説明

吸収性物品

【課題】 バリアシート上に排泄された尿と肌との接触を防止し、着用者の肌のかぶれ等の肌トラブルを抑制することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】 おむつ1は吸液性のシャーシ2とバリアシート3と防漏カフ4とを含む。シャーシ2の身体側内面に吸液性パネル23が配置され、吸液性パネル23よりもさらに身体側にバリアシート3が配置され、バリアシート3のさらに身体側に防漏カフ4が配置されている。バリアシート3は、横方向Xに対向する両側部分30,31と両側部分30,31の間をつなぐ中間部分32とを有し、両側部分30,31および中間部分32によって前後方連通部33,34を形成している。両側部分30,31の縦方向Yに亘って、バリアシート弾性部材39が伸長状態で取り付けられ、バリアシート弾性部材39の凸状部の横方向Xの外側には、横方向Xに延びる折曲部40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に関し、さらに詳しくは使い捨てのおむつ、排便排尿トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排泄物が着用者の肌に接触しないように、スキンコンタクトシートを備えた使い捨ておむつとして、例えば特開2007−105298号公報(特許文献1)が公知である。この特許文献1によれば、おむつはトップシートとバックシートと、これらトップシートおよびバックシートの間に配置される吸収体と、トップシートの着用者肌側に配置されたスキンコンタクトシートとを備え、スキンコンタクトシートには排泄物をトップシート側に通過させる開口部と、この開口部を囲むように伸長状態で取り付けられる弾性部材とを備えている。このようなスキンコンタクトシートは、弾性部材によってトップシートから浮き上がり、着用者の股下においてその着用者の肌に接触し、排泄物が肌に接触しないようにしている。
【特許文献1】特開2007−105298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなおむつでは、開口部として尿通過用開口部と便通過用開口部とを備え、尿や便をそれぞれの開口からトップシート側に通過させるようにしている。しかし、着用者の体勢などによっておむつの着用位置がずれて、尿がスキンコンタクトシート上に排泄されてしまうことがある。スキンコンタクトシート上に排泄された尿は、蒸れやかぶれなどの肌トラブルを引き起こす恐れがある。
【0004】
本発明では、バリアシート上に排泄された尿と肌との接触を防止し、着用者の肌のかぶれ等の肌トラブルを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、縦方向および横方向と、身体側および着衣側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置する股下域と、前記股下域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記股下域において前記シャーシから離間可能に形成されたバリアシートとを含む吸収性物品の改良に関わる。
【0006】
本発明は前記吸収性物品において、前記バリアシートは、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に対向する両側部分と、前記両側部分の間をつなぐ中間部分と、前記横方向に延びるとともに前記縦方向に対向する前後端縁と、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に対向して伸長状態で取り付けられたバリアシート弾性部材とを含み、前記前後端縁が前記シャーシの身体側に固着され、前記吸液構造体が前記股下域から前記前後ウエスト域に湾曲することによって、前記バリアシートと前記吸液構造体との間に空隙を形成し、前記空隙の内部に向かって排泄物を通過させることが可能であって前記両側部分および前記中間部分によって画成される連通部を形成し、前記中間部分の前記横方向外側に位置する前記両側部分は、前記バリアシートが前記シャーシ側に向けて凸となる折曲部を備えることを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記折曲部は、前記両側部分の一部を熱加工で溶融することによって形成される。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前期折曲部は、前記両側部分の一部を前記シャーシ側に向けて凸となるように折り曲げた対向面を互いに接合することによって形成される。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記バリアシートは、前記折曲部の一部を切り取ったスリットを含む。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記バリアシートは、前記両側部分において接合部位を介して前記吸液構造体に接合され、前記接合部位は、前記吸液構造体の前記縦方向に延びて前記横方向に対向する両側縁よりも前記横方向の内側に位置し、前記バリアシートが前記シャーシから離間したときに前記吸液構造体の前記両側縁に前記バリアシートで覆われない露出部分が形成される。
【0011】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記連通部は、前記中間部分よりも前記縦方向の前側に位置する前連通部と、前記縦方向の後側に位置する後連通部とを含み、前記バリアシート弾性部材は、前記前後連通部に沿って取り付けられ、前記中間部分において前記横方向を二等分する縦中心線向かう凸状部を含み、前記折曲部は、前記バリアシート弾性部材の横方向外側に位置する。
【発明の効果】
【0012】
バリアシートの中間部分において、その横方向外側に位置する両側部分に横方向に延びるとともに、バリアシートがシャーシ側に向けて凸となるように折り曲げられる折曲部を形成しているので、たとえバリアシート上に尿が排泄されたとしても、尿が、折曲部が形成された中間部分に移動すれば、この折曲部を介してシャーシ側に誘導される。したがって、尿がバリアシート上に残留し肌トラブルを引き起こすのを防止することができる。
【0013】
折曲部は、両側部分の一部を熱加工で溶融することによって形成されることとしたので、溶融した部分に凹条部が形成され、この凹条部に沿って折り曲げを誘導することができる。溶融した部分は剛性が高くなっているので、剛性の差異によってより折り曲げやすくすることができる。
【0014】
バリアシートは、折曲部の一部を切り取ったスリットを含む構成としたので、このスリットを形成した部分では、他の部分と比較して剛性が低くなり折り曲げを誘導することができる。また、このスリットを介して尿を吸液構造体側に導くこともできるので、尿は速やかにバリアシート上から排除することができる。
【0015】
バリアシートは、両側部分において接合部位を介して吸液構造体に接合され、接合部位は、吸液構造体の両側縁よりも横方向の内側に位置させることとしたので、バリアシートが吸液構造体から離間したときには、バリアシートの側縁部分に吸液構造体が露出する部分が形成され、折曲部に沿って誘導された尿を吸液構造体によって吸収することができる。
【0016】
連通部は、中間部分よりも縦方向の前側に位置する前連通部と、縦方向の後側に位置する後連通部とを含み、バリアシート弾性部材は前後連通部に沿って取り付けられ、折曲部を前記バリアシート弾性部材の横方向外側に位置させることとした。折曲部が形成されたバリアシートの両側部分から縦中心線に向かって、バリアシート弾性部材の収縮力が作用するので、折曲部を境に両側部分がさらに折れ曲がりやすくなる。中間部部分においてバリアシート弾性部材が凸状部を形成しているので、中間部分が着用者に最も接触し、中間部分から吸液構造体側へと折曲部が傾斜するようになる。したがって、バリアシート上に残留した尿を中間部分から両側部分を介して速やかに吸液構造体側へと誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
吸収性物品として使い捨ておむつを用い、本発明の一例を説明する。
<第1の実施形態>
【0018】
図1〜7は、本発明の第1の実施形態を示している。図1はおむつ1の着用状態を示した図であり、説明のためその一部を破断している。図示したように、おむつ1は吸液性のシャーシ2とバリアシート3と防漏カフ4とを含む。シャーシ2はパンツ型に形成され、横方向Xおよび縦方向Yと、身体側内面5および着衣側外面6と、前ウエスト域7、後ウエスト域8および前記前後ウエスト7,8域間に位置する股下域9を有している。シャーシ2は、内側シート11と外側シート12と、これら内外側シート11,12の間に介在する不透液性の防漏シート13とによって形成されている。
【0019】
前後ウエスト域7,8においては、互いのウエスト側縁部14,15の対向面が重なり合い、間欠的に並ぶ複数の接合部16において互いに接合されてシーム部が形成されている。
接合部16でウエスト側縁部14,15が接合されることにより、前後ウエスト域7,8で囲まれた領域にウエスト開口18が形成されるとともに、接合部16と股下域9とで囲まれた一対の脚開口19が形成されている。ウエスト開口18の周縁部に沿って複数条のウエスト弾性部材20が延び、脚開口19の周縁部に沿って複数条の脚弾性部材21が延びている。それら弾性部材20,21は、内側シート11と外側シート12との間にあり、これらシート11,12の少なくとも一方に接着剤(図示せず)を介して伸長状態で接合されている。
【0020】
図2は図1のII−II線断面図であり、説明のためその一部を破断している。図2に示すように、シャーシ2の身体側内面5に吸液構造体10が配置され、吸液構造体10よりもさらに身体側にバリアシート3が配置され、バリアシート3のさらに身体側に防漏カフ4が配置されている。吸液構造体10は前後ウエスト域7,8の間において縦方向Yに延設されているが、これは少なくとも股下域9に位置していればよい。この吸液構造体10は、内側シート11の内側に沿って配置された吸液性パネル23を含む。
【0021】
吸液性パネル23は、ティッシュペーパ等の吸液拡散シート24で包まれる吸液性芯材25と、吸液拡散シートをさらに覆う内面シート26とで形成されている。吸液性パネル23の着衣側は外側シート12の内側に配置された防漏シート13で被覆され、芯材25に吸収された体液がおむつ1から漏れるのを防止する。防漏シート13は、吸液性パネル23の底面に直接接合されることもある。
【0022】
バリアシート3の前端縁27と後端縁28は、その近傍が接着または溶着により内面シート26に接合されている。前端縁27と後端縁28とは、それぞれ前ウエスト域7および後ウエスト域8に位置している。図示したようなパンツ型の状態においては、股下域9が湾曲するとともに、後に説明するバリアシート弾性部材の収縮によって、バリアシート3は内面シート26から縦方向Yに離間している。バリアシート3の前後端縁27,28は内面シート26に接合されているので、バリアシート3全体はハンモックを吊り下げたような形状を有する。このような形状により、バリアシート3と吸液性パネル23との間に空隙29が形成される。防漏カフ4は後に説明するカフ弾性部材によって起立するようにしてバリアシート3から離間して、縦方向Yに延びる壁を形成している。
【0023】
図3は図1の接合部16における前後ウエスト域7,8の接合をはずし、おむつ1を縦方向Yと横方向Xとに展開して得られるおむつ1の平面図である。おむつ1は、平面状になるように各弾性部材の伸縮力を作用させない状態を示している。おむつ1は、横方向Xの寸法を二等分する縦中心線P−Pと、縦方向Yの寸法を二等分する横中心線Q−Qとを有し、縦中心線P−Pに関して左右対称である。
【0024】
シャーシ2はほぼ砂時計型に形成され、吸液性パネル23は矩形に形成され、シャーシ2の内側シート11に積層されている。
バリアシート3は、横方向Xに対向する両側部分30,31と両側部分30,31の間をつなぐ中間部分32とを有し、中間部分32は股下域9に位置している。両側部分30,31および中間部分32によって前後方連通部33,34を形成している。前方連通部33は、中間部分32から前ウエスト域7に向かって延びるほぼU字形であり、後方連通部34は、中間部分26から後ウエスト域8に向かって延びるほぼU字形である。前方連通部33は、両側部分30,31に位置する両内側縁35と、これら両内側縁35をつなぐ湾曲した閉鎖縁36とによって画成される。後方連通部34は両側部分30,31に位置する両内側縁37と、これら両内側縁37をつなぐ湾曲した閉鎖縁38とによって画成される。前方連通部33と後方連通部34とはその閉鎖縁36,38を形成する中間部分32によって画成されている。
【0025】
防漏カフ4は、縦中心線P−Pに対称に縦方向Yの延びる一対のシートから形成され、このシートは不織布やプラスチックフィルム等であり好ましくは透湿性かつ不透液性である。各防漏カフ4は、バリアシート3の両側部分30,31の身体側に重なるようにして形成されている。防漏カフ4の横方向Xの寸法は、バリアシート3の両側部分30,31と同程度であるか、あるいはそれよりも大きくなるようにしている。
【0026】
このおむつ1を着用するときには、前方連通部33に着用者の外性器が臨み、後方連通部34に肛門が臨み、中間部32に外性器と肛門との間の肌が当接するように着用状態を整える。このとき、前方連通部33の閉鎖縁36が横中心線Q−Qよりも前方に位置し、後方連通部34の閉鎖縁38が横中心線Q−Qの上、または横中心線Q−Qの付近に位置していることが好ましい。このように着用すると、吸液性パネル23が縦方向Yに湾曲するとともに、バリアシート3がバリアシート弾性部材39の収縮により浮き上がって着用者の肌に接触するとともに、バリアシート3と吸液性パネル23との間に空隙29を形成する(図2参照)。そして前後方連通部33,34を介して排泄物を空隙29に通過させ、排泄物が着用者の肌に直接接触しないようにしている。
【0027】
図4は、吸液性パネル23、バリアシート3、防漏カフ4の詳細を示し説明のためその一部を破断した図である。バリアシート3は、その両側部分30,31で吸液性パネル23側に折り返された折り返し部42を含み、両側部分30,31で二枚重ねになっている。折り返し部42を、接合部位43を介して吸液性パネル23の内面シート26に接合している。二枚重ねになった両側部分30,31の間にバリアシート弾性部材39を図示しない接着剤によって接合している。バリアシート弾性部材39は、両側部分30,31の縦方向Yに亘って伸長状態で取り付けられている。
【0028】
前後方連通部33,34は中間部分32から前後ウエスト域7,8に向かって延びるほぼU字形であり、内側縁35,37ではほぼ直線を有し、閉鎖縁36,38では曲線を画いている。バリアシート弾性部材39は、前後方連通部33,34に沿って配設される。したがって、バリアシート弾性部材39は、前方連通部33の内側縁35の近傍においてはほぼ直線の前方部39aを有し、後方連通部34の内側縁37の近傍においてはほぼ直線の後方部39bを有している。前後方連通部33,34をつなぐ中間部分32においては、縦中心線P−Pに向かう凸状部39cを有している。
【0029】
凸状部39cの横方向Xの外側には、横方向Xに延びる折曲部40を備えている。折曲部40は、熱加工によって溶融、加圧されることによって形成される。折曲部40は、両側部分30,31であって、中間部分32の横方向Xの外側に位置する部分に形成されている。折曲部40の横方向Xの寸法は、バリアシート弾性部材39の凸状部39cからバリアシート3の両側縁までの寸法とほぼ同じにしている。図5は図4のV−V線断面図であるが、上記のような折曲部40は、加熱加圧によって凹条部41を形成し、この凹条部41によってバリアシート3の折曲が誘導される。
【0030】
図4に示したように、接合部位43は前端縁27から後端縁28に亘って縦方向Yに延びており、吸液性パネル23の両側縁44,45よりも横方向Xの内側に位置するようにしている。すなわち両側縁44,45と接合部位43との間には間隔が形成される。
接合部位43は、一般的なゴム系ホットメルト接着剤によって形成されるが、ソニックシールやヒートシール等の一般的な接合手段を用いて形成するようにしてもよい。
【0031】
防漏カフ4はZ字を画くように3枚重に折り畳まれたシートから形成されている。具体的には、防漏カフ4は積層された第1面46、第2面47、第3面48を含む。第1面46は、吸液性パネル23とシャーシ2との間に位置している。第2面47は、第1面41からバリアシート3の着用者側に折り返され両側部分30または31に重なっている。第3面48は、第2面47の着用者側に折り重ねられている。すなわち、第1、第2、第3面46,47,48の順に着用者側へと折り重なり、第1面46と第2面47とは、吸液性パネル23を介して重なり、第2面47と第3面48とは直接重なっている。第3面48に位置する側縁49はカフ弾性部材50を取り付け可能とするために折り返されている。カフ弾性部材50は、折り返された側縁49の間に伸長状態で接合され、縦方向Yに亘って取り付けられている。
【0032】
防漏カフ4は、前後端部分51,52において、第1面46を吸液性パネル23に接合し、第2面47をバリアシート3に接合し、第3面48を第2面47に接合している。
第1面46は、前後端部分51,52の縦方向Yに亘ってシャーシ2の内側シート11に接合され、これを固定縁部としている。この防漏カフ4にカフ弾性部材50の収縮力が作用すると、第2面47および第3面48を伸展させてバリアシート3から起立するように離間して、図2に示すような壁を形成する。第2面47および第3面48においてバリアシート3から離間する部分、すなわち接合されていない部分を自由縁部としている。
【0033】
このようなおむつを着用したときの、バリアシート3、防漏カフ4および吸液性パネル23を示したのが図6である。図示したように、おむつの着用状態においては、バリアシート弾性部材39およびカフ弾性部材50が収縮する。バリアシート弾性部材39の収縮により、吸液性パネル23が湾曲するとともに、バリアシート3が吸液性パネル23から浮き上がるように離間する。カフ弾性部材50の収縮により、防漏カフ4の第2面47および第3面48の自由縁部が吸液性パネル23から離間する方向に伸展し、倒伏状態から起立する。
【0034】
吸液性パネル23が上記のように湾曲すれば、これに接合したバリアシート3にも、縦方向Yに湾曲させようとする力が作用する。バリアシート3には折曲部40を形成し、この折曲部40には凹条部41が形成されているので、吸液性パネル23の湾曲に伴いバリアシート3が折曲部40に沿って折り曲げられる。このときバリアシート3は、吸液性パネル23側に向かって凸となるように折れ曲がる。折曲部40は、バリアシート弾性部材39の凸状部39cの横方向Xの外側に形成されている。したがって、バリアシート3の中間部分32では、両側部分30,31から縦中心線P−Pに向かってバリアシート弾性部材39の収縮力が作用し、折曲部40を境に両側部分30,31がさらに折れ曲がりやすくなる。
【0035】
図7は図4のVII−VII線断面図であり、二点鎖線は図6のようにおむつを着用した状態を示したものである。図7ではバリアシート3の側部分31側について説明しているが、側部分30においても同様である。
バリアシート3は、バリアシート弾性部材39の収縮力によって中間部分32を着用者の肌に接触させるように、吸液性パネル23から浮き上がる。バリアシート3には折曲部40を形成しているので、折曲部40を形成した中間部分32の横方向Xの外側では、バリアシート3が折れ曲がり中間部分32から吸液性パネル23に向かって傾斜するようになる。
【0036】
バリアシート3は接合部位43を介して吸液性パネル23に接合している。接合部位43は、吸液性パネル23の両側縁44,45よりも横方向Xの内側に形成しているので、バリアシート3が吸液性パネル23から浮き上がるように離間すると、両側縁44,45と接合部位43との間には、バリアシート3および防漏カフ4で覆われない部分、すなわち吸液性パネル23の露出部分53が形成される。バリアシート3上に尿が残留した場合には、折曲部40を伝って尿が吸液性パネル23に誘導され、吸液性パネル23に吸収される。したがって、尿がバリアシート3上に排泄された場合であっても、速やかにバリアシート3から吸液性パネル23へと誘導することができ、着用者の肌トラブルを引き起こすのを防止することができる。
【0037】
接合部位43は、防漏カフ4の倒伏状態で自由縁部と重なる位置に形成している。すなわち、接合部位43は第2面47および第3面48に重なるように位置させている。固定縁部と接合部位43とが重なって形成されると、防漏カフ4が起立したときに、接合部位43と両側縁44,45との間が防漏カフ4で覆われることになり、吸液性パネル23の露出部分53が形成されなくなってしまうことから、接合部位43は自由縁部と重なる位置に形成するようにしている。
【0038】
吸収性パネル23の露出部分53の横方向Xの外側には、吸液性パネル23の両側縁44,45から上方に向かって防漏カフ4が起立している。したがって、前記露出部分53に誘導された尿がおむつの外に流出するのを防止することができる。
また、バリアシート弾性部材39と防漏カフ4とが重なる位置においては、バリアシート弾性部材39が直接着用者の肌に接触することがなく、肌への刺激を低減することができる。
【0039】
この実施形態では、折曲部40を熱加工によって形成している。両側部分30,31を折り曲げて折り曲げた対向面を互いにヒートシール等によって固着することによって横方向Xに延びる折曲部を形成することもできる。バリアシート3の身体側の面に接着剤を塗布した状態で両側部分30,31を折り曲げて、この折曲を固定することによって、折曲部を形成することもできる。また、バリアシート3と内面シート26との間に、前ウエスト域7側に位置する前方の空隙と、後ウエスト域8側に位置する後方の空隙とを隔てる隔離シートを備えることにより、折曲部を形成するようにしてもよい。この場合には、隔離シートの一方の端縁をバリアシート3に接合し、他方の端縁を内面シート26に接合することにより、シャーシから離間したバリアシート3が離間シートの接合域でシャーシ側に引っ張られ、この引っ張られた部位において折曲部が形成されることとなる。すなわち、バリアシート3の引っ張られた部位においてはシャーシ側との離間距離が短く、他の部分では離間距離が長いことから引っ張られた部位においてシャーシ側に凸となるような折曲が可能となる。バリアシート3を繊維密度の粗密差が生じるように形成し、シートの剛性差によって折曲部を形成するようにしてもよい。
【0040】
折曲部40は、一本のみ形成することとしているが、平行する複数の折曲部で形成することとしてもよい。折曲部40は、両側部分30,31にそれぞれ1本ずつ形成するようにしているが、これら両側部分30,31の折曲部40を一本につなげて、両側部分30,31に亘って形成するようにしてもよい。
【0041】
バリアシート弾性部材39として、凸状部39cを有するものを用いているが、二条のバリアシート弾性部材39が中間部分32で交差するようなものでもよく、中間部分32で縦方向Yに分割されているようなものでもよい。
また前後方連通部33,34の二つの連通部を形成しているが、いずれか一方の連通部のみであってもよし、前後ウエスト域7,8において閉鎖されていてもよい。バリアシート3にはU字形の前後方連通部33,34を形成しているが、例えばO字形にくりぬいたシートを用いることもできる。
【0042】
バリアシート3および防漏カフ4は、それぞれ一枚のシートで形成されているが、二枚のシートを貼りあわせて形成するようにしてもよい。この場合には、バリアシート弾性部材39およびカフ弾性部材45をそれぞれ二枚のシートの間に挟んで取り付けることができる。このように二枚のシートを貼りあわせる場合には、折曲部40を一方のシートにのみ形成することもできるし、これらを貼りあわせた後に両方のシートに形成することもできる。
<第2の実施形態>
【0043】
図8は第2の実施形態を示したものである。この実施形態ではスリット54を形成したことのみが第1の実施形態と異なり、他の構成要素は第1の実施形態と同様である。同様の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0044】
この第2実施形態では、バリアシート3にスリット54を形成している。スリット54は、バリアシート3をその厚さ方向に貫通するものであって、折曲部40の一部を切り抜いて、折曲部40上に重なるようにして横方向Xに延びて形成されている。スリット54の幅方向Xの寸法L1は、バリアシート弾性部材39の凸状部39cからバリアシート3の両側縁までの寸法L2の約半分としている。スリット54がこれよりも長くなると、バリアシート3の強度が弱くなる可能性があるからである。折曲部40は、寸法L2とほぼ同じ長さにしている。
【0045】
この第2の実施形態では、スリット54を形成した部分では、その剛性が弱くなりバリアシート3の折り曲げを誘導することができる。スリット54の横方向Xの両側では折曲部40を形成している。折曲部40とスリット54とを形成することによって、より容易に折れ曲がるようにしている。
【0046】
スリット54は、バリアシート3の厚さ方向に貫通しているので、バリアシート3上に残留した尿をこのスリット54を通過させて吸液性パネル23に誘導することができる。折曲部40だけのときに比べて、より迅速に尿を吸液性パネル23に誘導することができる。
【0047】
この実施形態において、スリット54をほぼ矩形にしているが、横方向Xに延びる楕円形など他の形状にしてもよい。加熱によって折曲部40を形成した場合であっても、折曲部40に重なるようにしてスリット54を形成することによって、折曲部40による肌への刺激を低減することができる。
【0048】
本発明において、バリアシート3および防漏カフ4は液抵抗性かつ通気性の不織布等、内側シート11および外側シート12は通気性不織布等、防漏シート13はプラスチックフィルム等、吸液性パネル23を構成する吸液性芯材25はフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物等、それぞれ当技術分野の慣用素材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態のおむつの斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1の展開図。
【図4】図3の要部説明図。
【図5】図4のV−V線端面図。
【図6】図4の着用状態の説明図。
【図7】図4のVII−VII線端面図。
【図8】第2の実施形態の要部説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 おむつ
2 シャーシ
3 バリアシート
4 防漏カフ
5 身体側内面
6 着衣側外面
7 前ウエスト域
8 後ウエスト域
9 股下域
10 吸液構造体
27 前端縁
28 後端縁
29 空隙
30 側部分
31 側部分
32 中間部分
33 前方連通部
34 後方連通部
39 バリアシート弾性部材
40 折曲部
43 接合部位
44 側縁
45 側縁
49 側縁
50 カフ弾性部材
54 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側および着衣側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置する股下域と、前記股下域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記股下域において前記シャーシから離間可能に形成されたバリアシートとを含む吸収性物品において、
前記バリアシートは、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に対向する両側部分と、前記両側部分の間をつなぐ中間部分と、前記横方向に延びるとともに前記縦方向に対向する前後端縁と、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に対向して伸長状態で取り付けられたバリアシート弾性部材とを含み、前記前後端縁が前記シャーシの身体側に固着され、前記吸液構造体が前記股下域から前記前後ウエスト域に湾曲することによって、前記バリアシートと前記吸液構造体との間に空隙を形成し、
前記空隙の内部に向かって排泄物を通過させることが可能であって前記両側部分および前記中間部分によって画成される連通部を形成し、
前記中間部分の前記横方向外側に位置する前記両側部分は、前記バリアシートが前記シャーシ側に向けて凸となる折曲部を備えることを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
前記折曲部は、前記両側部分の一部を熱加工で溶融することによって形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前期折曲部は、前記両側部分の一部を前記シャーシ側に向けて凸となるように折り曲げた対向面を互いに接合することによって形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記バリアシートは、前記折曲部の一部を切り取ったスリットを含む請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記バリアシートは、前記両側部分において接合部位を介して前記吸液構造体に接合され、
前記接合部位は、前記吸液構造体の前記縦方向に延びて前記横方向に対向する両側縁よりも前記横方向の内側に位置し、前記バリアシートが前記シャーシから離間したときに前記吸液構造体の前記両側縁に前記バリアシートで覆われない露出部分が形成される請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記連通部は、前記中間部分よりも前記縦方向の前側に位置する前連通部と、前記縦方向の後側に位置する後連通部とを含み、
前記バリアシート弾性部材は、前記前後連通部に沿って取り付けられ、前記中間部分において前記横方向を二等分する縦中心線向かう凸状部を含み、
前記折曲部は、前記バリアシート弾性部材の横方向外側に位置する請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−148429(P2009−148429A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329235(P2007−329235)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】