説明

吸収性物品

【課題】人体から排出される体液に含まれる広範な臭いを効率よく消臭可能な吸収性物品を提供すること。
【解決手段】 吸収性物品10は、第1の多孔性消臭剤と、該第1の多孔性消臭剤よりも平均孔径の小さな第2の多孔性消臭剤を少なくとも有する。着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤を配すると共に、該第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第2の多孔性消臭剤を配した。第2の多孔性消臭剤として親水性を有するものを用い、第1の多孔性消臭剤として、第2の多孔性消臭剤よりも弱親水性であるか又は疎水性のものを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均孔径の異なる2種以上の多孔性消臭剤を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品に2種類の多孔性消臭剤を含有させることが提案されている。例えばゼオライトとシリカの組み合わせを具備する防臭システムを備えた婦人用衛生吸収性製品が提案されている(特許文献1ないし3参照)。これらの特許文献においては、ゼオライト及びシリカは、それらが混合された状態で吸収体上に重層されるか、又は吸収体中に含有されている。これらの特許文献の記載によれば、ゼオライト及びシリカの組み合わせを用いることで、その防臭力がこれらを単独で用いた場合の和よりも大きくなるとされている。
【0003】
しかし2種類の消臭剤を混合して用いると、両消臭剤のうち、平均孔径の大きな消臭剤が、大きな分子のみならず、本来であれば平均孔径の小さな消臭剤が吸着すべき小さな分子までを吸着してしまい、効率のよい吸着が行えない。
【0004】
【特許文献1】特表平11−512946号公報
【特許文献2】特表平11−513917号公報
【特許文献3】特表平11−513918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面シート、裏面シート及び両シート間に配置された吸収体を有する吸収性物品であって、
第1の多孔性消臭剤と、該第1の多孔性消臭剤よりも平均孔径の小さな第2の多孔性消臭剤を有し、着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤を配すると共に、該第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第2の多孔性消臭剤を配した吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人体から排出される体液に含まれる広範な臭いを効率よく消臭することができる。特に本発明は尿臭の消臭に効果的である。また本発明によれば、消臭剤の使用量を必要最小限に抑えることができ、それによって吸収性物品を柔軟なものにすることができる。特に、従来消臭剤として用いられてきた活性炭の使用量を低減することができるか、又は活性炭を使用することを要しないので、吸収性物品の色目を白くないし薄くすることができ、吸収性物品の外観が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。本発明の吸収性物品には例えば使い捨ておむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0009】
本発明の吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば表面シートとしては、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、吸収性物品の左右両側部に一対の立体ガードを配置することができる。
【0010】
本発明の吸収性物品は、平均孔径の異なる2種以上の多孔性消臭剤を有していることによって特徴付けられる。かかる多孔性消臭剤は、第1の多孔性消臭剤と、該第1の多孔性消臭剤よりも平均孔径の小さな第2の多孔性消臭剤を少なくとも有している。第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤は、それらの平均孔径が相違していれば、同種の材料から構成されていてもよく、或いは異種の材料から構成されていてもよい。
【0011】
本発明においては、第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤を少なくとも含む多孔性消臭剤の吸収性物品内での配置位置が重要である。詳細には、相対的に平均孔径の大きな第1の多孔性消臭剤は、着用者の肌に近い側に配されている。一方、相対的に平均孔径の小さな第2の多孔性消臭剤は、第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に配される。各多孔性消臭剤をこのような位置に配置する理由は次の通りである。
【0012】
人体から排出される体液に含まれる臭い物質は数百種類にも及ぶと言われている。これらの臭い物質のうち、悪臭の一つとされている尿臭では、比較的分子量が大きく嵩高な物質が発生原因に含まれている。このような物質を多孔性消臭剤によって消臭するためには、平均孔径が比較的大きな多孔性消臭剤を用いることが効果的である。しかし、平均孔径が比較的大きな多孔性消臭剤は、尿臭の原因となる分子量が大きな物質を吸着させるのみならず、分子量の小さな物質、例えばケトン類も同時に吸着させてしまうことが本発明者らの検討の結果判明した。従って平均孔径が比較的大きな多孔性消臭剤を単独で用いる場合には、その使用量を多量にしなければ十分な尿臭の消臭効果が発揮されない。多孔性消臭剤を多量に使用する場合には、その固定化のために多量のバインダ等を用いる必要がある。その結果、吸収性物品は硬くなり、風合いが低下する傾向にある。しかも、多孔性消臭剤として、例えば色目の濃い材料である活性炭を多量に用いた場合には、吸収性物品自体の色目も濃くなり、外観の印象が低下する傾向にある。
【0013】
そこで本発明においては、尿臭の原因となる分子量が大きな物質を、平均孔径が比較的大きな第1の多孔性消臭剤で消臭し、それよりも小さな物質を、平均孔径が小さな第2の多孔性消臭剤で消臭している。
【0014】
ところで、多孔性消臭剤による消臭は通常瞬時に起こるものではなく、時間の経過と共に徐々にその効果が発揮されるものである。そこで本発明においては、排出された体液から発生する臭いを直ちに消臭するのではなく、一旦吸収体に吸収された体液から発生する臭いを少なくとも2段階で消臭するという構成を採用している。1段階目の消臭は、第2の消臭剤による消臭である。第2の消臭剤によって、吸収体に吸収された体液から発生する臭い物質のうち、ケトン類などの分子量の比較的小さな物質が吸着される。第2の消臭剤によって分子量の小さい臭い物質を除去した後、2段階目の消臭が行われる。2段階目の消臭は、第1の消臭剤による消臭である。2段階目の消臭の時点では、分子量の小さい臭い物質が第2の消臭剤によって既に除去されているので、第1の消臭剤による比較的分子量の大きな臭い物質の消臭が効率的に行われる。このような2段階の消臭を確実に行うために、本発明においては、着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤を配すると共に、第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌に遠い側に第2の多孔性消臭剤を配している。
【0015】
以上の通りの構成を採用する結果、本発明によれば、体液に含まれる広範な臭いが効率よく消臭される。また、それぞれの多孔性消臭剤の使用量を必要最小限に抑えることができるので、吸収性物品の風合いの低下が防止され、柔軟なものになる。特に、多孔性消臭剤として活性炭を用いる場合には、その使用量を低減することができるので、吸収性物品の色目を白くないし薄くすることができ、外観が良好になる。また活性炭に代えて、白色系の他の多孔性消臭剤を用いることも可能なので、その場合には吸収性物品の色目を一層白くすることができる。
【0016】
図1には、本発明の吸収性物品における第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤の配置状態の一例が示されている。図1は吸収性物品の長手方向中央部における幅方向断面の状態を示す模式図である。図1に示す実施形態の吸収性物品10においては、表面シート11と裏面シート12との間に吸収体13が介在配置されている。このような構成は、従来の吸収性物品と同様である。吸収体13は2枚のシートに被覆されている。2枚のシート14,15は、吸収体13に近い側に位置する内層シート14と、吸収体13から遠い側に位置する外層シート15からなる。2枚のシート14,15は、吸収体13の上下面および左右両側面を被覆している。
【0017】
図1において、表面シート11と吸収体13との間の位置関係に着目すると、表面シート11と吸収体13との間に外層シート15が配され、外層シート15と吸収体13との間に内層シート14が配されている状態になっている。外層シート15は、第1の多孔性消臭剤を有している。一方、内層シート14は、第2の多孔性消臭剤を有している。その結果、図1に示す実施形態では、表面シート11から吸収体13にかけての部位において、着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤が配され、第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第2の多孔性消臭剤が配されている。
【0018】
なお、吸収体13と裏面シート12との間に位置する内層シート14及び外層シート15の位置関係に着目すると、着用者の肌に近い側に第2の多孔性消臭剤が配され、第2の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第1の多孔性消臭剤が配されている。この位置関係は上述の位置関係と逆になっているので消臭効果に影響を及ぼすとの懸念があるかも知れない。しかし、排泄された体液の吸収及び体液から発生する臭い物質の消臭に主として寄与する部位は、表面シート11から吸収体13にかけての部位であるから、当該部位における内層シート14及び外層シート15の位置関係が上述の関係を満たせば本発明の目的は十分に達成され、吸収体13と裏面シート12との間に位置する内層シート14及び外層シート15の位置関係が上述の位置関係と逆になっていても、特に差し支えはない。
【0019】
各多孔性消臭剤を有する各シート14,15としては、液及び気体の透過を妨げないものであればその種類に特に制限はない。例えば、各多孔性消臭剤が混抄された紙、2枚の紙の間に各多孔性消臭剤を挟持してなる2プライの紙などが挙げられる。液に濡れると消臭性能が低下する傾向にある多孔性消臭剤を用いる場合には、該多孔性消臭剤が合成樹脂中に練り込まれた合成樹脂フィルムに多数の孔を形成したものを用いることが、濡れの防止の点から好ましい。
【0020】
第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤の配置状態は図1に示す実施形態に制限されず、例えば図2及び図3に示す実施形態の配置状態を採用することもできる。図2に示す実施形態では、吸収体13が1枚のシート16で被覆されている。シート16は、吸収体13の上下面及び左右両側面を被覆している。図2において、表面シート11と吸収体13との間の位置関係に着目すると、表面シート11と吸収体13との間にシート16が配されている状態になっている。そしてシート16が第2の多孔性消臭剤を有している。第1の多孔性消臭剤は表面シート11に含まれている。その結果、図2に示す実施形態でも、表面シート11から吸収体13にかけての部位において、着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤が配され、第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第2の多孔性消臭剤が配されている。
【0021】
本実施形態におけるシート16としては、図1に示す実施形態の内層シート14及び外層シート15と同様のものを用いることができる。一方、第1の多孔性消臭剤は、表面シート11の二つの面のうち、吸収体13に向かう面にバインダを用いて固定されている。
【0022】
図3に示す実施形態においても、図2に示す実施形態と同様に吸収体13が1枚のシート17で被覆されている。シート17による吸収体13の被覆の状態は図2に示す実施形態と同様である。従って、図3において、表面シート11と吸収体13との間の位置関係に着目すると、表面シート11と吸収体13との間にシート17が配されている状態になっている。そしてシート17が第1の多孔性消臭剤を有している。第2の多孔性消臭剤は吸収体13に含まれている。その結果、図3に示す実施形態でも、表面シート11から吸収体13にかけての部位において、着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤が配され、第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第2の多孔性消臭剤が配されている。
【0023】
本実施形態におけるシート17としては、図1に示す実施形態の内層シート14及び外層シート15と同様のものを用いることができる。一方、第2の多孔性消臭剤は、吸収体の主たる構成材料であるフラッフパルプ中に均一に分散されている。
【0024】
なお本実施形態においては、シート17が吸収体13の上下面及び左右両側面を被覆しているので、吸収体13と裏面シート12との間に位置するシート17と吸収体13との位置関係に着目すると、着用者の肌に近い側、即ち吸収体13に第2の多孔性消臭剤が配され、第2の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側、即ち吸収体13と裏面シート12との間に位置するシート17に第1の多孔性消臭剤が配されている。この位置関係は上述の位置関係と逆になっているので消臭効果に影響を及ぼすとの懸念があるかも知れない。しかし、排泄された体液の吸収及び体液から発生する臭い物質の消臭に主として寄与する部位は、表面シート11から吸収体13にかけての部位であるから、当該部位におけるシート17及び吸収体13の位置関係が上述の関係を満たせば本発明の目的は十分に達成され、吸収体13と裏面シート12との間に位置するシート17と吸収体13との位置関係が上述の位置関係と逆になっていても、特に差し支えはない。
【0025】
第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤の配置状態が、前記の図1ないし図3の何れに示す場合であっても、第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤としては、両者間に平均孔径の相違があればそれらの種類に特に制限はなく、吸収性物品の具体的な用途に応じて適切な種類の消臭剤が用いられる。例えば吸収性物品が、尿を主たる吸収対象とする場合には、尿臭の発生原因となる比較的分子量の大きな分子の吸着能に優れたメソポアの細孔を有する多孔質消臭剤を第1の多孔性消臭剤として用い、4−ブタノンや2−ペンタノン等の比較的低分子量の分子の吸着能に優れたミクロポアの細孔を有する多孔性消臭剤を第2の消臭剤として用いることが効果的である。特に、メソポアの細孔を有する第1の多孔性消臭剤として、平均孔径が2〜50nm、特に2〜20nmのものを用い、ミクロポアの細孔を有する第2の多孔性消臭剤として、平均孔径が10nm未満、特に0.2〜2nmのものを用いることが効果的である。
【0026】
多孔性消臭剤の平均孔径は、次の方法で測定される。十分に加熱乾燥した試料を減圧した後、窒素ガスで加圧する。窒素ガス吸着量と平衡圧とから細孔径と容積を求めるガス吸着法(BET法)で、HK法及びBJH法によって各細孔径の容積分布を求め、平均孔径を求める。測定にはカンタクロム社製、装置名「オートソーブ3」を用いた。測定前に装置を、真空度10-2torr以下・温度100℃で、2時間処理する。
【0027】
第1の多孔性消臭剤としては、例えば多孔性ポリマーや塩化亜鉛賦活活性炭を用いることができる。特に、尿臭の発生原因となる物質の吸着能に優れている観点から、フェニル基を有する重合性モノマーから重合された多孔性ポリマーを用いることが好ましい。そのような多孔性ポリマーとしては、ジビニルベンゼン及び/又はスチレンから重合された多孔性ポリマーが挙げられる。また、多孔性ポリマーは色目が白い点からも好ましく用いられる。多孔性ポリマーは嵩比重が小さいので、これを多量に用いた場合にはその脱落防止のための固定が容易ではないが、本発明においては、その使用量を最小限に抑えることができるので、固定には困難は伴わない。
【0028】
第2の多孔性消臭剤としては、例えば活性白土及び酸性白土のようなクレー、ゼオライト、シリカゲル、水蒸気賦活活性炭(ヤシ殻など)などを用いることができる。これらのうち、色目が白い点及び経済性の点から、ゼオライト及び酸性白土のようなクレーを用いることが好ましい。
【0029】
本発明によれば、第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤は、その使用量を最小限に抑え、所望の消臭効果が得られる。具体的には、第1の多孔性消臭剤の使用量は、吸収性物品の吸収面に対して0.1〜10g/m2、特に0.5〜5g/m2とすることができる。一方、第2の多孔性消臭剤の使用量は、吸収性物品の吸収面に対して0.5〜30g/m2、特に1〜15g/m2とすることができる。
【0030】
本発明においては、第1の多孔性消臭剤と第2の多孔性消臭剤とで、その親水性・疎水性に差を設け、第1の多孔性消臭剤の配置位置と、第2の多孔性消臭剤の配置位置とで、親水勾配を設けることが好ましい。詳細には、着用者の肌から遠い側に配置されている第2の多孔性消臭剤として親水性を有するものを用い、着用者の肌に近い側に配置されている第1の多孔性消臭剤として、第2の多孔性消臭剤よりも弱親水性であるか、又は疎水性のものを用いることが好ましい。これによって、表面シートから吸収体までの部位にわたって親水勾配が形成される。従って、表面シートに排出された体液は、吸収体へ向かって引き込まれて、吸収体に集中しやすくなる。その結果、臭気が外部に放出されにくくなる。その上、吸収性物品の表面での液残りが少なくなるので、これによっても臭気が外部に放出されにくくなる。
【0031】
各多孔性消臭剤の親水性・疎水性の程度は、充填カラム法によって測定することができる。充填カラム法では、内径5mmのアクリル製カラム(チューブ)に、濡れ性を測定する試料を20mmの高さまで充填し、濡れ試験液(水)に接触させて吸収させ、1分間で吸収した試験液の重量の関係から試料の濡れ特性を求めることができる。これにより各種消臭剤(粉体を含む)の親水性・疎水性の比較を行う。試料は、吸収した重量が大きいほど親水性が高いものである。
【0032】
多孔性消臭剤を用いた物理吸着を利用した消臭では、消臭容量は、該消臭剤の使用量によって決定される。多孔性消臭剤の使用量を多くすると、吸収性物品の風合いが低下する傾向にあることは先に述べた通りなので、該消臭剤の使用量には自ずと限界がある。従って、多孔性消臭剤の使用量を増加させずに消臭容量を維持するためには、吸収性物品の使用中に臭気の原因物質が増加しないようにすることが重要である。この観点から、吸収性物品に抗菌剤を配して、吸収性物品の使用中における臭気の原因物質の増加を抑えることが好ましい。
【0033】
臭気の原因物質は、体液が吸収されている吸収体においてその発生が顕著なことから、吸収体及び/又はその近傍の部位に抗菌剤を配することが好ましい。例えば、先に説明した図1に示す実施形態においては、吸収体13及び/又はそれを被覆する内層シート14が抗菌剤を有することが好ましい。内層シート14が抗菌剤を有する場合、該シート14中に抗菌剤及び第2の多孔性消臭剤が共存することになるが、そのことに何ら不都合はない。また、図2及び図3に示す実施形態においては、吸収体13及び/又はシート16,17が抗菌剤を有することが好ましい。
【0034】
抗菌剤としては4級アンモニウム塩化合物、ポリフェノールなどフェノール性水酸基を有する化合物、銀、銅又は亜鉛等抗菌性金属を含む抗菌剤が好ましく用いられる。特に抗菌効果が効果的に発現する点から、尿等の体液と接触して初めて抗菌効果を発現する抗菌剤を用いることが好ましい。体液と接触して初めて抗菌効果を発現する抗菌剤としては、ゼオライト、カンクリナイトおよびシリカゲルなどの無機材料の表面に前述の金属のイオンが結合してなるもの(以下、抗菌金属クレイという)を好適に用いることができる。
【0035】
抗菌金属クレイとしては、金属として銀、銅又は亜鉛を含有するものが、高抗菌効果の点から好ましい。抗菌金属クレイとして市販品の銀ゼオライトも用いることができるが、例えば本出願人の先の出願に係る特願2004−47061に記載の銀カンクリナイトを用いることが好ましい。銀カンクリナイトは、吸収性物品の吸収面に対して0.01〜1g/m2、特に0.1〜0.5g/m2配合されていることが、十分な抗菌効果の発現及び製造コストの低減の点から好ましい。
【0036】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図1に示す実施形態においては、内層シート14が、吸収体13の上下面及び左右両側面を被覆し、且つ外層シート15が内層シート14を被覆していたが、これに代えて、これらのシート14、15は、吸収体13の上面のみを被覆するものであってもよい。図2に示す実施形態のシート16及び図3に示す実施形態のシート17についても同様である。
【0037】
また前記実施形態においては、図1ないし図3に示す実施形態においては第1の多孔性消臭剤及び第2の多孔性消臭剤の2種類の多孔性消臭剤を用いたが、これに代えて互いに粒径の異なる3種類以上の多孔性消臭剤を用いてもよい。その場合には、着用者の肌に近い部位ほど、平均孔径の大きな多孔性消臭剤を配することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0039】
〔実施例1〕
図1に示す構造のモデル吸収性物品を作製した。パルプ(商品名「NB416L」、ウェハウザー ニューバーン社製)2.25gと、高吸収性ポリマー(商品名「アクアリックCAW4-S」、日本触媒株式会社製)3gを用い、これらを100×150mmの面積に均一混合して吸収体13を得た。内層シート14は、第2の多孔性消臭剤としてシリカゲル0.45gを用い、これを200×150mmの吸収紙(伊野紙株式会社製、坪量16g/m2)2枚の間にサンドイッチして作製した。外層シート15は、第1の多孔性消臭剤としてジビニルベンゼンスチレン共重合体0.15gを用い、これを200×150mmの吸収紙(伊野紙株式会社製、坪量16g/m2)2枚の間にサンドイッチして作製した。吸収体13をまず内層シート14で包み、次にその外側を外層シート15を包んだ。これら全体を、表面シート11(芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維を原料とするエアスルー不織布)と、裏面シート12(ポリエチレン製フィルム)とでサンドイッチした。このようにしてモデル吸収性物品を作製した。各多孔性消臭剤の詳細は表1に示す通りである。
【0040】
〔実施例2〕
図2に示す構造のモデル吸収性物品を作製した。吸収体13としては、実施例1と同様のものを作製した。吸収体13を被覆するシート16は、第2の多孔性消臭剤としてシリカゲル0.45gを用い、これを200×150mmの吸収紙(伊野紙株式会社製、坪量16g/m2)2枚の間にサンドイッチして作製した。表面シート11として、芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維を原料とするエアスルー不織布を用いた。この表面シート11の吸収体13に向かう片面に、ホットメルト粘着剤(商品名「AFX−085」、ニッタフィンドレー株式会社製)を塗布量10g/m2で塗布した後、第1の多孔性消臭剤としてジビニルベンゼンスチレン共重合体を坪量5g/m2で散布固定した。吸収体13をシート16で包み、これら全体を、表面シート11と裏面シート12(ポリエチレン製フィルム)とでサンドイッチした。このようにしてモデル吸収性物品を作製した。各多孔性消臭剤の詳細は表1に示す通りである。
【0041】
〔実施例3〕
図2に示す構造のモデル吸収性物品を作製した。パルプ(商品名「NB416L」、ウェハウザー ニューバーン社製)2.25gと、高吸収性ポリマー(商品名「アクアリックCAW4-S」、日本触媒株式会社製)3gと、第2の多孔性消臭剤としてのヤシガラ活性炭0.225gとを用い、これらを100×150mmの面積に均一混合して吸収体13を得た。吸収体13を被覆するシート17は、第1の多孔性消臭剤としてジビニルベンゼンスチレン共重合体0.15gを用い、これを200×150mmの吸収紙(伊野紙株式会社製、坪量16g/m2)2枚の間にサンドイッチして作製した。吸収体13をシート17で包み、これら全体を、実施例1で用いた表面シート11及び裏面シート12と同様のものでサンドイッチしてモデル吸収性物品を作製した。各多孔性消臭剤の詳細は表1に示す通りである。
【0042】
〔比較例1〕
実施例1において作製したモデル吸収性物品において、外層シート15で用いたジビニルベンゼンスチレン共重合体に代えて塩化亜鉛賦活活性炭0.15gを用いた。また内層シート14は用いなかった。これ以外は実施例1と同様にしてモデル吸収性物品を得た。塩化亜鉛賦活活性炭の詳細は表1に示す通りである。
【0043】
〔比較例2〕
実施例2において作製したモデル吸収性物品において、表面シートとして芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維を原料とするエアスルー不織布を用いた。この不織布には多孔性消臭剤は固定されていなかった。これ以外は実施例2と同様にしてモデル吸収性物品を得た。
【0044】
〔比較例3〕
実施例3において作製したモデル吸収性物品において、シート17を用いない以外は実施例1と同様にしてモデル吸収性物品を得た。
【0045】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたモデル吸収性物品に人尿30gを吸収させ、容積1.2リットルの密閉容器中に素早く入れて気密状態にした。10分後に容器の蓋を開け、容器中の臭いを5名のモニターに評価させた。評価基準は以下の通りである。5人の平均を算出し、その値を臭気強度の官能値とした。官能値は値が小さいほど臭気が弱いことを意味する。また、モデル吸収性物品を表面シート側から見たときの外観を同モニターに評価させた。評価基準は以下の通りである。それらの結果を表2に示す。なお、使用した人尿は、実施例及び比較例で同じ条件となるようにするために、全て同じものを用いた。
【0046】
〔臭気強度〕
5;非常に強く臭う
4;強く臭う
3;臭う(もとの尿臭と変わらない)
2;弱くなった
1;非常に弱くなった(尿臭とわかりにくい)
0;無臭
【0047】
〔外観〕
○;衛生用品として見たとき色および色むらが気にならない。
△;衛生用品として見たとき色および色むらがやや気になる。
×;衛生用品として見たとき色および色むらが気になる。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表2に示す結果から明らかなように、各実施例のモデル吸収性物品は臭気強度が弱く、しかもその外観が良好であることが判る。これに対して、比較例1のモデル吸収性物品は、臭気強度は弱いものの、活性炭の有する黒色が表面シート越しに視認されてしまう。比較例2のモデル吸収性物品は、外観は良好であるものの、臭気強度が強いものとなってしまう。比較例3のモデル吸収性物品では、活性炭が吸収体中に含まれているので、その黒色が表面シート越しに見えづらくなって外観は悪くはないものの、臭気強度が強いものとなってしまう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の吸収性物品の長手方向中央部における幅方向断面の状態の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の吸収性物品の長手方向中央部における幅方向断面の状態の他の例を示す模式図である。
【図3】本発明の吸収性物品の長手方向中央部における幅方向断面の状態の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
10 吸収性物品
11 表面シート
12 裏面シート
13 吸収体
14 内層シート
15 外層シート
16,17 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート及び両シート間に配置された吸収体を有する吸収性物品であって、
第1の多孔性消臭剤と、該第1の多孔性消臭剤よりも平均孔径の小さな第2の多孔性消臭剤を有し、着用者の肌に近い側に第1の多孔性消臭剤を配すると共に、該第1の多孔性消臭剤を配した部位よりも着用者の肌から遠い側に第2の多孔性消臭剤を配した吸収性物品。
【請求項2】
第2の多孔性消臭剤として親水性を有するものを用い、第1の多孔性消臭剤として、第2の多孔性消臭剤よりも弱親水性であるか又は疎水性のものを用いる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体及び/又はその近傍の部位に抗菌剤を配した請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
第1の多孔性消臭剤が、フェニル基を有する重合性モノマーから重合された多孔性ポリマーである請求項1ないし3の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートと前記吸収体との間に第1の多孔性消臭剤を有するシートを配し、該シートと前記吸収体との間に第2の多孔性消臭剤を有するシートを配した請求項1ないし4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の上下面及び左右両側面を被覆するように第1の多孔性消臭剤を有するシートを配し、且つ第1の多孔性消臭剤を有するシートを被覆するように第2の多孔性消臭剤を有するシートを配した請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートに第1の多孔性消臭剤が含まれており、前記表面シートと前記吸収体との間に第2の多孔性消臭剤を有するシートを配した請求項1ないし4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体の上下面及び左右両側面を被覆するように第2の多孔性消臭剤を有するシートを配した請求項7記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記表面シートと前記吸収体との間に第1の多孔性消臭剤を有するシートを配し、前記吸収体中に第2の多孔性消臭剤を含有させた請求項1ないし4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体の上下面及び左右両側面を被覆するように第1の多孔性消臭剤を有するシートを配した請求項9記載の吸収性物品。
【請求項11】
第1の多孔性消臭剤の平均孔径が2〜50nmであり、第2の多孔性消臭剤の平均孔径が10nm未満である請求項1ないし10の何れかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−97953(P2007−97953A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294026(P2005−294026)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】