説明

吸収性物品の表面シート及びその製造方法

【課題】底部を有する導液凹部を有し、クッション性が良好であると共に、吸収体への液の移行性に優れ、肌に貼りつきにくい吸収性物品の表面シート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品の表面シート1は、表面31側が肌に接する表面部3と、周壁部43及び底面部44を備え裏面42側が吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部4とを有する不織布2からなる。表面部3の表面31側に表面凹部33が形成されており、該表面凹部33は、導液凹部4に比して深さ及び開口部の直径が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー(下り物シート)、失禁パッド等の吸収性物品の表面シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の表面シートとして、表面に凹凸を有するものが知られている。
例えば、吸収体に向かって突出する立体的な開孔を有する不織布製の表面シートが知られており、このような立体的な開孔を有する表面シートとして、開孔間の頂部におけるシートの厚さaと、開孔の下端周縁部におけるシートの厚さcと、該頂部と該下端周縁部との略中間部におけるシートの厚さbが、a>b>cなる関係を有するものも知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、熱可塑性繊維を融着させた不織布に、導管凹部と該導管凹部の周縁に連続する肌当接域とを形成し、該導管凹部の底面及び側部に複数の導液裂け目を設けたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−246321号公報
【特許文献2】特開平4−58951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の表面シートのうち、特許文献1に記載の立体的な開孔を有する表面シートは、生理用ナプキン等に用いたときに、吸収体に吸収された経血が開孔を通して、外部から見えやすいという欠点がある。また、下端が開口していることによって、立体形状が潰れやすく回復性に劣るため、クッション性が不十分である。
他方、特許文献2の表面シートは、導管凹部の底部及び側部に導液裂け目が形成されているため、立体形状が潰れやすい。また、不織布における繊維自由度(動きやすさ)の低さを利用し、導管凹部の形成時に導液裂け目を形成しているため、導管凹部における導液裂け目以外の部分に繊維の密度勾配を設けることは困難である。
また、従来の表面シートは、生理用ナプキン等に用いたときに、凹部(開孔)以外の部分が肌に貼りつきやすく、ムレやすいという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、底部を有する導液凹部を有し、クッション性が良好であると共に、吸収体への液の移行性に優れ、肌に貼りつきにくい吸収性物品の表面シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面側が肌に接する表面部と、周壁部及び底面部を備え裏面側が吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部とを有する不織布からなる表面シートであって、前記表面部の表面側に表面凹部が形成されており、該表面凹部は、前記導液凹部に比して深さ及び開口部の直径が小さい、吸収性物品の表面シートを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、前記吸収性物品の表面シートの製造方法であって、原料シートを、多数の第1の凸部、及び該第1の凸部より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部を有する雄部材と、前記第1の凸部が挿入される多数の受け穴、及び該受け穴の周囲に連続して形成され前記第2の凸部と対向する平面部を有する雌部材との間に供給し、前記第1の凸部により前記原料シートを部分的に前記受け穴内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部を形成すると共に、前記第2の凸部により前記雌部材の前記平面部上にて前記原料シートを部分的に押圧して、前記表面凹部を形成する、吸収性物品の表面シートの製造方法を提供することにある。
【0009】
また本発明は、前記吸収性物品の表面シートの製造方法であって、原料シートを、平面部及び該平面部から突出する多数の第1の凸部を有する雄部材と、前記第1の凸部が挿入される多数の受け穴、及び該受け穴の近傍に前記雄部材の前記平面部と対向するように配され且つ前記第1の凸部より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部を有する雌部材との間に供給し、前記第1の凸部により前記原料シートを部分的に前記受け穴内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部を形成すると共に、前記第2の凸部により前記雄部材の前記平面部上にて前記原料シートを部分的に押圧して、前記表面凹部を形成する、吸収性物品の表面シートの製造方法を提供することにある。
【0010】
また本発明は、前記吸収性物品の表面シートの製造方法であって、原料シートを、平面部並びに該平面部から突出する多数の第1の凸部、及び該平面部から突出し該第1の凸部より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部を有する雄部材と、前記第1の凸部が挿入される多数の受け穴、及び前記第2の凸部の近傍に位置する前記雄部材の前記平面部と対向するように該受け穴の近傍に配され、且つ前記第1の凸部より突出方向の長さが短い第3の凸部を有する雌部材との間に供給し、前記第1の凸部により前記原料シートを部分的に前記受け穴内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部を形成すると共に、前記第2の凸部及び前記第3の凸部により前記原料シートを部分的に押圧して、前記表面凹部を形成する、吸収性物品の表面シートの製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収性物品の表面シートは、底部を有する導液凹部を有し、クッション性が良好であると共に、吸収体への液の移行性に優れ、肌に貼りつきにくい。また、本発明の製造方法は、斯かる特長を有する表面シートを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、先ず、本発明の吸収性物品の表面シート(以下、表面シートという)について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態である吸収性物品の表面シート1は、図1〜図3に示すように、不織布2からなり、該不織布2が、表面31側が肌に接する表面部3と、周壁部43及び底面部44を備え裏面42側が図示しない吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部4,4・・とを有している。
【0013】
不織布2としては、吸収性物品の表面シートに従来用いられている各種の不織布を特に制限なく用いることができ、例えば、エアースルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等を用いることができる。これらの中で好ましいのはエアースルー不織布である。エアースルー不織布は、カード法又はエアレイ法により形成した繊維ウエブをエアースルー法による熱風処理により不織布化して得られるものである。
表面部3の表面31及び導液凹部4の表面41は、吸収性物品1に組み込まれたときに着用者の肌側に向けられる、表面シート1の片面であり、表面部3の裏面32及び導液凹部4の裏面42は、吸収性物品1に組み込まれたときに着用者の肌側とは反対側(吸収体側)に向けられる、表面シート1のもう一方の面である。
【0014】
不織布2の構成繊維は、立体形状の安定性に優れた導液凹部を形成する観点から、熱融着性繊維、特に熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好ましい。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組合せからなる芯鞘型あるいはサイド・バイ・サイド型等の複合繊維も好ましく用いられる。これらの繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
不織布2は、熱融着性繊維以外にパルプ繊維等の熱融着性を有しない繊維や融点が高く実質的に熱融着性を有しない繊維(例えば処理温度より20℃以上融点が高い繊維)を含んでいても良い。不織布の全構成繊維中、熱融着性繊維の割合(重量基準)は50〜100%であることが好ましく、80〜100%がより好ましく、とりわけ100%であることが好ましい。また、不織布2中の熱融着性繊維は、親水化されていることが好ましい。
【0016】
表面シート1は、吸収性物品に組み込まれた状態において、表面部3の表面31側が着用者の肌に接する。表面部3は、このように表面31側が着用者の肌に接する部分である。表面部3は、各導液凹部4の周囲に連続して形成されている。
表面シート1は、多数の導液凹部4が、それぞれ、表面部3から吸収体側に向かって突出するように形成されているため、肌側に向けて突出する多数の独立凸部を有する表面シートに比べて、肌を伝って流れる液を、より素早く表面シート1内に取り込むことができる。そのため、肌を伝って液が流れることによる不都合、例えば吸収性物品からの液漏れ等を効果的に防止することができる。
【0017】
図1〜図3に示すように、表面部3の表面31側には表面凹部33が形成されている。表面凹部33は平面視において円形形状を有しており、1個の表面凹部33の周囲を凸部34が取り囲んでいる。表面凹部33の下端は開口していない。表面凹部33は、導液凹部4に比して深さ及び開口部の直径が小さい。
表面部3の表面31側に表面凹部33が形成されていることにより、該表面凹部33が形成されておらず表面部3全体が略平坦状に形成されている場合に比して、表面シート1を生理用ナプキン等に用いたときに、表面部3が肌に貼りつきにくくなり、着用者の肌と表面シート1との間に隙間が形成されるようになる。従って、表面部3に表面凹部33が形成されている表面シート1を生理用ナプキン等に用いることによって、生理用ナプキン等の通気性が高まり、着用時のムレを効果的に防止することができる。
【0018】
上述したように、表面凹部33は、導液凹部4に比して深さ及び開口部の直径が小さくなされている。
表面凹部33の深さをD1、導液凹部4の深さをD2とした場合(図2参照)、D2に対するD1の比(D1/D2)は、肌と表面シート1との間の隙間を維持する点及び凹凸感による表面部3のザラツキ防止の観点から、好ましくは0.05〜0.90、更に0.10〜0.65である。
また、表面凹部33の開口部の直径をW1、導液凹部4の開口部の直径をW2とした場合(図2参照)、W2に対するW1の比(W1/W2)は、肌と表面シート1との隙間を維持する点及び表面部3の硬化防止の観点から、好ましくは0.10〜0.9、更に0.10〜0.75である。
また、表面凹部33の深さD1は、好ましくは0.1〜0.7mm、更に好ましくは0.2〜0.5mmであり、表面凹部33の開口部の直径W1は、好ましくは0.2〜2.0mm、更に好ましくは0.5〜1.5mmである。
尚、表面凹部33(導液凹部4)の開口部の直径は、表面凹部33(導液凹部4)の開口形状が非円形の場合は、同一面積の円の直径を意味する。表面凹部33(導液凹部4)の深さ及び開口部の直径は、それぞれ、例えば断面を撮影した顕微鏡写真から求められる。
【0019】
第1実施形態においては、表面部3の裏面32側に裏面凹部35が形成されている。裏面凹部35と表面凹部33とは、表面シート1の平面視において略同位置にある。裏面凹部35は、表面凹部33と略同形状で同寸法である。即ち、裏面凹部35は、平面視において円形形状を有しており、1個の裏面凹部35の周囲を凸部34が取り囲んでおり、その下端は開口していない。裏面凹部35は、導液凹部4に比して深さ及び開口部の直径が小さい。裏面凹部35については、特に説明しない限り、表面凹部33についての説明が適宜適用される。
【0020】
表面凹部33は、周壁部及び底面部を有している。表面凹部33の周壁部は、表面シート1の厚み方向Zに延びる垂直線に対して傾斜しており、表面凹部33の内面形状は略逆円錐台状をなしている。また、表面凹部33の底面部は、表面シート1の平面視において略円形であり、その周囲に前記周壁部が連続している。導液凹部4の開口周縁部には凸部34が位置している。
【0021】
表面凹部33は、不織布2の一部が溶融されフィルム化された部分(フィルム状部)を有していても良い。フィルム状部は、不織布2の構成繊維が熱的に溶融されて繊維の形態を失い、被膜化している部分である。表面凹部33がフィルム状部を部分的に有していることにより、表面凹部33の形状が安定し、肌と表面シート1との隙間を効果的に維持できるという効果が奏される。フィルム状部は、不織布の構成繊維を考慮の上、後述する表面シート1の製造方法における該不織布の加熱加圧処理の条件を適宜調整することにより形成することができる。表面凹部33がフィルム状部を有している場合、該フィルム状部は、表面凹部33の前記底面部、あるいは前記底面部及びその近傍に形成されていることが好ましい。
【0022】
第1実施形態においては、表面部3は、厚みの小さい肉薄部Pと、該肉薄部Pより厚みの大きい肉厚部Qとを含んで形成されており、厚みが均一となっていない。表面部3において、肉薄部Pは、表面凹部33が形成されている部位(表面凹部33と裏面凹部35との間に挟まれている部位)であり、肉厚部Qは、凸部34が形成されている部位である。
肉薄部Pにおける不織布の繊維密度は、肉厚部Qにおける不織布の繊維密度よりも高くなっており、肉薄部Pと肉厚部Qとの間に繊維密度の差(勾配)が生じている。
このように、表面部3に厚みの小さい部位と大きい部位とが混在し、繊維密度の差が生じていることにより、肉厚部Q(凸部34)の表面31側の頂部(着用者の肌と当接する部分)にある液を、肉薄部Pへ素早く移動させることが可能となり、液を表面シート1内に取り込む速度が一層速くなる。
【0023】
肉薄部Pの厚みをT1、肉厚部Qの厚みをT2とした場合(図2参照)、T2に対するT1の比(T1/T2)は、肉薄部Pと肉厚部Qとの間の繊維密度の差を大きくし、液の取り込み速度を向上させる点及び表面部3の硬化防止の観点から、好ましくは0.03〜0.85、更に0.1〜0.7である。
尚、図2に示すように、肉薄部Pの厚みT1は、肉薄部Pの略中央部(表面凹部33の略中央部)において測定され、肉厚部Qの厚みT2は、肉厚部Qの頂部(表面31側の凸部34の頂部)において測定される。
また、肉厚部Qの厚みT2は、好ましくは0.3〜1.5mm、更に好ましくは0.3〜1.0mmである。
【0024】
第1実施形態においては、図1及び図3に示すように、表面凹部33が表面部3の表面31側の複数箇所に互いに不連続に形成されている。即ち、表面部3の表面31側には、複数の表面凹部33が所定間隔を置いて形成されている。表面部3における表面凹部33が形成されていない部分は、略平坦状の平坦部であり、隣接する2つの表面凹部33,33間には、該平坦部が形成されている。表面部3の裏面32側も裏面凹部35が同様に形成されている。
このように、表面凹部33が表面部3の複数箇所に互いに不連続に形成されていることにより、着用者の肌と表面部3との間を滲む液を生じさせずに、表面部3内に液を一旦保持することが可能となり、ドライ感が向上する。
【0025】
このような表面凹部33の不連続配置による作用効果を確実に奏させるようにする観点から、隣接する表面凹部33の間隔は、好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5〜10mmである。
また、表面部3の表面31における表面凹部33の個数は、表面シート9cm2当り、好ましくは10〜250個であり、更に好ましくは20〜200個である。表面部3の裏面32における裏面凹部35の個数も、同様である。
また、1個の表面凹部33の平面視における面積は、好ましくは0.03〜6mm2、更に好ましくは0.15〜2mm2である。
【0026】
導液凹部4は、図2に示すように、表面41側が凹状をなし裏面42側が吸収体側(図2の下方側)に向かって突出しており、周壁部43及び底面部44を有している。また、底面部44は、表面部3の裏面32より吸収体側に位置している。即ち、底面部44は、表面シート1の厚み方向Z(図2参照)において、表面部3の裏面32の位置より吸収体側(図2の下方側)に位置している。
【0027】
周壁部43は、表面シート1の厚み方向Zに延びる垂直線に対して傾斜しており、表面シート1の該周壁部43に囲まれた部分の横断面(表面シート1の厚み方向に直交する平面による断面)の面積が表面部3側から底面部44に向かって漸減している。より具体的には、内面形状が略逆円錐台状をなしている。
底面部44は、平面視略円形であり、その周囲に周壁部43が連続している。第1実施形態における底面部44は、略平坦状に形成されているが、断面が下方に向けて凸の円弧状をなす凸曲面形状に形成することもできる。
【0028】
本実施形態における導液凹部4は、周壁部43における底面部44に隣接する部位(図2中に符号Aで示す部位、以下、底面部隣接部位Aともいう)の厚みTaが、該導液凹部4の開口周縁部に位置する表面部3の肉厚部Q(凸部34)の厚みT2より小さい。そのため、底面部隣接部位Aにおける不織布の繊維密度が、表面部3の肉厚部Qにおける不織布の繊維密度より高くなっている。このように、表面部3(肉厚部Q)と底面部隣接部位Aとの間に繊維密度の差(勾配)があることによって、表面部3及び/又は周壁部43において表面シート1内に取り込まれた液が、底面部隣接部位Aへと移行し易くなっている。底面部隣接部位Aは、表面シート1を吸収体上に配したときに、該吸収体に接触ないし近接して、そこから吸収体への液の移行が自然に生じ得る部位である。導液凹部4は、このように、表面部3及び/又は周壁部43において取り込んだ液を、吸収体へと導く機能を有している。
本実施形態の表面シート1は、このように、底面部隣接部位Aの厚みTaが表面部3の肉厚部Qの厚みT2より小さく、吸収体への液の移行性に優れている。
【0029】
しかも、本実施形態の表面シート1は、上述したように、導液凹部4が底面部44を有し、導液凹部4の下端が開口していないため、導液凹部4の形態が安定しており、吸収性物品着用中に表面シート1に厚み方向に圧縮力が加わっても、該導液凹部4が潰れにくく、あるいは潰れたとしても圧縮力から解放されたときの復元力に優れている。そのため、良好なクッション性を有しており、風合いも良好なものとなる。
更に、導液凹部4が底面部44を有し、吸収体に移行した液が、該底面部44によって隠蔽されるため、例えば、生理用ナプキンの表面シートとして用いたときに、使用後のナプキンにおいて経血が目立つことを防止することができる。
【0030】
吸収体への液の移行性を向上させる観点から、底面部隣接部位Aの厚みTaは、表面部3の肉厚部Qの厚みT2の3〜80%、特に5〜50%であることが好ましい。また、厚みTaは、0.1〜0.4mmであることが好ましい。
尚、底面部隣接部位Aの厚みTaは、図2に示すように、導液凹部4を構成する不織布の該部位Aにおける厚みである。
【0031】
また、第1実施形態における導液凹部4の周壁部43は、図2に示すように、表面部3側から底面部44側に向かって厚みが漸減しており、それによって、周壁部43を構成する不織布の繊維密度が、表面部3側から底面部44側に向かって漸増している。
そのため、表面部3及び/又は周壁部43から、底面部隣接部位Aへの液の移行性、延いては吸収体への液の移行性に一層優れている。
【0032】
吸収体への液の移行性の向上の観点から、周壁部43の底面部隣接部位Aの厚みTaは、該周壁部43における表面部3に隣接する部位(図2中に符号Bで示す部位、以下、表面部隣接部位Bともいう)の厚みTbの5〜80%であることが好ましく、より好ましくは5〜50%である。
尚、表面部隣接部位Bの厚みTbは、図2に示すように、導液凹部4を構成する不織布の該部位Bにおける厚みである。
【0033】
更に、第1実施形態における導液凹部4は、表面部隣接部位Bの厚みTbが、該部位Bに隣接する表面部3の肉厚部Qの厚みT2より小さい。これにより、表面部3から周壁部43への液の移行性に一層優れ、吸収体への液の移行性がより一層優れている。表面部3から周壁部43への液の移行性の向上の観点から、表面部隣接部位Bの厚みTbは、表面部3の肉厚部Qの厚みT2の20〜90%、特に40〜90%であることが好ましい。
前記厚みT1、T2、Ta、Tbは、何れも無荷重下の厚みであり、例えば断面を撮影した顕微鏡写真から求める。後述する表面シートの厚みTも同様である。
【0034】
底面部44における不織布2は、繊維同士の結合点を有しており且つ液透過性を維持していることが好ましい。繊維同士の結合点の存在により導液凹部4の立体形状の安定性を向上させつつ、表面シートの液透過性を向上させることができ、更にフィルム化させたときのような肌触りの悪化を防止することができる。繊維同士の結合点には、フィルム化した部分や、エンボス加工により不織布を加圧して形成したものは含まれない。繊維同士の結合点は、エアースルー法による熱風処理により繊維同士をそれらの交点において熱融着させたものが好ましい。
【0035】
第1実施形態の表面シート1における導液凹部4は、図3に示すように、千鳥状に配置されており、表面部3が不織布2の繊維配向方向(図中X方向)及びそれに直交する方向(図中Y方向)の両方向に連続直線状に存在しないように配置されている。
表面部3がX方向又はY方向に連続直線状に存在しないことにより、導液凹部4の数をより多く配置することができ、肌と接する表面部3の面積を低減させることができる。これにより肌に対するベタツキを抑えることができ、更に肌と表面部3との間を滲む液を連続直線状のものと比べて滲みにくくすることができる。
これに対して、図4は、表面部3が不織布2の維配配向方向(図中X方向)及びそれに直交する方向(図中Y方向)に連続直線状に存在する実施形態を示す図である。図4では、表面凹部35の図示を省略している。図4においては、直線LYに沿って表面部3が連続直線状に延びており、また、直線LXに沿って表面部3が連続直線状に延びている。
【0036】
第1実施形態においては、図2に示すように、導液凹部4の開口部近傍に高剛性部45を有している。より具体的に説明すると、高剛性部45は、表面シート1の断面視において、表面部3と導液凹部4の周壁部43との間に位置している。高剛性部45は、表面シート1の平面視において、略線状をなしている。
高剛性部45は、表面部3の肉厚部Q及び周壁部43それぞれより剛性が高く、表面部3の肉薄部Pより剛性が低いか同等である。
尚、本発明でいう剛性は、繊維がより集合した状態で固定されていることに起因する密度という意味の剛性であり、対比される2つの部位の剛性の高低は、例えば、断面を撮影した顕微鏡写真から測定した対比される2つの部位の厚みの違い、即ち密度の違いにより判断することができる。尚、表面シートに用いる不織布が繊維形状を有しない形状も高剛性部では起こり得るため、繊維密度ではなく、密度と表現している。
このように導液凹部4の開口部近傍に高剛性部45が形成されていることにより、表面シート1が生理用ナプキン等に用いられた場合において、着用時に生理用ナプキン等が応力により変形しても、導液凹部4の形態が安定的に維持されるようになり、良好なクッション性を維持することができる。
【0037】
高剛性部45は、導液凹部4の周方向の全域に亘るように環状に形成されておらず、導液凹部4の周方向に所定間隔を置いて不連続に形成されていることが好ましい。その理由は、高剛性部45が導液凹部4の周方向の全域に亘るように環状に形成されていると、肌触りが低下したり、密度の高い高剛性部45に液がとどまり、吸収体への液の移行が妨げられたりするおそれがあるためである。
【0038】
第1実施形態においては、図3のA部分に示すように、高剛性部45は、一つの導液凹部4に対して2個形成されており、これらは表面凹部33の配置方向の前後に相対向するように配置されている。
但し、高剛性部45の配置形態はこれに限定されるものではない。例えば、図3のB部分に示すように、高剛性部45は、不織布2の維配配向方向(図中X方向)において、導液凹部4の前後に形成されていても良い。このように、高剛性部45が維配配向方向との関係において導液凹部4の前後に配列されていることによって、高剛性部45を一層安定して成型することができ、且つ繊維配向方向に直交する左右を柔軟に保つことができる。
【0039】
高剛性部45は、表面シート1の厚み方向Zにおいて、表面部3の表面31側における最も突出した部分〔表面31側の肉厚部Q(凸部34)の頂部〕から、表面部3の裏面32側における最も突出した部分〔裏面32側の肉厚部Q(凸部34)の頂部〕に亘る範囲に形成されていることが好ましい。
【0040】
また、高剛性部45における不織布2は、全体がフィルム状となっていないこと及び不織布を構成する繊維が変形する程度であることが、皴の発生を抑え、良好な肌触りを保つことができ、高剛性部45を安定的に存在させる点から好ましい。全体がフィルム状では、シートの厚みが薄くなり折れ易くなるためであり、フィルム状部が高剛性部45に点在的に存在していると高剛性部45をより安定させることができる。
【0041】
表面シート1は、導液凹部4の形態の安定性やクッション性の向上等の観点から以下の構成を有することが好ましい。
坪量は15〜50g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましく、構成繊維の繊度は1.2〜6.7dtexであることが好ましい。
表面部3側の開口部(導液凹部4の開口部)の直径W2(図2参照、開口形状が非円形の場合は同一面積の円の直径)は2.0〜7.0mmであることが好ましく、底面部44の直径W3(図2参照、非円形の場合は同一面積の円の直径)は0.5〜2.5mmであることが好ましい。
表面シート1の厚みT(図2参照)は0.5〜3.0mmであることが好ましく、該厚みTに対する表面部3の肉厚部Qの厚みT2の割合は、20〜90%、特に40〜90%であることが好ましい。
また、導液凹部4の個数は、表面シート9cm2当り、好ましくは10〜100個であり、更に好ましくは20〜70個である。
【0042】
第1実施形態の表面シート1は、吸収性物品の表面シートとして用いられる。吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0043】
図5には、本発明の吸収性物品の表面シートの第2実施形態が示されている。第2実施形態については、上述した第1実施形態の表面シート1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態の表面シート1についての説明が適宜適用される。
【0044】
第2実施形態の表面シート1は、互いに隣接する導液凹部4,4間に挟まれた表面部3内に2個の表面凹部33,33が形成されており、各表面凹部33の周囲を凸部34が取り囲んでいる。第2実施形態においては、表面部3に前記肉薄部P及び肉厚部Qが形成されておらず、表面部3の厚みが均一になっている点で、第1実施形態と異なっている。ここで、「表面部3の厚みが均一」とは、表面部3における最も厚みの小さい部位の該厚みをTm、最も厚みの大きい部位の該厚みをTxとした場合、Txに対するTmの比(Tm/Tx)が、0.6〜1.0の範囲にある場合を意味する。
第2実施形態の表面部3は、このように厚みが均一になっているので、該表面部3における不織布の繊維密度も略均一になっており、繊維密度の勾配は実質的に形成されていない。このため、第2実施形態の表面シート1は、表面部3の厚みが均一ではない第1実施形態の表面シート1に比して、表面部3内における液の移動速度に劣るものの、その他の点については第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
本発明の吸収性物品の表面シートは、上述した実施形態に制限されない。
例えば、導液凹部4の平面視形状は、図3に示すような真円形に代えて楕円形とすることもでき、更には、菱形、正方形、長方形等の多角形状、あるいはハート型、星形等とすることもできる。例えば、多角形とする場合、角部には丸みをつけることが好ましい。表面凹部33の平面視形状も、真円形をはじめ、上記種々の形状とすることができる。
【0046】
次に、本発明の吸収性物品の表面シートの製造方法について、上述した第1実施形態の表面シート1の製造方法を例にとり、図面を参照しながら説明する。
第1の製造方法は、図6及び図7に示すように、エアースルー不織布等の原料シート20を、多数の第1の凸部51、及び該第1の凸部51より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部52を有する凸ロール(雄部材)5と、第1の凸部51が挿入される多数の受け穴61、及び該受け穴61の周囲に連続して形成され第2の凸部52と対向する平面部65を有する凹ロール(雌部材)6とを備えた延伸及び加熱装置における両ロール5,6間に供給し、第1の凸部51により原料シート20を部分的に受け穴61内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部4を形成すると共に、第2の凸部52により凹ロール6の平面部65上にて原料シート20を部分的に押圧して、前記表面凹部33を形成し、表面シート1を製造する。
【0047】
本発明の製造方法における雄部材及び雌部材としては、平板に凸部や凹部を形成したものを用いることもできるが、本実施形態においては、図6に示すように、周面に多数の凸部51,52を有する凸ロール5と、周面に多数の受け穴61を有し該凸ロール5と連動して回転する凹ロール6を用いている。雄部材及び雌部材はロール状であることが、生産性等の観点から好ましい。尚、凸ロール5と凹ロール6の連動する回転は、例えば、ギヤやチェーン等の公知の連結手段により達成できる。
【0048】
第1の製造方法においては、図6に示すように、矢印で示す方向に連動して回転する一対のロール5,6間に、帯状の原料シート20を連続的に供給している。両ロール5,6は、両ロール5,6の回転に伴い、凸ロール5の第1の凸部51が、順次、受け穴61内に挿入(遊挿)されると共に、凸ロール5の第2の凸部52が、受け穴61の周囲に形成されている凹ロール6の平面部65(雄部材5と対向する面の受け穴61以外の部分)と対向するように構成されている。受け穴61内に挿入される第1の凸部51は、該受け穴61の内面囲に接触しないようになっている。また、第1の凸部51が受け穴61内に挿入された際において、その挿入深さが最大のときに、第2の凸部52の先端が平面部65に接触するようになっている。このように第2の凸部52の先端が平面部65に接触するようになっていることで、前記表面凹部33の形成が容易になると共に、装置の制御が行いやすくなる。
【0049】
第1の製造方法に用いる凸ロール5は、多数の凸部51,52が一定間隔に直列してなる凸部列が該ロールの軸長方向に延びて形成されていると共に、該凸部列が、ロール5の周方向に一定間隔に多数形成されている。各凸部列を構成する個々の凸部は、隣接する凸部列の個々の凸部とロール軸長方向に半ピッチ分ずれた位置に形成されている。凹ロール6の受け穴61も、同様の配置とされている。凸部51,52は、何れも円柱状の軸部の先端に略平坦な先端面を有する形状であり、受け穴61は、第1の凸部51の直径よりも内径の大きい有底円筒状の内面を有している。
【0050】
第2の凸部52の長さは、第1の凸部51の長さに対して、好ましくは30〜95%、更に好ましくは50〜90%である。また、第2の凸部52の直径は、第1の凸部51の直径に対して、好ましくは25〜100%、更に好ましくは50〜100%である。尚、凸部51,52の直径は、凸部51,52の突出方向と直交する方向の断面形状が非円形の場合は、同一面積の円の直径を意味する。
【0051】
図6に示すように、連動して回転する両ロール5,6間に、不織布からなる原料シート20を導入すると、該原料シート20は、図7に示すように、その裏面が平面部65に接触した状態において、第1の凸部51による受け穴61への押し込み部位へと搬送され、該押し込み部位において、該受け穴61上に位置する部分が第1の凸部51によって押圧され該受け穴61内へと押し込まれる。
【0052】
また、原料シート20は、この第1の凸部51による押し込みと同時に、第2の凸部52によって平面部65側に押圧され、この押圧された部分25が潰される。原料シート20における、第2の凸部52によって押圧された部分25は、第2の凸部52が離れた後も潰されたままで完全には嵩が回復せず、凹部としての形状が維持される。斯かる凹部の形成過程においては、雄部材5に組み込まれた公知のヒータ等によって予め加熱された凸部52を用いて加圧することで、該凹部を形成することができる。
また、第1の製造方法では、図6及び図7に示すように、第2の凸部52による原料シート20の押圧を、該原料シート20の表面側のみから行っているが、このような片面側からの押圧によって、図2に示すように、表面部3の表面31側に表面凹部33を、裏面32側に裏面凹部35をそれぞれ形成することができる。
【0053】
上述した第1の凸部51による原料シート20の押し込みは、原料シート20を、第1の凸部51の先端部に接触して直接押圧される部分24の周囲に、第1の凸部51及び受け穴61の内面61a、61bの何れにも接触しない部分23が環状に生じるように行わせている。この押し込みの際には、前記部分23を中心に原料シート20が大きく伸長し、該原料シート20の一部が受け穴61内に押し込まれ、押し込まれた部分は凹状に変形する。
【0054】
第1の凸部51及び受け穴61はそれぞれ雄部材や雌部材に組み込まれた公知のヒータ等によって加熱しておき、原料シート20における、受け穴61内に押し込まれて凹状に変形した部分に、該受け穴61の内面61a,61bから熱を与えて、その凹状の変形形状を固定(熱セット)させる。
【0055】
雌部材の受け穴61は凹状であるため、熱が放射されにくく、受け穴61以外の雌部材の平面部65より実質的に温度が高くなされている。このため、受け穴61に導かれた原料シート20は熱セットされるが、雌部材の平面部65は熱セットされにくい。更に、受け穴61の底面が閉じているため、底面程温度が高い状態となり、雄部材の第1の凸部51に近い程強くセットされる。
また、より好ましい製造方法として、雌部材の平面部65の表層のみを断熱コーティングし、雌部材の表面温度をよりよく制御することにより、原料シート20の雌部材の平面部65に相当する領域は安定的に熱セットされにくくなる。断熱コーティング材としては、ガラス繊維入りエポキシ樹脂、ベークライト、ピーク材、セラミック材、シリコン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等が挙げられる。
【0056】
第1の凸部51と受け穴61の加熱温度は、前述した効果に加えてより成形性と柔軟性(表面のタッチ感)を向上するため、受け穴61の内面の温度を第1の凸部51の温度よりも0〜40℃程度高くすることが好ましい。また、受け穴61の内面の温度は、80〜160℃程度とすることが好ましく、不織布に含まれる熱融着性繊維の融点(複合繊維の場合は融点が低い方の成分の融点)をA℃とすると、A−50℃以上、A+40℃以下であることがより好ましい。
【0057】
原料シート20を受け穴61に押し込む際及び押し込んだ部分に熱を加える際に、第1の凸部51及び受け穴61の内面61a,61bの何れにも接触しない部分23を生じさせておくと、該部分23は、伸長による機械的強度の大幅な低下や裂け目等を生じることなく大きく伸長され、また、その状態が安定に固定(熱セット)される。こうして、構造の安定した導液凹部4が形成される。
【0058】
また、第1の凸部51による原料シート20の押し込みの際に、原料シート20を構成する不織布は、原料シート20の流れ方向(MD)に伸びにくく、該流れ方向に直交する方向(CD)には相対的に伸びやすい。このため、原料シート20のMDにおける、受け穴61の前後端に位置する部分が、略直角に形成された受け穴61の開口縁部に強く加圧圧縮され、その状態が熱固定されて、図3のB部分に示すように、前記高剛性部45が形成される。
【0059】
以上のようにして、導液凹部4並びに表面凹部33及び裏面凹部35が多数形成された表面シート1が得られる。得られた表面シート1において、導液凹部4の底面部44は、主として第1の凸部51の先端部に直接押圧された部分24から構成され、周壁部43は、主として前記部分23から構成されている。また、表面凹部33及び裏面凹部35は、主として第2の凸部52の先端部に直接押圧された部分25から構成され、凸部34は、主として該部分25の周縁部から構成される。
【0060】
原料シート20を受け穴61に押し込む際に、第1の凸部51及び受け穴61の内面61a,61bのいずれにも接触しない前記部分23を生じさせるには、図8に示すように、第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、該凸部51と該受け穴61の開口周縁部との間の最短距離L1を、原料シート20の厚みとの関係において所定値以上に設定することが好ましい。
【0061】
例えば、原料シート20として、厚み3mm未満の不織布を用いる場合について説明すると、前記最短距離L1は0.7mm以上であることが好ましく、0.7〜3.0mmがより好ましく、更に好ましくは1.0mm以上である。
また、第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、該凸部51と受け穴61の開口周縁部との間の最長距離L2は4.0mm以下、特に3.0mm以下であることが、潰れにくく、且つ立体形状の復元力を有した導液凹部4を得られる点から好ましい。
【0062】
また、第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、第2の凸部52の先端と雌部材6の平面部65との離間距離L3は、0〜2mm、特に0〜1mmであることが、安定した形状の表面凹部33を得ることができ、且つ程度な柔軟性を付与できるため、好ましい。
また、第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、雌部材6の平面部65と雄部材5の平面部55(雌部材6と対向する面の凸部以外の部分)との離間距離L4は1mm以上、特に3mm以上であることが、表面部3の厚みを維持する点から好ましい。
また、第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、該凸部51の挿入深さL5は、0.5〜6.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが、より立体的な導液凹部4を得、且つ底面部44の破れを防止する点から好ましい。
第1の凸部51の挿入深さL5は、凸ロール(雄部材)5及び凹ロール(雌部材)6の回転に伴い漸次変化するが、寸法等を規定する場合における「凸部51が受け穴61に挿入された状態」は、挿入深さL5が最大となった状態とする。
【0063】
第1の製造方法におけるように、雄部材及び雌部材として凸ロール5及び凹ロール6を用いる場合、図8(c)に示すように、受け穴61の開口形状が、凹ロール6の軸長方向の長さLXより該ロール6の周方向の長さLYが長い形状であることが好ましい。軸長方向の長さLXに対する周方向の長さLYの比(LY/LX)は、例えば1.2/1〜6/1とすることが好ましい。
【0064】
以下、本発明の吸収性物品の表面シートの製造方法の他の実施形態について、図9及び図10を参照しながら説明する。後述する他の実施形態については、上述した第1の製造方法と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1の製造方法についての説明が適宜適用される。
【0065】
図9には、第2の製造方法に好ましく用いられる装置の要部が示されている。図9に示す装置は、第2の凸部52が、凸ロール(雄部材)5ではなく、凹ロール(雌部材)6に配置されている点以外は、図6及び図7に示す装置と同じである。図9に示す装置においては、第2の凸部52は、受け穴61の近傍に、雄部材5における平面部55(雌部材6と対向する面の凸部以外の部分)と対向するように配置されている。
【0066】
図9に示す如き構成の装置を用いる第2の製造方法においては、原料シート20(図9では図示せず)を、平面部55及び該平面部55から突出する多数の第1の凸部51を有する雄部材5と、第1の凸部51が挿入される多数の受け穴61、及び該受け穴61の近傍に雄部材5の平面部55と対向するように配され且つ第1の凸部51より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部52を有する雌部材6との間に供給し、第1の凸部51により原料シート20を部分的に受け穴61内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部4を形成すると共に、第2の凸部52により雄部材5の平面部55上にて原料シート20を部分的に押圧して、前記表面凹部33を形成する。
第2の製造方法においては、「第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、第2の凸部52の先端と雄部材5の平面部55との離間距離」は、前記離間距離L3と同じに調整することができる。
第2の製造方法によっても、上述した第1実施形態の表面シート1を製造することができる。
【0067】
図10には、第3の製造方法に好ましく用いられる装置の要部が示されている。第3の製造方法は、図5に示す第2実施形態の表面シート1、即ち、表面部3に前記肉薄部P及び肉厚部Qが形成されておらず、表面部3の厚みが均一になっている、表面シート1の製造に適した製造方法である。
【0068】
図10に示す装置においては、凸ロール(雄部材)5に、その平面部55から突出する第1の凸部51と第2の凸部52とが設けられていると共に、凹ロール(雌部材)6に、その平面部65から突出する第3の凸部53が設けられている。具体的には、雄部材5における隣接する第1の凸部51,51に挟まれた領域には、複数(図10では3個)の第2の凸部52が設けられており、雌部材6における該領域と対向する領域(隣接する受け穴61,61間)には、複数(図10では3個)の第3の凸部53が設けられている。第3の凸部53は、第2の凸部52と同形状で同寸法に形成されている。
そして、この装置は、図10に示すように、第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態において、隣接する第1の凸部51,51間に、これら凸部51の配列方向に沿って、第2の凸部52と第3の凸部53とが交互に並ぶように構成されている。従って、第2の凸部52は、第3の凸部53の近傍に位置する、雌部材6の平面部65(雄部材5と対向する面の第3の凸部53及び受け穴61以外の部分)と対向し、第3の凸部53は、第2の凸部52の近傍に位置する、雄部材5の平面部55(雌部材6と対向する面の凸部51,52以外の部分)と対向する。
図10に示す状態において、第2の凸部52と第3の凸部53との離間距離L6は、1〜10mm、特に1.5〜7.0mmであることが、柔らかさを保ちながら表面凹部33を形成する点から好ましい。
【0069】
図10に示す如き構成の装置を用いる第3の製造方法においては、原料シート20(図10では図示せず)を、平面部55並びに該平面部55から突出する多数の第1の凸部51、及び該平面部55から突出し該第1の凸部51より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部52を有する雄部材5と、第1の凸部51が挿入される多数の受け穴61、及び第2の凸部52の近傍に位置する雄部材5の平面部55と対向するように該受け穴61の近傍に配され、且つ第1の凸部51より突出方向の長さが短い第3の凸部53を有する雌部材6との間に供給し、第1の凸部51により原料シート20を部分的に受け穴61内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部4を形成すると共に、第2の凸部52及び第3の凸部53により原料シート20を部分的に押圧して、前記表面凹部33を形成する。
このように、第2の凸部52及び第3の凸部53を用いて、原料シート20の表裏面それぞれから該原料シート20を同時に押圧することにより、図5に示す如き、厚みが均一な表面部3を形成することができる。
第3の製造方法においては、「第1の凸部51が受け穴61に挿入された状態における、第3の凸部53の先端と雄部材5の平面部55との離間距離」は、前記離間距離L3と同じに調整することができる。
【0070】
本発明の吸収性物品の表面シートの製造方法は、上述した実施形態(第1〜第3の製造方法)に制限されない。
例えば、原料シート20における、第1の凸部51の先端部に直接押圧される部分24を、該凸部51の先端部と受け穴61の底部との間で加圧することもできる。この場合、表面シート1の前記底面部44が、凸部51の先端部と受け穴61の底部との間で加圧されたものとなるが、この加圧により、導液凹部4の底面部44の剛性を高めることができ、表面シート1に厚み方向に圧縮力が加わっても、該導液凹部4が潰れにくくなる。
また、凸部51,52,53及び受け穴61の形状は、それぞれ、真円形や楕円形に代えて、菱形、正方形、長方形等の多角形状、あるいはハート型、星形等とすることもできる。例えば、多角形とする場合、角部には丸みをつけることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である吸収性物品の表面シートを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のI−I線断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】図3は、図1に示す表面シートをその表面側から視た平面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態の表面シートをその表面側から視た平面図(図3相当図)である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態の図2相当図である。
【図6】図6は、本発明の第1の製造方法に好ましく用いられる装置の要部を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す装置における凸ロールと凹ロールの断面を示す断面図である。
【図8】図8は、図6に示す凸ロールの凸部及び凹ロールの受け穴の詳細を示す図であり、図8(a)は、両ロールの断面図、図8(b)及び図8(c)は、それぞれ、受け穴の開口形状及び該受け穴に挿入された凸部の断面形状を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第2の製造方法に好ましく用いられる装置の要部を示す図7相当図である。
【図10】図10は、本発明の第3の製造方法に好ましく用いられる装置の要部を示す図7相当図である。
【符号の説明】
【0072】
1 表面シート
2 不織布
3 表面部
33 表面凹部
34 凸部
35 裏面凹部
4 導液凹部
43 周壁部
44 底面部
45 高剛性部
5 雄部材(凸ロール)
6 雌部材(凹ロール)
20 原料シート(不織布)
51 第1の凸部
52 第2の凸部
53 第3の凸部
55 雄部材の平面部
61 受け穴
65 雌部材の平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側が肌に接する表面部と、周壁部及び底面部を備え裏面側が吸収体側に向かって突出する多数の導液凹部とを有する不織布からなる表面シートであって、
前記表面部の表面側に表面凹部が形成されており、該表面凹部は、前記導液凹部に比して深さ及び開口部の直径が小さい、吸収性物品の表面シート。
【請求項2】
前記表面部は、厚みの小さい肉薄部と、該肉薄部より厚みの大きい肉厚部とを含んで形成されている、請求項1記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項3】
前記表面凹部は、前記表面部の表面側の複数箇所に互いに不連続に形成されている、請求項1又は2記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項4】
前記周壁部は、前記表面部側から前記底面部側に向かって厚みが漸減している、請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項5】
前記導液凹部の開口部近傍に高剛性部を有し、該高剛性部は、前記表面部及び前記周壁部それぞれより剛性が高い、請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品の表面シート。
【請求項6】
請求項1記載の吸収性物品の表面シートの製造方法であって、
原料シートを、多数の第1の凸部、及び該第1の凸部より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部を有する雄部材と、前記第1の凸部が挿入される多数の受け穴、及び該受け穴の周囲に連続して形成され前記第2の凸部と対向する平面部を有する雌部材との間に供給し、前記第1の凸部により前記原料シートを部分的に前記受け穴内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部を形成すると共に、前記第2の凸部により前記雌部材の前記平面部上にて前記原料シートを部分的に押圧して、前記表面凹部を形成する、吸収性物品の表面シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の吸収性物品の表面シートの製造方法であって、
原料シートを、平面部及び該平面部から突出する多数の第1の凸部を有する雄部材と、前記第1の凸部が挿入される多数の受け穴、及び該受け穴の近傍に前記雄部材の前記平面部と対向するように配され且つ前記第1の凸部より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部を有する雌部材との間に供給し、前記第1の凸部により前記原料シートを部分的に前記受け穴内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部を形成すると共に、前記第2の凸部により前記雄部材の前記平面部上にて前記原料シートを部分的に押圧して、前記表面凹部を形成する、吸収性物品の表面シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の吸収性物品の表面シートの製造方法であって、
原料シートを、平面部並びに該平面部から突出する多数の第1の凸部、及び該平面部から突出し該第1の凸部より突出方向の長さが短い多数の第2の凸部を有する雄部材と、前記第1の凸部が挿入される多数の受け穴、及び前記第2の凸部の近傍に位置する前記雄部材の前記平面部と対向するように該受け穴の近傍に配され、且つ前記第1の凸部より突出方向の長さが短い第3の凸部を有する雌部材との間に供給し、前記第1の凸部により前記原料シートを部分的に前記受け穴内に押し込ませて凹状に変形させ、その凹状の変形形状を加熱により固定して、前記導液凹部を形成すると共に、前記第2の凸部及び前記第3の凸部により前記原料シートを部分的に押圧して、前記表面凹部を形成する、吸収性物品の表面シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−153731(P2009−153731A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335652(P2007−335652)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】