吸収性物品
【課題】 消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制する吸収性物品を提供する。
【解決手段】 本発明は、表面シート10と、表面シート10よりも非着用者側に設けられる裏面シート20と、着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品1の中央部分、かつ表面シート10と裏面シート20との間に設けられ、少なくとも付加機能を提供する機能性材料(例えば、漢方薬材料)を含む機能性吸収体310とを備える吸収性物品1であって、機能性吸収体310よりも着用者側に設けられ、機能性吸収体310よりも大きく、かつ機能性吸収体310を覆う着用者側吸収体320を備え、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さいことを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、表面シート10と、表面シート10よりも非着用者側に設けられる裏面シート20と、着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品1の中央部分、かつ表面シート10と裏面シート20との間に設けられ、少なくとも付加機能を提供する機能性材料(例えば、漢方薬材料)を含む機能性吸収体310とを備える吸収性物品1であって、機能性吸収体310よりも着用者側に設けられ、機能性吸収体310よりも大きく、かつ機能性吸収体310を覆う着用者側吸収体320を備え、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さいことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品の中央部分に設けられ、着用者からの体液を吸収するとともに、少なくとも付加機能を提供する機能性材料を含む機能性吸収体とを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生理ナプキンやパンティライナーなどの吸収性物品は、一般的に、着用者側に設けられる液透過性の表面シートと、非着用者に設けられる液不透過性の裏面シートと、表面シート及び裏面シートの間に配置され、着用者からの体液を吸収する本体吸収シートとを備える。
【0003】
このような吸収性物品には、着用者からの体液の保水機能のみならず、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能などの付加機能が求められている。例えば、消臭機能を付与するため、表面シートと本体吸収シートとの間に、消臭剤などの機能性材料の粉粒体をパルプシートで包んだ機能性吸収体を備えた吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
機能性材料の粉粒体は、一般的に、黒色や褐色、黄色等の有色であることが多く、色によって製品がどの付加機能を有しているのかを、着用者が製品の外部から視認できるように構成されている。つまり、着用者は、機能性材料の粉粒体が設けられた領域の色を認識することによって、どの付加機能が付与された製品であるのかを確認できる。
【特許文献1】特開2002−272769号公報(第2−3頁、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の吸収性物品では、次のような問題があった。すなわち、着用者からの体液は、表面シートを通過して機能性吸収体及び本体吸収シートで吸収されるが、吸収性物品に圧力(例えば、体圧)が加わることによって、機能性材料の粉粒体と混じった体液が表面シートから漏れ出す場合がある。具体的には、一旦機能性吸収体及び本体吸収シートで吸収された体液が着用者の肌に付着、いわゆる、リウェットが発生する場合がある。
【0006】
特に、機能性材料の粉粒体が有色である場合には、リウェットが発生することによって表面シートが汚れてしまい、着用者に不快感を与えてしまう。
【0007】
また、リウェットを抑制するために、機能性材料の粉粒体を包んだパルプシートを厚くすることが考えられる。しかし、パルプシートが厚くなると、着用者からの体液が機能性材料の粉粒体に浸透しにくくなり、付加機能が発揮されにくい。
【0008】
そこで、本発明は、消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制する吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、着用者側に設けられる液透過性の表面シート(表面シート10)と、前記表面シートよりも非着用者側に設けられる裏面シート(裏面シート20)と、前記着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品の中央部分、かつ前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられ、少なくとも付加機能を提供する機能性材料(例えば、漢方薬材料)を含む機能性吸収体(機能性吸収体310)とを備える吸収性物品(例えば、吸収性物品1)であって、前記機能性吸収体よりも前記着用者側に設けられ、前記機能性吸収体よりも大きく、かつ前記機能性吸収体を覆う着用者側吸収体(着用者側吸収体320)を備え、前記着用者側吸収体における前記体液の拡散性は、前記機能性吸収体における前記体液の拡散性よりも小さいことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制する吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下において、本発明に係る第1実施形態に係る吸収性物品1について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)吸収性物品の構成、(2)吸収体の構成、(3)吸収性物品の製造方法、(4)作用・効果、(5)変更例について、説明する。
【0012】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
(1)吸収性物品の構成
まず、第1実施形態に係る吸収性物品1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す上面展開図(平面図)である。図2は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す分解斜視図である。なお、第1実施形態に係る吸収性物品1は、パンティライナーとする。
【0015】
図1及び図2に示すように、吸収性物品1は、液透過性である縦長の表面シート10と、液透過性又は液不透過性である縦長の裏面シート20と、表面シート10及び裏面シート20の間に配置され、着用者からの体液を吸収する縦長の吸収体30とを少なくとも備える。
【0016】
ここで、吸収性物品1には、表面シート10と、後述する吸収体30を構成する着用者側吸収体320との一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス60,61,62(第1接合部)が設けられる。なお、表面シート10は、ホットメルト接着剤等によって裏面シート20と接合される。
【0017】
複数のエンボス60は、ドット状からなる。複数のエンボス61は、吸収性物品1の長手方向LDに沿って長い環状、つまり、吸収性物品1の外形に沿って配列される。複数のエンボス62は、複数のエンボス61に囲まれた領域の内側において、吸収性物品1の長手方向LDに沿って長い環状に配列される。
【0018】
表面シート10は、着用者からの体液を吸収体30に透過させる。表面シート10は、裏面シート20及び吸収体30よりも着用者側に設けられる。表面シート10は、吸収体30よりも大きく、かつ吸収体30を覆うように配置される。表面シート10としては、コットン短繊維が100%であり、繊維長が15〜40mmであるスパンレース不織布が挙げられる。
【0019】
裏面シート20は、吸収体30で吸収した着用者からの体液を透過させないことが好ましい。裏面シート20は、表面シート10及び吸収体30よりも非着用者側に設けられる。裏面シート20は、吸収体30で吸収する排泄物などの液体を下着等に付着しないような耐漏水性に優れる材料であることが好ましい。例えば、裏面シート20は、ポリエチレンフィルム23g/m2である。
【0020】
(2)吸収体の構成
次に、本発明の特徴である吸収体30の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【0021】
図3に示すように、吸収体30は、機能性吸収体310と、着用者側吸収体320とを少なくとも備える。
【0022】
(2−1)機能性吸収体の構成
機能性吸収体310は、着用者からの体液を吸収するとともに、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能などの付加機能を提供する。機能性吸収体310は、着用者からの体液の流出箇所に対応する中央部分に設けられる。つまり、中央部分とは、吸収性物品1の平面視(図1参照)において、吸収性物品1の長手方向LD及び幅方向WDの略中央を示す。
【0023】
機能性吸収体310は、混合体311を2枚の外装シート312で被覆された後、すなわち、混合体311を2枚の外装シート312で挟んだ後に圧力が加えられ、少なくとも一部が圧縮されることによって接合されたシート状である。例えば、圧力処理として、ドット状の複数のエンボス63(図2参照)が挙げられる。
【0024】
混合体311は、少なくとも1種類以上の有色(褐色)である機能性材料としての漢方薬材料と吸収性パルプとによって構成される。
【0025】
漢方薬材料の目付は、例えば、10〜60g/m2である。漢方薬材料は、吸収性パルプと混合することによって、外装シート312に被覆された範囲内において均等に配置される(すなわち、一様に分散する)。
【0026】
漢方薬材料は、着用者からの体液の保水機能に加えて、その他の付加機能(例えば、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能)を提供する。なお、漢方薬材料は、機能性吸収体310に要求される機能に応じて選択されるとともに、製造工程の観点からも考慮される。例えば、漢方薬材料の粉度分布や平均粉径などが考慮される。つまり、漢方薬材料及び吸収性パルプの比率は、機能性吸収体310の吸収性や生産性、製品の外観などのバランスが考慮される。
【0027】
漢方薬材料は、生薬である艾葉又は香附子、当帰の少なくとも何れかを含む。例えば、漢方薬材料には、香附子、当帰及びヨモギがそれぞれが10g/m2が使用される。漢方薬材料は、黒色や褐色、黄色の有色であることが好ましく、特に、茶褐色状の色であることが好ましい。
【0028】
ここで、艾葉(ガイヨウ)の効能としては、身体を温め、食欲増進、胆汁分泌促進、止血作用などがあり、腹痛、胸やけ、下痢、鼻血、血尿、痔などが挙げられる。艾葉の色としては、緑から褐色が一般的である。
【0029】
香附子(コウブシ)の効能としては、通経、浄血、鎮痛、鎮痛薬として月経不順、生理痛、更年期障害などの婦人病、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、神経性胃炎などが挙げられる。香附子の色としては、こげ茶色が一般的である。
【0030】
当帰(トウキ)の効能としては、血色不良、冷え性、血行障害に対して補血、強壮、鎮痛薬として婦人病などが挙げられる。当帰の色としては、茶色が一般的である。
【0031】
吸収性パルプの目付は、例えば、50〜90g/m2である。吸収性パルプとしては、NBKPパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)が挙げられる。
【0032】
外装シート312は、上述したように、漢方薬材料と吸収性パルプとによって形成される混合体311を挟む。外装シート312は、液透過性であればよい。外装シート312としては、ティッシュが挙げられる。例えば、外装シート312は、23g/m2である。
【0033】
(2−2)着用者側吸収体の構成
着用者側吸収体320は、機能性吸収体310よりも着用者側、つまり、機能性吸収体310と表面シート10との間に設けられる。着用者側吸収体320は、ドット状の複数のエンボス60によって表面シート10と接合される。着用者側吸収体320は、機能性吸収体310とホットメルト接着剤等によって接合される。
【0034】
ここで、複数のエンボス60間の間隔S1は、上述した機能性吸収体310(機能性材料及び外装シート)に圧力処理が施された複数のエンボス63間の間隔S2よりも広いことが好ましい。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60(第1接合部)の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63(第2圧縮部)の表面積の比率よりも小さいことが好ましい。
【0035】
着用者側吸収体320は、機能性吸収体310よりも大きく、かつ機能性吸収体310を覆う。すなわち、着用者側吸収体320は、機能性吸収体310の表面積よりも大きい。また、着用者側吸収体320は、表面シート10よりも密度が高いことが好ましい。
【0036】
着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さい。特に、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性の120%よりも小さいことが好ましい。
【0037】
着用者側吸収体320の保水性は、機能性吸収体310の保水性よりも大きい。特に、着用者側吸収体320の保水性は、機能性吸収体310の保水性の120%よりも大きいことが好ましい。
【0038】
着用者側吸収体320の厚みは、1.5mmである。着用者側吸収体320の目付は、70g/m2である。着用者側吸収体320には、吸収性パルプと同様のパルプ60%と、PE/PET芯鞘構造繊維が30%と、酢酸ビニル樹脂10とからなるエアレイドパルプが挙げられる。
【0039】
(3)吸収性物品の製造方法
次に、第1実施形態に係る吸収性物品1の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係る吸収性物品1の製造方法を示す図である。
【0040】
吸収性物品1の製造方法は、各部材成形工程と、第1接合工程と、第2接合工程と、第3接合工程、第4接合工程とを含む。
【0041】
(3−1)各部材成形工程
各部材成形工程では、表面シート10や裏面シート20、吸収体30が成形される。例えば、機能性吸収体310を成形する場合、混合体311(漢方薬材料及び吸収性パルプ)を2枚の外装シート312で挟むことによって、機能性吸収体310が成形される。なお、機能性吸収体310は、混合体311が外装シート312で挟まれた状態で所定の圧力(いわゆる、複数のエンボス63)が加えられることによって圧縮され、所定の厚さにシート化される。例えば、所定の圧力は、2.0〜3.3MPaであることが好ましい。
【0042】
(3−2)第1接合工程
図6(a)に示すように、第1接合工程では、表面シート10と着用者側吸収体320とが、ドット状の複数のエンボス60によって接合される。具体的には、表面シート10における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の表面シート10側の面の一部とが接合される。
【0043】
なお、表面シート10と着用者側吸収体320とが接合される複数のエンボス60における間の間隔S1は、上述した複数のエンボス63間の間隔S2(図2参照)よりも広いことが好ましい。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63の表面積の比率よりも小さいことが好ましい。
【0044】
(3−3)第2接合工程
図6(b)に示すように、第2接合工程では、裏面シート20と機能性吸収体310とが、ホットメルト接着剤等によって間欠的に接合される。具体的には、裏面シート20における機能性吸収体310側の面の一部と、機能性吸収体310(外装シート312)における裏面シート20側の面の一部とが間欠的に接合される。
【0045】
なお、間欠的とは、接合する面と面との全面が接合されるものではなく、接合されない領域が設けられるように、ドット状や点線状、線状、スパイラル状等で面と面とを接合することを示す。
【0046】
(3−4)第3接合工程
図6(c)に示すように、第3接合工程では、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とが、ホットメルト接着剤等によって間欠的に接合される。具体的には、機能性吸収体310(外装シート312)における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の機能性吸収体310側の面の一部とが間欠的に接合される。
【0047】
(3−5)第4接合工程
図6(d)に示すように、第4接合工程では、表面シート10及び機能性吸収体310と、と裏面シート20とが、ホットメルト接着材等によって間欠的に接合される。具体的には、表面シート10及び機能性吸収体310における裏面シート20側の面の一部と、裏面シート20における表面シート10の面の面の一部とが間欠的に接合される。
【0048】
(4)作用・効果
第1実施形態によれば、機能性吸収体310は、着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品1の中央部分に設けられる。これによれば、着用者からの体液が吸収しやすくなる。従って、消臭機能や芳香機能、抗菌機能、保温機能などの付加機能を確実に発揮できる。
【0049】
着用者側吸収体320は、機能性吸収体310よりも大きく、機能性吸収体310を覆う。すなわち、着用者側吸収体320は、体液を吸収する表面積が機能性吸収体310よりも広い。また、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さい。これによれば、着用者側吸収体320は、着用者側吸収体320上での体液の拡散を抑えつつ、体液を機能性吸収体310に吸収させることができる。このため、付加機能を確実に発揮できるとともに、機能性吸収体310と比べて、着用者側吸収体320に体液を吸収することができる領域(以下、吸収可能領域)が残存する。
【0050】
ところで、機能性吸収体310が飽和すると、一旦機能性吸収体310に吸収された体液が機能性吸収体310から着用者側吸収体320側に戻ってしまう(すなわち、液戻りが発生する)。しかし、液戻りが発生した場合であっても、上述したように、着用者側吸収体320に吸収可能領域が残存しているため、液戻りした体液を着用者側吸収体320で吸収できる。従って、一旦機能性吸収体310に吸収された体液が着用者の肌に付着することを抑制、すなわち、リウェットを抑制できる。
【0051】
第1実施形態によれば、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性の120%よりも小さいことが好ましい。なお、着用者側吸収体320における体液の拡散性が機能性吸収体310における体液の拡散性の120%よりも大きいと、着用者からの体液が着用者側吸収体320で拡散し、体液が着用者側吸収体320の広い領域を使用して吸収されてしまうため、当該体液が機能性吸収体310に移行しにくくなり、付加機能を発揮しにくいことがある。
【0052】
第1実施形態によれば、着用者側吸収体320における体液の保水性は、機能性吸収体310における体液の保水性よりも大きい。これによれば、着用者側吸収体320には、体液の吸収に使用されていない吸収可能領域が広く残存した状態で、体液が機能性吸収体310に移行するため、仮に、液戻りが発生した場合であっても、液戻りした体液を着用者側吸収体320で確実に吸収できる。
【0053】
第1実施形態によれば、着用者側吸収体320の保水性は、機能性吸収体310の保水性120%よりも大きいことが好ましい。なお、着用者側吸収体320の保水性が機能性吸収体310の保水性の120%よりも小さいと、液戻りが発生した場合であっても、液戻りした体液を着用者側吸収体320で吸収しにくくなってしまうことがある。
【0054】
第1実施形態によれば、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とは、ホットメルト接着剤によって接合される。仮に、着用者側吸収体320の体液の拡散性は、機能性吸収体310の体液の拡散性よりも小さい際に、機能性吸収体310及び着用者側吸収体320の少なくとも一部が圧縮されること(例えば、エンボス)によって接合されると、圧縮接合された部分に体液が集まりやすくなり、液戻りが発生した場合に、圧縮接合された部分から表面シート10側へ体液が漏出しやすくなってしまう。しかし、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とがホットメルト接着剤によって接合されることによって、着用者側吸収体320の体液の拡散性を、機能性吸収体310の体液の拡散性に近づけることなく、着用者側吸収体320の体液の拡散性は、機能性吸収体310の体液の拡散性よりも小さく維持できる。従って、着用者側吸収体320の吸収可能領域が残存するため、液戻りが発生した場合であっても、液戻りした体液を着用者側吸収体320で吸収できる。
【0055】
第1実施形態によれば、機能性吸収体310は、機能性材料と吸収性パルプとを有する。これによれば、機能性材料(すなわち、漢方薬材料)を均等に配置しやすくなる。つまり、機能性材料が一様に分散される。従って、機能性吸収体310の色相が偏らなずに、吸収性物品1の外観を損なうことなく、機能性吸収体310全体において、漢方薬材料が提供する付加機能を確実に発揮できる。
【0056】
第1実施形態によれば、表面シート10と着用者側吸収体320とが接合される複数のエンボス60間の間隔S1が、機能性吸収体310に圧力処理が施された複数のエンボス63間の間隔S2よりも広い。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63の表面積の比率よりも小さい。これによれば、機能性吸収体310全体の厚さが薄くなるとともに、機能性吸収体310全体の密度が大きくなる。このため、機能性吸収体310における体液の拡散性は、着用者側吸収体320における体液の拡散性よりも大きくなる。
【0057】
例えば、機能性吸収体310全体を平滑なロール等で一様に圧縮するよりも、ドット状に凸部のあるロール等で圧縮することによって、ひとつのドットあたりにかかる圧力が大きくなるため、機能性吸収体310、つまり、混合体311と外装シート312との接合力が高くなるとともに、機能性材料(すなわち、漢方薬材料)の動きを制限でき、機能性材料をさらに均等に配置できる。一方、着用者側吸収体320における体液の拡散性が機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さくなることによって、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制できる。
【0058】
(5)変更例
上述した第1実施形態に係る吸収性物品1は、以下のように変更してもよい。図5は、変更例に係る吸収性物品1Aを示す断面図である。なお、上述した第1実施形態に係る吸収性物品1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0059】
上述した第1実施形態に係る吸収性物品1では、吸収体30が機能性吸収体310と着用者側吸収体320とを有する。これに対して、変更例に係る吸収性物品1Aは、吸収体30が機能性吸収体310と着用者側吸収体320とに加え、非着用者側吸収体330を有する。
【0060】
具体的には、図5(a)に示すように、非着用者側吸収体330は、機能性吸収体310を通過した体液を吸収する。非着用者側吸収体330は、機能性吸収体310の非着用者側、つまり、裏面シート20と機能性吸収体310との間に配置される。
【0061】
非着用者側吸収体330は、ホットメルト接着剤等によって機能性吸収体310と間欠的に接合される。また、非着用者側吸収体330は、ホットメルト接着剤等によって裏面シート20に間欠的に接合される。
【0062】
非着用者側吸収体330としては、着用者側吸収体320と同様のエアレイドパルプや湿式パルプ不織布などによって形成されたシートによって構成される。
【0063】
エアレイドパルプは、NBKPパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)の重量比率が20〜90%、PE/PP又はPE/PET芯鞘繊維(もしくはサイドバイサイド繊維)が0〜70%、バインダー樹脂・酢酸ビニル樹脂、又はスチレン系熱可塑性エラストマー(例えば、SBSやSEBS)などの合成ゴムが2〜30%によって構成される。なお、非着用者側吸収体330には、目付40g/m2、厚み0.7mmのエアレイドパルプシートが使用される。エアレイドパルプシートの厚みは、0.2mm〜2.0mmが好ましく、特に、0.4mm〜1.6mmであることが好ましい。
【0064】
湿式パルプ不織布は、NBKP叩解パルプの重量比率が20〜90%、ポリエチレン短繊維SWPが0〜50%、レーヨン短繊維(1.1〜2.2dtex 繊維長3〜10mm)が0〜50%、紙力増強剤(カチオン化でんぷん等)が0.5〜4%である。なお、湿式パルプ不織布の全体目付は、20〜120g/m2であり、特に、25〜100g/m2であることが好ましい。
【0065】
変更例に係る吸収性物品1Aによれば、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とに加え、非着用者側吸収体330を有することによって、機能性吸収体310を通過した体液をより効率的に非着用者側吸収体330で吸収できる。
【0066】
ここで、非着用者側吸収体330は、必ずしもホットメルト接着剤等によって機能性吸収体310と間欠的に接合される必要はなく、例えば、図5(b)に示すように、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス65により機能性吸収体310と間欠的に接合されてもよい。
【0067】
これによれば、非着用者側吸収体330と機能性吸収体310とは、複数のエンボス65により接合されることによって、ホットメルト接着剤等によって接合される場合と比べて、接合強度が増大するとともに、着用者側吸収体320から非着用者側吸収体330への体液の連通性が高まり(すなわち、体液が非着用者側吸収体330へ移行されやすく)、着用者からの体液をより効率的に非着用者側吸収体330で吸収できる。
【0068】
[第2実施形態]
以下において、本発明に係る第2実施形態に係る吸収性物品100について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)吸収性物品の構成、(2)吸収体の構成、(3)吸収性物品の製造方法、(4)作用・効果について、説明する。なお、上述した第1実施形態に係る吸収性物品1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0069】
(1)吸収性物品の構成
まず、第2実施形態に係る吸収性物品100の構成について、図面を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態に係る吸収性物品100を示す上面展開図(平面図)である。図7は、第2実施形態に係る吸収性物品100を示す分解斜視図である。なお、本実施形態に係る吸収性物品100は、生理用ナプキンとする。
【0070】
図6及び図7に示すように、吸収性物品100は、表面シート10と、表面シート10と、吸収体30とに加え、表面シート10の側部における両側に配置されるサイドシート40とを備える。
【0071】
ここで、吸収性物品100には、吸収性物品100の幅方向WDにおける略中央に、長手方向LDに沿った吸収領域50が設けられている。吸収領域50は、表面シート10及び吸収体30によって構成される。吸収領域50には、表面シート10と機能性吸収体310及び非着用者側吸収体330との一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス66A,66Bが設けられる。
【0072】
吸収性物品100の側部における両側のそれぞれには、幅方向WD外側に延出するウィング部70L,70Rが形成される。ウィング部70L,70Rは、サイドシート40と裏面シート20とによって形成される。
【0073】
表面シート10としては、ポリエチレン/ポリプロピレンとした芯鞘構造の繊維(以下、PE/PP芯鞘構造繊維)70%と、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートとした芯鞘構造の繊維(以下、PE/PET芯鞘構造繊維)30%とからなるエアースルー不織布が挙げられる。例えば、表面シート10は、30g/m2である。
【0074】
サイドシート40は、表面シート10の幅方向WD外側で表面シート10と接する。具体的には、サイドシート40は、長手方向LDに沿って略等間隔で形成され、少なくとも一部が圧縮されることにより接合された複数のエンボス67よって、表面シート10と接合される。サイドシート40は、撥水性に優れた材料であることが好ましい。
【0075】
(2)吸収体の構成
次に、本発明の特徴である吸収体30の構成について、図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る吸収性物品100を示す断面図(図6のB−B断面図)である。
【0076】
図8に示すように、吸収体30は、機能性吸収体310と、着用者側吸収体320と、非着用者側吸収体330とを備える。
【0077】
(2−1)機能性吸収体
機能性吸収体310は、第1実施形態と同様に、混合体311を2枚の外装シート312で挟んだ後に圧力が加えられたシート状である。外装シート312の目付は、例えば、13〜16g/m2である。
【0078】
(2−2)着用者側吸収体
着用者側吸収体320には、吸収性パルプと同様のパルプ80%と、繊維長が7mm、繊度1.7dtexのPE/PET芯鞘構造繊維が17%と、カチオン化でんぷん3%とによって構成されるクレープ紙が挙げられる。例えば、着用者側吸収体320の目付は、30g/m2である。
【0079】
(2−3)非着用者側吸収体
非着用者側吸収体330は、着用者からの体液を吸収して保持する(いわゆる、本体吸収シートである)。非着用者側吸収体330は、機能性吸収体310及び着用者側吸収体320よりも非着用者側、つまり、裏面シート20と機能性吸収体310との間に配置される。非着用者側吸収体330は、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス66A,66Bによって表面シート10と接合される。また、非着用者側吸収体330は、ホットメルト接着剤等によって裏面シート20と接合される。
【0080】
非着用者側吸収体330の密度は、5.5〜3.0g/m3であり、特に、0.6〜2.0g/m3であることが好ましい。非着用者側吸収体330は、高吸収ポリマーが混入された粉砕パルプ331を包込シート332で包まれる。
【0081】
粉砕パルプ331の厚みは、0.15〜0.7mmであり、特に、0.2〜0.6mmであることが好ましい。粉砕パルプ331の目付は、機能性吸収体310の配置領域において300〜500g/m2である。なお、粉砕パルプ331には、クレープ処理などが施されてもよい。粉砕パルプ331としては、吸収性パルプと同様に、エアレイドパルプや湿式パルプ不織布などが挙げられる。
【0082】
包込シート332の目付は、例えば、15g/m2である。なお、非着用者側吸収体330における機能性吸収体310が配置される領域以外の領域の目付は、180〜250g/m2であり、特に、190〜210g/m2であることが好ましい。例えば、包込シート332としては、エアスルー不織布やポイントボンド不織布、ティッシュ等が挙げられる。
【0083】
(3)吸収性物品の製造方法
次に、第2実施形態に係る吸収性物品100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る吸収性物品100の製造方法を示す図である。
【0084】
吸収性物品100の製造方法は、各部材成形工程と、第1接合工程と、第2接合工程と、第3接合工程、第4接合工程と、第5接合工程と、第6接合工程とを含む。
【0085】
(3−1)各部材成形工程
各部材成形工程では、表面シート10やサイドシート40、裏面シート20、吸収体30が成形される。例えば、非着用者側吸収体330を成形する場合、粉砕パルプ331を包込シート332で包み込むことによって、非着用者側吸収体330が成形される。
【0086】
(3−2)第1接合工程
図9(a)に示すように、第1接合工程では、表面シート10と着用者側吸収体320とが、ドット状の複数のエンボス60によって接合される。具体的には、表面シート10における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の表面シート10側の面の一部とが接合される。
【0087】
なお、表面シート10と着用者側吸収体320とが接合される複数のエンボス60における間の間隔S1は、機能性吸収体310(機能性材料及び外装シート)に圧力処理が施された複数のエンボス63間の間隔S2(図7参照)よりも大きい。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63の表面積の比率よりも小さいことが好ましい。
【0088】
(3−3)第2接合工程
図9(b)に示すように、第2接合工程では、表面シート10とサイドシート40とが、複数のエンボス67によって接合される。具体的には、表面シート10におけるサイドシート40側の面の一部と、サイドシート40における表面シート10側の面の一部とが接合される。
【0089】
なお、表面シート10とサイドシート40とは、必ずしも複数のエンボス67によって接合される必要はなく、例えば、ホットメルト接着材等によって間欠的に接合されてもよい。
【0090】
(3−4)第3接合工程
図9(c)に示すように、第3接合工程では、機能性吸収体310と非着用者側吸収体330とが、複数のエンボス68によって接合される。具体的には、機能性吸収体310(外装シート312)における非着用者側吸収体330側の面の一部と、非着用者側吸収体330における機能性吸収体310側の面の一部とが接合される。
【0091】
なお、機能性吸収体310と非着用者側吸収体330とは、必ずしも複数のエンボス68によって接合される必要はなく、例えば、ホットメルト接着剤等によって間欠的に接合されてもよい。
【0092】
(3−5)第4接合工程
図9(d)に示すように、第4接合工程では、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とが、ホットメルト接着剤等によって接合される。具体的には、機能性吸収体310(外装シート312)における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の機能性吸収体310側の面の一部とが接合される。
【0093】
(3−6)第5接合工程
図9(e)に示すように、第5接合工程では、表面シート10と非着用者側吸収体330とが、上述した複数のエンボス66A,66Bによって接合される。具体的には、表面シート10における非着用者側吸収体330側の面の一部と、機能性吸収体310及び着用者側吸収体320が接合された非着用者側吸収体330における表面シート10側の面の一部とが接合される。なお、複数のエンボス66A,66Bは、機能性吸収体310の配置領域を除く位置に形成される。
【0094】
(3−7)第6接合工程
図9(f)に示すように、第6接合工程では、表面シート10の側部及び非着用者側吸収体330と、裏面シート20とが、ホットメルト接着材等によって接合される。具体的には、表面シート10及び非着用者側吸収体330における裏面シート20側の面の一部と、裏面シート20における表面シート10の面の一部とが接合される。
【0095】
(作用・効果)
第2実施形態に係る吸収性物品100によれば、第1実施形態の作用・効果と同様に、消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制できる。
【0096】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0097】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、表面シート10は、吸収体30よりも大きいものとして説明したが、これに限定されるものではなく、着用者側吸収体320と同一の大きさであっても勿論よい。
【0098】
機能性材料は、漢方薬材料であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、付加機能(例えば、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能)を有する材料であれば特に制限はない。例えば、機能性材料として、ヨモギ、益母草(ヤクモソウ)、茶、ハッカ、紫蘇(シソ)、唐辛子、ウコン、ラベンダー、タイム、ティーツリー、アロエ等や、天然植物を乾燥させたもの等が挙げられる。さらに、機能性材料として、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム(CPC)など抗菌性を有した有機系又は無機系化合物粒子等も挙げられる。
【0099】
機能性吸収体310は、混合体311を外装シート312で挟むことによって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、混合体311を外装シート312で包むように形成されてもよい。この場合、外装シート312の幅方向WDにおける端部同士は、非着用者側吸収体330側で互いに重なり合うように設けられることが好ましい。また、機能性吸収体310は、外装シート312に部分的に混合体311を配置して外装シート312で被覆するものであってもよい。例えば、外装シート312に混合体311をストライプ状やドット状等に配置して外装シート312で被覆してもよい。また、機能性吸収体310は、所定のシートに機能性材料(漢方薬材料)を浸透させて乾かせて形成されたシート等であってもよいことは勿論である。
【0100】
吸収性物品1,100の製造方法については、本発明の吸収性物品1,100の製造が可能であれば特に順序については制限はない。
【0101】
吸収体30(特に、機能性吸収体310や着用者側吸収体320)は、パンティライナーや生理用ナプキンに設けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、成人用や子供用のオムツなど、液体を吸収する様々な物品に適用できる。例えば、吸収体30は、布ナプキンに設けられていてもよいことは勿論である。
【0102】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0103】
[比較評価]
以下において、本発明の効果をさらに明確にするために、以下の比較例及び実施例に係る吸収性物品を用いて行った試験結果について説明する。具体的には(1)拡散性評価、(2)保水性評価、(3)液戻り評価、(4)総合評価について説明する。
【0104】
ここで、比較例1,2及び実施例1,2に係る吸収性物品の構成については、表1に示す通りである。なお、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0105】
【表1】
【0106】
(1)拡散性評価
拡散性評価は、表1に示す比較例1,2及び実施例1,2の条件下で、25mm×150mmの各サンプルを3枚用意し、JIS−L1906「繊維製品の吸水性試験方法」に規定されている吸水速度(バイレック法)によって各吸収性物品の拡散性を測定した。
【0107】
具体的には、図10に示すように、液体(いわゆる、人工尿)が入ったシャーレに、各サンプルが10mm浸けられる。なお、液体は、水道水、生理食塩水(0.9%NaCl)、食用油及び着色剤(油;オイルレッド、水;食用青色)によって形成される。
【0108】
各吸収性物品において、図10(a)に示す各吸収性物品の長手方向LDに上昇した液体の高さH1と、図10(b)に示す各吸収性物品の幅方向WDに上昇した液体の高さH2とを測定した。なお、上述した液体が上昇する高さは、60秒までは10秒毎に測定され、その後300秒までは30秒毎に測定された。
【0109】
【表2】
【0110】
この結果、表2に示すように、実施例1,2に係る吸収性物品は、機能性吸収体のみの比較例1に係る吸収性物品に比べ、数値が小さいため、拡散性が小さいことが判る。なお、比較例2に係る吸収性物品は、他の吸収性物品に比べて拡散性が小さ過ぎる。
【0111】
(2)保水性評価
保水性評価は、表1に示す比較例1,2及び実施例1,2の条件下で、60mm×60mmの各サンプルを用意し、各サンプルの重量を測定する。そして、各サンプルをメッシュ状の金網上に置き、3分間トレイに入れた液体(いわゆる、人工尿)に浸ける。金網ごとサンプルを引き上げて、各サンプルの液体を軽く切り、5分間静置した。その後、金網とサンプルの重量、金網の重量を測定する。また、各サンプルをサンプル台上に置き、840gの重りを載せて3分間放置する。そして、各サンプルの試験前の重量と試験後の重量とを比較する。
【0112】
【表3】
【0113】
この結果、表3に示すように、実施例1に係る吸収性物品は、比較例1,2に係る吸収性物品に比べ、吸収体の重量が重いため、保水性に優れていることが判る。実施例2に係る吸収性物品は、機能性吸収体のみの比較例1と同等の保水性であることが判る。
【0114】
(3)液戻り評価
リウェット評価は、表1に示す比較例2及び実施例1の条件下で、60mm×30mmの機能性吸収体、及び150mm×70mmの着用者側吸収体をホットメルトにて接合し、各サンプルを用意した。図11に示すように、着用者側吸収体の中心部に液体(いわゆる、人工血液(1.0mm))を滴下し、3分間置いた。そして、液体を滴下した側から非着用者側吸収体及び着用者側吸収体上で拡散した液体の寸法(以下、拡散寸法)を測定した。なお、液体は、水道水及び生理食塩水(0.9%NaCl)によって形成される。
【0115】
その後、各サンプルにろ紙を重ねて銅製のスケール(20g/cm2)で3分間加重(圧力)を加えた。そして、3分間加重が加えられた後の非着用者側吸収体及び着用者側吸収体の拡散寸法を測定した。
【0116】
【表4】
【0117】
この結果、表4に示すように、スケールが加えられる前と後とにおいて、実施例1に係る吸収性物品では、着用者側吸収体及び機能性吸収体のそれぞれの拡散寸法が変化していない。一方、比較例2に係る吸収性物品では、着用者側吸収体及び機能性吸収体のそれぞれの拡散寸法が増加している。従って、実施例1に係る吸収性物品は、比較例2に係る吸収性物品と比べて、機能性吸収体から着用者側吸収体への液戻りの量が少ないないことが判った。
【0118】
(4)総合評価
以上のように、実施例1,2に係る吸収性物品は、比較例1,2に係る吸収性物品に比べ、非着用者側吸収体の拡散性が小さく、保水性が大きいため、液戻りが発生しにくいことが判った。
【0119】
なお、比較例1に係る吸収性物品は、着用者側吸収体が設けられていないため、いわゆる液戻りが発生した場合であっても、液体を吸収できない。また、比較例2に係る吸収性物品は、拡散性が小さいが、保水性も小さいため、いわゆる液戻りが発生した場合であっても、着用者側吸収体で液体を吸収できないことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1実施形態に係る吸収性物品1を示す上面展開図(平面図)である。
【図2】第1実施形態に係る吸収性物品1を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【図4】第1実施形態に係る吸収性物品1の製造方法を示す図である。
【図5】変更例に係る吸収性物品1Aを示す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る吸収性物品100を示す上面展開図(平面図)である。
【図7】第2実施形態に係る吸収性物品100を示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る吸収性物品100を示す断面図(図6のB−B断面図)である。
【図9】第2実施形態に係る吸収性物品100の製造方法を示す図である。
【図10】比較評価において、保水性評価を説明するための図である。
【図11】比較評価において、リウェット評価を説明するための図である。
【符号の説明】
【0121】
1,1A,100…吸収性物品、10…表面シート、20…裏面シート、30…吸収体、40…サイドシート、50…吸収領域、60〜63,65〜68…エンボス、70L,70R…ウィング部、310…機能性吸収体、311…混合体、312…外装シート、320…着用者側吸収体、330…非着用者側吸収体、331…粉砕パルプ、332…包込シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品の中央部分に設けられ、着用者からの体液を吸収するとともに、少なくとも付加機能を提供する機能性材料を含む機能性吸収体とを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生理ナプキンやパンティライナーなどの吸収性物品は、一般的に、着用者側に設けられる液透過性の表面シートと、非着用者に設けられる液不透過性の裏面シートと、表面シート及び裏面シートの間に配置され、着用者からの体液を吸収する本体吸収シートとを備える。
【0003】
このような吸収性物品には、着用者からの体液の保水機能のみならず、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能などの付加機能が求められている。例えば、消臭機能を付与するため、表面シートと本体吸収シートとの間に、消臭剤などの機能性材料の粉粒体をパルプシートで包んだ機能性吸収体を備えた吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
機能性材料の粉粒体は、一般的に、黒色や褐色、黄色等の有色であることが多く、色によって製品がどの付加機能を有しているのかを、着用者が製品の外部から視認できるように構成されている。つまり、着用者は、機能性材料の粉粒体が設けられた領域の色を認識することによって、どの付加機能が付与された製品であるのかを確認できる。
【特許文献1】特開2002−272769号公報(第2−3頁、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の吸収性物品では、次のような問題があった。すなわち、着用者からの体液は、表面シートを通過して機能性吸収体及び本体吸収シートで吸収されるが、吸収性物品に圧力(例えば、体圧)が加わることによって、機能性材料の粉粒体と混じった体液が表面シートから漏れ出す場合がある。具体的には、一旦機能性吸収体及び本体吸収シートで吸収された体液が着用者の肌に付着、いわゆる、リウェットが発生する場合がある。
【0006】
特に、機能性材料の粉粒体が有色である場合には、リウェットが発生することによって表面シートが汚れてしまい、着用者に不快感を与えてしまう。
【0007】
また、リウェットを抑制するために、機能性材料の粉粒体を包んだパルプシートを厚くすることが考えられる。しかし、パルプシートが厚くなると、着用者からの体液が機能性材料の粉粒体に浸透しにくくなり、付加機能が発揮されにくい。
【0008】
そこで、本発明は、消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制する吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、着用者側に設けられる液透過性の表面シート(表面シート10)と、前記表面シートよりも非着用者側に設けられる裏面シート(裏面シート20)と、前記着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品の中央部分、かつ前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられ、少なくとも付加機能を提供する機能性材料(例えば、漢方薬材料)を含む機能性吸収体(機能性吸収体310)とを備える吸収性物品(例えば、吸収性物品1)であって、前記機能性吸収体よりも前記着用者側に設けられ、前記機能性吸収体よりも大きく、かつ前記機能性吸収体を覆う着用者側吸収体(着用者側吸収体320)を備え、前記着用者側吸収体における前記体液の拡散性は、前記機能性吸収体における前記体液の拡散性よりも小さいことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制する吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下において、本発明に係る第1実施形態に係る吸収性物品1について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)吸収性物品の構成、(2)吸収体の構成、(3)吸収性物品の製造方法、(4)作用・効果、(5)変更例について、説明する。
【0012】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
(1)吸収性物品の構成
まず、第1実施形態に係る吸収性物品1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す上面展開図(平面図)である。図2は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す分解斜視図である。なお、第1実施形態に係る吸収性物品1は、パンティライナーとする。
【0015】
図1及び図2に示すように、吸収性物品1は、液透過性である縦長の表面シート10と、液透過性又は液不透過性である縦長の裏面シート20と、表面シート10及び裏面シート20の間に配置され、着用者からの体液を吸収する縦長の吸収体30とを少なくとも備える。
【0016】
ここで、吸収性物品1には、表面シート10と、後述する吸収体30を構成する着用者側吸収体320との一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス60,61,62(第1接合部)が設けられる。なお、表面シート10は、ホットメルト接着剤等によって裏面シート20と接合される。
【0017】
複数のエンボス60は、ドット状からなる。複数のエンボス61は、吸収性物品1の長手方向LDに沿って長い環状、つまり、吸収性物品1の外形に沿って配列される。複数のエンボス62は、複数のエンボス61に囲まれた領域の内側において、吸収性物品1の長手方向LDに沿って長い環状に配列される。
【0018】
表面シート10は、着用者からの体液を吸収体30に透過させる。表面シート10は、裏面シート20及び吸収体30よりも着用者側に設けられる。表面シート10は、吸収体30よりも大きく、かつ吸収体30を覆うように配置される。表面シート10としては、コットン短繊維が100%であり、繊維長が15〜40mmであるスパンレース不織布が挙げられる。
【0019】
裏面シート20は、吸収体30で吸収した着用者からの体液を透過させないことが好ましい。裏面シート20は、表面シート10及び吸収体30よりも非着用者側に設けられる。裏面シート20は、吸収体30で吸収する排泄物などの液体を下着等に付着しないような耐漏水性に優れる材料であることが好ましい。例えば、裏面シート20は、ポリエチレンフィルム23g/m2である。
【0020】
(2)吸収体の構成
次に、本発明の特徴である吸収体30の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【0021】
図3に示すように、吸収体30は、機能性吸収体310と、着用者側吸収体320とを少なくとも備える。
【0022】
(2−1)機能性吸収体の構成
機能性吸収体310は、着用者からの体液を吸収するとともに、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能などの付加機能を提供する。機能性吸収体310は、着用者からの体液の流出箇所に対応する中央部分に設けられる。つまり、中央部分とは、吸収性物品1の平面視(図1参照)において、吸収性物品1の長手方向LD及び幅方向WDの略中央を示す。
【0023】
機能性吸収体310は、混合体311を2枚の外装シート312で被覆された後、すなわち、混合体311を2枚の外装シート312で挟んだ後に圧力が加えられ、少なくとも一部が圧縮されることによって接合されたシート状である。例えば、圧力処理として、ドット状の複数のエンボス63(図2参照)が挙げられる。
【0024】
混合体311は、少なくとも1種類以上の有色(褐色)である機能性材料としての漢方薬材料と吸収性パルプとによって構成される。
【0025】
漢方薬材料の目付は、例えば、10〜60g/m2である。漢方薬材料は、吸収性パルプと混合することによって、外装シート312に被覆された範囲内において均等に配置される(すなわち、一様に分散する)。
【0026】
漢方薬材料は、着用者からの体液の保水機能に加えて、その他の付加機能(例えば、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能)を提供する。なお、漢方薬材料は、機能性吸収体310に要求される機能に応じて選択されるとともに、製造工程の観点からも考慮される。例えば、漢方薬材料の粉度分布や平均粉径などが考慮される。つまり、漢方薬材料及び吸収性パルプの比率は、機能性吸収体310の吸収性や生産性、製品の外観などのバランスが考慮される。
【0027】
漢方薬材料は、生薬である艾葉又は香附子、当帰の少なくとも何れかを含む。例えば、漢方薬材料には、香附子、当帰及びヨモギがそれぞれが10g/m2が使用される。漢方薬材料は、黒色や褐色、黄色の有色であることが好ましく、特に、茶褐色状の色であることが好ましい。
【0028】
ここで、艾葉(ガイヨウ)の効能としては、身体を温め、食欲増進、胆汁分泌促進、止血作用などがあり、腹痛、胸やけ、下痢、鼻血、血尿、痔などが挙げられる。艾葉の色としては、緑から褐色が一般的である。
【0029】
香附子(コウブシ)の効能としては、通経、浄血、鎮痛、鎮痛薬として月経不順、生理痛、更年期障害などの婦人病、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、神経性胃炎などが挙げられる。香附子の色としては、こげ茶色が一般的である。
【0030】
当帰(トウキ)の効能としては、血色不良、冷え性、血行障害に対して補血、強壮、鎮痛薬として婦人病などが挙げられる。当帰の色としては、茶色が一般的である。
【0031】
吸収性パルプの目付は、例えば、50〜90g/m2である。吸収性パルプとしては、NBKPパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)が挙げられる。
【0032】
外装シート312は、上述したように、漢方薬材料と吸収性パルプとによって形成される混合体311を挟む。外装シート312は、液透過性であればよい。外装シート312としては、ティッシュが挙げられる。例えば、外装シート312は、23g/m2である。
【0033】
(2−2)着用者側吸収体の構成
着用者側吸収体320は、機能性吸収体310よりも着用者側、つまり、機能性吸収体310と表面シート10との間に設けられる。着用者側吸収体320は、ドット状の複数のエンボス60によって表面シート10と接合される。着用者側吸収体320は、機能性吸収体310とホットメルト接着剤等によって接合される。
【0034】
ここで、複数のエンボス60間の間隔S1は、上述した機能性吸収体310(機能性材料及び外装シート)に圧力処理が施された複数のエンボス63間の間隔S2よりも広いことが好ましい。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60(第1接合部)の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63(第2圧縮部)の表面積の比率よりも小さいことが好ましい。
【0035】
着用者側吸収体320は、機能性吸収体310よりも大きく、かつ機能性吸収体310を覆う。すなわち、着用者側吸収体320は、機能性吸収体310の表面積よりも大きい。また、着用者側吸収体320は、表面シート10よりも密度が高いことが好ましい。
【0036】
着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さい。特に、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性の120%よりも小さいことが好ましい。
【0037】
着用者側吸収体320の保水性は、機能性吸収体310の保水性よりも大きい。特に、着用者側吸収体320の保水性は、機能性吸収体310の保水性の120%よりも大きいことが好ましい。
【0038】
着用者側吸収体320の厚みは、1.5mmである。着用者側吸収体320の目付は、70g/m2である。着用者側吸収体320には、吸収性パルプと同様のパルプ60%と、PE/PET芯鞘構造繊維が30%と、酢酸ビニル樹脂10とからなるエアレイドパルプが挙げられる。
【0039】
(3)吸収性物品の製造方法
次に、第1実施形態に係る吸収性物品1の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係る吸収性物品1の製造方法を示す図である。
【0040】
吸収性物品1の製造方法は、各部材成形工程と、第1接合工程と、第2接合工程と、第3接合工程、第4接合工程とを含む。
【0041】
(3−1)各部材成形工程
各部材成形工程では、表面シート10や裏面シート20、吸収体30が成形される。例えば、機能性吸収体310を成形する場合、混合体311(漢方薬材料及び吸収性パルプ)を2枚の外装シート312で挟むことによって、機能性吸収体310が成形される。なお、機能性吸収体310は、混合体311が外装シート312で挟まれた状態で所定の圧力(いわゆる、複数のエンボス63)が加えられることによって圧縮され、所定の厚さにシート化される。例えば、所定の圧力は、2.0〜3.3MPaであることが好ましい。
【0042】
(3−2)第1接合工程
図6(a)に示すように、第1接合工程では、表面シート10と着用者側吸収体320とが、ドット状の複数のエンボス60によって接合される。具体的には、表面シート10における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の表面シート10側の面の一部とが接合される。
【0043】
なお、表面シート10と着用者側吸収体320とが接合される複数のエンボス60における間の間隔S1は、上述した複数のエンボス63間の間隔S2(図2参照)よりも広いことが好ましい。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63の表面積の比率よりも小さいことが好ましい。
【0044】
(3−3)第2接合工程
図6(b)に示すように、第2接合工程では、裏面シート20と機能性吸収体310とが、ホットメルト接着剤等によって間欠的に接合される。具体的には、裏面シート20における機能性吸収体310側の面の一部と、機能性吸収体310(外装シート312)における裏面シート20側の面の一部とが間欠的に接合される。
【0045】
なお、間欠的とは、接合する面と面との全面が接合されるものではなく、接合されない領域が設けられるように、ドット状や点線状、線状、スパイラル状等で面と面とを接合することを示す。
【0046】
(3−4)第3接合工程
図6(c)に示すように、第3接合工程では、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とが、ホットメルト接着剤等によって間欠的に接合される。具体的には、機能性吸収体310(外装シート312)における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の機能性吸収体310側の面の一部とが間欠的に接合される。
【0047】
(3−5)第4接合工程
図6(d)に示すように、第4接合工程では、表面シート10及び機能性吸収体310と、と裏面シート20とが、ホットメルト接着材等によって間欠的に接合される。具体的には、表面シート10及び機能性吸収体310における裏面シート20側の面の一部と、裏面シート20における表面シート10の面の面の一部とが間欠的に接合される。
【0048】
(4)作用・効果
第1実施形態によれば、機能性吸収体310は、着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品1の中央部分に設けられる。これによれば、着用者からの体液が吸収しやすくなる。従って、消臭機能や芳香機能、抗菌機能、保温機能などの付加機能を確実に発揮できる。
【0049】
着用者側吸収体320は、機能性吸収体310よりも大きく、機能性吸収体310を覆う。すなわち、着用者側吸収体320は、体液を吸収する表面積が機能性吸収体310よりも広い。また、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さい。これによれば、着用者側吸収体320は、着用者側吸収体320上での体液の拡散を抑えつつ、体液を機能性吸収体310に吸収させることができる。このため、付加機能を確実に発揮できるとともに、機能性吸収体310と比べて、着用者側吸収体320に体液を吸収することができる領域(以下、吸収可能領域)が残存する。
【0050】
ところで、機能性吸収体310が飽和すると、一旦機能性吸収体310に吸収された体液が機能性吸収体310から着用者側吸収体320側に戻ってしまう(すなわち、液戻りが発生する)。しかし、液戻りが発生した場合であっても、上述したように、着用者側吸収体320に吸収可能領域が残存しているため、液戻りした体液を着用者側吸収体320で吸収できる。従って、一旦機能性吸収体310に吸収された体液が着用者の肌に付着することを抑制、すなわち、リウェットを抑制できる。
【0051】
第1実施形態によれば、着用者側吸収体320における体液の拡散性は、機能性吸収体310における体液の拡散性の120%よりも小さいことが好ましい。なお、着用者側吸収体320における体液の拡散性が機能性吸収体310における体液の拡散性の120%よりも大きいと、着用者からの体液が着用者側吸収体320で拡散し、体液が着用者側吸収体320の広い領域を使用して吸収されてしまうため、当該体液が機能性吸収体310に移行しにくくなり、付加機能を発揮しにくいことがある。
【0052】
第1実施形態によれば、着用者側吸収体320における体液の保水性は、機能性吸収体310における体液の保水性よりも大きい。これによれば、着用者側吸収体320には、体液の吸収に使用されていない吸収可能領域が広く残存した状態で、体液が機能性吸収体310に移行するため、仮に、液戻りが発生した場合であっても、液戻りした体液を着用者側吸収体320で確実に吸収できる。
【0053】
第1実施形態によれば、着用者側吸収体320の保水性は、機能性吸収体310の保水性120%よりも大きいことが好ましい。なお、着用者側吸収体320の保水性が機能性吸収体310の保水性の120%よりも小さいと、液戻りが発生した場合であっても、液戻りした体液を着用者側吸収体320で吸収しにくくなってしまうことがある。
【0054】
第1実施形態によれば、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とは、ホットメルト接着剤によって接合される。仮に、着用者側吸収体320の体液の拡散性は、機能性吸収体310の体液の拡散性よりも小さい際に、機能性吸収体310及び着用者側吸収体320の少なくとも一部が圧縮されること(例えば、エンボス)によって接合されると、圧縮接合された部分に体液が集まりやすくなり、液戻りが発生した場合に、圧縮接合された部分から表面シート10側へ体液が漏出しやすくなってしまう。しかし、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とがホットメルト接着剤によって接合されることによって、着用者側吸収体320の体液の拡散性を、機能性吸収体310の体液の拡散性に近づけることなく、着用者側吸収体320の体液の拡散性は、機能性吸収体310の体液の拡散性よりも小さく維持できる。従って、着用者側吸収体320の吸収可能領域が残存するため、液戻りが発生した場合であっても、液戻りした体液を着用者側吸収体320で吸収できる。
【0055】
第1実施形態によれば、機能性吸収体310は、機能性材料と吸収性パルプとを有する。これによれば、機能性材料(すなわち、漢方薬材料)を均等に配置しやすくなる。つまり、機能性材料が一様に分散される。従って、機能性吸収体310の色相が偏らなずに、吸収性物品1の外観を損なうことなく、機能性吸収体310全体において、漢方薬材料が提供する付加機能を確実に発揮できる。
【0056】
第1実施形態によれば、表面シート10と着用者側吸収体320とが接合される複数のエンボス60間の間隔S1が、機能性吸収体310に圧力処理が施された複数のエンボス63間の間隔S2よりも広い。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63の表面積の比率よりも小さい。これによれば、機能性吸収体310全体の厚さが薄くなるとともに、機能性吸収体310全体の密度が大きくなる。このため、機能性吸収体310における体液の拡散性は、着用者側吸収体320における体液の拡散性よりも大きくなる。
【0057】
例えば、機能性吸収体310全体を平滑なロール等で一様に圧縮するよりも、ドット状に凸部のあるロール等で圧縮することによって、ひとつのドットあたりにかかる圧力が大きくなるため、機能性吸収体310、つまり、混合体311と外装シート312との接合力が高くなるとともに、機能性材料(すなわち、漢方薬材料)の動きを制限でき、機能性材料をさらに均等に配置できる。一方、着用者側吸収体320における体液の拡散性が機能性吸収体310における体液の拡散性よりも小さくなることによって、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制できる。
【0058】
(5)変更例
上述した第1実施形態に係る吸収性物品1は、以下のように変更してもよい。図5は、変更例に係る吸収性物品1Aを示す断面図である。なお、上述した第1実施形態に係る吸収性物品1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0059】
上述した第1実施形態に係る吸収性物品1では、吸収体30が機能性吸収体310と着用者側吸収体320とを有する。これに対して、変更例に係る吸収性物品1Aは、吸収体30が機能性吸収体310と着用者側吸収体320とに加え、非着用者側吸収体330を有する。
【0060】
具体的には、図5(a)に示すように、非着用者側吸収体330は、機能性吸収体310を通過した体液を吸収する。非着用者側吸収体330は、機能性吸収体310の非着用者側、つまり、裏面シート20と機能性吸収体310との間に配置される。
【0061】
非着用者側吸収体330は、ホットメルト接着剤等によって機能性吸収体310と間欠的に接合される。また、非着用者側吸収体330は、ホットメルト接着剤等によって裏面シート20に間欠的に接合される。
【0062】
非着用者側吸収体330としては、着用者側吸収体320と同様のエアレイドパルプや湿式パルプ不織布などによって形成されたシートによって構成される。
【0063】
エアレイドパルプは、NBKPパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)の重量比率が20〜90%、PE/PP又はPE/PET芯鞘繊維(もしくはサイドバイサイド繊維)が0〜70%、バインダー樹脂・酢酸ビニル樹脂、又はスチレン系熱可塑性エラストマー(例えば、SBSやSEBS)などの合成ゴムが2〜30%によって構成される。なお、非着用者側吸収体330には、目付40g/m2、厚み0.7mmのエアレイドパルプシートが使用される。エアレイドパルプシートの厚みは、0.2mm〜2.0mmが好ましく、特に、0.4mm〜1.6mmであることが好ましい。
【0064】
湿式パルプ不織布は、NBKP叩解パルプの重量比率が20〜90%、ポリエチレン短繊維SWPが0〜50%、レーヨン短繊維(1.1〜2.2dtex 繊維長3〜10mm)が0〜50%、紙力増強剤(カチオン化でんぷん等)が0.5〜4%である。なお、湿式パルプ不織布の全体目付は、20〜120g/m2であり、特に、25〜100g/m2であることが好ましい。
【0065】
変更例に係る吸収性物品1Aによれば、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とに加え、非着用者側吸収体330を有することによって、機能性吸収体310を通過した体液をより効率的に非着用者側吸収体330で吸収できる。
【0066】
ここで、非着用者側吸収体330は、必ずしもホットメルト接着剤等によって機能性吸収体310と間欠的に接合される必要はなく、例えば、図5(b)に示すように、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス65により機能性吸収体310と間欠的に接合されてもよい。
【0067】
これによれば、非着用者側吸収体330と機能性吸収体310とは、複数のエンボス65により接合されることによって、ホットメルト接着剤等によって接合される場合と比べて、接合強度が増大するとともに、着用者側吸収体320から非着用者側吸収体330への体液の連通性が高まり(すなわち、体液が非着用者側吸収体330へ移行されやすく)、着用者からの体液をより効率的に非着用者側吸収体330で吸収できる。
【0068】
[第2実施形態]
以下において、本発明に係る第2実施形態に係る吸収性物品100について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)吸収性物品の構成、(2)吸収体の構成、(3)吸収性物品の製造方法、(4)作用・効果について、説明する。なお、上述した第1実施形態に係る吸収性物品1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0069】
(1)吸収性物品の構成
まず、第2実施形態に係る吸収性物品100の構成について、図面を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態に係る吸収性物品100を示す上面展開図(平面図)である。図7は、第2実施形態に係る吸収性物品100を示す分解斜視図である。なお、本実施形態に係る吸収性物品100は、生理用ナプキンとする。
【0070】
図6及び図7に示すように、吸収性物品100は、表面シート10と、表面シート10と、吸収体30とに加え、表面シート10の側部における両側に配置されるサイドシート40とを備える。
【0071】
ここで、吸収性物品100には、吸収性物品100の幅方向WDにおける略中央に、長手方向LDに沿った吸収領域50が設けられている。吸収領域50は、表面シート10及び吸収体30によって構成される。吸収領域50には、表面シート10と機能性吸収体310及び非着用者側吸収体330との一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス66A,66Bが設けられる。
【0072】
吸収性物品100の側部における両側のそれぞれには、幅方向WD外側に延出するウィング部70L,70Rが形成される。ウィング部70L,70Rは、サイドシート40と裏面シート20とによって形成される。
【0073】
表面シート10としては、ポリエチレン/ポリプロピレンとした芯鞘構造の繊維(以下、PE/PP芯鞘構造繊維)70%と、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートとした芯鞘構造の繊維(以下、PE/PET芯鞘構造繊維)30%とからなるエアースルー不織布が挙げられる。例えば、表面シート10は、30g/m2である。
【0074】
サイドシート40は、表面シート10の幅方向WD外側で表面シート10と接する。具体的には、サイドシート40は、長手方向LDに沿って略等間隔で形成され、少なくとも一部が圧縮されることにより接合された複数のエンボス67よって、表面シート10と接合される。サイドシート40は、撥水性に優れた材料であることが好ましい。
【0075】
(2)吸収体の構成
次に、本発明の特徴である吸収体30の構成について、図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る吸収性物品100を示す断面図(図6のB−B断面図)である。
【0076】
図8に示すように、吸収体30は、機能性吸収体310と、着用者側吸収体320と、非着用者側吸収体330とを備える。
【0077】
(2−1)機能性吸収体
機能性吸収体310は、第1実施形態と同様に、混合体311を2枚の外装シート312で挟んだ後に圧力が加えられたシート状である。外装シート312の目付は、例えば、13〜16g/m2である。
【0078】
(2−2)着用者側吸収体
着用者側吸収体320には、吸収性パルプと同様のパルプ80%と、繊維長が7mm、繊度1.7dtexのPE/PET芯鞘構造繊維が17%と、カチオン化でんぷん3%とによって構成されるクレープ紙が挙げられる。例えば、着用者側吸収体320の目付は、30g/m2である。
【0079】
(2−3)非着用者側吸収体
非着用者側吸収体330は、着用者からの体液を吸収して保持する(いわゆる、本体吸収シートである)。非着用者側吸収体330は、機能性吸収体310及び着用者側吸収体320よりも非着用者側、つまり、裏面シート20と機能性吸収体310との間に配置される。非着用者側吸収体330は、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数のエンボス66A,66Bによって表面シート10と接合される。また、非着用者側吸収体330は、ホットメルト接着剤等によって裏面シート20と接合される。
【0080】
非着用者側吸収体330の密度は、5.5〜3.0g/m3であり、特に、0.6〜2.0g/m3であることが好ましい。非着用者側吸収体330は、高吸収ポリマーが混入された粉砕パルプ331を包込シート332で包まれる。
【0081】
粉砕パルプ331の厚みは、0.15〜0.7mmであり、特に、0.2〜0.6mmであることが好ましい。粉砕パルプ331の目付は、機能性吸収体310の配置領域において300〜500g/m2である。なお、粉砕パルプ331には、クレープ処理などが施されてもよい。粉砕パルプ331としては、吸収性パルプと同様に、エアレイドパルプや湿式パルプ不織布などが挙げられる。
【0082】
包込シート332の目付は、例えば、15g/m2である。なお、非着用者側吸収体330における機能性吸収体310が配置される領域以外の領域の目付は、180〜250g/m2であり、特に、190〜210g/m2であることが好ましい。例えば、包込シート332としては、エアスルー不織布やポイントボンド不織布、ティッシュ等が挙げられる。
【0083】
(3)吸収性物品の製造方法
次に、第2実施形態に係る吸収性物品100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る吸収性物品100の製造方法を示す図である。
【0084】
吸収性物品100の製造方法は、各部材成形工程と、第1接合工程と、第2接合工程と、第3接合工程、第4接合工程と、第5接合工程と、第6接合工程とを含む。
【0085】
(3−1)各部材成形工程
各部材成形工程では、表面シート10やサイドシート40、裏面シート20、吸収体30が成形される。例えば、非着用者側吸収体330を成形する場合、粉砕パルプ331を包込シート332で包み込むことによって、非着用者側吸収体330が成形される。
【0086】
(3−2)第1接合工程
図9(a)に示すように、第1接合工程では、表面シート10と着用者側吸収体320とが、ドット状の複数のエンボス60によって接合される。具体的には、表面シート10における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の表面シート10側の面の一部とが接合される。
【0087】
なお、表面シート10と着用者側吸収体320とが接合される複数のエンボス60における間の間隔S1は、機能性吸収体310(機能性材料及び外装シート)に圧力処理が施された複数のエンボス63間の間隔S2(図7参照)よりも大きい。すなわち、着用者側吸収体320の表面積に対する複数のエンボス60の表面積の比率は、機能性吸収体310の表面積に対する複数のエンボス63の表面積の比率よりも小さいことが好ましい。
【0088】
(3−3)第2接合工程
図9(b)に示すように、第2接合工程では、表面シート10とサイドシート40とが、複数のエンボス67によって接合される。具体的には、表面シート10におけるサイドシート40側の面の一部と、サイドシート40における表面シート10側の面の一部とが接合される。
【0089】
なお、表面シート10とサイドシート40とは、必ずしも複数のエンボス67によって接合される必要はなく、例えば、ホットメルト接着材等によって間欠的に接合されてもよい。
【0090】
(3−4)第3接合工程
図9(c)に示すように、第3接合工程では、機能性吸収体310と非着用者側吸収体330とが、複数のエンボス68によって接合される。具体的には、機能性吸収体310(外装シート312)における非着用者側吸収体330側の面の一部と、非着用者側吸収体330における機能性吸収体310側の面の一部とが接合される。
【0091】
なお、機能性吸収体310と非着用者側吸収体330とは、必ずしも複数のエンボス68によって接合される必要はなく、例えば、ホットメルト接着剤等によって間欠的に接合されてもよい。
【0092】
(3−5)第4接合工程
図9(d)に示すように、第4接合工程では、機能性吸収体310と着用者側吸収体320とが、ホットメルト接着剤等によって接合される。具体的には、機能性吸収体310(外装シート312)における着用者側吸収体320側の面の一部と、着用者側吸収体320の機能性吸収体310側の面の一部とが接合される。
【0093】
(3−6)第5接合工程
図9(e)に示すように、第5接合工程では、表面シート10と非着用者側吸収体330とが、上述した複数のエンボス66A,66Bによって接合される。具体的には、表面シート10における非着用者側吸収体330側の面の一部と、機能性吸収体310及び着用者側吸収体320が接合された非着用者側吸収体330における表面シート10側の面の一部とが接合される。なお、複数のエンボス66A,66Bは、機能性吸収体310の配置領域を除く位置に形成される。
【0094】
(3−7)第6接合工程
図9(f)に示すように、第6接合工程では、表面シート10の側部及び非着用者側吸収体330と、裏面シート20とが、ホットメルト接着材等によって接合される。具体的には、表面シート10及び非着用者側吸収体330における裏面シート20側の面の一部と、裏面シート20における表面シート10の面の一部とが接合される。
【0095】
(作用・効果)
第2実施形態に係る吸収性物品100によれば、第1実施形態の作用・効果と同様に、消臭機能や抗菌機能などの付加機能を提供する機能性材料が設けられる場合において、付加機能を確実に発揮できるとともに、リウェットを抑制できる。
【0096】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0097】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、表面シート10は、吸収体30よりも大きいものとして説明したが、これに限定されるものではなく、着用者側吸収体320と同一の大きさであっても勿論よい。
【0098】
機能性材料は、漢方薬材料であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、付加機能(例えば、消臭機能や抗菌機能、芳香機能、保温機能)を有する材料であれば特に制限はない。例えば、機能性材料として、ヨモギ、益母草(ヤクモソウ)、茶、ハッカ、紫蘇(シソ)、唐辛子、ウコン、ラベンダー、タイム、ティーツリー、アロエ等や、天然植物を乾燥させたもの等が挙げられる。さらに、機能性材料として、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム(CPC)など抗菌性を有した有機系又は無機系化合物粒子等も挙げられる。
【0099】
機能性吸収体310は、混合体311を外装シート312で挟むことによって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、混合体311を外装シート312で包むように形成されてもよい。この場合、外装シート312の幅方向WDにおける端部同士は、非着用者側吸収体330側で互いに重なり合うように設けられることが好ましい。また、機能性吸収体310は、外装シート312に部分的に混合体311を配置して外装シート312で被覆するものであってもよい。例えば、外装シート312に混合体311をストライプ状やドット状等に配置して外装シート312で被覆してもよい。また、機能性吸収体310は、所定のシートに機能性材料(漢方薬材料)を浸透させて乾かせて形成されたシート等であってもよいことは勿論である。
【0100】
吸収性物品1,100の製造方法については、本発明の吸収性物品1,100の製造が可能であれば特に順序については制限はない。
【0101】
吸収体30(特に、機能性吸収体310や着用者側吸収体320)は、パンティライナーや生理用ナプキンに設けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、成人用や子供用のオムツなど、液体を吸収する様々な物品に適用できる。例えば、吸収体30は、布ナプキンに設けられていてもよいことは勿論である。
【0102】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0103】
[比較評価]
以下において、本発明の効果をさらに明確にするために、以下の比較例及び実施例に係る吸収性物品を用いて行った試験結果について説明する。具体的には(1)拡散性評価、(2)保水性評価、(3)液戻り評価、(4)総合評価について説明する。
【0104】
ここで、比較例1,2及び実施例1,2に係る吸収性物品の構成については、表1に示す通りである。なお、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0105】
【表1】
【0106】
(1)拡散性評価
拡散性評価は、表1に示す比較例1,2及び実施例1,2の条件下で、25mm×150mmの各サンプルを3枚用意し、JIS−L1906「繊維製品の吸水性試験方法」に規定されている吸水速度(バイレック法)によって各吸収性物品の拡散性を測定した。
【0107】
具体的には、図10に示すように、液体(いわゆる、人工尿)が入ったシャーレに、各サンプルが10mm浸けられる。なお、液体は、水道水、生理食塩水(0.9%NaCl)、食用油及び着色剤(油;オイルレッド、水;食用青色)によって形成される。
【0108】
各吸収性物品において、図10(a)に示す各吸収性物品の長手方向LDに上昇した液体の高さH1と、図10(b)に示す各吸収性物品の幅方向WDに上昇した液体の高さH2とを測定した。なお、上述した液体が上昇する高さは、60秒までは10秒毎に測定され、その後300秒までは30秒毎に測定された。
【0109】
【表2】
【0110】
この結果、表2に示すように、実施例1,2に係る吸収性物品は、機能性吸収体のみの比較例1に係る吸収性物品に比べ、数値が小さいため、拡散性が小さいことが判る。なお、比較例2に係る吸収性物品は、他の吸収性物品に比べて拡散性が小さ過ぎる。
【0111】
(2)保水性評価
保水性評価は、表1に示す比較例1,2及び実施例1,2の条件下で、60mm×60mmの各サンプルを用意し、各サンプルの重量を測定する。そして、各サンプルをメッシュ状の金網上に置き、3分間トレイに入れた液体(いわゆる、人工尿)に浸ける。金網ごとサンプルを引き上げて、各サンプルの液体を軽く切り、5分間静置した。その後、金網とサンプルの重量、金網の重量を測定する。また、各サンプルをサンプル台上に置き、840gの重りを載せて3分間放置する。そして、各サンプルの試験前の重量と試験後の重量とを比較する。
【0112】
【表3】
【0113】
この結果、表3に示すように、実施例1に係る吸収性物品は、比較例1,2に係る吸収性物品に比べ、吸収体の重量が重いため、保水性に優れていることが判る。実施例2に係る吸収性物品は、機能性吸収体のみの比較例1と同等の保水性であることが判る。
【0114】
(3)液戻り評価
リウェット評価は、表1に示す比較例2及び実施例1の条件下で、60mm×30mmの機能性吸収体、及び150mm×70mmの着用者側吸収体をホットメルトにて接合し、各サンプルを用意した。図11に示すように、着用者側吸収体の中心部に液体(いわゆる、人工血液(1.0mm))を滴下し、3分間置いた。そして、液体を滴下した側から非着用者側吸収体及び着用者側吸収体上で拡散した液体の寸法(以下、拡散寸法)を測定した。なお、液体は、水道水及び生理食塩水(0.9%NaCl)によって形成される。
【0115】
その後、各サンプルにろ紙を重ねて銅製のスケール(20g/cm2)で3分間加重(圧力)を加えた。そして、3分間加重が加えられた後の非着用者側吸収体及び着用者側吸収体の拡散寸法を測定した。
【0116】
【表4】
【0117】
この結果、表4に示すように、スケールが加えられる前と後とにおいて、実施例1に係る吸収性物品では、着用者側吸収体及び機能性吸収体のそれぞれの拡散寸法が変化していない。一方、比較例2に係る吸収性物品では、着用者側吸収体及び機能性吸収体のそれぞれの拡散寸法が増加している。従って、実施例1に係る吸収性物品は、比較例2に係る吸収性物品と比べて、機能性吸収体から着用者側吸収体への液戻りの量が少ないないことが判った。
【0118】
(4)総合評価
以上のように、実施例1,2に係る吸収性物品は、比較例1,2に係る吸収性物品に比べ、非着用者側吸収体の拡散性が小さく、保水性が大きいため、液戻りが発生しにくいことが判った。
【0119】
なお、比較例1に係る吸収性物品は、着用者側吸収体が設けられていないため、いわゆる液戻りが発生した場合であっても、液体を吸収できない。また、比較例2に係る吸収性物品は、拡散性が小さいが、保水性も小さいため、いわゆる液戻りが発生した場合であっても、着用者側吸収体で液体を吸収できないことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1実施形態に係る吸収性物品1を示す上面展開図(平面図)である。
【図2】第1実施形態に係る吸収性物品1を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【図4】第1実施形態に係る吸収性物品1の製造方法を示す図である。
【図5】変更例に係る吸収性物品1Aを示す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る吸収性物品100を示す上面展開図(平面図)である。
【図7】第2実施形態に係る吸収性物品100を示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る吸収性物品100を示す断面図(図6のB−B断面図)である。
【図9】第2実施形態に係る吸収性物品100の製造方法を示す図である。
【図10】比較評価において、保水性評価を説明するための図である。
【図11】比較評価において、リウェット評価を説明するための図である。
【符号の説明】
【0121】
1,1A,100…吸収性物品、10…表面シート、20…裏面シート、30…吸収体、40…サイドシート、50…吸収領域、60〜63,65〜68…エンボス、70L,70R…ウィング部、310…機能性吸収体、311…混合体、312…外装シート、320…着用者側吸収体、330…非着用者側吸収体、331…粉砕パルプ、332…包込シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者側に設けられる液透過性の表面シートと、
前記表面シートよりも非着用者側に設けられる裏面シートと、
前記着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品の中央部分、かつ前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられ、少なくとも付加機能を提供する機能性材料を含む機能性吸収体と
を備える吸収性物品であって、
前記機能性吸収体よりも前記着用者側に設けられ、前記機能性吸収体よりも大きく、かつ前記機能性吸収体を覆う着用者側吸収体を備え、
前記着用者側吸収体における前記体液の拡散性は、前記機能性吸収体における前記体液の拡散性よりも小さい吸収性物品。
【請求項2】
前記機能性吸収体は、前記機能性材料が外装シートで被覆された後に圧力が加えられ、少なくとも一部が圧縮されることによって接合されたシート状である請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記着用者側吸収体の保水性は、前記機能性吸収体の保水性よりも大きい請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートと前記着用者側吸収体とは、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数の第1接合部によって接合され、
前記機能性吸収体は、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数の第2圧縮部を有し、
前記第1接合部同士の間隔は、前記第2圧縮部同士の間隔よりも広い請求項1乃至3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記機能性吸収体の非着用者側に設けられ、前記機能性吸収体からの前記体液を吸収する非着用者側吸収体をさらに備える請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記機能性吸収体と前記着用者側吸収体とは、ホットメルト接着剤によって接合される請求項1乃至5の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記機能性吸収体は、前記機能性材料と吸収性パルプとによって構成される請求項1乃至6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項1】
着用者側に設けられる液透過性の表面シートと、
前記表面シートよりも非着用者側に設けられる裏面シートと、
前記着用者からの体液の流出箇所に対応する吸収性物品の中央部分、かつ前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられ、少なくとも付加機能を提供する機能性材料を含む機能性吸収体と
を備える吸収性物品であって、
前記機能性吸収体よりも前記着用者側に設けられ、前記機能性吸収体よりも大きく、かつ前記機能性吸収体を覆う着用者側吸収体を備え、
前記着用者側吸収体における前記体液の拡散性は、前記機能性吸収体における前記体液の拡散性よりも小さい吸収性物品。
【請求項2】
前記機能性吸収体は、前記機能性材料が外装シートで被覆された後に圧力が加えられ、少なくとも一部が圧縮されることによって接合されたシート状である請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記着用者側吸収体の保水性は、前記機能性吸収体の保水性よりも大きい請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートと前記着用者側吸収体とは、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数の第1接合部によって接合され、
前記機能性吸収体は、少なくとも一部が圧縮されることによって接合された複数の第2圧縮部を有し、
前記第1接合部同士の間隔は、前記第2圧縮部同士の間隔よりも広い請求項1乃至3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記機能性吸収体の非着用者側に設けられ、前記機能性吸収体からの前記体液を吸収する非着用者側吸収体をさらに備える請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記機能性吸収体と前記着用者側吸収体とは、ホットメルト接着剤によって接合される請求項1乃至5の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記機能性吸収体は、前記機能性材料と吸収性パルプとによって構成される請求項1乃至6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−110443(P2010−110443A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284889(P2008−284889)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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