されており、吸収器31の気相部に高温冷媒蒸気Vaを流入させることができるように構成されている。冷媒蒸気凝縮器バイパス管57Bcは、凝縮器33の気相部(典型的には冷却水管33aの上方)に接続されており、凝縮器33の気相部に高温冷媒蒸気Vaを流入させることができるように構成されている。冷媒蒸気吸収器バイパス管57Baには、高温冷媒蒸気Vaの流通を遮断可能な冷媒蒸気バイパス弁67が設けられている。冷媒蒸気凝縮器バイパス管57Bcには、高温冷媒蒸気Vaの流通を遮断可能な冷媒蒸気バイパス弁68が設けられている。
【0044】
制御装置61は、希溶液バイパス弁65、冷媒蒸気バイパス弁67、冷媒蒸気バイパス弁68と、それぞれ信号ケーブルで接続されている。これにより、制御装置61は各弁65、67、68に信号を送信し、制御装置61からの信号を受信した各弁65、67、68は信号に応じて弁の開閉動作が行われるように構成されている。また、制御装置61は、圧力センサ71、温度センサ72、温度センサ73と、それぞれ信号ケーブルで接続されており、各センサ71、72、73で検出した圧力又は温度を信号として受信できるように構成されている。
【0045】
制御装置61は、高液位電極棒23t(図2参照)から高液位信号を受信することにより気液分離器22(図2参照)内の高温濃溶液Saの液位が高液位Ltに至ったことを検出したときに、高温溶液ポンプ48に信号を送信して回転数(rpm)を減少させる。また、制御装置61は、低液位電極棒23s(図2参照)から低液位信号を受信することにより気液分離器22(図2参照)内の高温濃溶液Saの液位が低液位Lsに至ったことを検出したときに、高温溶液ポンプ48に信号を送信して回転数(rpm)を増加させる。また、制御装置61は、損傷防止電極棒23p(図2参照)から損傷防止液位信号を受信することにより気液分離器22(図2参照)内の高温濃溶液Saの液位が戻り管25内の損傷防止液位Lpまで降下したことを検出したときに、バーナー16(図2参照)に信号を送信してバーナー16(図2参照)における燃焼を停止させ、液管10(図2参照)の加熱を停止させる。また、制御装置61は、吸収冷凍機30の運転負荷に応じて高温溶液ポンプ48及び中温溶液ポンプ38の回転数(rpm)を調節する他、冷媒ポンプ39の発停等、吸収冷凍機30の運転を制御する。なお、冷却水管31a、33a、53、54を流れる冷却水qは、第2の制御装置としての制御盤(不図示)によって運転が制御され、吸収冷凍機30外に設けられる冷却水ポンプ(不図示)の起動により流動するように構成されている。制御装置61と制御盤(不図示)とを信号ケーブルで接続し、制御装置61が制御盤(不図示)に冷却水ポンプ(不図示)の起動信号を送信できるように構成してもよい。
【0046】
引き続き図1及び図2を参照して吸収冷凍機30の作用を説明する。まず、定常運転時の吸収冷凍機30の冷媒側のサイクルを説明する。定常運転時は、希釈冷媒弁44v、希溶液バイパス弁65、冷媒蒸気バイパス弁67、68がそれぞれ閉になっている。凝縮器33では、低温再生器32Bで蒸発した低温冷媒蒸気Vbを受け入れて、冷却塔(不図示)から供給された、冷却水管33aを流れる冷却水qで冷却して凝縮し、冷媒液Vcとする。凝縮した冷媒液Vcは、冷媒液Vdと混合され冷媒液Vfとなって蒸発器34へと送られ、貯留部34cに冷媒液Vfとして貯留される。貯留部34cに貯留された冷媒液Vfは、冷媒ポンプ39により冷媒液散布ノズル34bに送液される。蒸発器34の冷媒液Vfが冷媒液散布ノズル34bから冷水管34aに散布されると、冷媒液Vfは冷水管34a内の冷水pから熱を受けて蒸発する一方、冷水pは冷やされる。冷やされた冷水pは冷熱を利用する場所(不図示)に送られて使われる。他方、蒸発器34で蒸発した冷媒液Vfは冷媒蒸気Veとなって、連通している吸収器31へと移動する。
【0047】
次に、定常運転時の吸収冷凍機30の溶液側のサイクルを説明する。吸収器31では、高濃度の混合濃溶液Sdが濃溶液散布ノズル31bから散布され、蒸発器34で発生した冷媒蒸気Veを混合濃溶液Sdが吸収して希溶液Swとなる。希溶液Swは、貯留部31cに貯留される。混合濃溶液Sdが冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱は、冷却水管31aを流れる冷却水qによって除去される。貯留部31cの希溶液Swは、高温溶液ポンプ48で高温再生器32Aへ、中温溶液ポンプ38で中温再生器32M及び低温再生器32Bへ、それぞれ圧送される。なお、貯留部31cに溜まった溶液を溶液循環ポンプ(不図示)により循環させて冷却水管31aに散布する構成としてもよい。このようにすると、冷却水管31aを溶液で十分に濡らすことができ、冷却水管31aに接触する溶液の偏りを防止することができる。また、中温溶液ポンプ38が溶液循環ポンプを兼ねるように構成してもよい。この場合は、中温溶液ポンプ38と低温溶液熱交換器36との間の希溶液管55から配管を分岐して濃溶液散布ノズル31bに接続するとよい。
【0048】
高温溶液ポンプ48で圧送されて希溶液管45を流れる希溶液Swは、高温溶液熱交換器37で高温再生器32Aから導出された高温濃溶液Saと熱交換して温度が上昇した後に高温再生器32Aへと導入される。希溶液管45を流れて高温再生器32Aへと導入された希溶液Swは、下部管寄せ14に流入する。下部管寄せ14に流入した希溶液Swは、各液管10の下部に達し、高温溶液ポンプ48の圧力により複数の液管10内を上昇して上部管寄せ15へと向かう。希溶液Swは、各液管10を上昇する過程でバーナー16の火炎及び燃焼ガスGbにより加熱され、冷媒が蒸発して高温冷媒蒸気Vaが発生し、溶液自体の濃度は上昇して高温濃溶液Saとなる。希溶液Swから濃度が上昇した高温濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとは、混合流体Fmとして各液管10から上部管寄せ15に流入して収集され、混合流体管21を介して気液分離器22に流入される。
【0049】
気液分離器22に流入した混合流体Fmは、バッフル板22aに衝突後にバッフル板22aの面に案内されて下方に流れる際に高温冷媒蒸気Vaと高温濃溶液Saとに分離され、高温冷媒蒸気Vaはバッフル板22aの下端を反転して上方に移動し、高温濃溶液Saは気液分離器22の下部に溜まる。気液分離器22の上方に移動した高温冷媒蒸気Vaは、高温冷媒蒸気導出口22eから導出され、冷媒蒸気管57を中温再生器32Mに向かって流れる。他方、気液分離器22の下部に溜まった高温濃溶液Saは、高温濃溶液導出口22nから導出され、高温濃溶液管46を吸収器31に向かって流れる。また、気液分離器22の下部に溜まった高温濃溶液Saの余剰分が、戻り管25を流れて下部管寄せ14に還流する。
【0050】
吸収冷凍機30の定常運転時には、下部管寄せ14に流入する希溶液Swの流量は、気液分離器22内の高温濃溶液Saの液位に基づいて調節される。気液分離器22内の液位が高液位電極棒23tの検出液位迄上昇すると、高液位電極棒23tが信号を発信して高温溶液ポンプ48の回転数(rpm)を所定の回転数減少させ、これにより希溶液Swの供給量を減少させて、気液分離器22内の液位を低下させる。ここで「所定の回転数」は、典型的には気液分離器22内の高温濃溶液Saの増加を抑制して気液分離器22内の高温濃溶液Saを適切な量に維持できるような回転数である。検出直後は気液分離器22内の高温濃溶液Saが減少するようにし、その後液位を気液分離器22内の適切な位置に維持するようにしてもよい。
【0051】
他方、気液分離器22内の液位が低液位電極棒23sの検出液位迄下降すると、低液位電極棒23sが信号を発信して高温溶液ポンプ48の回転数(rpm)を所定の回転数増加させ、これにより希溶液Swの供給量を増加させて、気液分離器22内の液位を上昇させる。ここで「所定の回転数」は、典型的には気液分離器22内の高温濃溶液Saの減少を抑制して気液分離器22内の高温濃溶液Saを適切な量に維持できるような回転数である。検出直後は気液分離器22内の高温濃溶液Saが増加するようにし、その後液位を気液分離器22内の適切な位置に維持するようにしてもよい。また、気液分離器22内の高温濃溶液Saの液位が損傷防止液位Lp迄下降すると、損傷防止電極棒23pが信号を発信してバーナー16の燃焼を停止させる。
【0052】
高温再生器32Aから導出されて高温濃溶液管46を流れる高温濃溶液Saは、高温溶液熱交換器37に導かれて高温再生器32Aに向かう希溶液Swと熱交換を行い温度が低下する。他方、高温再生器32Aから導出されて冷媒蒸気管57を流れる高温冷媒蒸気Vaは、中温再生器32Mの加熱蒸気管32Maに流入する。
【0053】
ここから低温再生器21B及び中温再生器32Mまわりの作用に視点を移すと、中温溶液ポンプ38で圧送されて希溶液管55を流れる希溶液Swは、まず低温溶液熱交換器36で混合濃溶液Scと熱交換して熱回収した後に分流し、一部は希溶液管55Aを流れて中温溶液熱交換器35へと導かれ、残りは希溶液管55Bを流れて低温再生器32Bへと導かれる。希溶液管55Aを流れて中温溶液熱交換器35へ流入した希溶液Swは、中温再生器32Mから導出された中温濃溶液Smと熱交換して温度が上昇した後に希溶液管55Aを流れて中温再生器32Mへと導入される。
【0054】
中温再生器32Mに導かれた希溶液Swは、希溶液散布ノズル32Mbから散布される。希溶液散布ノズル32Mbから散布された希溶液Swは、加熱蒸気管32Maを流れる高温冷媒蒸気Vaによって加熱され、中温再生器32M内の希溶液Sw中の冷媒が蒸発して中温濃溶液Smとなる。高温冷媒蒸気Vaからの受熱により温度が上昇した中温濃溶液Smは、重力及び中温再生器32M内の圧力により中温濃溶液管56Aへ導出される。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒は中温冷媒蒸気Vmとして冷媒蒸気管58を流れる。加熱蒸気管32Maを流れる高温冷媒蒸気Vaは、希溶液Swに熱を奪われ凝縮して冷媒液となり、凝縮冷媒管57Dを介して冷媒蒸気管58に流入し、中温冷媒蒸気Vmと混合される。冷媒蒸気管58を流れる中温冷媒蒸気Vmは、冷媒液が混入して混合冷媒蒸気Vnとなり、低温再生器32Bの加熱蒸気管32Baへと送られる。
【0055】
他方、希溶液管55Bを流れて低温再生器32Bに導かれた希溶液Swは、希溶液散布ノズル32Bbから散布される。希溶液散布ノズル32Bbから散布された希溶液Swは、加熱蒸気管32Baを流れる混合冷媒蒸気Vnによって加熱され、低温再生器32B内の希溶液Sw中の冷媒が蒸発して低温濃溶液Sbとなる。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒は低温冷媒蒸気Vbとして凝縮器33へと送られる。混合冷媒蒸気Vnからの受熱により温度が上昇した低温濃溶液Sbは、低温再生器32B内の圧力や重力により低温濃溶液管56Bへ導出される。なお、加熱蒸気管32Baを流れる混合冷媒蒸気Vnは、希溶液Swに熱を奪われ凝縮して冷媒液Vdとなり、凝縮冷媒管59を流れて凝縮器33に導入される。
【0056】
低温再生器32Bから導出されて低温濃溶液管56Bを流れる低温濃溶液Sbは、中温溶液熱交換器35から導出されて中温濃溶液管56Aを流れてきた中温濃溶液Smと合流して混合濃溶液Scとなって濃溶液管56を流れる。その後混合濃溶液Scは、低温溶液熱交換器36に流入して吸収器31から導出された希溶液Swと熱交換を行い温度が低下する。温度が低下した混合濃溶液Scは、高温溶液熱交換器37で熱交換を行って温度が低下した高温濃溶液Saと混ざり合って混合濃溶液Sdとなる。混合濃溶液Sdは、吸収器31に導かれ、濃溶液散布ノズル31bから冷却水管31aに向けて散布される。以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0057】
上述のように作用する吸収冷凍機30は、吸収冷凍機30の運転を止める際に即時に溶液Sの流れを止めると、濃度が高い高温濃溶液Saがそのままの濃度で高温再生器32A内や高温濃溶液管46等に滞留することとなり、その状態で吸収冷凍機30の運転停止後に温度が低下すると濃度が高い部分が結晶して、再び吸収冷凍機30を運転させる際に溶液Sが流れなくなるという不都合が生じる場合がある。このような不都合を回避するために、運転停止時に溶液Sを循環させて希釈する希釈運転が行われる。この希釈運転が不十分であると、内圧が高い高温再生器32Aから内圧が低い吸収器31へ高温濃溶液Saが逆流し、逆流した高温濃溶液Saが仕切壁31dを越えて蒸発器34に流入して冷媒液Vfを汚してしまい、予定している冷凍能力が出なくなる場合がある。加えて、特に、高温再生器32Aの温度及び圧力が高くなる三重効用吸収冷凍機の場合は、希釈運転が不十分であるために余熱で発生した高温冷媒蒸気Vaや高温濃溶液Saが希溶液管45を逆流すると、高温溶液ポンプ48が過熱により損傷する場合があり、また、希釈運転が不十分であるために高温濃溶液管46から濃溶液管86を経て濃溶液散布ノズル31bへと余熱で発生した高温冷媒蒸気Vaが吹き抜けると、濃溶液散布ノズル31bが過熱により損傷する場合がある(再生された吸収溶液が流れるラインに再生器の余熱で発生した冷媒蒸気が流れると、再生された吸収溶液を吸収器内に散布する散布装置が過熱により損傷する場合がある)。このような特有の問題点が生じうる三重効用吸収冷凍機の場合は、短時間の希釈運転で高温再生器32Aの温度及び圧力を下げることが望ましい。このような事情を背景に、吸収冷凍機30は、以下のように希釈運転を行う。
【0058】
図3は、吸収冷凍機30の希釈運転時の作用を説明するフローチャートである。以下の説明において言及する吸収冷凍機30の構成の符号については、適宜図1及び図2を参照することとする。制御装置61は、外部から吸収冷凍機30の運転を停止する指令信号を受けると、高温再生器32Aのバーナー16の火を消して加熱を停止し、吸収冷凍機30の希釈運転を開始する。希釈運転になっても、制御装置61は、中温溶液ポンプ38及び高温溶液ポンプ48を作動させたままにしている。また、制御盤(不図示)は、冷却水管31a、33a内を冷却水qが流れるように冷却水ポンプ(不図示)を作動させたままにしている。このとき、希釈冷媒弁44vを所定時間開けて冷媒液Vfを希溶液管45に流入させ、希溶液Swの濃度をさらに低下させてもよい。そして、希釈運転を開始すると、制御装置61は、希溶液バイパス弁65を開にする(S1)。このとき、制御装置61は、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saが所定の温度以下になるように、希溶液バイパス弁65の開度を調節する。希溶液バイパス弁65の開度を調節することで、希溶液Swの一部(全部に近くなる場合もある)が、高温溶液熱交換器37を迂回して希溶液バイパス管45Bを流れる。これにより、希溶液Swと高温濃溶液Saとの交換熱量が少なくなり、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saの温度が高くなるが、濃溶液散布ノズル31bの過熱による損傷を回避する観点から、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saの温度が濃溶液散布ノズル31bの熱による損傷が生じうる温度よりも低い所定の温度以下となる範囲で希溶液バイパス管45Bを流れる希溶液Swの流量が極力多くなるように、希溶液バイパス弁65の開度が調節される。また、希溶液Swが希溶液バイパス管45Bを流れると、全量の両溶液Sw、Saの熱交換が行われる時よりも温度が低い希溶液Swが高温再生器32Aに流入して、高温再生器32A内の温度が全量の両溶液Sw、Saの熱交換が行われる時よりも低下する。高温再生器32A内の温度が低下することにより、高温再生器32A内の圧力も全量の両溶液Sw、Saの熱交換が行われる時よりも低下する。高温再生器32A内の温度及び圧力が低下することにより、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けが抑制される。高温濃溶液Saの逆流が抑制されることにより、希釈運転後に再起動する際にも高温溶液ポンプ48が送液する溶液Sの温度が高温溶液ポンプ48を過熱により損傷するほど上昇していないため、高温溶液ポンプ48の絶縁等級を上げることを要しない(一般に絶縁等級が上がると耐熱性が向上する)。また、高温冷媒蒸気の吹き抜けが抑制されることにより、濃溶液散布ノズル31bが過熱により損傷することを抑制できるため、濃溶液散布ノズル31bの材質を成形が容易な合成樹脂とすることが可能になる。なお、希溶液バイパス弁65の開度を調節する指標となる所定の温度は、時間経過に伴って徐々に高くなるようにしてもよい。このように制御すると、高温再生器32Aへの溶液Sの送り量を徐々に増加させることができ、高温再生器32Aの急激な温度及び圧力の変動を抑制することができて、溶液Sのバランスの崩れを抑制することができる。
【0059】
また、制御装置61は、定常運転時に閉となっている冷媒蒸気バイパス弁67又は冷媒蒸気バイパス弁68を開にする(S2)。すると、高温冷媒蒸気Vaが冷媒蒸気バイパス管57Bを通って吸収器31又は凝縮器33内に流入する。吸収器31又は凝縮器33内に流入した高温冷媒蒸気Vaは、それぞれ冷却水qによって冷却されて凝縮する。このように、冷媒蒸気バイパス弁67(又は68)を開にすることにより、高温再生器32A内の熱が高温冷媒蒸気Va及び冷却水qを介して吸収冷凍機30外に放出されることとなり、高温再生器32A内の圧力及び温度を低下させることができる。なお、冷媒蒸気バイパス弁67(又は68)を開にする工程(S2)では、両方の弁67、68を開にして、高温冷媒蒸気Vaを吸収器31及び凝縮器33の両方に導いて外部に放熱することとしてもよい。
【0060】
そして、制御装置61は、高温再生器32A内の圧力及び温度が、随時受信する圧力センサ71及び温度センサ72で検出された圧力及び温度からみて、所定の圧力及び温度になったか否かを判断する(S3)。所定の圧力及び温度になっていない場合は、所定の圧力及び温度になるまで、各弁65、67(又は68)を開にした状態での希釈運転を継続する。他方、高温再生器32A内の圧力及び温度が所定の圧力及び温度になったか否かを判断する工程(S3)において、所定の圧力及び温度になった場合は、制御装置61は、高温溶液ポンプ48、中温溶液ポンプ38及び冷媒ポンプ39を停止し(S4)、各弁65、67(又は68)を閉にして(S5)、希釈運転を終了する。希釈運転が終了すると冷却水管33a、31a内に冷却水qを流す冷却水ポンプ(不図示)も停止されるが、この場合に制御装置61から制御盤(不図示)に冷却水ポンプ停止信号を送信して冷却水ポンプ(不図示)を停止させてもよい。このように、希溶液バイパス管45Bあるいは冷媒蒸気バイパス管57Bを利用して高温再生器32Aの温度及び圧力を下げるようにすると、希釈運転に要する時間を大幅に短縮することが可能になる(例えば約1/4〜1/6の所要時間とすることができる)。
【0061】
以上の説明では、溶液バイパス流路として、希溶液バイパス弁65が配設された希溶液バイパス管45Bが設けられているとしたが、高温溶液熱交換器37まわりを以下のように構成してもよい。
図4は、高温溶液熱交換器37まわりの変形例を示す部分詳細図である。
図4(a)に示す第1の変形例では、溶液バイパス流路として、高温溶液熱交換器37を迂回するように高温溶液熱交換器37の上流側と下流側とに接続された高温濃溶液バイパス管46Bが設けられている。高温濃溶液バイパス管46Bには、高温濃溶液Saの流通を遮断可能な高温濃溶液バイパス弁66が設けられている。高温濃溶液バイパス弁66は、制御装置61(図1参照)からの信号を受信して弁の開閉動作(開度の調節を含む)が行われるように構成されている。第1の変形例の希釈運転時は、図3のフローチャートにおいて希溶液バイパス弁65が動作するタイミングで希溶液バイパス弁65の代わりに、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saが所定の温度以下になるように、高温濃溶液バイパス弁66の開度が調節される。この制御により、図1に示す希溶液バイパス弁65を備える実施の形態と同様、希溶液Swと高温濃溶液Saとの交換熱量が少なくなり、全量の両溶液Sw、Saの熱交換が行われる時よりも温度が低い希溶液Swが高温再生器32Aに流入して高温再生器32A内の温度が低下し、高温再生器32A内の圧力も低下して、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けが抑制される。
【0062】
図4(b)に示す第2の変形例では、図1に示す実施の形態に対して、高温溶液熱交換器37よりも下流側の高温濃溶液管46に、オリフィス75を迂回するようにオリフィス75の上流側と下流側とに接続された流量調節バイパス流路としての流量調節バイパス管76が設けられている。流量調節バイパス管76には、高温濃溶液Saの流通を遮断可能な流量調節バイパス弁76vが設けられている。流量調節バイパス弁76vは、制御装置61(図1参照)からの信号を受信して弁の開閉動作(開度の調節を含む)が行われるように構成されている。第2の変形例の希釈運転時は、図3のフローチャートにおいて、希溶液バイパス弁65を開にする際に(S1)併せて流量調節バイパス弁76vを開(開度を調節することを含む)にする。これにより、高温濃溶液Saがオリフィス75に加えて流量調節バイパス管76をも流れることとなり、溶液Sの循環量が増大して、高温再生器32A内の温度及び圧力の低下が促進され、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けがさらに抑制される。なお、流量調節バイパス弁76vが配設された流量調節バイパス管76は、図4(a)に示す第1の変形例の構成に対して設けられていてもよく、その場合は、第1の変形例における高温溶液熱交換器37よりも下流側の高温濃溶液管46のオリフィス75の上流側と下流側とに流量調節バイパス弁76vが配設された流量調節バイパス管76設けられる。
【0063】
図4(c)に示す第3の変形例では、溶液バイパス流路兼流量調節バイパス流路として、高温溶液熱交換器37及びオリフィス75を同時に迂回するように、高温溶液熱交換器37の上流側とオリフィス75の下流側とに接続された高温濃溶液流量調節バイパス管46Cが設けられている。高温濃溶液流量調節バイパス管46Cには、高温濃溶液Saの流通を遮断可能な高温濃溶液流量調節バイパス弁66Cが設けられている。高温濃溶液流量調節バイパス弁66Cは、制御装置61(図1参照)からの信号を受信して弁の開閉動作(開度の調節を含む)が行われるように構成されている。第3の変形例の希釈運転時は、図3のフローチャートにおいて希溶液バイパス弁65が動作するタイミングで希溶液バイパス弁65の代わりに、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saが所定の温度以下になるように、高温濃溶液流量調節バイパス弁66Cの開度が調節される。高温濃溶液流量調節バイパス弁66Cが開けられることで、図1に示す希溶液バイパス弁65を備える実施の形態と同様、希溶液Swと高温濃溶液Saとの交換熱量が少なくなり、全量の両溶液Sw、Saの熱交換が行われる時よりも温度が低い希溶液Swが高温再生器32Aに流入して高温再生器32A内の温度が低下し、高温再生器32A内の圧力も低下して、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けが抑制されると共に、図4(b)に示す第2の変形例と同様、高温濃溶液Saがオリフィス75に加えて高温濃溶液流量調節バイパス管46Cをも流れることとなり、溶液Sの循環量が増大して、高温再生器32A内の温度及び圧力の低下が促進され、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saや高温冷媒蒸気Vaの逆流がさらに抑制される。
【0064】
なお、図1に示す実施の形態に対して、図4(a)に示す第1の変形例、又は図4(c)に示す第3の変形例を重畳して適用してもよく、あるいは、図4(b)に示す第2の変形例に対して図4(a)に示す第1の変形例を重畳して適用してもよい。このように希溶液バイパス管45B及び高温濃溶液バイパス管46B(又は高温濃溶液流量調節バイパス管46C)の双方を設けることとすると、希釈運転時に希溶液Sw及び高温濃溶液Saが共に高温溶液熱交換器37を迂回することとなり、溶液Sw、Saの流動抵抗が低減される。
【0065】
本発明の実施の形態の説明では、冷媒蒸気バイパス管57Bが冷媒蒸気吸収器バイパス管57Baと冷媒蒸気凝縮器バイパス管57Bcとに分岐しているとしたが、冷媒蒸気吸収器バイパス管57Ba及び冷媒蒸気凝縮器バイパス管57Bcの一方を省略して(設けずに)、吸収器31と凝縮器33のうちいずれか一方に高温冷媒蒸気Vaを導くように構成されていてもよい。
【0066】
本発明の実施の形態の説明では、吸収冷凍機30(図1参照)の溶液Sのフローが、吸収器31で冷媒蒸気Veを吸収した希溶液Swが、希溶液管45を介して高温再生器32Aに、希溶液管55を介して中温再生器32M及び低温再生器32Bにそれぞれ供給され、高温再生器32Aで生成された高温濃溶液Sa、中温再生器32Mで生成された中温濃溶液Sm、低温再生器32Bで生成された低温濃溶液Sbのそれぞれが他の再生器を経由せずに吸収器31に導入されることとした(図1及び図5(a)参照)。これに対し、以下に述べるように溶液のフローを変形してもよい。
【0067】
図5(b)は、第4の変形例に係る溶液フローの模式的ブロック図である。第4の変形例では、吸収器31の希溶液Swを高温再生器32Aに導く希溶液管145で吸収器31と高温再生器32Aとが接続されている。また、高温再生器32Aで生成された高温濃溶液Saを中温再生器32Mに導く高温濃溶液管146で高温再生器32Aと中温再生器32Mとが接続されている。また、中温再生器32Mで生成された中温濃溶液Smを低温再生器32Bに導く中温濃溶液管156Aで中温再生器32Mと低温再生器32Bとが接続されている。また、低温再生器32Bで生成された低温濃溶液Sbを吸収器31に導く低温濃溶液管156Bで低温再生器32Bと吸収器31とが接続されている。低温溶液熱交換器36は、希溶液Swと低温濃溶液Sbとで熱交換を行わせるように、希溶液管145及び低温濃溶液管156Bに挿入配置されている。中温溶液熱交換器35は、低温溶液熱交換器36から導出された希溶液Swと中温濃溶液Smとで熱交換を行わせるように、低温溶液熱交換器36より下流側の希溶液管145及び中温濃溶液管156Aに挿入配置されている。高温溶液熱交換器37は、中温溶液熱交換器35から導出された希溶液Swと高温濃溶液Saとで熱交換を行わせるように、中温溶液熱交換器35より下流側の希溶液管145及び高温濃溶液管146に挿入配置されている。
【0068】
さらに、希溶液管145には、図5(a)に示す実施の形態と同様、高温溶液熱交換器37を迂回するように、希溶液バイパス弁65が配設された希溶液バイパス管45Bが、高温溶液熱交換器37の上流側と下流側とに接続されている。また、希溶液管145には、中温溶液熱交換器35を迂回するように、希溶液バイパス弁65mが配設された希溶液バイパス管145mが、中温溶液熱交換器35の上流側と下流側とに接続されている。また、希溶液管145には、低温溶液熱交換器36を迂回するように、希溶液バイパス弁65bが配設された希溶液バイパス管145bが、低温溶液熱交換器36の上流側と下流側とに接続されている。なお、冷媒蒸気(Va、Vm、Vn)の系統の構成は、図1に示す実施の形態と同様である。
【0069】
図5(b)に示す第4の変形例では、定常運転時に希溶液バイパス弁65、65m、65bが閉じられており、その溶液Sのフローは、まず、吸収器31から導出された希溶液Swが低温溶液熱交換器36、中温溶液熱交換器35、高温溶液熱交換器37の順に通過するごとに濃度が変わらずに昇温して高温再生器32Aに導入される。希溶液Swは、高温再生器32Aで加熱濃縮され、高温濃溶液Saとなって高温再生器32Aから導出され、高温溶液熱交換器37を通って温度が低下した後に中温再生器32Mに導入される。高温濃溶液Saは、中温再生器32Mで高温冷媒蒸気(Va)の熱でさらに加熱濃縮され、中温濃溶液Smとなって中温再生器32Mから導出され、中温溶液熱交換器35を通って温度が低下した後に低温再生器32Bに導入される。中温濃溶液Smは、低温再生器32Bで混合冷媒蒸気(Vn)の熱でさらに加熱濃縮され、低温濃溶液Sbとなって低温再生器32Bから導出され、低温溶液熱交換器36を通って温度が低下した後に吸収器31に導入される。
【0070】
そして、希釈運転時は、制御装置61(図1参照)によって希溶液バイパス弁65、65m、65bが開けられると共に、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saが所定の温度以下になるように希溶液バイパス弁65の開度が調節される。この制御により、図1に示す実施の形態と同様、希溶液Swと各濃溶液Sa、Sm、Sbとの交換熱量が少なくなり、全量の各溶液Sw、Sa、Sm、Sbの熱交換が行われる時よりも温度が低い希溶液Swが高温再生器32Aに流入して高温再生器32A内の温度が低下し、高温再生器32A内の圧力も低下して、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けが抑制される。なお、中温溶液熱交換器35及び/又は低温溶液熱交換器36における交換熱量が、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けを惹起するほど多くない場合は、希溶液バイパス弁65mが配設された希溶液バイパス管145m及び/又は希溶液バイパス弁65bが配設された希溶液バイパス管145bを設けなくてもよい。
【0071】
次に、図5(c)は、第5の変形例に係る溶液フローの模式的ブロック図である。第5の変形例では、吸収器31の希溶液Swを高温再生器32Aに導く希溶液管245で吸収器31と高温再生器32Aとが接続されている。そして、希溶液管245から分岐する希溶液管255Bが低温再生器32Bに接続されており、希溶液管245を流れる希溶液Swの一部を低温再生器32Bに導入することができるように構成されている。また、希溶液管255Bとの分岐点より下流側で希溶液管245から分岐する希溶液管255Aが中温再生器32Mに接続されており、希溶液管255Bとの分岐点より下流側の希溶液管245を流れる希溶液Swの一部を中温再生器32Mに導入することができるように構成されている。高温再生器32Aには、高温再生器32Aで生成された高温濃溶液Saを吸収器31に向けて導出する高温濃溶液管246が接続されている。中温再生器32Mには、中温再生器32Mで生成された中温濃溶液Smを吸収器31に向けて導出する中温濃溶液管256Aが接続されている。中温濃溶液管256Aは、高温濃溶液管246に接続されて1つの濃溶液管246Aとなっている。低温再生器32Bには、低温再生器32Bで生成された低温濃溶液Sbを吸収器31に向けて導出する低温濃溶液管256Bが接続されている。低温濃溶液管256Bは、濃溶液管246Aに接続されて1つの濃溶液管286となっている。高温溶液熱交換器37は、希溶液Swと高温濃溶液Saとで熱交換を行わせるように、希溶液管255Aとの分岐点より下流側の希溶液管245及び高温濃溶液管246に挿入配置されている。中温溶液熱交換器35は、高温濃溶液Sa及び中温濃溶液Smが混合した濃溶液と希溶液Swとで熱交換を行わせるように、希溶液管255Bとの分岐点より下流側の希溶液管245及び濃溶液管246Aに挿入配置されている。低温溶液熱交換器36は、高温濃溶液Sa、中温濃溶液Sm及び低温濃溶液Sbが混合した混合濃溶液Sdと希溶液Swとで熱交換を行わせるように、希溶液管255Bとの分岐点より上流側の希溶液管245及び濃溶液管286に挿入配置されている。
【0072】
さらに、希溶液管245には、図5(b)に示す第4の変形例と同様、高温溶液熱交換器37を迂回するように、希溶液バイパス弁65が配設された希溶液バイパス管45Bが、高温溶液熱交換器37の上流側と下流側とに接続され、中温溶液熱交換器35を迂回するように、希溶液バイパス弁65mが配設された希溶液バイパス管145mが、中温溶液熱交換器35の上流側と下流側とに接続され、低温溶液熱交換器36を迂回するように、希溶液バイパス弁65bが配設された希溶液バイパス管145bが、低温溶液熱交換器36の上流側と下流側とに接続されている。なお、冷媒蒸気(Va、Vm、Vn)の系統の構成は、図1に示す実施の形態と同様である。
【0073】
図5(c)に示す第5の変形例では、定常運転時に希溶液バイパス弁65、65m、65bが閉じられており、その溶液Sのフローは、まず、吸収器31から導出された希溶液Swが低温溶液熱交換器36で昇温される。低温溶液熱交換器36で昇温された希溶液Swは、一部が低温再生器32Bに導入され、残りは中温溶液熱交換器35に導入されて昇温される。中温溶液熱交換器35で昇温された希溶液Swは、その一部が中温再生器32Mに導入され、残りは高温溶液熱交換器37に導入されて昇温された後に高温再生器32Aに導入される。高温再生器32Aに導入された希溶液Swは、加熱濃縮され、高温濃溶液Saとなって高温再生器32Aから導出され、高温溶液熱交換器37を通って温度が低下する。中温再生器32Mに導入された希溶液Swは、高温冷媒蒸気(Va)の熱で加熱濃縮され、中温濃溶液Smとなって中温再生器32Mから導出され、高温溶液熱交換器37で温度が低下した高温濃溶液Saと合流して濃溶液となった後に中温溶液熱交換器35を通って温度が低下する。低温再生器32Bに導入された希溶液Swは、混合冷媒蒸気(Vn)の熱で加熱濃縮され、低温濃溶液Sbとなって低温再生器32Bから導出され、中温溶液熱交換器35で温度が低下した濃溶液と合流して混合濃溶液Sdとなった後に低温溶液熱交換器36を通って温度が低下し、その後吸収器31に導入される。
【0074】
そして、希釈運転時は、制御装置61(図1参照)によって希溶液バイパス弁65、65m、65bが開けられると共に、温度センサ73で検出される高温濃溶液Saが所定の温度以下になるように希溶液バイパス弁65の開度が調節される。この制御により、図1に示す実施の形態と同様、希溶液Swと各濃溶液Sa、Sd等との交換熱量が少なくなり、全量の各溶液Sw、Sa、Sd等の熱交換が行われる時よりも温度が低い希溶液Swが高温再生器32Aに流入して高温再生器32A内の温度が低下し、高温再生器32A内の圧力も低下して、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けが抑制される。なお、中温溶液熱交換器35及び/又は低温溶液熱交換器36における交換熱量が、高温再生器32Aから吸収器31への高温濃溶液Saの逆流及び高温冷媒蒸気Vaの逆流や吹き抜けを惹起するほど多くない場合は、希溶液バイパス弁65mが配設された希溶液バイパス管145m及び/又は希溶液バイパス弁65bが配設された希溶液バイパス管145bを設けなくてもよい。
【0075】
なお、図5(b)に示す第4の変形例及び図5(c)に示す第5の変形例に対して、図4(a)に示す第1の変形例を適用して高温濃溶液バイパス弁66が配設された高温濃溶液バイパス管46Bを設けてもよく、図4(b)に示す第2の変形例を適用してオリフィス75を迂回するように流量調節バイパス弁76vが配設された流量調節バイパス管76を設けてもよく、あるいは、図4(c)に示す第3の変形例を適用して高温溶液熱交換器37及びオリフィス75を迂回するように高温濃溶液流量調節バイパス弁66Cが配設された高温濃溶液流量調節バイパス管46Cを設けてもよい。
【0076】
さらに、図5(b)に示す第4の変形例及び図5(c)に示す第5の変形例以外の溶液Sのフローとして、図示は省略するが、低温再生器32Bが、希溶液Swを導入すること(図5(a)、(c)参照)又は中温濃溶液Smを導入すること(図5(b)参照)に代えて高温濃溶液Saを導入する溶液Sのフローとしてもよい。上述のように「高温再生器32Aから吸収器31へ向けて導出された濃溶液」には、高温再生器32Aから導出された高温濃溶液Saが、吸収器31に直接流入される場合のほか、中温再生器32M又は低温再生器32Bを経由して吸収器31に流入される場合も含まれることを意図している。
【0077】
以上の説明では、吸収冷凍機30が三重効用吸収冷凍機であるとして説明したが、単効用吸収冷凍機や二重効用吸収冷凍機であってもよい。単効用吸収冷凍機とした場合は、上述した高温再生器32Aを再生器とすることができ、二重効用吸収冷凍機とした場合は、上述した高温再生器32Aを作動温度が高い方の再生器とするとよい。
【符号の説明】
【0078】
31 吸収器
32A 高温再生器
32M 中温再生器
33 凝縮器
37 高温溶液熱交換器
45B 希溶液バイパス管
46B 高温濃溶液バイパス管
46 高温濃溶液管
57B 高温冷媒蒸気バイパス管
61 制御装置
75 オリフィス
76 流量調節バイパス管
Sa 高温濃溶液
Sd 混合濃溶液
Sw 希溶液
Va 高温冷媒蒸気
Vb 低温冷媒蒸気
Ve 冷媒蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒蒸気を溶液で吸収し、前記溶液を濃度が低下した希溶液とする吸収器と;
被冷却媒体の熱で冷媒液を蒸発させて前記吸収器に供給される冷媒蒸気を発生させると共に前記被冷却媒体を冷却する蒸発器と;
前記希溶液を導入し加熱することにより冷媒を蒸発させて濃度が上昇した濃溶液とする高温再生器と;
前記吸収器から前記高温再生器へ向けて導出された前記希溶液と前記高温再生器から前記吸収器へ向けて導出された前記濃溶液とで熱交換を行わせる溶液熱交換器と;
前記希溶液の前記溶液熱交換器への流入を回避させる、希溶液バイパス弁を有する希溶液バイパス流路と;
前記被冷却媒体を冷却する定常運転時は前記希溶液バイパス弁を閉とし、前記定常運転から停止させる際の希釈運転時に、前記希溶液バイパス弁を開として前記希溶液を前記希溶液バイパス流路に流入させるように前記希溶液の流れを制御する制御装置とを備える;
吸収冷凍機。
【請求項2】
前記濃溶液の前記溶液熱交換器への流入を回避させる、濃溶液バイパス弁を有する濃溶液バイパス流路を備え;
前記制御装置が、前記定常運転時は前記濃溶液バイパス弁を閉とし、前記希釈運転時に、前記濃溶液バイパス弁を開として前記濃溶液を前記濃溶液バイパス流路に流入させるように前記濃溶液の流れを制御する;
請求項1に記載の吸収冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32908(P2013−32908A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251448(P2012−251448)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2008−152399(P2008−152399)の分割
【原出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(503164502)荏原冷熱システム株式会社 (91)
【Fターム(参考)】