説明

吸収性物品

【課題】内部の蒸気を外部に放出して、湿潤感を低下させることができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】前ウエスト域1および後ウエスト域2を構成するベルト部材4と、股下域3を構成する吸液構造体5とを含み、ベルト部材4は周方向Rに収縮付勢するウエスト弾性部材18を有する。吸液構造体5の第1端部24の外面が第1重層域26を介して前ベルト部6の内面と重なり合い、第2端部25の外側が第2重層域を27介して後ベルト部7の内面と重なり合っている。ウエスト弾性部材18は、第1および第2重層域26,27に重なり、第1および第2重層域26,27では、高さ方向Zに延びるとともに周方向Rに間欠的に並ぶ接合部32によって吸液構造体5と前後ベルト部6,7が接合されている。接合部32間に位置する第1非接合部45によって股下域3と前後ウエスト域1,2とを連通する通気路34,35が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に関し、さらに詳しくは使い捨てのおむつ、排便トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てのおむつにおいて、おむつ内部の蒸気を外部に放出させる構成として、例えば特開昭59−144601号公報(特許文献1)が公知である。
この特許文献1によれば、おむつは身体側に位置する表面シートと、着衣側に位置する裏面シートとを有し、これら表裏面シートの間であってウエスト開口部に、ウエスト周方向に付勢可能な弾性フィルムを備えている。表裏面シートと弾性フィルムとは幅方向に間欠的に接合している。表裏面シートと弾性フィルムとの非接合部においては、弾性フィルムの収縮により表裏面シートが撓み、表裏面シート間に開口チャネルが形成される。この開口チャネルを介して、おむつ内部の蒸気を外部へと導いている。
【特許文献1】特開昭59−144601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のおむつでは、開口チャネルの一方の端部がおむつ外部に臨み、他方の端部が吸液構造体に隣接する領域に臨んでいる。すなわち、開口チャネルの他方の端部は吸液構造体には達していない。したがって、この開口チャネルは、ウエスト開口部と吸液構造体との間のウエスト開口部近傍の蒸気を外部に放出することはできても、体液を吸収した吸液構造体から発生する股下域の蒸気までをも外部に放出することは困難であった。したがって、体液が排泄された後の股下域では湿潤感が強くなることを避けられないという問題があった。
【0004】
本願発明では、内部の蒸気を外部に放出して、湿潤感を低下させることができる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高さ方向と前後方向と周方向と、身体側内面と着衣側外面と、前ウエスト域および後ウエスト域を構成し前記周方向に環を形成するベルト部材と、前記前後ウエスト域間に位置する股下域を構成する吸液構造体とを含み、前記ベルト部材は前記周方向に収縮付勢するウエスト収縮手段を有する吸収性物品の改良に関わる。
【0006】
本発明は、前記吸収性物品において、前記吸液構造体は、前記前後方向に対向離間する第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部の外面が第1重層域を介して前記前ウエスト域の前記ベルト部材の内面と重なり合い、前記第2端部の外面が第2重層域を介して前記後ウエスト域の前記ベルト部材の内面と重なり合い、前記ウエスト収縮手段は、前記第1重層域または第2重層域の少なくともいずれか一方の一部に重なり、前記吸液構造体と前記ベルト部材とは、少なくとも前記ウエスト収縮手段と前記第1または第2重層域とが重なった部分では、前記高さ方向に延びるとともに前記周方向に間欠的に並ぶ接合部によって接合され、前記接合部間に位置する第1非接合部によって前記股下域と前記前後ウエスト域とを連通する通気路が形成されることを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記通気路は、前記吸液構造体の前記内面と着用者の身体との間に形成される第1通気路と、前記吸液構造体の前記外面と前記ベルト部材の前記内面との間に形成される第2通気路とを含む。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記第1および第2重層域は、前記縦方向に対向離間する上下端縁と、前記周方向に対向離間する両側縁とによって画成され、前記上下端縁の少なくともいずれか一方において第2非接合部が形成される。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記接合部は、前記縦方向に連続して接合される連続接合部と、前記縦方向に離間して接合される間欠接合部とを含む。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、記連続接合部は、前記第1および第2重層域の前記両側縁の近傍に形成され、前記間欠接合部は、一方の前記側縁に形成された前記連続接合部と他方の前記側縁に形成された前記連続接合部との間に形成される。
【0011】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記間欠接合部は、前記第1および第2重層域の前記両側縁の近傍に形成され、前記連続接合部は、一方の前記側縁に形成された前記間欠接合部と他方の前記側縁に形成された前記間欠接合部との間に形成される。
【0012】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記ベルト部材は、その厚さ方向に貫通する複数の通気孔を形成する。
【0013】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記吸液構造体は、前記身体側内面に位置する表面シートと、前記着衣側外面に位置する裏面シートと、これら表裏面シートの間に介在する吸液性コアと、前記第1端部および第2端部の少なくともいずれか一方を覆うカバーシートとを含み、前記カバーシートの通気度が0.15kPa・S/m以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、ベルト部材には周方向に収縮可能なウエスト収縮手段を備え、吸液構造体とベルト部材とが重なり合った第1および第2重層域は、高さ方向に延びるとともに周方向に間欠的に並ぶ接合部によって接合している。接合部間に位置する非接合部において股下域と前後ウエスト域とを連通する通気路を形成している。この通気路を介して股下域の蒸気が吸収性物品の外部に放出されるので、内部の湿潤感を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜5は、本発明の吸収性物品の一例としての使い捨ておむつについての第1の実施形態を示したものである。図1はおむつが着用されたときの状態を示したものであり、説明しやすいようにその一部を切り欠いている。図示したように、おむつは前ウエスト域1および後ウエスト域2を構成し周方向Rに環を形成するベルト部材4と、前後ウエスト域1,2間に位置する股下域3を構成する吸液構造体5とを含む。
【0016】
ベルト部材4は、前ウエスト域1に位置する前ベルト部6と、後ウエスト域2に位置する後ベルト部7とを有し、これら前後ベルト部6,7の周方向Rの側縁8,9の対向面が重なり合い、高さ方向Zに間欠的並ぶ複数の側縁接合部10によって形成されたシーム部11を有する。このように側縁接合部10で前後ベルト部6,7が接合されることにより、ウエスト開口が画成される。
【0017】
前ベルト部6は身体側内面12を構成する内面シート14と着衣側外面13を形成する外面シート15とを含み、これら内外面シート14,15の間にウエスト収縮手段としての糸状のウエスト弾性部材18を備えている。内外面シート14,15は一枚の繊維不織布から形成され、ウエスト側開口端19で折り返されて、ウエスト弾性部材18を挟んでいる。
同様に、後ベルト部7は、内外面シート16,17と、これら間に介在するウエスト弾性部材18とを含み、内外面シート16,17は一枚の繊維不織布をウエスト側開口端19で折り返したものである。繊維不織布としては、スパンボンド法、メルトブローン法、ポイントボンド法、スルーエア法などにより得られた一般的なものを用いることができる。
【0018】
ウエスト弾性部材18は、周方向Rに延びており、前後ベルト部6,7のウエスト側開口端19から股下側開口端20に亘って高さ方向Zに間欠的に複数条配置されている。このウエスト弾性部材18は、伸長状態で取り付けられ、ベルト部材4を周方向Rに収縮付勢する。これらウエスト弾性部材18の高さ方向Zの間隔は8〜10mmであることが好ましく、周方向Rに1.5から3.0倍に伸長させて配置することができる。
ウエスト弾性部材18は内外面シート14,15の少なくとも一方あるいは内外面シート16,17の少なくとも一方に接着剤(図示せず)を介して接合している。
【0019】
吸液構造体5は、身体側内面12を構成する透液性表面シート21と、着衣側外面13を構成する不透液性裏面シート22と、これら表裏面シート21,22の間に介在し図示しないティッシュペーパ等で包まれた吸液性コア23とを含み、吸液性コア23は表裏面シート21,22の少なくともいずれか一方に固着される。裏面シート22として透湿性かつ不透液性のフィルムを用いることができるが、この場合には、スパンボンド法やスルーエア法などにより得られた繊維不織布を別に張り合わせて、肌触りを向上させることもできる。
【0020】
吸液構造体5は、股下域3を前後方向Yに延びるとともに、前後方向Yに対向離間する第1端部24と第2端部25とを含む。第1端部24の不透液性裏面シート22を前ベルト部6の内面シート14に重ね合わせて第1重層域26を形成し、第2端部25の不透液性裏面シート22を後ベルト部7の内面シート16に重ね合わせて第2重層域27を形成している。第1重層域26および第2重層域27では、接合部32によって前後ベルト部6,7と吸液構造体5とを接合し、これら接合により前後ベルト部6,7の股下側開口端20と吸液構造体5の前後方向Yに延びる一対の側縁28とが脚周り開口29を形成する。
【0021】
図2は図1の側縁接合部10をはずし、おむつを前後方向Yに展開して得られる平面図である。この図2では、ウエスト弾性部材18および股下弾性部材31は伸長状態にあり、収縮付勢しない状態を示している。
図示したように、吸液構造体5の表裏面シート21,22はほぼ矩形を有し、吸液性コア23はほぼ砂時計形を有している。すなわち、吸液性コア23は、前後方向Yを二等分する横中心線Q近傍においては、第1端部24および第2端部25よりもその幅方向Xの距離が短くなるように湾曲して切り欠かれている。
【0022】
吸液構造体5の両側縁28では、表裏面シート21,22が吸液性コア23から延出して対向し、サイドフラップ30が形成されるが、吸液性コア23が砂時計形を有することによって、横中心線Q近傍ではサイドフラップ30の面積が大きくなるようにしている。表裏面シート21,22間には両側縁28に沿って前後方向Yに延びる股下弾性部材31が伸長状態で配置されている。この股下弾性部材31の収縮によって、両側縁28が着用者の脚周りに密着し、サイドフラップ30によって脚周りとおむつの脚周り開口29との間から尿などの排泄物が漏れるのを防止している(図1参照)。
【0023】
第1および第2重層域26,27は、前後ベルト部6,7の幅方向Xに対してほぼ中心部に形成され、前後ベルト部6,7の左右側には、両側縁部8,9を含む吸液構造体5が接合されない部分が形成される。
第1および第2重層域26,27の前後方向Yの長さは、前ベルト部6のウエスト側開口端19から後ベルト部7のウエスト側開口端19までの全長の約85%を占める。
【0024】
第1重層域26は前後方向Yに対向離間する上下端縁40,41と、周方向Rに対向離間する両側縁44とによって画成され、第2重層域27は前後方向に対向離間する上下端縁42,43と、周方向Rに対向離間する両側縁44とによって画成される。第1重層域26の上端縁40は吸液構造体5の第1端部24に相当し、下端縁41は前ベルト部6の股下側開口端20に相当する。両側縁44は、吸液構造体5の側縁部28に相当する。第2重層域27の上端縁42は吸液構造体5の第2端部25に相当し、下端縁43は後ベルト部7の股下開口端20に相当する。両側縁44は、吸液構造体5の側縁部28に相当する。
【0025】
第1および第2重層域26,27では、吸液構造体5の裏面シート22と、前後ベルト部材6,7の内面シート14,16とを接着剤によって接合部32で接合している。接合部32は幅方向Xに間欠的に並び、接合部32間に接着剤が存在しない第1非接合部45を形成している。各接合部32の幅方向Xの寸法は3〜50mmであることが望ましい。この寸法が3mmよりも短いときには十分な接着性が得られず、シートが剥がれやすくなり、50mmよりも長いときには接合部32間の距離を十分にとることができず、第1非接合部45の幅方向Xの十分な長さを確保することができない。第1非接合部45の幅方向Xの寸法は3〜15mmであることが望ましい。この寸法が3mmよりも短いときには、第1非接合部45によって形成される後述の通気路の形成が困難となり、15mmよりも長いときには接合部32の幅を十分にとることができない。
【0026】
第1および第2重層域26,27の上下端縁40,41および42,43近傍では接着剤が存在しない第2非接合部46,47を形成している。これら第2非接合部46,47は、第1および第2重層域26,27の幅方向X全域に亘って延びている。上下端縁40,41,42,43から接合部32の前後方向Yの端部までの寸法は、約10mmとしている。この寸法は、上下端縁40,41,42,43のめくれを考慮したものであり、この数値に限定されることなく、5mm以上30mm以下であればよい。
【0027】
ウエスト側開口端19から股下側開口端20までの前後方向Yの全域に亘って、ウエスト弾性部材18が配設されている。したがって、第1および第2重層域26,27の前後方向Yの全域に亘ってウエスト弾性部材18が厚さ方向に重なるようになる。またウエスト弾性部材18が左右の側縁部8,9の幅方向Xの全域に亘って配設されているから、第1および第2重層域26,27の両側縁28の幅方向Xの全域にわたってウエスト弾性部材18が重なるようになる。したがって、第1および第2重層域26,27の全域に、ウエスト弾性部材18の収縮力が作用する。
第1および第2重層域26,27には、吸液性コア23の前後方向Yに対向離間する一方の端部23aおよび他方の端部23bも位置させるようにして、吸液性コア23にもウエスト弾性部材18の収縮力を作用させている。
【0028】
図3は、図2のIII−III線断面図である。この図は前ウエスト域1を示したものであるが、後ウエスト域2でもその構成は同じであるので、この図を用いて同時に説明する。図3(a)はウエスト弾性部材18の伸長状態を示したものであり、図示したように、前後ベルト部6,7の裏面シート15,17と内面シート14,16との間に、ウエスト弾性部材18を図示しない接着剤で接合している。内面シート14,16と吸液構造体5の裏面シート22とを、間欠的に並んだ接合部32で接合している。接合部32間には第1非接合部45が形成される。
【0029】
図3(a)からウエスト弾性部材18を矢印方向へと収縮させたのが図3(b)に示す状態である。ウエスト弾性部材18が収縮すると、第1非接合部45における表裏面シート21,22および吸液性コア23が撓んで図面上方である身体側に突出し、表面シート21と身体との間に複数の溝状の第1通気路34が形成される。第1通気路34どうしの間には、突出した複数条の頂部38が形成され、この頂部38が着用者の身体に当接する。頂部38が着用者に当接し、溝状の第1通気路34が当接しないので、この第1通気路34が着用者との間で空洞を形成することができる。また、この第1非接合部45において吸液構造体5が身体側に突出することで、前後ベルト部16,17の内面シート14,15と吸液性構造体5の裏面シート22との間には複数の筒状の第2通気路35も同時に形成される。
【0030】
図4は図2のIV−IV線断面図であり、接合部32上で切断したものである。図は着用状態での前ウエスト域1について示しているが、後ウエスト域2でも同様であるので、同時に説明する。図示のように、第1通気路34は、接合部32に沿って形成され、第1および第2重層域26,27の第1および第2端部24,25から股下側開口端20に亘って高さ方向に延びる。したがって、第1通気路34の一端34aは前後ウエスト域1,2に臨み、他端34bは股下域3に臨む。第1通気路34は、股下域3の蒸気を着用者37の腹または背中を伝って前後ウエスト域1,2に導くことができる。
【0031】
図5は図2のV−V線断面図であり、第1非接合部45上で切断したものである。図は着用状態での前ウエスト域1について示しているが、後ウエスト域2でも同様であるので、同時に説明する。第2通気路35は、第1非接合部45に沿って形成される。この第2通気路35は第2非接合部46,47を介して、その一端35aを前後ウエスト域1,2に臨ませ、他端35bを後ウエスト域3に臨ませるとともに前後ベルト部6,7の股下側開口端20からおむつ外部に臨ませている。すなわち、第1および第2重層域26,27の上下端縁40,41および42,43では、おむつ内部の蒸気を、第2非接合部46を介して第2通気路35に導き、第2非接合部47を介して、図面上方から下方へとおむつ外部に放出することができる。
【0032】
この発明によれば、股下域3の蒸気は第1通気路34を介して前後ウエスト域1,2に導かれ、前後ウエスト域1,2の蒸気は第2通気路35を介しておむつ外部に放出される。したがって、排泄された尿が吸液性コア23に吸収され、股下域3を中心におむつ内の湿度が上昇しても、第1通気路34および第2通気路35を介して蒸気を外部に放出することができるので、おむつ内の湿潤感を低下させることができる。
第1通気路34および第2通気路35は、吸液構造体の表裏面シート21,22および吸液性コア23によって形成され、特に吸液性コア23が他のシートに比べると高剛性であることから、第1および第2通気路34,35が体圧等によってつぶされにくい。
【0033】
第1および第2重層域26,27の上下端縁40,41,42,43の近傍では、第1および第2重層域26,27の幅方向X全域に亘って第2非接合部46,47を形成している。この第2非接合部46,47によって、第2通気路35どうしを連通させることができる。したがって、第2通気路35の一端35aあるいは他端35bの一部が身体の動きによってふさがれたとしても、第2非接合部46,47を介して他の第2通気路35に連通可能なので、通気能力を低下させることがない。
【0034】
この発明において、ウエスト収縮手段としてウエスト弾性部材を用いているが、例えば弾性シートなど、他の手段を用いてもよい。また、ベルト部材そのものを伸縮性不織布などで形成したり、伸縮性不織布と非伸縮性不織布とを組み合わせたシートで形成したりして、ベルト部材がウエスト収縮手段を兼ねるようにしてもよい。
ウエスト弾性部材18はベルト部材4のほぼ全域に亘って配置しているが、その一部において配置されているものであってもよい。ただし、少なくとも吸液構造体5との第1重層域26あるいは第2重層域27の一部に重なることによって、この吸液構造体5に収縮力を付与させるものでなければならない。第1および第2重層域26,27の幅方向Xの全域に亘ってウエスト弾性部材18の収縮力を作用させることによって、その幅方向においてはより多くの通気路を形成することができ、その分、通気量を多くすることができる。
【0035】
第1および第2重層域26,27の上下端部40,41,42,43に第2非接合部46を形成しているが、これが形成されていなくてもよい。すなわち、第1通気路34および第2通気路35を第1および第2重層域26,27の前後方向Yの全域に亘って形成し、股下域3と前後ウエスト域1,2とを第1非接合部45で直接連通するようにしてもよい。第1通気路34においては股下域3の蒸気を前後ウエスト域1,2に放出することができ、第2通気路35においては前後ウエスト域1,2の蒸気をおむつ外部に放出することができるものであればよい。
接合部32では、接着剤としてホットメルト接着剤を用いて前後ベルト部6,7と吸液構造体5とを接合しているが、他の接着剤でもよいし、接着剤のほかに、例えば超音波によって接合するようにしてもよい。
【0036】
図6は、この発明の第2の実施形態を示したものであり、図2と同様な平面図であって、第1重層域26を拡大したものである。第2重層域27でも同じ構成であるので、この図を使用して同時に説明する。この第2の実施形態においては、接合部が前後方向に連続して接合される連続接合部48と、前後方向に離間して接合される間欠接合部49とを含むことを特徴とする。この特徴以外の他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、この同様の構成についての詳細な説明を省略する。
【0037】
連続接合部48は、第1および第2重層域26,27の両側縁44の近傍に各一条ずつ形成され、間欠接合部49は、一方の側縁44に形成された連続接合部48と他方の側縁44に形成された連続接合部48との間に形成されている。間欠接合部49は、第1部49aと第2部49bとに分割され、これら第1部49aと第2部49bとは前後方向Yのほぼ中央で離間している。第1部49aと第2部49bとの離間寸法は約5mmであり、3mm〜10mmの範囲にあることが望ましい。離間寸法が3mmよりも短くなると十分な通気をすることができず、10mmよりも長くなると接合強度が不足するからである。
【0038】
間欠接合部49を設けることにより、第1非接合部45どうしを第1および第2重層域26,27の前後方向Yのほぼ中央で連通することができる。すなわち、第1非接合部45によって形成された第2通気孔34どうしが間欠接合部49の離間部分で連通される。したがって、第2通気孔34が上下端縁40,41および42,43側でふさがってしまった場合であっても、その中央で他の第1非接合部45と連通し、股下域3の蒸気をおむつの外部に放出することができる。股下域3の一部において蒸気が放出されずに、部分的に湿潤するのを防止することができる。
【0039】
連続接合部48を両側縁44に形成することによって、蒸気が幅方向Xの外側へと漏れるのを防止し、蒸気が第2通気孔34を介しておむつ外部へと放出されるようにしている。この実施形態では連続接合部48を両側縁44に各一条ずつ形成しているが、これに限ったものではなく、二条以上あってもよく、蒸気の幅方向Xへの漏れを防止できればよい。
【0040】
この実施形態では、両側縁44に連続接合部48を形成しているが、図7に示したように両側縁44に間欠接合部49を形成するようにしてもよい。この図7の態様では、一方の側縁44に形成した間欠接合部49と、他方の側縁44に形成した間欠接合部49との間に複数の連続接合部48を形成している。また、連続接合部48と間欠接合部49とを幅方向Xに対して交互に形成するようにしてもよい。間欠接合部49を形成することによって、前後方向Yに延びる第1非接合部45どうしを連結することができるから、この第1非接合部45によって形成される第2通気路35どうしを連結することができる。第2通気路35は幅方向Xに向かって連通され、その上下端縁40,41側がふさがれた場合であっても、この連通を介して蒸気をおむつ外部に放出することができる。
【0041】
図8,9は、この発明の第3の実施形態を示したものである。図8はこの実施形態におけるおむつ全体の斜視図であり、図9は図3(b)と同様な端面図である。この第3の実施形態においては、ベルト部材4に、その厚さ方向に貫通する複数の通気孔36を備えたことを特徴とする。この特徴以外の他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同様の構成についての詳細な説明を省略する。
【0042】
前後ベルト部6,7の内外面シート14,15および内外面シート16,17の全域に亘って、これらを貫通する複数の通気孔36を形成している。この通気孔36は、図9のように第1非接合部45に設けるのが望ましい。接合部32の接着剤によって通気孔36がふさがれるのを防止するためである。通気孔36は直径1〜2mm程度であることが好ましく、前後ベルト部6,7に配設されたウエスト弾性部材18に重ならないように形成することが望ましい。
このように通気孔36を形成することによって、第2通気路35に導かれた蒸気を、通気孔36を介しておむつ外部に放出することができ、おむつ内の湿潤感をより一層軽減することができる。
【0043】
図10は、この発明の第4の実施形態を示したものである。この第4の実施形態では、吸液構造体5の第1端部24および第2端部25にカバーシート50を取り付け、吸収性コア23が表裏面シート21,22の間からこぼれ出るのを防止することを特徴とする。その他の構成については第1の実施形態と同様であるので、その構成についての詳細な説明を省略する。
【0044】
カバーシート50は、通気度が0.113kPa・S/mであり、抗菌性を備える吸汗性シートで形成され、第1および第2端部24,25を覆って前後ベルト部6,7の内面シート14,16に固着されている。カバーシート50は、幅方向Xに対向離間する両側部50cと、前後方向Yに対向離間する一方の端部50aと他方の端部50bとを含んでいる。幅方向Xの一方の側部50cから他方の側部50cまでの寸法は、後ベルト部6,7の幅方向Xの寸法、すなわち一方の側縁8,9から他方の側縁8,9までの寸法とほぼ等しくしている。
【0045】
一方の端部50aは、その全部を内面シート14,16に対向させ、この対向面で接着又は溶着により接合されている。他方の端部50bは、その中央付近で第1又は第2端部24,25に重なり、両側部50c付近では内面シート14,16に重なり、それぞれ接着又は溶着により接合されている。すなわち、カバーシート50は第1および第2端部24,25を跨いで、その一方の端部50aを内面シート14,16に接合し、他方の端部50bを吸液構造体5の表面シート21と内面シート14,16とに接合することにより、第1および第2端部24,25を覆っている。したがって、第1および第2端部24,25どうしの接合が部分的に外れたような場合でも、吸液性コア23がこぼれ出てくるのを防止することができる。吸液性コア23は親水性パルプや超吸収ポリマー等で構成され、これら構成物が第1および第2端部24,25からこぼれ出ると肌に刺激を与えてしまう。特にポリマーは粒子が小さく、僅かな隙間からでもこぼれ出てしまうが、カバーシート50を備えることによって、パルプやポリマーがこぼれ出るのを防止することができる。
【0046】
この実施形態によれば、カバーシート50で第2通気路35の一端35aがふさがれることになるが、カバーシート50の通気度を0.113kPa・S/mとしているので、第2通気路35の通気が妨げられることはない。通気度は前記の値に限定されるものではなく、0.15kPa・S/m以下であれば第2通気路35の通気を妨げることなく、吸液性コア23がこぼれ出るのを防止することができる。
通気度は、フラジール形法に基づき測定した。
【0047】
カバーシート50の幅方向Xの寸法と、前後ベルト部6,7の幅方向Xの寸法とを等しくしているので、おむつの製造工程において、カバーシート50と前後ベルト部6,7とを重ねた状態で同時に切断することができる。したがって、製造工程を短縮することができる。
カバーシート50は抗菌性を備える吸汗性シートであるので、吸液性コア23のこぼれ防止だけでなく、着用者の汗を吸収し着用感を良好に保つことができる。カバーシート50は前後ベルト部6,7の側縁8,9に亘って形成されているので、カバーシート50が着用者のウエストを一周して着用者の汗を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のおむつを展開したときの平面図。
【図3】(a)図1のIII−III線拡大断面図であり、ウエスト収縮手段が伸長状態にあるときを示したものである。(b)図3(a)からウエスト収縮手段が収縮した状態にあるときを示したものである。
【図4】図2のIV−IV線断面図。
【図5】図2のV−V線断面図。
【図6】第2の実施形態を示す第1および第2重層域の拡大図。
【図7】第2の実施形態の異なる態様の例を示す図6と同様な図。
【図8】第3の実施形態を示す斜視図。
【図9】第3の実施形態を示す図3(b)と同様な図。
【図10】第4の実施形態のおむつを展開したときの平面図。
【符号の説明】
【0049】
1 前ウエスト域
2 後ウエスト域
3 股下域
4 ベルト部材
5 吸液構造体
12 身体側内面
13 着衣側外面
18 ウエスト弾性部材(ウエスト収縮手段)
24 第1端部
25 第2端部
26 第1重層域
27 第2重層域
32 接合部
34 第1通気路
35 第2通気路
45 第1非接合部
46,47 第2非接合部
48 連続接合部
49 間欠接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向と前後方向と周方向と、身体側内面と着衣側外面と、前ウエスト域および後ウエスト域を構成し前記周方向に環を形成するベルト部材と、前記前後ウエスト域間に位置する股下域を構成する吸液構造体とを含み、前記ベルト部材は前記周方向に収縮付勢するウエスト収縮手段を有する吸収性物品において、
前記吸液構造体は、前記前後方向に対向離間する第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部の外面が第1重層域を介して前記前ウエスト域の前記ベルト部材の内面と重なり合い、前記第2端部の外面が第2重層域を介して前記後ウエスト域の前記ベルト部材の内面と重なり合い、
前記ウエスト収縮手段は、前記第1重層域または第2重層域の少なくともいずれか一方の一部に重なり、
前記吸液構造体と前記ベルト部材とは、少なくとも前記ウエスト収縮手段と前記第1または第2重層域とが重なった部分では、前記高さ方向に延びるとともに前記周方向に間欠的に並ぶ接合部によって接合され、前記接合部間に位置する第1非接合部によって前記股下域と前記前後ウエスト域とを連通する通気路が形成されることを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
前記通気路は、前記吸液構造体の前記内面と着用者の身体との間に形成される第1通気路と、前記吸液構造体の前記外面と前記ベルト部材の前記内面との間に形成される第2通気路とを含む請求項1に記載の吸液性物品。
【請求項3】
前記第1および第2重層域は、前記縦方向に対向離間する上下端縁と、前記周方向に対向離間する両側縁とによって画成され、
前記上下端縁の少なくともいずれか一方において第2非接合部が形成される請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記接合部は、前記縦方向に連続して接合される連続接合部と、前記縦方向に離間して接合される間欠接合部とを含む請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記連続接合部は、前記第1および第2重層域の前記両側縁の近傍に形成され、前記間欠接合部は、一方の前記側縁に形成された前記連続接合部と他方の前記側縁に形成された前記連続接合部との間に形成される請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記間欠接合部は、前記第1および第2重層域の前記両側縁の近傍に形成され、前記連続接合部は、一方の前記側縁に形成された前記間欠接合部と他方の前記側縁に形成された前記間欠接合部との間に形成される請求項4または5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ベルト部材は、その厚さ方向に貫通する複数の通気孔を形成する請求項1〜6のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸液構造体は、前記身体側内面に位置する表面シートと、前記着衣側外面に位置する裏面シートと、これら表裏面シートの間に介在する吸液性コアと、前記第1端部および第2端部の少なくともいずれか一方を覆うカバーシートとを含み、前記カバーシートの通気度が0.15kPa・S/m以下である請求項1〜7のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−61127(P2009−61127A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232015(P2007−232015)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】