説明

吸収性物品用のシート

【課題】従来のシートよりも性能が更に向上した吸収性物品用のシートを提供すること。
【解決手段】着用者の肌側に向けられる繊維材料からなる上層1と、吸収体側に配される繊維材料からなる下層2とを有する。上層1の坪量が下層2の坪量よりも低くなっている。上層2が、着用者の肌側に向けて突出して多数の凸部4を形成している。隣り合う凸部4間が、上層1と下層2とが接合されて形成された接合部3aを含む凹部3となっている。凸部4及び凹部3は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されており、更に該列が多列に配置されている。一の列における任意の一つの凸部4に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部4と隣り合う位置に凸部4が位置していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の吸収体よりも肌当接面側に用いられるシート、例えば表面シートやサブレイヤーシート(セカンドシート)に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、上層シートと下層シートとが部分的に接合されて、接合部以外の部分において上層が突出して内部が空洞になっている凸部を多数有する吸収性物品用の表面シートを提案した(特許文献1参照)。この表面シートは、これを使い捨ておむつや生理用ナプキンを始めとする各種吸収性物品に組み込んで使用された場合、液漏れ防止性、特に軟便や経血などの高粘性液の漏れ防止性が向上し、また吸収された液の隠蔽性が高くなるという利点を有する。
【0003】
しかし、この種の吸収性物品の各種性能に対する要求、例えば表面での液残りの防止や、一旦吸収された液の逆戻りに防止に対する要求は一層高くなり、従来提案されている表面シートよりも更に高性能の表面シートが望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、前述した従来技術のシートよりも性能が更に向上した吸収性物品用のシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸収性物品の吸収体よりも肌当接面側に用いられる吸収性物品用のシートであって、
着用者の肌側に向けられる繊維材料からなる上層と、吸収体側に配される繊維材料からなる下層とを有し、
前記上層が、着用者の肌側に向けて突出して多数の凸部を形成していると共に、隣り合う該凸部間が、前記上層と前記下層とが接合されて形成された接合部を含む凹部となっており、
前記凸部及び前記凹部は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されており、更に該列が多列に配置されており、
一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置しておらず、
前記上層の坪量が前記下層の坪量よりも低くなっている吸収性物品用のシートを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシートを、吸収性物品の吸収体よりも肌当接面側に用いることで、該吸収性物品は、その表面における液残り量が低減される。また、一旦吸収された液の逆戻りも起こりにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のシートは、吸収性物品の吸収体よりも肌当接面側に用いられる。吸収性物品は一般に、吸収体と、該吸収体よりも使用者の肌に近い側に配された表面シートと、該吸収体よりも使用者の肌から遠い側に配された裏面シートとを備えている。従って、本発明のシートが、吸収性物品の吸収体よりも肌当接面側に用いられるとは、例えば該シートを表面シートとして用いることを言う。また吸収性物品は、表面シートと吸収体との間に、サブレイヤーシートないしセカンドシートと呼ばれる液透過性シートを備えている場合もあるところ、本発明のシートは、該サブレイヤーシートないしセカンドシートとしても用いられる。本発明における吸収性物品は、着用者の身体から排泄される体液の吸収に用いられる物品を広く包含する。その例としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナ、尿取りパッドなどが挙げられる。
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明のシートの一実施形態の要部拡大図が示されている。本実施形態は、図1に示すシート10を、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の肌当接面に配される表面シートとして用いた場合の例である。シート10は、上層1と下層2とを有している。上層1は着用者の肌側に向けられるものである。下層2は吸収体側に配されるものである。上層1には突出した多数の凸部4が形成されている。凸部4は着用者の肌側に向けて突出している。凸部4内は、好ましくは空洞になっている。凸部4間は凹部3になっている。各凹部3は、その一部において、上層1と下層2とが接合されている。つまり各凹部3には接合部及び非接合部が存在している。
【0010】
本実施形態においては、凸部4はその底面が矩形である。また凸部4は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、凹部3も矩形となっている。
【0011】
凸部4及び凹部3は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては図1に示すように、同図中X方向に沿って凸部4及び凹部3が交互に配置され列をなしている。この方向は、シート10の製造工程における流れ方向(MD)と一致する。凸部4及び凹部3からなる列は、図1中Y方向に亘って多列に配置されている。この方向は、シート10の製造工程における幅方向(CD)と一致する。
【0012】
シート10においては、一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が同様に位置していない。「一つの凸部と隣り合う位置に同様に凸部が位置していない」とは、一つの凸部に着目したときに、隣り合う列の完全に同位置に、凸部が位置していないことを意味している。つまり、図1におけるY方向に関して、隣り合う列間における凸部が完全に連なるように凸部が配置されていないことを意味する。従って、一つの凸部と隣り合う位置には、凸部の一部と凹部の一部の双方が存在していてもよいし、或いは凹部のみが存在していてもよい。Y方向に関して凸部が完全に連なるように配置されていると、見掛け上Y方向に長く延びた凸部が形成されることになり、その場合には液が長く延びた凸部に沿って流れ出しやすくなってしまい、液漏れの原因となる。シート10は、これが吸収性物品に組み込まれた場合、そのX方向又はY方向が吸収物品の長手方向と一致することが好ましい。
【0013】
本実施形態においては、Y方向に関して隣り合う2つの列において、凹部は半ピッチずつずれて配置されている。従って、一の列における任意の一つの凹部に着目したときに、該一つの凹部はその前後及び左右が凸部によって取り囲まれて形成された、閉じた凹部となっている。つまり、凹部は千鳥格子状に配置されている。従って、凸部も同様に千鳥格子状に配置されている。
【0014】
凸部4及び凹部3がこのように配置されていることで、シート10を具備する吸収性物品においては液漏れが極めて効果的に防止される。詳細には、シート10を例えば使い捨ておむつ、特に高粘度の排泄物である軟便を排泄する低月齢児用のおむつの表面シートとして用いた場合には次の効果が奏される。軟便は高粘度であることから、一般に表面シートを速やかに透過しづらく表面シート上に滞留して横流れを起こしやすい。これに対して、本実施形態のシートによれば、軟便は、凸部4によって取り囲まれて形成された閉じた凹部内に捕捉されるので横流れが起こりづらくなり、また捕捉されることに起因して下方向(つまり吸収体方向)への移動が促進される。その結果、軟便の漏れが防止される。特に、凸部4はその内部が空洞である場合には、吸収体に吸収された軟便の色が、表面シート側から見て減殺されるという隠蔽効果もある。これらの効果は、軟便と同様に高粘度の排泄物である経血を吸収するための生理用ナプキンの表面シートとして、本実施形態のシート10を用いた場合にも同様に奏される。
【0015】
これらの効果を一層顕著なものとする観点から、凸部4はその高さH(図1参照)が、0.8〜3mm、特に1〜1.8mmであることが好ましい。また、X方向(列方向)に沿う凸部4の底部寸法Aは0.5〜8mm、特に2〜4mmであることが好ましく、Y方向(列方向と直交する方向)に沿う底部寸法Bは0.5〜10mm、特に2〜5mmであることが好ましい。また、凸部4の底面積は0.5〜80mm2、特に4〜20mm2であることが好ましい。
【0016】
X方向(列方向)での凹部3の接合長さC(図1参照)は、0.5〜4mm、特に1〜2mmであることが、肌触りが良好でクッション感が高い点から好ましい。
【0017】
図2には、図1に示すシート10の平面図が示されている。図2に示すように、凸部4と凹部3とが交互に配置されてなる列(図2中、X方向、即ちMDの列)と直交する方向(Y方向、即ちCD)に関して、凹部3には、接合部3a、非接合部3b及び接合部3aがこの順で形成されている。図2に示すように、各非接合部3bはX方向、即ちMDにわたり凸部間において一直線上に位置している。シート10において非接合部3bがこのように配置されていることで、シート10はその感触が良好になる。また外観の印象が良好になる。
【0018】
上層1及び下層2は同一の又は異なる繊維材料のシート状物、例えば不織布からなる。このシート状物は、例えば実質的に非伸縮性の不織布であり得る。この場合、該シート状物は、MD(不織布が流れる方向、Machine Directionの略。流れ方向とも言う。繊維が配列している方向)及びCD(Cross Direction の略)の何れの方向にも実質的に伸縮しないものであってもよく、或いは、MD及びCDのうちの何れか一方向には実質的に伸縮しないが、他方向には伸縮性を有するものであってもよい。一方向にのみ伸縮性を有する不織布である場合、上層1及び下層2は伸縮方向が一致するように積層される。上層1及び下層2は、それらのMDが、シート10のMDと一致している。この様なシート状物を用いることによって、所望する寸法の凹凸形状を形成するにあたり、後述する第1及び第2の凹凸ロールの凹凸形状にほぼ即したシート10を安定的に且つ再現性良く製造できる。
【0019】
伸縮性を有する不織布を用いる場合、該不織布はMD及びCDの何れの方向にも伸縮性を有していてもよく、或いはMD及びCDのうちの何れか一方向にのみ伸縮性を有していてもよい。何れの場合であっても不織布の伸縮率は、その伸縮方向において105〜200%であることが好ましく、105%〜120%であることがより好ましい。ここで、伸縮性とは、例えば伸縮率105%では、材料伸長方向長さに対する伸び率5%を超えて伸長すると材料破壊を起こすか、永久歪が発生するものを言う。また、実質的に非伸縮性である不織布とは、伸縮率が105%以下であり、伸び率5%を超える伸長では材料破壊を起こすか又は永久歪みが発生するものをいう。ここで、伸縮率は、もとの材料の長さが2倍に伸張した場合、伸縮率200%となる。また、伸び率は、もとの材料の長さが2倍に伸張したとき100%となる。
【0020】
前記不織布としては、前記の特性を有するものであれば、公知の不織布が使用できる。例えばカード法により製造されたヒートボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、上層1と下層2を後述するように熱融着によって接合する場合には、前記不織布に熱融着繊維が含まれることが好ましい。熱融着繊維としては、PET/PE、PP/PEなどの芯鞘構造のものが好ましい。また、前記不織布には、界面活性剤等を用いた親水化処理を施しておくことが好ましい。上層1と下層2の構成繊維の種類のうち、好ましい組み合わせはPET/PE繊維どうしの組み合わせである。
【0021】
本実施形態のシート10においては、上層1の坪量が下層2の坪量よりも低くなっている。ここで言う上層1及び下層2の坪量とは、これらの層の原反であるシート状物の坪量のことではなく、シート10中における上層1及び下層2の実際の坪量のことである。上層1の坪量が下層2の坪量よりも低くなっていることで、上層1は下層2に比べて液を透過しやすい構造になっている。その結果、シート10における上層1側に排泄された液は、容易に該上層1を透過してその下に位置する下層2や、更にその下に位置する吸収体に到達し、該上層1には液残りが少なくなる。また、一旦吸収体に吸収された液が、シート10の表面に逆戻りしにくくなる。坪量の大きな層である下層2が、液の逆戻りの障壁になるからである。更に、上層1の坪量の方が下層2の坪量よりも低いと、両層1,2を接合するときの接合性が良好になるという製造上の利点もある。これらの観点から、上層1の坪量は下層2の坪量の30〜95%、特に70〜90%であることが好ましい。上層1それ自体の坪量は6〜30g/m2、特に10〜20g/m2であることが好ましい。一方、下層2それ自体の坪量は、上層1の坪量よりも高いことを条件として、12〜60g/m2、特に15〜25g/m2であることが好ましい。上層1及び下層2を含めたシート10の全体の坪量は、18〜90g/m2、特に30〜50g/m2であることが好ましい。
【0022】
上述の坪量との関係において、上層1は下層1よりも薄いことが上述の理由と同様の理由により好ましい。この場合、上層1の厚みは0.1〜3mm、特に0.3〜1mmであることが好ましい。一方、下層2の厚みは、上層1の厚みよりも大きいことを条件として、0.3〜4mm、特に0.5〜2mmであることが好ましい。厚みは、25g/m2荷重下で測定される。なお、シート10における上層1及び下層2の厚みを測定することは容易でないので、ここで言う厚みとは、シート10の製造に用いられる上層1及び下層2の原反の厚みのことである。
【0023】
上層1と下層2の坪量の関係が上述のようになっていることに加え、上層1の構成繊維の繊度が、下層2の構成繊維の繊度よりも小さくなっていると、上層1における液残りが一層少なくなるので好ましい。この理由は、上層1の坪量が低くなっていることを条件として、該上層1の構成繊維の繊度が小さいと、該上層1に排泄された液が流れやすくなるからである。換言すると、上層1と下層2の坪量が同じである場合において、上層1の構成繊維の繊度を、下層2の構成繊維の繊度よりも小さくしても、このような効果は奏されない。
【0024】
前述の観点から、上層1の構成繊維の繊度は下層2の構成繊維の繊度の40〜95%、特に70〜90%であることが好ましい。上層1それ自体の構成繊維の繊度は1.0〜3.3dtex、特に1.7〜2.2dtexであることが好ましい。一方、下層2それ自体の構成繊維の繊度は、上層1の構成繊維の繊度よりも大きいことを条件として、1.7〜7.8dtex、特に2.2〜5.6dtexであることが好ましい。構成繊維が2種以上の異なる繊度の繊維からなる場合には、構成繊維の繊度とは、それぞれの繊維の重量比率から繊度を平均し求めた値を言う。
【0025】
上層1の坪量が下層2の坪量よりも低くなっており、且つ上層1の構成繊維の繊度が、下層2の構成繊維の繊度よりも小さくなっていると、上層1から構成される凸部4の壁部を構成する繊維のうちの多数が概ね上下方向に向くようになる。この理由は明らかでないものの、凸部4の壁部を構成する繊維がこのような状態で存在することによって、本実施形態のシート10は液の透過性に一層優れたものになることが本発明者らの検討の結果判明した。この理由は、凸部4の壁部を構成する繊維を伝って液が流下し易くなって液の透過性が高まり、上層1に液が残存しづらくなるからであると考えられる。
【0026】
「凸部4の壁部を構成する繊維のうちの多数が凸部の概ね厚み方向に向いている」とは、凸部4の縦断面を切り出して顕微鏡観察した場合、壁部の角度が水平方向に対して50度以上の角度で傾斜している率が4点以上の測定で50%以上であることをいう。具体的な測定方法は次の通りである。凸部4の縦断面の顕微鏡像の画像データ(ファイル形式JPG)を使い、図3に示すようにエンボス部Cの中心からMD方向の次のエンボス部Cの中心までを1区間とし、1区間内を垂直方向に九等分する。九等分した中で左側より2番と8番の壁部で、等分線が繊維とぶつかる交点P,Qどうしを結ぶ線Lを引き、線Lが水平線となす角度を測定する。その角度を壁部の角度とする。
【0027】
次に、本実施形態のシート10の好ましい製造方法を図4〜図8を参照しながら説明する。図4に示すように、先ず、上層1を原反(図示せず)から繰り出す。これとは別に、下層2を原反(図示せず)から繰り出す。上層1及び下層2はそれぞれ、そのMD方向に沿って繰り出される。繰り出された上層1を、周面が凹凸形状となっている第1のロール11と第1のロール11の凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて上層1を凹凸賦形する。
【0028】
図5及び図6には、第1のロール11の要部拡大図が示されている。本実施形態のロール11は、同モジュールの平歯車からなる第1の歯車11c及び第2の歯車11dを複数枚組み合わせ、これらの歯車を回転軸15に同心状に取り付けてロール状に形成したものである。各歯車11c,11dは何れも同じ歯幅を有している。各歯車11c,11dはその中心が開口しており、その開口部に回転軸15が挿入される。各歯車11c,11d及び回転軸15にはそれぞれ切り欠き部(図示せず)が形成されており、該切り欠き部にキー(図示せず)が挿入される。これによって各歯車11c,11dの空回りが防止される。
【0029】
第2の歯車11dの歯先円直径は、第1の歯車11cの歯先円直径よりも小さくなっている。具体的には、第2の歯車11d(スペーサー)の歯先円直径は、第1の歯車11cの歯先円直径よりも0.5〜10mm小さくなっている。
【0030】
第1のロール11においては、1枚の第2の歯車11dに対してその両側にそれぞれ1枚ずつの第1の歯車11cが配されて、これらの3枚の歯車を一組とした歯車群16が複数組配されている。各歯車群16においては、第1の歯車11c及び第2の歯車11dは、各歯車11c,11dの歯がロールの回転軸方向に並列するように配されている。これによって各歯車群16においては、ロール11の回転方向に沿って凸部17と凹部18とが交互に形成される。凸部17は、3枚の歯車(つまり2枚の第1の歯車11cと1枚の第2の歯車11d)それぞれの歯がロール11の回転軸方向に並列して形成されたものであるか(図5中、符号17aで示す)、或いは2枚の第1の歯車11cの歯がロールの回転軸方向に並列して形成されたものである(図5中、符号17bで示す)。一方、凹部18は、2枚の第1の歯車11cの歯間で形成されたものである。凸部17の幅は、表面シート1の凸部4におけるY方向の寸法を決定する。
【0031】
歯車群16は二組以上用いられる。各歯車群16は、隣り合う歯車群16,16における凹凸部のピッチが互いに異なるように配される。本実施形態においては、隣り合う歯車群16,16は凹凸部が半ピッチずれている。
【0032】
各歯車群16においては、2枚の第1の歯車11c間に、ロール11の回転方向に沿って、一定の間隔をおいて空隙部19が複数形成されている。各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cと、これらの間に位置する第2の歯車11dとで形成されている。更に詳細には、各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cの相対向する側面と、第2の歯車11dにおける隣り合う2つの歯によって画定される。従って空隙部19は、第2の歯車11dの歯数と同数形成されることになる。空隙部19は、外部に向かって開口している。
【0033】
第1の歯車11cには、回転軸15が挿入される中心の開口部を取り囲むように複数の開口部20が形成されている。各開口部20は同径であり、歯車の中心からそれぞれ等距離の位置に形成されている。隣り合う開口部20,20と歯車の中心とがなす角度は何れも等しくなっている。各歯車11cにおける開口部20の個数は、第2の歯車11dの歯数と同数になっている。そして、各歯車群16を組み付ける場合には、各開口部20が、第2の歯車11dにおける隣り合う歯間にそれぞれ位置するように、第1及び第2の歯車11c,11dを配置する。このように各歯車群16を組み付け、更にそれぞれの歯車群16を凹凸部のピッチが互いに異なるように配した状態においては、それぞれの第1の歯車11cの開口20が、ロール11の回転軸方向に連なって、該回転軸方向に延びる複数の吸引路21がロール11の内部に形成される。そして各吸引路21は、先に述べた空隙部19と連通する。
【0034】
吸引路21の少なくとも一端は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じている。従って、吸引源を作動させて吸引操作を行うと、空隙部19から吸引路21を通じて空気が吸引される。
【0035】
本実施形態のロール11は特に小ピッチで小凸部を多数形成する場合に有効である。本実施形態のロール11では、低モジュールな平歯車を用いても、第2の歯車11dの歯幅を大きくしたり、また歯数を少なくすることにより空隙部19を大きくできる。その結果、吸引孔の面積を充分に確保することができる。更に、歯車の組み合わせや幅を変更するだけの簡単な操作で、凸部のピッチや大きさを自由に変更できるという利点もある。
【0036】
再び図4に戻ると、上層1を、第1のロール11と第2のロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて上層1を凹凸賦形する。この場合、第1のロール11を先に述べたように吸引しておく。吸引は、第1のロール11と第2のロール12との噛み合い部から上層1と下層2との合流部までの間で行われる様に制御されている。従って、第1のロール11と第2のロール12との噛み合いによって凹凸賦形された上層1は、第1のロール11に形成された空隙部19による吸引力によって図7に示すように該ロールの周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。吸引を行わない場合には、上層が第1のロール11の周面から浮き上がってしまい、結果として所望の凹凸形状を有するシートを得ることができない。
【0037】
次いで、上層1を第1のロール11の周面に引き続き密着させた状態下に(図7参照)、図4に示すように、上層1を、別に供給されている下層2と積層する。そして、積層された両層を、第1のロール11と第3のロール14とで挟圧する。第3のロール14は凹凸を有しないアンビルロールである。このとき、第1のロール11と第3のロール14の両方又は第3のロール14のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1のロール11の凸部17aを構成する歯車群16における歯先円直径の大きい歯車である2つの第1の歯車11c上に位置する上層1と下層2とが熱融着によって接合される(図8参照)。この接合によって2つの接合部3a(図2、図8参照)が形成される。一方、凸部17aを構成する歯車群16における第2の歯車11dは、第1の歯車11cよりも歯先円直径が小さいので、第2の歯車11dとアンビルロール14間に位置する上層1及び下層2は挟圧されず、熱融着が起こりにくい(図8参照)。その結果、2つの接合部3a間には非接合部3b(図2、図8参照)が形成される。
【0038】
一方、第1のロール11の凸部17bを構成する歯車群16は、2つの第1の歯車11cを有するのみなので、この2つの第1の歯車11c上に位置する上層1が下層2と熱融着によって接合される。この接合によって2つの接合部3a(図2参照)が形成される。2つの第1の歯車11c間には、上層1と下層2とを挟圧する部材が存在しないので、これら両層は熱融着されない。その結果、2つの接合部3a間には非接合部3b(図2参照)が形成される。このようにして、非接合部3bは、シート流れ方向において一直線上に位置するように形成される。
【0039】
なお、本製造方法においては、上層1と下層2とを熱融着によって接合することに代えて、ホットメルト接着剤による接着や超音波接合によってこれらの層を接合してもよい。
【0040】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0042】
〔実施例1〕
上層を構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる1.7dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量13g/m2のエアースルー不織布を用いた。この不織布の厚みは0.48mmであった。下層を構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量19g/m2のエアースルー不織布を用いた。この不織布の厚みは0.58mmであった。これらの不織布を用い、図4〜図8に示す装置を用いて使い捨ておむつの表面シートを製造した。得られた表面シートにおける上層の坪量は15g/m2であり、下層の坪量は19g/m2であった。得られた表面シートの縦断面の顕微鏡写真を図9(a)に示す。得られたシートにおける凸部の高さHは1.32mm、X方向に沿う凸部の底部寸法Aは2mm、Y方向に沿う凸部の底部寸法Bは3mmであった。またX方向での凹部の接合長さCは1mm、Y方向での凹部における非接合部の長さは1mmであった。
【0043】
〔比較例1〕
上層を構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量20g/m2のエアースルー不織布を用いた。下層を構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量18g/m2のエアースルー不織布を用いた。これらの不織布を用いる以外は実施例1と同様にして表面シートを製造した。得られた表面シートにおける上層の坪量は24g/m2であり、下層の坪量は18g/m2であった。得られた表面シートの縦断面の顕微鏡写真を図9(b)に示す。
【0044】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた表面シートを用いて使い捨ておむつを製造した。吸収体として、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの積繊体を用いた。パルプの坪量は257g/m2、ポリマーの坪量は257g/m2であった。裏面シートとして坪量20g/m2の透湿フィルムを用いた。表面シートは、そのMD方向がおむつの長手方向と一致するように、おむつに組み込まれた。得られた使い捨ておむつを用いて、以下の方法で液残り量及び液戻り量の測定並びに風合いの評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0045】
〔液残り量の測定〕
おむつをその表面シートが上を向くように水平な台の上に載置する。その上に、内寸が20cm×10cmの矩形の枠を置く。枠の内側を油性ペンでなぞり、表面シート上に枠の内側の形状を書き写す。次いで枠内に200gの人工尿を均一に注入する。注入後10分間放置する。枠は、注入後1分経過したら取り外す。10分放置後、表面シートに書いた枠の形に沿って表面シートを切り出し、その重量を測定する。次いで、切り出した不織布を、キッチンペーパーに挟み、その状態下にマングル間を一往復させ人工尿をキッチンペーパーに吸収させる。この操作を2回行う。人工尿が吸収された後の不織布の重量を再び測定し、その重量を、初めに測定した不織布の重量から差し引く。その値を不織布の液残り量の値とする。
【0046】
〔液戻り量の測定〕
おむつをその表面シートが上を向くように水平な台の上に載置する。その上に、内寸が10cm×10cmの矩形の枠を置く。枠の内側を油性ペンでなぞり、表面シート上に枠の内側の形状を書き写す。次いで枠内に160gの人工尿を均一に注入する。注入後10分間放置する。枠は、注入後1分経過したら取り外す。これとは別に、10cm×10cmの濾紙を20枚用意し、その合計の重量を測定しておく。10分放置後、表面シートに書いた枠の形に沿って20枚の濾紙を載せ、更に3.5kgの荷重を2分間加える。2分経過後、濾紙を取り外しその重量を再び測定する。測定された重量を、初めに測定した濾紙の重量から差し引く。その値を不織布の液戻り量の値とする。
【0047】
〔風合いの評価〕
おむつに組み込む前の表面シートの表面(上層の表面)を手のひらで直接触れ、その感触を以下の基準に従って判定する。判定は3人以上で行い、最も支持の多い意見を判定の結果とする。判定が分かれた場合は、真ん中の意見を判定結果とする。
×:硬い。抵抗感(ざらざら感)がある。
△:やや硬い。抵抗感(ざらざら感)が少しある。
○:やや柔らかい。なめらかな感じが少しある。
◎:柔らかい。なめらかな感じがある。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の表面シートを用いて製造されたおむつは、比較例の表面シートを用いて製造されたおむつに比べ、液残り量及び液戻り量が少ないことが判る。また、図9(a)と図9(b)との対比から明らかなように実施例の表面シートにおける凸部の壁部の構成繊維は、比較例の表面シートにおける凸部の壁部の構成繊維よりも、上下方向に向いていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のシートの要部を拡大して示す斜視図である。
【図2】図1に示すシートの平面図である。
【図3】凸部の壁部の角度を測定する方法を示す説明図である。
【図4】図1に示すシートを製造する方法を示す模式図である。
【図5】図4における第1のロールの要部拡大図である。
【図6】図5に示すロールの一部の分解斜視図である。
【図7】上層が凹凸賦形されたまま第1のロール保持されている状態を示す図である。
【図8】接合部となる歯先端部の拡大図である。
【図9】実施例及び比較例で得られたシートの縦断面の顕微鏡像である。
【符号の説明】
【0051】
1 上層
2 下層
3 凹部
4 凸部
10 シート
11 第1のロール
12 第2のロール
14 第3のロール(アンビルロール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品の吸収体よりも肌当接面側に用いられる吸収性物品用のシートであって、
着用者の肌側に向けられる繊維材料からなる上層と、吸収体側に配される繊維材料からなる下層とを有し、
前記上層が、着用者の肌側に向けて突出して多数の凸部を形成していると共に、隣り合う該凸部間が、前記上層と前記下層とが接合されて形成された接合部を含む凹部となっており、
前記凸部及び前記凹部は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されており、更に該列が多列に配置されており、
一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置しておらず、
前記上層の坪量が前記下層の坪量よりも低くなっている吸収性物品用のシート。
【請求項2】
前記上層の構成繊維の繊度が、前記下層の構成繊維の繊度よりも小さくなっている請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記上層の構成繊維の繊度が1.0〜3.3dtexである請求項2記載のシート。
【請求項4】
前記上層及び前記下層が何れも実質的に伸縮しないシート状物からなる請求項1ないし3の何れかに記載のシート。
【請求項5】
前記凸部の内部が空洞になっている請求項1ないし4の何れかに記載のシート。
【請求項6】
前記凸部の壁部を構成する繊維のうちの多数が概ね上下方向に向いている請求項1ないし5の何れかに記載のシート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−148807(P2008−148807A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337882(P2006−337882)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】