説明

吸収性物品のワークのカッター装置

【課題】ロールの回転振動を抑制して、カッター刃の長寿命化を図る。
【解決手段】搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置である。カッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、を有する。前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いに前記搬送方向に沿って回転しながら、前記カッターロールと前記アンビルロールとの間に前記ワークを通過させることによって前記ワークを切る。前記カッターロール及び前記アンビルロールの少なくとも一方のロールについて、JISB0905に規定される釣り合い良さ(mm/sec)の前記ロールの回転軸方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、前記ロールの動バランスを修正する動バランス修正部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品のワークを切るカッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造ラインでは、不織布等のワークを搬送方向に搬送中に、当該ワークに対して一部を打ち抜いたり(切除したり)、切り込みを入れたり、製品単位に分断すること等が行われる。つまり、ワークを切ることが行われる。そして、これは、ロータリーダイカッター装置によってなされる。
このカッター装置は、外周面からカッター刃が突出したカッターロールと、カッター刃を受ける平滑なアンビルロールと、を有する。そして、カッターロールとアンビルロールとをワークの搬送方向に沿って回転させながら、これらのロール同士の間隙に前記ワークを通過させることにより、ワークをカットする。
なお、かかるカッター装置のなかには、ベアラ部を有したものもある。ベアラ部は、例えば、カッターロールの外周面の両端部に周方向に沿って環状に突出した環状凸部であり、各ベアラ部をアンビルロールの外周面に当接させることにより、回転トルクを一方のロールから他方のロールへと伝達させる機能を有する。
【0003】
ところで、かかるカッター装置にあっては、カッター刃の刃先の摩耗や欠損等によって刃先とアンビルロールとの間にクリアランスが生じた時、あるいは、刃先の摩耗でワークを切断するだけの切断荷重がかからなくなった時に、カットミス(切断不良)を生じる。
【0004】
そして、今までにも、このカットミスの防止技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、刃先のアンビルロールへの衝突による摩耗・欠損を防ぐ技術として、カッターロールの回転方向におけるカッター刃の不連続箇所に、切断に寄与しない捨て刃を設け、これにより、カッター刃における不連続箇所の近傍部分のカット時の応力集中を緩和・軽減することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、カッターロールやアンビルロールの撓み起因の切断不良を防止する技術として、上ロールたるカッターロールのベアラ部に対して、その上方から直押しロールを押し付ける一方、下ロールたるアンビルロールに対して、その下方から直押しロールを押し付け、これにより、切断時の各ロールの撓みを縮小して良好な切れ味を維持することが記載されている。
更には、特許文献3には、ベアラ部の熱膨張起因の切断不良を防ぐ技術として、ベアラ部の外周面に、放熱用の溝を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−188699号
【特許文献2】特開2002−96290号
【特許文献3】特開2006−239815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年の吸収性物品の製造設備の高速化に伴い、上述の技術を用いても、カッター刃の耐久性の悪化を有効に防げない新たな問題が起きている。これは、ロールの動バランス不良に基づく回転振動の問題であり、以前は、生産速度が低くロールの回転速度が低い等の理由で、あまり顕在化していなかった。
ところが、上述のような製造設備の高速化に伴って、ロールの回転速度が高速になるにつれ、回転振動起因の刃先の欠損や摩耗が生じ易くなっている。また、最近では、大人用おむつの普及に伴って、長大なロールを用いる製造設備も増えているが、かかるロールは重量が重いことから上記の回転振動を更に助長・拡大する虞がある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ロールの回転振動を抑制して、カッター刃の長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
カッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、を有し、
前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いに前記搬送方向に沿って回転しながら、前記カッターロールと前記アンビルロールとの間に前記ワークを通過させることによって前記ワークを切り、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの少なくとも一方のロールについて、JISB0905に規定される釣り合い良さ(m/sec)の前記ロールの回転軸方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、前記ロールの動バランスを修正する動バランス修正部を有していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロールの回転振動を抑制して、カッター刃の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、本実施形態に係るカッター装置10の概略正面図であり、図1Bは同側面図である。
【図2】カッター装置10が半製品1aを打ち抜く様子を示す概略上面図である。
【図3】図3A及び図3Bは、それぞれカッターロール20及びアンビルロール40の正面図である。
【図4】カッターロール20の回転角度位置及びアンビルロール40の回転角度位置の説明図である。
【図5】図5Aは、回収機構70を説明するためのアンビルロール40の正面図であり、図5Bは、同アンビルロール40の中心縦断面図(図5C中のB−B断面図)であり、図5Cは、図5A中のC−C矢視図である。
【図6】図6Aは、図3A中のVIa−VIa矢視図であり、図6Bは、図3B中のVIb−VIb矢視図である。
【図7】図7Aは、動バランスの修正方法を説明するためのカッターロール20の正面図であり、図7Bは同アンビルロール40の正面図である。
【図8】表3に係るカッターロール20とアンビルロール40の残留不釣り合い位置の望ましい位置関係の説明図である。
【図9】表1〜表3は、それぞれ、釣り合い良さとカッター刃21の寿命との関係を調べる実験の実験水準を示す表である。
【図10】実験結果のグラフである。
【図11】2面釣り合い試験機の説明図である。
【図12】修正おもりWcL,WcRの求め方の説明図である。
【図13】表4は、修正おもりWcL,WcRの計算例を説明すべく同計算に用いる計測データである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
カッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、を有し、
前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いに前記搬送方向に沿って回転しながら、前記カッターロールと前記アンビルロールとの間に前記ワークを通過させることによって前記ワークを切り、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの少なくとも一方のロールについて、JISB0905に規定される釣り合い良さ(m/sec)の前記ロールの回転軸方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、前記ロールの動バランスを修正する動バランス修正部を有していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、少なくとも前記一方のロールについて、釣り合い良さの前記和が6以下になるように動バランスが修正されている。よって、ロールの回転振動を大幅に低減し、カッター刃の長寿命化を図ることができる。
【0014】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの両方のロールについて、JISB0905に規定される釣り合い良さの前記ロールの回転軸方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、前記両方のロールのうちの一方のロール又は両方のロールの動バランスを修正する動バランス修正部を有しているのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、カッターロール及びアンビルロールの両方のロールについて、釣り合い良さの前記和が6以下になる。よって、これら両方のロールの回転振動を大幅に低減し、これにより、カッター刃の長寿命化を確実に図ることができる。
【0015】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いに上下に並んで配置され、
前記カッターロールの回転軸周りの回転方向と前記アンビルロールの回転軸周りの回転方向とは、互いに逆向きとなっており、
前記カッターロールと前記アンビルロールとの両者には、それぞれの外周面において互いに対向する所定の基準位置を起点として、それぞれの回転方向に沿って0°〜360°の回転角度位置が対応付けられているとともに、
前記カッターロールと前記アンビルロールとの間に前記ワークを通過させて前記ワークを切る際には、前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いの前記回転角度位置が揃うように回転され、
前記一端側及び前記他端側の釣り合い良さの各値は、それぞれ、JISB7737に定める2面釣り合い試験機を用いて測定された残留不釣り合い量に基づいて算出され、
前記カッターロール及び前記アンビルロールのうちの一方のロールを第1ロールとし、他方のロールを第2ロールとした場合に、
前記第1ロールの一端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置と、他端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置との両者が、前記回転角度位置の90°〜270°の範囲に入っており、
且つ、前記第2ロールの一端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置と他端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置との両者が、前記回転角度位置の270°〜360°又は0°〜90°の範囲に入っているのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、各ロールの残留不釣り合い量に起因した遠心力の作用方向を概ね揃えることができる。つまり、カッターロールの残留不釣り合い量の遠心力の向きが上方を向いている時には、アンビルロールの残留不釣り合い量の遠心力の向きも概ね上方を向き、且つ、カッターロールの残留不釣り合い量の遠心力の向きが下方を向いている時には、アンビルロールの残留不釣り合い量の遠心力の向きも概ね下方を向くようになる。よって、カッターロールとアンビルロールとの間の距離は概ね一定に保たれ易くなり、もって、所定の回転角度位置において、周期的に強い当たりが生じる等の現象が起きにくくなり、カッターロールの全周に亘って切断荷重の均等化を図ることができる。その結果、カッター刃やアンビルロールの外周面の局所的摩耗等が有効に抑制され、カッター刃の長寿命化を図ることができる。
【0016】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記動バランスが修正されるロールは、該ロールの表層部と、前記表層部よりも内側の中心側部分とが互いに別素材で構成され、
前記表層部の硬度は、前記中心側部分の硬度よりも高く、
前記中心側部分の前記回転軸に沿う方向の端面は、前記動バランス修正部としての穴部を有し、前記穴部が形成されることにより、前記ロールの動バランスが修正されているのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、硬度の低い中心側部分の端面に穴部を形成することにより、容易に動バランスを修正することができる。
【0017】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記ワークを切るとは、前記ワークから、前記ワークの一部を所定の打ち抜き形状に打ち抜くことであり、
前記カッター刃は、前記打ち抜き形状に対応して前記カッターロールの外周面に閉じた領域を区画し、
前記端面の穴加工によってバランス修正される前記ロールは、前記アンビルロールであり、
前記アンビルロールの外周面において前記カッター刃の前記閉じた領域と対向する領域には、吸気する複数の空気孔が形成されているとともに、前記アンビルロールの内部には、前記空気孔に連通して前記空気孔から空気を吸う空気流路が、前記アンビルロールの一端側の端面と、前記空気孔とを繋ぐように、前記回転軸に沿って形成されているのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、上述の作用効果を有効の享受することができる。詳しくは次の通りである。アンビルロールには、その内部に上述の空気孔や空気流路が形成されているので、動バランスが取れておらず、大きな回転振動を誘発する虞がある。また、ロールの端面には、空気流路の末端が存在し、ロールの端面に、動バランス修正部をなす円板状のバランスウエイトを取り付けると、空気流路を塞いでしまう場合があるので、同バランスウエイトを、ロールの端面に容易に取り付けることはできない。つまり、バランスウエイトを用いた動バランスの修正を行い難い。しかし、上述の構成によれば、アンビルロールの端面における前記中心側部分は、硬度が低く、直接穴加工を行うことができる。よって、当該直接の穴加工により、バランスウエイトを用いること無く、動バランスの修正を行うことができて、結果、上述の作用効果を有効に享受することができるのである。
【0018】
===本実施形態===
図1A及び図1Bは、本実施形態に係るカッター装置10の説明図である。図1Aは、カッター装置10の概略正面図であり、図1Bは同側面図である。また、図2は、カッター装置10が半製品1aを打ち抜く様子を示す概略上面図である。
図2に示すように、カッター装置10は、吸収性物品の一例としてのパンツ型の大人用使い捨ておむつ1の製造ラインで使用される。そして、この例では、カッター装置10は、搬送方向に連続搬送される不織布等の柔軟な連続シート状部材の半製品1a(ワークに相当)に、おむつ1の製品ピッチP1でおむつ1の脚周り開口部1hを打ち抜き形成する。
【0019】
但し、半製品1aは何等連続シート状部材に限るものではなく、つまり、おむつ1の製品に相当する単位で分かれて個別搬送されるものでも構わない。なお、その場合には、半製品1aを搬送する搬送機構としては、搬送ローラー101に代えて、サクションコンベア(載置面に吸着機能を有したベルトコンベア)等が使用される。また、半製品1aを切る態様も、打ち抜きに限るものではなく、連続シート状部材を製品単位に分断しても良いし、半製品1aの一部に切り込みを入れるだけでも良い。
【0020】
以下では、かかる半製品1aの搬送方向のことを「MD方向」とも言い、更にMD方向と直交する方向のうちで、半製品1aの厚み方向ではない方向(半製品1aが連続シート状部材の場合には当該シート状部材の幅方向)のことを「CD方向」とも言う。また、CD方向については、その一方側を左側(L側)、他方側を右側(R側)とも言う。
【0021】
図1A及び図1Bに示すように、カッター装置10は、軸受け部材12を介してCD方向に平行な回転軸C20周りに回転可能に支持された上ロールとしてのカッターロール20と、カッターロール20の下方に配置されて、軸受け部材14を介してCD方向に平行な回転軸C40周りに回転可能に支持された下ロールとしてのアンビルロール40と、これら上下一対のロール20,40を駆動回転する駆動機構60と、半製品1aから打ち抜かれた打ち抜き片を半製品1aから分離して回収する回収機構70と、を有する。
【0022】
そして、搬送方向たるMD方向に沿って互いに駆動回転するカッターロール20とアンビルロール40との間に、同MD方向に沿って半製品1a(図1A及び図1Bでは不図示)を通す際に、カッターロール20の外周面20sのカッター刃21とアンビルロール40の外周面40sとで半製品1aを挟むことにより、半製品1aには、脚周り開口部1hが打ち抜き形成される。なお、打ち抜かれた打ち抜き片は、回収機構70によって、半製品1aから分離されて、製造ライン外へと排出される。また、上述のようにカッターロール20とアンビルロール40とが互いにMD方向に沿って回転する場合には、カッターロール20の回転軸C20周りの回転方向(図示例では反時計回り)と、アンビルロール40の回転軸C40周りの回転方向(図示例では時計回り)とは、互いに逆向きである。以下、各構成要素20,40,60,70について説明する。
【0023】
図3A及び図3Bは、それぞれカッターロール20及びアンビルロール40の正面図である。
カッターロール20は、ロール本体たるロール胴部22と、そのCD方向の両端部にそれぞれ同芯に突出形成された小径部23,23と、を有する。各小径部23には、上述の軸受け部材12が配される。一方、ロール胴部22の外周面20sには、カッター刃21が設けられている。カッター刃21は、打ち抜くべき形状たる脚周り開口部1hの形状に倣って外周面20sから突出して設けられており、これにより、カッター刃21は、脚周り開口部1hの形状に対応した閉じた領域A21を外周面20s上に区画している。以降、この閉じた領域A21のことを、カッター刃区画領域A21とも言う。
また、カッター刃21の先端の周回半径は、例えば、おむつ1の製品ピッチP1を2π(円周率の2倍の値)で除算した値に概ね等しくなるように設定されており、これにより、カッターロール20が1回転すると、半製品1aは、略製品1ピースに相当する長さP1だけMD方向に送られる。
【0024】
ここで場合によっては、図3Aに示すように、ロール胴部22の外周面20sにベアラ部25,25を有していても良い。ベアラ部25とは、ロール胴部22のCD方向の両端部にそれぞれ設けられた大径部のことである。そして、カッター装置10の定常運転時には、当該ベアラ部25,25がアンビルロール40の外周面40sに圧接される。このベアラ部25の周面(アンビルロール40に圧接される面)の半径は、例えばカッター刃21の先端の周回半径と同値、又は切断時の切断荷重によるカッター刃21の撓み変形分だけ小さく設定される。但し、カッター刃21の切断性を阻害せずにベアラ部25をアンビルロール40の外周面40sに圧接可能であれば、何等上述の同値等に限るものではなく、例えば、ベアラ部25の周面の半径の方が、カッター刃21の周回半径より大きくても良い。
【0025】
アンビルロール40も、ロール本体たるロール胴部42と、そのCD方向の両端部にそれぞれ同芯に突出形成された小径部43,43と、を有する。そして、各小径部43には、上述の軸受け部材14が配される。ロール胴部42は、例えばその外周面40sがCD方向にフラットな平ロール状である。すなわち、この例では、ロール胴部42の半径は、CD方向の略全長に亘り同径となっている。但し、カッター刃21の切断性やベアラ部25に対する圧接性が阻害されない範囲であれば、ロール胴部42の外周面40sのロールプロフィール(輪郭形状)をフラットから変更しても良い。
また、ロール胴部42の外周面40sの所定領域A45には、複数の空気孔45,45…が形成されている。これら空気孔45,45…は、半製品1aから打ち抜いた打ち抜き片を回収する回収機構70の一部として機能する。これについては回収機構70のところで説明する。
【0026】
このようなカッターロール20とアンビルロール40とは、油圧シリンダー17,17等の圧接機構により、互いのロール胴部22,42にて圧接される。図1A及び図1Bを参照して詳しく説明すると、カッター装置10は、これらカッターロール20及びアンビルロール40を支持するためのハウジング部材15を有している。ハウジング部材15は、CD方向の両側にそれぞれ立設する略矩形の一対の枠体15a,15aを有し、各枠体15aの内側には、カッターロール20の小径部23とアンビルロール40の小径部43とがそれぞれ軸受け部材12,14に嵌った状態で上下に並んで配されている。また、アンビルロール40の各軸受け部材14,14と、対応する各枠体15a,15aとの間には、それぞれ油圧シリンダー17,17が介装されており、これら油圧シリンダー17,17の作動によってアンビルロール40は軸受け部材14,14を介して上下昇降可能に支持されている。よって、油圧シリンダー17,17を作動する作動油の油圧値を適宜設定すれば、枠体15a,15aから反力を得ながら、その油圧値に応じた圧接力でもって、カッターロール20とアンビルロール40とはロール胴部22,42にて圧接する。なお、かかる油圧シリンダー17は、カッターロール20の各軸受け部材12と、対応する各枠体15aとの間に介装しても良い。また、圧接機構として、油圧シリンダー17の代わりに、エアシリンダーや送りねじ機構を用いても良い。
【0027】
駆動機構60は、駆動源としての不図示のモータと、このモータの駆動回転力をカッターロール20に伝達すべくモータの駆動回転軸とカッターロール20の端部とを同芯に連結するユニバーサルジョイントの如き軸継手61と、カッターロール20の駆動回転力をアンビルロール40に伝達してアンビルロール40を駆動回転する駆動伝達用ギア63,63と、を有する。駆動伝達用ギア63,63は、カッターロール20の小径部23の端部及びアンビルロール40の小径部43の端部の両者にそれぞれ設けられ、これらギア63,63同士が噛み合うことにより、駆動回転力がアンビルロール40へと伝達される。
ここで、そのギア比(回転比)は1:1であり、もって、カッターロール20とアンビルロール40とは、互いの回転回数が等しくなるように回転する。また、カッターロール20のカッター刃21の周回半径と、アンビルロール40のロール胴部42の半径とは等しく設定されている。
【0028】
よって、図4に示すように、カッターロール20とアンビルロール40とを周方向(回転方向)における互いの基準位置P20,P40同士で圧接するように上記ギア63,63を一度噛み合わせてしまえば、以降は、常に、互いに周方向における同じ部位同士が圧接するように対応付けられる。例えば、同図4のように、カッターロール20の所定の基準位置P20からθ°だけ回転方向の下流側に離れた位置をカッターロール20のθ°回転角度位置と定義し、同様に、アンビルロール40の所定の基準位置P40からθ°だけ回転方向の下流側に離れた位置をアンビルロール40のθ°回転角度位置と定義した場合には、カッターロール20の45°回転角度位置はアンビルロール40の45°回転角度位置に圧接し、カッターロール20の90°回転角度位置はアンビルロール40の90°回転角度位置に圧接し、かかる関係は、0°〜360°の任意の回転角度位置について成立する。そして、このような圧接位置の対応関係は、上述の駆動伝達用ギア63,63の噛み合い状態を解除しない限り維持される。なお、このことは、後述の回収機構70にも関係する。また、上述の各基準位置P20,P40の一例としては、図4に示すように、カッター刃区画領域A21の中心線及びこれと対向するアンビルロール40の外周面40sの部位が挙げられるが、これ以外の部位に設定しても良い。
【0029】
図5A乃至図5Cは、回収機構70の説明図である。図5Aは、アンビルロール40の正面図であり、図5Bは、アンビルロール40の中心縦断面図(図5C中のB−B断面図)であり、図5Cは、図5A中のC−C矢視図である。
回収機構70は、アンビルロール40のロール胴部42の外周面40sに形成された複数の空気孔45,45…を有する。これら空気孔45,45…は、カッターロール20のカッター刃に21よって半製品1aから打ち抜かれた打ち抜き片を半製品1aから分離すべく吸気してアンビルロール40の外周面40sに保持させ、そして、分離後のしかるべきタイミングで排気して同打ち抜き片を外周面40sから離すように構成されている。
【0030】
詳しくは、図5Bに示すように、これら空気孔45,45…は、アンビルロール40の内部にCD方向に沿って形成された空気流路47,47…に連通しており、これら空気流路47,47…は、アンビルロール40のロール胴部42の一端面42aに達している。そして、この一端面42aの近傍には、吸排気ドラム72が配置されており、この吸排気ドラム72は、アンビルロール40の回転方向の位置に対応付けて、空気流路47,47…に空気を供給したり、空気流路47,47…から空気を吸引したりする。例えば、吸排気ドラム72は、図4に示すようなアンビルロール40の回転方向においてカッターロール20と対向する上半部の範囲では、空気流路47から空気を吸引し、カッターロール20と対向しない下半部の範囲では、空気流路47に空気を供給する。これにより、アンビルロール40の各空気孔45は、上半部を通過する際には吸気して、半製品1aから打ち抜かれた打ち抜き片を半製品1aから分離して外周面40sに保持させ、しかる後に、下半部を通過する際には打ち抜き片へ空気を噴射して、外周面40sに保持している打ち抜き片を外周面40sから離して適宜な不図示の回収箱へと落とす。
【0031】
これら空気孔45,45…は、図5Aに示すようにアンビルロール40の外周面40sにおいて、打ち抜くべき形状たる脚周り開口部1hの形状に対応して配されており、これにより、外周面40sにおけるCD方向の略中央には空気孔配置領域A45(点線で囲む領域を参照)が形成されている。また、アンビルロール40の周方向については、空気孔配置領域A45は、略半周分の領域のみに亘って存在し、残りの略半周分の領域には存在していない。これは、図2に示すように、半製品1aにおける脚周り開口部1hが、MD方向に関して製品1ピースのうちの略半分の領域を占めているためである。
【0032】
このような空気孔配置領域A45は、上述の駆動伝達ギア63,63の噛み合わせによって、カッターロール20のカッター刃区画領域A21の回転角度位置に対応付けられ、これにより、空気孔配置領域A45が、圧接位置を通過する際には、常にカッターロール20のカッター刃区画領域A21と対向し、もって、カッター刃21に打ち抜かれた打ち抜き片を空気孔配置領域A45が確実に保持するようになっている。
【0033】
<<<カッターロール20及びアンビルロール40の動バランスの修正について>>>
これらカッターロール20及びアンビルロール40は、カッター刃21の寿命延長の観点から、動バランスを修正する必要がある。すなわち、各ロール20(40)の重心を、ロール20(40)の回転軸C20(C40)に近づけて極力一致させる必要がある。これは、回転軸C20(C40)と重心とが大きくずれている場合には、ロール20(40)が回転振動してしまい、これにより、カッター刃21がアンビルロール40の外周面40sに局所的に激しく当たる等して、カッター刃21が欠損や摩耗等し易くなり、結果、カッター刃21の寿命が短くなるためである。
【0034】
ちなみに、本実施形態のカッター装置10の場合の重心がずれる要因としては、例えば、カッターロール20にあっては、カッター刃21が回転軸C20に関して非対称に設けられていること等が挙げられ、また、アンビルロール40にあっては、前述の空気孔45や空気流路47が、回転軸C40に関して非対称に形成されていること等が挙げられる。
【0035】
この動バランスの指標としては、日本工業規格JISB0905に規定された「釣り合い良さ」がある。そして、本実施形態では、この釣り合い良さの概念を参考にして、カッターロール20及びアンビルロール40の両方につき、ロールの釣り合い良さのCD方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、各ロール20,40の動バランスが必要に応じて修正されている。
【0036】
これにより、カッターロール20及びアンビルロール40の回転振動は抑制されて、カッター刃21の寿命が、ほぼ最長レベルまで延長される。なお、上記和を6以下にすることで、寿命をほぼ最長レベルまで延長可能な根拠については後述する。
【0037】
ここで、釣り合い良さの算出方法について説明する。JISB09050によれば、釣り合い良さは、下式1で定義される。
釣り合い良さ(mm/sec)=e×ω
=e×2π×n/60
=e×n/9.55 …(1)
なお、上式1中のωは回転の角速度(rad/sec)であり、nはロールの回転速度(min-1)であり、eは比不釣り合い(偏重心距離)(mm)である。
ロールの回転速度nは、半製品1aをカッターロール20とアンビルロール40で打ち抜く時の最大回転速度であり、つまり、定常運転時(生産時)の最大回転速度である。
また、比不釣り合いeは、不釣り合いU(kg・m)とロール質量M(kg)とを用いて、下式2で表される。
比不釣り合いe(mm-1)=U/M …(2)
更には、不釣り合いUは、下式3で表される。
不釣り合いU(kg・m)=残留不釣り合い量(kg)×バランス修正半径(mm)…(3)
よって、式1に式2及び式3を順次代入すると、釣り合い良さは下式4のように表される。
釣り合い良さ(mm/sec)=(U/M)×n/9.55
=残留不釣り合い量×バランス修正半径/M×n/9.55 …(4)
ここで、残留不釣り合い量(kg)は、日本工業規格JISB7737に定められた2面釣り合い試験機を用いて、ロールのCD方向の一端側及び他端側のそれぞれについて計測して取得される。なお、2面釣り合い試験機を用いた残留不釣り合い量等の計測方法については後述する。
また、バランス修正半径の値としては、カッターロール20の場合には、カッター刃21の刃先の周回半径が設定され、アンビルロール40の場合には、ロール胴部42の半径が設定される。この理由は、回転振動が問題となるのはロール表面であるからである。つまり、カッターロール20の刃先とアンビルロール40のロール胴部42とが、これらロール20,40の間を通過する半製品1aに接触して切断するため、カッターロール20の刃先の周回半径とアンビルロール40のロール胴部42の半径で算出すれば、両ロール20,40が半製品1aを切断するときの振動を検出する事が可能である。
そして、計測された残留不釣り合い量やバランス修正半径を、式4に代入すれば、算出対象のロールの釣り合い良さが、CD方向の一端側及び他端側のそれぞれについて求められ、そして、これら一端側及び他端側の釣り合い良さの和が、本実施形態に係る動バランスの指標たる上記和として求められる。
【0038】
例えば、計算の具体例を、後述する表1(図9を参照)の動バランス修正前のアンビルロール40の場合で説明すると、先ず、計算に必要な一端側(L側)及び他端側(R側)の各残留不釣り合い量、バランス修正半径、ロールの質量、及びロールの回転速度は、表1に示されている。よって、これらの数値を式4に代入すると、表1のアンビルロール40の一端側及び他端側の各釣り合い良さは、以下のように算出される。
一端側の釣り合い良さ(mm/sec)=1.203×95/300×200/9.55
=7.98(mm/sec)
他端側の釣り合い良さ(mm/sec)=0.605×95/300×200/9.55
=4.01(mm/sec)
よって、これら一端側及び他端側の釣り合い良さの和は、11.99(=7.98+4.01)のように求められる。
【0039】
そして、当該和の値が6を超えるロールを対象として動バランスの修正を行って、各ロール20,40につき前記和の値が6以下となるようにすることにより、カッター刃21の長寿命化が図られた本実施形態のカッター装置10を実現している。
【0040】
ここで、動バランスの修正は、次のようにして行われる。図6Aには、その説明図として、図3A中のVIa−VIa矢視図を示し、図6Bには、図3B中のVIb−VIb矢視図を示している。また、以下では、修正対象のロールがカッターロール20の場合を例に説明するが、アンビルロール40の場合も同様である。
【0041】
先ず、図3Aに示すように、修正対象のロール20のロール胴部22のCD方向の両端面22a,22aにそれぞれバランスウエイト50,50を取り付ける。具体的には、図6Aに示すように、バランスウエイト50は、例えば正円形状の金属円板であり、その平面中心部には、円心C50と同芯の貫通孔50hが形成されている。よって、図3Aのように、この貫通孔50hにロール20の小径部23を通してバランスウエイト50をロール胴部22の端面22aに当接させた状態で小径部23にボルト止めして、これにより、バランスウエイト50をロール20に一体に固定する。
【0042】
次に、CD方向の一端側の残留不釣り合い量に基づいて、図6Aに示すように、一端側のバランスウエイト50に穴加工を施して穴部57(動バランス修正部に相当)を形成し、これにより、動バランスを修正する。すなわち、残留不釣り合い量が検出された回転角度位置(以下、不釣り合い位置とも言う)に対応するバランスウエイト50の部分に穴部57を形成して、同回転角度位置の質量を選択的に除去することで、CD方向の一端側の動バランスの修正をする。例えば、図9の表1の場合には、一端側たる左側の残留不釣り合い量が355°の回転角度位置であるので、バランスウエイト50における355°の回転角度位置の部分に穴部57を形成する。
【0043】
また、CD方向の他端側(右側)についても、同様の方法で、他端側(右側)の残留不釣り合い量及び不釣り合い位置に基づき、他端側(右側)のバランスウエイト50に穴部57を形成して動バランスを修正する。
【0044】
ちなみに、上述の不釣り合い位置に係る回転角度位置とは、図4で前述したように、各ロール20(40)に予め定められた基準位置P20(P40)を起点としてその回転方向に沿って順次0°〜360°の各値が対応付けられた角度座標である。また、同じく前述したことではあるが、上記の回転方向は、例えば、カッターロール20が反時計回りの場合には、アンビルロール40は時計回りであり、つまり互いに逆向きである。また、定常運転時には、回転するカッターロール20とアンビルロール40とは、常に基準位置P20,P40同士等の互いに対応する回転角度位置同士で圧接することも、前述した通りである。
【0045】
そうしたら、このロール20を、2面釣り合い試験機に設置して、このロール20の釣り合い良さを、CD方向の左右の両側のそれぞれについて再度計測する。そして、計測された釣り合い良さの和が6以下になっていれば、終了するが、6を超えている場合には、上述の動バランスの修正を再度行う。そして、かかる作業を、釣り合い良さの和が6以下になるまで繰り返す。
【0046】
そして、このような動バランスの修正作業を、必要に応じてカッターロール20及びアンビルロール40の少なくとも一方に対して行って、これら両方のロール20,40に対して、それぞれ、釣り合い良さの和を6以下にすれば、本実施形態のカッター装置10が実現されることになる。
【0047】
つまり、動バランス修正の対象ロールは、カッターロール20及びアンビルロール40の両者である必要はなく、どちらか一方だけでも良い。例えば、どちらか一方のロールが、動バランスの修正無しに釣り合い良さの和が6以下を満足している場合には、もう一方の満足していないロールに対してのみ動バランス修正部57を形成して動バランスを修正すれば良い。
【0048】
ここで、ロールの構造によっては、バランスウエイト50を用いずに、ロール胴部22(42)の端面22a(42a)に直接穴加工を施すことにより、動バランスの修正をしても良い。図7A及び図7Bは、その説明図であり、それぞれ、カッターロール20の正面図及びアンビルロール40の正面図を示している。
【0049】
例えば、ロール20(40)の構造が、回転軸C20(C40)を内包する円柱状の中心側部分たる軸部122(142)と、軸部122(142)の外周面を略均等に覆って一体に設けられた表層部124(144)とを有する場合であって、軸部122(142)が表層部124(144)よりも硬度の低い材料で構成されているような場合には、ロール胴部22(42)の端面22a(42a)に露出する軸部122(142)に直接穴加工を施して穴部57(動バランス修正部に相当)を形成することにより、動バランスの修正を行っても良い。そして、かかるロール構造によれば、硬度の高い表層部124(144)を加工せずに済むので、修正作業が楽になる。
【0050】
なお、表層部124(144)の硬度を高くする理由としては、カッターロール20の場合には、カッター刃21の耐久性を高めるためであり、また、アンビルロール40の場合には、その外周面40sでカッター刃21を受けるためである。
【0051】
より具体的にロール構造について説明すると、本実施形態の場合には、カッターロール20は、その軸部122としてSCM440製の円柱体を用い、この軸部122のCD方向の中央部には、表層部124として、カッター刃21を有した超硬合金製のスリーブ124aを嵌合し、同中央部の両側にはSKD11製のスリーブ124bを嵌合し、更にその両脇には、ベアラ部25となる超硬合金製のリング部材124cを表層部124として嵌合して構成されている。また、アンビルロール40も、その軸部142としてSCM440製の円柱体を用い、この軸部142のCD方向の中央部には、カッター刃21の受け刃となる超硬合金製のスリーブ144aを表層部144として嵌合し、同中央部の両側にはSKD11製のスリーブ144bを嵌合し、更にその両脇には、ベアラ部25を受ける部分となる超硬合金製のリング部材144cを表層部144として嵌合して構成されている。
【0052】
よって、カッターロール20及びアンビルロール40のどちらも、ロール胴部22(42)の端面22a(42a)には、超硬合金よりも硬度の低いSCM440製の軸部122(142)が露出しており、これにより、当該端面22a(42a)に動バランス修正部としての穴部57を比較的容易に加工可能となる。
【0053】
ちなみに、上述の嵌合については、基本的にスリーブ124a,124b(144a,144b)及びリング部材124c(144c)の全てを締まり嵌めで軸部122(142)に固定するのが良いが、SKD11製のスリーブ124b(144b)については、すきま嵌めや中間嵌め等にしてビス止めで軸部122(142)に固定しても良い。
【0054】
また、このロール胴部22(42)の端面22a(42a)に直接穴部57を加工するという方法を用いれば、特にアンビルロール40については、その動バランスの修正を格段に行い易くなる。これは、図5A及び図5Bで前述したように、アンビルロール40の場合には、ロール胴部42の一端面42aに吸排気ドラム72が対向配置される関係上、ロール胴部42の一端面42aに当接させてバランスウエイト50を設けようとすると、吸排気ドラム72と干渉し、吸排気ドラム72の改造も必要になるからである。そのため、特にアンビルロール40の場合には、上述の如きロール胴部42の端面42aに直接穴部57を形成する方法が有効となるのである。そして、本実施形態のカッター装置10にあっては、図3B及び図6Bに示すように、アンビルロール40のCD方向の左端側の動バランス修正を、この方法で行っており、つまり、ロール胴部42の端面42aに直接穴部57を形成し、これを動バランス修正部57としている。但し、不釣り合い位置によっては、端面42aに動バランス修正部57を凹設する際に、空気流路47の位置と干渉する虞があるが、その場合には、図6Bに点線で示すように、端面42aにおける空気流路47の位置よりも径方向の内方に動バランス修正部57を凹設すれば良い。
【0055】
また、このような図3Bの構成の場合には、CD方向の右側にのみバランスウエイト50が設けられることとなって、左右の重量バランスが悪くなるが、左右の重量バランスの回転振動への影響は比較的軽度であり、大きな問題ではない。
【0056】
なお、場合によっては、アンビルロール40に対してバランスウエイト50を用いても良いのは言うまでもなく、その場合には、バランスウエイト50におけるロール胴部42の空気流路47,47…に対応する位置に、同空気流路47,47…と連通する貫通孔が形成され、また、吸排気ドラム72もバランスウエイト50と干渉しないような改造品が設けられることになる。
【0057】
ところで、上述の2面釣り合い試験機では、残留不釣り合い量の計測に伴って、当該残留不釣り合い量が位置する回転角度位置、つまり不釣り合い位置も計測されているが(例えば、図9の表1〜表3を参照)、当該不釣り合い位置に関しては、望ましくは、動バランスの修正後に、次のような位置関係になっていると良い。
【0058】
カッターロール20及びアンビルロール40のうちの一方のロール20(40)を第1ロールとし、他方のロール40(20)を第2ロールとした場合に、第1ロール20(40)のCD方向の一端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置と、他端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置との両者が、回転角度位置の90°〜270°の範囲に入っており、且つ、第2ロール40(20)のCD方向の一端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置と他端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置との両者が、回転角度位置の270°〜360°又は0°〜90°の範囲に入っている。
【0059】
そして、このような位置関係になっていれば、各ロール20,40の残留不釣り合い量に起因した遠心力の作用方向を概ね揃えることができて、各ロール20,40の回転振動の切断荷重への影響が相殺される。
【0060】
例えば、後述する図9の表3の場合には、各ロール20,40の残留不釣り合い位置は、図8のような位置関係になっており、上述の位置関係を満たしている。そして、かかる位置関係によれば、カッターロール20の残留不釣り合い量の遠心力の向きが下方を向いている時には、アンビルロール40の残留不釣り合い量の遠心力の向きも概ね下方を向き、且つ、カッターロール20の残留不釣り合い量の遠心力の向きが上方を向いている時には、アンビルロール40の残留不釣り合い量の遠心力の向きも概ね上方を向くようになる。これにより、カッターロール20とアンビルロール40との間の距離は概ね一定に保たれ易くなり、もって、所定の回転角度位置において、周期的に強い当たりが生じる等の現象が起きにくくなり、カッターロール20の全周に亘って切断荷重の均等化を図ることができる。その結果、カッター刃21やアンビルロール40の外周面40sの局所的摩耗等が有効に抑制されて、カッター刃21等の寿命延長を図ることができる。また、カットミスも起き難くなる。
【0061】
<<<釣り合い良さの和とカッター刃21の寿命との関係>>>
ここで、釣り合い良さの和とカッター刃21の寿命との関係について説明する。この関係を調べるべく、実験を行っている。
先ず、実験方法について説明する。図9の表1〜表3に各実験水準を示すが、釣り合い良さの和を、3水準で振っている。
表1は、第1水準のロール20,40の諸元である。この第1水準の各ロール20,40は、動バランスの修正を行っていないものであり、これらロール20,40について、それぞれ、釣り合い良さの和を計測したところ、同表1の右部に示すように、カッターロール20については1.68であり、アンビルロール40については11.99であった。
【0062】
表2は、第2水準のロール20,40の諸元である。この第2水準は、第1水準のロール20,40のうちアンビルロール40に対してのみ、動バランスを修正したものである。そして、動バランスの修正後のアンビルロール40の釣り合い良さの和は、同表2の右部に示すように、6.13であった。
【0063】
表3は、第3水準のロール20,40の諸元である。この第3水準は、第2水準のロール20,40の両方のロールに対して、更に動バランスを修正したものである。そして、動バランスの修正後に釣り合い良さの和を計測したところ、同表3の右部に示すように、カッターロール20については0.04であり、アンビルロール40については1.12であった。
【0064】
ちなみに、これらの実験水準は、カッターロール20の釣り合い良さの和を、回転振動の問題の無いレベルの一定値(1.68、1.68、0.04)にほぼ維持しながら、アンビルロール40の方の釣り合い良さの和の値を、3水準(11.99、6.13、1.12)で大きく振ったものと捉えることができる。つまり、一方のロール40の釣り合い良さの和のみを変化させて、その寿命に及ぼす影響を評価可能な実験水準である。
【0065】
他方、カッター刃21の寿命については、各実験水準のロール20,40をカッター装置10内に組み込んで、実際に半製品1aから脚周り開口部1hを連続して打ち抜き、カットミスが2ピース以上連続して発生した時点の累積カット回数で評価した。
但し、その際、実験開始時の油圧シリンダー17の油圧値にあっては、定常運転時に用いる設定値にセットしておき、そして、カットミスが発生する度にカットミスがおさまるレベルまで油圧値を上昇させ、最終的に油圧値を上限値まで上昇させた後に、2ピース以上連続してカットミスが発生した時点の累積カット回数を、上記の評価に供する累積カット回数、つまり寿命とした。また、半製品1aとしては、坪量が20〜50(g/m)でポリプロピレン繊維から成る不織布を2枚重ねにし、接着したものを使用した。
【0066】
図10に、実験結果のグラフを示す。グラフの横軸には釣り合い良さの和を取り、縦軸には累積カット回数を取っている。なお、ここでは、グラフのプロット点に係る釣り合い良さの和の値としては、上述したことから、アンビルロール40の釣り合い良さの和を使用している。
【0067】
図10のグラフより、釣り合い良さの和の値が小さい程、カット刃21の寿命が長くなることがわかる。また、釣り合い良さの和の値が「6」の辺りで、寿命はほぼ一定となっており、つまり、6以下の範囲では、寿命の延長効果が飽和しているのがわかる。よって、釣り合い良さの和が6以下になるように動バランスを修正することにより、寿命をほぼ最長レベルまで延長可能であると考えられる。
【0068】
なお、図9の表2と表3とを比較すると、カッターロール20の釣り合い良さは1.68と0.04というように相違しているが、この相違によっても、カッター刃21の寿命は1300万ピース→1400万ピースというようにほぼ変化しておらず、概ね飽和している。つまり、1.68と0.04との差が、寿命に与える影響は小さいと考えられる。
【0069】
よって、この図10のグラフは、カッターロール20の釣り合い良さの条件を、その影響が小さくなる1.68に概ね揃えながら(若しくは、釣り合い良さの影響が小さくなる1.68以下に収めて)、アンビルロール40の釣り合い良さの条件のみを11.99、6.13、1.12の3水準で振った実験結果と捉えても問題ないと思量される。また、回転振動の寿命に与える影響は、カッターロール20とアンビルロール40との間では互いに等価であると考えられることから、上述の傾向は、カッターロール20についても当てはまると考えられる。従って、ロール毎に釣り合い良さの和がカッター刃21の寿命に及ぼす影響を、このグラフに基づいて評価するのは適当であると考えられる。
【0070】
<<<残留不釣り合い量、及び不釣り合い位置の計測方法>>>
ここで、2面釣り合い試験機による残留不釣り合い量、及び不釣り合い位置の計測方法について説明する。
【0071】
これらの計測には、JISB7737に規定された2面釣り合い試験機が使用される。この試験機の一例としては、アカシ社(ミツトヨ社)製の力検出形動釣合い試験機(型式GH−528C−C1)等が挙げられる。この試験機は所謂ソフトタイプであり、つまり、計測対象のロールを軟支持軸受けで支承しつつ、同ロールを回転させるものであり、これにより、回転時のロールの上下振動を計測して残留不釣り合い量等に換算する。
【0072】
詳しくは、先ず、試験機にバランス修正半径を入力する。そして、図11の正面図に示すように、計測対象のロール40を、その両端の小径部43(軸受け部材14にて支持される被支持部分)にて前記軟支持軸受け91,91により回転自在に支持し、試験機付属のモータ(不図示)によりロール40を前述の回転速度nで回転軸C40周りに回転し、不釣り合いによる上下振動を発生させる。そうしたら、この上下振動を前記小径部43の外周面に対向配置された振動計93、93により検出し、検出された上下振動をコンピュータ(不図示)で演算して、L側の端面42aの位置の上下振動及びR側の端面22aの位置の上下振動に換算する。そして、これら上下振動のデータをそれぞれコンピュータが演算して、残留不釣り合い量と、その位相(回転角度位置)たる不釣り合い位置との両者を、L側及びR側のそれぞれについて求め、試験機のディスプレイ等に表示する。かかる計測を、アンビルロール40だけでなくカッターロール20に対しても行い、これにより、前述の表1〜表3中の残留不釣り合い量及び不釣り合い位置の各値が取得される。
【0073】
このロール胴部42の各端面42aの位置の上下振動のデータから残留不釣り合い量及び不釣り合い位置を求める演算の説明は、複雑なので、ここでは、その求める原理について説明する。なお、上述のコンピュータでは、以下で説明することを、数値演算で行っているのは言うまでもない。
【0074】
先ず、ロール胴部42の各端面42aの位置の上下振動の計測データからは、各端面42aの位置での振幅と、この振幅の位相とがわかる。位相は、前述の回転角度位置と同じ定義である。そして、所謂影響係数法を用いれば、前記振幅及び前記位相から、対象のロール40をバランス修正するための修正おもりの条件を求めることができる。
【0075】
ここで、この修正おもりと、残留不釣り合い量とは、ロール40の回転軸C40に関して互いに点対称の位置関係にある。よって、修正おもりが求まれば、残留不釣り合い量等も求めることができる。
また、この影響係数法を用いた修正おもりの求め方については、例えば、非特許文献「回転機械の振動−実用的振動解析の基本−(Vibration of Rotating Machinery−Fundamentals of Practical Vibration Analysis−)松下修己 田中正人 神吉博 小林正生共著 発行所 株式会社コロナ社 2009年10月2日初版第1刷」のP.103−P.135、特にP.131−P.133の「5・8 2面バランスの解法」に詳しく記載されている。
よって、以下では、この記載内容を適宜流用しながら、修正おもりの求め方の説明を通して、残留不釣り合い量等の求め方を説明することにする。
【0076】
図12に示すようなロール40を、L側とR側との2面でバランス修正する場合には、ロール40を回転し、先ず、L側及びR側の各修正面42a(バランス修正をする対象の面42aであり、前述のロール胴部42の端面42aに相当)にて上下振動を計測する。そして、これら上下振動の計測データをそれぞれ初期振動L0及び初期振動R0として取得する。次に、L側の修正面42aにのみ既知の試しおもりWtLを付ける。そして、ロール40を回転させて、L側及びR側の上下振動をそれぞれ計測し、これら上下振動の計測データをそれぞれ振動L1及び振動R1として取得する。最後に、L側の試しおもりWtLを外して、R側の修正面42aにのみ同既知の試しおもりWtRを付ける。そして、ロール40を回転させて、L側及びR側の上下振動をそれぞれ計測し、これら振動の計測データをそれぞれ振動L2及び振動R2として取得する。なお、試しおもりWtL,WtRは、例えば、バランス修正半径の位置に付けられる。
【0077】
そうしたら、ここで、次式5、6のように、影響係数間の複素係数α及びβを導入する。また、ここでは、図12のような図式計算も併用する。なお、以下に示すL0,L1,L2,R0,R1,R2,A,B,α,βは何れもベクトルであり、それらの加減算や乗除算は、ベクトルとしてなされる。
R1−R0=α(L1−L0)≡αA …(5)
L2−L0=β(R2−R0)≡βB …(6)
他方、左右二つの修正面42a,42aに付けるべき修正おもりWcL、WcRをそれぞれ、試しおもりWtL、WtRとの比θ、φで表すと、以下のようになる。
cL=θWtL …(7)
cR=φWtR …(8)
修正おもりWtL、WtRを決める比は、初期振動L0,R0の逆相のものを発生させるように設定すべきなので、次式9からその比が求まる。

そして、上式9より下式10が得られる。

従って、振動の計測データL0,L1,L2,R0,R1,R2を、式5及び式6を介して、上式10に代入してθ及びφを求め、これらθ,φを式7及び式8に代入すれば、試しおもりWtL,WtRは既知であるので、修正おもりWcL,WcRを算出することができる。
【0078】
これを具体的な計算例で説明する。先ず、前述した試験機によって、図13の表4に示すような上下振動の計測データL0,L1,L2,R0,R1,R2が得られたものとする。
【0079】
表4より、L0=4∠20°であり、R0=6∠300°である。なお、上述のベクトルL0に係る「4」は、ベクトルL0のスカラー量であり、∠20°は、図12の極座標におけるベクトルL0の向きである。また、ここでは、前述したように、ベクトルL0を単にL0と記すが、これは他のベクトルL1,L2,R0,R1,R2,A,B,α,β,1についても同様である。
【0080】
また、図12のベクトルの関係から、下式11,12が成立する。なお、下記のベクトルA等に係る「7」等のスカラー量や∠144°などの角度は、三角関数の余弦定理などを用いて計算で求めても良いが、図12を作図して、分度器や定規等で測っても良い。
L1−L0≡A=7∠144° …(11)
R1−R0≡αA=7.5∠155° …(12)
そして、これらの式11,12より、αが求められる。
α=αA/A=1.07∠11° …(13)
また、図13のベクトルの関係より、下式14,15が成立する。
R2−R0≡B=5.5∠102° …(14)
L2−L0≡βB=9∠265° …(15)
そして、これらの式14,15より、βが求められる。
β=βB/B=1.64∠163° …(16)
また、上記α、L0、β、R0に基づいて、それぞれ下式17,18、19が成立する。
αL0=4.28∠31° …(17)
βR0=9.84∠103° …(18)
αβ=1.75∠174° …(19)
よって、θ及びφは、以下のように求められる。

なお、上式20、21中の分母のベクトル「1」は、「1∠0°」の意味である。
【0081】
そうしたら、上記θ及びφの各値及び式7,8に基づき、また各試しおもりWtL,WtRは、図13の表4のように5g∠0°であることから、修正おもりWcL,WcRは、以下のように求められる。
{WcLcR}=θWtL+φWtR={2.6g∠345° 2.4g∠348°}
…(22)
【0082】
ここで、各修正おもりWcL,WcRは、ロール40の回転軸C40に関して、残留不釣り合い量と点対称の位置関係にある。よって、残留不釣り合い量及び不釣り合い位置は以下のように表される。
{WrLrR}={2.6g∠165° 2.4g∠168°} …(23)
つまり、L側の残留不釣り合い量は2.6gであり、同不釣り合い位置は165°であり、他方、R側の残留不釣り合い量は2.4gであり、同不釣り合い位置は168°であるというように求められる。
【0083】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0084】
前述の実施形態では、カッターロール20及びアンビルロール40の両方のロールについて、釣り合い良さの和が6以下になるように動バランスの修正をしていたが、何等これに限るものではない。例えば、どちらか一方のロール20(40)のみが動バランス修正によって6以下の条件を満足し、もう一方のロール40(20)の方は6以下の条件を満足していなくても良い。つまり、この場合には、6以下のロールに基づいてそれ相応の長寿命化を図れるので、この場合も本発明の範囲に含まれる。
【0085】
前述の実施形態では、カッターロール20はベアラ部25を有していたが、当該ベアラ部25は必須構成ではない。つまりベアラ部25を有しなくても良い。
【0086】
前述の実施形態では、吸収性物品の一例として、着用対象に装着されてその排泄液を吸収する使い捨ておむつ1を例示したが、尿や経血等の排泄液を吸収するものであれば何等これに限るものではなく、例えば生理用ナプキンやペットの排泄液を吸収するペットシート等でも良い。
【符号の説明】
【0087】
1 おむつ(吸収性物品、製品)、1a 半製品(ワーク)、1h 脚周り開口部、
10 カッター装置、12 軸受け部材、14 軸受け部材、
15 ハウジング部材、15a 枠体、17 油圧シリンダー、
20 カッターロール、20s 外周面、21 カッター刃、
22 ロール胴部、22a 端面、23 小径部、
25 ベアラ部、
40 アンビルロール、40s 外周面、
42 ロール胴部、42a 端面、43 小径部、
45 空気孔、47 空気流路、
50 バランスウエイト、50h 貫通孔、57 穴部(動バランス修正部)、
60 駆動機構、61 軸継手、63 駆動伝達ギア、
70 回収機構、72 吸排気ドラム、
91 軟支持軸受け、93 振動計、
101 搬送ローラー、
122 軸部(中心側部分)、124 表層部、
124a スリーブ、124b スリーブ、124c リング部材、
142 軸部(中心側部分)、144 表層部、
144a スリーブ、144b スリーブ、144c リング部材、
A21 カッター刃区画領域(閉じた領域)、A45 空気孔配置領域、
C20 回転軸、C40 回転軸、C50 円心、
P20 基準位置、P40 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
カッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、を有し、
前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いに前記搬送方向に沿って回転しながら、前記カッターロールと前記アンビルロールとの間に前記ワークを通過させることによって前記ワークを切り、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの少なくとも一方のロールについて、JISB0905に規定される釣り合い良さ(m/sec)の前記ロールの回転軸方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、前記ロールの動バランスを修正する動バランス修正部を有していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの両方のロールについて、JISB0905に規定される釣り合い良さの前記ロールの回転軸方向の一端側の値と他端側の値との和が6以下になるように、前記両方のロールのうちの一方のロール又は両方のロールの動バランスを修正する動バランス修正部を有していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いに上下に並んで配置され、
前記カッターロールの回転軸周りの回転方向と前記アンビルロールの回転軸周りの回転方向とは、互いに逆向きとなっており、
前記カッターロールと前記アンビルロールとの両者には、それぞれの外周面において互いに対向する所定の基準位置を起点として、それぞれの回転方向に沿って0°〜360°の回転角度位置が対応付けられているとともに、
前記カッターロールと前記アンビルロールとの間に前記ワークを通過させて前記ワークを切る際には、前記カッターロールと前記アンビルロールとは、互いの前記回転角度位置が揃うように回転され、
前記一端側及び前記他端側の釣り合い良さの各値は、それぞれ、JISB7737に定める2面釣り合い試験機を用いて測定された残留不釣り合い量に基づいて算出され、
前記カッターロール及び前記アンビルロールのうちの一方のロールを第1ロールとし、他方のロールを第2ロールとした場合に、
前記第1ロールの一端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置と、他端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置との両者が、前記回転角度位置の90°〜270°の範囲に入っており、
且つ、前記第2ロールの一端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置と他端側の残留不釣り合い量に係る不釣り合い位置との両者が、前記回転角度位置の270°〜360°又は0°〜90°の範囲に入っていることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記動バランスが修正されるロールは、該ロールの表層部と、前記表層部よりも内側の中心側部分とが互いに別素材で構成され、
前記表層部の硬度は、前記中心側部分の硬度よりも高く、
前記中心側部分の前記回転軸に沿う方向の端面は、前記動バランス修正部としての穴部を有し、前記穴部が形成されることにより、前記ロールの動バランスが修正されていることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記ワークを切るとは、前記ワークから、前記ワークの一部を所定の打ち抜き形状に打ち抜くことであり、
前記カッター刃は、前記打ち抜き形状に対応して前記カッターロールの外周面に閉じた領域を区画し、
前記端面の穴加工によってバランス修正される前記ロールは、前記アンビルロールであり、
前記アンビルロールの外周面において前記カッター刃の前記閉じた領域と対向する領域には、吸気する複数の空気孔が形成されているとともに、前記アンビルロールの内部には、前記空気孔に連通して前記空気孔から空気を吸う空気流路が、前記アンビルロールの一端側の端面と、前記空気孔とを繋ぐように、前記回転軸に沿って形成されていることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−19832(P2012−19832A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158087(P2010−158087)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】