説明

吸収性物品

【課題】中高部に吸収された液の長手方向の拡散が過度に生じることなく、液拡散による肌への影響を抑制し、かつ、後方部に設けられた防漏溝によって液の拡散が阻害されにくく、後方部において横漏れが生じにくい吸収性物品を提供すること。
【解決手段】吸収体4は、吸収性物品1の排泄領域Aから後方部Cに亘って連なる、周辺部よりも厚みが厚い中高部Mを有し、吸収性物品1の肌当接面における少なくとも中高部Mの幅方向外方には、それぞれ、表面シート2と吸収体4とを一体化する外溝7が形成されており、吸収性物品1の肌当接面において、排泄領域Aにおけるその後端近傍には、吸収性物品1の幅方向に延びる中溝8が形成されており、中溝8の両端部81は、それぞれ、中高部Mよりも幅方向外方に位置し且つ外溝7から離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品において、吸収容量の増加やフィット性の改善等による防漏性の向上を図るため、吸収体の中央部(排泄領域に位置する部分)の厚みを周辺部よりも厚くして、中高部を形成することが知られている。また、長時間の使用や排泄量の多い時間帯の使用のために、吸収容量を更に増加させることが望まれており、中高部を排泄領域から後方部(排泄領域よりも後方の部分)に亘って設けた生理用ナプキンが開発されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の吸収性物品においては、排泄領域から後方部に亘る中高部における幅方向外方に一対の外溝(側部エンボス)が設けられており、更に、後方部における中高部において、中高部を横断して一対の該外溝を繋ぐ後部横断エンボスが設けられている。そして、この後部横断エンボスを設けることによって、後方部における中高部において、肌当接面におけるナプキン長手方向の液漏れ防止が図られている。
【0004】
しかし、特許文献1記載の吸収性物品においては、排泄領域よりも離れた後方領域に後部横断エンボスが形成されており、中高部による過度な液の拡散を抑制することができない。仮に、後部横断エンボスが排泄領域に隣接する後方領域に形成されたとしても、その両端部が一対の外溝に繋がっているため、中高部に吸収された液の拡散が、後部横断エンボスによって阻害されやすい。そして、後部横断エンボスの存在により、液の長手方向の拡散が抑制され、それに起因して横漏れが生じやすい。
【0005】
【特許文献1】特開2001−95843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、排泄領域から後方部に亘る中高部、該中高部の幅方向外方に位置する外溝及び後方部に幅方向に延びる防漏溝を備えた吸収性物品において、中高部に吸収された液の長手方向の拡散が過度に生じることなく、液拡散による(蒸散等による)肌への影響を抑制し、かつ後方部に設けられた防漏溝によって液の拡散が阻害されにくく、後方部において横漏れが生じにくい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肌当接面を構成する表面シート、非肌当接面を構成する裏面シート及び両シート間に介在する吸収体を備えた縦長の吸収性物品であって、前記吸収体は、吸収性物品の排泄領域から後方部に亘って連なる、周辺部よりも厚みが厚い中高部を有し、吸収性物品の肌当接面における少なくとも前記中高部の幅方向外方には、それぞれ、前記表面シートと前記吸収体とを一体化する外溝が形成されており、吸収性物品の肌当接面において、前記排泄領域におけるその後端近傍には、吸収性物品の幅方向に延びる中溝が形成されており、該中溝の両端部は、それぞれ、該中高部よりも幅方向外方に位置し且つ前記外溝から離間している吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、排泄領域から後方部に亘る中高部、該中高部の幅方向外方に位置する外溝及び後方部に幅方向に延びる防漏溝を備えた吸収性物品において、中高部に吸収された液の長手方向の拡散が過度に生じることなく、液拡散による(蒸散等による)肌への影響を抑制し、かつ後方部に設けられた防漏溝によって液の拡散が阻害されにくく、後方部において横漏れが生じにくい。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の吸収性物品について、その好ましい一実施形態である第1実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態は、本発明を生理用ナプキンに適用したもので、第1実施形態の生理用ナプキン1は、図1及び図2に示すように、肌当接面を構成する表面シート2、非肌当接面を構成する裏面シート3、及び両シート2,3間に介在する吸収体4を備えた縦長の吸収性本体10を有している。吸収性本体10の肌当接面側の長手方向両側部には、一対のサイドシート5が、吸収性本体10の長手方向の略全長に亘って配されている。
本明細書において、「肌当接面」とは、各部材の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けて配される面を意味し、「非肌当接面」とは、肌当接面の反対面を意味する。「長手方向」及び「幅方向」とは、特に明記のない限り、それぞれ吸収性物品の長手方向及び吸収性物品の幅方向を意味する。
【0010】
本実施形態の生理用ナプキン1は、着用時に着用者の排泄部に対向する排泄領域Aと、排泄領域Aの前後にそれぞれ延在する前方部B及び後方部Cとを有する。排泄領域Aは、膣口より排出される経血を吸収するための領域であり、着用時において、膣口を中心として陰唇部を覆う程度の領域である。排泄領域Aの前端は、着用時において、陰唇部の前方から恥丘の間に対応する領域に位置し、身体形状の湾曲が前(腹)側で大きくなる位置を越えない。排泄領域Aの後端は、着用時において、陰唇部の後端から肛門の間に対応する領域に位置し、肛門付近から始まる身体形状の湾曲が後(背)側で大きくなる位置を越えない。
生理用ナプキン1の着用時には、前方部Bが着用者の前(腹)側に配され、後方部Cが着用者の後(背)側に配される。
【0011】
表面シート2は、図1及び図2に示すように、吸収体4の肌当接面側の全域を被覆している。裏面シート3は、吸収体4の非肌当接面側の全域を被覆し、更に、吸収体4の幅方向両側縁それぞれから幅方向外方に延出した部分を有する。サイドシート5も、吸収体4の幅方向両側縁それぞれから幅方向外方に延出した部分を有する。サイドシート5における延出した部分と裏面シート3における延出した部分との積層体は、吸収性本体10の幅方向外方それぞれにサイドフラップ6を形成している。
【0012】
サイドフラップ6は、排泄領域A及び後方部Cそれぞれにおいて大きく外方に膨出し、それぞれ、一対のウイング部61,61及び一対の後部フラップ62,62を形成している。ウイング部61は、装着時に非肌当接面側に折り返されてショーツ等の着衣の外面(非肌対向面)に固定される。後部フラップ62は、着用時にショーツ等の着衣の内面(肌対向面)に配される。
裏面シート3の非肌当接面側の幅方向中央部及び一対のウイング部61,61の非肌当接面側には、それぞれ粘着剤(図示せず)が塗布されており、これにより、生理用ナプキン1をショーツ等に固定するための固定部が形成されている。
【0013】
吸収体4は、図1に示すように、生理用ナプキン1の長手方向に長い縦長形状を有しており、周辺部よりも厚みが厚い中高部Mを有している。中高部Mは、生理用ナプキン1の排泄領域Aから後方部Cに亘って連なっている。中高部Mは、生理用ナプキン1の長手方向に長い矩形状を有している。図1に示す破線の斜線部は、中高部Mの範囲を示す。
本実施形態における中高部Mは、多層構造を有する多層部から形成されている。中高部Mは、吸収体4の長手方向及び幅方向の何れにも内方に位置しており、換言すると、吸収体4の中央部に形成されている。
吸収体4は、図1及び図2に示すように、前方部Bから後方部Cに亘って配された主吸収体41と、排泄領域Aから後方部C(詳細には後方部Cの略中央部)に亘って配された補助吸収体42とから構成されている。
【0014】
主吸収体41は、図2に示すように、下部吸収体41Aと、下部吸収体41Aの肌当接面側に配された上部吸収体41Bとから構成されている。下部吸収体41A及び上部吸収体41Bは、何れも、生理用ナプキン1の長手方向に長い縦長形状を有している。
【0015】
補助吸収体42は、図1及び図2に示すように、主吸収体41よりも小型の吸収体で、生理用ナプキン1の長手方向に長い縦長形状を有しており、排泄領域Aから後方部Cに亘って、下部吸収体41Aと上部吸収体41Bとの間に配されている。このように、主吸収体41の中に補助吸収体42を配することで、吸収体4の吸収容量を部分的に容易に且つ効率的に増大させることができる。
また、補助吸収体42が下部吸収体41Aと上部吸収体41Bとの間に挟まれていると、補助吸収体42が介在している部分とそれよりも外側の部分との境目付近に大きな段差が生じず、厚み方向の重心が厚み方向の略中心に位置するため、ヨレが生じにくくなる。
【0016】
補助吸収体42は、図2に示すように、一枚の矩形の吸収性シートを折り畳んで形成されている。具体的には、吸収性シートにおける、生理用ナプキン1の長手方向に沿う両側部領域を、表面シート2側に折り返し、その折り返した部分の端縁部同士を吸収性シートの幅方向中央部で重ね合わせてある。
【0017】
下部吸収体41Aと上部吸収体41Bとの間においては、補助吸収体42が介在していない部位は2層構造となっているのに対して、補助吸収体42が介在している部位は4層構造の多層部となっている。
尚、下部吸収体41Aと上部吸収体41Bとは、補助吸収体42が介在していない部位において互いに接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。また、補助吸収体42が介在している部位(多層部)においても、下部吸収体41Aと補助吸収体42との間及び上部吸収体41Bと補助吸収体42との間は、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
【0018】
次に、外溝7について説明する。図1及び図2に示すように、吸収性本体10の肌当接面における少なくとも中高部Mの幅方向外方には、それぞれ、表面シート2と吸収体4とを一体化する外溝7が形成されている。外溝7は、概ね吸収性本体10の長手方向に延びており、排泄領域Aにおける中高部Mに近接する部分が、幅方向内方に湾曲する形状を有しており、後方部Cにおける中高部Mに近接する部分が、幅方向外方に湾曲する形状を有している。両外溝7は、それらの後端部において、後方溝7Aを介して連結されており、また、それらの前端部において、内側前方溝7C及び外側前方溝7Dを介して連結されている。
【0019】
後方溝7Aは、前側に開いた略U字形状を有してしている。後方溝7Aの長さ(その前端部と後端部との間を、生理用ナプキン1の長手方向に沿って測定した長さ)は、好ましくは15〜40mmである。
また、内側前方溝7C及び外側前方溝7Dは、後側に開いた略U字形状を有しており、内側前方溝7Cが内側に位置し、外側前方溝7Dが外側に位置する二重溝構造を形成している。
【0020】
上記外溝7においては、表面シート2と吸収体4とが一体化される程度に表面シート2に連続的な窪みが生じていれば良く、吸収体4が窪んでいることは必ずしも必要ない。ただし、表面シート2と吸収体4との一体化を安定化させる観点から、吸収体4においては、外溝7に対応する位置に部分的に圧縮部が形成されていることが好ましく、特に液の防漏性、拡散性及び柔軟性の観点から、異なる深さを有する窪みが、外溝7に対応する位置に形成されていることがより好ましい。
【0021】
中高部Mの後端部M1は、着用者の長時間使用時においても吸収性と身体形状へのフィット性を確保する観点から、身体の後方側の湾曲開始位置を越えて且つお尻の溝を越えない位置とすることが好ましく、恥骨に達しない程度の位置とすることが更に好ましい。具体的には、中高部Mの後端部M1は、身体の溝形状を覆える観点から、中溝8の湾曲頂部から2〜15cmの範囲に位置することが好ましく、身体の溝にフィットさせ易い観点から、中溝8の湾曲頂部から5〜10cmの範囲に位置することがより好ましい。
また、同様の観点から、第1実施形態のようにウイング部61を有する場合には、中高部Mの後端部M1は、ウイング部61の後端位置61aからの横方向のモレを防ぐ上でも後部フラップ62付近に位置することが好ましく、後部フラップ62の最も幅の広い部分に位置することが更に好ましい。
【0022】
吸収体4の全長(生理用ナプキン1の長手方向の長さ)は、好ましくは170〜370mmであり、吸収体4の幅(生理用ナプキン1の幅方向の長さ)は、好ましくは60〜90mmである。また、中高部Mの全長(生理用ナプキン1の長手方向の長さ)は、好ましくは100〜300mmであり、中高部Mの幅(生理用ナプキン1の幅方向の長さ)は、好ましくは30〜50mmである。吸収体4と中高部Mとの全長の比(吸収体:中高部)は、好ましくは1:0.35〜1:0.81あり、また、吸収体4と中高部Mとの幅の比(吸収体:中高部)は、好ましくは1:0.3〜1:0.84である。
【0023】
吸収体4においては、中高部Mにおける坪量は、好ましくは100〜500g/m2であり、中高部Mの周辺部における坪量は、好ましくは80〜240g/m2である、両者の坪量の比(中高部/中高部の周辺部)は、好ましくは1.1〜6.3、更に好ましくは1.5〜3である。
吸収体4においては、中高部Mにおける厚みは、好ましくは0.5〜5mmであり、中高部Mの周辺部における厚みは、好ましくは0.5〜3mmである。中高部Mにおける厚みと中高部の周辺部における厚みとの比(前者/後者)は、好ましくは1.1〜5、更に好ましくは1.5〜3である。中高部Mの周辺部における厚みが薄いと、装着時において違和感が生じにくい。
【0024】
吸収体4においては、中高部Mにおける剛性は、好ましくは30〜50cNであり、中高部Mの後端部M1における剛性は、好ましくは15〜40cNである。両者の剛性の比(中高部/中高部の後端部)は、好ましくは1.0〜1.5、更に好ましくは1.0〜1.4、特に好ましくは1.1〜1.3である。両者の剛性の差(中高部−中高部の後端部)は、好ましくは10cN以下、更に好ましくは8cN以下である。
【0025】
ここでいう剛性は、以下のようにして測定される。
温度23℃、湿度50%の試験室にて、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定された剛軟性測定法に適合した(株)大栄科学精器製作所製:ハンドロメーター試験機を使用する。スロット間を30mmに調整した試料台上に、試験片を、該試験片の測定部位がスロット間の中心に位置するように且つ吸収体の長手方向に沿う該試験片の長さがスロットに直交する方向と一致するようにして、水平に配置する。試験片は試料台に固定しない。試料台の表面から8mm下方の位置(最下位置)まで下降するように調整したブレードを、試験片の上方から一定速度:200mm/minで下降させる。そして、該試験片を長さ方向前後に押圧したときの指示計(荷重計)が示す最高値(cN)を読み取る。測定は5回行い、その平均値を算出して剛性値とした。
【0026】
尚、試験片については、特に予備乾燥をせずに室温にて放置された吸収性物品から吸収体を破損しないように取り出し、幅:75mm、長さ:270mmで、長手方向両端部が半円形状のサンプルを得、これを試験片とした。この場合、なるべく吸収体以外の材料を排除することが好ましいが、吸収体を破損させないために、吸収体は、表面シートの一部、裏面シートの一部又は表面シートと裏面シートとの接合用の接着剤が一部付着した状態であってもよい。また、試験片の幅が異なる場合は、剛性値を75mm幅に換算して調整する。また、吸収体は、その長さが50mm(スロット間:30mm+両端:各10mm)以上あれば測定可能である(換算の必要はない)。
【0027】
吸収体の厚みは、剛性測定用のサンプルと同様に、破損しないように取り出した吸収体を使用して測定するが、表面シート、裏面シート、接着剤等の吸収体以外の材料を含まない部分で測定する。
尚、厚みの測定は、(株)尾崎製作所製:厚み計「PEACOCK UPRIGHT DIAL GUAGE No.207」を使用し、2.5g/cm2荷重下で行う。測定は5個のサンプルについて行い、その平均値を算出して厚みとした。
【0028】
次に、中溝8について説明する。肌当接面において、排泄領域Aにおけるその後端近傍には、生理用ナプキン1の幅方向に延びる中溝8が形成されている。「排泄領域Aにおけるその後端近傍」とは、排泄領域Aと後方部Cとの境界から排泄領域A側に向けて10mm以内、好ましくは5mm以内の領域をいう。
中溝8の両端部81は、それぞれ、中高部Mよりも幅方向外方に位置していると共に、外溝7から離間している。中溝8の端部81と中高部Mの側縁部との距離L1〔図3(b)参照〕は、生理用ナプキン1の幅方向に沿って測定した値で、好ましくは1〜8mm、更に好ましくは2〜5mmである。中溝8の端部81と外溝7との間隔L2〔図3(a)参照〕は、生理用ナプキン1の幅方向に沿って測定した値で、好ましくは1〜7.5mm、更に好ましくは3.5〜6.5mmである。
【0029】
中溝8は後方に向けて湾曲している。中溝8が湾曲していると、その頂点近傍に液が集まりやすい。中溝8の太さL4〔図3(b)参照〕は、好ましくは2〜4mmである。湾曲した中溝8全体の長さ(生理用ナプキン1の長手方向の長さ)L5〔図3(b)参照〕は、好ましくは5〜20mmである。中溝8全体の幅(生理用ナプキン1の幅方向の長さ)L6〔図3(b)参照〕は、好ましくは37〜51mmである。
中溝8の両端部81は、中高部Mの後端部M1よりも前方に位置している。中高部Mの後端部M1と中溝8との間隔(生理用ナプキン1の長手方向の最短距離)は、好ましくは20〜200mm、更に好ましくは40〜140mmである。
【0030】
中溝8は、生理用ナプキン1の幅方向に延びる(連続線状の)圧縮溝からなる。該圧縮溝は、例えば、表面シート2及び吸収体4の何れにも連続溝が形成された形態でもよく、表面シート2には連続溝が形成されているが、吸収体4には圧縮されている部位及び圧縮されていない部位を有している(つまり破線状の)形態でもよい。吸収体4の圧縮されている部位の形状は、剛性と適度な拡散性を付与する観点から、中溝8の延びる方向に長い形状であることが好ましく、具体的には、楕円、矩形等であることが好ましい。
【0031】
中溝8、外溝7、後方溝7A、内側前方溝7C及び外側前方溝7D(後述する外側後方溝7Bについても同様である)は、例えば以下のようにヒートエンボス法により形成することができる。即ち、周面に、これらの中溝8又は溝7,7A,7C,7Dに対応する形状の凸条部を有するエンボスロールと、エンボスロールの周面に対向配置された受けロールとを具備するヒートエンボス装置を用いる。吸収体4と表面シート2との積層体を、表面シート2側がエンボスロール側に位置するように、両ロール間に挿通する。そして、これらを一体的に加熱及び加圧することで、中溝8又は溝7,7A,7C,7Dが形成される。
これらの中溝8及び溝7,7A,7C,7Dは、ヒートエンボス法以外にも、超音波エンボス法、高周波エンボス法等によって形成することもできる。
【0032】
本実施形態の生理用ナプキン1の各部を構成する材料としては、当該技術分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。
例えば、表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布や、開孔フィルムを用いることができる。
裏面シート3としては、液不透過性の材料や撥水性の材料を用いることができる。液不透過性の材料としては、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート材等を用いることができ、撥水性の材料としては、スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド等からなる多層構造の複合不織布、スパンボンド不織布、ヒートボンド不織布、エアスルー不織布等を用いることができる。
サイドシート5としては、裏面シート3と同様のものを用いることができる。
【0033】
主吸収体41としては、パルプ繊維等からなる繊維集合体、繊維集合体と吸水性ポリマーとからなるもの(吸水性ポリマーと繊維材料との混合積繊物)等を用いることができる。
吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。
主吸収体41を構成する繊維としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等の親水性繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系繊維等を用いることできる。
吸水性ポリマー及び繊維は、それぞれ一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
補助吸収体42(前記吸収性シート)としては、主吸収体41と同様のものや、2枚の不織布や紙の間に吸収性ポリマーやパルプを担持した吸収性シート、特開平8−246395号公報に記載の吸収性シート等を用いることができる。
【0035】
第1実施形態の生理用ナプキン1によれば以下の効果が奏される。
第1実施形態の生理用ナプキン1においては、吸収体4は、排泄領域Aから後方部Cに亘って連なる中高部Mを有しており、肌当接面における中高部Mの幅方向外方に外溝7が形成されている。そのため、吸収体4の吸収容量を十分に確保でき、長時間の使用や排泄量の多い時間帯の使用に適していると共に、後方部Cにおける横漏れ防止性が高い。
【0036】
また、幅方向に延びる中溝8が形成されており、中溝8の両端部81は、それぞれ中高部Mよりも幅方向外方に位置している。そのため、中溝8によって、中高部Mを長手方向に移動する液を、効果的に抑制(遮断)することができる。更に、中溝8によって中高部Mを押さえ付け、一体化することができるため、中高部Mが膨らんで浮き上がることを防止することができる。
また、中溝8の両端部81が外溝7から離間しているため、液の長手方向の拡散性を確保でき、従って、液の長手方向の拡散性の低さに起因する横漏れを防止することができる。
【0037】
次に、本発明の吸収性物品の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主として説明し、同様の点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。他の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0038】
図4は、本発明の吸収性物品の第2実施形態の生理用ナプキンにおける中溝及びその周辺部を示している。第2実施形態の生理用ナプキン1は、図4に示すように、第1実施形態に比して、中溝8の平面視形状が異なる。具体的には、中溝8は、第1実施形態においては、生理用ナプキン1の幅方向に延びる連続線状の圧縮溝からなるのに対し、第2実施形態においては、生理用ナプキン1の幅方向に延びる破線状(ドットの集合体を含む)の圧縮溝からなる。該圧縮溝は、例えば、表面シート2及び吸収体4の何れにも破線状の溝が形成された(表面シート2及び吸収体4において、圧縮されている部位及び圧縮されていない部位を有している)形態でもよく、表面シート2のみに破線状の溝が形成された(吸収体4には圧縮されている部位は存在しない)形態でもよい。
【0039】
第2実施形態においては、中溝8は、その中央部に1個の非連続部82が存在し、2分されている。第2実施形態のように、非連続部82が中溝8の中央部に1個のみ存在する形態においては、非連続部82の幅(生理用ナプキン1の幅方向の長さ)L7は、好ましくは2〜15mmである。
第2実施形態によれば、第1実施形態に比して、非連続部82の存在によって、中高部Mにおいて液の長手方向の拡散性が向上する。
【0040】
図5は、本発明の吸収性物品の第3実施形態の生理用ナプキンにおける中溝及びその周辺部を示している。第3実施形態の生理用ナプキン1は、図5に示すように、第2実施形態に比して、中溝8における非連続部82の個数が異なる。具体的には、非連続部82は、第2実施形態においては、中溝8の中央部に1個のみ存在しているのに対し、第3実施形態においては、中溝8を生理用ナプキン1の幅方向に5分するように4個存在している。
第3実施形態のように、非連続部82が中溝8に複数個存在する形態においては、1個の非連続部82の幅(生理用ナプキン1の幅方向の長さ)L7は、好ましくは2〜5mmであり、非連続部82の合計幅(L7×個数)は、好ましくは8〜20mmである。
尚、非連続部82の個数は、1個の中溝8につき、例えば2〜7個形成することができる。
【0041】
第3実施形態及び第2実施形態における中溝8のような、破線状の圧縮溝からなる中溝8は、図6(a)に示すように、高圧搾部83と低圧搾部84とが交互に形成されていてもよく、図6(b)に示すように、高圧搾部83と非圧搾部85とが交互に形成されていてもよい。高圧搾部83は、エンボス加工時に、低圧搾部84よりも強く圧搾された部分であり、そのため、低圧搾部84よりも厚みが薄くなっている。非圧搾部85は、エンボス加工時に、実質的に圧搾されなかった部分である。
【0042】
図7は、本発明の吸収性物品の第4実施形態の生理用ナプキンの平面図であり、図8は、第4実施形態の生理用ナプキンにおける中溝及びその周辺部を示している。第4実施形態の生理用ナプキン1は、図7及び図8に示すように、第1実施形態に比して、後方部Cにおける中高部M(MC)の形状が異なると共に、後方部Cにおける外溝7の外側に、外側後方溝7Bが更に設けられており、二重溝構造を形成している点が、主として異なる。
【0043】
具体的には、図7に示すように、後方部Cにおける中高部MCは、後方に向けて先細の先細形状を有している。また、肌当接面において、後方部Cの中高部MCにおける先細形状部分の幅方向外方に、外溝7とは別の外側後方溝7Bがそれぞれ設けられている。
第4実施形態においては、中溝8の両端部81は、排泄領域Aにおける中高部M(MA)の最外側縁を通り且つ生理用ナプキンの長手方向に延びる仮想直線(図示せず)よりも、幅方向外方に位置している。
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される他、後方部Cの中高部MCにおける先細形状部分の幅方向外方に、外溝7とは別の外側後方溝7Bが設けられているため、後方部Cにおける横漏れ防止性が一層向上している。
【0044】
以上、本発明の吸収性物品の各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、外溝7は、排泄領域A及び後方部Cのみに形成されていてもよく、前方部Bから後方部Cに亘って形成されていてもよい。
【0045】
内側後方溝7A、外側後方溝7B、内側前方溝7C及び外側前方溝7Dは、必ずしも全部設けられていなくてもよい。
補助吸収体42は、上述した実施形態では、下部吸収体41Aと上部吸収体41Bとの間に配されて中高部Mを形成しているが、下部吸収体41Aの非肌当接面側(下部吸収体41Aと裏面シート3との間)や、上部吸収体41Bの肌当接面側(上部吸収体41Bと表面シート2との間)に配されて中高部Mを形成することもできる。
吸収体4は、中高部Mに対応する部分の厚みが部分的に厚くなっている単層構造体から形成することができる。
【0046】
吸収体4において、中高部M以外の部分は、上述した実施形態では、下部吸収体41Aと上部吸収体41Bとからなる2層構造とされているが、単層構造としてもよい。また、中高部Mは、4層構造に制限されず、2層、3層又は5層以上の積層構造とすることもできる。中高部Mとそれ以外の部分との層数の差は、2層に制限されず、1層又は3層以上とすることもできる。
【0047】
サイドシート5を省略して、肌当接面を表面シート2から形成することもできる。また、サイドシート5は、それ自体に伸縮可能な材料を使用したり、その内側縁部付近に糸状又は帯状の弾性部材(例えば糸ゴムや平ゴム)を配置し、該弾性部材を、内側縁部で折り返したサイドシート5で挟み込んだりして、ポケットを形成(開口)し易くすることができる。
ウイング部61及び/又は後部フラップ62は有していなくてもよい。
各実施形態における各構成は、適宜組み合わせることができる。
本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンに制限されず、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の第1実施形態である生理用ナプキンの平面図である。
【図2】図2は、図1に示すX−X線断面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、図1に示す生理用ナプキンにおける中溝及びその周辺部を示す部分拡大図である。
【図4】図4は、本発明の吸収性物品の第2実施形態である生理用ナプキンおける中溝及びその周辺部を示す部分拡大図〔図3(a)対応図〕である。
【図5】図5(a)は、本発明の吸収性物品の第3実施形態である生理用ナプキンおける中溝及びその周辺部を示す部分拡大図〔図3(a)対応図〕で、図5(b)は、その中溝を示す図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、それぞれ破線状の圧縮溝の断面形状を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の吸収性物品の第4実施形態である生理用ナプキンの平面図である。
【図8】図8は、第4実施形態の生理用ナプキンにおける中溝及びその周辺部を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 主吸収体
41A 下部吸収体
41B 上部吸収体
42 補助吸収体
5 サイドシート
7 外溝
8 中溝
81 端部
A 排泄領域
B 前方部
C 後方部
M 中高部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面を構成する表面シート、非肌当接面を構成する裏面シート及び両シート間に介在する吸収体を備えた縦長の吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性物品の排泄領域から後方部に亘って連なる、周辺部よりも厚みが厚い中高部を有し、
吸収性物品の肌当接面における少なくとも前記中高部の幅方向外方には、それぞれ、前記表面シートと前記吸収体とを一体化する外溝が形成されており、
吸収性物品の肌当接面において、前記排泄領域におけるその後端近傍には、吸収性物品の幅方向に延びる中溝が形成されており、該中溝の両端部は、それぞれ、該中高部よりも幅方向外方に位置し且つ前記外溝から離間している吸収性物品。
【請求項2】
前記中溝の両端部は、前記排泄領域における前記中高部の最外側縁を通り且つ吸収性物品の長手方向に延びる仮想直線よりも、幅方向外方に位置している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中溝は、吸収性物品の幅方向に延びる破線状の圧縮溝からなる請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中高部の周辺部における前記吸収体の厚みは0.5〜3mmである請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記後方部における前記中高部は、後方に向けて先細の先細形状を有しており、
吸収性物品の肌当接面において、該中高部における先細形状部分の幅方向外方に、前記外溝とは別の外側後方溝がそれぞれ設けられている請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−100846(P2009−100846A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273450(P2007−273450)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】