説明

吸収性物品

【課題】リン脂質類似重合体に由来するスキンケア性を十分に発揮させることができ、かつ、トップシートの通液性にも優れ、通液性を所望のレベルに制御することが可能な吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20とを備え、トップシート18の少なくとも一部が、リン脂質極性基を有するリン脂質類似重合体を繊維表面に付着させたスキンケア性繊維50と、親水化剤を繊維表面に付着させた親水性繊維52と、を混合して構成されたシートである吸収性物品1A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体、トップシート及びバックシートを備えた吸収性物品に関するものである。より具体的には、肌に優しく、吸水性、保湿性等に優れるリン脂質類似重合体をスキンケア成分として利用した吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、使い捨ておむつ、尿パッドのような吸収性物品は、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備えている。
【0003】
このような吸収性物品は、トップシートが着用者の肌と接するように使用され、排泄物はトップシートの液透過性部分を透過して吸収体に吸収・保持される。そして、吸収体の裏面側に配置された液不透過性のバックシートによって、排泄物が外部に漏洩することが防止される。
【0004】
ところで、吸収性物品は、着用者の肌に対して直接接触する物品であるため、刺激が少なく肌に優しい素材で構成されていることが好ましい。例えば、着用者の肌に接触するトップシート等にリン脂質等のスキンコンディショニング剤を付着させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、天然物であるリン脂質の代替品として、リン脂質の構造を模擬したリン脂質類似重合体からなる繊維処理剤組成物が提案されている(特許文献2及び3参照)。
【0006】
更に、前記リン脂質類似重合体と吸湿剤とをパディングにより付着させた不織布でトップシートを構成した吸収性物品も開示されている(特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−534089号公報
【特許文献2】特開2002−348778号公報
【特許文献3】特開2002−348779号公報
【特許文献4】特開2004−285548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4に記載の吸収性物品は、トップシートの通液性に劣る場合があり、所望のレベルの通液性に制御することが困難であるという面で解決すべき課題が残されていた。本発明は、前記リン脂質類似重合体に由来するスキンケア性を十分に発揮させることができ、かつ、トップシートの通液性にも優れ、通液性を所望のレベルに制御することが可能な吸収性物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、特許文献4に記載の吸収性物品では、1)リン脂質類似重合体がトップシートの表面に広く分布するため、疎水性のリン脂質類似重合体によってトップシートの通液性が阻害されてしまう、2)吸湿剤が繊維表面の一部に局在化し、繊維表面全体に連続的に存在しない場合が考えられるため、親水性の領域がトップシートの厚さ方向に連続しておらず、スムーズに通液が進行しない、といった理由から、トップシートの通液性が低下し、通液性の制御も困難となることを見出した。
【0010】
そして、トップシート等に対して、前記リン脂質類似重合体及び吸湿剤等の親水化剤を付着させるのではなく、予め前記リン脂質類似重合体を付着させた繊維と、親水化剤を付着させた繊維とを別々に形成した後に、この両繊維を混合してトップシート等を形成することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の吸収性物品が提供される。
【0011】
[1] 吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートとを備え、前記トップシートの少なくとも一部が、リン脂質極性基を有するリン脂質類似重合体を繊維表面に付着させたスキンケア性繊維と、親水化剤を繊維表面に付着させた親水性繊維と、を混合して構成されたシートである吸収性物品。
【0012】
[2] 前記トップシートは、前記スキンケア性繊維と前記親水性繊維とを10:90〜70:30の質量比で混合して構成されたものである前記[1]に記載の吸収性物品。
【0013】
[3] 前記トップシートは、複数のシートが積層された複層シートとして構成され、着用者の肌と接触する最上層シートが、前記スキンケア性繊維と、前記親水性繊維と、を混合して構成されたシートである前記[1]又は[2]に記載の吸収性物品。
【0014】
[4] 前記最上層シートは、前記スキンケア性繊維と前記親水性繊維とを30:70〜90:10の質量比で混合して構成されたものである前記[3]に記載の吸収性物品。
【0015】
[5] 前記トップシート又は前記最上層シートは、前記スキンケア性繊維と前記親水性繊維とが混合状態で集積され、繊維同士が熱融着によって結合されたものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸収性物品は、リン脂質類似重合体に由来するスキンケア性を十分に発揮させることができ、かつ、トップシートの通液性にも優れ、通液性を所望のレベルに制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための最良の形態について、パンツ型使い捨ておむつ、テープ型使い捨ておむつの例により具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品(例えば、尿パッド等)を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[1]定義等:
「パンツ型使い捨ておむつ」とは、例えば、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのように、前身頃2と後身頃6の対応する側縁2a,6a(2b,6b)同士を接合することによって、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12(12a,12b)が形成され、予めパンツ型に構成された使い捨ておむつを意味するものとする。
【0019】
また、「2ピースタイプ」とは、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aのように、吸収体22、トップシート18及びバックシート20がパッド状に一体化された吸収性本体14と、着用者の身体を被包する外装部材16とを備え、外装部材16の内側に吸収性本体14が配置・固定された形態を意味するものとする。
【0020】
「テープ型使い捨ておむつ」とは、図2A及び図2Bに示す吸収性物品1Bのように、吸収体22と、トップシート18と、バックシート20とを備え、後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ11を更に備えた使い捨ておむつを意味するものとする。
【0021】
「前身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分、「股下部」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の股下を覆う部分、「後身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分を意味するものとする。
【0022】
[2]本発明の吸収性物品のトップシートの構成:
本発明の吸収性物品は、トップシートの構成に特徴がある。「トップシート」とは、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の表面(おむつの装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。
【0023】
本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのように、トップシート18の少なくとも一部が、リン脂質極性基を有するリン脂質類似重合体を繊維表面に付着させたスキンケア性繊維50と、親水化剤を繊維表面に付着させた親水性繊維52と、を混合して構成されたシートであるという構成を有する。
【0024】
本発明の吸収性物品は、予めリン脂質類似重合体を付着させた繊維と、親水化剤を付着させた繊維とを別々に形成した後に、この両繊維を混合してトップシートを形成している。即ち、リン脂質類似重合体と親水化剤が別個の繊維に付着されている。
【0025】
このようにすることで、疎水性のリン脂質類似重合体がトップシートの表面のみに面状に分布することがなく、トップシートの通液性を阻害し難くなる。また、親水化剤が繊維表面の一部のみならず、繊維表面全体に連続的に存在し、複数の親水性繊維によってトップシートの厚さ方向に親水性の領域が連続的に形成されるため、スムーズな通液が図られる。従って、リン脂質類似重合体に由来するスキンケア性を十分に発揮させることができ、かつ、トップシートの通液性にも優れ、通液性を所望のレベルに制御することが可能となる。本発明の構成は、疎水性のリン脂質類似重合体の配合量を増やし、トップシートのスキンケア性を高めたい場合に特に有効である。
【0026】
[2−1]スキンケア性繊維:
「スキンケア性繊維」とは、リン脂質極性基を有するリン脂質類似重合体を繊維表面に付着させた繊維であり、トップシートの必須構成繊維の一つである。この繊維をトップシートの構成繊維とすることにより、トップシートにスキンケア性、吸水性、保湿性等を付与することができ、着用者の肌に優しい吸収性物品とすることができる。
【0027】
「リン脂質類似重合体」とは、リン脂質を模擬して設計された、リン脂質極性基を有する重合体である。「リン脂質極性基」としては、例えば、ホスホリルコリン基、ホスホリルエタノールアミン基、ホスホリルセリン基、ホスホリルイノシトール基、ホスホリルグリセロール基等を挙げることができる。中でも、ホスホリルコリン基が好ましい。
【0028】
「リン脂質類似重合体」としては、ホスホリルコリン基を有するメタクリル酸エステル系ポリマーが知られている。具体的には、ポリ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(「MPCポリマー」とも称される。)を主成分とする繊維加工剤が市販されている(例えば、日本油脂社製「リピジュア(登録商標)」等)。前記繊維加工剤は、本発明においても好適に用いることができる。
【0029】
リン脂質類似重合体を付着させる繊維は特に限定されるものではなく、従来の吸収性物品、特にトップシートに用いられてきた繊維を用いることができる。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、脂肪族ポリアミド(PA)等の熱可塑性樹脂からなる繊維を挙げることができる。
【0030】
また、前記繊維としては、芯部よりも鞘部の融点(又は軟化点)が低い芯鞘繊維を用いることが好ましい。芯鞘繊維の構成材料としては、融点等の低い順からPE、エチレンを共重合成分として配合したポリプロピレンコポリマー(CoPP)、PP、PET等を挙げることができる。これらの材料の中から、芯部よりも鞘部の融点等が低いものを適宜選択して用いればよい。中でも、芯部がPET、鞘部がPEの芯鞘繊維を好適に用いることができる。この芯鞘繊維は、芯部よりも鞘部の融点が低くなっている。
【0031】
繊維表面にリン脂質類似重合体を付着させる方法は特に制限されない。例えば、浸漬、スプレーコーティング、ロールコーティング(グラビア、フレキソ、ゲートロール等)の方法により繊維表面に付着させることができる。
【0032】
付着量としては、繊維100gに対して、リン脂質類似重合体を0.02〜5g付着させることが好ましく、0.1〜2g付着させることがより好ましい。リン脂質類似重合体を0.02g以上付着させることにより、スキンケア性、吸水性、保湿性等をトップシートに付与することができる。一方、リン脂質類似重合体の付着量を5g以下とすることにより、後の不織布化の工程で加工機を汚染する不具合を防止することができる。
【0033】
なお、本発明においては、リン脂質類似重合体は繊維表面に付着されていればよく、繊維中心部まで浸透している必要はない。着用者の肌と接触する部分に付着していれば目的を果たすことができるからである。また、親水化剤が繊維内部に含浸されていても、リン脂質類似重合体が繊維表面を完全に覆っている場合や、繊維表面に予め親水化剤が付着された後に、リン脂質類似重合体が繊維表面を完全に覆っている場合も本発明の吸収性物品において、スキンケア性繊維として用いることができる。
【0034】
[2−2]親水性繊維:
「親水性繊維」とは、親水化剤を繊維表面に付着させた繊維であり、トップシートの必須構成繊維の一つである。この繊維をトップシートの構成繊維とすることにより、着用者の尿や体液を透過させ得る液透過性をトップシートに付与することができる。
【0035】
「親水化剤」としては、界面活性剤を用いることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル等のノニオン系界面活性剤;モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤;等を挙げることができる。
【0036】
親水化剤を付着させる繊維は特に限定されるものではなく、リン脂質類似重合体の項で例示した繊維を用いることができる。芯部がPET、鞘部がPEの芯鞘繊維を好適に用いることができる点についても同様である。
【0037】
繊維表面に親水化剤を付着させる方法は特に制限されず、リン脂質類似重合体と同様に、浸漬、スプレーコーティング、ロールコーティング(グラビア、フレキソ、ゲートロール等)の方法を採用することができる。付着量としては、繊維100gに対して、親水化剤を0,1〜2g付着させることが好ましい。親水化剤を0.1g以上付着させることにより、着用者の尿や体液を透過させ得る液透過性等をトップシートに付与することができる。一方、親水化剤の付着量を2g以下とすることにより、トップシートが親水化剤でベタついてサラっとした触感を失ってしまったり、また、過剰な親水化剤によってトップシートの皮膚刺激性が高くなるという不具合を防止することができる。
【0038】
なお、親水化剤も繊維表面に付着されていればよく、繊維中心部まで浸透している必要はない。
【0039】
[2−3]スキンケア性繊維と親水性繊維との比率等:
トップシートは、スキンケア性繊維と親水性繊維とを10:90〜70:30の質量比で混合して構成されたものであることが好ましい。スキンケア性繊維と親水性繊維の総量に対して、スキンケア繊維を10質量%以上配合することにより、スキンケア性、吸水性、保湿性等をトップシートに付与することができ、親水性繊維を30質量%以上配合することにより、着用者の尿や体液を透過させ得る液透過性等をトップシートに付与することができる。
【0040】
本発明の吸収性物品は、トップシートの少なくとも一部が、スキンケア性繊維と親水性繊維とを混合して構成されたシートとなっていればよい。即ち、トップシート全体が、スキンケア性繊維と親水性繊維とを混合して構成されたシートとなっていてもよいし、一部のみがそのような構成となっていてもよい。
【0041】
トップシートの一部のみが、スキンケア性繊維と親水性繊維とを混合して構成されたシートとなっている例としては、図2Bに示す吸収性物品1Bのように、トップシート18が、複数のシート(最上層シート54、第2層シート56、第3層シート58)が積層された複層シートとして構成されており、着用者の肌と接触する最上層シート54が、スキンケア性繊維50と親水性繊維52とを混合して構成されたシートであるものを挙げることができる。
【0042】
この場合、最上層シートは、スキンケア性繊維と親水性繊維とを30:70〜90:10の質量比で混合して構成されたものであることが好ましい。スキンケア性繊維と親水性繊維の総量に対して、スキンケア繊維を30質量%以上配合することにより、スキンケア性、吸水性、保湿性等をトップシートに付与することができ、親水性繊維を10質量%以上配合することにより、着用者の尿や体液を透過させ得る液透過性等をトップシートに付与することができる。
【0043】
また、本発明の吸収性物品は、トップシート又は最上層シートが、スキンケア性繊維と親水性繊維とが混合状態で集積され、繊維同士が熱融着によって結合されたものであることが好ましい。繊維同士が熱融着されていることによって、シート表面が毛羽立ちを起こし難くなり、また、繊維同士が繊維間に空隙を形成した状態で固着されるため、通気性や通液性が向上するという利点がある。
【0044】
このように繊維同士を熱融着させる際には、スキンケア性繊維及び親水性繊維のベースとなる繊維を、芯部よりも鞘部の融点(又は軟化点)が低い芯鞘繊維とすることが好ましい。このような繊維は、熱風噴射等の熱処理によって鞘部のみを融解させ、繊維同士を熱融着させることが容易だからである。芯部と鞘部の融点差が大きく、鞘部のみを融解させ易いという理由から、芯部がPET、鞘部がPEの芯鞘繊維用いることが好ましい。
【0045】
[2−4]トップシートのその他の構成:
以上説明した部分を除き、本発明のトップシートも従前のトップシートと同様に構成することができる。
【0046】
トップシートを構成する不織布の製造方法としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された従来公知のものを好適に用いることができる。
【0047】
トップシートは、必ずしもトップシート全面が液透過性材料で構成されている必要はない。但し、裏面側に配置された吸収体に着用者の尿を吸収させるため、少なくとも一部が液透過性材料により構成されている必要があり、トップシートを平面的に見た場合に、少なくとも吸収体の表面近傍は液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0048】
なお、吸収性物品の着用者の肌側に位置するシートが全てトップシートによって構成されている必要はない。即ち、着用者の肌と接するシートが、トップシートを含む複数のシートによって構成され、トップシートと他のシートがシートの表面方向に向かって継ぎ合わされたような構造となっていてもよい。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、吸収体の表面部に配置されるトップシートと、サイドフラップの部分に配置されるサイドシートという2種類のシートによって着用者の肌と接する部分を構成する形態がよく利用される。
【0049】
例えば、図2A及び図2Bに示す吸収性物品1Bは、テープ型使い捨ておむつであり、おむつの幅方向中央部には液透過性材料からなるトップシート18を配置し、おむつのサイドフラップ9部分には液の透過に対して抵抗性を示す通気撥水性材料からなるサイドシート19を配置した例である。
【0050】
通気撥水性シートとしては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布であってもよいが、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シートが更に好ましい。
【0051】
[3]吸収性物品全体の構成:
本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Dに示す吸収性物品1Aのように、吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20とを備えるものである。
【0052】
[3−1]吸収体:
吸収体は、着用者の尿を吸収し、保持するための部材である。吸収体は、着用者の尿や体液を吸収し保持する必要から、吸収性材料によって構成される。
【0053】
吸収体を構成する吸収性材料としては、使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に通常使用される従来公知の吸収性材料、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す)、親水性シート等を挙げることができる。フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、親水性シートとしてはティシュペーパー、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることが好ましい。
【0054】
これらの吸収性材料は、通常、単層ないしは複層のマット状として用いられる。この際、前記の吸収性材料のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部程度のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプの各マット中に均一に混合されていてもよいし、複層のフラッフパルプの層間に層状に配置されていてもよい。
【0055】
なお、吸収体には、その表面側に(例えば、吸収体とトップシートとの間に)、尿や体液等の液体を拡散させるためのシート(セカンドシート)を付帯的に配置してもよい。このセカンドシートを付設すると、着用者の姿勢等に起因して、トップシート裏面側の空間が十分に形成されないような場合でも、尿や体液等の吸収速度が低下し難く、吸収速度の低下による尿や体液等の漏れを防止することが可能となる。
【0056】
セカンドシートを構成する材料としては、親水性で液透過性の材料、例えば、織布、不織布、多孔性プラスチック、フラッフパルプ等を挙げることができる。これらの構成素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、レーヨン、アセテート又はこれらの複合繊維の他、パルプ等を挙げることができる。パルプとしては、カーリーセルロースファイバー等のけん縮繊維を好適に用いることができる。
【0057】
吸収体の形状については特に制限はないが、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品において使用される形状、例えば、矩形状、砂時計型、ひょうたん型、T字型等を挙げることができる。
【0058】
吸収体は、その全体が親水性シートによって被包されていることが好ましい。このような構成は、吸収体からSAPが漏洩することを防止し、吸収体に形状安定性を付与することができるという利点がある。
【0059】
通常、吸収体は、トップシートとバックシートの間に挟み込まれ、その周縁部が封着されることによって、トップシートとバックシートとの間に介装される。従って、吸収体の周縁部にはトップシートとバックシートの間に吸収体が介装されていないフラップ部が形成されることになる。吸収体は少なくとも股下部に介装され、この吸収体が前身頃や後身頃にまで及んでいてもよい。
【0060】
[3−2]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(おむつの装着時において着用者の肌から遠い側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0061】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体で吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の存在する部分にバックシートが配置されていることが好ましい。
【0062】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0063】
なお、図2Bに示すように、バックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0064】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0065】
[3−3]立体ギャザー:
本発明の吸収性物品は、撥水性シートからなり、吸収体の両側に配置された少なくとも一対の立体ギャザーを備えていることが好ましい。
【0066】
立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。このような立体ギャザーを形成することにより、立体ギャザーが防漏壁となり、吸収性物品の脚周り開口部、側縁部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0067】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に使用される構成を採用することができる。例えば、図1Bに示す吸収性物品1A、図2Bに示す吸収性物品1Bのように、撥水性シート32の層間に伸縮材(立体ギャザー伸縮材36)を挟み込んで固定し、その立体ギャザー伸縮材36の収縮力によってギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。これらの例では、撥水性シート32の折り返し部分に立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで固定した例である。
【0068】
なお、立体ギャザーは、前記のように立体ギャザー用の撥水性シートを別途付設してもよいし、おむつを構成するシート材の一部によって形成してもよい。例えば、図2Bに示す吸収性物品1Bは、サイドシート19を構成する撥水性シート32の一部によって立体ギャザー26a,26bを形成した例である。撥水性シートは、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布であってもよいが、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シートが更に好ましい。
【0069】
[3−4]止着テープ:
本発明の吸収性物品は、後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前身頃と後身頃とを固定するための止着テープを備えていてもよい。即ち、本発明の吸収性物品には、いわゆるテープ型使い捨ておむつも含まれる。
【0070】
止着テープのファスニング部材としては、粘着剤により固定を行う粘着ファスナーであってもよいが、機械的な結合により固定を行うメカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。メカニカルファスナーは、止着力が高いことに加え、複数回の脱着を行っても止着力が低下することがないという利点がある。
【0071】
例えば、図2Aに示す吸収性物品1Bは、ファスニング部材として、メカニカルファスナー46を用いた例である。止着テープ11の先端近傍には、フック材46aが付設される一方、前身頃2には、ループ材46bからなるフロントパッチ13が付設されており、フロントパッチ13に対して、止着テープ11を止め付けることが可能なように構成されている。
【0072】
止着テープの数は特に限定されず、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【0073】
[3−5]各種伸縮材:
本発明の吸収性物品が使い捨ておむつである場合は、脚周り伸縮材を配置し、ウエスト周り伸縮材を配置することが好ましい。
【0074】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。
【0075】
例えば、図1Aに示す吸収性物品1Aは、パンツ型使い捨ておむつであり、おむつの脚周り開口部のカーブに沿って曲線的に脚周り伸縮材40を配置してレグギャザーを形成した例である。一方、図2Aに示す吸収性物品1Bは、テープ型使い捨ておむつであり、おむつの長手方向に沿って、直線的に三本の脚周り伸縮材40を配置してレグギャザーを形成した例である。この脚周り伸縮材40は、糸ゴムや平ゴムによって構成される。
【0076】
脚周り伸縮材は、例えば、図2Aに示す吸収性物品1Bのように、立体ギャザー26の起立線より外側の部分に、脚周り伸縮材40が形成されていることが好ましい。このような構成とすると、立体ギャザーの十分な防漏効果を確保しつつ、股下部の装用感・装着感を向上させることができる。
【0077】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0078】
例えば、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aは、おむつのウエスト周り開口部の開口端に沿って複数本のウエスト周り伸縮材42を配置した例である。
【0079】
一方、図2Aに示す吸収性物品1Bは、おむつの後身頃6の端縁に沿って帯状のウエスト周り伸縮材42を配置した例である。この帯状のウエスト周り伸縮材42は、ウレタンフォーム等の伸縮性フォームによって構成されている。図示の例では、後身頃(背側)のみにウエスト周り伸縮材42を配置しているが、前身頃(腹側)にウエスト周り伸縮材を配置してもよい。
【0080】
腹周り伸縮材は、ウエスト周り開口部と脚周り開口部との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に配置される伸縮材である。腹周り伸縮材を配置することによって、着用者の腹周りに伸縮性に富むタミーギャザーを形成することができる。このタミーギャザーは、ウエストギャザーと相俟って、おむつのフィット性やずり下がり防止効果を一層優れたものとすることができる。
【0081】
図1Bに示す吸収性物品1Aは、ウエスト周り開口部と脚周り開口部との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に、着用者の腹周りを取り囲むように複数本の腹周り伸縮材44を配置した例である。
【0082】
これらの伸縮材については、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0083】
伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0084】
伸縮材は、十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、伸縮材が天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴムの弾性糸からなる糸ゴムである場合には、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させることが可能となる。
【0085】
前記のような伸縮材は、おむつの他の構成部材に対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0086】
[3−6]適用対象:
なお、本発明の吸収性物品は、パンツ型使い捨ておむつ、テープ型使い捨ておむつ等の使い捨ておむつの他、尿パッドにも適用することができる。
【0087】
「尿パッド」とは、インナーパッド、補助パッドとも称され、専ら尿吸収を目的とする吸収パッドである。この尿パッドは、下着の内面や使い捨ておむつのトップシートの表面に載置した状態で用いられる。尿パッドは、使い捨ておむつと同様に、吸収体と、吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートとを備えるが、着用者の腰周りを被包する部分を持たない小型のパッド状に構成されることが一般的である。
【実施例】
【0088】
本発明の吸収性物品について、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の吸収性物品は、その発明特定事項を備えた吸収性物品を全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
〔実施例1〕
実施例1の吸収性物品として、テープ型使い捨ておむつを作製した。具体的な構造は、図2A及び図2Bに示す吸収性物品1Bの構造とした。この吸収性物品1Bは、乳児用Lサイズのものであり、前後方向長さを485mm、後身頃6の幅(側縁6a,6b間の長さ)を325mmとした。
【0090】
[1]トップシート:
トップシート18は、最上層シート54、第2層シート56、第3層シート58の3層からなる複層シートとした。なお、トップシート18は、おむつの幅方向中央部のみに配置し、おむつのサイドフラップ9部分にはサイドシート19を配置する構造とした。
【0091】
[1−1]スキンケア性繊維(繊維A):
スキンケア性繊維50は、ベースとなる繊維の表面に、リン脂質類似重合体を浸漬法により付着させて形成した。付着量は、繊維100gに対して、リン脂質類似重合体を0.1gの比率とした。
【0092】
なお、ベース繊維としては、芯部がPET、鞘部がPEからなり、太さが2.2dtexのPET/PE芯鞘繊維を用いた。リン脂質類似重合体としては、ホスホリルコリン基を有するメタクリル酸エステル系ポリマーを主成分とする繊維加工剤(日本油脂社製「リピジュア(登録商標)」)を用いベース繊維に対して0.1質量%付着させた。
【0093】
[1−2]親水性繊維(繊維B1):
親水性繊維52は、ベースとなる繊維の表面に親水化剤を浸漬法により付着させて形成した。付着量は、繊維100gに対して、親水化剤を0.6gの比率とした。なお、ベース繊維としては、前記PET/PE芯鞘繊維を用いた。親水化剤としては、アルキルスルフォネートナトリウム塩を用いベース繊維に対して0.6質量%付着させた。
【0094】
[1−3]親水性繊維(繊維B2):
親水性繊維(繊維B2)は、ベースとなる繊維の表面に親水化剤を浸漬法により付着させて形成した。付着量は、繊維100gに対して、親水化剤を0.6gの比率とした。
【0095】
なお、ベース繊維としては、芯部がPET、鞘部がPEからなり、太さが3.3dtexのPET/PE芯鞘繊維を用いた。前記PET/PE芯鞘繊維を用いた。親水化剤としては、前記アルキルスルフォネートナトリウム塩を用いベース繊維に対して0.6質量%付着させた。
【0096】
[1−4]トップシートの形成:
まず、前記親水性繊維(繊維B2)をカーディングし、ネットコンベアー上に、第3層シート58となるカードウエブA(目付け7g/m)を形成した。前記カードウエブAの上面に、前記親水性繊維(繊維B2)をカーディングして、第2層シート56となるカードウエブB(目付け7g/m)を形成し、2層積層シートとした。更に、前記カードウエブBの上面に前記スキンケア性繊維(繊維A)と前記親水性繊維(繊維B1)を50対50に混合した混合繊維をカーディングして、最上層シート54となるカードウエブC(目付け7g/m)を形成し、3層積層シートとした。その後、この3層積層シートに熱風を吹き付けることで繊維同士を熱融着させ、目付け21g/mの一体的なエアースルー不織布とした。このエアースルー不織布をトップシート18として用いた。
【0097】
このトップシート18は、最上層シート54におけるスキンケア性繊維(繊維A)と親水性繊維(繊維B1)の質量比が50:50、トップシート18全体におけるスキンケア性繊維(繊維A)と親水性繊維(繊維B1,B2)の質量比が17:83であった。
【0098】
[1−5]サイドシート:
サイドシート19としては、通気撥水性シートを用いた。具体的には、ポリプロピレン樹脂製で、目付けが18g/mのスパンポンド不織布を用いた。
【0099】
[2]その他の構成:
吸収体22は、おむつ1枚当たりフラッフパルプ10g、SAP10gを含む吸収体とし、その全体をティシュにより包み込んだ。吸収体22は矩形状とし、トップシート18とバックシート20の間に挟み込み、その周縁部を封着することによって、トップシート18とバックシート20との間に介装した。
【0100】
バックシート20は、微細な孔が多数形成された透湿度5000g/m・24hである微多孔性ポリエチレンフィルムによって構成した。そして、バックシート20の外表面側にはポリエチレン製の不織布からなるカバーシート24を貼り合わせた。
【0101】
止着テープ11は、後身頃6の左右の側縁6a,6bに配置した。この止着テープ11は、不織布からなる基材と基材の表面に付設されたメカニカルファスナー46のフック材46aとからなるものとした。一方、前身頃2には、メカニカルファスナー46のループ材46bからなるフロントパッチ13を配置し、フック材46aを固定することが可能なように構成した。
【0102】
立体ギャザー26は、おむつの前後方向に向かって直線的に一対の立体ギャザー26a,26bを付設した。この立体ギャザー26は撥水性シートからなり、サイドシート19と一体的に構成された内倒し式の立体ギャザーである。そして、立体ギャザー26の高さ(下端縁から上端縁までの長さ)は45mmとした。また、立体ギャザー26は、吸収性物品1Bの長手方向全域をカバーする長さに形成されている。
【0103】
立体ギャザー伸縮材36は立体ギャザー26の上端縁近傍に2本ずつ配置した。立体ギャザー伸縮材36は、撥水性シート32の自由端側(トップシート18に固定されていない側の端部)を折り返し、その折り返し部分に挟み込むように配置した。この立体ギャザー伸縮材36は、280%の伸張率で撥水性シート32に固定した。
【0104】
脚周り伸縮材40は、おむつの長手方向に沿って、立体ギャザー26の下端縁(固定端、起立線)より外側の部分に、直線的に三本ずつ配置した。また、ウエスト周り伸縮材42は、おむつの後身頃6の端縁に沿って帯状の伸縮材を配置している。この帯状の伸縮材は、ウレタンフォームによって構成した。
【0105】
〔比較例1〕
比較例1の吸収性物品として、テープ型使い捨ておむつを作製した。具体的な構造は、トップシートの構造を以下のように変更したことを除き、実施例1の吸収性物品と同一の構造とした。
【0106】
トップシートは、実施例1の吸収性物品で用いたトップシートの最上層シートがないもの、即ち、第2層シートと第3層シートのみからなる2層積層シートとした。トップシート以外については、実施例1の吸収性物品と同様に構成した。
【0107】
〔評価方法〕
乳児50名に、実施例1の吸収性物品及び比較例1の吸収性物品を合計20枚ずつ着用させ、かぶれの発生について対比評価した。評価は、乳児の母親に、吸収性物品を使用した後のかぶれ(臀部が赤くなった、かぶれた等)の発生具合をもとに、実施例1と比較例1の吸収性物品のかぶれ難さを対比評価させた。その評価結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
〔評価結果〕
表1に示すように、実施例1の吸収性物品が、比較例1の吸収性物品に比して、かぶれが発生し難いことを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の吸収性物品は、乳幼児用又は介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の使い捨ておむつ、尿パッド等の吸収性物品に利用することができる。特に、スキンケアに配慮した吸収性物品として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1A】本発明の吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を示す概略平面図である。
【図1B】図1Aに示す吸収性物品のA−A’断面を示す概略断面図である。
【図1C】図1Aに示す吸収性物品を組み立てて正面側から見た状態を示す概略斜視図である。
【図2A】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す一部切り欠き平面図であり、吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を示す図である。
【図2B】図2Aに示す吸収性物品のA−A’断面を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1A,1B:吸収性物品、2:前身頃、2a,2b:側縁、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁、8:接合部、9:サイドフラップ、10:ウエスト周り開口部、11:止着テープ、12,12a,12b:脚周り開口部、13:フロントパッチ、14:吸収性本体、16:外装部材、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、24:カバーシート、26,26a,26b:立体ギャザー、32,32a,32b:撥水性シート、36,36a,36b:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、44:腹周り伸縮材、46:メカニカルファスナー、46a:フック材、46b:ループ材、50:スキンケア性繊維、52:親水性繊維、54:最上層シート、56:第2層シート、58:第3層シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートとを備え、
前記トップシートの少なくとも一部が、リン脂質極性基を有するリン脂質類似重合体を繊維表面に付着させたスキンケア性繊維と、親水化剤を繊維表面に付着させた親水性繊維と、を混合して構成されたシートである吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートは、前記スキンケア性繊維と前記親水性繊維とを10:90〜70:30の質量比で混合して構成されたものである請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートは、複数のシートが積層された複層シートとして構成され、
着用者の肌と接触する最上層シートが、前記スキンケア性繊維と、前記親水性繊維と、を混合して構成されたシートである請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記最上層シートは、前記スキンケア性繊維と前記親水性繊維とを30:70〜90:10の質量比で混合して構成されたものである請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシート又は前記最上層シートは、前記スキンケア性繊維と前記親水性繊維とが混合状態で集積され、繊維同士が熱融着によって結合されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate


【公開番号】特開2009−254662(P2009−254662A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108764(P2008−108764)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】