説明

吸収性物品

【課題】端部(特に背側または脚周り)からの軟便や水様便の漏れを有効に防止することができ、また、着用者の肌への軟便や水様便の付着領域を最小限にくいとめることができ、さらに、シンプルな構造で容易に製造することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体と、前記吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備え、前記トップシートの上面に、便受けシートをさらに備え、前記便受けシートの軟便流動速度Lが前記トップシートの軟便流動速度Lよりも小さい吸収性物品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等のトップシートの表面側に、水様便の漏れを防止する手段が付設された吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乳幼児用、或いは高齢者・障害者用のおむつとして、吸収体と、吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えた使い捨ておむつが汎用されている。この使い捨ておむつは、トップシートの表面を着用者の肌に接するように宛がって使用することにより、着用者の排泄した尿はトップシートを透過して、吸収体によって吸収・保持されるとともに、防漏性に優れたバックシートによって、排泄物のおむつ外部への漏洩が防止されるというものである。
【0003】
しかしながら、前記のような構成の使い捨ておむつでは、尿についてはトップシートを透過するものの、便についてはその殆どがトップシートを透過せず、トップシート上に残存することになる。トップシート上に残存した便は、着用者の股下部や臀部に付着するため、煩瑣な払拭作業が必要となり、育児負担や介護負担を増大させる原因となる他、着用者のスキントラブルの原因ともなっていた。
【0004】
そこで、吸収体の一部に便を収容可能な凹部を形成した使い捨て衛生吸収物品や使い捨ておむつが提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。また、着用者の肌の非当接側に下方に延びる大便収容袋が取り付けられた使い捨ておむつが提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらの使い捨ておむつ等では、着用者の排泄した便が前記凹部ないし大便収容袋に収容されるように構成されている。
【0005】
また、トップシートの上部に更にもう1枚のシート体(本明細書では、「スキンコンタクトシート」と称することにする)が配置された使い捨ておむつも提案されている(例えば、特許文献4又は5参照)。これらの使い捨ておむつでは、スキンコンタクトシートに便を通過させ得る開口部(便通過用開口部)が形成されており、その便通過用開口部を通過して着用者の排泄した便がトップシート上に落下するように構成されている。
【0006】
【特許文献1】実開平6−5614号公報
【特許文献2】特許第3012472号公報
【特許文献3】特開2002−253609号公報
【特許文献4】実用新案登録第2559050号公報
【特許文献5】特開2002−11044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの文献に記載された使い捨ておむつ等においては、排泄された便が凹部や収納袋或いはスキンコンタクトシートの下の空間に収容されるため、便が着用者の肌に直接接触する機会を減少させる効果を期待することができる。
【0008】
しかしながら、これらの文献に記載された使い捨ておむつ等は、いわゆる固形便を捕捉することを念頭に設計されたものであり、軟便や水様便を捕捉するのに適した構造であるとは言えなかった。従って、軟便や水様便に関してはうまく捕捉することができず、着用者が横臥している状態では、おむつの端部(特に背側または脚周り)から軟便や水様便の漏れが発生するおそれがあるという課題があった。また、軟便や水様便がトップシートやスキンコンタクトシート上に拡がると、着用者の肌の広範囲に便が付着するという課題があった。さらに、吸収体に凹部を形成したり、使い捨ておむつに収納袋やスキンコンタクトシートを付設することで使い捨ておむつの構造が複雑になり、その製造が困難になったり、製造コストが上昇したりするという課題もあった。
【0009】
このように、現在のところ、おむつ端部(特に背側または脚周り)からの軟便や水様便の漏れを有効に防止することができ、シンプルな構造で容易に製造することができる方策は未だ開示されておらず、そのような方策が切望されている。本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、おむつ端部(特に背側または脚周り)からの軟便や水様便の漏れを有効に防止することができ、また、着用者の肌への軟便や水様便の付着領域を最小限にくいとめることができ、さらに、シンプルな構造で容易に製造することができる吸収性物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下に示す特定の構成によって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下に示す吸収性物品が提供される。
【0012】
[1] 吸収体と、前記吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備え、前記トップシートの上面に、便受けシートをさらに備え、前記便受けシートの軟便流動速度Lが前記トップシートの軟便流動速度Lよりも小さい吸収性物品。
【0013】
[2] 前記便受けシートが疎水性の基材に複数の貫通孔が穿孔されたものである上記[1]に記載の吸収性物品。
【0014】
[3] 複数の貫通孔を穿孔前の前記便受けシートの軟便流動速度L’が前記トップシートの軟便流動速度Lよりも大きい上記[2]に記載の吸収性物品。
【0015】
[4] 前記便受けシートが、前記トップシート上において、少なくとも肛門に対向する領域に配置されている上記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸収性物品は、トップシートの上面に便受けシートを備えていることにより、端部(特に背側または脚周り)からの軟便や水様便の漏れを有効に防止することができる。また、便受けシートの軟便流動速度Lがトップシートの軟便流動速度Lよりも小さいことにより、軟便による汚染領域の拡大をくいとめることができ、着用者の肌への汚物の付着範囲を減少させることができる。さらに、本発明の吸収性物品は、シンプルな構造で容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[1]本発明の吸収性物品の構成:
図1および図2に示すように、本発明の吸収性物品1は、吸収体22と、前記吸収体22の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシート18と、前記吸収体22の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシート20とを備え、前記トップシート18の上面に、便受けシート50をさらに備えて構成されているものである。
【0019】
吸収性物品の一実施態様である使い捨ておむつの着用時には、通常、着用者の肌はおむつのトップシートの表面に直接接触しており、排泄された軟便や水様便(以下、「水様便」と略記する)が吸収されるべきトップシート表面の大部分が閉塞された状態になっていると言える。従って、水様便が排泄されると、その水様便は着用者の臀溝とおむつのトップシートとによって区画される極めて狭い空間を伝っておむつの前後方向に急激に拡散してしまい、おむつ端部(特に背側の端部)から漏れが発生することになるのである。また、着用者の動きにより、体とおむつの間にできる隙間から漏れる場合もある。
【0020】
これに対し、本発明の吸収性物品においては、トップシートの上面に便受けシートが付設されている。この構成により、シート材の表面に水様便が排泄されると、その水様便は便受けシート表面を透過して速やかに便受けシート中に移行する。便受けシート中に移行した水様便は、便受けシート中で緩やかに拡散することになる。また、この際、トップシートの表面は着用者の肌によって閉塞されてはいないので、その表面全体で水様便を吸収することができる。
【0021】
本発明の吸収性物品は、前記のような仕組みによって、水様便のおむつ等の端部(特に背側の端部)からの漏れを有効に防止することができる。この効果は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に便受けシートを付設することのみによって得られるので、使い捨ておむつ等の構造を複雑化させることがない。また、便受けシートは単純な構造であり、製造も容易で安価に製造することができる。従って、極めて簡便かつ安価に水様便の漏れ対策を講ずることができる。また、尿についても便受けシートを速やかに透過してトップシートに移行するので、水様便や軟便のみならず、尿が排泄された場合でも、その吸収性に問題を生ずることはない。
【0022】
[1−1]便受けシート:
本発明の吸収性物品は、その構成部材として便受けシートを備えている。この便受けシートは、使い捨ておむつ等のトップシートに代わり、着用者の肌に直接接触することになるシート状の部材である。便受けシートはその表面に水様便を滞留させることなく、速やかに使い捨ておむつ等のトップシート上に移行させることができる。
【0023】
便受けシートの構成は特に限定されるものではないが、水様便や軟便のような懸濁液を透過させ得る液透過性を備えたシートが好ましい。詳しくは、撥水性および親水性のシートが使用可能である。これらのシートの液透過速度を適宜調節して、所望の液透過性を備えたシートとすることができる。液透過速度に影響を与えるものとしては、素材の親水度、穴の大きさ、穴数、嵩密度等があげられ、これらを適宜選択することにより、液透過速度を調整することができる。具体的には、このような液透過性を備えたシートとしては、貫通孔が穿孔されたパンチングシートによって構成することができる。このようなパンチングシートは、その貫通孔を使って液体を通過させることができ、水様便や軟便のような懸濁液を透過させ得る液透過性に優れるため好ましい。
【0024】
例えば、図1および2に示す便受けシート50aは、貫通孔52が穿孔されたパンチングシートとなっており、便受けシート50aの全体が液透過性シートとして構成された例である。なお、図1においては、貫通孔の平面形状は円形状となっているが、これに限定されない。楕円、矩形状等、公知の各種形状とすることができる。また、図1においては、便受けシート50a全面にわたって均一に貫通孔52が穿孔されているが、これに限定されない。貫通孔52を便受けシート50aの一部のみに配置しても良いし、貫通孔52を偏在して配置してもよい。
【0025】
このようにシートに貫通孔を穿孔して液透過性シートとする方法は、後述する不織布の目付け量を減ずることによって通液速度を確保する方法と比較して、目付け量等の不織布が本来的に有している性質や特性に拘らず、所定の通液速度を確保することができる。また、その貫通孔の面積や数によって通液速度を所望の値に制御可能である点において好ましい。
【0026】
貫通孔を穿孔するシートは液不透過性シート又は撥水性シートとすることが好ましい。このような構成とすることにより、一旦、便受けシートを通過してトップシートに流入した水様便が便受けシートを浸透して逆戻りする事態を有効に防止することができる。中でも、液体の透過性を低下させることができるのは勿論のこと、長時間着用した際にもさらっとした触感(ドライ性)を維持することができる撥水性シートが好ましく、通気性に優れ、肌触りも良好な撥水性の不織布シートを用いることが更に好ましい。
【0027】
液不透過性シートとしては、例えば、使い捨ておむつのバックシートの構成材料として用いられるポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる
【0028】
撥水性シートとしては、スパンボンド不織布やカードエンボス不織布等の不織布を用いてもよいが、耐水圧が高いという理由から、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)不織布、SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)不織布等の不織布を用いることが好ましい。
【0029】
また、便受けシートとしては、シートそのものが水様便や軟便のような懸濁液を透過させ得る液透過性を備えたものを採用することもできる。例えば、目が粗い不織布シートは、不織布を構成する繊維間の空隙を使って液体を通過させることができるため、エアスルー不織布、カードエンボス不織布、スパンボンド不織布等の従来公知の不織布の中から、そのような不織布を適宜選択して液透過性シートとして用いればよい。中でも、嵩高で空隙の多い処理を施し易いという理由からエアスルー不織布を好適に用いることができる。
【0030】
便受けシートとしては、パンチングシートや低目付けの不織布シートの他、シート自体がメッシュ状に構成されたメッシュシートを用いることも可能である。メッシュシートは、その網目状の空隙を使って液体を通過させることができ、水様便や軟便のような懸濁液を透過させ得る液透過性に優れるため好ましい。
【0031】
目付け量が大きく、嵩が高い不織布シートは、エアスルー不織布、カードエンボス不織布、スパンボンド不織布等の従来公知の不織布の中から、そのような不織布を適宜選択して用いればよい。中でも、嵩高で空隙の多い処理を施し易いという理由からエアスルー不織布を好適に用いることができる。
【0032】
なお、本発明の吸収性物品においては、便受けシートが1枚のシート材によって構成されている必要はない。具体的には、複数枚のシートを継ぎ合せたり、積層したりしたものを便受けシートとして使用してもよい。また、本発明の吸収性物品においては、便受けシートはトップシートの上面の全領域にわたって配置する必要はなく、少なくとも肛門に対向する領域に配置すればよい。このように構成することにより便受けシートを構成する素材の使用量を減らすことができ、経済性に優れる。少なくとも肛門に対向する領域は当業者が適宜選択し得るものである。
【0033】
[1−2]吸収体:
吸収体は、着用者の尿を吸収し、保持するための部材である。吸収体は、着用者の尿や体液を吸収し保持する必要から、吸収性材料によって構成される。
【0034】
吸収体を構成する吸収性材料としては、使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に通常使用される従来公知の吸収性材料、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す)、親水性シート等を挙げることができる。フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることが好ましい。
【0035】
これらの吸収性材料は、通常、単層ないしは複層のマット状として用いられる。この際、前記の吸収性材料のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部程度のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプの各マット中に均一に混合されていてもよいし、複層のフラッフパルプの層間に層状に配置されていてもよい。
【0036】
吸収体は、トップシートとバックシートの間の少なくとも一部に介装されることが好ましい。通常、吸収体は、トップシートとバックシートの間に挟み込まれ、その周縁部が封着されることによって、トップシートとバックシートとの間に介装される。従って、吸収体の周縁部にはトップシートとバックシートの間に吸収体が介装されていないフラップ部が形成されることになる。
【0037】
吸収体は、その全体が親水性シートによって包み込まれていることが好ましい。このような構成は、吸収体からSAPが漏洩することを防止し、吸収体に形状安定性を付与することができるという利点がある。
【0038】
吸収体の形状については特に制限はないが、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品において使用される形状、例えば、矩形状、砂時計型、ひょうたん型、T字型等を挙げることができる。
【0039】
[1−3−1]トップシート:
トップシートは、吸収体の上面(おむつの装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。トップシートは、その下面側に配置された吸収体に、着用者の尿を吸収させる必要から、その少なくとも一部(全部ないし一部)が液透過性材料により構成される。
【0040】
トップシートを構成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0041】
トップシートは単一のシート材によって構成されていてもよいが、複数のシート材によって構成されていてもよい。例えば、後述するテープ型おむつにおいては、おむつの中央部には液透過性材料からなるトップシート(センターシート)を配置し、おむつのサイドフラップ部分には撥水性材料からなるトップシート(サイドシート)を配置する形態がよく利用される。
【0042】
[1−3−2]便受けシートとトップシートとの関係:
本発明において、前記便受けシートの軟便流動速度Lは前記トップシートの軟便流動速度Lよりも小さい。さらに、L/L<0.8であるのが好ましく、L/L<0.5であるのが特に好ましい。
【0043】
図3は軟便流動速度の測定方法を示す模式的側面図である。30°の傾斜角の斜面54上にトップシート18と便受けシート50をこの順で配置する。トップシート18および便受けシート50上に10mlの擬似軟便56を10ml/secの速度でピペット58により滴下する。この際の擬似軟便滴下位置と滴下30秒後に擬似軟便が斜面に沿って到達した最先端位置との間の距離を軟便流動速度Lとする。なお、この際使用する軟便は次の組成を有する。
人工軟便組成 (重量)
ベントナイト 5.0%
マヨネーズ(市販品) 5.0%
残部は水(粘度が200cpsになるように調整)
【0044】
便受けシートの軟便流動速度Lとトップシートの軟便流動速度Lとの関係をL>Lとするには、次の方法がある。便受けシートの素材をトップシートの素材よりも通液速度のが大きい素材を選択すれば、軟便から水分を奪って流動性をさげることができ、嵩密度の低い素材や表面の目の粗い素材、表面に凹凸がある素材を選択して便を便受けシートに絡めて移動させにくくすることができる。より具体的には、便受けシートの素材をトップシートの素材よりも親水性の高い素材から選択するか、便受けシートの素材をトップシートの素材よりも目が粗い素材から選択するか、または、便受けシートの素材に貫通孔を穿孔したり、表面に凹凸をつけるため、エンボス加工、ひだ加工、しわ加工などをすればよい。
【0045】
本発明においてはまた、便受けシートは、不織布に複数の貫通孔を穿孔して形成するのが好ましい。この場合、複数の貫通孔を穿孔前の便受けシートの軟便流動速度Lはトップシートの軟便流動速度Lよりも大きいのが好ましい。このように構成すると、便受けシートの肌触りが良好なものとなる。
【0046】
便受けシートおよびトップシートの素材ならびに便受けシートに貫通孔を穿孔する場合には便受けシートに穿孔する貫通孔の大きさおよび便受けシートの表面積に対する貫通孔の面積の合計の比率(以下開口率という)の好ましい組み合わせは次の通りである。貫通孔の形状は、限定しないが円形、楕円などが好ましい。貫通孔の大きさは円形の場合、直径が2〜20mmの範囲が好ましい。楕円の場合、短径が2〜10mm、長径が5〜20mmが好ましい。また、開口率は、10〜50%が好ましい。特に、L/L<0.8を満足するためには、貫通孔が円形の場合、直径が5〜20mm、開口率は10〜50%の組み合わせとすればよい。さらに、L/L<0.5とするには貫通孔が円形の場合、直径が10〜20mm、開口率は20〜50%とすれば良い。
【0047】
[1−4]バックシート:
バックシートは、吸収体の下面(おむつの装着時において着用者の着衣側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0048】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0049】
なお、バックシートには、その外表面側にシート材(カバーシート)を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0050】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0051】
[1−5]吸収性本体:
2ピースタイプのおむつにおいては、トップシート、バックシート及び吸収体を、吸収・保持機能を担う「吸収性本体」という一つの部材として構成し、これとは別個に製造された外装部材と接合することにより使い捨ておむつを構成する。この吸収性本体は、生理用ナプキン等と同様に、吸収体の上面側にトップシート、下面側にバックシートが配置されたものであり、トップシートとバックシートとの間に吸収体が介装された構造となっている。本発明の使い捨ておむつは、例えば、図2に示す使い捨ておむつ1の吸収性本体14のように、トップシート18とバックシート20の間に吸収体22を挟みこみ、吸収体22の周縁部を封着することによって、トップシート18とバックシート20との間に吸収体22が介装された構造の吸収性本体を備えたものである。
【0052】
吸収性本体は、少なくともおむつの股下部をカバーするサイズに構成される。但し、漏れ防止の効果を確実なものとするため、股下部のみならず前身頃や後身頃の一部をもカバーする大きさに構成することが好ましい。吸収性本体は、例えばホットメルト接着剤等を用いて、外装部材に対して固定することができる。
【0053】
[1−6]外装部材:
外装部材は、着用者の身体を被包するための装着機能を担う部材であり、具体的には、前身頃、股下部及び後身頃の各部を形成するシート状の部材である。
【0054】
2ピースタイプのおむつでは、着用者の排泄物を吸収し、保持する吸収・保持機能については、専ら吸収性本体が果たすことになるので、外装部材を構成する材料として液不透過性材料を用いる必要はない。外装部材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維によって構成された不織布等を挙げることができる。
【0055】
そして、外装部材は、脚周り伸縮材等を挟み込んだ状態で固定するために、2枚以上の不織布を貼り合わせて構成されることが多い。例えば、図1および図2に示す使い捨ておむつ1は、外装部材16を2枚の不織布から構成し、その2枚の不織布の間にウエスト周り伸縮材42を挟み込み固定した例である。
【0056】
[1−7]立体ギャザー:
立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。この立体ギャザーを形成することにより、便受けシートの上に尿が排泄され、便受けシートを伝って尿が拡散してしまった場合でも、立体ギャザーが防波堤となり、おむつの脚周り開口部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0057】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に使用される構成を採用することができる。例えば、シート材の一部に伸縮材(立体ギャザー伸縮材)を配置し、その立体ギャザー伸縮材によってシート材にギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。
【0058】
立体ギャザーを構成するシート材としては、立体ギャザーの防漏性を向上させるという観点から、撥水性材料を用いる。撥水性材料としては、スパンボンドやカードエンボス等の不織布を用いてもよいが、耐水圧が高いという理由から、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)、SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)等の不織布を用いることが好ましい。
【0059】
立体ギャザーは、吸収性本体のトップシートやバックシート、或いは便受けシートを折り返すことにより形成することができる。しかしながら、立体ギャザーは、トップシート、バックシート等とは全く別個のシート材を貼り合わせて形成することがより好ましい。
【0060】
立体ギャザーは、尿の横漏れを防止するという目的から、便受けシート50の両側に形成されていることが好ましい。中でも、便受けシート50の両側縁部に沿って形成されていることが好ましい。こうすることにより、便受けシートの上に尿が排泄され、便受けシートを伝って尿が拡散してしまった場合でも、立体ギャザーが確実に防波堤としての機能を果たし、脚周り開口部からの横漏れを有効に防止することができる。
【0061】
例えば、図1および図2に示す使い捨ておむつ1の場合には、吸収性本体14の両側縁部まで便受けシート50が配置されており、立体ギャザー26a,26bをその便受けシート50の両側縁、即ち、吸収性本体14の両側縁に沿って形成した例である。なお、図1及び図2に示す使い捨ておむつ1は、立体ギャザー26a,26bが吸収性本体14の両側縁全域に渡って形成された例であるが、尿の横漏れを防止するという目的から、少なくともおむつの股下部に相当する部分に配置されていればよい。
【0062】
なお、使い捨ておむつにおいては、少なくとも一対の立体ギャザーが形成されていることが好ましいが、二対以上形成されていてもよい。
【0063】
[1−8]各種伸縮材:
使い捨ておむつにおいては、脚周り伸縮材を配置し、ウエスト周り伸縮材を配置することが一般的である。
【0064】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。
【0065】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0066】
なお、図1及び図2に示す使い捨ておむつ1は、脚周り開口部の周縁には脚周り伸縮材40を配置し、ウエスト周り開口部の周縁にはウエスト周り開口部の近傍にウエスト周り伸縮材42を配置した例である。
【0067】
これらの伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等をあげることができる。そして、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0068】
なお、「テープ型使い捨ておむつ」とは、図1および図2に示すように、吸収体と、吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えるとともに、前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成されており、後身頃の左右の各側縁から延出するように配置され、前身頃と後身頃とを固定するための止着テープ10を更に備え、止着テープによっておむつの前身頃と後身頃とを相互に固定し得る使い捨ておむつを意味するものとする。止着テープの先端側領域にはメカニカルファスナーのフック材46を、おむつの前身頃の部分にフロントパッチとしてメカニカルファスナーのループ材を配置してもよい。
【0069】
また、「パンツ型使い捨ておむつ」とは、前身頃と後身頃の対応する側縁部同士を接合することによって、一つのウエスト周り開口部及び一対の脚周り開口部が形成され、予めパンツ型に構成されたおむつを意味するものとする。
【0070】
更に、「1ピースタイプ」とは、トップシート、バックシート、吸収体を備えているが、吸収・保持機能を担う吸収体がトップシートとバックシートの間に介装(内蔵)され、装着機能を担うトップシート及び/又はバックシートと一体的に構成されたタイプのおむつを意味するものとする。
【0071】
一方、「2ピースタイプ」とは、着用者の排泄物を吸収し、保持する機能(吸収・保持機能)を担う吸収性本体と、着用者の身体を被包する機能(装着機能)を担う外装部材とから構成され、外装部材の内側に吸収性本体が配置されたタイプのおむつを意味するものとする。ここで「吸収性本体」とは、吸収体、トップシート及びバックシートを構成要素として備えた部材である。
【0072】
本発明の吸収性物品は、吸収体と、前記吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備え、前記トップシートの上面側に、便受けシートが付設されたものである。
【0073】
本発明の吸収性物品は、便受けシートが付設されている点に特徴があり、吸収性物品の本体の構造は前記吸収体、前記トップシート、前記バックシートを備えている限り、特に制限されるものではない。例えば、テープ型の使い捨ておむつであってもよいし、パンツ型の使い捨ておむつであってもよい。また、パンツ型使い捨ておむつの場合には、それが1ピースタイプのものであってもよいし、2ピースタイプのものであってもよい。更には、使い捨ておむつに限らず、尿パッド等であってもよい。
【0074】
[2]製造方法:
以下、本発明の使い捨ておむつを製造する方法の一例を、図1および図2に示す吸収性物品としての使い捨ておむつ1(2ピースタイプのテープ型おむつ)を製造する場合の例により説明する。
【0075】
[2−1]吸収性本体の製造:
バックシート20の上面に、親水性シートに包まれた吸収体22を配置し、更にその上面にトップシート18を配置する。次いで、吸収体22の周縁部をトップシート18とバックシート20とで挟み込むように封着することによって吸収性本体14を得る。
【0076】
[2−2]立体ギャザーの製造:
シート材32a(32b)の一方の端部を折り返し、その折り返し部分に、2本の立体ギャザー伸縮材36a、36b(36c,36d)を挟み込んだ状態で貼り合わせることによって、立体ギャザー26a(26b)を得る。
【0077】
[2−3]吸収性本体への便受けシートの付設:
吸収性本体14を構成するトップシート18の表面に、便受けシート50の両側端を貼り合わせる。次にバックシート20上に脚周り伸縮材40を配置し接着固定し、その上から立体ギャザー26a,bを固着する。
【0078】
[2−4]外装部材の製造:
まず、外装部材16となる不織布を2枚用意し、このうちの1枚の不織布の上面に、ウエスト周り伸縮材42を配置し接着固定する。次に、背側両側部に止着テープの端部を固定し、この上面に、更にもう1枚の不織布を積層し固定する。2枚の不織布の間に、ウエスト周り伸縮材42が介装され、止着テープ10が設けられた外装部材16を得る。
【0079】
前記のような一連の工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材や伸縮材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより、使い捨ておむつの連続製造が可能となり、生産性の向上に資する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の吸収性物品は、乳幼児用、或いは介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の使い捨ておむつ及びその補助部材として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつを展開し、おむつの吸収性本体側から見た状態を示す平面図である。
【図2】本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつの概略断面図であり、図1に示す使い捨ておむつをX−X’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図3】軟便流動速度の測定方法を示す模式的側面図である。
【符号の説明】
【0082】
1:吸収性物品(使い捨ておむつ)、2:前身頃、4:股下部、6:後身頃、10:止着テープ、14:吸収性本体、16:外装部材、18:トップシート、20:バックシート、22:吸収体、26,26a,26b:立体ギャザー、36,36a,36b,36c,36d:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、46:フック材、50:便受けシート、52:貫通孔、54:斜面、56:擬似軟便、58:ピペット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備え、
前記トップシートの上面に、便受けシートをさらに備え、
前記便受けシートの軟便流動速度Lが前記トップシートの軟便流動速度Lよりも小さい吸収性物品。
【請求項2】
前記便受けシートが複数の貫通孔が穿孔されたものである請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
複数の貫通孔を穿孔前の前記便受けシートの軟便流動速度L’が前記トップシートの軟便流動速度Lよりも大きい請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記便受けシートが、前記トップシート上において、少なくとも肛門に対向する領域に配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−28211(P2009−28211A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194288(P2007−194288)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】