説明

吸収性物品

【課題】吸収体のよれの発生が効果的に防止された吸収性物品を提供する。
【解決手段】一部が液透過性材料からなるトップシート18と、このトップシート18の一方の面側に配置される液不透過性材料からなるバックシート20と、トップシート18とバックシート20の間に配置された吸収体22と、を備え、吸収体22は、長手方向の全部に沿って、一方の面から他方の面に貫通する曲線状の貫通溝部23が形成されるとともに、吸収体22の貫通溝部23の側面23a,23bを覆うように仕切り部35が形成されている吸収性物品10a。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、更に詳しくは、吸収体のよれの発生が効果的に防止された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品は、尿などの排泄液を吸収する使い捨ておむつ(例えば、テープ型使い捨ておむつ、パンツ型使い捨ておむつ、尿パッド等)や、経血を吸収する生理用ナプキン、おりものを吸収するおりものシートなどで利用されている。
【0003】
これらの中で、例えば、テープ型使い捨ておむつは、前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成され、吸収体と、この吸収体の表面を被覆するように配置された、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の裏面を被覆するように配置された、液不透過性材料からなるバックシートと、後身頃の左右の側縁に少なくとも1つずつ配置された、後身頃と前身頃とを固定する止着テープと、前身頃に形成された、止着テープを固定する止着領域と、を備えたものを挙げることができる。
【0004】
そして、このような吸収性物品によれば、着用者の排泄物は、トップシートの液透過性の部分を透過して吸収体に吸収されるとともに、液不透過性の材料で構成されるバックシートによって外部への漏洩が防止されるため、排泄物をおむつ内部に保持することができる。
【0005】
上記吸収体としては、着用時のねじれやよれ等を防止するために、吸収体を分割して複数の長方形状の吸収体片を得、得られた複数の前記吸収体片を相互に離間させて配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2−84623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された使い捨ておむつは、吸収体を構成するパルプなどが、吸収体の長手方向に移動して、よれが生じてしまう場合があった。吸収体のよれが生じると、着用感が悪く、長時間着用する場合には、着用者にとって大きな負担になることがあった。また、よれが生じることによって、吸収体の機能が十分に発揮されず、漏れなどの原因になるおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、吸収体のよれの発生が効果的に防止された吸収性物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す吸収性物品が提供される。
【0010】
[1]少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記トップシートの一方の面側に配置される液不透過性材料からなるバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収体と、を備え、前記吸収体は、長手方向の少なくとも一部に沿って、一方の面から他方の面に貫通する曲線状の貫通溝部が形成されるとともに、前記吸収体の前記貫通溝部の側面を覆うように仕切り部が形成されている吸収性物品。
【0011】
[2]前記貫通溝部は、前記吸収体の一方の端縁から他方の端縁まで延びている前記[1]に記載の吸収性物品。
【0012】
[3]前記貫通溝部は、前記吸収体の一方の端縁から中央部まで延びる複数の一方側貫通溝部と、前記吸収体の他方の端縁から中央部まで延びる複数の他方側貫通溝部と、を有している前記[1]に記載の吸収性物品。
【0013】
[4]前記吸収体と前記トップシートの間に配置される上側液透過性シートと、前記吸収体と前記バックシートの間に配置される下側液透過性シートと、を更に備え、前記仕切り部は、前記上側液透過性シートと前記下側液透過性シートとを互いに接着することによって形成される前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0014】
[5]前記吸収体は、前記トップシートと前記バックシートの間にその厚さ方向に複数積層されている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0015】
[6]複数積層されている前記吸収体の間には、前記吸収体の前記貫通溝部の側面の間の領域以外の領域に中間液透過性シートが配置されている前記[5]に記載の吸収性物品。
【0016】
[7]複数積層されている前記吸収体の間には、前記吸収体の前記貫通溝部の側面の間の領域を覆うように中間液透過性シートが配置されている前記[5]に記載の吸収性物品。
【0017】
[8]前記仕切り部は、前記吸収体の短手方向に並んで複数形成されており、前記複数の仕切り部のうち、一方の側縁に最も近い仕切り部及び他方の側縁に最も近い仕切り部は、長手方向の中間部における形状が、互いの頂点が対向するような円弧状である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0018】
本発明の吸収性物品は、吸収体のよれの発生が効果的に防止されているという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の吸収性物品の一の実施形態を示す一部切り欠き平面図であり、吸収性物品をトップシート側から見た状態を示す図である。
【図2】図1に示す吸収性物品をA−A’線に沿って切断した断面を示す概略拡大断面図である。
【図3】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図1に対応する平面図である。
【図4】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図1に対応する平面図である。
【図5】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図1に対応する平面図である。
【図6】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図1に対応する平面図である。
【図7】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す、図2に対応する概略拡大断面図である。
【図8】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図2に対応する概略拡大断面図である。
【図9】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図2に対応する概略拡大断面図である。
【図10】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図2に対応する概略拡大断面図である。
【図11】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図2に対応する概略拡大断面図である。
【図12】本発明の吸収性物品の製造工程の一例を示す模式図である。
【図13】図12に示す製造工程に用いるフォーミングドラムを示す斜視図である。
【図14】本発明の吸収性物品の別の実施形態であるテープ型おむつを示す一部切り欠き平面図であり、テープ型おむつを展開し、トップシート側から見た状態を示す図である。
【図15】本発明の吸収性物品の別の実施形態であるパンツ型おむつを示す概略斜視図であり、パンツ型おむつをその前方から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0021】
[1]吸収性物品:
本発明の吸収性物品の一実施形態は、図1に示す吸収性物品10aのように、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシート18と、このトップシート18の一方の面側に配置される液不透過性材料からなるバックシート20と、トップシート18とバックシート20の間に配置された吸収体22と、を備え、吸収体22は、長手方向(図1に示すYの方向)の全部に沿って、一方の面から他方の面に貫通する曲線状の貫通溝部23が形成されるとともに、吸収体22の貫通溝部23の側面23a,23bを覆うように仕切り部35が形成されているものである。このように構成することによって、本発明の吸収性物品は、吸収体のよれの発生が効果的に防止される。そのため、着用感を向上させることができ、長時間着用する場合であっても、着用者に負担を与え難くなる。また、吸収体のよれが生じることに起因する漏れなどを防止することができる。また、曲線状の貫通溝部が長手方向に沿って形成されているので、貫通溝部に尿などの排泄物が流入しても、その尿などが貫通溝部に沿って前後に移動し難い。そのため、漏れが生じ難く、確実に吸収体に吸収させることができる。
【0022】
図1に示す吸収性物品10aは、その吸収体22の長手方向の全部に沿って曲線状の貫通溝部23が形成される例、即ち、貫通溝部23が、吸収体22の一方の端縁から他方の端縁まで延びている例であるが、吸収体の長手方向の一部に沿って、即ち、一方の端縁と他方の端縁との間の一部に形成されていてもよい。例えば、図6に示す吸収性物品10jは、一方の端縁15aと他方の端縁15bとの間の一部に貫通溝部23が形成されている例である。具体的には、吸収性物品10jの吸収体22には、この吸収体22の一方の端縁15aから中央部まで延びる2つの一方側貫通溝部24a,24aと、吸収体22の他方の端縁15bから中央部まで延びる2つの他方側貫通溝部24b,24bと、を有する貫通溝部23が形成されている。このように、本発明の吸収性物品において、吸収体の貫通溝部は、吸収体の長手方向に沿って形成される曲線状である限りその位置や形状に制限はない。
【0023】
なお、図1は、本発明の吸収性物品の一の実施形態を示す一部切り欠き平面図であり、吸収性物品10aをトップシート18側から見た状態を示しており、図2は、図1に示す吸収性物品10aをA−A’線に沿って切断した断面を示す概略拡大断面図である。図1〜15において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0024】
図1に示す吸収性物品10aは、例えば、経血を吸収する生理用ナプキン、おりものを吸収するおりものシート等として利用することができる。なお、本発明の吸収性物品としては、上記生理用ナプキン、おりものシート以外に、尿などの排泄物を吸収性する使い捨ておむつ(例えば、テープ型おむつ、パンツ型おむつ、尿パッド等)も挙げることができる。
【0025】
[1−1]トップシート:
トップシートは、少なくとも一部が液透過性材料からなるものであり、吸収性物品の使用時において着用者の肌側に位置するシートである。
【0026】
トップシートは、そのバックシート側に配置された吸収体に、着用者の尿を吸収させるために、その少なくとも一部(全部ないし一部)が液透過性材料により構成される。通常、少なくとも吸収体の表面近傍については、着用者の尿や体液を透過させ得る液透過性の材料によって構成される。少なくとも一部が液透過性材料により構成されている限り、必ずしもトップシート全体が液透過性材料で構成されている必要はない。
【0027】
トップシートを構成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。これらの中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン(登録商標)等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。不織布の種類についても特に制限はなく、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス、スパンボンド等の各種製法によって製造された従来公知の不織布を好適に用いることができる。
【0028】
[1−2]バックシート:
バックシートは、トップシートの一方の面側に配置される液不透過性材料からなるものであり、吸収性物品の使用時において着用者の着衣側に位置するシートである。
【0029】
バックシートは、着用者の尿が吸収性物品の外部に漏洩してしまうことを防止するため、液不透過性材料によって構成されている。その配置方法については特に制限はなく、例えば、トップシートと一致するように、バックシートを配置する構成を採用することができる。なお、吸収体で吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の存在する部分に液不透過性材料からなるバックシートを配置することが好ましい。
【0030】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。これらの中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、吸収性物品内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0031】
なお、バックシートには、その外表面側にシート材(カバーシート)を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、手触り(触感)を良好なものとするために用いられるものである。
【0032】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0033】
[1−3]吸収体:
吸収体は、着用者の尿を吸収し、保持するため、吸収性材料によって構成される部材であり、トップシートとバックシートの間に配置されるものである。そして、本発明の吸収性物品の吸収体は、長手方向の少なくとも一部に沿って、一方の面から他方の面に貫通する曲線状の貫通溝部が形成されるものである。このように、曲線状の貫通溝部を形成するとともに、この貫通溝部の側面を覆うように仕切り部を形成することによって、吸収体を構成するパルプやSAPが、吸収体の短手方向及び長手方向に沿って移動することを制限することができるため、吸収体のよれなどの不具合の発生を防止することができる。
【0034】
吸収体を構成する吸収性材料としては、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す)、親水性シート等を挙げることができる。フラッフパルプとしては、木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを用いることが好ましく、SAPとしては、ポリアクリル酸ナトリウムを用いることが好ましい。そして、親水性シートとしては、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることが好ましい。
【0035】
フラッフパルプとSAPを材料として用いる場合、SAPの含有量は、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部程度であることが好ましい。なお、SAPは、フラッフパルプの各マット中に均一に混合されていてもよいし、複層のフラッフパルプの層間に層状に配置されていてもよい。
【0036】
吸収体の貫通溝部は、上述したように、吸収体の長手方向の少なくとも一部に沿って、一方の面から他方の面に貫通する曲線状である限りその位置や形状に制限はない。例えば、吸収体の一方の端縁から他方の端縁まで延びていることが好ましい。このような貫通溝部(以下、「分割貫通溝部」と記す場合がある)を形成すると、吸収体は分割され、吸収体の短手方向に並んで配置される複数の吸収体片から構成されるようになる。このとき、複数の吸収体片のうち、隣り合う吸収体片は、隣り合う側縁の形状(吸収体を一方の面側(例えば、トップシート側)から見たときに、貫通溝部の側面が描く軌跡)が相補的な曲線状である。例えば、図1に示す吸収性物品10aは、吸収体22が、貫通溝部23によって、2つの吸収体片22−1,22−1に分割され、これらの吸収体片22−1,22−1が、吸収体22の短手方向(図2に示すXの方向)に並んで配置されている。このとき、隣り合う吸収体片22−1,22−1は、隣り合う側縁23a,23bの形状が相補的な曲線状になっている。
【0037】
分割貫通溝部の数、即ち、吸収体片の数は、特に制限はなく、例えば、短手方向に並んで2〜6個配置されることが好ましく、3個配置されることが特に好ましい。
【0038】
上述したように、吸収体に分割貫通溝部を形成した場合、吸収性物品が、その長手方向に沿って折り曲げられたとき、隣り合う吸収体片の間の部分で容易に折り曲がるため、吸収体(吸収体片)に大きな折曲力が作用することがなく、吸収体が破損し難くなるという利点がある。
【0039】
例えば、図1に示す吸収性物品10aは、2つの吸収体片22−1,22−1が、トップシート18とバックシート20との間に、その短手方向に並んで配置されている例を示しており、図3は、3つの吸収体片22−2,22−2,22−2が、トップシート18とバックシート20との間に、その短手方向(図3に示すXの方向)に並んで配置されている例を示している。
【0040】
貫通溝部の形状は、曲線状である限り特に制限はなく、波形状などとすることができる。具体的には、図1に示す貫通溝部23のように凸部を1つ有するような波形状、図5に示す貫通溝部23のように凸部を2つ有するような波形状などを挙げることができる。このように貫通溝部の数や形状は適宜設定することができるが、図4に示す吸収性物品10cや図5に示す吸収性物品10dのように形成することが好ましい。即ち、図4に示す吸収性物品10cや図5に示す吸収性物品10dのように、2つの分割貫通溝部23を、吸収体22の長手方向の中間部28において互いの間隔が狭くなるように対称に形成することが好ましい。この場合には、分割貫通溝部23のうち、中間部28に位置する部分が、着用者の脚周りに沿うことになるため、吸収性物品のフィット性が向上するという利点がある。また、吸収体を構成するパルプやSAPが吸収体の長手方向に沿って移動することをより確実に制限することができる。
【0041】
また、吸収体の貫通溝部は、吸収体の一方の端縁から中央部まで延びる複数の一方側貫通溝部と、吸収体の他方の端縁から中央部まで延びる複数の他方側貫通溝部と、を有していることも好ましい。このような構成とすると、上述したように、吸収性物品のフィット性が向上すること、及び、パルプやSAPの移動を制限すること(即ち、吸収体のよれを防止することができること)に加えて、吸収体が千切れ難くなるという利点がある。即ち、貫通溝部が接近し過ぎると、吸収体の幅が狭くなり過ぎるため、この狭くなった部分において吸収体が千切れ易くなるが、上記構成とすることによって吸収体を千切れ難くすることができる。
【0042】
例えば、図6に示す吸収性物品10jの吸収体22は、上述したように、吸収体22の一方の端縁15aから中央部まで延びる2つの一方側貫通溝部24a,24aと、吸収体22の他方の端縁15bから中央部まで延びる2つの他方側貫通溝部24b,24bと、を有する貫通溝部23が形成されている。そして、これらの一方側貫通溝部24a,24aと他方側貫通溝部24b,24bは、吸収体22の長手方向の中間部28において互いの間隔が狭くなるように対称に形成されている。このような構成の吸収性物品は、各貫通溝部が接近し過ぎることがないため、上述したように、フィット性が向上されるとともに、よれが防止され、更に、吸収体が千切れ難いという利点がある。
【0043】
隣り合う吸収体片の間の間隔(図1に示す距離d)、即ち、貫通溝部の幅は、例えば、3〜20mmであることが好ましく、5〜15mmであることが特に好ましい。ここで、隣り合う吸収体片の間隔が20mm以下であれば、着用状態において、その股下部分で隣り合う吸収体片の間隔がなくなるくらいに、隣り合う吸収体片がその幅方向に寄るため、フィット性及び尿などの排泄物の吸収性能が向上するという利点がある。上記距離が3mm未満であると、例えば、吸収体の製造時において、隣り合う吸収体片の間に吸収体を構成するパルプが入り込むことに起因して、隣り合う吸収体片の間に隙間を確保することが困難になるおそれがある。一方、隣り合う吸収体片の間隔が20mm超であると、吸収体が配置されていない部分の面積が大きくなり過ぎ、尿などの排泄物を十分に吸収することができなくなるおそれがある。
【0044】
[1−4]仕切り部:
仕切り部は、吸収体の貫通溝部の側面を覆うように形成されるものである限り特に制限はなく、例えば、トップシートとバックシートとを互いに接着させることによって形成されるものであってもよいし、後述する液透過性シートを用いる場合には、液透過性シート同士を互いに接着させることによって形成されるものであってもよい。なお、液透過性シート同士を互いに接着させることによって形成されるものであることが好ましい。このように仕切り部を形成することによって、仕切り部が、その他の部分よりも薄くなるため、仕切り部に沿って吸収性物品が折れ曲がり易くなる。そのため、着用者の脚周りにフィットし易くなり、吸収性物品の着用感が向上する。
【0045】
なお、貫通溝部を、上述した分割貫通溝部とした場合、貫通溝部の側面を覆うように形成された仕切り部によって各吸収体片が互いに仕切られる。即ち、各吸収体片は、仕切り部によって互いに仕切られた空間内に配置されることになる。このように仕切り部によって互いに仕切られることによって、吸収体は、吸収性物品の短手方向の移動が制限されるため、吸収体が、吸収性物品の短手方向に移動することに起因するよれなどの不具合の発生を効果的に防止することができる。また、仕切り部が曲線状であることによって、例えば、仕切り部が窪んで形成されている場合に、この仕切り部に流入した尿などの排泄物が、仕切り部に沿って吸収体の前後に移動してしまうことを防止することができるため、漏れの発生を防止することができる。
【0046】
トップシートとバックシートまたは液透過性シート同士を互いに接着させる方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができるが、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤、ヒートシールなどの熱や超音波等による溶着による方法を挙げることができる。このとき、トップシートまたはトップシート側の液透過性シート(以下、「表面シート」と記す場合がある)側から吸収体の裏面(バックシート)側に向って表面シートを加圧して、表面シートを、バックシートまたはバックシート側の液透過性シート(以下、「裏面シート」と記す場合がある)に接着させることが好ましい。このように加圧して接着させると、図2に示す吸収性物品10aのように、吸収体22(22−1,22−1)の間に窪み(仕切り部35)が形成される。このような窪みが形成されると、尿などの排泄物が排泄されたときに、この排泄物が、窪みに沿って拡散するため、排泄物の吸収速度が向上するという利点がある。
【0047】
仕切り部は、上述した条件を満たす限り、その数、形状、位置などは特に制限はない。例えば、図1及び図2に示す吸収性物品10aの仕切り部35のように、貫通溝部23の両側面を覆う一体のシートから構成されていてもよいし、貫通溝部23の各側面をそれぞれ覆う別体のシートから構成されていてもよい。
【0048】
また、仕切り部は、吸収体の短手方向に並んで複数形成されており、複数の仕切り部のうち、一方の側縁に最も近い仕切り部及び他方の側縁に最も近い仕切り部は、吸収性物品の長手方向の中間部における形状が、互いの頂点が対向するような円弧状であることが好ましい。このような構成によって、吸収性物品を着用した際に、着用者の脚周りに沿って右端仕切り部と左端仕切り部が折れ曲がるため、着用感が更に向上するという利点がある。
【0049】
例えば、図4に示す吸収性物品10cは、2つの仕切り部35,35が形成されており、これらの仕切り部35,35が吸収性物品10cの長手方向(図4に示すYの方向)の中間部28において互いに近接するような円弧状の部分35aを有する曲線状である例を示している。また、図5に示す吸収性物品10dは、2つの仕切り部35,35が形成されており、これらの仕切り部35,35が吸収性物品10dの長手方向(図5に示すYの方向)の中間部28において互いに近接するような円弧状の部分35aを有する曲線状である例を示している。なお、図4に示す吸収性物品10c及び図5に示す吸収性物品10dは、2つの仕切り部35,35が形成された例であるが、3つ以上の仕切り部が形成されていてもよい。
【0050】
[1−5]液透過性シート:
本発明の吸収性物品は、吸収体とトップシートの間に配置される上側液透過性シートと、吸収体と前記バックシートの間に配置される下側液透過性シートと、を更に備え、仕切り部は、上側液透過性シートと下側液透過性シートとを互いに接着することによって形成されることが好ましい。このように液透過性シートを配置すると、この液透過性シートが尿などの排泄物を一旦保持するとともに拡散させるため、吸収体全体を有効に使用することができ、吸収速度の遅い吸収体では吸収しきれなかった尿などの排泄物が漏れてしまうことを防止することができる。このようにして排泄物の吸収速度を向上させることができるという利点がある。なお、「上側液透過性シートと下側液透過性シートとを互いに接着する」とは、上側液透過性シートと下側液透過性シートとを直接的または間接的に互いに接着することを意味し、上側液透過性シートと下側液透過性シートとの間に中間液透過性シートが存在する場合には、上側液透過性シートと下側液透過性シートとが、中間液透過性シートを介して間接的に互いに接着することがある。
【0051】
上側液透過性シート、下側液透過性シートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性プラスチック、フラッフパルプ等を挙げることができる。これらの構成素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、レーヨン、パルプ、または、これらの複合繊維等を挙げることができる。パルプとしては、カーリーセルロースファイバー等のけん縮繊維を好適に用いることができる。
【0052】
上側液透過性シート(上述した表面シート)としては、液透過性のシート、例えばティシュペーパーが適用可能である。この上側液透過性シートは、トップシートに部分的に接着されていることが好ましい。また、下側液透過性シート(上述した裏面シート)としては、上側液透過性シートと同様にティシュペーパーが適用可能であるが、必ずしも液透過性であることを要せず、疎水性シートであってもよい。この下側液透過性シートは、バックシートへの接着の有無を問わず、バックシートに接着してもよいし、バックシートに接着しなくてもよい。
【0053】
上側液透過性シートと下側液透過性シートとを互いに接着する方法は、上述した、液透過性シートどうしを互いに接着させる方法と同様の方法を採用することができる。
【0054】
図1及び図2に示す吸収性物品10aは、吸収体22とトップシート18の間に配置される上側液透過性シート43と、吸収体22とバックシート20の間に配置される下側液透過性シート44と、を更に備え、仕切り部35は、上側液透過性シート43と下側液透過性シート44とを互いに接着することによって形成されている例である。
【0055】
[1−6]積層された吸収体:
吸収体は、トップシートとバックシートとの間に、吸収性物品の厚さ方向に積層して配置するようにしてもよい。
【0056】
図7は、トップシートとバックシートとの間に、吸収性物品10eの厚さ方向に積層(2層)配置された吸収体22を備える吸収性物品10eを示す例であり、各吸収体22は、その短手方向に一列に配列される吸収体片から構成されている。なお、以下、その短手方向に配列される複数の吸収体片から構成される吸収体を吸収層と記す場合がある。
【0057】
図7に示す吸収性物品10eは、バックシート20側に位置し、その短手方向に配列される3つの吸収体片22a,22b,22cからなる第一の吸収層31aと、この第一の吸収層31aのトップシート18側の面上に(即ち、吸収性物品10eの厚さ方向に)、第一の吸収層31aと同じ形状の3つの吸収体片22d,22e,22fからなる第二の吸収層31bと、第一の吸収層31aとトップシート18との間に配置される上側液透過性シート43と、第二の吸収層31bとバックシート20との間に配置される下側液透過性シート44と、を備えている例である。そして、図7に示す吸収性物品10eは、複数(6つ)の吸収体片を、積層された2つの吸収体片毎に仕切り部35によって仕切っているものである。そして、仕切り部35は、上側液透過性シート43と下側液透過性シート44とを互いに接着することによって形成されている。
【0058】
本発明の吸収性物品は、複数積層されている吸収体の間に中間液透過性シートが更に配置されることが好ましい。具体的には、この中間液透過性シートは、吸収体の貫通溝部の側面の間の領域以外の領域に配置されることが好ましい。例えば、図8に示す吸収性物品10fは、吸収体22の貫通溝部23の側面の間の領域(即ち、仕切り部35が形成されている領域)以外の領域に中間液透過性シート25a,25b,25cが配置されている例である。中間液透過性シートを構成する材料としては、上側液透過性シートを構成する材料と同様の材料を例示することができる。
【0059】
なお、図8に示す吸収性物品10fは、トップシート18とバックシート20との間に、その短手方向に配列される3つの吸収体片22a,22b,22cからなる第一の吸収層31aと、3つの吸収体片22a,22b,22cのそれぞれの上に(即ち、吸収性物品10fの厚さ方向に)積層された、3つの吸収体22a,22b,22cのそれぞれと同じ形状の3つの吸収体22d,22e,22fからなる第二の吸収層31bと、第一の吸収層31aとトップシート18との間に配置された上側液透過性シート43と、第二の吸収層31bとバックシート20との間に配置された下側液透過性シート44と、を備え、第一の吸収層31aを構成する各吸収体22a,22b,22cと第二の吸収層31bを構成する各吸収体22d,22e,22fとの間に、それぞれ中間液透過性シート25a,25b,25cを配置した例を示している。そして、仕切り部35は、上側液透過性シート43と下側液透過性シート44とを互いに接着することによって形成されている。
【0060】
また、中間液透過性シートは、吸収体の貫通溝部の側面の間の領域を覆うように配置されていることも好ましい。例えば、図9に示す吸収性物品10gは、吸収体22の貫通溝部23の側面の間の領域(即ち、仕切り部35が形成されている領域)を覆うように中間液透過性シート25dが配置されている例である。
【0061】
なお、図9に示す吸収性物品10gは、トップシート18とバックシート20との間に、その短手方向に配列される3つの吸収体片22a,22b,22cからなる第一の吸収層31aと、3つの吸収体片22a,22b,22cのそれぞれの上に(即ち、吸収性物品10gの厚さ方向に)積層された、3つの吸収体片22a,22b,22cのそれぞれと同じ形状の3つの吸収体片22d,22e,22fからなる第二の吸収層31bと、第一の吸収層31aとトップシート18との間に配置された上側液透過性シート43と、第二の吸収層31bとバックシート20との間に配置された下側液透過性シート44と、を備え、トップシート18の短手方向に配列される3つの吸収体片22a,22b,22c(即ち、3つの吸収体片22d,22e,22f)に亘って中間液透過性シート25dを配置した例を示している。そして、仕切り部35は、上側液透過性シート43と中間液透過性シート25dとを互いに接着させるとともに、中間液透過性シート25dと下側液透過性シート44とを互いに接着することによって形成されている。
【0062】
吸収体が、吸収性物品の厚さ方向に積層されている場合、積層される吸収体の形状や数、及び、吸収体に形成されている貫通溝部の数や形状は特に制限はなく、例えば図8に示す吸収性物品10fのように、同じ形状の吸収体を積層させてもよいし、図10に示す吸収性物品10hのように、異なる形状の吸収体を積層させてもよい。また、図7〜図10に示す吸収性物品10e,10f,10g,10hのように2層構造であってもよいし、図11に示す吸収性物品10iのように、3層構造であってもよく、また4層構造以上であってもよい。
【0063】
図10に示す吸収性物品10hは、トップシート18とバックシート20との間に、その短手方向に配列される2つの吸収体片22g,22hからなる第一の吸収層31aと、2つの吸収体片22g,22hの上に(即ち、吸収性物品10の厚さ方向に)積層された、吸収体片22g,22hと異なる形状の3つの吸収体片22i,22j,22kからなる第二の吸収層31bと、第一の吸収層31aとトップシート18との間に配置された上側液透過性シート43と、第二の吸収層31bとバックシート20との間に配置された下側液透過性シート44と、を備え、吸収性物品10hの短手方向に配列される2つの吸収体片22g,22h(3つの吸収体片22i,22j,22k)に亘って中間液透過性シート25dを配置した例を示している。そして、仕切り部35は、上側液透過性シート43と中間液透過性シート25dとを互いに接着させるとともに、中間液透過性シート25dと下側液透過性シート44とを互いに接着することによって形成されている。
【0064】
吸収性物品10hでは、第一の吸収層31aの仕切り部35と第二の吸収層31bの仕切り部35とが位置をずらして配置されている。このような構成の吸収性物品10hでは、第一の吸収層31aの仕切り部35に流入した尿等を第二の吸収層31bで確実に吸収することができる。
【0065】
図11に示す吸収性物品10iは、トップシート18とバックシート20との間に、その短手方向に配列される3つの吸収体片61,61,61からなる第一の吸収層31aと、この第一の吸収層31a上に(即ち、吸収性物品10iの厚さ方向に)配置された、3つの吸収体片61,61,61からなる第二の吸収層31bと、この第二の吸収層31b上に配置された、3つの吸収体片61,61,61からなる第三の吸収層31cと、第一の吸収層31aとトップシート18との間に配置された上側液透過性シート43と、第三の吸収層31cとバックシート20との間に配置された下側液透過性シート44と、を備え、各吸収層の間に、短手方向に配列される3つの吸収体61,61,61に亘って中間液透過性シート25e,25fがそれぞれ配置された例を示している。そして、仕切り部35は、上側液透過性シート43と中間液透過性シート25fとを互いに接着させ、中間液透過性シート25fと中間液透過性シート25eとを互いに接着させ、更に、中間液透過性シート25eと下側液透過性シート44とを互いに接着することによって形成されている。
【0066】
[1−7]吸収性物品の製造方法:
上述した吸収性物品は、以下のように製造することができる。まず、複数の吸収体を形成する。吸収体を形成するためには、図12に示すような吸収体製造装置200を用いることができる。この吸収体製造装置200は、フォーミングドラム50と、このフォーミングドラム50の外周面に対向する位置に配置される、パルプ積層機51と、SAPの投入ノズル52と、を備えている。フォーミングドラム50は、図13に示すように、その外周面に、所定の目開き寸法の網目が形成された凹部55を一定の間隔で有するものであり、凹部55内には、得られる吸収体を構成する吸収体片が離間するように凸状部材56が配置されている。
【0067】
吸収体を形成するには、連続的に回転するフォーミングドラム50の外周面の凹部55内にパルプ積層機51から粉砕パルプを供給するとともに、投入ノズル52からSAPを供給する。このとき、フォーミングドラム50内に配置される吸引装置によって、凹部55の網目を介して空気を吸引し、吸引圧により凹部55内に粉砕パルプとSAPを積層させる。このようにして、図12に示す吸収体27を複数得ることができる。なお、フォーミングドラム50によって得られる吸収体27は、一方の端縁から他方の端縁まで延びる貫通溝部を有している。即ち、所定方向に配列された複数の吸収体片から構成される吸収体(吸収体群)27を複数得ることができる。
【0068】
なお、図12及び図13に示すフォーミングドラム50は、その周方向に沿って一定間隔で、複数の吸収体(複数の吸収体群)27の平面形状に対応した凹部55を形成した例であるが、これに限らず、フォーミングドラムの周方向に沿って連続した連続凹部(凹部55を間隔をあけずに連続的に形成して得られる形状の凹部)を形成するとともに、上記連続凹部内に、フォーミングドラムの周方向に沿って連続するリング状の凸状部材を配置し、このフォーミングドラムによって吸収体を連続して形成し、その後、所定長さに切断して曲線状の貫通溝部を有する吸収体を形成してもよい。
【0069】
次に、図12に示すように、得られた複数の吸収体27を、下側液透過性シートロール57から供給される長尺下側液透過性シート43上に配置する。その後、吸収体27の、長尺下側液透過性シート43を配置した側とは反対の面を被覆するように、長尺上側液透過性シート44を配置し、第一の圧着ロール48によって長尺下側液透過性シート43と長尺上側液透過性シート44を圧着して互いに接着させる。このとき、吸収体の貫通溝部、即ち、隣り合う吸収体片の間で、長尺下側液透過性シート43と長尺上側液透過性シート44を接着することによって仕切り部が形成される。なお、長尺上側液透過性シート44には、予め、接着剤塗布部47によって接着剤を塗布しておく。
【0070】
次に、長尺下側液透過性シート43の外側の面を被覆するように長尺バックシート29を配置するとともに、上側液透過性シート44の外側の面を被覆するように長尺トップシート30を配置し、長尺バックシート29と長尺トップシート30を第二の圧着ロール49によって圧着する。なお、長尺バックシート29には、予め、図示しない接着剤塗布部によって接着剤を塗布しておく。このようにして吸収性物品連続体を得る。次に、吸収性物品連続体を所定の位置で切断することによって、複数の吸収性物品を得ることができる。
【0071】
[2]使い捨ておむつ:
次に、本発明の吸収性物品は、テープ型おむつ、パンツ型おむつ、尿パッド等の使い捨ておむつに適用することができる。なお、テープ型おむつ及びパンツ型おむつには、それぞれ、1ピースタイプ、及び、2ピースタイプのものがあり、本発明の吸収性物品は、いずれのタイプにも適用することができる。
【0072】
なお、本明細書において「テープ型おむつ」とは、例えば、図14に示すテープ型おむつ100のように、曲線状の貫通溝部35が形成された吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシート18と、液不透過性材料からなるバックシート20とを備えるとともに、前身頃2、股下部4及び後身頃6の各部から構成されており、後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置され、後身頃6を前身頃2に対して固定するためのファスニングテープ7を更に備えた使い捨ておむつを意味するものとする。なお、テープ型おむつ100は、吸収体22とトップシート18との間に配置される上側液透過性シート43と、バックシート20と吸収体22との間に配置される下側液透過性シート44と、が更に配置されている。
【0073】
また、本明細書において「パンツ型おむつ」とは、例えば、図15に示すパンツ型おむつ110のように、前身頃2と後身頃6の対応する側縁部同士を接合することによって、接合部8、一つのウエスト周り開口部9及び一対の脚周り開口部12a,12bが形成され、予めパンツ型に構成されたおむつを意味するものとする。なお、パンツ型おむつ110は、前身頃2、後身頃6、及び股下部4に亘って、曲線状の貫通溝部35が形成された吸収体22が配置されており、吸収体22とトップシート18との間、及び、バックシート20と吸収体22との間には、図示しない液透過性シートが配置されている。
【0074】
そして、「1ピースタイプ」とは、トップシート、バックシート、吸収体を備えているが、吸収・保持機能を担う吸収体がトップシートとバックシートの間に介装(内蔵)され、装着機能を担うトップシート及び/又はバックシートと一体的に構成されたタイプのおむつを意味するものとする。
【0075】
「2ピースタイプ」とは、着用者の排泄物を吸収し、保持する機能(吸収・保持機能)を担う吸収性本体と、着用者の身体を被包する機能(装着機能)を担う外装部材とから構成され、外装部材の内側に吸収性本体が配置されたタイプのおむつである。
【0076】
上記吸収性本体は、吸収体、トップシート及びバックシートを構成要素として備えた部材であり、トップシートとバックシートの間に吸収体を挟み込み、吸収体の周縁部を封着することによって製造することができる。吸収性本体は、少なくともおむつの股下部をカバーするサイズに構成される。但し、漏れ防止の効果を確実なものとするため、股下部のみならず前身頃や後身頃の一部をもカバーする大きさに構成することが好ましい。吸収性本体は、例えばホットメルト接着剤等を用いて、外装部材に対して固定することができる。
【0077】
外装部材は、着用者の身体を被包するための装着機能を担う部材であり、具体的には、前身頃、股下部及び後身頃の各部を形成するシート状の部材である。なお、2ピースタイプのおむつは、着用者の排泄液を吸収し、保持する吸収・保持機能については、専ら吸収性本体が果たすことになるので、外装部材を構成する材料として液不透過性材料を用いる必要はない。外装部材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維によって構成された不織布等を挙げることができる。
【0078】
なお、本明細書において、「前身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分、「股下部」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の股下を覆う部分、「後身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分を意味するものとする。
【0079】
以下、1ピースタイプのテープ型おむつ(本実施形態のテープ型おむつ)について説明する。
【0080】
本実施形態のテープ型おむつに用いるトップシートは、単一のシート材によって構成されていてもよいが、複数のシート材によって構成されていてもよい。例えば、複数の吸収体の上面側に配置されるトップシートと、おむつのサイドフラップの部分に配置されるトップシートとを異なるシートによって構成する形態もよく利用される。図14に示すテープ型おむつ100は、おむつの中央部には液透過性材料からなるトップシート18(センターシート18a)を配置し、おむつのサイドフラップ5部分には液の透過に対して抵抗性を示す通気撥水性材料からなるトップシート18(サイドシート18b)を配置した例である。
【0081】
また、バックシートは、おむつの外形と一致するように構成されたものを用いてもよいし、バックシートの外表面側にシート材(カバーシート)を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。なお、図14に示すテープ型おむつ100においては、おむつの外形と一致する形状のバックシート20を配置した例を示している。また、バックシートは少なくとも吸収体を覆う範囲で配置されていればよい。吸収体よりやや大きい範囲でバックシートを配置し、着用者の側部にあたるサイドフラップ部分にカバーシートとサイドシートにより構成することで、より通気性に優れた使い捨ておむつとすることができる。上記サイドフラップ部分を別体の不織布などで構成してもよい。
【0082】
[2−1]立体ギャザー:
本実施形態のテープ型おむつは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するため、立体ギャザーを備えていてもよい。立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。このような立体ギャザーを形成することにより、立体ギャザーが防波堤となり、おむつの脚周り開口部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0083】
立体ギャザーの構成は、従来の吸収性物品に使用されている構成を採用することができる。例えば、撥水性のシート材の一部に伸縮材(図14に示す立体ギャザー伸縮材36(36a,36b))を配置し、その立体ギャザー伸縮材によってシート材にギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。
【0084】
なお、立体ギャザーは、トップシートやバックシートとは全く別個のシート材により形成してもよいが、センターシートやサイドシート等のトップシートを折り返すことにより形成してもよい。
【0085】
この立体ギャザーは、股下部からの漏れを防止するため、少なくとも股下部に形成されていればよいが、前身頃や後身頃に形成されていてもよい。例えば、図14に示すテープ型おむつ100は、おむつの長手方向に沿って、股下部4から前身頃2と後身頃6の双方にかけて連続的に、一対の立体ギャザー26(26a,26b)が形成されている例を示している。なお、立体ギャザーは、少なくとも一対形成する必要があるが、二対以上形成してもよい。
【0086】
立体ギャザーは、おむつの内側に向かって傾倒する内倒しギャザーであってもよいし、おむつの外側に向かって傾倒する外倒しギャザーであってもよい。また、高さ方向の一部に、曲げ部や折り返し部を形成した立体ギャザー(C折りギャザーやZ折りギャザー等)とすることもできる。例えば、図14に示すテープ型おむつ100は、立体ギャザー26(26a,26b)を内倒しギャザーとした例である。
【0087】
[2−2]ファスニングテープ:
ファスニングテープは、テープ型おむつを着用者に対して装着させるためのテープである。おむつの背部と腹部とを相互に固定することで、テープ型おむつをパンツ型とし、着用者に装着可能なものであれば特にその形状や構造について制限はない。
【0088】
図14に示すテープ型おむつ100は、後身頃6の両側縁部に二対のファスニングテープ7が配置されたものである。これらのファスニングテープ7は、前身頃2の外表面に配置されたフロントパッチ11に対して貼着可能に構成されている。ファスニングテープ7をフロントパッチ11に貼着することによって、おむつの後身頃6と前身頃2とが相互に固定され、おむつを着用者に装着することができる。
【0089】
なお、図14に示すテープ型おむつ100は、ファスニングテープ7を二対備えたものであるが、ファスニングテープ7を一対だけ備えたものや三対以上備えたものであっても同様の効果を得ることができる。
【0090】
ファスニングテープとしては、粘着テープ、メカニカルファスナー等のいずれを使用してもよい。メカニカルファスナーは、例えば、表面に多数の突起(鉤状、きのこ状、錨状等)が形成された凸部材(フック材)と、表面にループ状の繊維が配置されたもの、もしくは短繊維で構成された不織布等の凹部材(ループ材)とを組み合わせたもの等が用いられることが多い。このファスナーは、ループ材の表面にフック材を重ね合わせ、フック材の多数の突起をループ材の表面に係合させることにより、両部材を剥離可能な状態に、かつ、強固に固着させることができるものである。
【0091】
[2−3]各種伸縮材:
本実施形態のテープ型おむつは、脚周り伸縮材及びウエスト周り伸縮材を配置することが好ましい。
【0092】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。また、脚周り伸縮材を配置すると、おむつを交換する際に吸収体の両側で脚周り伸縮材が収縮するため、股下部近傍が椀状に変形し、凹部が形成される。このため、尿や体液がその凹部に溜まり、尿や体液をこぼすことなく、容易におむつの交換を行うことができる。
【0093】
例えば、図14に示すテープ型おむつ100は、おむつの長手方向に沿って、直線的に二本の脚周り伸縮材40を配置してレグギャザーを形成した例である。この脚周り伸縮材40は、糸ゴムによって構成されている。なお、脚周り伸縮材は、必ずしも直線的に配置する必要はなく、例えば、おむつの脚周り開口部のカーブに沿って曲線的に配置してもよい。
【0094】
脚周り伸縮材は、例えば、図14に示すテープ型おむつ100のように、立体ギャザー26の起立線46より外側の部分に、脚周り伸縮材40が形成されていることが好ましい。このような構成とすると、立体ギャザーの十分な防漏効果を確保しつつ、股下部の装用感・装着感を向上させることができる。
【0095】
なお、図14に示すテープ型おむつ100は、脚周り伸縮材40の形状、配置位置、配置数等を左右対称とした例を示したが、本発明の吸収性物品は、左右の脚周り伸縮材40が非対称となるように配置してもよい。そして、図14に示すテープ型おむつ100では、脚周り伸縮材40を片側につき二本配置した例を示しているが、片側につき一本だけ配置してもよいし、片側につき三本以上配置してもよい。また、複数の脚周り伸縮材を用いる場合、その太さや伸張率等も目的に応じて適宜設定することができる。
【0096】
次に、ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる。また、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりを防止することができる。
【0097】
図14に示すテープ型おむつ100は、その後身頃6の端縁に沿って帯状のウエスト周り伸縮材42を配置した例である。この帯状のウエスト周り伸縮材42は、ウレタンフォーム等の伸縮性フォームによって構成することができる。なお、図示の例では、後身頃(背側)のみにウエスト周り伸縮材42を配置しているが、前身頃(腹側)にウエスト周り伸縮材を配置してもよい。
【0098】
これらの伸縮材については、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定することができる。
【0099】
上記伸縮材としては、従来の吸収性物品に使用されている伸縮材を用いることができる。具体的には、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴム、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0100】
また、上記伸縮材は、十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、伸縮材が天然ゴムや合成ゴムである場合には、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、十分な伸縮力を作用させることが可能となる。
【0101】
更に、上記伸縮材は、おむつの他の構成部材に対して、接着剤その他の手段により固定することができる。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着方法や、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着による方法などを挙げることができる。
【0102】
[3]テープ型おむつの製造方法:
本実施形態のテープ型おむつの製造方法を、図14に示すテープ型おむつ100を製造する場合の例で説明する。
【0103】
まず、吸収体を形成する。吸収体は、上述した方法と同様の方法によって形成することができる。その後、形成した吸収体の両面を、長尺の液透過性シート(長尺上側液透過性シートと長尺下側液透過性シート)によって被覆する(図12参照)。このとき、隣り合う吸収体片の間の部分、即ち、吸収体の貫通溝部の内側に接着剤を塗布しておき、長尺上側液透過性シートと長尺下側液透過性シートを互いに接着させる。このようにすることによって、隣り合う吸収体片22−3,22−3の間の部分に(即ち、吸収体22の貫通溝部23の側面を覆うように)仕切り部35が形成される。
【0104】
次に、バックシート20の材料となる長尺のシート材(バックシート材)を用意し、このバックシート材の上面に、長尺の液透過性シートによって被覆された吸収体22(2つの吸収体片22−3,22−3)、及び、脚周り伸縮材40を載置する。そして、これらの上面にトップシート18の材料となる長尺のシート材(トップシート材)を載置する。その後、バックシート材とトップシート材を互いに接着する。このようにして、おむつの中間体となる積層体(おむつ連続体)を得る。また、トップシート材は、センターシート18aに相当するトップシート材と、サイドシート18bに相当するトップシート材の2種類が使用される。サイドシート18bに相当するシート材には折り返し部分を設けることによって、立体ギャザー26が形成されている。
【0105】
次に、得られたおむつ連続体について、おむつの脚周り開口部に相当する部分を円弧状に切り抜いて切除(Rカット)し、脚周り開口部を形成する。その後、ファスニングテープ7を付設し、おむつ連続体を所定の間隔で個々のおむつに切断することによって、テープ型おむつ100を製造することができる。
【0106】
なお、上記のような一連の工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより、テープ型おむつの連続製造が可能となり、生産性の向上に資する。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の吸収性物品は、乳幼児用、または介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用のおむつとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0108】
2:前身頃、4:股下部、5:サイドフラップ、6:後身頃、6a,6b:側縁、7:ファスニングテープ、8:接合部、9:ウエスト周り開口部、10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i,10j:吸収性物品、11:フロントパッチ、12a,12b:脚周り開口部、15a:一方の端縁、15b:他方の端縁、18:トップシート、18a:センターシート、18b:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g,22h,22i,22j,22k,22−1,22−2,22−3,61:吸収体片、23:貫通溝部、23a,23b,23c:側面、24a:一方側貫通溝部、24b:他方側貫通溝部、25a,25b,25c,25d,25e,25f:中間液透過性シート、26,26a,26b:立体ギャザー、27:吸収体群、28:中央部、29:長尺バックシート、30:長尺トップシート、31a:第一の吸収層、31b:第二の吸収層、31c:第三の吸収層、35:仕切り部、35a:円弧状の部分、36,36a,36b:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、43:上側液透過性シート、44:下側液透過性シート、46:起立線、47:接着剤塗布部、48:第一の圧着ロール、49:第二の圧着ロール、50:フォーミングドラム、51:パルプ積層機、52:投入ノズル、55:凹部、56:凸状部材、57:下側液透過性シートロール、100:テープ型おむつ、110:パンツ型おむつ、200:吸収体製造装置、d:距離、X:短手方向、Y:長手方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、
前記トップシートの一方の面側に配置される液不透過性材料からなるバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収体と、を備え、
前記吸収体は、長手方向の少なくとも一部に沿って、一方の面から他方の面に貫通する曲線状の貫通溝部が形成されるとともに、前記吸収体の前記貫通溝部の側面を覆うように仕切り部が形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記貫通溝部は、前記吸収体の一方の端縁から他方の端縁まで延びている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記貫通溝部は、前記吸収体の一方の端縁から中央部まで延びる複数の一方側貫通溝部と、前記吸収体の他方の端縁から中央部まで延びる複数の他方側貫通溝部と、を有している請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体と前記トップシートの間に配置される上側液透過性シートと、前記吸収体と前記バックシートの間に配置される下側液透過性シートと、を更に備え、
前記仕切り部は、前記上側液透過性シートと前記下側液透過性シートとを互いに接着することによって形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記トップシートと前記バックシートの間にその厚さ方向に複数積層されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
複数積層されている前記吸収体の間には、前記吸収体の前記貫通溝部の側面の間の領域以外の領域に中間液透過性シートが配置されている請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
複数積層されている前記吸収体の間には、前記吸収体の前記貫通溝部の側面の間の領域を覆うように中間液透過性シートが配置されている請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記仕切り部は、前記吸収体の短手方向に並んで複数形成されており、
前記複数の仕切り部のうち、一方の側縁に最も近い仕切り部及び他方の側縁に最も近い仕切り部は、長手方向の中間部における形状が、互いの頂点が対向するような円弧状である請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−284418(P2010−284418A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142407(P2009−142407)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】