説明

吸収性物品

【課題】薄くて且つ柔らかく、十分な吸収性能を達成することができる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品1は、表面シート2、裏面シート4及び両シート間に介在配置された吸収体3を備えており、吸収体3は、2.0kPa加圧下通液速度が60ml/min以上の高吸収性ポリマーを含有しており、表面シート2として、シート状物からなる第1層21及び第2層22を有し、第1層21及び第2層22がそれぞれ表面シート2の表面及び裏面を構成し、第1層21が表面側に突出して内部が空洞となっている多数の凸部を形成していると共に、該凸部間に凹部が形成されており、第2層22が平面状に形成されているシート材が用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これら両シート間に介在する液保持性の吸収体とを有する、使い捨ておむつ及び生理用ナプキン等の吸収性物品は、広く用いられている。このような吸収性物品においては、吸収力は高く、且つ吸収性物品自体の厚みが薄くコンパクトで嵩張らないことが要望されており、このため、吸収体の厚みを薄くすることが提案されている。また、前記吸収体は、一般に、パルプ繊維等に代表される繊維状基材と高吸収性ポリマーからなり、排泄液の吸収は、まず繊維状基材に一旦ストックした後、高吸収性ポリマーによって固定することにより行うようになされている。
【0003】
しかし、吸収体を薄型化するためには、繊維状基材の使用量を低減する必要があるため、排泄液のストック能力が低下し、更には高吸収性ポリマーのゲルブロッキングが生じるため、もれが発生するという問題があった。
【0004】
この点において、下記特許文献1には、Z軸方向のポリマー濃度を変更することによりゲルブロッキングを防止する吸収性物品が開示されている。また下記特許文2には、2種類のポリマーを上下層に分けることでゲルブロッキングを防止する吸収性物品が開示されており、下記特許文3には、ポリマーを平面方向に均一に散布することでゲルブロッキングを防止する吸収性物品が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−205806号公報
【特許文献2】特開平10−118117号公報
【特許文献3】特開2007−37668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸収体を薄くするためには、パルプ/ポリマーの混合層から、嵩を占めているパルプを減らす必要がある。しかし、特許文献1及び特許文献3記載の吸収性物品においては、パルプ減とするとポリマー濃度が密になり、ゲルブロッキングが発生してしまい、根本的な手段ではない。また、特許文献2の吸収性物品においては、パルプ減で且つ幼児の体重がかかった場合には、均一に分布されていてもゲルブロッキングが生じてしまい、薄型吸収体を作成することは難しい。
【0007】
従って、本発明の目的は、薄くて且つ柔らかく、十分な吸収性能を達成することができる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された吸収体を備えており、前記吸収体は、加圧下通液速度の測定法により測定された2.0kPa加圧下通液速度が60ml/min以上の高吸収性ポリマーを含有しており、前記表面シートとして、シート状物の第1層及び第2層からなり、該第1層及び該第2層がそれぞれ該表面シートの表面及び裏面を構成し、該第1層が表面側に突出して内部が空洞となっている多数の凸部を形成していると共に、該凸部間に凹部が形成されており、該第2層が平面状に形成されているシート材が用いられており、前記シート材は、前記第1層の前記凹部において該第1層と前記第2層とが接着されている三次元状凹凸賦形のシート材であって、該凸部及び該凹部は、それらが交互に且つ一方向に列をなすように配置され、更に該列が多列に配置されており、一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していないシート材である吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品は、ゲルブロッキングを防止することができ、かつウエットバックの問題を解決することができる。さらに、吸収体を薄くて且つ柔らかくすることができるので、ギャザーの応力が弱くても吸収性物品を体にフィットさせることができ、またギャザーの跡が肌に生ずることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である使い捨ておむつに基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である使い捨ておむつの展開状態における肌当接面側(表面シート側)を一部破断して示す平面図である。図2は、図1のII−II線断面図であ
る。尚、図2における表面シートは、後述するように三次元状凹凸賦形シートが用いられるが、図2では簡略化して示している。
【0011】
本実施形態のおむつ1は、肌対向面及びそれと反対側に位置する非肌対向面を有する。肌対向面は表面シート2を含んでいる。非肌対向面は裏面シート4を含んでいる。表面シート2と裏面シート4との間には吸収体3が配されている。さらに表面シート2と吸収体3との間にはサブレイヤ5が配されている。サブレイヤ5は、吸収体3の肌対向面のうち、中央域を被覆している。
【0012】
吸収体3は、液透過性を有する上層30及び下層31からなり、該上層30と該下層31とにより高吸収性ポリマー10を挟持している。吸収体3(下層31)と裏面シート4との間は、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により接合されている。
【0013】
高吸収性ポリマー10を挟持している上層30及び下層31それぞれは、上述したように、液透過性を有している。上層30及び下層31としては、液透過性を有する材料から形成されたものを用いることができる。この液透過性材料としては、例えば不織布、紙、穿孔フィルム、フラッフパルプ等が挙げられる。これらの中でも、液透過性、吸水性の観点から、特に不織布、紙、フラッフパルプが好ましい。不織布としては、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンボンドーメルトブローンースパンボンド(SMS)不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)不織布などの各種不織布を親水化処理したもの、あるいはエアレイド不織布、スパンレース等が挙げられる。
【0014】
上層30が不織布からなる場合、該上層30の坪量は、好ましくは5〜50g/m2、更に好ましくは10〜40g/m2であり、厚みは、好ましくは0.1〜5mm、更に好ましくは0.1〜3mmである。上層30がフラッフパルプからなる場合、該上層30の坪量は、好ましくは10〜500g/m2、更に好ましくは30〜300g/m2であり、厚みは、好ましくは0.5〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。上層30が紙からなる場合、該上層30の坪量は、好ましくは5〜30g/m2、更に好ましくは5〜20g/m2であり、厚みは、好ましくは0.01〜3mm、更に好ましくは0.01〜1
mmである。
【0015】
下層31が不織布からなる場合、該下層31の坪量は、好ましくは5〜50g/m2、更に好ましくは20〜40g/m2であり、厚みは、好ましくは0.1〜5mm、更に好ましくは0.1〜3mmである。下層31がフラッフパルプからなる場合、該下層31の坪量は、好ましくは10〜500g/m2、更に好ましくは30〜300g/m2であり、厚みは、好ましくは0.5〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。下層31が紙からなる場合、該下層31の坪量は、好ましくは5〜30g/m2、更に好ましくは5〜20g/m2であり、厚みは、好ましくは0.1〜3mm、更に好ましくは0.1〜1mmである。
【0016】
上層30と下層31との間には、高吸収性ポリマー10の他に、パルプ繊維を含ませることができる。従来のパルプ繊維を主成分とする吸収体においては、パルプ繊維は液の一時的なストック能、液拡散能、圧力を緩和する能力を担っており、パルプ繊維の使用量の低減に限度があった。これに対し、本発明に用いる高吸収性ポリマー10は後述するように吸水速度が早く且つ通液性に優れるため、該高吸収性ポリマー10を吸収体の構成成分として用いることで、パルプ繊維の使用量を従来よりも低減することができ、吸収体における高吸収性ポリマーの濃度(分布量)を高濃度に調整することができる。ここで、高濃度とは、パルプ/高吸収性ポリマーの重量比が50/50〜0/100である。このように高吸収性ポリマーの濃度を高濃度にすることにより、優れた液吸収性を有しつつも、厚みの薄い吸収体が得られる。本実施形態における吸収体中に含まれるパルプ量は高吸収性ポリマー量の3/4以下であり、好ましくは20〜75重量%、更に好ましくは30〜70重量%である。
【0017】
次に、本実施形態のおむつ1の吸収体に含有される高吸収性ポリマー10について説明する。
高吸収性ポリマー10は、下記加圧下通液速度の測定方法による2.0kPaでの加圧下通液速度が60ml/min以上、好ましくは60〜300ml/min、更に好ましくは80〜270ml/minであり、100〜240ml/minが一層好ましい。ここで、2.0kPaという荷重は、おむつを着用しているときに吸収体に加わる体圧にほぼ相当する。高吸収性ポリマー10の前記通液速度を前記範囲内とし、さらにおむつの表面シートとして後述する三次元状凹凸賦形シートを併用することにより、ゲルブロッキング発生が起こりづらくなると共に、一度に多量の排泄物が排泄されたとき、月齢の高い乳幼児又は大人の例に見られるように排泄速度が速いとき、更に吸収体の薄型化を図ったときでも、液の固定を十分に行うことができ、ウエットバックが起こりづらくなる。
【0018】
[加圧下通液速度の測定方法]
(1)測定試料である高吸収性ポリマーを良く混合した上で、薬さじで底部からすくい取り、粉末ロート(口径φ60mm)にあける。この操作を3回繰り返す。
(2)粉末ロートの下に出来たポリマーの山の中心から対角線上にスパーテルでポリマーをすくい取り、測定試料0.320±0.005gを精秤し、200mlビーカーに入れ、更に生理食塩水150mlを加える。
(3)攪拌棒を用いて攪拌を行い、その後測定試料が十分に膨潤するように、30分間放置する。
(4)コックを閉めたクロマトグラフ管に生理食塩水を満たす。その後、コックを開いて生理食塩水を流し、フィルター近くでコックを閉め、フィルターとコックの間に空気が無くなったことを確認する。
(5)再度、クロマトグラフ管に生理食塩水を60mlライン(上部ライン)まで満たす。
(6)クロマトグラフ管下部のコックを開き、管内の液面が60mlラインが40mlラインまで下がるのに要する時間(T0秒)をストップウォッチで計測する。計測された時間の適正範囲は7±5秒である。12秒を超える場合はフィルターの洗浄を行う。あるいはフィルターを交換する。
(7)コックを閉め、(3)の膨潤した測定試料(膨潤ゲル)をクロマトグラフ管の中に入れる。ゲルは生理食塩水で洗って、必ず全てのゲルを残さずクロマトグラフ管に入れるようにする。
(8)コックを開いてクロマトグラフ管内の液面を60mlライン(上部ライン)の約5cm上まであげる。次に、加圧軸をクロマトグラフ管に入れ、おもりを加圧軸にのせて、測定試料(膨潤ゲル)に2.0kPaの荷重が掛かる状態にし、1分間放置する。(その際、加圧軸のメッシュに空気が付着しないようにする。)
(9)コックを開いて液を流し、管内の液面が60ml(上部ライン)から40mlライン(下部ライン)まで下がるのに要する時間(T1)をストップウォッチで測定する。
(10)以下の式に基づいて通液速度を算出する。
通液速度(ml/min.)=20×60/(T1−T0
(11)前記式で得られた値を円筒内の膨潤した高吸収性ポリマー層の厚みで除して、20mmあたりの値に換算して加圧下通液速度とする。測定は2回行い、その平均値を測定値とする。もし2回測定した結果の差が大きい時は再度測定する。
【0019】
通液速度の更に詳細な測定方法は特開2003−235889号公報の段落0008ないし0016に記載されている。測定装置は同公報の図1及び図2に記載されている。
【0020】
高吸収性ポリマー10は、上述の通液速度を有することに加え、ボルテックス法(VORTEX法)に基づく下記の測定方法による吸水速度が50秒以下が好ましく、更に好ましくは10〜50秒、特に好ましくは20〜40秒である。ボルテックス法は高吸収性ポリマーが強制的に液体にさらされるときの液の固定能力を示す方法として知られている。該吸水速度の値が大きくなるほど、吸収体表面に液が長く留まることになるので漏れが生じたり、また表面からの水分の蒸発が多くなり、あるいは肌を濡らすことになるので、かぶれのおそれがある。尚、本発明においてはボルテックス法による吸水速度の評価を、時間を測定することで評価しているため、測定時間が短いほど吸水速度が速いとみなされる。
【0021】
[ボルテックス法による吸水速度の測定方法]
ボルテックス法による測定は、JIS K7224−1996に準拠して行った。すなわち、100mlのガラスビーカーに、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水)50mlとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン製HPS−100)に載せる。マグネチックスターラーの回転数を600±5rpmに調整し、生理食塩水を攪拌させる。測定試料である高吸収性ポリマー2.000±0.005gを、攪拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K 7224(1996)に準拠して該高吸収性ポリマーの吸水速度(秒)を測定する。具体的には、高吸収性ポリマーのビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)でストップウォッチを止め、その時間(秒)をボルテックス法による吸水速度として記録する。測定はn=5測定し、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。尚、これらの測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に資料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
【0022】
高吸収性ポリマー10は、上述の通液速度及び吸水速度を有することに加え、下記の測定方法による保持量が25g/g以上が好ましく、更に好ましくは27g/g以上、特に好ましくは30g/g以上である。高吸収性ポリマーの保持量が大きいほど、単位面積辺りの吸収容量が増加するため、吸収体の薄型化が可能となり、また、液吸収後において隣り合う高吸収性ポリマー間の空間が広いため、吸収体における液の拡散を阻害しにくいという効果が奏される。尚、高吸収性ポリマーの保持量の値は大きいほど好ましいが、80g/gもあれば通常は充分である。
【0023】
[保持量の測定方法]
高吸水性ポリマー1gを生理食塩水150mlで30分間膨潤させた後、250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、遠心分離機にて143Gで10分間脱水し、脱水後の全体重量を測定した。次いで、下記〔数1〕に示す数式に従って遠心脱水法による保持量(g/g)を算出した。
【0024】
【数1】

【0025】
高吸収性ポリマー10は、上述の通液速度、吸水速度及び保持量を有することに加え、下記の測定方法による2.0kPaでの加圧下吸収量が
15g/g以上、特に20〜30g/gであることが、ポリマーの使用量の点や、液吸収後のゲル感が低下することを防止する点から好ましい。
【0026】
[加圧下吸収量の測定方法]
図3に示すように、ポリマー0.500±0.005gを精秤し、メッシュ付き円筒(底面に目開き63μmの金属メッシュ、内径30mm)に均一に分散するようにいれ、重量150gのおもりをポリマーにダメージを与えないようにゆっくりと乗せる。シャーレ(内径93mm)に生理食塩水を50ml入れ、ポリマーを入れた前記円筒を、円筒底面とシャーレ底面とが5mm程度の間隔を保持した状態で生理食塩水に60分間浸漬させる。その後、取り出し15分水切りを行った後重量測定を行う。
以上の測定値をもとに、下式に基づいて加圧下吸収量を算出する。
加圧下吸収量(g/g) =(円筒の総重量(g)−円筒重量(g)−おもり重量(g)−ポリマーの重量(g)−0.25)/0.5g
【0027】
上述した4つの特性(2.0kPaでの加圧下通液速度、ボルテックス法による吸水速度、遠心脱水法による吸水量、2.0kPaでの加圧下吸収量)がそれぞれ上述した範囲に調整された高吸収性ポリマーを吸収体の構成成分として用いることにより、排泄液を素早く吸収し且つ液漏れが少ない吸収体を得ることができる。こうして得られた吸収体は、一度の排泄量が多い場合、あるいは排泄速度が速い場合においても、排泄液を素早く吸収し且つ液漏れを効果的に低減することができるため、特に高月齢の乳幼児や大人用のおむつ、あるいは夜間・寝起き時のおねしょを想定したおむつなどに好適に使用できる。また、上述した4つの特性がそれぞれ上述した範囲に調整された高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収体の厚みを薄くすることが可能となるので、例えば、活動量の多い高月齢の乳幼児の運動を阻害することが少ない薄型の吸収体、あるいは高齢者の外出時においてもおむつを装着していることを目立たせない薄型の吸収体を得ることができる。
【0028】
上述した4つの特性(2.0kPaでの加圧下通液速度、ボルテックス法による吸水速度、保持量、2.0kPaでの加圧下吸水量)がそれぞれ上述した範囲にある吸水性ポリマーとしては、例えば、以下のもの等を用いることができる。
(1)重合性モノマーを重合させた後、架橋剤を加えて橋掛構造を作り、更に表面架橋を施したもの。
(2)重合性モノマーを重合させると共に、他のブロックポリマーを合成し、これらを互いに架橋させ、更に必要に応じて表面架橋を施したもの。
(3)ポリアミノ酸を主鎖とするもの。ここで、ポリアミノ酸とは、アミノ酸の単独重合体、アミノ酸と他の単量体成分の共重合体、又は複数種のアミノ酸の共重合体である。主鎖とは、重合体の架橋部を除いた部分である。
【0029】
前記(1)の吸水性ポリマーについて説明する。
重合性モノマーを重合させた後、架橋剤を加えて橋掛構造を作り、更に必要に応じて表面架橋を施したもの、吸水性ポリマーは、例えば重合に不活性な疎水性有機溶媒(必要により重合に不活性な両親媒性も用いる)と重合性モノマー(水溶性重合性モノマーが50重量%以上)及び/又は重合性モノマーの水溶液、分散剤、必要により架橋剤を用いて重合して得られる重合体粒子、重合性モノマー(水溶性重合性モノマーが50重量%以上)及び/又は重合性モノマーの水溶液、必要により架橋剤を用いて重合して得られる含水ゲル状重合体を粉砕、必要により架橋処理を施して得られる重合体粒子である。
【0030】
前記重合性モノマーとしては、水溶性で、重合性の不飽和基を有する種々のビニルモノマーが挙げられ、具体的には、オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸エステル、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アンモニウム塩、及び/又はオレフィン系不飽和アミドなどの重合性不飽和基を有するビニルモノマーが例示される。
【0031】
オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸及び/又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が用いられ、一層好ましくは、アクリル酸、アクリル酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及び/又はアクリル酸アンモニウム塩が用いられる。
【0032】
オレフィン系不飽和カルボン酸エステルとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸,スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体及び/又はその塩が挙げられ、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩としては、(メタ)アクリロイル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル及び/又はそのアルカリ塩等が挙げられ、オレフィン系不飽和アミンとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及び/又はそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体が挙げられ、オレフィン系不飽和アンモニウム塩としては、(メタ)アクロイルオキシエチレントリメチルアンモニウムハロゲン塩等が挙げられ、オレフィン系不飽和アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体やビニルメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0033】
他の単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミドなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0034】
重合性モノマーは、単独若しくは2種以上の混合物として用いられる。本発明においては、これらの中でも、特にオレフィン系不飽和カルボン酸及び/又はそのアルカリ塩が好ましく用いられ、更に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩が用いられる。
【0035】
重合性モノマーが常温で固体である場合には、水溶液として用いることができる。この場合、水溶液中における重合性モノマーの濃度は、生産性の観点より水溶液全体中に好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、一層好ましくは30重量%以上である。水溶性である重合性モノマーは、これと共重合し得る水不溶性の重合性モノマーと併用することもできる。該水不溶性の重合性モノマーとしては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸エステルモノマー、スチレンなどが挙げられる。この場合、水溶性の重合性モノマーは、全重合性モノマー中に50重量%以上、特に70重量%以上含有していることが好ましい。
【0036】
前記(1及び2)の吸水性ポリマーの製造に使用される、前記重合に不活性な疎水性有機溶媒としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール等の炭素数4〜6の脂肪族アルコール、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン、酢酸エチル等の脂肪族エステル類、シリコーンオイル、香料など等を例示することができる。使用に際しては、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。また、前記疎水性有機溶媒の使用量は、水溶性重合性モノマー又はその水溶液100重量部に対して、好ましくは50〜500重量部、更に好ましくは100〜500重量部である。
【0037】
吸水性ポリマーの製造には、前記疎水性溶媒以外に両親媒性の溶剤を用いてもよい。該両親媒性の溶剤の使用量は、該疎水性有機溶媒との合計量で、重合性モノマー100重量部に対し500重量部までの量であることが好ましい。両親媒性の溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール及び2−プロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
【0038】
重合に分散剤を用いることもできる。その例としては、陰イオン性界面活性剤として以下の(a)〜(d)が挙げられる。
(a)カルボン酸誘導体;N−アシルアスパラギン酸又はN−アシルグルタミン酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸及び/又はその塩、脂肪酸石鹸。
(b)硫酸誘導体;アルキル硫酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及び/又はその塩。
(c)スルホン酸誘導体;アルキルスルホン酸及び/又はその塩、スルホコハク酸ジアルキル及び/又はその塩、N−アシルタウリン及び/又はその塩、N−アシル−N−メチルタウリン及び/又はその塩。
(d)リン酸誘導体;(モノ及び/又はジ)アルキルリン酸及び/又はその塩、(モノ及び/又はジ)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及び/又はその塩:アルカリ金属イオン,アンモニウムイオン(トリエタノールアミン塩なども含む)。
【0039】
分散剤として、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤及び高分子型分散剤を用いることもできる。具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート及びポリオキシメチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩及びドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等のグリコシド化合物、エチルセルロース及びベンジルセルロース等のセルロースエーテル、セルロースアセテート、セルロースブチレート及びセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、トリメチルステアリルアンモニムクロリド及びカルボキシメチルジメチルセチルアンモニウム等の陽イオン性及び両性の界面活性剤、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリエチレン、マレイン化α−オレフィン、スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩及びイソプロピルメタクリレート−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩等の高分子分散剤を例示することができる。これらの分散剤は一種以上を用いることができる。
【0040】
分散剤の使用量は、前記重合性モノマー100重量部に対して好ましくは0.001〜5重量部であり、更に好ましくは0.001〜1重量部であり、一層好ましくは0.001〜0.5重量部である。
【0041】
重合に際し、前記界面活性剤(分散剤)を存在させる方法としては、下記(i)〜(iv)に示す方法等を挙げることができる。
(i)界面活性剤(分散剤)を、予め重合に不活性な疎水性有機溶媒(必要により重合に不活性な両親媒性も用いる)に溶解及び/又は分散させる方法。
(ii)界面活性剤(分散剤)を、予め重合性モノマー又はその水溶液に溶解及び/又は分散させる方法。
(iii)重合を行いながら、徐々に界面活性剤(分散剤)又はその分散液もしくは溶液を重合に不活性な疎水性有機溶媒(必要により重合に不活性な両親媒性も用いる)又は重合性モノマー(またはその水溶液)に添加する方法。
(iv)前記(i)〜(iii)の方法を併用した添加方法。
【0042】
前記陰イオン性界面活性剤は、少量の使用量でも十分効果が発揮される。前記陰イオン性界面活性剤の使用量は、前記重合性モノマー100重量部に対して好ましくは0.01〜10重量部、更に好ましくは0.01〜2重量部、一層好ましくは0.01〜1重量部である。前記使用量が、0.01重量部未満であると、分散剤としての量が少なく安定に重合体粒子を得ることができないばかりか、生成した重合体の分解劣化の防止能も十分でなく、10重量部を超えても、過剰の界面活性剤の使用は経済的に得策でないので、前記範囲内とするのが好ましい。陰イオン性界面活性剤は単独で使用しても分散剤として充分効果があるが、更に、他の陰イオン性界面活性剤と混合して使用するか、又は非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤若しくは高分子型分散剤を併用してもよい。これらの中でも他の陰イオン性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0043】
前記重合には、重合開始剤を用いるのが好ましい。該重合開始剤の種類は、特に限定されない。酸化性重合開始剤として、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド等のケトパーオキシド;ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド;tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーイソブチレート、tret−ブチルピバレート等のアルキルパーエステル;tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、過酸化水素等のハイドロパーオキシド類;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニム等の過硫酸塩;過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸類;塩素酸カリ、臭素酸カリ等のハロゲン酸塩が揚げられる。これらは一種以上を使用することができる。
【0044】
アゾ系重合開始剤としては、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロハライド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロハライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロハライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(1−フェニルエチル)アゾジフェニルメタン、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4’−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)などを例示することができる。また、前記の化合物において、ハライドはクロリドであることが経済面より好ましい。これらは一種以上を使用することができる。
【0045】
前記重合開始剤としては、過酸化水素/第1鉄塩、過硫酸塩/亜硫酸塩、クメンヒドロパーオキシド/第1鉄塩、過酸化水素/L−アスコルビン酸等のレドックス系重合開始剤などを用いることもできる。これらは一種以上を使用することができる。
【0046】
使用に際しては、酸化性重合開始剤,アゾ系重合開始剤,レドックス系重合開始剤を併用しても良い。単独若しくは2種以上の混合物として用いることができる。これらの中でも、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム,2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)
ジヒドロハライド及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパ
ン]ジヒドロハライドを含む群より選択される一種以上が本発明の目的を達成する為に好ましい。
【0047】
前記重合開始剤の使用量は、前記重合性モノマーに対して、通常0.001〜10%、好ましくは0.01〜5%である。重合開始剤の添加方法は、特に制限されない。例えば重合溶媒に添加、及び/又はモノマー溶液に添加するのが好ましい。
【0048】
[反応条件]
重合に不活性な疎水性有機溶媒(必要により重合に不活性な両親媒性も用いる)と重合性モノマー(水溶性重合性モノマーが50重量%以上)とを用いて、重合性モノマーを重合させる方法としては、下記に示す方法等の何れかを挙げることができる。重合性モノマー又はその水溶液と疎水性有機溶媒とを一括に混合し、その後重合させる方法(一括重合法)。重合性モノマー又はその水溶液を疎水性有機溶媒の中に滴下しながら逐次重合させる方法(逐次重合法)。重合性モノマー又はその水溶液を予め一部の疎水性有機溶媒と混合又は分散して得られる混合溶液を、疎水性有機溶媒の中に滴下しながら重合する方法(前分散法)、前記の方法を併用した方法。重合温度は、通常、20〜150℃、好ましくは40〜100℃の範囲が適当である。120℃を超えると、架橋が極度に高まるために重合体粒子の吸水能が極度に低下し、20℃未満であると、重合速度が極端に低下するので好ましくない。モノマー又は水溶液の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
【0049】
本発明における吸水性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系架橋重合体が最も好ましい。(メタ)アクリル酸および/またはその塩を好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する重合体である。また、重合体中の酸基は、その25〜100モル%が中和されていることが好ましく、50〜99モル%が中和されていることがより好ましく、55〜80モル%が中和されていることがさらに好ましく、塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの1種または2種以上を例示する事ができる。塩を形成させるための酸基の中和は、重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。
【0050】
重合後、必要に応じ通常の後処理、例えば、共沸脱水、デカンテーションや遠心分離による溶媒の除去、減圧乾燥機、流動乾燥機などの手段を用いた乾燥、解砕処理、造粒処理を施す等して、重合体粒子として得ることができる。
ゲル解砕工程において含水ゲル状重合体を粒子状にする手段としては、従来公知のゲル解砕及び/又は粉砕装置を用いることができる。例えば、ミートチョッパー等の多孔板を有するスクリュウ型押し出し機、エクストルーダー、シュレッダー、エッジランナー、カッターミル、スクリュウ式破砕機等があげられる。また、回転腕又は攪拌を有する重合反応容器内で、該回転腕又は攪拌翼の回転により生じる剪断力によって含水ゲル状重合体を粒子状にしてもよい。含水ゲル状重合体に対する攪拌力の大きい反応容器が好ましい。例えば、ニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー等のバッチ式のものや、コンティニュアスニーダー等の連続式のものをあげることができる。
【0051】
本発明に用いられる粒子に架橋構造を導入する方法として、架橋剤を使用しない自己架橋によって導入する方法や、1分子中に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性基を有する架橋剤を共重合又は反応させて導入する方法等を例示できる。架橋剤は1種のみ用いてもよいし2種以上使用してもよい。中でも、得られる吸水性樹脂の吸水特性などから、2個以上の反応性基を有する化合物を架橋剤として必須に用いることが好ましく、さらに、吸水性樹脂中のイオン基に作用する多価イオンを併用して用いることが好ましい。本発明における架橋剤処理は、重合前、重合時及び/又は重合後に架橋剤を添加することができる。重合段階で重合性モノマー溶液と混合する方法、重合段階で反応系内に混合する方法、重合して得られる重合体に固体、水溶液又は分散液として噴霧する等して添加する方法等によって、架橋を加えることができる。それによって粒子内部や粒子表面に架橋構造を構築することができる。
【0052】
架橋剤としては、例えば、架橋剤としては、N,N−ジアリルアクリルアミド、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアリルメタクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルポリ(メタ)アリロキシアルカン、などのポリアリル化合物;ジビニルベンゼン、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリビニル化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;グルタールアルデヒド、グリオキザール等のポリアルデヒド;グリセリン,ポリビニルアルコール,ポリエーテル変性シリコーン等のポリオール;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン,アミノ変性シリコーン等のポリアミン;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のヒドロキシビニル化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノン等の炭酸誘導体、1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、ジルコニウム,チタン等の陽イオンから成る多価金属化合物(水酸化物又は塩化物等の無機塩又は有機金属塩)なども挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物等を用いることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
また、前記(1)及び(2)の吸水性ポリマーの製造に際しては、官能基を有する高分子化合物を用いて得られる重合体粒子の表面処理を行うこともでき、該高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミンなどを挙げることができる。また、該高分子化合物は、単独で用いても良いが、前記の種々の架橋剤と併用しても良い。2個以上の重合性不飽和基を有する架橋剤や2個以上の反応性基を有する架橋剤の使用量としては、最終生成物の吸水性ポリマーの所望の性能に従い任意の量とすることができるが、全重合性モノマー(2個以上の重合性不飽和基を有する架橋剤以外の重合性モノマー)に対して0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜1重量%の範囲がさらに好ましい。架橋剤やその水溶液を使用する際には、親水性有機溶媒や,酸やpH緩衝剤を混合して使用してもよい。
【0054】
このような架橋剤による処理は、架橋度を高めて分子鎖上に生じる架橋点の間隔を長くすると、吸水性ポリマーの圧力下吸収量が高まり、短くすると、吸水性ポリマーの硬さが低下して、圧力下通液速度が低下する。上述した2.0kPaでの加圧下通液速度及び2.0kPaでの加圧下吸水量が、それぞれ上述した範囲の吸水性ポリマーを得るためには、架橋度を高めて、加圧下の吸水倍率が前記範囲内となるように、反応条件(架橋剤量、濃度、添加速度、重合温度等)で制御する。得られた吸水性ポリマーの加圧下通液速度の制御は、粒径(重合時の攪拌速度や共存させる界面活性剤の種類とHLBなどで制御可能)や後述の表面処理によって制御することが好ましい。
【0055】
表面架橋は、上述した架橋剤による処理を行った後のポリマーを、特定の水分率(例えば10−100%、自重に対する吸水量)に調整した後、前記に示したような架橋剤を用いて架橋反応を起こさせることにより実施させる。水分率を調整することにより、どの程度内部へ架橋を浸透させるかを制御することができる。水分率を高めると、架橋剤による反応効率は低下する傾向にあるものの、より内部まで架橋度を増すことができる。この場合、初期の吸収速度が高まり、かつ、圧力下でつぶれにくい吸水ポリマーを得ることが可能となる。一方、水分率を低めると、表面での架橋が起こりやすくなるので、吸水倍率の高い吸水ポリマーが得られる。
【0056】
前記(2)の吸水性ポリマーについて説明する。
アクリル酸系モノマー、その重合方法、架橋剤、表面架橋、表面処理等については、前記(1)の吸水性ポリマーと同様である。
アクリル酸系モノマーの重合体と架橋させるブロックポリマーとしては、上述したように水溶性で、重合性の不飽和基を有する種々のビニルモノマーを重合した吸水性ポリマーが挙げられる。
具体的には、オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸エステル、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アンモニウム、及び/又はオレフィン系不飽和アミドなどの重合性不飽和基を有するビニルモノマーが例示される。これらの具体例は、前記(1)の吸水性ポリマーに関して上述したものと同様のものが挙げられる。
前記(2)の吸水性ポリマーにおいては、これらの中でも、特にオレフィン系不飽和カルボン酸及び/又はそのアルカリ塩が好ましく用いられ、更に好ましくはメタクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩が用いられる。
【0057】
前記(3)の吸水性ポリマーについて説明する。
本発明に用いられるポリアミノ酸としては、その一部が架橋された架橋ポリアミノ酸が好ましい。架橋ポリアミノ酸から形成された吸水性ポリマーは、架橋されていないポリアミノ酸から形成された吸水性ポリマーに比して、吸水量、保持量、尿に対する安定性の点で優れる。架橋ポリアミノ酸の主鎖は、アミノ酸が脱水縮合したポリペプチドからなる。架橋ポリアミノ酸が共重合体である場合、その重合様式は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト共重合体であってもよい。
【0058】
本発明に用いられるポリアミノ酸を構成するアミノ酸としては、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0059】
ポリアミノ酸が、アミノ酸とアミノ酸以外の他の単量体成分との共重合体である場合、該他の単量体成分としては、例えば、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等が挙げられる。また、多価アミン、多価アルコール、多価チオール、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸、多価ヒドラジン化合物、多価カルバモイル化合物、多価スルホンアミド化合物、多価ホスホンアミド化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価イソチオシアナート化合物、多価アジリジン化合物、多価カーバメイト化合物、多価カルバミン酸化合物、多価オキサゾリン化合物、多価反応性不飽和結合化合物等が挙げられる。
【0060】
本発明に用いられるポリアミノ酸の側鎖基は、アミノ酸残基における基そのままであっても、他の基に変換した基(ペンダント基)であってもよい。この場合のペンダント基は、ポリアミノ酸主鎖と、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合等を介して結合した基である。例えば、ポリグルタミン酸の場合、側鎖基としては、アミノ酸残基におけるカルボキシル基の他、ペンダント基として、例えばカルボキシル基を有する炭化水素基、スルホン酸基を有する炭化水素基等が挙げられる。また、側鎖基の結合位置は特に限定されない。例えば、ポリアスパラギン酸の場合、側鎖基であるカルボキシル基はアミノ酸残基中α位で結合していても、β位で結合していても構わない。ポリグルタミン酸の場合、側鎖基であるカルボキシル基はアミノ酸残基中α位で結合していても、γ位で結合していても構わない。
【0061】
本発明に用いられる好ましいポリアミノ酸である架橋ポリアミノ酸における架橋構造は、特に限定されず、例えば、架橋ポリアミノ酸のアミノ酸残基中のカルボキシル基と架橋剤とが反応又は会合した構造、ペンダント基の有する極性基と架橋剤とが反応又は会合した構造、ポリアミノ酸主鎖同士が直接結合した自己架橋体等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いられるポリアミノ酸については、種々の製造法によるものが用いられる。例えば微生物による培養法、化学合成法等が挙げられる。また、架橋ポリアミノ酸の製造方法も特に限定されない。例えば酸性アミノ酸を架橋させてハイドロゲルを得る方法(米国特許第3948863号;特公昭52‐41309号、特開平5‐279416号)、ポリグルタミン酸にγ線を照射する方法(高分子論文集、50巻10号、755頁(1993年)、特許203493号、特許3416741号、特許3715414号、特表2005‐314489号)、ポリグルタミン酸の架橋剤による架橋(特開平11‐343339号、特開2003‐192794号、特開2005‐179534号、特開2001‐181387号)、ポリアスパラギン酸、アスパラギン酸と架橋剤を熱により反応する方法(特表平6‐506244号;米国特許第5247068及び同第5284936号、特開平7‐309943号、特開平8‐59820号)等を用いることが出来る。吸水性能の観点から、ポリアスパラギン酸又はポリグルタミン酸が好ましい。
【0063】
架橋剤、表面架橋、表面処理等については、前記(1)の吸水性ポリマーと同様である。反応溶媒に関しては、水を用いることができる。
【0064】
次に、表面シート2について説明する。
本実施形態では、表面シート2として三次元状凹凸賦形シートが用いられる。図4にはその表面シート2の要部拡大図が示されている。図4に示す表面シート2は、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品のギャザー部材として好適に用いられるものである。表面シート2は、シート状物からなる第1層21及び第2層22を有している。第1層21は着用者の肌側に向けられ、第2層22は外方側に配される。すなわち、第1層21及び該第2層22がそれぞれ該表面シートの表面及び裏面を構成している。第1層21は表面側に突出して多数の凸部を形成している。凸部24の内部は空洞になっている。凸部24間は凹部23になっている。凹部23において、第1層21と第2層22とが接合されている。つまり凹部23には接合部及び非接合部が存在している。
【0065】
本実施形態においては、凸部24はその底面が矩形である。また凸部24は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、凹部23も矩形となっている。
【0066】
凸部24及び凹部23は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては図4に示すように、同図中X方向に沿って凸部24及び凹部23が交互に配置され列をなしている。この方向は、表面シート2の製造工程における流れ方向と一致する。凸部24及び凹部23からなる列は、図4中Y方向に亘って多列に配置されている。
【0067】
表面シート2においては、一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない。「一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない」とは、一つの凸部に着目したときに、隣り合う列の完全に同位置に、凸部が位置していないことを意味している。つまり、図1におけるY方向に関して、隣り合う列間における凸部が完全に連なるように凸部が配置されていないことを意味する。従って、一つの凸部と隣り合う位置には、凸部の一部と接合部の一部の双方が存在していてもよいし、あるいは接合部のみが存在していてもよい。
【0068】
本実施形態においては、隣り合う2つの列において、凹部は半ピッチずつずれて配置されている。従って、一の列における任意の一つの凹部に着目したときに、該一つの凹部はその前後及び左右が凸部によって取り囲まれて形成された、閉じた凹部となっている。つまり、凹部は千鳥格子状に配置されている。従って、凸部も同様に千鳥格子状に配置されている。
【0069】
身体との接触圧を低し、装着感を良好とする観点から、凸部24はその高さH(図3参照)が、1〜10mm、特に3〜6mmであることが好ましい。また、X方向(列方向)に沿う凸部24の底部寸法Aは2〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましく、Y方向(列方向と直交する方向)に沿う底部寸法Bは2〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましい。また、凸部24の底面積は4〜900mm2、特に4〜25mm2であることが好ましい。
【0070】
X方向(列方向)での凹部23の接合長さC(図4参照)は、0.1〜20mm、特に0.5〜5mmであることが、肌触りが良好でクッション感が高い点から好ましい
【0071】
第1層21及び第2層22は同一の又は異なるシート状物からなる。このシート状物は実質的に非伸縮性である。シートの材質としては、従来公知のおむつに用いられる材料において、実質的に非伸縮性であるものであれば、特に制限無く使用することができる。例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、開口手段によって液透過可能とされたフィルム等も使用することができる。シート材物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に1.5〜4dtexであることが、表面シートの強度確保、肌触りの向上等の点から好ましい。
【0072】
第1層21の坪量は、10〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。一方、第2層22の坪量は、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。第1層21及び第2層22を含めた立体シート10の全体の坪量は、15〜150g/m2、特に20〜60g/m2であることが好ましい。
【0073】
以上の構造を有する表面シート2の好適な製造方法は、本出願人の先の出願に係る特開2004−174234号公報や特開2005−111908号公報に記載されている。
【0074】
おむつ1の裏面シート4としては、当該技術分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。例えば、液不透過性又は撥水性のシートを用いることができる。これらのシートは透湿性を有していてもよい。裏面シート4の具体例としては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート、撥水性の不織布(例えばスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布)などが挙げられる。透湿性を有する熱可塑性樹脂のフィルムとして、熱可塑性樹脂と無機フィラーとの溶融混錬物をフィルム状に押し出し、一軸又は二軸延伸したシートを用いることができる。
【0075】
おむつ1のサブレイヤ5は、表面シート2を透過してきた液の横方向への拡散、吸収体3への透過及び/又はそれ自身での保持のために用いられるものであり、繊維材料を主体としたシートからなる。具体的な材料としては、前述した液の拡散、透過及び/又は保持の機能を発揮し得る点を勘案すると、不織布や嵩高のパルプシートを用いることが好ましい。不織布の具体例としては、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などが挙げられる。これらの不織布が、疎水性の繊維から構成されている場合には、親水化剤を用いて親水化させることが好ましい。サブレイヤ5の坪量は、20〜100g/m2、特に30〜80g/m2であることが、液の拡散、透過及び/又は保持の機能とおむつの装着感とを両立させると共に、サブレイヤ5への液残りを少なくさせる点から好ましい。
【0076】
上述したように本発明に用いる高吸収性ポリマー10はパルプ繊維の使用量を従来よりも低減することができるため、吸収体の薄型化が可能となる。しかし、吸収体が薄型になると、その肌ざわりによりおむつ使用時における装着者の不安感が増す。そこで本実施形態においては、0.6g/cm2荷重時において、表面シート2、吸収体3及びそれらの間に配置されたサブレイヤ5それぞれの厚みが以下の式(1)及び(2)を満たすようにそれぞれの厚みを設定する。
(表面シート2の厚み+サブレイヤ5の厚み)/吸収体3の厚み>0.5 (1)
吸収体3の厚み>表面シート2の厚み>サブレイヤ5の厚み (2)
それぞれのシートの厚みは、以下の方法で測定する。
各部材は、おむつ長手方向で3箇所70mm×70mmの大きさに裁断し、各部材を剥がして測定片とした。この測定片よりも小さなサイズ(50mm×50mm、15g)の荷重プレートを測定台の上面に載せる。この状態での荷重プレートの上面の位置を測定の基準点Aとする。次にプレートを取り除き、測定台上に測定片を載置し、その上に荷重プレートを再び載置する。この状態でのプレート上面の位置をBとする。AとBの差から0.6gf/cm2 圧力下での測定片の厚みを求める。測定機器にはレーザ変位計〔(株)キーエンス製、CCDレーザ変位センサ LK−080〕を用いた。
【0077】
以上のように、表面シート2の厚み及びサブレイヤ5の厚みの和に対する吸収体3の厚みの比率を相対的に大きく設定することにより、前記したような装着者の不安感を解消することが可能となる。このような観点から、0.6g/cm2荷重時の吸収体3の厚みは2mm〜6mmが好ましく、更に好ましくは2.5mm〜5mmである。同荷重時の表面シート2の厚みは0.9mm〜3.0mmが好ましく、更に好ましくは1.2mm〜2.0mmである。同荷重時のサブレイヤ5の厚みは0.5mm〜2.0mmが好ましく、更に好ましくは0.8mm〜1.5mmである。
【0078】
おむつ1は、全体として股下部に相当する長手方向中央部が括れた砂時計状の形状となっている。表面シート2及び裏面シート4はそれぞれ、吸収体3の左右両側縁及び前後両端部から外方に延出している。表面シート2は、その幅方向Sの寸法が、裏面シート4の幅方向の寸法より小さくなっている。おむつ1は、展開型のおむつであり、長手方向Lの一方の端部においては、その両側縁部に一対のファスニングテープFTが取り付けられている。また、他方の端部においては、裏面シート4上にランディングテープLTが取り付けられている。
【0079】
おむつ1は、吸収体3の幅方向側縁部の上方に立ち上がることができる立体ギャザーを備えている。即ち、おむつ1における長手方向Lの両側それぞれには、弾性部材6を有する立体ギャザー形成用のシート材60が配されて、立体ギャザーが形成されている。
【0080】
立体ギャザー形成用のシート材60は、その一側縁に、前記弾性部材6が一本又は複数本(本実施形態では3本)、伸長状態で固定されている。シート材60は、吸収体3の左右両側縁よりも幅方向Sの外方の位置において、おむつ1の長手方向Lに沿って表面シート2に接合されており、その接合部61が、立体ギャザーの立ち上がり基端部61となっている。シート材60は、立ち上がり基端部61からおむつ1の幅方向Sの外方に延出し、その延出部において裏面シート4と接合されている。シート材60は、おむつ長手方向Lの前後端部62,63において、表面シート2上に接合されている。
【0081】
立体ギャザー形成用のシート材60としては、液不透過性又は撥水性で且つ透湿性のものが好ましく用いられる。シート材60としては、例えば、液不透過性又は撥水性の多孔性樹脂フィルム、液不透過性又は撥水性の不織布、あるいは該多孔性樹脂フィルムと該不織布との積層体等が挙げられる。該不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、SMMS不織布等が挙げられる。シート材60の坪量は、好ましくは5〜30g/m2、更に好ましくは10〜20g/m2である。
【0082】
立体ギャザー形成用のシート材60としては、高吸収性ポリマー10を含んだシート材を用いることができる。立体ギャザーを形成するシート材に、吸水速度及び通液性等に優れる高吸収性ポリマー10が含有されていることにより、立体ギャザーによる物理的な液流れ防止機能に加えて、その内部に含まれている高吸収性ポリマー10の作用による優れた液吸収能及び液拡散能が発現されるため、排泄された尿等の体液が立体ギャザーを越えて外部に漏れ出すという不都合がより効果的に防止される。シート材60に含ませる高吸収性ポリマー10として特に好ましいものは、上述したポリアミノ酸を主鎖とする高吸収性ポリマーであり、とりわけ、架橋ポリグルタミン酸からなる高吸収性ポリマーである。
【0083】
立体ギャザー形成用のシート材60に高吸収性ポリマー10を含ませる方法としては、例えば、シート材60を多層に積層し、隣接するシート材60,60間で高吸収性ポリマーを挟持する方法が考えられる。また、立体ギャザーにおけるおむつ内方側の表面に、ホットメルトやアクリルエマルジョン等の水溶性バインダーあるいは水やCMCなどにより高吸収性ポリマーを固定する方法;あるいは立体ギャザーの内部をホットメルトなどでいくつの部屋に小分けし各部屋に高吸収性ポリマーを入れて固定する方法が挙げられる。シート材60における高吸収性ポリマー10の含有量(分布量)は、液を瞬時に固めるという観点から、好ましくは5〜100g/m2、更に好ましくは10〜50g/m2である。高吸収性ポリマーを含ませる位置としては、高吸収性ポリマー膨潤による弾性部材の伸縮阻害を防ぐため、弾性部材と高吸収性ポリマーとを区切ることが好ましく、また流れてくる液を素早く固定化して立体ギャザーを乗り越えさせないようにするため、立体ギャザーの根元付近に高吸収性ポリマーを存在させることが好ましく、また後ろや前漏れを防ぐため、立体ギャザーの長手方向の先端まで高吸収性ポリマーを含ませ、且つ該先端をホットメルトなどでシールすることが好ましい。
【0084】
裏面シート4は、吸収体3の側縁から外方に延出しており、その延出部分の上面が、上述した立体ギャザー形成用のシート材60で被覆されている。そして、裏面シート3の延出部分と、その上面を被覆するシート材60との間に、おむつ1の長手方向に延びる弾性部材7が伸長状態で挟持固定されている。弾性部材7の伸長状態を解くことにより、おむつ1の長手方向両側部に、該長手方向に伸縮自在なレッグギャザーが形成される。
【0085】
前述のように、本発明に用いる高吸収性ポリマー10はパルプ繊維の使用量を従来よりも低減することができるため、吸収体の薄型化が可能となる。吸収体を薄型にするとその柔軟性が向上するため、吸収体長手方向のレッグギャザーの収縮力を従来よりも弱く設定しても、装着者の体にフィットさせることができ、装着後にゴム跡が装着者に残ることを防止することが可能となる。
このような観点から、おむつ1長手方向のレッグギャザーの収縮力は全長に対する85%時の戻りの応力が40g以下であることが好ましく、35g以下とすることが更に好ましい。この応力の測定方法については後述する。
【0086】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態のおむつ1における吸収体3は、上層30と下層31とにより高吸収性ポリマー10を挟持する構成であったが、これに代えて、吸水性ポリマーと繊維状物との混合体から吸収体を構成してもよい。
また、前記実施形態のおむつ1は立体ギャザーを備えていたが、おむつの具体的な用途によっては、立体ギャザーを備えていなくても良い。
【0087】
本発明の吸収性物品は、使い捨ておむつの他、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等であっても良い。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例の説明に先立ち、実施例及び比較例で用いた高吸収性ポリマーの製造について説明する。
【0089】
[高吸収性ポリマーAの製造]
次の手順で高吸収性ポリマーAの測定試料を製造した。
撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製 5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤としてポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル(撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を付設した容量5Lの四つ口丸底フラスコに、ポリオキシアルキレン(EO=5、PO=4、EO=5のトリブロック型)アルキル(C12/C14=7/3(原料アルコールの重量比))エーテル(OHV:63.8)を3000g入れた。これに50ml/minで窒素ガスを導入しつつ、200rpmで撹拌を行い、昇温を開始した。バス温が設定値の40℃に到達(内温は35〜38℃)してから40分間、窒素置換を行った。ここに無水リン酸180gを内温が60℃を超えないよう注意しながら添加した。添加の際には窒素ガス導入管を外し、そのフラスコ口に粉末ロートを差し込んで行った。添加終了後、内温を60℃まで昇温して、1時間撹拌した。さらに内温を80℃まで昇温して、15時間撹拌した。ここにイオン交換水95gを添加し、さらに4時間撹拌を行った。)を0.5g、溶媒としてノルマルヘプタン1600mlを加え、アンカー翼で撹拌しながら、溶存酸素を追い出す目的で窒素ガスを吹き込み、常圧で内温90℃まで昇温した。
一方、2L三つ口フラスコ中に、80%アクリル酸(東亞合成製 act. 80.6%)の水溶液506g、イオン交換水213gを仕込み、氷冷しながら48%苛性ソーダ水溶液(旭硝子製 act. 49.6%)331gを滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液1050gを得た。このモノマー水溶液に、N−アシル化グルタミン酸ソーダ(味の素製 商品名アミソフトPS−11)0.25gをイオン交換水4gを添加した後、二分割した。
次いで、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬工業製 商品名V−50)0.06g,ポリエチレングリコール(花王製 K−PEG6000 LA)0.2g,イオン交換水7gを混合溶解し、開始剤(A)溶液を調製した。また、過硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.6gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)溶液を調製した。
前記、二分割したモノマー水溶液の1つに、開始剤(A) 溶液7gを加えた(モノマー1)。また、二分割した残りのモノマー水溶液に、開始剤(B) 溶液10.6gを加えた(モノマー2)。
前述の5L反応容器の内温が90℃であることを確認した後、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、モノマー1、モノマー2の順番で滴下し重合した。
モノマー滴下終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性ポリマー(ハイドロゲル)の含水量を吸水性ポリマー100重量部に対して60重量部に調整した。その後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセ化成工業製、商品名デナコールEX−810)0.4gを水10gに溶解した溶液を添加した。その後、冷却、乾燥させることにより吸水性ポリマーを得た。
得られた吸水性ポリマーについて、一部大粒径の吸水性ポリマーをふるいわけによって除去し、さらに、吸水性ポリマー100重量部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル0.5重量部をドライブレンドにより表面処理を行い吸水性ポリマーAを得た。
【0090】
[高吸収性ポリマーBの製造]
次の手順で高吸収性ポリマーBの測定試料を製造した。
撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製 5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤(花王(株)製、エマール20C)を0.4g、溶媒としてシクロヘキサン1600mlを加え、アンカー翼で撹拌しながら、溶存酸素を追い出す目的で窒素ガスを吹き込み、常圧で内温80℃まで昇温した。
一方、2L 三つ口フラスコ中に、80%アクリル酸(東亞合成製 act. 80.6%)の水溶液506g、イオン交換水213gを仕込み、氷冷しながら48%苛性ソーダ水溶液(旭硝子製 act. 49.6%)331gを滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液1050gを得た。このモノマー水溶液に、N−アシル化グルタミン酸ソーダ(味の素製 商品名アミソフトPS−11)0.18gをイオン交換水4gを添加した後、二分割した。
次いで、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬工業製 商品名V−50)0.2g,ポリエチレングリコール(花王製 K−PEG6000 LA)0.2g,イオン交換水7gを混合溶解し、開始剤(A)溶液を調製した。また、過硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.5gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)溶液を調製した。
前記、二分割したモノマー水溶液の1つに、開始剤(A) 溶液7gを加えた(モノマー1)。また、二分割した残りのモノマー水溶液に、開始剤(B) 溶液10.5gを加えた(モノマー2)。
前述の5L反応容器の内温が80℃であることを確認した後、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、モノマー1、モノマー2の順番で滴下し重合した。
モノマー滴下終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性ポリマー(ハイドロゲル)の含水量を吸水性ポリマー100重量部に対して60重量部に調整した。その後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセ化成工業製、商品名デナコールEX−810)0.2gを水10gに溶解した溶液を添加した。その後、冷却、乾燥させることにより吸水性ポリマーを得た。
得られた吸水性ポリマーについて、一部大粒径の吸水性ポリマーをふるいわけによって除去し、さらに、吸水性ポリマー100重量部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル0.5重量部をドライブレンドにより表面処理を行い吸水性ポリマーBを得た。
【0091】
前記高吸収性ポリマーA、Bについて、1)2.0kPaでの加圧下通液速度、2)ボルテックス法による吸水速度、3)保持量、4)2.0kPaでの加圧下吸収量を、それぞれ上述した測定方法に従って測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
〔実施例1〕
前記高吸収性ポリマーAを用いて図2に示す吸収体3を次の手順で作製した。ポリマー量11.0g、ポリマー坪量322g/m2、パルプ量7.5g、パルプ坪量220g/m2となるようにポリマー及びパルプを散布し、次いでその上面を坪量16g/m2のティッシュで被覆すると共に、下面を坪量16g/m2のティッシュで被覆して、吸収体3を作製した。こうして作製した吸収体3を用いて図1に示す使い捨ておむつを作製した。表面シート2として図4に示す構造のものを製造した。この表面シート2を構成する第1層21の原反として長さ440mm、幅100mm、坪量18g/m2のエアスルー不織布を用い、第2層22の原反として長さ440mm、幅180mm、坪量18g/m2のエアスルー不織布を用いた。表面シートにおける凸部24の高さHは1.3mm、X方向に沿う凸部24の底部寸法Aは3.0mm、Y方向に沿う底部寸法Bは2.2mm、X方向での凹部23の接合長さCは0.9mmであった。裏面シート4としてポリエチレンからなる透湿フィルム(長さ440mm、幅300mm)を用いた。サブレイヤ5としてエアスルー不織布(長さ250mm、幅70mm、坪量40g/m2)を用いた。レッグギャザーを構成する弾性部材として620dtexの糸ゴムを2本用い、隣接する糸ゴムの間隔を6.5mmとした。
【0094】
〔実施例2〕
実施例1において、高吸収性ポリマーAを用い、吸収体3の作製でポリマー量10.5g、ポリマー坪量285g/m2、パルプ量7.5g、パルプ坪量203g/m2とした以外は実施例1と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを実施例2のサンプルとした。
【0095】
〔比較例1〕
実施例1において、高吸収性ポリマーAに換えて高吸収性ポリマーBを用い、吸収体3の作製でポリマー量10.0g、ポリマー坪量235g/m2、パルプ量11.0g、パルプ坪量258g/m2とし、表面シートとしてエアスルー不織布(25g/m2)(長さ440mm、幅180mm)を用い、サブレイヤとしてエアスルー不織布(26g/m2)(長さ330mm、幅70mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを比較例1のサンプルとした。
【0096】
〔比較例2〕
比較例1において、吸収体3の作製でポリマー量10.3g、ポリマー坪量236g/m2、パルプ量6.0g、パルプ坪量138g/m2とした以外は比較例1と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを比較例2のサンプルとした。
【0097】
〔比較例3〕
比較例1において、吸収体3の作製でポリマー量9.0g、ポリマー坪量264g/m2、パルプ量7.5g、パルプ坪量220g/m2とし、表面シート及びサブレイヤを実施例1及び2と同様のものを用いた以外は比較例1と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを比較例3のサンプルとした。
【0098】
〔比較例4〕
比較例1において、吸収体3の作製でポリマー量10.0g、ポリマー坪量293g/m2、パルプ量7.5g、パルプ坪量220g/m2とし、表面シート及びサブレイヤを実施例1及び2と同様のものを用いた以外は比較例1と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを比較例4のサンプルとした。
【0099】
〔比較例5〕
比較例1において、吸収体3の作製でポリマー量11.0g、ポリマー坪量322g/m2、パルプ量7.5g、パルプ坪量220g/m2とし、表面シート及びサブレイヤを実施例1及び2と同様のものを用いた以外は比較例1と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを比較例5のサンプルとした。
【0100】
〔比較例6〕
実施例2において、表面シートとして立体賦形に用いた不織布を賦形を形成させずにエアスルー不織布21(長さ440mm、幅100mm、坪量18g/m2)、エアスルー不織布22(長さ440mm、幅180mm、坪量18g/m2)を用いた以外は実施例2と同様にして、使い捨ておむつを作製し、これを比較例6のサンプルとした。
【0101】
〔評価〕
作製した各使い捨ておむつ(製品)について、以下の方法により、加圧下吸収時のウエットバック量(人工尿一括注入時及び分割注入時)、おむつ剛力、ギャザー応力をそれぞれ評価した。これらの結果を下記表2に示す。
また、実施例1及び比較例5については、以下の方法により、人工尿一括注入時及び分割注入時それぞれにおける液拡散距離を評価した。その結果を図5及び図6に示す。図5(a)は実施例1、(b)は比較例5の使い捨ておむつの液拡散距離(一括注入時)を示すグラフである。図6(a)は実施例1、(b)は比較例5の使い捨ておむつの液拡散距離(分割注入時)を示すグラフである。
【0102】
<加圧下吸収時のウエットバック量の評価>
人工尿一括注入時:
使い捨ておむつを平面状に拡げ、表面シートを上に向けて水平面上に固定した状態で、吸収体の中心部における該表面シート上に人工尿160gを吸収させ10分間放置した。次いで、人工尿の吸収部位上にToyo Roshi Kaisha,Ltd製の4Aろ紙20枚重ね、更にその上に荷重を10分間加えて人工尿をろ紙に吸収させた。荷重は30cm×15cmの面積に6kgが加わるようにした。10分経過後荷重を取り除き、人工尿を吸収したろ紙の重量を測定した。この重量から吸収前のろ紙の重量を差し引き、その値をウエットバック量とした。
人工尿分割注入時:
使い捨ておむつを平面状に拡げ、表面シートを上に向けて水平面上に固定した状態で、吸収体の中心部における該表面シート上に人工尿40gを吸収させ、10分間放置し、さらに人工尿40gを吸収させた。この操作を繰り返し合計160gの人工尿を注入した。次いで、人工尿の吸収部位上にToyo Roshi Kaisha,Ltd製の4Aろ紙20枚重ね、更にその上に荷重を10分間加えて人工尿をろ紙に吸収させた。荷重は30cm×15cmの面積に6kgが加わるようにした。10分経過後荷重を取り除き、人工尿を吸収したろ紙の重量を測定した。この重量から吸収前のろ紙の重量を差し引き、その値をウエットバック量とした。
【0103】
<液拡散距離の評価>
前記加圧下吸収時のウエットバック量の測定時において、人工尿の注入開始から、注入点を中心として人工尿が広がる距離を測定し、その値を液拡散距離とした。液拡散距離は、その値が大きいほど、ウエットバック量を低減できることを意味する。
【0104】
<曲げ剛性>
カトーテック製純曲げ試験機(商品名:KES−FB2−L)を用いた。おむつをその長手方向の長さが二等分されるように二つ折りし、二つ折りされたおむつの長手方向の両側を試験機に把持させた。重力の影響を少なくするために、おむつはその長手方向が鉛直方向と一致するように把持させた。最大曲率K=0.2にて、等速度曲率の純曲げを行った。曲げは、おむつの長手方向に沿って折曲線が生ずるように行った。
【0105】
得られた測定値に基づき、以下の基準に従って評価した。
○:引っ張り試験機の測定値が1600以下である。
△:引っ張り試験機の測定値が1600を超え、4500以下である。
×:引っ張り試験機の測定値が4500を超える。
【0106】
<レッグギャザーの応力>
おむつの側縁部を、レッグギャザー(固定端と自由端との間の帯状部分)を含むように、横幅方向40mm及びおむつの長手方向全長の範囲で切り出して試験片とした。該試験片を、テンシロン引っ張り試験機〔(株)オリエンテック社製、RTC−1150A〕のチャック間にチャック間距離200mmで固定した。長手方向に、速度300mm/min、ロードセル5kgの条件で試験片を伸長させた。伸長は、試験片の長さが全長よりも20mm短い長さとなるまで行った(行き)。試験片がその長さになった時点で試験片の伸長をやめ、ただちに伸長速度と同速度で収縮させた(戻り)。伸長(行き)及び収縮(戻り)過程における引張り長さ及び対応する引張荷重をプロットして、引張り長さと引張荷重との関係曲線〔横軸;引張り長さ(mm),縦軸;引張荷重(gf)〕を得た。得られた関係曲線に基づき、以下の基準に従ってレッグギャザーの応力を評価した。前記の「全長」とはおむつの長手方向の伸長時の長さであり、本実施例では440mmである。
低:全長の85%時の戻りの応力が40g以下である。
高:全長の85%時の戻りの応力が40gを超える。
【0107】
【表2】

【0108】
図5、図6及び表2に示す結果から明らかなように、実施例の使い捨ておむつは、比較例の使い捨ておむつに比べて、良好な吸収性能を備え、且つウエットバックが発生しにくいことが判る。また、おむつの曲げ剛性及びレッグギャザーの応力が一層低いことが判る。
【0109】
上述の測定とは別に、おむつの曲げ剛性及びレッグギャザーの応力を、現在市販されているおむつについても測定した。測定したおむつは、花王社製使い捨ておむつメリーズ(比較例7とする)、P&G社製使い捨ておむつパンパース(比較例8とする)、大王社製使い捨ておむつグーン(比較例9とする)、ユニ・チャーム社製使い捨ておむつムーニー(比較例10とする)である。曲げ剛性の測定は、上述したMD方向に加え、CD方向についても行った。CD方向の曲げ剛性の測定は、おむつのCD方向に沿って折曲線が生ずるように曲げを行う以外は、MD方向の曲げ剛性の測定と同様とした。レッグギャザーの応力の測定方法は、上述した方法と同様である。これらの測定結果を図7及び図8に示す。これらの図においては参考のため、実施例1の測定結果も併せて記載されている。
【0110】
図7及び図8に示す結果から明らかなように、実施例1の使い捨ておむつは、現在市販されているおむつ(比較例7〜10)よりも、曲げ剛性及びレッグギャザーの応力が低いことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施形態である使い捨ておむつの展開状態における肌当接面側(表面シート側)を一部破断して示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面を模式的に示した拡大断面図である。
【図3】本発明の高吸収性ポリマーに対する加圧下吸収量の測定器具を示した図である。
【図4】図1における表面シートの要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】(a)は実施例1、(b)は比較例5の使い捨ておむつの液拡散距離(一括注入時)を示すグラフである。
【図6】(a)は実施例1、(b)は比較例5の使い捨ておむつの液拡散距離(分割注入時)を示すグラフである。
【図7】(a)は実施例1の使い捨ておむつと既製品の使い捨ておむつそれぞれのMD方向の曲げ剛性の測定結果を示すグラフであり、(b)は実施例1の使い捨ておむつと既製品の使い捨ておむつのCD方向の曲げ剛性の測定結果を示すグラフである。
【図8】(a)〜(d)は実施例1の使い捨ておむつと既製品の使い捨ておむつそれぞれのレッグギャザーの応力曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0112】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
21 第1層
22 第2層
23 凹部
24 凸部
3 吸収体
30 上層
31 下層
4 裏面シート
5 サブレイヤ
6,7 弾性部材
10 高吸収性ポリマー
60 立体ギャザー形成用のシート材
61 接合部(基端部)
FT ファスニングテープ
LT ランディングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された吸収体を備えており、
前記吸収体は、加圧下通液速度の測定法により測定された2.0kPa加圧下通液速度が60ml/min以上の高吸収性ポリマーを含有しており、
前記表面シートとして、シート状物の第1層及び第2層からなり、該第1層及び該第2層がそれぞれ該表面シートの表面及び裏面を構成し、該第1層が表面側に突出して内部が空洞となっている多数の凸部を形成していると共に、該凸部間に凹部が形成されており、該第2層が平面状に形成されているシート材が用いられており、
前記シート材は、前記第1層の前記凹部において該第1層と前記第2層とが接着されている三次元状凹凸賦形のシート材であって、該凸部及び該凹部は、それらが交互に且つ一方向に列をなすように配置され、更に該列が多列に配置されており、一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していないシート材である吸収性物品。
【請求項2】
0.6g/cm2荷重時において、前記表面シート、前記吸収体及びそれらの間に配置されたサブレイヤそれぞれの厚みが以下の式(1)及び(2)を満たす請求項1記載の吸収性物品。
(表面シートの厚み+サブレイヤの厚み)/吸収体の厚み>0.5 (1)
吸収体の厚み>表面シートの厚み>サブレイヤの厚み (2)
【請求項3】
前記吸収体に含まれるパルプ量が、前記高吸収性ポリマー量の3/4以下である請求項1又は2記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−153631(P2009−153631A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333310(P2007−333310)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】