説明

吸収性物品

【課題】肌当接面が部分的に不織布で構成されるものでありながら、不織布部分に排泄液が保持され難く、且つ不織布部分の裏側に吸収された排泄部分の隠蔽性に優れる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体4と、その表面側を覆う透液性の肌当接面3Fとを有する、吸収性物品において、肌当接面3Fを、樹脂製のメッシュシート31からなるメッシュシート部分3Mと、メッシュシート31と重ならず且つ不織布32からなる不織布部分3Nとから構成するとともに、メッシュシート部分3M及び不織布部分3Nに酸化チタンを含有させるとともに、不織布部分3Nの酸化チタン含有量をメッシュシート部分3Mの酸化チタン含有量に対して±50%の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性バックシートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ等からなる圧縮復元性を有する吸収体を介在したものが用いられている。
トップシートは肌当接面を形成するものであるため、柔軟であることや、排泄液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られること、肌に対して刺激が少ないこと等が要求されている。吸収性物品の分野、特に生理用ナプキンの分野で広く採用されている樹脂製メッシュシートは、保水性が無いため、乾燥した肌触りが得られるという要望を満たすものであるが、不織布とは肌触りが異なるため、一部の使用者の間では好まれていない。
これを解決するものとして、肌当接面全体をメッシュシートで構成するのではなく、肌当接領域の全体にわたる樹脂製メッシュシートの幅方向両側部を、不織布により部分的に被覆し、これら不織布部分の間にメッシュシート部分を露出させたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−142135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、メッシュシートを部分的に不織布で覆うと、不織布部分に排泄液が保持され易くなる等の問題がある。これに対して、不織布部分にメッシュシートを設けないと、不織布部分の裏側に吸収された排泄部分が不織布を通して目視し易くなり、使用後の排泄液の隠蔽性に劣り、メッシュシート部分及び不織布部分にわたり排泄液が吸収された場合に不織布部分により多くの吸収がなされた、つまり偏って吸収がなされたかのような印象を使用者に与えるという問題点がある。
【0004】
そこで本発明の主たる課題は、肌当接面が部分的に不織布で構成されるものでありながら、不織布部分に排泄液が保持され難く、且つ吸収後における不織布部分とメッシュシート部分との見栄えの差が少ない吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
吸収体と、その表面側を覆う透液性の肌当接面とを有する、吸収性物品において、
前記肌当接面は、樹脂製のメッシュシートからなるメッシュシート部分と、前記メッシュシートと重ならず且つ不織布からなる不織布部分とから構成されており、
前記メッシュシート部分及び不織布部分は酸化チタンを含有するとともに、前記不織布部分の酸化チタン含有量が、前記メッシュシート部分の酸化チタン含有量に対して±50%の範囲内とされている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明では、肌に当接する部分である不織布部分にメッシュシートが重ならないため、不織布部分に排泄液が保持され難い。また、メッシュシート部分及び不織布部分における隠蔽性には非常に強く影響する酸化チタン含有量に関しては、不織布部分がメッシュシート部分に対して±50%の範囲内とされているため、吸収後における不織布部分とメッシュシート部分との見栄えの差が少ないものとなる。また、高価なメッシュシートの使用量を減らすこともできる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記メッシュシートは、厚みが0.01〜0.2mm、個々の開口の面積が0.01〜1mm2、開口率が15〜50%、且つ酸化チタン含有量が2重量%以上のものであり、
前記不織布部分の不織布は、繊維目付けが10〜50g/m2のものである、
請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
メッシュシート及び不織布がこのようなものであると、不織布部分及びメッシュシート部分ともに十分に高い不透明性を有する。よって、メッシュシート部分及び不織布部分の裏側に吸収された排泄液の隠蔽性にも優れるものとなる。なお、開口率とは、メッシュシートの全面積に占める開口の総面積の割合を意味する。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記不織布部分に、所定パターンのエンボス加工が施されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
不織布部分に、エンボス加工によるパターンが形成されていると、そのパターンの迷彩効果によって、排泄液の隠蔽性がより一層のものとなる。また、肌当接面にエンボス加工による凹凸が形成されるため、肌触りがメッシュシートに似て滑らかになる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記メッシュシート部分をなすメッシュシート及び前記不織布部分をなす不織布は、 少なくとも前記メッシュシート部分と不織布部分との境界及びその近傍に重なり部分を有しており、且つこの重なり部分における前記メッシュシート及び前記不織布がエンボス加工により一体化されている、請求項3記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
このようなエンボス加工が施されていると、両者の境界おいてメッシュシート部分と不織布部分とが剥がれ難くなるとともに、素材の縁が肌に当ることによる違和感(特に異物感)が発生し難くなる。また、メッシュシート部分から不織布部分への肌触りの変化が緩やかになることからも、違和感が発生し難い。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記不織布部分が、表裏方向に貫通する透孔を有する撥水性不織布からなる、請求項1記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
このように孔開き撥水性不織布を用いることにより、排泄液が不織布部分から吸収体側に移動し易くなる、つまり不織布部分の吸収速度が速くなる。その結果、排泄液が不織布部分に保持され難くなる。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記吸収体は、高吸収性ポリマーを含有するパルプ繊維の集合体により形成されており、前記不織布部分と重なる部分に含まれる高吸収性ポリマーの吸収速度が0.1〜5g/g/秒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
吸収体のうち不織布部分と重なる部分に吸収速度の速い高吸収性ポリマーを含有させることにより、不織布部分における吸収速度が速くなり、排泄液が不織布部分に保持され難くなる。なお、高吸収性ポリマーの「吸収速度」とは、JIS K 7224−1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」により計測される値を意味する。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記吸収体は、パルプ繊維を含む繊維集合体により形成されており、前記不織布部分と重なる部分におけるパルプ繊維含有量が前記メッシュシート部分と重なる部分に含まれるパルプ繊維含有量よりも多い請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
吸収体のうち不織布部分と重なる部分にパルプ繊維を多く含有することにより、十分な吸収量(排泄液の保持量)を確保することができ、不織布部分における吸収が飽和しにくくなる。よって、排泄液が不織布部分に保持され難くなる。
【0019】
<請求項8記載の発明>
前記吸収体は繊維集合体により形成されており、前記吸収体のうち前記不織布部分と重なる部分の繊維密度が0.06〜0.005g/cm3であり、これよりも前記不織布部分と重ならない部分の繊維密度が高い、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
吸収体のうち不織布部分と重なる部分の繊維密度を低くすると、当該部分の吸収速度が速くなる。よって、排泄液が不織布部分に保持され難くなる。また、吸収量(排泄液の保持量)は不織布部分と重ならない部分により確保することができる。
【0021】
<請求項9記載の発明>
前記吸収体のうち前記不織布部分と重なる部分の表面に凹溝が形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
吸収体のうち不織布部分と重なる部分の表面に凹溝を有すると、凹溝内が排泄液の受け入れ空間となり、当該部分の吸収速度が速くなる。よって、排泄液が不織布部分に保持され難くなる。
【0023】
<請求項10記載の発明>
前記肌当接面により定まる主吸収領域の全体にわたり、前記不織布部分をなす不織布が設けられ、
この不織布の表面における幅方向両側部及びその間に位置する中間部のうち、中間部の一部又は全体が前記メッシュシートにより覆われるとともに、両側部が前記メッシュシートにより覆われておらず、
前記不織布のうち前記メッシュシートにより覆われた部分が前記メッシュシート部分をなすとともに、前記メッシュシートにより覆われていない部分が前記不織布部分として肌当接面を構成する、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0024】
(作用効果)
このような構造を採用することによって、肌当接面のうち肌に当接し易い又は肌に対する当接圧力が高くなり易い周縁部が不織布部分からなるため、不織布を用いることによる肌触りの向上が特に顕著となる。また、肌当接面を構成する部材数が少なくて済むため(不織布及びメッシュシート各1枚。従来のものは不織布2枚及びメッシュシート1枚が必要だった。)、製造コストを抑えることができ、製造も容易である。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、肌当接面が部分的に不織布で構成されるものでありながら、不織布部分に排泄液が保持され難く、且つ不織布部分の裏側に吸収された排泄部分の隠蔽性に優れる吸収性物品となる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
<生理用ナプキンの基本構造の一例>
図1は本発明に係る生理用ナプキン1の展開図であり、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図、図4は図1の要部拡大図である。この生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性バックシート2と、肌当接面3Fをなし、経血やおりものなどを速やかに透過させる肌当接部材3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4,5と、肌当接部材3の裏面に接するように配置された中間シート6と、吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では不透液性バックシート2と肌当接部材3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している不透液性バックシート2と、立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性バックシート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップWB、WBが形成されている。
【0027】
不透液性バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。不透液性バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。不透液性バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0028】
吸収体4,5としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。吸収体4,5は形状及びポリマー粉末保持等のためにクレープ紙等の包装シート4L,5Lによって囲繞するのが望ましい。図示例では、下層吸収体4の上側における幅方向中央部に沿って上層吸収体5が設けられているが、上層吸収体5及びその包装シート5Lを省略し、単一の吸収体4のみとする等、公知の吸収体構造を採用することができる。
【0029】
中間シート6は、図示例では筒状に折り畳まれて2層構造となっているが、折り畳まずに単層構造としても良い。中間シート6は、肌当接面の全体にわたり設けても良いが、幅方向中央且つ前後方向中間部(特に股間部)にのみ設けるのが好ましい。中間シート6の素材は液透過性を有するものであれば良いが、親水性を有するものが好適である。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。中間シート6は、肌当接部材3の裏面にホットメルト又は熱融着(エンボス)により接合するのが望ましい。
【0030】
図示例では、肌当接部材3は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、肌当接部材3の幅方向外側は、肌当接部材3の両側部表面から延在するサイド不織布7(肌当接部材とは別の部材)により覆われている。サイド不織布7の幅方向中央側の部分は、立体ギャザーBSを形成している。サイド不織布7としては、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を18〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0031】
サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これらサイド不織布7と不透液性バックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップWB、WBを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップWB、WBの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0032】
一方、サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面くの字状に内側に開口を向けたポケットを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0033】
他方、本生理用ナプキン1においては、詳細には図4に示されるように、下層吸収体4の使用面側には、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉じた環状のエンボス凹部8によって区画される領域に、周囲に対して使用面側に高く隆起する上層吸収体5による中高部が形成されている。エンボス凹部8は、肌当接部部材3の表面から吸収体4内まで食い込むように形成されている。中高部の厚みは、厚くし過ぎると下層吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。また、使用面側にはエンボス凹部8とともに、エンボス凹部9,10、11がそれぞれ形成されている。
【0034】
中高部6の外側においては、エンボス凹部8の後部両側に、エンボス凹部8に対して所定の間隔を空けてナプキン1の長手方向に延長される後部サイドエンボス凹部10,10が形成されている。図示例ではこの後部サイドエンボス凹部10は、それぞれナプキン1の外側に曲率中心を有する弧状曲線とされている。また、エンボス凹部8の後側には、エンボス凹部8に対して所定の間隔を空けて略逆傘形状の後端独立エンボス11が形成されている。
【0035】
<特徴部分について>
肌当接部材3は、吸収体4、5の表面側を覆う部分である肌当接面3Fを形成するものであり、特徴的には、樹脂製のメッシュシート31が表面に露出するメッシュシート部分3Mと、メッシュシート31と重ならず且つ不織布32からなる不織布部分3Nとを有している。メッシュシート部分3M及び不織布部分3Nの位置、数、形状・寸法等は適宜定めることができ、例えばいずれか一方又は両方を肌当接面の複数箇所に設けることができる。
【0036】
図示例では、肌当接面により定まる主吸収領域の全体にわたり、不織布部分をなす不織布32が設けられ、この不織布32の表面における幅方向両側部及びその間に位置する中間部のうち、中間部の前後方向両端部を除く部分(又は全体でも良い)がメッシュシート31により覆われるとともに、両側部がメッシュシート31により覆われておらず、不織布32のうちメッシュシート31により覆われた部分によってメッシュシート部分3Mが構成され、メッシュシート31により覆われていない部分によって不織布部分3Nが構成されている。この場合におけるメッシュシート部分3Mの幅は30〜80mm程度であるのが好ましく、その両側に食み出る不織布部分3Nの幅は10〜60mm程度であるのが好ましい。同様の配置は、図示形態と反対に、不織布32をメッシュシート31よりも表面側に配置することでも構成することができる。
【0037】
メッシュシート31としては、酸化チタンを含有する限り、吸収性物品のトップシートとして公知のものを特に限定なく用いることができるが、厚みが0.01〜0.2mm、個々の開口の面積が0.01〜1mm2、開口率が15〜50%、且つ酸化チタン含有量が2重量%以上(特に2〜3重量%)のものが好適である。メッシュシートの原料樹脂としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0038】
一方、不織布32としては、酸化チタンを含有し、且つその含有量がメッシュシートの酸化チタン含有量に対して±50%の範囲内のものが用いられる。特に好ましい範囲は±20%である。この範囲内であれば、吸収後における不織布部分とメッシュシート部分との見栄えの差が少ないものとなる。より具体的には、不織布32としては、繊維目付けが10〜50g/m2(特に15〜40/m2)であり且つ構成繊維の酸化チタン含有量が上述の範囲内のものが好適である。メッシュシート部分3M及び不織布部分3Nの酸化チタン含有量が十分に高く且つ十分な繊維目付けを有すると、不透明性が高くなり、裏側に吸収された排泄液の隠蔽性にも優れるものとなる。繊維目付けや酸化チタン含有量が低すぎると、隠蔽性に劣るようになり、高くし過ぎても隠蔽性には変わりは無いが、特に不織布部分3Nにおける繊維目付けを高くしすぎると排泄液を保持し易くなるという問題がある。この限りにおいて、不織布32の仕様は適宜定めることができ、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を原料とし、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた長繊維又は短繊維不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。肌当接部材3に多数の透孔を有する場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。特にサーマルボンド法は柔らかさ、吸収スピードから好適である。
【0039】
不織布部分3Nの隠蔽性をより一層のものとするために、図示形態のように、不織布部分3Nに所定パターンのエンボス加工を施すのは一つの好ましい形態である。このようなエンボス加工によるパターン40が形成されていると、そのパターン40の迷彩効果によって、排泄液の隠蔽性が向上するとともに、肌触りがメッシュシートに似て滑らかになる。エンボスパターン40は適宜定めることができるが、エンボスパターン(凹凸部分)40の面積が不織布部分3Nの面積の20〜100%程度であるのが好ましい。また、エンボスパターン40は、散点状のパターンであっても良いが、円形、三角形、四角形等を組み合わせた幾何学模様や、花柄等の模様であっても良い。
【0040】
図示形態のように、メッシュシート部分3Mと不織布部分3Nとの境界及びその近傍にメッシュシート3Mと不織布32との重なり部分を有している場合には、この重なり部分33を含む範囲に対してメッシュシート31及び不織布32を重ねた状態で、上述の隠蔽性向上のためのエンボス加工を施し、両部材31,32を一体化するのが好ましい。この場合、いわゆるヒートエンボス加工により両部材を溶着するのが好ましい。このようなエンボス加工が施されていると、両者の境界おいてメッシュシート部分3Mと不織布部分3Nとが剥がれ難くなるとともに、素材の縁が肌に当ることによる違和感(特に異物感)が発生し難くなる。また、メッシュシート部分3Mから不織布部分3Nへの肌触りの変化が緩やかになることからも、違和感が発生し難い。
【0041】
他方、不織布部分3Nにおける排泄液の保持性を更に低下させるために、図4に示すように、不織布部分3Nを、表裏方向に貫通する透孔32hを有する撥水性不織布32により構成するのも好ましい形態である。このように孔開き撥水性不織布32を用いることにより、排泄液が不織布部分3Nから吸収体4側に移動し易くなる、つまり不織布部分3Nの吸収速度が速くなる。その結果、排泄液が不織布部分に保持され難くなる。この場合の各透孔32hの開口面積は0.01〜100mm2程度であるのが好ましく、不織布部分3Nの面積の10〜50%程度を占めるように多数配置するのが好ましい。なお、撥水性不織布32は、通常の不織布にシリコン処理等の撥水処理を施すことにより製造することができる。
【0042】
また、吸収体4が高吸収性ポリマーを含有する場合、不織布部分3Nにおける排泄液の保持性を更に低下させるために、不織布部分3Nと重なる部分に含まれる高吸収性ポリマーとして、吸収速度が0.1〜5g/g/秒程度(好ましくは0.7〜3g/g/秒)の速いものを用いると、不織布部分3Nの裏側における吸収速度が速くなる結果、排泄液が不織布部分3Nに保持され難くなる。
【0043】
また、吸収体4がパルプ繊維を含む繊維集合体により形成されている場合、不織布部分3Nにおける排泄液の保持性を更に低下させるために、不織布部分3Nと重なる部分におけるパルプ繊維含有量を多く、具体的には200〜600g/m2程度にすると、不織布部分3Nの裏側における吸収が飽和しにくくなるため、排泄液が不織布部分3Nに保持され難くなる。
【0044】
また、吸収体4が繊維集合体により形成されている場合、不織布部分3Nにおける排泄液の保持性を更に低下させるために、吸収体4のうち不織布部分3Nと重なる部分の繊維密度を低く、具体的には0.06〜0.005g/cm3程度とし、これよりも不織布部分3Nと重ならない部分の繊維密度を高くするのも好ましい。この場合、吸収体4のうち不織布部分3Nと重なる部分の繊維密度が低いため、当該部分の吸収速度が速くなり、液保持性は低下する。また、不織布部分3Nと重なる部分の吸収量は少なくなるが、不織布部分と重ならない部分の繊維密度が相対的に高いため、吸収体4全体としての吸収量(排泄液の保持量)は確保することができる。
【0045】
また、不織布部分3Nにおける排泄液の保持性を低下させるために、図4に示すように、吸収体4のうち不織布部分3Nと重なる部分の表面に、エンボス加工等により凹溝50を形成するのも好ましい。このような凹溝50を有すると、凹溝50内が排泄液の受け入れ空間となり、不織布部分3Nの裏側への吸収速度が速くなる。よって、排泄液が不織布部分3Nに保持され難くなる。凹溝50は吸収体の前後方向に沿って形成されていても、幅方向に沿って形成されていても良い。凹溝50の寸法は適宜定めることができるが、溝幅は1〜20mm程度であるのが好ましい。また、凹溝50の数は1本でも良いが、図示のように複数本設けることもできる。
なお、以上に述べた液保持性低下手段は複数組み合わせて用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品全般に利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】生理用ナプキンの展開図である。
【図2】その横断面図(図1のII−II線矢視図)である。
【図3】その横断面図(図1のIII−III線矢視図)である。
【図4】要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…生理用ナプキン、2…不透液性バックシート、3…肌当接部材、4…下層吸収体、5…上層吸収体、6…中間シート、7…サイド不織布、8…エンボス凹部、9…前端独立エンボス、10…後部サイドエンボス、11…後端独立エンボス、31…メッシュシート、32…不織布、40…エンボスパターン、BS…立体ギャザー、W…ウイング状フラップ、WB…臀部側ウイング状フラップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、その表面側を覆う透液性の肌当接面とを有する、吸収性物品において、
前記肌当接面は、樹脂製のメッシュシートからなるメッシュシート部分と、前記メッシュシートと重ならず且つ不織布からなる不織布部分とから構成されており、
前記メッシュシート部分及び不織布部分は酸化チタンを含有するとともに、前記不織布部分の酸化チタン含有量が、前記メッシュシート部分の酸化チタン含有量に対して±50%の範囲内とされている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記メッシュシートは、厚みが0.01〜0.2mm、個々の開口の面積が0.01〜1mm2、開口率が15〜50%、且つ酸化チタン含有量が2重量%以上のものであり、
前記不織布部分の不織布は、繊維目付けが10〜50g/m2のものである、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記不織布部分に、所定パターンのエンボス加工が施されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記メッシュシート部分をなすメッシュシート及び前記不織布部分をなす不織布は、 少なくとも前記メッシュシート部分と不織布部分との境界及びその近傍に重なり部分を有しており、且つこの重なり部分における前記メッシュシート及び前記不織布がエンボス加工により一体化されている、請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記不織布部分が、表裏方向に貫通する透孔を有する撥水性不織布からなる、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体は、高吸収性ポリマーを含有するパルプ繊維の集合体により形成されており、前記不織布部分と重なる部分に含まれる高吸収性ポリマーの吸収速度が0.1〜5g/g/秒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、パルプ繊維とこれよりも低親水性の非パルプ繊維との集合体により形成されており、前記不織布部分と重なる部分におけるパルプ繊維含有量が、前記メッシュシート部分と重なる部分に含まれるパルプ繊維含有量よりも多い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は繊維集合体により形成されており、前記吸収体のうち前記不織布部分と重なる部分の繊維密度が0.06〜0.005g/cm3である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体のうち前記不織布部分と重なる部分の表面に凹溝が形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記肌当接面により定まる主吸収領域の全体にわたり、前記不織布部分をなす不織布が設けられ、
この不織布の表面における幅方向両側部及びその間に位置する中間部のうち、中間部の一部又は全体が前記メッシュシートにより覆われるとともに、両側部が前記メッシュシートにより覆われておらず、
前記不織布のうち前記メッシュシートにより覆われた部分が前記メッシュシート部分をなすとともに、前記メッシュシートにより覆われていない部分が前記不織布部分として肌当接面を構成する、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−240588(P2009−240588A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91700(P2008−91700)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】