説明

吸収性シート及びそれを用いた吸収性物品

【課題】排泄量が多い場合又は使用時間が長い場合においても、蒸れが生じにくく、装着感に優れており、高吸収性で漏れ防止性に優れた吸収体及びそれを用いた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性シート10は、一面10A及び他面10Bを有する薄型のシートであり、繊維材料11及び高吸水性ポリマー粒子12を含み、高吸収性ポリマー粒子12は、繊維材料に保持された状態で吸収性シート10の厚み方向に分散配置されており、吸収性シート10の厚み方向における高吸水性ポリマー粒子12が配置されている領域を、該厚み方向と直交する面で複数の層状の領域に区分した場合、各該領域に配置されている高吸水性ポリマー粒子12の平均粒径が、吸収性シート10の一面10A側から他面10B側に向って、減少している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性シート、特に吸収した液体の蒸散が少ない吸収性シートに関する。また、本発明は、前述した吸収性シートを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン等の吸収性物品には、蒸れを防止することが要求されており、種々の提案がなされている。体液の排泄後、使用者は身体に対する蒸れ又はベタツキを不快に感じる場合がある。このような不快感は、体液の排泄量が多い場合又は使用時間が長い場合に、特に顕著である。
こうした蒸れ又はベタツキが生じる原因としては、吸収性物品に吸収された体液が、吸収性物品の内部の吸収性シート等の吸収性体に固定化されず、肌当接面側から液戻りすることや、体温や外気により温められた体液が、肌側へ蒸散するためと考えられている。
【0003】
本出願人は先に特許文献1において、特定の値以上の透湿度を有する透湿性裏面シートを用いると共に吸収性物品に吸湿剤を具備させることでその吸湿量を特定の値以上とした吸収性物品を提案した。この吸収性物品によれば、吸収体に吸収された液から発生する水蒸気が吸湿剤の作用によって積極的に捕捉されるので、蒸れ防止の効果が十分に発現する。しかし、この吸収性物品においては、吸収体に吸収された液からの水蒸気の発生自体を抑制する対策は施されていない。
【0004】
また、本発明者らは先に特許文献2において、1枚の紙の内部に高吸収性ポリマー粒子が分散配置されている吸収性シートを提案した。この吸収性シートにおいて、高吸収性ポリマー粒子は、吸収性シートを構成する親水性繊維に接着し固定化されている。この吸収性シートにおいては、高吸収性ポリマー粒子をシート内に確実に固定できるので、高吸収性ポリマー粒子の脱落がほとんどないという利点がある。また高吸収性ポリマー粒子がゲルブロッキングし難いので、液体の吸収速度や液体の固定性に優れるものである。
【0005】
このような高吸水性ポリマー粒子は、パルプ等の親水性繊維と比べて、液体を固定化する能力が高い材料であり、特許文献2記載の吸収性シートは、水蒸気の蒸散性が抑制されている。しかし、高吸水性ポリマー粒子に吸収された体液は、その吸着平衡状態において、高吸水性ポリマー粒子から脱離し放出される部分があり、放出された体液から水蒸気が発生する、もしくは直接体液が水蒸気として放出される。そのため、高吸水性ポリマー粒子が、肌当接面側に近い位置に配置されていると、放出された水蒸気は蒸れの原因となり得る。
【0006】
【特許文献1】特開平7−132126号公報
【特許文献2】特開平8−246395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、排泄量が多い場合又は使用時間が長い場合においても、蒸れが生じにくく、装着感に優れており、高吸収性で漏れ防止性に優れた吸収性シート及びそれを用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、繊維材料及び高吸水性ポリマー粒子を含む吸収性シートであって、該高吸収性ポリマー粒子は、前記繊維材料に保持された状態で前記吸収性シートの厚み方向に分散配置されており、該吸収性シートの該厚み方向における前記高吸水性ポリマー粒子が配置されている領域を、該厚み方向と直交する面で複数の層状の領域に区分した場合、各該領域に配置されている前記高吸水性ポリマー粒子の平均粒径が、前記吸収性シートの一面側から他面側に向って、減少している吸収性シートを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された前述の吸収性シートを具備する吸収性物品を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性シート及びそれを用いた吸収性物品によれば、排泄量が多い場合又は使用時間が長い場合においても、蒸れが生じにくく、装着感に優れており、高吸収性で漏れ防止性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の吸収性物品の好ましい第1実施形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態の吸収性シート10は、図1に示すように、一面10A及び他面10Bを有する薄型のシートであり、繊維材料11及び高吸水性ポリマー粒子12を含み、高吸収性ポリマー粒子12は、繊維材料に保持された状態で吸収性シート10の厚み方向に分散配置されている。
また、本実施形態の吸収性シート10は、該吸収性シート10の厚み方向における高吸水性ポリマー粒子12が配置されている領域を、該厚み方向と直交する面で複数の層状の領域に区分した場合、各該領域に配置されている高吸水性ポリマー粒子12の平均粒径が、吸収性シート10の一面10A側から他面10B側に向って、減少している。
【0013】
本実施形態の本発明の吸収性シート10は、好ましくは、図2に示すように、繊維材料11からなる2つの層11A,11Bを有している。具体的には、吸収性シート10は、上方繊維層11Aが下方繊維層11Bの上に重ね合わされた積層構造を有している。上方繊維層11Aと下方繊維層11Bとは、一体化している。
【0014】
上方繊維層11Aは、液吸収面としての一面10Aを有し、ポリマー粒子12を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、上方繊維層11Aにポリマー粒子12を意図的に存在させることを含まないことを意味し、吸収性シート10の製造工程において、不可避的に上方繊維層11Aに微量のポリマー粒子12が存在することは許容される。また、吸収性シート10は、一面10A及び他面10Bの何れもが液吸収性を有しているが、本実施形態の吸収性シート10が、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられた場合の蒸れ防止性の観点から、一面10Aを吸収性シート10の肌当接面側に配して、主たる液吸収面として使用することが好ましい。
【0015】
本実施形態の吸収性シート10におけるポリマー粒子12について、更に説明すると、ポリマー粒子12は、繊維材料11に保持された状態で、図1及び図2に示すように、下方繊維層11Bの厚み方向に亘り埋没担持されている。ポリマー粒子12は、下方繊維層11Bの厚み方向に亘り分散配置されている。つまりポリマー粒子12は、下方繊維層11Bの内部において三次元的に分布している。ポリマー粒子12は、絡み合いや、ポリマー粒子12が吸水することによって発現する粘着性によって、下方繊維層11Bにおける繊維材料11に保持されている。ポリマー粒子12がこのような保持状態になっていることで、ポリマー粒子12は下方繊維層11Bの内部に確実に固定され、その脱落が効果的に防止される。従って本実施形態の吸収性シート10は、多量のポリマー粒子12を含むことができる。例えば本実施形態の吸収性シート10は、その全体の重量に対して15〜70重量%、特に25〜65重量%という高い割合でポリマー粒子12を含み得る。
【0016】
ポリマー粒子12は、下方繊維層11Bを、その厚み方向と直交する面で複数の層状の領域に区分した場合、各該領域に配置されているポリマー粒子12の平均粒径が、吸収性シート10の一面10A側から他面10B側に向って、減少している。更に説明すると、図2に示すように、下方繊維層11Bをその厚み方向に、その厚み方向と直交する面でN等分した場合、下方繊維層11Bの最も一面10A側に位置する第1領域に配置されているポリマー粒子12の平均粒径は、最も他面10B側に位置する第N領域に配置されているポリマー粒子12の平均粒径よりも大きくなっている。
【0017】
ただし、各領域に配置されているポリマー粒子12は、その粒径が一定でなく粒度分布を有しているので、粒径の小さなものから大きなものまでが含まれている。従って、第1領域に配置されているポリマー粒子12の中には、第N領域におけるポリマー粒子12の平均粒径よりも小さな粒子が存在する場合もある。また、第N領域に配置されているポリマー粒子12の中には、第1領域におけるポリマー粒子12の平均粒径よりも大きな粒子が存在する場合もある。
【0018】
前述したような、下方繊維層11Bにおけるポリマー粒子12の分散配置状態は、例えば、以下のように形成することができる。
まず、一定の粒度分布を有するポリマー粒子12を、乾燥状態にある下方繊維層11Bの一方の面の上方から散布し、次に、ポリマー粒子12が散布された下方繊維層11Bに振動を加える。振動により、ポリマー粒子12は、繊維材料11を構成する繊維同士が形成する隙間を、下方に移動する。小さな粒径のポリマー粒子12ほど、下方に移動し易く、大きな粒径のポリマー粒子ほど、移動し難い。その結果、下方繊維層11Bの厚み方向において、一面10A側に配置されるポリマー粒子12には、大きな粒径の粒子が多く存在し、他面10B側に配置されるポリマー粒子12には、小さな粒径の粒子が多く存在する状態が形成される。
【0019】
本明細書において、大きな粒径の粒子又は小さな粒径の粒子等と表現する場合において、「大きな」又は「小さな」とは、相対的な意味であり、吸収性シート10内に配置されているポリマー粒子12の寸法の相対的な大小関係を表している。
【0020】
次に、下方繊維層11Bにおけるポリマー粒子12の前述した平均粒径の測定方法の一例を、以下に述べる。
電子顕微鏡観察にて下方繊維層11Bをその厚み方向と直交する面でN等分(通常3から5等分程度)し、各層において、任意に10個のポリマー粒子径を測定し、その平均値をその層における平均粒子径とする。下方繊維層11Bを複数の層状の領域へ区分けする際、該下方繊維層11Bが2枚以上の多層シートであればその各シートを基準に、厚み方向にN等分して測定をおこない、境界がない(わからない)場合は、厚み方向に等間隔に分ける。
【0021】
ポリマー粒子12の形状としては、その製造方法に応じ、例えば球形、塊状、俵状、不定形などの種々のものを用いることができる。球形以外の粒子の粒径の測定においては、粒子の輪郭が形成する最大断面積を測定し、該面積から粒子が球形であると仮定した場合の直径を算出する。
【0022】
下方繊維層11Bを、その厚み方向と直交する面で、例えばその厚み方向に3等分した場合、一面10A側の領域に配置されているポリマー粒子12の平均粒径は、250 〜 500μm、特に250〜350μmであることが好ましく、他面10B側の領域に配置されているポリマー粒子12の平均粒径は、100〜300μm、特に100〜250μmであることが好ましい。また、同様に下方繊維層11Bを3等分した場合における一面10A側の領域に配置されているポリマー粒子12の量は、重量基準で20〜50%、特に30〜40%であることが好ましく、他面10B側の領域に配置されているポリマー粒子12の量は、重量基準で30〜70%、特に40〜50%であることが好ましい。重量基準の100%は、吸収性シート10全体に含まれている乾燥状態におけるポリマー粒子12の全量である。
【0023】
本明細書においてポリマー粒子12又は繊維材料11の乾燥状態は、水分が全く含まれていない状態のみを意味するのではなく、通常の保管条件における湿度、温度の下において、水分がポリマー粒子12又は繊維材料11に平衡吸着状態で存在するような実質的に乾燥した状態も含まれる。
【0024】
前述したように、下方繊維層11Bにおける他面10B側の部分には、小さな粒径のポリマー粒子12が多く配置されている。また、小さな粒径を有するポリマー粒子12は、その比表面積が大きく、その表面は、繊維材料11を構成する繊維と部分的に接着しており、繊維と粒子表面との間に無数の細孔が形成されている。従って、下方繊維層11Bは、その厚み方向において、一面10A側から他面10B側に向って、細孔の数が増加し、該他面10B側に向う毛管力勾配が形成されており、液引き込み力が他面10B側ほど強くなっている。
【0025】
また、本実施形態の下方繊維層11Bにおいて、ポリマー粒子12は、他面10B側近傍で厚み方向と直交する面内に分散配置されており、下方繊維層11Bの面方向全体に均一に配置されている。そのため、下方繊維層11Bの一面10A側の面にある液体は、速やかに他面10B側に引き込まれ、該他面10B側近傍に配置されているポリマー粒子12に吸収されて、下方繊維層11Bの面方向全体で固定されるようになっている。
【0026】
下方繊維層11Bの他面10B側近傍に配置されるポリマー粒子12は、液体を吸収した際の膨潤倍率が高いことが、前述した細孔が多く形成される観点から好ましい。また、下方繊維層11Bの他面10B側近傍に配置されるポリマー粒子12は、液吸収速度の高いことが好ましい。
【0027】
下方繊維層11Bにおける他面10B側の近傍において、液体を吸収したポリマー粒子12は膨潤するが、ポリマー粒子12の粒径が小さいため、膨潤した粒子同士がほとんど接触しないので、液の移動を妨げず、ゲルブロッキングを生じない。そのため、下方繊維層11Bにおける他面10B側の近傍において、ポリマー膨潤による繊維空間径の減少効果によって、液を引き込み易く、さらに拡散性を高めることができる。
【0028】
一方、下方繊維層11Bにおける一面10A側の近傍に配置されているポリマー粒子12は、その粒径は大きいものが多いが、その数は少ないので、液体を吸収して膨潤しても、膨潤した粒子同士がほとんど接触しないため、液の移動を妨げず、ゲルブロッキングを生じない。さらに、ポリマー粒子の数量が少なく配置されているため、繊維空間の減少効果を及ぼすほどではない。そのため、下方繊維層11Bの一面10A側の面にある液体は、速やかに他面10B側に移動することができる。
【0029】
また、下方繊維層11Bの一面10A側近傍に配置されるポリマー粒子12は、液体を吸収した際の膨潤倍率が低く且つ液吸収速度の低いことが、吸収性シート10に吸収された液体を他面10B側に速やかに移動させる上で好ましい。
【0030】
ここで、下方繊維層11Bにおける液の吸収機構を分かり易くするため、モデルを使って説明する。様々な粒径を有するポリマー粒子12を、例えば下方繊維層11Bにおける一面10A側の面上に配置されている大きな粒径のポリマー粒子と、他面10B側の面近傍に配置されている小さな粒径のポリマー粒子とに分離する。この分離は、下方繊維層11Bの繊維間の間隔によって決定される。従って下方繊維層11Bを選択することにより、任意の粒径のポリマー粒子を一面10A側の面上に残すことができる。一面10A側の面上に残るポリマー粒子の量は、液の吸収性を低下させる要因であるゲルブロッキングを防止する観点から決定され、それに基づき散布するポリマーの粒度分布及び散布量が決定される。ポリマー粒子間の間隔は、対象とする液体によって異なる。例えば尿や汗のような比較的多く吸収可能な体液の場合は、150〜300倍程度体積が膨潤することを考慮してポリマー散布が行われる。経血や血液のような体液の場合は、5〜50倍程度体積が膨潤することを考慮してポリマー散布が行われる。この場合、ある均一な粒子径rよりなる球状ポリマー粒子が、格子状に均一に一面10A側の面上に並べられ、球状ポリマー粒子の膨潤倍率が30倍(擬似血液想定)の場合、格子状に並べられた球状ポリマー粒子の中心間距離は、30の三乗根×rだけ離間していれば良い。
【0031】
ポリマー粒子12としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えばデンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体が挙げられる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合せしめた共重合体も好ましく使用し得る。
【0032】
ポリマー粒子12を保持する下方繊維層11Bにおける繊維材料11としては、親水性のものを用いることが、液の通過、吸収性を高める点から好ましい。そのような繊維としては、例えば針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、並びにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したものなどが挙げられる。しかし、それらに限定されるものではない。これらの親水性繊維は1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
親水性繊維のうち、好ましいものはセルロース繊維である。特に、天然セルロース繊維及び再生セルロース繊維のような嵩高性のセルロース繊維が好ましい。コストの点からは、木材パルプを用いることが好ましく、特に針葉樹クラフトパルプが好ましい。かかる嵩高性のセルロース繊維を用いることによって、ポリマー粒子12の分散性及び固定化の程度が一層向上する。更に、嵩高性のセルロース繊維を用いることによって、ポリマー粒子12を三次元的に埋没・分散、固定させやすくなる。またポリマー粒子12のゲルブロッキングの発生も抑えることができる。この観点から、吸収性シート10における嵩高性のセルロース繊維の割合は40〜95重量%、特に50〜80重量%であることが好ましい。なお嵩高性の繊維とは、繊維形状が、捻れ構造、クリンプ構造、屈曲及び/又は分岐構造等の立体構造をとるか、又は繊維断面が極太(例えば繊維粗度が0.3mg/m以上)である繊維をいう。
【0034】
嵩高性のセルロース繊維の好ましいものの例として、繊維粗度が0.3mg/m以上のセルロース繊維が挙げられる。繊維粗度が0.3mg/m以上のセルロース繊維は、嵩高な状態でセルロース繊維が集積するので、ポリマー粒子12を保持し得る嵩高なネットワーク構造が形成され易い。また、液体の移動抵抗が小さく、液体の通過速度が大きくなる。繊維粗度は、0.3〜2mg/m、特に0.32〜1mg/mであることが好ましい。
【0035】
繊維粗度とは、木材パルプのように、繊維の太さが不均一な繊維において、繊維の太さを表す尺度として用いられるものであり、例えば、繊維粗度計(FS−200、KAJANNIELECTRONICSLTD.社製)を用いて測定される。
【0036】
繊維粗度が0.3mg/m以上のセルロース繊維の例としては、針葉樹クラフトパルプ〔Federal Paper Board Co.製の「ALBACEL」(商品名)、及びPT Inti Indorayon Utama
製の「INDORAYON」(商品名)〕等が挙げられる。
【0037】
嵩高性のセルロース繊維の好ましいものの他の例として、繊維断面の真円度が0.5〜1、特に好ましくは0.55〜1であるセルロース繊維が挙げられる。繊維断面の真円度が0.5〜1であるセルロース繊維は、液体の移動抵抗が小さく、液体の透過速度が大きくなる。真円度の測定方法は次の通りである。面積が変化しないように、繊維をその断面方向に垂直にスライスし、電子顕微鏡により断面写真をとる。断面写真を画像解析装置〔(株)ネクサス製New Qubever.4.22(商品名)〕により解析し、測定繊維の断面積及び周長を測定する。これらの値を用い、以下に示す式を用いて真円度を算出する。真円度は、任意の繊維断面を100点測定し、その平均値とする。
真円度=4π(測定繊維の断面積)/(測定繊維の断面の周長)2
【0038】
前述の通り、セルロース繊維として木材パルプを使用することが好ましいが、一般に木材パルプの断面は、脱リグニン化処理により偏平であり、その殆どの真円度は0.5未満である。このような木材パルプの真円度を0.5以上にするためには、例えば、かかる木材パルプをマーセル化処理して木材パルプの断面を膨潤させればよい。
【0039】
このように、嵩高性のセルロース繊維としては、木材パルプをマーセル化処理して得られる真円度が0.5〜1であるマーセル化パルプも好ましい。本発明において用いることのできる市販のマーセル化パルプの例としては、ITT Rayonier Inc.製の「FILTRANIER」
(商品名)や同社製の「POROSANIER」(商品名)等が挙げられる。
【0040】
また、繊維粗度が0.3mg/m以上で、且つ繊維断面の真円度が0.5〜1であるセルロース繊維を用いると、嵩高なネットワーク構造が一層形成され易くなり、液体の通過速度も一層大きくなるので好ましい。
【0041】
下方繊維層11Bにおける繊維材料11としては、前述した嵩高性のセルロース繊維に加えて、加熱により溶融し相互に接着する繊維である熱融着性繊維を用いることも好ましい。これによって下方繊維層11Bに十分な湿潤強度を付与できる。熱融着性繊維としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維等を挙げることができる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維の何れをも用いることができる。これらの熱溶融性繊維は、各々単独で用いることもでき、又は2種以上を混合して用いることもできる。熱溶融性繊維は、一般にその繊維長が2〜60mmであることが好ましく、繊維径は0.1〜3デニール、特に0.5〜3デニールであることが好ましい。吸収性シート10における熱溶融性繊維の割合は1〜50重量%、特に3〜30重量%であることが好ましい。
【0042】
繊維材料11の繊維長は本発明において臨界的ではなく特に制限はない。例えば、後述するように吸収性シート10を湿式抄造により製造する場合には、繊維材料11の繊維長は1〜20mmであることが好ましい。
【0043】
吸収性シート10には、更にポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ジアルデヒドデンプン、カルボキシメチルセルロースなどを湿潤紙力増強剤として配合することもできる。
【0044】
前述した下方繊維層11Bは、その坪量が好ましくは10〜40g/m2であり、更に好ましくは15〜30g/m2である。前記坪量が10g/m2に満たないと、ポリマー粒子12の膨潤時に該ポリマー粒子12が下方繊維層11Bを突出して脱落してしまうおそれがある。一方、上記坪量が40g/m2を超えると下方繊維層11Bの密度が上がり過ぎ、吸収性シート10が固くなりすぎ、ポリマー粒子12を三次元的に固定できなくなったり、液体の透過性が悪くなったり、更には装着感が悪くなる場合があるので、前記範囲内とすることが好ましい。
【0045】
次に、吸収性シート10の主たる液吸収面としての一面10Aを有する上方繊維層11Aについて説明する。上方繊維層11Aにおける繊維材料11としては、前述した下方繊維層11Bのものと同様のものを用いることができる。
また、上方繊維層11Aは、本実施形態の吸収性シート10が生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられた場合、肌当接面側に配置されるものであることから、下方繊維層11Bよりも、剛性が高く嵩高であることが、クッション性及び液透過性の観点から好ましい。
【0046】
セルロース繊維の嵩高性のより好ましいものの例として、セルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維がある。かかる架橋セルロース繊維は湿潤状態でも嵩高構造を維持し得るので好ましい。市販の架橋セルロース繊維としては、Weyerhaeuser Paper Co.製の「High Bulk Additive」等が挙げられる。
【0047】
前述した嵩高性のセルロース繊維に加えて、繊維粗度が0.3mg/m以上であるパルプ等のセルロース繊維の分子内及び/又は分子間を上述の方法で架橋した嵩高性のセルロース繊維も好ましい。また、繊維断面の真円度が0.5〜1であるパルプの分子内及び/又は分子間を架橋した嵩高性のセルロース繊維も好ましい。更に、繊維断面の真円度が0.5〜1であるマーセル化パルプの分子内及び/又は分子間を架橋した嵩高性のセルロース繊維も好ましい。一層好ましい嵩高性のセルロース繊維は、繊維粗度が0.3mg/m以上であり且つ繊維断面の真円度が0.5〜1であるパルプを架橋したものである。特に好ましい嵩高性のセルロース繊維は、繊維粗度が0.3mg/m以上であるパルプをマーセル化によって真円度を0.5〜1にした後、架橋したものである。
【0048】
更に、上方繊維層11Aは、前述した熱融着性繊維を、下方繊維層11Bよりも多く有していることが、剛性及び嵩高性を高める上で好ましい。
【0049】
上方繊維層11Aは、ほとんどポリマー粒子12を含まない層であるが、下方繊維層11Bに存在するポリマー粒子量の総坪量の5〜20%程度が含まれていても、吸収性シート10の一面10Aにポリマー粒子12がでない状態であれば許容される。また、上方繊維層11Aと下方繊維層11Bの境界にポリマー粒子12が存在する場合には、該ポリマー粒子が上方繊維層11Aに入り込んでいても、下方繊維層11Bのポリマー粒子12とする。
【0050】
本実施形態の吸収性シート10は、ポリマー粒子12の割合が高いにもかかわらず、薄型であることによっても特徴付けられる。具体的には吸収性シート10は、その坪量が50〜200g/m2、特に60〜150g/m2の範囲において、その厚みが0.3〜2.0mm、特に0.35〜1.0mmという薄型のものである。
【0051】
次に、前述した本実施形態の吸収性シート10の好ましい製造方法の一例を、図3及び図4を参照しながら、以下に説明する。
【0052】
吸収性シート10の製造方法は、抄紙工程、脱水工程、第1乾燥工程、ポリマー粒子散布工程、振動拡散工程、湿潤工程、積層工程及び第2乾燥工程からなる。
【0053】
まず、前記抄紙工程において、図3(a)に示すように、湿式抄紙機のフォーミングパート101で下方繊維層11Bを形成し、次に、該下方繊維層11Bを前記脱水工程にて脱水し、下方繊維層11Bを第1乾燥工程に送り乾燥する。乾燥手段に特に制限はなく、ヤンキードライヤーやエアースルードライヤー等を用いることができる。
【0054】
次に、乾燥された下方繊維層11Bを、前記ポリマー粒子散布工程に送り、図3(b)に示すホッパー102から、ポリマー粒子12を供給し、図4(a)に示すように、下方繊維層11Bの上側の面に散布する。ポリマー粒子12は、一定の粒度分布を有している。
【0055】
ホッパー102から供給されるポリマー粒子12の粒度分布は、例えば、以下のように測定される。ここで、ポリマー粒子12の粒径とは、該粒子12が球形である場合には球の直径のことであり、該粒子12が不定形である場合には篩を用いて粒子を分級操作したときに通過できる最大の篩の目の開きのことである。このような粒度分布を測定するための操作は次の通りである。TOKYO SCREEN CO., LTD.製の篩であって、目の開きが106μm、150μm、500μmのものを使用する。ポリマー粒子12を、前記篩を用いて、106μm以下、106〜150μm以下、150μm〜500μm、500μm以上の粒子に分類し、4つの区分に分類された粒度分布を重量分率で表す。また、必要に応じて、目の開きが250μm及び355μmの篩も用いて、より細かく分類することも好ましい。
【0056】
次に、ポリマー粒子12が散布された下方繊維層11Bを、前記振動拡散工程において、下方繊維層11Bをプレスロールあるいは、凹凸ロールを通過させることにより与えられる振動や、搬送ベルト下に凹凸ロールを設置することによる振動を与えることで、ポリマー粒子12を下方繊維層11Bの他面10B側に拡散し、図4(b)に示すように、ポリマー粒子12を下方繊維層11B内に埋没させる。小さな粒径のポリマー粒子12ほど、下方繊維層11Bの他面10B側に埋没する。また、大きな粒径のポリマー粒子12の中には、下方繊維層11Bの上側の面に残っているものもある。
【0057】
次に、下方繊維層11Bを、前記湿潤工程に送り、下方繊維層11Bの上に水を散布して湿潤させ、前記積層工程に送る。
前記積層工程において、図3(c)に示すように、別に容易した繊維材料11が乾燥状態にある上方繊維層11Aを、下方繊維層11Bの上に重ね合わせ、プレスパート103にて積層体とする。下方繊維層11Bの上側の面には、湿潤して粘着性を有するポリマー粒子12が配されており、下方繊維層11Bと上方繊維層11Aとを接着する。
然る後、前記積層体を、前記第2乾燥工程へ送り、乾燥すると共にかるくプレスし、上方繊維層11Aと下方繊維層11Bとを一体化して、本実施形態の吸収性シート10を得る。
【0058】
前述した本実施形態の吸収性シート10によれば、液体が、下方繊維層11Bの他面10B側におけるポリマー粒子12に吸収された場合、その吸着平衡状態において、ポリマー粒子12から脱離し放出される部分があっても、吸収性シート10の吸収表面としての一面10Aから離れているため、放出された液体または水蒸気が、該一面10Aに移動する間に、ポリマー粒子12又は繊維材料11に再吸収されるので、水蒸気となって該一面10Aから蒸散することが防止されている。
【0059】
また、下方繊維層11Bの他面10B側におけるポリマー粒子12から放出された水蒸気は、主に、下方繊維層11Bの他面10Bから、吸収性シート10の外へ放出される。本実施形態の吸収性シート10を、例えば生理用ナプキンに使用した場合、透湿性を有する裏面シートを用い、該裏面シートと吸収性シート10の他面10Bとが当接するように、吸収性シート10を生理用ナプキンに配すれば、放出された水蒸気は主に裏面シートを通って、生理用ナプキンの外へ移動するので、該生理用ナプキンの使用中の蒸れ又はベタツキを防止することができる。
【0060】
次に第2〜4実施形態の吸収性シートを、図5〜図10を参照しながら説明する。第2〜4実施形態について、特に説明しない点については、第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図5〜図10において、図1〜図4と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0061】
本発明の好ましい第2実施形態の吸収性シート10は、図5に示すように、液吸収速度の異なる2種類の高吸水性ポリマー粒子12A,12Bを有しており、液吸収速度の高い一方の高吸水性ポリマー粒子12Aの吸収性シート10全体における平均粒径は、液吸収速度の低い他方の高吸水性ポリマー粒子12Bよりも小さくなっている。
【0062】
本実施形態の吸収性シート10において、下方繊維層11Bを、その厚み方向と直交する面で、該厚み方向に複数の領域に区分した場合、各該領域に配置されている高吸水性ポリマー粒子12の平均粒径が、下方繊維層11Bの一面10A側から他面10B側に向って、減少しており、該他面10B側近傍には、液吸収速度の高い一方の高吸水性ポリマー粒子12Aが多く配置されている。一方、液吸収速度の低い他方の高吸水性ポリマー粒子12Bは、下方繊維層11Bにおいて、他面10B側よりも一面10A側に多く配置されている。
【0063】
液吸収速度の高い一方の高吸水性ポリマー粒子12Aは、JIS K 7224に準拠して測定した0.9%食塩水の吸収速度(以下、単に吸収速度という)が、0.8g/g/秒以上、特に1.0g/g/秒以上であることが好ましい。一方、液吸収速度の低い他方の高吸水性ポリマー粒子12Bの吸収速度は、0.7g/g/秒以下、特に0.65g/g/秒以下であることが好ましい。ポリマー粒子12Aの吸収速度が、0.8g/g/秒以上であることが、下方繊維層11Bの他面10B側に液体を吸引して固定化する上で好ましい。一方、ポリマー粒子12Bの吸収速度がポリマー粒子12Aより高いと、液体が、下方繊維層11Bの一面10A側から他面10B側へ拡散することなく、一面10A側近傍に多く配置されているポリマー粒子12Bに吸収され固定化されてしまう。
【0064】
下方繊維層11B全体の領域において、ポリマー粒子12Aの平均粒径は、100〜300μm、特に100〜250μmであることが好ましく、ポリマー粒子12Bの平均粒径は、250〜500μm、特に250〜350μmであることが好ましい。
【0065】
下方繊維層11Bを、その厚み方向と直交する面で、例えばその厚み方向に3等分した場合、一面10A側の領域に配置されているポリマー粒子全量におけるポリマー粒子12Bの割合は、重量基準で20〜50%であることが好ましく、他面10B側の領域に配置されているポリマー粒子全量におけるポリマー粒子12Aの割合は、重量基準で30〜70%であることが好ましい。ここで、重量基準の100%は、吸収性シート10全体に含まれている乾燥状態におけるポリマー粒子12の全量である。
【0066】
また、ポリマー粒子12Aは、高い膨潤倍率(擬似血液想定)を有しており、ポリマー粒子12Bは、低い膨潤倍率を有している。具体的には、ポリマー粒子12Aの生理食塩水における膨潤倍率は、10〜50倍であることが好ましく、ポリマー粒子12Bの膨潤倍率は、5〜30倍であることが好ましい。
その他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0067】
次に、前述した本実施形態の吸収性シート10の好ましい製造方法の一例を、図6を参照しながら、以下に説明する。
吸収性シート10の製造方法は、前記ポリマー粒子散布工程を除いて、前述した第1実施形態の製造方法と同様である。そこで、前記ポリマー粒子散布工程についてのみ説明する。
【0068】
本実施形態の吸収性シート10における前記ポリマー粒子散布工程は、図6に示すように、2つのホッパー102A,102Bを有している。ホッパー102Aからは、吸収速度が高く粒径の小さなポリマー粒子12Aが供給される。また、ホッパー102Bからは、吸収速度が低く粒径の大きなポリマー粒子12Bが供給される。
【0069】
前述したように、前記第1乾燥工程で乾燥された下方繊維層11Bを、図6に示すように、前記ポリマー粒子散布工程に送り、まず、ホッパー102Aから、ポリマー粒子12Aを供給し、下方繊維層11Bの上側の面に散布し、続いて、ホッパー102Bから、ポリマー粒子12Bを供給して、下方繊維層11Bの上側の面に散布し、該下方繊維層11Bを前記振動拡散工程に送る。
尚、前記振動拡散工程を、2つのホッパーの間に設けても良い。
【0070】
前述した本実施形態の吸収性シート10によれば、吸収性シート10全体における平均粒径、吸収速度及び膨潤倍率それぞれが異なる2種類のポリマー粒子12A,12Bを有しているので、下方繊維層11Bの他面10B側への液体の吸引力及び固定化力が更に高められている。また、前述した第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0071】
本発明の好ましい第2実施形態の吸収性シート10において、下方繊維層11Bは、図7に示すように、第1下方繊維層110Bが第2下方繊維層111Bの上に積層されて形成されている。
【0072】
第1下方繊維層110B及び第2下方繊維層111Bそれぞれの坪量は、前述した第1実施形態における下方繊維層11Bのものと同様である。即ち、本実施形態の吸収性シート10における下方繊維層11Bの坪量は、第1実施形態の下方繊維層の2倍程度高くなっており、吸収性シート10の他面10B側の部分の液吸収量が高められている。
【0073】
下方繊維層11Bにおいて、他面10B側に位置する第2下方繊維層111Bに配置されている高吸水性ポリマー粒子12Cの平均粒径が、一面10A側に位置する第1下方繊維層110Bに配置されている高吸水性ポリマー粒子12Dよりも小さくなっている。
両層110B,111Bそれぞれに配置されているポリマー粒子12C,12Dは、粒径以外の物性又は化学的性質については、同じでも良いし、異なっていても良い。
【0074】
また、第1下方繊維層110B及び第2下方繊維層111Bそれぞれにおける繊維材料11は、前述した親水性繊維、熱融着性繊維及び湿潤紙力増強剤を有していることが好ましい。
【0075】
第1下方繊維層110B及び第2下方繊維層111Bそれぞれにおける繊維材料11の構成は、同じでも良いし、異なっていても良い。例えば、第2下方繊維層111Bにおける親水性繊維の繊度を、第1下方繊維層110Bよりも低くして、下方繊維層11Bの他面10B側の毛管力を高めることが好ましい。
その他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0076】
次に、前述した本実施形態の吸収性シート10の好ましい製造方法の一例を、図8を参照しながら、以下に説明する。
【0077】
吸収性シート10の製造方法は、前記ポリマー粒子散布工程を除いて、前述した第1実施形態の製造方法と同様である。そこで、前記ポリマー粒子散布工程についてのみ説明する。
【0078】
本実施形態の吸収性シート10の前記ポリマー粒子散布工程は、図8(a)及び(b)に示すように、第1ポリマー粒子散布工程と第2ポリマー粒子散布工程とから構成される。前記第1ポリマー粒子散布工程におけるホッパー102Cから供給されるポリマー粒子12Cの平均粒径は、前記第2ポリマー粒子散布工程におけるホッパー102Dから供給されるポリマー粒子12Dよりも小さい。
【0079】
前述したように、前記第1乾燥工程で乾燥された第2下方繊維層111Bを、図8(a)に示すように、前記第1ポリマー粒子散布工程に送り、まず、ホッパー102Cから、平均粒径の小さなポリマー粒子12Cを供給し、第2下方繊維層111Bの上側の面に散布し、前記第2ポリマー粒子散布工程に送る。
【0080】
前記第2ポリマー粒子散布工程では、図8(b)に示すように、別に用意した第1下方繊維層110Bを、第2下方繊維層111Bの上側の面に重ね合わせ、プレスパート103´にて積層体とし、次に、ホッパー102Dから、平均粒径の大きなポリマー粒子12Dを供給し、該積層体における第1下方繊維層110Bの上側の面に散布し、前記振動拡散工程へ送る。従って、ポリマー粒子12Dの中には、該振動拡散工程により他面10B側へ移動し、第2下方繊維層111B内に配置されるものもある。
【0081】
前述した本実施形態の吸収性シート10によれば、ポリマー粒子12の散布工程において、小さな粒径を有するポリマー粒子を他面10B側に分散配置するので、吸収した液体を他面10B側に吸引して固定化する構造を、前述した各実施形態よりも、設計通りに製造し易くなっている。また、前述した第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0082】
本発明の好ましい第4実施形態の吸収性シート10は、図9に示すように、その厚み方向において、他面10B側の部分の繊維材料11が、熱エンボス加工により圧密化されている。詳述すると、下方繊維層11Bが、他面10B側からの熱エンボス加工により圧密化されており、繊維材料11を構成する繊維同士の間隔が狭くなっている。
【0083】
更に説明すると、下方繊維層11Bでは、圧密化により繊維同士の隙間から形成される細孔の数が増えており、毛管力が高められている。また、下方繊維層11Bと上方繊維層11Aとの一体性が、熱エンボス加工により高められている。
更に、下方繊維層11Bに配置されているポリマー粒子12は、圧密化された繊維材料11により保持されており、更に脱落し難くなっている。
【0084】
本実施形態の下方繊維層11Bには、熱融着性繊維が1〜60質量%、特に5〜30質量%含まれていることが、熱エンボス加工により前述した圧密化構造が形成されると共に下方繊維層11Bと上方繊維層11Aとの一体性が高められる観点から好ましい。
その他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0085】
次に、前述した本実施形態の吸収性シート10の好ましい製造方法の一例を、図10を参照しながら、以下に説明する。
【0086】
吸収性シート10の製造方法は、前述した第1実施形態の製造方法における第2乾燥工程の後に、更に熱エンボス工程を有している。そこで、前記熱エンボス工程についてのみ説明する。
【0087】
前述したように前記第2乾燥工程で乾燥された吸収性シート10´を、前記熱エンボス工程に送り、上方繊維層10Aを上側にして、図10に示すように、周面にエンボス用凸部が規則的に配置されたエンボスロール104及びそれに対向配置されたアンビルロール105を備えたエンボス装置106に送り、そこで熱エンボス加工を施す。
ここで、エンボスロール104は、ヒーターにより加熱されるようになっており、一方アンビルロール105は冷却水により冷却されて温度が上昇しないようになっており、吸収性シート10は、その厚み方向において、下方繊維層10Bの部分のみが、所定の温度以上に加熱されるようになっている。
【0088】
前記熱エンボス工程により、加熱及び圧力を受けた吸収性シート10は、下方繊維層10Bの部分の繊維材料11が圧密化される。一方、上方繊維層10Aの部分は、圧力しか受けないので、圧密化された状態からその後開放されて、前記熱エンボス工程前の状態に戻り、本実施形態の吸収性シート10が得られる。
尚、前記熱エンボス工程は、前記ポリマー粒子散布工程の前に行なっても良い。この場合には、該熱エンボス加工は、下方繊維層11Bのみに対して行い、下方繊維層11B全体を圧密化する。
【0089】
前述した本実施形態の吸収性シート10によれば、熱エンボス加工により、下方繊維層11B側への液吸引力が高められている。また、上方繊維層11Aと下方繊維層11Bとの一体性が高められて、該両層間に隙間が生じ難いので、該両層間に液体が残り難くなっている。また、前述した第1と同様の効果が奏される。
【0090】
本発明の吸収性シート10は、前述した実施形態又は製造方法に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0091】
例えば、本発明の吸収性シート10は、生理用ナプキン、パンティライナ、おりものシート又は失禁パッド等に使用できる。
前述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。また、前述した一の製造方法における説明省略部分及び一の製造方法のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【0092】
次に、前述した吸収性シートを備える、本発明の吸収性物品の好ましい一実施形態について、図11を参照しながら説明する。本実施形態の吸収性物品について、特に説明しない点については、前述した吸収性シート10に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図11において、図1〜図10と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0093】
本実施形態の吸収性物品1としての生理用ナプキンは、図11に示すように、縦長であり、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3及び両シート間に介在された吸収性シート10を具備している。
また、本実施形態のナプキン1において、裏面シート3は透湿性を有している。
【0094】
本実施形態のナプキン1について、更に説明すると、表面シート2及び裏面シート3それぞれは、縦長であり、その長手方向がナプキン1と一致している。
本実施形態のナプキン1における吸収性シート10は、前述した本発明の吸収性シートである。吸収性シート10は、その一面10A側を表面シート2側に向け、他面10B側を裏面シート3側に向けて、ナプキン1に配されている。吸収性シート10は、その裏面シート3側の面(他面10B)に、ホットメルト接着剤が点状又は線状のパターンで塗布されて、該裏面シート3側の面が、裏面シート3と密着するように部分的に接着されている。
【0095】
裏面シート3を形成する透湿性シートとしては、微細孔を多数有し、高い水蒸気透過性を有するシート等が用いられ、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機粉体、ナイロン、ポリスチレン等の相溶性のない有機高分子を混練したポリエチレンフィルムを一軸又は二軸延伸して得られる、微細孔を有し、高い水蒸気透過性を有するシートが好適に利用される。具体的には、平均粒径0.5〜1,0μmの炭酸カルシウム等を30〜60重量%含有する坪量20〜50g/m2のポリエチレンフィルムをMD方向に2倍に延伸した、坪量13〜28g/m2の透湿フィルム等が挙げられる。
【0096】
更に前記透湿シートとしては、撥水性不織布、または前記透湿性シートと該撥水性不織布との複合シートを用いることもできる。
【0097】
前記透湿シートの有する前記の特定の透湿度は、0.7g/100cm2・hr以上であり、好ましくは1.0〜4.0g/100cm2・hrである。上記透湿度が0.7g/100cm2・hr未満であると、水分の外部への徐放を阻害するバリヤーとなる。
【0098】
本実施形態のナプキン1が使用されて、表面シート2に体液が排泄された場合、体液は、表面シート2を通り、吸収性シート10の一面10Aに達した後、他面10B側が有する強い液吸引力により、速やかに該他面10B側近傍へ移動し、他面10B近傍において、吸収性シート10の厚み方向と直行する面内に均一に分散配置されているポリマー粒子12に吸収されて固定化される。
【0099】
また、液体が、吸収性シート10の他面10B側の部分におけるポリマー粒子12に吸収された後、その吸着平衡状態において、ポリマー粒子12から脱離し放出される部分があっても、吸収性シート10の吸収表面としての一面10Aから離れているため、放出された液体または水蒸気が、該一面10Aに移動する間に、ポリマー粒子12又は繊維材料11に再吸収されるので、水蒸気となって該一面10Aから蒸散すること防止されている。
【0100】
更に、他面10B側の部分におけるポリマー粒子12から放出された水蒸気は、主に、透湿性を有する裏面シート3を通って、生理用ナプキンの外へ移動するので、該生理用ナプキンの使用中の蒸れ又はベタツキを防止することができる。
【0101】
本実施形態のナプキン1について、更に説明すると、表面シート2及び裏面シート3の長手方向の両端部は、図4に示すように、吸収性シート10の長手方向の両端縁から延出し、ヒートシール又は接着剤による接着等の公知の接合方法により接合されている。
【0102】
ナプキン1の非肌当接面側には、ズレ止め材が塗布されており、ナプキン1の使用の際にショーツ内表面に固定されるものである。また、前記ズレ止め材は、ナプキン1の使用時までは剥離紙に覆われて保護されている。前記ズレ止め材は、裏面シート3の透湿性を阻害しないように、ドット状又はスパイラル状に、裏面シート3の非肌当接面側の面に塗布されていることが好ましい。
【0103】
前述した本実施形態のナプキン1によれば、吸収した体液のほとんどを、吸収性シート10における裏面シート3側の部分に固定し、蒸散した水蒸気は、透湿性を有する裏面シート3からナプキン1の外へ放出されるので、使用中の蒸れ及びベタツキが効果的に防止される。
【0104】
本発明の吸収性物品1は、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンであっても良いが、パンティライナ、おりものシート又は失禁パッド等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、本発明の吸収性シートの第1実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図2】図2は、第1実施形態の好ましい断面構造を示す模式図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、第1実施形態の吸収性シートの好ましい製造方法の要部を表す模式図であり、(a)は湿式抄紙工程であり、(b)はポリマー粒子散布工程であり、(c)は積層工程である。
【図4】図4(a)〜(d)は、図3に示す製造工程における吸収性シートの状態を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の吸収性シートの第2実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図6】図6は、第2実施形態の吸収性シートの好ましい製造方法の要部を表す模式図である。
【図7】図7は、本発明の吸収性シートの第3実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図8】図8は、第3実施形態の吸収性シートの好ましい製造方法の要部を表す模式図である。
【図9】図9は、本発明の吸収性シートの第4実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図10】図10は、第4実施形態の吸収性シートの好ましい製造方法の要部を表す模式図である。
【図11】図11は、本発明の吸収性物品としての生理用ナプキンの一実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0106】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
10 吸収性シート
11 繊維材料
11A 上方繊維層
11B 下方繊維層
12 ポリマー粒子
13 液吸収面
2 表面シート
3 裏面シート
101 フォーミングパート
102 ホッパー
103 プレスパート
104 エンボスロール
105 アンビルロール
106 エンボス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料及び高吸水性ポリマー粒子を含む吸収性シートであって、
前記高吸収性ポリマー粒子は、前記繊維材料に保持された状態で前記吸収性シートの厚み方向に分散配置されており、
前記吸収性シートの前記厚み方向における前記高吸水性ポリマー粒子が配置されている領域を、前記厚み方向と直交する面で複数の層状の領域に区分した場合、各該領域に配置されている前記高吸水性ポリマー粒子の平均粒径が、前記吸収性シートの一面側から他面側に向って、減少している吸収性シート。
【請求項2】
前記高吸水性ポリマー粒子は、前記他面側の近傍で前記厚み方向と直交する面内に分散配置されている請求項1記載の吸収性シート。
【請求項3】
前記繊維材料からなる複数の層を有している請求項1又は2記載の吸収性シート。
【請求項4】
液吸収速度の異なる2種類の前記高吸水性ポリマー粒子を有しており、液吸収速度の高い一方の高吸水性ポリマー粒子の前記吸収性シート全体における平均粒径は、液吸収速度の低い他方の高吸水性ポリマー粒子よりも小さい請求項1〜3の何れかに記載の吸収性シート。
【請求項5】
前記他面側の部分の前記繊維材料が、該他面側からの熱エンボス加工により圧密化されている請求項1〜4の何れかに記載の吸収性シート。
【請求項6】
表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された請求項1〜5の何れかに記載の吸収性シートを具備する吸収性物品。
【請求項7】
前記裏面シートが、透湿性を有している請求項6記載の吸収性物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−167193(P2007−167193A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366449(P2005−366449)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】