説明

吸収性物品

【課題】表面シート上に排泄された尿を迅速に吸収要素に吸収させると共に、一度、吸収要素に吸収された尿の表面シートへのウエットバックが少ない吸収性物品を提供する
【解決手段】表面シート30の吸収要素50と対向する領域に撥水部35を形成し、撥水部35の面積比率(S)が10〜30%とし、10mm2の矩形面積内に少なくとも1〜5mm2以上の前記撥水部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面シートの表面に撥水印刷がされた使い捨て紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨て紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド等の吸収性物品にあっては、着用者の肌を保護するため、着用者の肌に接する表面シートの部位にエンボスを施したり、ローション等の薬剤を塗工したり、ローション等の薬剤が練り込まれた繊維を用い表面シートを生成する等、表面シートの通気性・柔軟性の改善が行なわれている。
また、着用者の肌のカブレを引き起こすウエットバックの発生を抑制するため種々の改善も行なわれている。
例えば、表面シートと吸収要素との間に中間シートを設け中間シートを嵩高にすることにより表面シートと吸収要素との間隔を広げたり、多数の空隙を有する中間シートやエンボスが施された中間シートを設け中間シートの保水量を低減したり、表面シートより高い親水性を有する中間シートを設け表面シート上に排泄された尿等の排泄物を迅速に吸収要素に吸収させると共に、一度、吸収要素に吸収された尿が表面シートへの逆戻りを防止する等、ウエットバックの発生を抑制する改善が行なわれている。
ウエットバッグの発生を効果的に抑制するためには、表面シートより高い親水性を有する中間シートを設け、表面シートの親水性と中間シートの親水性を大きく相違させることが重要であり、従来、親水性が低い表面シートを用いることにより、表面シートと中間シートとの親水性を大きく相違させる方法が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−61175号公報
【特許文献2】特開2003−12490号公報
【特許文献3】特開2005―278885号公報
【特許文献4】特開2005−52186号公報
【特許文献5】特開2009―172363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、親水性が低い表面シートを使用すると、表面シートと尿とのぬれ性が悪くなり尿が表面シートで弾かれ、尿が表面シートを透過せず漏れを引き起こす恐れがあった。また、複数回の排尿があった場合においては、表面シートの表面に尿が尿滴となり残存することから着用者の肌のカブレを引き起こす恐れがあった。
一方、親水性が高い表面シートを用いると、表面シートと中間シートとの親水性との相違が小さくなるため、着用者の体圧が吸収要素に加わると吸収要素に吸収されていた尿が吸収要素から中間シートを介し表面シートに逆戻りしやすくなり着用者の肌のカブレを引き起こす恐れがあった。
そこで、本発明の主たる課題は、着用者の肌に接する表面シートの部位に撥水印刷を施すと共に、撥水印刷が占める面積比率を一定以下にすることにより、表面シート上に排泄された尿を迅速に吸収要素に吸収させると共に、一度、吸収要素に吸収された尿の表面シートへのウエットバックが少ない吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
表面側に配置された表面シートと裏面側に配置された不透液性バックシートとの間に吸収要素が介在されてなる吸収性物品において、
前記表面シートと前記吸収要素の間に親水性の中間シートが配され、
前記表面シートの少なくとも前記吸収要素と対向し、且つ、前記吸収要素の前後方向の縁からそれぞれ内側に10〜30mm離間した領域に撥水部が施され、
前記撥水部が施された面積(S1)/前記表面シートの前記吸収要素と対向する面積(S2)×100から算出される面積比率(S)が10〜30%であり、
前記表面シートの前記吸収要素と対向するそれぞれの10mm2の矩形面積内に少なくとも1〜5mm2以上の前記撥水部が施されている
ことを特徴とする、吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明は、表面シートの少なくとも吸収要素と対向し、且つ、吸収要素の前後方向の縁からそれぞれ内側に10〜30mm離間した領域に撥水部が施され、撥水部が施された面積(S1)と表面シートの吸収要素と対向する面積(S2)から算出される面積比率(S)が10〜30%であることから、着用者と最も頻繁に接する領域において、中間シートの親水性が表面シートの親水性に比較し高くなっており、表面シート上に排尿された尿が迅速に吸収要素に吸収され、且つ、吸収要素に吸収された尿が吸収要素から中間シートを介し表面シートに逆戻りするウエットバックを抑制することができる。
また、吸収要素の前後方向の縁からそれぞれ内側に10〜30mm離間した領域には撥水部が設けられていないことから、表面シート上を前後方向に拡散する尿を確実に吸収要素の前後方向の縁近傍部に吸収でき吸収性物品の外部への尿漏れを防止することができる。
さらに、撥水部が施された面積(S1)と表面シートの吸収要素と対向する面積(S2)から算出される面積比率(S)が10〜30%であることから、表面シートの排尿箇所の近傍部において、表面シート上に排尿された大部分の尿は迅速に吸収要素に吸収され、表面シート上を前後方向に拡散する尿は少なく吸収性物品の外部への尿漏れを防止することができる。
表面シートの吸収要素と対向するそれぞれの10mm2の矩形面積内に少なくとも1〜5mm2以上の撥水部が施されていることから、吸収要素から中間シートを介し表面シートに逆戻りする尿の障害となりウエットバックを抑制することができる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記吸収要素を前後方向に3分割してなる腹側吸収要素、股間吸収要素、背側吸収要素にそれぞれ対向する前記表面シートの腹側表面シート、股間表面シート、背側表面シートにおいて、
前記腹側表面シートの前記撥水部が、前記腹側表面シートの前後方向の腹側中心から股間側に施され、
前記背側表面シートの前記撥水部が、前記背側表面シートの前後方向の背側中心から股間側に施され、
前記面積比率(S)が、前記腹側表面シートでは12.5〜15%であり、前記股間表面シート2.5〜5.0%であり、前記背側表面シートでは10.0〜12.5%である請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
請求項2に係る発明にあっては、腹側表面シートの撥水部が腹側表面シートの前後方向の腹側中心から股間側に施され、腹側表面シートでの面積比率(S)が12.5〜15%であることから、特に、排尿箇所が腹側に位置する男子が着用した場合にあっても、表面シート上に排尿された尿は迅速に吸収要素に吸収され、また、腹側表面シートに施された撥水部が吸収要素から中間シートを介し腹側表面シートに逆戻りする尿の障害となりウエットバックを抑制することができる。
また、股間表面シートでの面積比率(S)が2.5〜5.0%であることから、表面シート上に排尿された尿は迅速に吸収要素に吸収され、複数回の排尿が行なわれた場合にあっても、股間表面シート上に尿の残存を防止することができる。
さらに、背側表面シートの撥水部が背側表面シートの前後方向の背側中心から股間側に施され、背側表面シートでの面積比率(S)が10.0〜12.5%であることから、特に、排尿箇所が股間から背側に位置する女子が着用した場合にあっても、表面シート上に排尿された尿は迅速に吸収要素に吸収され、また、背側表面シートに施された撥水部が吸収要素から中間シートを介し背側表面シートに逆戻りする尿の障害となりウエットバックを抑制することができる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記中間シートは、多数の開孔を有し、前記表面シートと前記中間シートの非開孔部と前記吸収要素が固着されている固着領域に、前記撥水印刷が施されている請求項1または2に記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
請求項3に係る発明は、中間シートが多数の開孔を有することから、中間シートの親水性がより一層高く、表面シート上に排尿された尿をより迅速に吸収要素に吸収することができる。
また、表面シートと中間シートの非開孔部と吸収要素が固着されている固着領域に撥水印刷が施されていることから、吸収要素から中間シートを介し表面シートに逆戻りする尿の障害となりウエットバックを効果的に抑制することができる。
なお、中間シートの開孔部にあっては、毛細管力が働かないことから、吸収要素に吸収された尿が逆戻りすることはない。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記中間シートは、嵩高であり目付けが20〜80g/m2、開孔率(s)が20〜50%、前記開孔の直径が0,05〜2mmである請求項1乃至3のいずれかに記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
請求項4に係る発明は、嵩高であり目付けが20〜80g/m2であることから、表面シートと吸収要素の設置間隔を広く維持することができるためウエットバックをより一層抑制することができる。
また、開孔率(s)が20〜50%、記開孔の直径が0,05〜2mmであることから、吸収要素に吸収された尿が逆戻り経路を低減させることができる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記撥水部が、プリント印刷により施されている請求項1乃至4のいずれかに記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
請求項5に係る発明は、撥水部が、プリント印刷により施されていることから、表面シートの撥水部の摩擦係数が小さく着用者の肌に接触しても肌を傷付けることはない。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記プリント印刷によりドット印刷が施され、前記ドッド直径が0.05〜1mmである請求項1乃至5のいずれかに記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
請求項6に係る発明は、プリント印刷によりドット印刷が施され、ドッド直径が、0.05〜1mmであることから、見栄えの良好な印刷を得られ、特に、幼児が着用する場合に、幼児の興味を引きつけることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、表面シート上に排尿された尿を吸収要素に迅速に吸収でき、吸収要素に吸収された尿が表面シートに逆戻りするウエットバックを抑制でき、吸収性物品の外部への尿漏れを防止することができる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】撥水部が施されたパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】パンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図4】パンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図5】図3の3−3断面図である。
【図6】図3の4−4断面図である。
【図7】図3の5−5断面図である。
【図8】パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図9】パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、断面図である。
【図10】パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図10は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例100を示している。なお、本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに限定されるものではなく、テープ式使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りパットに適用することができる。
【0020】
請求項の「撥水部が施された面積(S1)」、「表面シートの前記吸収要素と対向する面積(S2)」とは、図1の「S1」、「S2」を意味する。
「腹側吸収要素」、「股間吸収要素」、「背側吸収要素」とは、図1の「HY」、「KY」、「SY」を意味し、「腹側中心」とは、腹側吸収要素の前後方向の中心線であり図1の「CH」を意味し、「背側中心」とは、背側吸収要素の前後方向の中心線であり図1の「CS」を意味すし、「腹側表面シート」、「股間表面シート」、「背側表面シート」とは、図1の「HS」、「KS」、「SS」を意味する。
【0021】
パンツタイプ使い捨ておむつ100は、製品外面(裏面)をなす外装シート12と、外装シートの内面に貼り付けられた内装体200とから構成されているものである。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装シート12は着用者に装着するための部分である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミットまたはスパイラル塗布などにより形成されるものである。なお、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつ100の装着状態、すなわちおむつ100の前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつ100を股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開孔部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0022】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図5〜図7に示されるように、身体側となる表面シート30と、不透液性バックシート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に設けられた、身体側に起立するバリヤーカフス60を示している。
【0023】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されないが撥水部35を生成する観点から長繊維が好適である。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0024】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0025】
バリヤーカフス60を設ける場合、表面シート30の両側部は、不透液性バックシート11とバリヤーカフス60との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、不透液性バックシート11及びバリヤーカフス60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0026】
(撥水部)
表面シート30の吸収要素50と対向する領域には、図1に示されるように、撥水部35が設けられている。
吸収要素50を前後方向に3分割した腹側吸収要素(HY)に対向する表面シート30の腹側表面シート(HS)には、腹側吸収要素(HY)の前後方向の腹側中心から股間側の領域に面積比率が12.5〜15%の撥水部35が設けられている。
【0027】
面積比率が12.5%以下の場合、吸収要素50に吸収された尿が、着用者の体圧が吸収要素50に加わった際に、中間シート40を介して腹側表面シート(HS)の表面まで逆戻りする恐れがある。一方、面積比率が15%以上の場合、特に、排尿箇所が腹側に位置する男子がパンツタイプ使い捨ておむつ100を着用した際に、撥水部35が障害となり腹側表面シート(HS)上に排尿された尿が吸収要素50に迅速に吸収されず、パンツタイプ使い捨ておむつ100の外部に尿が漏れ出す恐れがある。
【0028】
吸収要素50を前後方向に3分割した股間吸収要素(KY)に対向する表面シート30の股間表面シート(KS)には、股間表面シート(KS)の全領域に面積比率が2.5〜5.0%の撥水部35が設けられている。
【0029】
面積比率が2.5%以下の場合、吸収要素50に吸収された尿が、着用者の体圧が吸収要素50に加わった際に、中間シート40を介して股間表面シート(KS)の表面まで逆戻りする恐れがある。一方、面積比率が5.0%以上の場合、撥水部35が障害となり股間表面シート(KS)上に排尿された尿が迅速に吸収要素50に吸収されず、また、複数回に亘り排尿が行なわれた際に、股間表面シート(KS)上に尿の残存し着用者の肌のカブレを引き起こす恐れがある。
【0030】
吸収要素50を前後方向に3分割した背側吸収要素(SY)に対向する表面シート30の背側表面シート(SS)には、背側吸収要素(SY)の前後方向の背側中心から股間側の領域に面積比率が10.0〜12.5%の撥水部35が設けられている。
【0031】
面積比率が10.0%以下の場合、吸収要素50に吸収された尿が、着用者の体圧が吸収要素50に加わった際に、中間シート40を介して背側表面シート(SS)の表面まで逆戻りする恐れがある。一方、面積比率が12.5%以上の場合、特に、排尿箇所が股間から背側に位置する女子がパンツタイプ使い捨ておむつ100を着用した際に、撥水部35が障害となり背側表面シート(SS)上に排尿された尿が吸収要素50に迅速に吸収されず、パンツタイプ使い捨ておむつ100の外部に尿が漏れ出す恐れがある。
【0032】
パンツタイプ使い捨ておむつ100のサイズにより異なるが、上述した腹側吸収要素(HY)の前後方向の腹側中心、背側吸収要素(SY)の前後方向の背側中心は、それぞれ吸収要素50の前後方向の縁から内側に10〜30mmに位置する。よって、腹側吸収要素(HY)の前後方向の腹側中心から外側、背側吸収要素(SY)の前後方向の背側中心から外側にそれぞれ対向する表面シート30の腹側表面シート(HS)、背側吸収要素(SY)には撥水部35が設けられていないことになる。
吸収要素50の前後方向の縁から10〜30mm内側に対向する表面シート30に撥水部35を設けた場合、表面シート30の表面を前後方向に伝わる尿が、吸収要素50に吸収されず、パンツタイプ使い捨ておむつ100の外部に漏れる恐れがある。
また、パンツタイプ使い捨ておむつ100においては、撥水部35の面積比率はおよそ20〜26%である。
【0033】
撥水部35と中間シート40との関係であるが、セカンドシート40に対向する表面シート30の撥水部35を、撥水部35が施された全面積の50%以下にした場合、吸収阻害の発生によるモレを防止できる。吸収性とモレの観点から好適である。
【0034】
撥水部35は、プリント印刷手段により撥水性インキが格子状に10mm2の矩形面積内に1〜5mm2のドット印刷38が施されている。撥水部35の生成手段としては、プリント印刷、プリント転写、スプレー塗布、接触塗工が挙げられるが、プリント印刷により生成した場合、撥水部35の摩擦係数が小さく、着用者の肌と接触しても着用者の肌を傷つけることがなく好適である。また、ドット印刷38のドット直径を0,05〜1mmにした場合、撥水部35に施された印刷が鮮明になり着用者の興味を喚起できる。さらに、撥水性インキを千鳥状、碁盤状に印刷することもできる。
【0035】
後述する多数の開孔45を有するセカンドシート40の使用する場合にあっても、表面シート40の撥水部35を形成するドッド印刷をセカンドシート40の開孔45が形成されていない非開孔部に設けられており、吸収要素50に吸収された尿がセカンドシート40介し表面シート40の表面への逆戻りを防止する観点から好適である。
【0036】
(撥水性インキ)
撥水部35を生成する撥水性インキとしては、変性高分子シリカ系塗料、油性溶剤に染料を複合したもの、メジウムを主成分とするインキにノニオン系やアニオン系のワックスエマルジョンを混合したもの等があるが、尿との接触により撥水性インキが滲まず、印刷が維持される点で油性インキを用いるのが好ましく、2種以上の撥水性インキを併用しても良い。
【0037】
撥水性インキの色は、適宜定めることができ、表面シート50と同系色である無色、透明色、白色あっても、異系色であっても良い。前者の場合、撥水部35と表面シート50との色が近似するため撥水部35が表面シート50により隠蔽され好適である。一方、後者の場合、撥水部35に種々のデザインを印刷することができ、着用者の興味を喚起し、知徳教育等に利用可能である。
【0038】
撥水性インキには、消臭剤、抗菌剤、pH調整剤、芳香剤、界面活性剤、各種指示薬を配合することもできる。このような場合、消臭剤等が含有されたマイクロカプセルが混在する撥水性インキを使用することが好適である。
【0039】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。
【0040】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙、多数の開孔を有するフィルムシートを例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0041】
中間シート40には、図2に示されるように、多数の開孔45が形成されている。開孔45の直径は、0.05〜2.0mm、好適には0.1〜1.0mmとし、その開孔数は200〜600個/cm2程度とし、開孔率を20〜50%とするのが望ましい。開孔45を形成するには、開孔前の中間シート40を、多数の開孔を有する支持体の上面に位置させた状態で、支持体の下方から吸引したり、支持体の上面から空気圧を加圧したりする方法等により形成することができる。
【0042】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0043】
(不透液性バックシート)
不透液性バックシート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。不透液性バックシート11には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、不透液性バックシート11として用いることができる。
【0044】
不透液性バックシート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0045】
また、不透液性バックシート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータを設けることができる。
【0046】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態のバリヤーカフス60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0047】
より詳細には、バリヤーカフス60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。バリヤーカフス60のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66のうち前後方向両端部は、取付部分65から内装体200の側部を通り表面シート30の側部表面まで延在し且つこの表面シート30の側部表面に対してホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる。突出部分のうち前後方向中間部は非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0048】
バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0049】
バリヤーカフス60の自由部分に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。
【0050】
バリヤーカフス60の取付部分65の固定対象は、内装体200における表面シート30、不透液性バックシート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができる。
【0051】
かくして構成されたバリヤーカフス60では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図5に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍においてバリヤーカフス60が幅方向外側に開くように起立するため、バリヤーカフス60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0052】
バリヤーカフス60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図9に示すように、バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、バリヤーカフス60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0053】
なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側においてバリヤーカフスを二重に(二列)設けることもできる。
【0054】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0055】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0056】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図8にも示すように、前端部、後端部及びこれらの間に位置し、前端部及び後端部と比べて幅が狭い括れ部とを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0057】
また、吸収体の寸法は適宜定めることができるが、前後方向及び幅方向において、内装体の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。
【0058】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0059】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0060】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0061】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0062】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0063】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0064】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0065】
(外装シート)
外装シート12は、股間部から腹側に延在する前身頃Fと、股間部から背側に延在する後身頃Bとを有し、これら前身頃Fの両側部と後身頃Bの両側部とが接合されて、図10に示すように、装着者の胴を通すための胴開口部WO及び脚を通すための左右一対の脚開口部LOが形成されているものである。符号12Aは接合部分を示している(以下、この部分をサイドシール部ともいう)。なお、股間部とは、展開状態における前身頃のウエスト端縁から後身頃のウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が前身頃F及び後身頃Bをそれぞれ意味する。
【0066】
外装シート12は、胴開口部WOから脚開口部LOの上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的に「ウエスト側端部」Wと「胴周り下部」Uとに分けることができる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト側端部Wは15〜40mm、胴周り下部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装シート12は、全体としては略砂時計形状をなしている。外装シート12の括れの程度は適宜定めることができ、図3〜図10に示す形態のように、すっきりとした外観とするために最も幅が狭い部分では内装体200の幅より狭くすることが好ましいが、最も幅が狭い部分でも内装体200の幅以上となるように定めてもよい。
【0067】
外装シート12は、図5〜図7に示されるように、二枚のシート基材12S,12Hをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせて形成されるものであり、内側に位置する内側シート基材12Hはウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側シート基材12Sは内側シート基材12Hのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
【0068】
シート基材12S,12Hとしては、シート基材であれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0069】
また、外装シート12を通して後述する印刷シート25のデザインを製品外面から良好に視認できるように、外装シート12の総目付けは20〜60g/m2程度であるのが好ましく、外装シート12のJIS K 7105に規定される全光線透過率が40%以上、特に50%以上となっているのが好ましい。
【0070】
そして、外装シート12には、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート基材12S,12H間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装シート12の両シート基材12S,12Hの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定には種々の塗布方法によるホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0071】
より詳細には、後身頃B及び前身頃Fのウエスト端部(上端部)Wにおける内側シート基材12Hの内側面と外側シート基材12Sの折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性伸縮部材17,18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18のうち、胴周り下部Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性伸縮部材17,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えばウエスト側端部Wの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0072】
また、前身頃F及び後身頃Bの胴周り下部Uにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材15,19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0073】
胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0074】
また、前身頃F及び後身頃Bの中間部Lにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0075】
中間部Lの細長状弾性伸縮部材16,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0076】
なお、図示のように、胴回り下部U及び中間部Lの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200が幅方向に必要以上に収縮することがなく、モコモコと見た目が悪かったり吸収性が低下したりすることがないため好ましい。この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。もちろん細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の配設形態は上記例に限るものではなく、胴回り下部Uの幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0077】
また、細長状弾性伸縮部材15〜19が後述する印刷シート25を横切る場合において、細長状弾性伸縮部材15〜19として酸化チタンを含有するゴムを用いる場合には、酸化チタンの含有量が低い(例えば2%以下の)ものあるいは酸化チタンを含有しないものを用いるのが好ましい。
【0078】
(後処理テープ)
外装シート12の後身頃Bの外面における幅方向中央部には、後処理テープ70(固定手段)が設けることができる。後処理テープ70は、おむつ100を表面シート30が内側に且つ前身頃Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ状態で固定するためのものである。一般的な後処理テープ70は、図7に示すように、基端部71が外装シート12の外面に接着剤等により固定されるとともに、この基端部71よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで折り畳まれて、折り重なり部分間が仮止め接着剤72により剥離可能に固定(仮固定)されている。また、先端部に白色等の不透明色に着色された摘み部73を有するとともに、この摘み部73を除く部分が透明または半透明であり、この後処理テープ70における透明または半透明の部分を通して、後処理テープ70の外面側から後述するデザインが視認可能になっている。具体的な構造は適宜構成することができるが、図示形態では、全体を透明又は半透明の複数の基材を長手方向に連結して形成するとともに、摘み部73に着色テープ74を張り合わせた構造を採用している。
【0079】
廃棄時には、おむつ100を表面シート30が内側になるとともに前身頃Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ後、後処理テープ70の折り重なり部分を剥離して展ばし、丸めた若しくは折り畳んだおむつ100の後身頃Bからウエスト開口部WOを越えて反対側の外面まで巻き付けるようにして接着剤により固定する。後処理テープ70は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれ、使用時には長尺状に展開できる三つ折り形状のものが特に好適である。
【0080】
後処理テープ70等の固定手段は、前身頃Fに設けてもよく、後身頃Bと前身頃Fの両方に設けてもよい。
【0081】
(印刷シート)
不透液性バックシート11と外装シート12との間(外装シート12の層間を含む)には、印刷によりデザインの施された印刷シート25が設けられている。外装シート12を省略し、印刷シート25が外面に露出する形態とすることもできる。また、図示例の印刷シート25は、それが配置される身頃よりも小さい面積を有しており、前身頃F及び後身頃Bに個別に設けられているが、前身頃Fから股間部を通り後身頃Bまで一体的に連続するように設けることもできる。
【0082】
印刷シート25の寸法・形状は特に限定されないが、機能を十分なものとするためには十分に面積を大きくするのが好ましく、例えば、印刷シート25の幅は吸収体56の幅の50〜120%程度であるのが好ましく、印刷シート25の長さは少なくとも腹側及び背側の片側で物品全長Yの15〜30%程度であるのが好ましい。また、印刷シート25の形状はトリムロスが発生しない点では図示例のような矩形であるのが好ましいが、円形や楕円形、三角形、六角形等の幾何学形状、若しくはデザインの周囲に沿う形状にカットしても良い。
【0083】
印刷シート25のシート基材としては、プラスチックフィルムや不織布、紙などを用いることができるが、嵩高く通気性の高い素材が好ましい。プラスチックフィルムを用いる場合は、ムレ防止のため透湿性を有することが望ましい。不織布や紙は透湿性を有するため好ましく、デザイン印刷を施す場合、不織布にあっては平滑性が高く印刷しやすいもの、紙にあっては強度が高くインクの滲み難いものを用いるのが好ましい。特に好ましいものとしては、目付け15〜35g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度のクレープ紙(薄葉紙)や、目付け10〜25g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度の不織布(特にスパンボンド部の繊度が1.0〜3.0dtex程度のスパンボンド不織布やSMS不織布)を挙げることができる。クレープ紙を用いる場合は、クレープ率は5〜20%程度、特に5〜15%程度のものを用いるのが好ましい。クレープ率が20%以上であると、インクの定着量は大きくなるが滲みが生じてデザイン印刷には適さない。クレープ率が5%以下であるとインクが浸透しにくいため定着量が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。
【符号の説明】
【0085】
11…不透液性バックシート、12…外装シート、12r…折り返し部分、25…印刷シート、200…内装体、30…表面シート、35…撥水部、40…中間シート、45…開孔、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に配置された表面シートと裏面側に配置された不透液性バックシートとの間に吸収要素が介在されてなる吸収性物品において、
前記表面シートと前記吸収要素の間に親水性の中間シートが配され、
前記表面シートの少なくとも前記吸収要素と対向し、且つ、前記吸収要素の前後方向の縁からそれぞれ内側に10〜30mm離間した領域に撥水部が施され、
前記撥水部が施された面積(S1)/前記表面シートの前記吸収要素と対向する面積(S2)×100から算出される面積比率(S)が10〜30%であり、
前記表面シートの前記吸収要素と対向するそれぞれの10mm2の矩形面積内に少なくとも1〜5mm2以上の前記撥水部が施されている
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収要素を前後方向に3分割してなる腹側吸収要素、股間吸収要素、背側吸収要素にそれぞれ対向する前記表面シートの腹側表面シート、股間表面シート、背側表面シートにおいて、
前記腹側表面シートの前記撥水部が、前記腹側表面シートの前後方向の腹側中心から股間側に施され、
前記背側表面シートの前記撥水部が、前記背側表面シートの前後方向の背側中心から股間側に施され、
前記面積比率(S)が、前記腹側表面シートでは12.5〜15%であり、前記股間表面シート2.5〜5.0%であり、前記背側表面シートでは10.0〜12.5%である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中間シートは、多数の開孔を有し、前記表面シートと前記中間シートの非開孔部と前記吸収要素が固着されている固着領域に、前記撥水印刷が施されている請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中間シートは、嵩高であり目付けが20〜80g/m2、開孔率(s)が20〜50%、前記開孔の直径が0,05〜2mmである請求項1乃至3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記撥水部が、プリント印刷により施されている請求項1乃至4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記プリント印刷によりドット印刷38が施され、前記ドッド直径が0.05〜1mmである請求項1乃至5のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−189065(P2011−189065A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59460(P2010−59460)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】