説明

吸収性物品

【課題】液体吸収性及び液漏れ防止性に優れ、しかも、肌に対してやさしい、ふんわりした風合い及びムレにくさが維持され、装着感に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性表面シートと裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させた吸収性物品であって、前記液透過性表面シートが不織布からなり、前記吸収体が主成分として天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から形成され、前記液透過性表面シートと前記吸収体が重ね合わされ、且つ、肌当接面側に、該表面シートと吸収体とで接することで一体化した凹凸形状を有する吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、詳しくは生理用ナプキン等に適した吸収性物品およびそれに用いられる複合素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品用の表面シートには、排出された経血や尿等の液体を素早く吸収できる吸収性能と同時に着用者の肌に接して刺激を与えないという表面特性が要求される。従来、吸収性物品用の表面シートとしては、各種の不織布からなるもの、それに穿孔を施したもの、ポリエチレン等の合成樹脂からなる有孔フィルムなどが用いられてきた。近年、吸収性物品の液体吸収性や外観を向上させるため、さらにその構造を改良した種々の製品が提案されている。その1つとして表面に溝(エンボス)加工を施した吸収性物品が挙げられる。
溝(エンボス)加工とは吸収体を熱圧縮処理し、表面に熱圧縮部と非圧縮部とを設ける加工法である。この技術により、吸収性物品の表面部分の液体吸収性を変化させたり、液滲みやヨレを防止したり、液体の流動性を制御したりすることなどが試みられてきた(特許文献1〜3参照)。しかしながら、溝加工に代表される熱圧縮加工は、表面シートを吸収体深さ方向に引き伸ばす分、表面材との密着度を高めて吸収速度を高める効果はあるものの、引き伸ばされた表面シートは、本来有するべき風合いを損なってしまうという課題があり、上述の吸収性能及び表面特性の両立については未だ満足できるものは開発されていない。
【0003】
【特許文献1】特開2000−262558号公報
【特許文献2】特開2001−178768号公報
【特許文献3】特許第2620305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、液体吸収性及び液漏れ防止性に優れ、しかも、肌に対してやさしい、ふんわりした風合い及びムレにくさが維持され、装着感に優れた吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肌当接面側に配置された液透過性表面シートと非肌当接面側に配置された裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させた吸収性物品であって、前記液透過性表面シートが不織布からなり、前記吸収体は、主成分である天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から形成され、前記液透過性表面シートと前記吸収体が重ね合わされ、且つ、肌当接面側に、該表面シートと吸収体とで接することで一体化した凹凸形状を有する吸収性物品により上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸収性物品は、表面層に排出された経血や尿等の液体が接したとき、素早くそれらを吸収し内部に移行させる、高い吸収性(吸蔵性)を発揮する。また、その表面層は常に着用者の肌に接し、とりわけ肌への当りがソフトであり良好な装着感(クッション感)を与え、自在に変形可能で身体にフィットする。また、接触面積が低減でき、空気通過性が良い。しかも液体の内部移行性に優れ、かつ内部には液吸収能の優れた吸収材を有し、液体吸収性及び液漏れ防止性に優れ、また、裏面の経血等の隠蔽性が高く、交換時の不快感が少なく、生理用ナプキンや尿失禁パットとして好適である。
また、表面材とパルプの界面での密着性を強化することができ、それにより、液吸引力およびドライ感に優れたものとすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の吸収性物品の2辺を断面で示した斜視図である。本実施形態の吸収性物品は液透過性表面シート1と裏面シート2、及び両シートの間に介在された吸収体3を有する。液透過性表面シート1と吸収体3は重ね合わされ、且つ、図1では上方側の肌当接面側に、表面シート1と吸収体3とで接することで一体化した凹凸形状を有している。
【0008】
液透過性表面シート1は吸収性物品の肌当接面側に配置され、液透過性を有しており、不織布からなる。例えばカード法により製造されたエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布等の種々のものが挙げられる。
ただし、不織布の繊維材料としては後述する熱伸長性の繊維を用いることが好ましい。その構成繊維の繊度は表面シートの強度確保、肌触りの向上等の点から1〜20dtexであることが好ましく、1.5〜4dtexであることがより好ましい。また、界面活性剤等を用いて繊維の表面に親水化処理を施しておくことが好ましい。
親水化処理に用いる界面活性剤としては、親水基と親油基を持つ親水性の界面活性剤であれば特に制限されないが、アニオン系界面活性剤、及び、エチレンオキサイド系の付加モル数の高いノニオン系界面活性剤が好ましい。具体的には、スルホコハク酸エステル、アルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルなどが好ましい。
液透過性表面シート1の坪量は10〜50g/mであることが好ましく、15〜40g/mであることがより好ましい。吸収性、装着感、経済性の観点から好ましい範囲といえるものである。
【0009】
裏面シート2は、吸収性物品の非肌当接面側に配置されるもので、液体の漏れを防ぐ機能を有するものであれば特に限定されない。裏面シート2の素材としては、防水性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂もしくはそれらの混合物からなる樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び紙や熱可塑性樹脂からなる疎水性或いは親水性不織布と上述の樹脂フィルムとの複合材料等が挙げられる。また、水蒸気透過性とする裏面シート2の形成材料としては、防水性があり水蒸気透過性を有していれば特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレンもしくはそれらの混合物からなる熱可塑性樹脂に、炭酸カルシウムや硫酸バリウム等からなる微小な無機フィラーを溶融混合してフィルムを製膜し、該フィルムを1軸又は2軸延伸して得られる多孔性のフィルムや、サイズ処理された防水紙や、メルトブローン等の製法により得られる撥水性の不織布や、それら多孔性のフィルム、防水紙、疎水性の微細な熱可塑性繊維からなる不織布の複合シート等が挙げられる。裏面シートの厚さは特に限定されないが、10〜300μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。10μm未満では、裏面シート2の充分な強度が得がたく、使用中や脱着時に破れてしまう可能性がある。また、300μmを超えると、裏面シート2が硬くなりすぎて、装着感を損なう可能性がある。
【0010】
本発明の吸収性物品においては、液透過性表面シート1の不織布を形成する繊維として、嵩高性を有する繊維、例えば、機械的にクリンプ状に変形させられた捲縮繊維、熱などの所定の処理によって初めて収縮を開始しクリンプ状に変形する潜在性捲縮繊維、芯鞘型の複合繊維で芯が偏芯されることで嵩高に変形する繊維、所定の処理を行うことで見かけ繊維長さが伸長する繊維等が用いられる。この中でも特に好ましくは熱処理により伸長挙動を示す熱伸長性繊維を用いることが好ましい。熱伸長性繊維としては、例えば、第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点よりも低い融点又は軟化点を有する第2樹脂成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している二成分系の複合繊維が好ましい。この複合繊維の形態には芯鞘型やサイド・バイ・サイド型など種々の形態があり、本発明においてはいずれの形態も含む。
【0011】
吸収体3は主成分である天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から形成されたものである。ここで、天然系繊維とは、天然の植物由来の繊維状物質をいう。吸収体3を形成するパルプ繊維としては、例えば、木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維などが挙げられる。また、吸収体3には、上記パルプ繊維とともに、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維などと組み合わせてもよい。用いられる合成繊維の含有量は、パルプ繊維に対して、50wt%以下であることが好ましい。
また、吸収体3は、副成分として、高吸収性ポリマーを含んでいても良い。高吸収性ポリマーとしては、自重の20倍以上の体液を吸収保持でき、且つゲル化し得るものが好ましい。例えば、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又はそれらの共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩が好ましい。
【0012】
吸収体3の坪量は50〜500g/mであることが好ましく、50〜300g/mであることがより好ましい。いずれも、吸収性、装着感、経済性の観点から好ましい範囲といえるものである。また、吸収体3が副成分として高吸収性ポリマーを含むものである場合には、高吸収性ポリマーの坪量は、10〜100g/mの範囲であることが、吸収性、装着感、経済性の観点から好ましい。
【0013】
液透過性表面シート1と吸収体3とは、重ね合わされ接することで一体化したシート状複合素材とされることが好ましい。本発明において「接することで一体化する」とは、保形目的の紙製シートや穴あけフィルム等を間に挿入せず、液透過性表面シート1と吸収体3とが略全面的に接するよう少なくともその一部を接着することをいい、熱圧着により接着することが好ましい。このとき、液体吸収性を妨げなければ、液透過性表面シート1と吸収体3との間に機能性シートを設けてもよいし、液透過性表面シート1と吸収体3の間や液透過性表面シート1と機能性シート、機能性シートと吸収体3との間をホットメルトにより接着させてもよい。また、吸収体3の一部においてのみ表層の液透過性表面シート1と熱接着され、その他の部分においては弱く接着されている、あるいは接着されずに接している状態であってもよい。
【0014】
図1に示す態様においては、液透過性表面シート1と吸収体3が重ね合わされて、表面シート1と吸収体3とで接することで一体化し、肌当接面側に液吸収突出部4が周期的に配列して設けられており、凸部と凹部とが交互に配列され、凹凸形状を形成している。そして、液透過性表面シート1における凸部の頂点1aが、吸収体3の凸部の頂点の直上に設けられていることが好ましい。
【0015】
吸収性物品の厚さは、裏面シート2の非肌当接面から液透過性表面シート1における凸部の頂点1aまでの最短距離でいうと、1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。1mm未満では、漏れに対して充分な吸収容量を設計しにくく、液戻り等肌への不快感や汚れを誘発してしまう可能性がある。10mmを超えると、吸収性物品の厚みが違和感に繋がり、装着感を損なってしまう。吸収体3の凸部の高さは、肌当接面側の高低差を0.3〜10mmとすることが好ましく、0.3〜6mmとすることがより好ましい。0.3mm未満では、湿気を逃がしてムレを防止できるような充分な隙間を得ることができない。10mmを超えると、凸高さが違和感となり装着感を損なってしまう。また、液体吸収突出部4の高さについては、肌当接面側の高低差を0.5〜10mmとすることが好ましく、0.5〜8mmとすることがより好ましい。0.5mm未満では、不織布の風合いを損なう可能性があり、10mmを超えると凸高さが違和感となり装着感を損なってしまう。
液吸収突出部4の間隔は特に限定されないが、単位面積当りの凸部の個数でいうと、1cm当り1〜9個であることが好ましく、1〜5個であることがより好ましい。特に1cm当り9個を超えると、吸収性物品全体が硬くなり、装着感を損なう可能性がある。
【0016】
以下、液透過性表面シート1に好適に用いられる熱伸長性複合繊維についてさらに詳しく説明する。
第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であることが好ましく、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分であることが好ましい。第1樹脂成分はその配向指数が30〜60%になっていることが好ましく、35〜55%になっていることがより好ましい。一方、第2樹脂成分はその配向指数が40%以上になっていることが好ましく、50%以上になっていることがより好ましい。第2樹脂成分の配向指数の上限値は特に限定されず高いほど好ましいが、通常70%程度であればよい。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維に良好な加熱伸長性を与えることができる。
【0017】
熱伸長性複合繊維としては、先に述べたとおり、芯鞘型のものやサイド・バイ・サイド型のものを用いることができる。芯鞘型の熱伸長性複合繊維としては、同芯タイプや偏芯タイプのものを用いることができる。特に同芯タイプの芯鞘型であることが好ましい。この場合、第1樹脂成分が芯を構成し且つ第2樹脂成分が鞘を構成していることが、熱伸長性複合繊維の熱伸長率を高くし得る点から好ましい。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよい。特に、両樹脂成分の融点差、又は第1樹脂成分の融点と第2樹脂成分の軟化点との差が20℃以上、特に25℃以上であることが、熱融着による不織布製造を容易に行いうる点から好ましい。熱伸長性複合繊維が芯鞘型である場合には、鞘成分の融点又は軟化点よりも芯成分の融点の方が高い樹脂を用いる。また、第1樹脂成分は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有する樹脂とは溶融紡糸し通常行われる範囲で延伸した場合、十分な配向と結晶を生成する樹脂を総称し、後に述べる方法で融点を測定すると明確な溶解ピーク温度が測定でき、融点が定義できる樹脂である。第1樹脂成分と第2樹脂成分との好ましい組み合わせとしては、第1樹脂成分をポリプロピレン(PP)とした場合の第2樹脂成分としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、第1樹脂成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、第2成分として、前述した第2樹脂成分の例に加え、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエステルなどが挙げられる。更に、第1樹脂成分としては、ポリアミド系重合体や前述した第1樹脂成分の2種以上の共重合体も挙げられ、また第2樹脂成分としては前述した第2樹脂成分の2種以上の共重合体なども挙げられる。これらは適宜組み合わされる。
【0018】
第1樹脂成分と第2樹脂成分の特に好ましい組み合わせは、第1樹脂成分がポリプロピレンで、第2樹脂成分がポリエチレン、とりわけ高密度ポリエチレンである組み合わせである。この理由は、両樹脂成分の融点差が20〜40℃の範囲内であるため、不織布を容易に製造できるからである。また繊維の比重が低いため、軽量で且つコストに優れ、低熱量で焼却廃棄できる不織布が得られるからである。更にこの組み合わせを用いることで、熱伸長性複合繊維の熱伸長性も高くなる。この理由は次のように考えられる。上記の熱伸長性複合繊維においては、第1樹脂成分の配向係数が特定の範囲に抑えられ、第2樹脂成分の配向係数が高められている。第2樹脂成分であるポリエチレン、特に高密度ポリエチレンは結晶性が高い。したがって熱伸長性複合繊維を加熱していきその温度がポリエチレンの融点に達するまでは、繊維の熱伸長がポリエチレンによって拘束される。繊維をポリエチレンの融点以上まで加熱すると、ポリエチレンが溶融しはじめ、その拘束が解かれるので、第1樹脂成分であるポリプロピレンの伸長が可能になり、繊維全体が伸長すると考えられる。
【0019】
ポリプロピレンとポリエチレンの好ましい組み合わせは、次の(1)、特に(2)であることが好ましい。このような組み合わせを採用することで、溶融紡糸時に第2樹脂成分であるポリエチレンが配向しやすくなって、その結晶性が高まり、且つ第1樹脂成分のポリプロピレンが適度な配向となって、繊維の熱伸長性が高くなる。
(1)ポリプロピレンとして、そのメルトフローレート(以下、MFRともいう)が10〜35g/10minで、そのQ値が2.5〜4.0のものを用い、ポリエチレンとして、そのMFRが8〜30g/10minで、そのQ値が4.0〜7.0のものを用いる組み合わせ。
(2)ポリプロピレンとして、そのMFRが12〜30g/10minで、そのQ値が3.0〜3.5のものを用い、ポリエチレンとして、そのMFRが10〜25g/10minで、そのQ値が4.5〜6.0のものを用いる組み合わせ。
【0020】
ポリプロピレンのMFRは、JISK7210に準じ、温度230℃、荷重2.16kgで測定される。同様に、ポリエチレンのMFRは、JISK7210に準じ、温度190℃、荷重2.16kgで測定される。
【0021】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱分析装置DSC−50(島津社
製)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル質量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。
第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合は、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とする。
【0022】
上記の熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(重量比)は10:90〜90:10%、特に30:70〜70:30%であることが好ましい。この範囲内であれば繊維の力学特性が十分となり、実用に耐え得る繊維となる。また融着成分の量が十分となり、繊維どうしの融着が十分となる。熱伸長性複合繊維の太さは、複合繊維の具体的用途に応じて適切な値が選択される。一般的な範囲として1.0〜10dtex、特に1.7〜8dtexであることが、繊維の紡糸性やコスト、カード機通過性、生産性、コスト等の点から好ましい。
熱伸長性繊維については、例えば、特願2005−353780号明細書に記載されたものを用いることができる。
【0023】
上記の熱伸長性複合繊維はそれ自体が熱融着しうるので、この繊維を用いることで、サーマルボンド不織布、すなわち熱の付与によって繊維どうしが結合(つまり融着)している不織布を容易に得ることができる。不織布製造時の熱の付与によって熱伸長性複合繊維を不織布中で伸長しうる。
【0024】
このように、本実施形態においては、液透過性表面シート1及び吸収体3の2層構造が、個々の液吸収突出部4の中に積層配設されている。そして液透過性表面シート1に用いうる不織布繊維は粗な状態にあり、そのためその外部で発生した液体を素早く取り込み、吸収体3へと移行させる。このとき、吸収体3として液透過性表面シート1より吸収保持力及び親水度の高いパルプ繊維を用いることで、液透過性表面シート1を通過してきた液体を取り込み、逆戻りさせずに確実に保持することができる。
このとき、本発明の吸収性物品は、液透過性表面シート1で捉えた液体を素早く吸収体3に移行させ、保持するように作用し、優れた液吸収性及び液保持性を実現しうる。そして、肌と接する部分については、粗状態にある繊維を液吸収突出部の頂部をなすように突起して配設して、液体の存在下でもサラッとしていてかつソフトな肌触りを実現することができる。
【0025】
本実施形態の吸収性物品は、図2の液透過性表面シート1および吸収体3を部分的に拡大して模式的に示した凸部頂点を通る切断面における縦断面図に示されるように、液透過性表面シート1が吸収体3の頂部3a、側壁部3b、及び底部3cのいずれにおいても接することで一体化していることが好ましい(本発明においては、特に断らない限り、「頂部」とは凸形状をなす部分の頂上周辺の領域をいう。「側壁部」とは凸形状をなす部分の側面もしくは斜面をなす領域をいう。「底部」とは複数の凸形状をなす部分に挟まれた谷間をいう。)。
【0026】
そして、吸収体3の底部3において、液透過性表面シート1がフィルム状に厚密化されており、吸収体3の側壁部から頂部にかけて、液透過性表面シート1の厚みが漸次嵩高くなっていることが好ましい。すなわち、表面シート1は、その底部3cに接する領域においては圧縮された圧密フィルム状態になっていることが好ましく、そこから側壁部3bを経て、頂部3cに接する領域にいくにつれ圧縮が徐々に解かれ、凸部の頂点1aにおいて最も嵩高い状態になっていることが好ましい。この状態とすることにより、例えば液透過性表面シートの凸部の頂点1a近傍で吸収した液体が、液透過性表面シート1及び吸収体3の両者において同じ底部3cの方向の密部に向かって移行し、液吸収突出部4の液体吸収作用を相乗的に高めることができ、一層素早く液体を吸収体3内部に移行することができる。また肌触りにおいても液透過性表面シート1及び吸収体3の嵩高い部分が中心軸の付近で一致しているため一層ふんわりした柔らかさを実現することができる。吸収体3は、上述のようにパルプ、レーヨン等の繊維材料を含むが、併せて合成繊維を10〜30質量%程度配合してクッション効果を高めたり、高吸収性ポリマーを10〜60質量%程度配合して吸収性を向上させたりしてもよい。
【0027】
さらに、吸収体3は、図2に示されるように、凸部の中央縦断面図において、アーチ状の断面形状となることが好ましい。このアーチ状の断面形状と、液透過性表面シート1と吸収体3の一体化凹凸形状により、頂部3aから底部3cにかけて、パルプ密度が漸次高くなる。
吸収体3のアーチの高さ5は0.5〜8mmが好ましく、0.5〜4mmがさらに好ましい。
吸収体3のパルプ密度は、頂部3aにおいては0.01〜0.15g/cmが好ましく、0.02〜0.10g/cmがさらに好ましく、側壁部3bにおいては0.10〜0.50g/cmが好ましく、0.10〜0.30g/cmがさらに好ましく、底部3cにおいては0.20〜1.0g/cmが好ましく、0.30〜0.80g/cmがさらに好ましい。
【0028】
このような形状および密度とすることにより、吸収性物品は、より一層クッション感に優れるものとなり、装着感が良好となる。また、形状の変形性能は向上し、身体により一層フィットしやすくなる。また、接触面積が低減でき、空気透過性が良好となる。さらには、本発明の吸収性物品を生理用ナプキンに用いた場合には、裏面の経血隠蔽性が高く、交換時の不快感を低減することができる。
【0029】
次に、本実施態様の吸収性物品の全体構造を模式的な平面図に示す図3により説明する(これを拡大して2辺を断面により示しした斜視図が図1に相当する。)。ただし、本発明の吸収性物品はこの形態に限定して解釈されるものではない。本実施形態の吸収性物品10は、液透過性表面シート及び吸収体からなる複合素材6が裏面シート2にホットメルト型接着剤による接合手段により接合されている。さらに吸収性物品の周辺部分においては、裏面シート2のみが延出され、裏面シート2と熱シール、超音波シール等の接合手段、もしくは、ホットメルト型接着剤の併用により接合されている。また、着用者の排泄部に対向する排泄部対向部(縦横の中央部)を囲むように防漏溝11が形成されている。防漏溝11は、着用時のヨレを防止させ、且つ漏れを防止する観点から、好ましい。また、防漏溝以外にも、排泄部対向部から液透過性表面シートと吸収体を一体化するような部分的なエンボス加工を施すことも、着用時のヨレを防止し、且つ排泄液の吸収性をより一層向上させる観点から好ましい。着用者に当接する表面には、液吸収突出部4が多数連設されている。この液吸収突出部については、図1及び図2により既に詳しく説明した。
【0030】
上述のように、本発明の吸収性物品は吸収体3(パルプ繊維からなり、親水性が高く体液を引き込みやすい材料が好ましい)と液透過性表面シート1(不織布からなり、嵩高い材料が好ましい)と組み合わせて用いる。しかし、単にエンボス加工したのでは、それらの材料を接合できたとしても、良好な液体吸収性と表面特性とを両立した吸収性物品は得られない。すなわち、通常のエンボス加工においては、エンボスロールが、液透過性表面シート1を引張り伸ばし圧縮し、内層となる吸収体3に押し込んで接することで一体化する。そのため、嵩高い液透過性裏面シート1を使用しても引張り伸ばされてしまい、その作用は損なわれてしまう。本発明者らは、そのような課題を解決し、上述した図1に示したような優れた液吸収突出部を有する吸収性物品を効率的に製造しうる、本発明の製造方法を見出した。
【0031】
以下に、第1の実施形態の吸収性物品として好ましく用いられる複合素材の製造方法を、説明する。ただし、本発明の複合素材の製造方法はこれにより限定して解釈されるものではない。
まず、原反ロールから表面シートとなる不織布シート21をくりだす。これとは別の原反ロールから主成分が天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維で形成された吸収体22の方向にくりだす。そして、くりだされた不織布シート21と吸収体22重ね合わせ、図4の模式的な断面図に示されるように、所定のパターンで凹凸成型された、凸部23と凹部24からなる噛み込み方式のエンボスロール上で一体変形し、同時にエンボスロールの凸部23にて不織布シート21と吸収体22を部分的に圧着させる。このとき凸部23のピン状部材が、上方から不織布シート21を押し下げるようにして、不織布シート21と吸収体22を部分的に圧着させる。このエンボス加工により吸収体22に圧着された部分の不織布シート21は伸ばされ、フィルム状に厚密化された状態になる。一方、吸収体22に密着されなかった部分の不織布シートは疎な空間を維持できる。
【0032】
次いで、不織布シート21を熱処理する。
本発明の複合シートにおいては、熱処理を行うことで、複合素材凸部の頂部を中心にその周辺の圧縮を解き嵩高く柔らかな状態にすることができる。このとき不織布シートに前記熱伸長性繊維を用いれば(例えば、特願2005−353780号明細書に開示されたものを用いれば)、より効果的に熱処理による嵩高さを得ることができる。このようにして、吸収性物品に用いられる複合素材(吸収シート)に、優れた液体吸収機能と、柔らかなふんわり感とを与えることができる。具体的には例えば、図1に示した実施形態のような優れた機能を発揮しうる吸収突出部を有する吸収性物品を連続した工程で効率的に製造することができる。なお、上記のようにフィルム状に厚密化された不織布シート21は、このような熱処理により伸長することはなく、密度は高いままである。
【0033】
本発明の吸収性物品は、上記の方法で得られた不織布シートと吸収体とを一体化した複合素材に、裏面シートが積層されて、製造される。このとき裏面シートは、吸収体の不織布シートを付されていない側に積層される。また、上記の不織布シートの加熱処理は裏面シートを積層する前に限定されるものではなく、裏面シートの積層後であってもよく、また複数回行ってもよい。加熱処理の具体的な方法は特に限定されないが、例えばホットエアを吹き付けることで不織布シート全体に熱を供給する方法等が好ましい。
【0034】
本発明の第2の実施形態の吸収性物品は、液透過性表面シートと裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させ、液透過性表面シートが不織布であり、吸収体が、主成分として天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から形成され、液透過性表面シートと吸収体が重ね合わされ、
液透過性表面シートは肌当接面側に凹凸形状を有し、更に吸収体との界面においても凹凸形状を有しており、吸収体は液透過性表面シートと界面全域で接しており、かつ、少なくとも液透過性表面シートの、吸収体との界面で形成された凹凸形状の内、凸部形成領域において、前記不織布繊維と前記パルプ繊維の混在領域が存在するものである。
【0035】
図5は、第2実施形態の吸収性物品における、液透過性表面シート31および吸収体32を部分的に拡大して模式的に示した、縦断面図である。本実施形態においては、液透過性表面シート31が、図中において上方で示される肌当接面側に凹凸形状を有し、更に吸収体32との界面においても凹凸形状を有している。図5においては、液透過性表面シート31を形成する不織布繊維33を曲線で模式的に示している。そして、液透過性表面シート31の吸収体との界面で形成された凹凸形状の内、矢印34で示される範囲の、凸部形成領域において、不織布繊維33と、パルプ繊維35が混在して存在する。ただし、パルプ繊維35は、液透過性表面シート31の表面には露出しない。
このような、液透過性表面シート31および吸収体32からなる複合素材を用いた吸収性物品は、液透過性表面シート31と吸収体32の界面での密着性が強固で、これにより、肌当接面側から透過性シート31および吸収体32への液移行が促進される。また、図示されるように、縦断面図において、吸収体32がアーチ状の形状とすることで、液透過性表面シート31と吸収体21を同時に粗密構造ができ、液吸引力が一層向上し、ドライ感や経血隠蔽性を高めることができる。
なお、上記以外の第2の実施形態の吸収性物品の材料、構造、作用等は、上記第1の実施形態の吸収性物品の材料、構造、作用等同様である。
【0036】
以下に、第2の実施形態の吸収性物品として好ましく用いられる複合素材の製造方法を説明する。
まず、不織布シート41上に直接解繊したパルプ繊維を積層する。パルプ繊維の積層方法としては、例えば、不織布シート41の裏面からバキューム吸引させた状態でパルプ繊維を上方から開繊し、積層していくことで行うことができる。積層するパルプ繊維の厚さは5〜30mmが好ましい。
次いで、不織布シートとパルプ繊維を積層させた複合体にプレスを加える。プレスの条件としては温度200℃、圧力2.0MPaが好ましい。
次いで、プレスされた不織布シート41とパルプ繊維で形成された吸収体42からなる複合素材は、図6の模式的な断面図に示されるように、所定のパターンで凹凸成型された、凸部43と凹部44からなる噛み込み方式のエンボスロール上で一体変形し、同時にエンボスロールの凸部43にて不織布シート41と吸収体42を部分的に圧着させる。このときエンボスロールの凸部43は、下方から、不織布シート41を突き上げ、圧着させる。次いで、不織布シート41を熱処理する。
上記以外の製造条件としては、上記の第1の実施形態における複合素材の製造方法の熱処理条件と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の要部断面により示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の液透過性表面シート1および吸収体3を部分的に拡大して模式的に示した凸部頂点を通る切断面における縦断面図である。
【図3】本発明の吸収性物品の好ましい一実施形態を模式的に示した平面図である。
【図4】第1の実施形態の複合素材の製造方法の一部の工程を模式的に説明する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の液透過性表面シート31および吸収体32を部分的に拡大して模式的に示した凸部頂点を通る切断面における縦断面図である。
【図6】第2の実施形態の複合素材の製造方法の一部の工程を模式的に説明する断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 液透過性表面シート
1a 液透過性表面シートの凸部の頂点
2 裏面シート
3 吸収体
3a 吸収体の頂部
3b 吸収体の側壁部
3c 吸収体の底部
4 液吸収突出部
5 アーチの高さ
6 複合素材
10 吸収性物品
11 防漏溝
21 不織布シート
22 吸収体
23 噛み込み方式のエンボスロールの凸部
24 噛み込み方式のエンボスロールの凹部
31 液透過性表面シート
32 吸収体
33 不織布繊維
34 凸部形成領域の範囲
35 パルプ繊維
41 不織布シート
42 吸収体
43 噛み込み方式のエンボスロールの凸部
44 噛み込み方式のエンボスロールの凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置された液透過性表面シートと非肌当接面側に配置された裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させた吸収性物品であって、
前記液透過性表面シートが不織布からなり、
前記吸収体は、主成分である天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から形成され、
前記液透過性表面シートと前記吸収体が重ね合わされ、且つ、肌当接面側に、該表面シートと吸収体とで接することで一体化した凹凸形状を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記凹凸形状を有する吸収体は頂部、側壁部、および底部を形成しており、
前記液透過性表面シートは、前記吸収体の頂部、側壁部、及び底部のいずれの位置においても前記表面シートと接することで一体化しており、
前記吸収体の底部において、前記液透過性表面シートはフィルム状に厚密化されており、更に前記吸収体の側壁部から頂部にかけて、前記液透過性表面シートの厚みが漸次嵩高くなっている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体が頂部、側壁部、および底部を形成し、且つ、断面形状がアーチ状となり、頂部から底部にかけて、パルプ密度が漸次高くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の吸収性物品。
【請求項4】
不織布シートと、主成分である天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から形成された吸収体とを重ね合わせる工程、
前記不織布シートと吸収体とを所定のパターンで凹凸成型された噛み込み方式のエンボスロール上で一体変形し、同時にエンボスロールの凸部にて不織布シートと吸収体を部分的に圧着させる工程、及び、
前記不織布シートを熱処理する工程
からなる複合素材の製造方法。
【請求項5】
肌当接面側に配置された液透過性表面シートと非肌当接面側に配置された裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させた吸収性物品であって、
前記液透過性表面シートが不織布からなり、
前記吸収体が主成分として天然系繊維であるパルプ繊維から形成され、
前記液透過性表面シートと前記吸収体が重ね合わされており、
前記液透過性表面シートは肌当接面側に凹凸形状を有し、更に前記吸収体との界面においても凹凸形状を有しており、
前記吸収体は前記液透過性表面シートと界面全域で接しており、かつ、
少なくとも前記液透過性表面シートの、前記吸収体との界面で形成された凹凸形状の内、凸部形成領域において、不織布繊維とパルプ繊維の混在領域が存在することを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
不織布シート上に直接解繊したパルプ繊維を積層する工程、
前記不織布シートと前記パルプ繊維の複合体にプレスを加える工程、
前記不織布シートと前記パルプ繊維で形成された吸収体とを所定のパターンで凹凸成型された噛み込み方式のエンボスロール上で一体変形し、同時にエンボスロールの凸部にて不織布シートとパルプ吸収体を部分的に圧着させる工程、及び、
前記不織布シートを熱処理する工程からなる
複合素材の製造方法。
【請求項7】
前記液透過性表面シートが、熱によって伸長する繊維から構成された不織布である請求項1、2、3または5記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119022(P2009−119022A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296125(P2007−296125)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】