説明

吸収性物品

【課題】 血液、浸出液、汗、尿の吸収性、創傷部の保護性、肌触りの良い快適性、端部の糸や繊維のほつれの少ない衛生性、製造の容易性、並びに手術後の取り出し忘れ防止に優れる吸収性物品を提供する。
【解決手段】 液体透過性を有する吸水性繊維の織布又は不織布である外面基材11、両面ヒートシール性を有する不織布である内面基材15をこの順に重ね合わせ、外面基材11及び内面基材15を重ね合わせて内面基材15を内側にして袋状とし、該袋状の周縁端部がヒートシール法によるヒートシール部21が形成され、前記ヒートシール部21の外面基材11と内面基材15との接触面、及び内面基材15同士面がヒートシール法によって接着されてなる袋体で、該袋体の内部に吸液性コアが収納され、ヒートシール部21が前記袋体の周縁端部の先端部まで延在していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、さらに詳しくは、端部の織布又は不織布がほつれ難い吸収性物品に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準である。また、「PE」は「ポリエチレン」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「LLDPE」は「直鎖状低密度ポリエチレン」、「PA」は「ポリアミド」、「PP」は「ポリプロピレン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、PAとは、所謂ナイロン(デュポン社、登録商標)で、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11なども含むものとする。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に介在する吸液性コアを有して使い捨ての体液処理物品であるおむつカバーや使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド等に用いられている。しかしながら、表面シートと裏面シートとの接着に用いるホットメルト樹脂は接着部の一部分にしか塗付できず、周縁端部の外側に未接着部が生じ、糸や不織布の繊維がバタついてほつれたり、繊維カスが生じたりしやすいという欠点がある。また、ホットメルトの焦げた樹脂の混入や、曲線や矩形等の一定形状に塗付する装置が大がかりで、さらに、吸水面をより多く確保するために、ホットメルトの塗付線幅を狭くすると、気温が低い場合に接着性が低下したり、製造が複雑で品質の安定性に難がある。さらにまた、表面シートとして、ガーゼのように目の粗い布や、坪量の小さい不織布を使用した場合、表面シートの隙間からホットメルトが表面にはみ出してしまうため、皮膚等に接触する用途への使用は好ましくない。さらに、不織布、ガーゼ等からなる表面シートと、多孔質ポリエチレンフィルムからなる裏面シートとを重ね合わせ、周縁端部を熱融着した内部空隙に、吸液性層として脱脂綿、不織布、ガーゼ、綿線維不織布、吸水ポリマーシート等を収納した、創傷部保護用パッドも使用されている。しかしながら、手術中に血液等をぬぐったり、臓器等を傷つけないためのカバー等に用いられているが、切開部を縫合する際、臓器の陰になって見えない場所に前記ガーゼ類があると、取り出すのを忘れてしまう医療事故が後を絶たない。
吸収性物品は、大がかりな装置を必要とせず、製造が容易性でありながら、血液、浸出液、汗、尿の吸収性、創傷部の保護性はもとより、直接人肌の触れるので、蒸れ難く肌触りが良い等の使用者の快適性、端部の糸や繊維のほつれの少ない衛生性に優れ、並びに手術後の取り出し忘れ防止が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−95837号公報
【特許文献2】特開2009−189418号公報
【特許文献3】特開2004−194994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に介在する吸液性コアを有して使い捨ての体液処理物品を構成し、前記表面シートと前記裏面シートと前記コアとが、前記表裏面シートの対向するシート面の少なくとも一方に塗布された接着剤を介して互いに接着され、おむつカバーや使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、衛生マット等に用いる吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、表面シートと裏面シートとの接着に、接着剤としてホットメルト樹脂を用いるしかなく、ホットメルト樹脂は接着部の一部分にしか塗付できないため、周縁端部の外側に未接着部が生じ、糸や不織布の繊維がバタついて繊維カスが生じやすい構造になってしまう。また、ホットメルトは焦げた樹脂が混入しないように管理するのが大変であったり、曲線や矩形等の一定形状に塗付するための装置が大がかりであったり、吸水面をより多く確保するために塗付線幅を狭くすると、気温が低い場合に接着性が低下してしまう等、管理に手間がかかる。また、表面シートとして、ガーゼのように目の粗い布や、坪量の小さい不織布を使用した場合、表面シートの隙間からホットメルトが表面にはみ出してしまうため、皮膚等に接触する用途への使用は好ましくないという欠点がある。
また、不織布、ガーゼ等からなる表面シートと、多孔質ポリエチレンフィルムからなる裏面シートとを重ね合わせ、周縁端部を熱融着した内部空隙に、吸液性層として脱脂綿、不織布、ガーゼ、綿線維不織布、吸水ポリマーシート等を収納した、創傷部保護用パッドガーゼは、折り畳んだり、縫って作った袋の中に吸液性素材を収納したりして、手術中に血液等をぬぐったり、臓器等を傷つけないためのカバー等に用いられているが、切開部を縫合する際、臓器の陰になって見えない場所に前記ガーゼ類があると、取り出すのを忘れてしまう医療事故が後を絶たない。そのため、除去し忘れたまま縫合しても外部からX線撮影することでその存在が明らかになるように、縦糸の一部にX線造影剤として硫酸バリウムを含む、X線造影糸を使用したガーゼがが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、X線造影糸を使用したガーゼでは、縦糸の一部に硫酸バリウムを含むX線造影糸を用いているので、X線造影糸が表面に露出しているが、熱可塑性樹脂に、結合性のない硫酸バリウムの粒子を、大量に練り込んでX線遮蔽効果を上げているため、糸の強度が非常に弱く、かつ、脆いので、X線造影糸を織り込んだ部分をピンセットで摘むだけで糸がちぎれたり、硫酸バリウムが脱落したりしてしまう場合もあり、手術に使用することを目的とする衛生材料として好ましくない。さらに、前記の理由からX線造影糸の織り込み本数は少ない方が良いこと、X線造影糸が切れ易く織機適性が悪いこと、および、X線造影糸が非常に高価であること等から、一般的なX線造影糸入りガーゼには、1枚につき1本のX線造影糸しか使用しないことから、最終的なガーゼの製品幅に合わせてX線造影糸を織り込む必要があり、ガーゼの標準幅である300mm以外のガーゼにはX線造影糸入りの製品が少なく、利用者は不便を強いられるという問題点がある。
さらに、X線造影糸入り綿繊維不織布も市販されているが、同様の理由で幅の限定や、硫酸バリウムの脱落、X線造影糸の切断等の問題点もある。さらにまた、X線造影糸の有無に係らず、ガーゼは目の粗い平織り布からなるので糸がほつれ易く、これを防止するために、医療用ガーゼでは縦糸の両端数本を密にし、横糸で縦糸の両端をかがるようにし、また、ガーゼの切断部は、切断部から内側に10mm前後の位置にある横糸を縦糸方向に寄せて縦糸を糸のれんのようにぶらつかせることによって横糸の抜けを防止する等、非常に手間の掛かる製造工程が必要で、寸法変更の自由度が極めて低い。さらにまた、家庭用ガーゼ等、厳密に糸のほつれを防止する必要が無い場合でも、周縁の一方向の切断部の両側を10mm程度縁折りして、残りの切断部が内側に入り込むように複数回折り畳むといった、機械化困難な方法で切断部の処理が行われ、人海戦術で製造しているのが現状であり、製造が容易性でないという欠点もある。
上記の特許文献1〜3のいずれの吸収性物品でも、周縁端部がヒートシール法によるヒートシール部が形成されていることについては記載も示唆もされていない。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、大がかりな装置を必要とせず、製造が容易性でありながら、血液、浸出液、汗、尿の吸収性、創傷部の保護性はもとより、直接人肌の触れるので、蒸れ難く肌触りが良い等の使用者の快適性、端部の糸や繊維のほつれの少ない衛生性に優れ、並びに手術後の取り出し忘れ防止に優れる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる吸収性物品は、外面基材及び内面基材を重ね合わせてなる吸収性物品であって、前記外面基材が液体透過性を有する吸水性繊維の織布又は不織布であり、前記内面基材が両面ヒートシール性を有する不織布であり、前記外面基材及び前記内面基材を重ね合わせたまま、前記内面基材を内側にして袋状とし、前記袋状の周縁端部がヒートシール法によるヒートシール部が形成され、前記ヒートシール部の前記外面基材と前記内面基材との接触面、及び前記内面基材同士面がヒートシール法によって接着されてなる袋体で、該袋体の内部に吸液性コアが収納され、前記ヒートシール部が前記袋体の周縁端部の先端部まで延在していることを特徴とする吸収性物品である。
請求項2の発明に係わる吸収性物品は、前記袋体の内部に吸液性コアが収納されてないことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品である。
請求項3の発明に係わる吸収性物品は、請求項1又は2記載の吸収性物品であって、前記外面基材と前記内面基材とが熱ラミネーション、熱エンボス、ノンソルベントラミネーション、電子線硬化ラミネーション、ホットメルト樹脂を点状又は線状に用いたホットメルトラミネーション、又は筋状押し出しラミネーションによって、少なくとも1部が接着されてなることを特徴とする吸収性物品である。
請求項4の発明に係わる吸収性物品は、前記外面基材の吸水性繊維が綿、麻、絹、ポリアミド又はレーヨンであり、前記袋体がピロー袋形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品である。
請求項5の発明に係わる吸収性物品は、請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品において、前記ヒートシール部の少なくとも1辺に、X線造影糸が挟持されていることを特徴とする吸収性物品である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜4の本発明によれば、大がかりな装置を必要とせず、製造が容易性でありながら、血液、浸出液、汗、尿の吸収性、創傷部の保護性はもとより、直接人肌の触れるので、蒸れ難く肌触りが良い等の使用者の快適性、端部の糸や繊維のほつれの少ない衛生性に優れるという効果を奏する。即ち、外面基材11及び内面基材15として、液体透過性を有する吸水性繊維、特に綿、麻、絹、ポリアミド又はレーヨンよりなる織布又は不織布を使用することによって、蒸れ難く肌触りが良い等、使用者が快適である。また、ヒートシール部が袋体の周縁端部の先端部まで延在しているので、織布又は不織布の切断面がヒートシール部21によって接着され固着されているため、糸や繊維のほつれが発生し難く、衛生的である。さらに、ヒートシールによってのみ外面基材11と内面基材15面、及び内面基材15同士面を積層するため、既設の製造装置で、そのの管理も容易であり、極めて衛生的であり、かつ、ガーゼ等の切断部で糸がほつれないように、端部が内側になるように折り畳む必要もなくなる。
請求項5の本発明によれば、請求項1〜4の効果に加えて、手術後の取り出し忘れ防止性に優れるという効果も奏する。即ち、ヒートシール部21でX線造影糸17を外面基材11と内面基材15との間に挟持し、固定することにより、使用中のX線造影糸17の切断や、X線造影剤の脱落を防止することができ、衛生的である。また、ヒートシール部21でX線造影糸17を挟持するだけでX線造影糸17を固定できるため、製造者の任意のサイズのX線造影糸17入りガーゼ体、または、吸収性物品の製造が可能である。さらに、織布又は不織布であれば素材を選ばずX線造影糸17を固定できるため、従来製造が不可能であった、例えば、晒、絹布等にも、更には、ヒートシール性を有するフィルムにもX線造影糸17を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の吸収性物品の1実施例を示す袋体の平面図、及びAA’線の拡大断面図である。
【図2】本願発明の吸収性物品の基材の積層状況を説明する断面図である。
【図3】本願発明のX線造影糸入り吸収性物品の1実施例を示す袋体の平面図、及び断面図である。
【図4】本願発明のX線造影糸入り吸収性物品の1実施例を示す袋体の平面図、及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
本願発明の吸収性物品10は、図1(A)に示すように、外面基材11と内面基材15とを重ね合わせたまま、内面基材15を内側にして袋状とし、該袋状の周縁端部をヒートシール法でヒートシール部21を形成し、該袋体の内部に吸液性コア101を収納する。図1(B)に示すように、液体透過性を有する吸水性繊維の織布又は不織布である外面基材11と両面ヒートシール性を有する不織布である内面基材15とを重ね合わせたまま、内面基材15を内側にして袋状とし、該袋状の周縁端部をヒートシール法でヒートシール部21を形成する。このようにすることで、ヒートシール部21の外面基材11と内面基材15との接触面、及び内面基材15同士面がヒートシール法によって接着され、該ヒートシール部21は前記袋体の周縁端部の先端部まで延在し、織布又は不織布の糸や繊維がほつれ難いのである。なお、袋状の平面図は最も一般的なピロー袋を例に示し、判り易いように背シール面を表側に描いてある。なお、図1(A)のピロー袋形状の吸収性物品10ではヒートシール部21が上端ヒートシール部21A、背ヒートシール部21B、下端ヒートシール部21C、とからなり、図示していないが、例えば、三方シール袋では上端部、横部、下端部にヒートシール部21が設けられる。また、説明上、上端ヒートシール部21A、背ヒートシール部21B、下端ヒートシール部21Cなどのずべてのヒートシール部をまとめてヒートシール部21として説明する。
【0012】
吸収性物品10においては、袋体の内部に吸液性コア101を収納しなくてもよく、外面基材11自身、又は外面基材11と内面基材15の吸液性のみで吸収性物品10としての吸液性が充分な場合には、吸液性コア101を収納せず、袋体のみで吸収性物品10として用いることもできる。なお、吸液性コア101を収納していないが、液体を拭き取ったり、滲出液を吸収させても良いし、手術中に臓器の乾燥を防ぐため、および、手術中に誤って臓器を傷つけないように、生理食塩水に浸した吸収性物品10を、手術対象臓器以外の臓器に被せる等の使い方もある。この場合でも、ヒートシール部21は袋体の周縁端部の先端部まで延在し、織布又は不織布の糸や繊維がほつれ難いのである。
【0013】
(吸液性コア)吸液性コア101の収納位置は、図1(B)に示すような袋体の内部に収納すればよい。吸液性コア101は透過してきた液体を保持できる液体吸収保持機能を有するものであれば、特に限定されるものではなく、吸収性物品10の用途によって使い分ければよい。例えば、脱脂綿、パルプ類、繊維類、粉砕パルプなどのパルプ類、と吸水性樹脂の混合物をティッシュペーパーや不織布で被覆したもの、吸水紙、ガーゼ、綿線維不織布、レーヨン不織布等を単独で、あるいは接着剤等で積層したり、単に重ねたり、被覆したりして使用する。また、本発明の吸収性物品を吸収性素材として用いても良い。10cm角の吸液性コア101を水中に1分間浸漬した後引き上げ、10分間風乾後の重量を測定して求めた吸水量としては、1m2当たり150g以上が好ましく、さらに好ましくは1m2当たり250g以上である。また、吸液性コア101の大きさや厚さは、吸収性物品10の用途によって適宜選択すればよい。また、本発明に係る吸収性物品は、アルコール類、洗浄液、消毒液等を滲み込ませた状態で流通させることも可能である。
【0014】
(外面基材)外面基材11としては、吸水性繊維を素材とし、液体透過性を有する織布又は不織布であればよい。織布としては、綿、麻、絹等の天然繊維製の糸や、レーヨン、ポリアミド等の合成樹脂製繊維の縒り糸、または、単糸を平織り、綾織り、メリヤス織り等によって形成したものが例示できる。不織布としては、綿、麻、絹等の天然繊維や、レーヨン、ポリアミド等の合成樹脂製繊維の短繊維を、湿式の抄紙方式や、乾式のケミカルボンド方式、ニードルパンチ方式、ウォーターパンチ方式、サーマルボンド方式等によって不織布化したもの、あるいは、ポリアミド長繊維をスパンボンド方式やメルトブロー方式等の直接式で不織布化したものが例示できる。これらの織布及び不織布に共通の、外面基材11として要求される性質は、吸水性素材であるため肌触りが良く、かつ、繊維の隙間から容易に汗、尿、血液、膿等の液体が透過できることである。
【0015】
素材の吸水性繊維の吸水性としては、自重に対する吸収した水分%で表し、厚さが1mm、50mmφ円板を50℃の水中へ50時間浸漬した後で、0.1%以上程度、好ましくはい0.3%以上である。なお、吸収する水分%は、ポリアミドは5%、レーヨンは0.3%程度である。また、織布及び不織布には、繊維と繊維の間に水分が吸収する性質もあり、表面張力や毛細管現象で繊維全体の隙間に浸透することもある。
【0016】
これらの織布又は不織布は、必要に応じて撥水剤、抗菌剤、防臭剤、殺菌剤、等や医薬品を練り込み、含浸、あるいは塗布してもよい。例えば、創傷部保護用織布又は不織布は、表面に撥水剤を塗付するか、全体に撥水剤を含浸させることによって、血液が凝固しても傷口に貼り付かないようにすることができるし、尿パッドや汗取りパッド等、創傷部ではない箇所に用いる吸収性物品10の場合には抗菌剤を塗付しても良い。また、短繊維不織布の場合、ポリエチレンやポリプロピレン等、ヒートシール性を有する樹脂の短繊維を、肌触りや液体透過性を阻害しない範囲で使用しても良く、そうすることによって、ヒートシール部の繊維のほつれが減少し、ヒートシール部を切断する際に発生する繊維カスの量を減少させることができ、衛生面でより好ましい。また、皮膚や粘膜に外面基材11が接触する場合、接触面積を減少させる目的で、外面基材11側から熱エンボス型を押し当てて、多数の小突起、ひだ、網目、梨地等を表面に設けてもよい。
【0017】
(内面基材)内面基材15は両面ヒートシール性を有する不織布を用いる。内面基材15としては、湿式、乾式、および、直接式を問わず、サーマルボンド方式、または、ケミカルボンド方式で繊維同士を接合した不織布を、繊維かすが出にくいことから、好適に用いることができる。特に、サーマルボンド方式は、接着剤やバインダーを使用せずに済むため、創傷部の保護等、出血部位と接触する用途に適している。不織布の繊維長は短繊維、および、長繊維のいずれでも構わないが、特に、長繊維のサーマルボンド方式は切断部における繊維かすの発生が少なく、糸抜けも少ないので、より好適に用いることができる。
【0018】
不織布を形成する繊維の原料としては、ヒートシール性を有する一般的なポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いることができ、更に、熱可塑性樹脂を芯鞘構造に共押し出しした繊維も使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートを芯として、その周囲をポリエチレンで被覆した共押し出し繊維を用いた、ユニチカ株式会社製サーマルボンド長繊維不織布(商品名:エルベス)を用いることができる。また、一般的な不織布は、繊維同士をランダムに絡ませて接合するが、網目状に太目の繊維を規則的に重ね合わせて接合させた不織布(例えば、製品名「ワリフ」、新日石プラスト株式会社製)等も用いることができる。
【0019】
不織布の坪量は特に限定されるものではないが、一般的には5〜100g/m2程度で、吸収性物品10の要求仕様によって適宜使い分ければよい。不織布の坪量が5g/m2未満では内面基材15や外面基材11との接着力が不足し、100g/m2を越えるものは、接着力や強度の点で過剰品質で無駄である。
【0020】
ポリエチレン系樹脂を用いた吸収性物品10の場合、水蒸気滅菌はできないが、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線滅菌、電子線滅菌を施すことができる。また、ポリプロピレン樹脂を用いた吸収性物品10の場合、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線滅菌、電子線滅菌に加えて、水蒸気滅菌も可能である。
【0021】
なお、特に図示していないが、内面基材15は、互いにヒートシール可能な材質同士であれば複数層設けてもよい。
【0022】
(ヒートシール)外面基材11自体にヒートシール性はないが、両面ヒートシール性を有する不織布である内面基材15とを重ね合わせた後に、熱した金属板で熱と圧力を加えること、即ち、ヒートシールを施すことによって、軟化点又は融点を越えた内面基材15の樹脂が、表面基材の繊維に食い込むため、見かけのヒートシール強度を有するヒートシール部21となる。即ち、外面基材11に内面基材15の樹脂が食い込むため、少なくとも外面基材11の織布又は不織布は内面基材15のヒートシール性不織布に固定される。このヒートシール部21で切断して個々のた袋体とすることにより、該袋体の周縁端部の先端部までヒートシール部21が延在し、織布又は不織布の糸や繊維がほつれ難い吸収性物品10が得られる。
【0023】
ヒートシール部21を形成させるヒートシール法は特に限定されるものではないが、熱板シール法、インパルスシール法、超音波シール法、溶断シール法などが例示できる。なお、本願発明の明細書でのヒートシールとは、2種の素材が熱と圧力で溶着する通常のヒートシールに加えて、軟化点又は融点を越えた片方の素材が、他方の素材の繊維などの隙間に食い込んだ見かけのヒートシール、及びこれらが混在又は並行したヒートシールも含むものとする。これらのヒートシールのいずれでも、2種の素材が固定されるので、本願発明の効果を発現させることができる。
【0024】
特に、ガーゼ等の織布では糸のほつれが殆んど無くなり、衛生的に好ましい吸収性物品10が得られる。吸収性物品10はヒートシール形状に沿ったヒートシール部21を直接トリミングすることにより、任意の形状の吸収性物品10を得ることができ、ヒートシール部21が袋体の周縁端部の先端部まで延在し、織布又は不織布の糸や繊維がほつれ難くできる。
【0025】
(袋体)図1(A)はピロー袋形状の吸収性物品10の概略平面図であり、図1(B)は図1A−A’線における断面を示す拡大断面図である。図1(A)、(B)に示すように、背貼り部分、上端部及び下端部をヒートシール法によりヒートシール部21を形成したピロー袋体においては、両サイドの二方のみをヒートシール部21とした四角形の筒状袋体形状とする。好ましくは、複数列を同時にヒートシールしたヒートシール部21の中間部分でスリットすることで、1列毎の吸収性物品10とすれば、ヒートシール部21が筒状体の両端部の先端部まで延在させることができ、織布又は不織布の糸や繊維をほつれ難くできる。
【0026】
(袋形状)袋体の形状としては特に限定されるものではないが、例えば、ピロー袋、三方シール袋、四方シール袋、かます袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンドパック等が例示できる。いずれの袋体でも公知で既存の設備で、任意の寸法の袋体を製造することができる。特に、横ピロー包装機に複層材を巻取り供給し、吸液性コア101を連続的に包装することにより、効率的な大量生産が可能となること、および、ピロー袋にはサイドシール部が無く、他の袋体形状と比較して、より肌触りが良いことから、ピロー袋が、より好適である。また、前記袋体形状をピロー袋とすることにより、公知のピロー包装機を用いて連続的に袋体を製造することができ、更に、横ピロー包装機を用いれば、吸液性コア101を収納した袋体からなる吸収性物品10を、容易に、かつ、連続的に製造することができる。
【0027】
筒状体の吸収性物品10においても、連続的にヒートシールを施す装置を用いることや、複数列のヒートシールを同時に施した後に、ヒートシール部21の中間部分で切断することで、ヒートシール部21を先端部まで延在させながら、複数個の吸収性物品10を同時に製造することもできて、好適である。
【0028】
吸収性物品10においては、周縁ヒートシール部は、吸水性繊維の織布又は不織布である外面基材11とヒートシール性を有する不織布である内面基材15とがそれぞれ2枚すつ重なっているため、非シール部と比較してやや硬く感じるが、ピロー袋にはサイドシール部が無いため、背シール側を背面、背シールが無い面を前面とすれば、より肌触りの良好な吸収性物品10となる。
【0029】
(包帯)吸収性物品10がピロー袋、三方シール袋、かます袋、ガゼット袋、底ガゼット袋等の袋体製造時には、一定の長さに袋体を断裁する部分を袋体の開口部とすることができるので、縦方向に複層材の長さの範囲内で任意の長さとしてもよい。即ち、包帯のように体に巻き付けて使用する吸収性物品10を製造することができる。
【0030】
更には、吸収性物品10の使用に際し、切り取りながら使用することもできる。この場合、両端にヒートシールを施さず、筒状袋体としてもよい。また、ポリエチレンやポリプロピレン等のヒートシール性を有する樹脂の短繊維を混抄した綿線維不織布等、両面ヒートシール性不織布とヒートシール性を有する吸液性コア101を両面ヒートシール性不織布である内面基材15の間に挿入し、一定間隔で横方向にヒートシールを施して、当該ヒートシール部で切断しても、切断せずに巻き取ってもよい。
【0031】
筒状体の吸収性物品10は細長く製造し、巻き取ることも容易であるため、製造装置としてプラスチックフィルムを用いた軟包装用の製袋機を使用できるため、幅、巻き長さは自由に設計可能で、かつ、多列製造も可能である。この場合、例えば、外面基材11として撥水剤を塗付したポリアミド糸の目の粗い織布とし、創傷部に癒着しにくくすれば、浅い傷の場合は当て布等を省略することも可能であり、また、外面基材11に軟膏等を塗付して用いても良く、また、面積の大きい創傷部に巻き付けて使用することにより、ある程度の患部の固定も可能である。
【0032】
また、皮膚や粘膜に表面基材が接触する場合、接触面積を減少させる目的で、熱エンボス型を押し当てて、多数の小突起やひだ等を表面に設けてもよい。また、複数列のヒートシールを同時に施すことにより、複数個の吸収性物品10を同時に製造することもできる。また、周縁端部のヒートシール部21の腰が強すぎる場合や、吸収性物品10を柔らかく傷付き易い部位に使用する場合等においては、周縁端部にヒートシールを施した後、尖った角を丸くトリミングすると良い。
【0033】
(積層基材)吸収性物品10に用いる外面基材11と内面基材15とは接着せずに重ね合わせた状態でも、接着させて積層基材40とした状態でもよい。積層基材40としては、熱ラミネーション、熱エンボス、ノンソルベントラミネーション、電子線硬化ラミネーション、ホットメルト樹脂を点状又は線状に用いたホットメルトラミネーション、又は筋状押し出しラミネーションによって、少なくとも1部を接着するようにする。該接着は1部分の接着でも、全面の接着でもよい。図2(A)は接着せずに重ね合わせた状態で、図2(B)は熱ラミネーション、熱エンボス、ノンソルベントラミネーション、電子線硬化ラミネーション、ホットメルト樹脂を点状又は線状に用いたホットメルトラミネーションによって、接着させて積層基材とした状態で、図2(C)は、筋状押し出しラミネーションによって接着させて積層基材40とした状態である。
【0034】
(熱ラミネーション)熱ラミネーションでは、複数の基材を熱した金属ロール間に通したり、製袋機で熱板によりヒートシールを施したり、熱エンボスを施したりする熱接着方式が好ましい。
【0035】
(ドライラミネーション)一般的なドライラミネーションでは、溶媒へ分散または溶解した接着剤を塗布し乾燥させて、貼り合せ基材を重ねて積層した後に、30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法であり、接着剤を塗布する際に、接着剤の溶媒が基材を透過して浸みだしたり、基材へ残留したり、して好ましくない。
【0036】
そこで、無溶剤型接着剤を用いるノンソルベントラミネーション、電子線硬化型接着剤を用いる電子線硬化ラミネーションなどのドライラミネーション方式が好ましく、図2(B)の積層基材40となる。無溶剤型接着剤又は電子線硬化型接着剤はほぼ積層基材40へ吸収された状態となっている。綿繊維不織布のような短繊維不織布に接着剤を塗布すると、塗布ロールに繊維が多量に付着してしまうため、接着剤を塗布する場合は長繊維不織布であることが望ましい。また、溶剤に溶解した接着剤を用いるドライラミネーションは、外面基材11、内面基材15へ接着剤が滲み込んでしまうため液体透過性材料の貼り合わせには適していない
【0037】
ノンソルベントラミネーション法とは、溶媒へ分散または溶解せずに接着剤自身を塗布し乾燥させて、貼り合せ基材を重ねて積層した後に、30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法である。ノンソルベントラミネーション方法に好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業株式会社製のタケネートA−720Lが挙げられ、接着剤の使用量としては、固形分で約1〜8g/m2、好ましくは2〜6g/m2の範囲である。
【0038】
(ホットメルトラミネーション)溶剤に溶解した接着剤を用いず、熱で軟化又は溶融させたホットメルト樹脂を点状又は線状に塗布するホットメルトラミネーション方式も適用でき、ホットメルト樹脂を点状又は線状の間から液体が透過できるので、好適に用いることができる。
【0039】
(押し出しラミネーション)押し出しラミネートとは、所謂、当業者がエクストルージョンコーティング(EC)と呼ぶ方法である。まず、押出機で押出樹脂を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、該溶融樹脂層を基材上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、押し出し樹脂層の形成と基材への接着と積層が同時に行われる。しかしながら、溶融樹脂が全面に施されるので、基材の液体透過性を打ち消してしまうために用いられない。
【0040】
そこで、図2(C)のように、筋状押し出しラミネーションによって接着させた積層基材40は筋状の押し出し樹脂45の間から液体が透過できるので、好適に用いることができる。
【0041】
筋状押し出しラミネートするポリオレフィン系樹脂としては、加熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性を有し、押出機等により溶融押出して形成する樹脂であればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂等を一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。尚、吸収性物品10を水蒸気滅菌する場合、耐熱性が必要なため、押し出し樹脂はポリプロピレン系樹脂を用いる。また、筋状の押出樹脂を、基材へ強固に接着させるために、通常、アンカーコート剤(AC剤)とよぶ接着促進剤などの他、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施しても良い。
【0042】
尚、吸収性物品10はエチレンオキサイドガス滅菌、γ線滅菌、電子線滅菌を施すことができる。しかし、ラミネーション方式で積層した積層基材40を用いた吸収性物品10を水蒸気滅菌する場合には、耐熱性を有する接着剤を用いたノンソルベントラミネーション、又はポリプロピレン系樹脂を用いた溶融樹脂の筋状押し出しラミネーションにより貼り合わせた積層基材40を用いればよい。接着により重ね合わせた積層基材40を用いると、袋体開口部を開く際に必ず内面基材15のヒートシール性不織布間で開くため、内容物を充填し易く、各種包装機で使用することができる。
【0043】
接着により重ね合わせた積層基材40を使用するのは、製袋機又は包装機に2本の巻取りをセットできない場合や、製袋機又は包装機で袋体を形成する際に、外面基材11と両面ヒートシール性不織布である内面基材15とがずれたり、シワが入っったりする場合に好適である。
【0044】
接着せずに、外面基材11と内面基材15とを重ね合わせる方法としては、フィルム用の巻き返し装置を用いて重ね巻きするだけでもよく、製袋機又は包装機に直接2種類の基材を供給し、直接製袋すればよい。また、接着により重ね合わせると、熱接着後に生じる熱可塑性樹脂の結晶化や、硬化した接着剤によって、積層基材が僅かながら硬く感じられてしまうため、吸収性物品10により柔軟性が求められる場合にも、接着せずに重ね合わせた積層基材40を用いるとよい。
【0045】
また、下着に吸収性物品10を固定するために、外面基材11面へおむつカバーや両面テープや面ファスナーなどを貼り付けても良い。
【0046】
特に、外面基材11の吸水性繊維が綿、麻、絹、ポリアミド又はレーヨンであり、袋体の形状がピロー袋形状であることが好ましい。外面基材11に液体透過性を有する吸水性繊維として、綿、麻、絹、ポリアミド又はレーヨンよりなる織布又は不織布を使用することによって、蒸れ難く肌触りが良い等、使用者が快適である。また、ピロー袋にはサイドシール部が無く、他の袋体形状と比較して、より肌触りがよく、ヒートシール部21が袋体の周縁端部の先端部まで延在しているので、織布又は不織布の切断面が内面基材15によって固着されるため、糸や繊維のほつれが発生し難く、衛生的である。
【0047】
ポリアミドの繊維製品はヒートシール可能だが、シール温度が高く、連続的に熱板シールを施すのが困難なため、一般的にはヒートシールして用いることが少ない。但し、吸収性物品10においては、外面基材11にポリアミド製品を使用し、ヒートシールの熱でポリアミド繊維同士を融着させることになり、糸のほつれのみならず、繊維のほつれも防止でき、衛生的に好ましい。尚、このようにシール温度が高く、通常の熱板シールではシール部の発泡や樹脂の分解物によるシールバーの汚れが懸念される場合のヒートシール方式として、被シール材を電熱リボンで挟んで圧力を加え、電熱リボンに通電した時間のみ加熱するインパルスシール方式を好適に用いることができる。尚、インパルスシール方式は一般的なヒートシールにも用いることができる。
【0048】
また、吸収性物品10のヒートシール部21の少なくとも1辺に、X線造影糸17が挟持されていてもよい。例えば、平面図を図3(A)に、AA’線の拡大断面図を図3(B)に示すように、X線造影糸17全体を背ヒートシール部21Bで挟持したりしてもよい。また、図4(A)のように、上端ヒートシール部21Aと下端ヒートシール部21CにX線造影糸17を挟持されてよい。この場合はAA’線の拡大断面図を図4(B)、(C)に示すように、挟持されるX線造影糸17の位置は、外面基材11と内面基材15との間でも、内面基材15と内面基材15との間でもよい。上端ヒートシール部21Aと下端ヒートシール部21Cとの間でもよい。X線造影糸17が内面基材15と内面基材15との間、内面基材15と内面基材15との間の場合には、上端ヒートシール部21A、下端ヒートシール部21C以外は挟持されていないが、吸収性物品10の内部であり問題はない。
【0049】
いずれの場合にも、外面基材11と内面基材15の間、又は内面基材15と内面基材15の間に挿入しながら、ヒートシール加工を行えばよく、既存の装置で、任意の寸法の形状に容易に製造することができる。このようにすることで、吸収性物品10の使用中にX線造影糸17が切断したり、X線造影剤の脱落を防止したりでき、衛生的である。さらに、ヒートシール部21でX線造影糸17を挟持するだけでX線造影糸17が固定できるため、所望の任意のサイズのX線造影糸17入りガーゼ体、または、吸収性物品10の製造が可能である。また、織布又は不織布であれば素材を選ばずX線造影糸17を固定できるため、従来製造が不可能であった、例えば、晒、絹布等にも、更には、ヒートシール性を有するフィルムにもX線造影糸17を固定することができる。
【0050】
X線造影糸17は、通常用いられているもので良く、塩化ビニル樹脂又はポリプロピレン樹脂に硫酸バリウム末と着色剤を練り込んで、押し出した単糸、又は単糸を束ねてフィルムで被覆したもの等、糸としてヒートシール装置に供給できるものであればよい。
【0051】
X線造影糸17は、万一造影剤が脱落しても、体に接触する外面基材11側から出難くするため、内面基材15と内面基材15の間に挟持するのが好ましく、内面基材15の不織布は、可能な限り目の細かい不織布を用いるのが好ましい。現在市販されているX線造影糸17入りガーゼや不織布は、X線造影糸17の存在が一目で分かるように、X線造影糸17が中央に配置されるように折り畳まれているので、その慣例に従えば袋体中央部近辺にX線造影剤を配置すればよく、また、よりX線造影剤の脱落や、X線造影糸17の切断を防止したい場合は、X線造影糸17全体をヒートシール部21で挟持するのが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)外面基材11として、幅900mm、坪量35g/m2の綿繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「コットエースC035S/A01」)を、内面基材15として、幅900mm、坪量30g/m2のポリプロピレン長繊維不織布(三井化学株式会社製、製品名「シンテックスPS106」)とを用いた。
内面基材15面へノンソルベントラミネーション用接着剤(武田薬品工業株式会社製、タケネートA−720L)を4g/m2を塗布し、外面基材11を加圧して積層し、50℃で48時間硬化させて積層基材40とした。
該積層基材40を製袋機にセットし、幅100mm、長さ200mm、シール幅5mmの横取り三方シール袋を2列取りで製造し、この三方シール袋の開口部から、吸液性コア101として、80mm×180mmにカットした坪量80g/m2の綿繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「コットエースC080S/A02」)を袋内に収納した後に、シール幅10mmの上下ヒーター式インパルスシーラーで、ヒーターが開口部を挟み込むように、ヒートシール幅5mmのヒートシールを施すことで、ヒートシール部が開口部の先端部まで延在した実施例1の吸収性物品10を得た。
該吸収性物品10を水蒸気滅菌用滅菌袋に収納し、滅菌条件121℃×15分の水蒸気滅菌を施した後、触感を調べた結果、表面及び裏面とも、柔軟性、肌触りが良好で、水に浸すと容易に水を吸収した。また、ヒートシール部21が袋体の周縁端部の先端部まで延在しており、織布又は不織布の糸や繊維がほつれは滅菌後もなく、さらに、滅菌後に手で10回揉みくちゃした後でも糸や繊維のほつれは認められなかった。さらに、前記吸収性物品10を、幅130mm、長さ220mm、シール幅5mmの、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムと厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムとを貼り合わせた積層フィルムで製造した四方シール袋体に収納した後、80%エタノール水10mlを充填し、開口部をシール幅5mmの上下ヒーター式インパルスシーラーでヒートシールにより密封し、アルコール清浄綿を製造することができた。
【0054】
(実施例2)実施例1で得た積層基材40を用いて、幅440mmにスリットし、四軸製袋機の横軸にセットし、半裁した後にM板を通して内面基材15面同士を重ね合わせ、シール間隔100mm、ヒートシール幅10mmで3本の縦シールを施しつつ、当該2箇所の縦シール間に、吸液性コア101を2本の縦軸にセットし連続的に挿入して、100mm間隔でシール幅5mmの横シールを施した後、縦シール部中央で裁断して巻き取ることにより、幅100mmの吸収性物品10の巻取りを2本同時に製造した。
次に、前記巻取りを巻き返し装置にセットしスリットしながら、10mずつの巻取りに切り分けて、実施例2の吸収性物品10を得た。なお、吸液性コア101として、幅80mm、坪量60g/m2の綿繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「コットエースC060S/A18」)を用いた。
該吸収性物品10は、ヒートシール部21が袋体の周縁端部の先端部まで延在しており、織布又は不織布の糸や繊維がほつれもなく、さらに、手で10回揉みくちゃした後でも糸や繊維のほつれは認められなかった。かつ、切り取って使用できる吸収性物品が得られた。また、前記吸液性コア101の代わりに、ポリエチレン樹脂短繊維を混抄することでヒートシール性を持たせた、幅80mm、坪量70g/m2の綿線維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「エスコットC070P/E01」)を挿入し、幅10mmの横シールを100mm間隔で施して、縦シール部中央で裁断して10m巻き取り、横シール部中央で断裁した吸収性物品は、使用時に横シール部で切断することによって、より繊維のほつれの少ない、包帯のように体に巻き付けることができ、かつ、切り取って尿取りパッド等に使用できる吸収性物品10が得られた。
【0055】
(実施例3)外面基材11として、幅800mm、坪量35g/m2の綿繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「コットエースC035S/A01」)を、内面基材15として、幅800mm、坪量30gの芯鞘構造で表面材質がポリエチレンの長繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「エルベスS0303WDO」)とを用いた。
内面基材15面へ、厚さ60μm、幅1mm、間隔2mmで筋状に溶融ポリエチレン樹脂を押し出し、外面基材11を貼り合わせて積層基材40とした。
当該積層基材40を実施例1と同じ製袋機にセットし、幅100mm、長さ180mm、シール幅5mmの三方シール袋を横2列取りで製造した。該三方シール袋の開口部から、吸液性コア101を袋内に収納し、シール幅10mmの上下ヒーター式インパルスシーラーで、ヒーターが前記開口部を挟み込むように、ヒートシール幅5mmのヒートシールを施すことにより、実施例3の吸収性物品10を得た。なお、吸液性コア101として、80mm×160mmにカットした坪量80g/m2の綿繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「コットエースC080S/A02」)を用いた。
該吸収性物品10を水蒸気滅菌用滅菌袋に収納し、滅菌条件121℃×15分の水蒸気滅菌を施した後、触感を調べた結果、表面及び裏面とも、柔軟性、肌触りが良好で、水に浸すと容易に水を吸収した。また、ヒートシール部21が袋体の周縁端部の先端部まで延在しており、織布又は不織布の糸や繊維がほつれは滅菌後もなく、さらに、滅菌後に手で10回揉みくちゃした後でも糸や繊維のほつれは認められなかった。
【0056】
(実施例4)実施例1で得た積層基材40を180mm幅にスリットして、ピロー袋製袋機にセットし、更に、テープ供給軸にセットしたX線造影糸17を背シール部に供給し、内面基材15間に挟持させた状態で、幅80mm、長さ150mm、背シール幅10mm、ボトムシール幅5mm、ボトムシール下未シール幅2mmのピロー袋を製造した。
該ピロー袋の開口部から、吸液性コア101を袋内に収納し、シール幅10mmの上下ヒーター式インパルスシーラーで、ヒーターが前記開口部を挟み込むように、ヒートシール幅約8mmのヒートシールを施すとともに、ボトムシール下未シール部にもヒートシールを施して、実施例4の吸収性物品10を得た。なお、吸液性コア101として、70mm×100mmにカットした坪量80g/m2の綿繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「コットエースC080S/A02」)を用いた。
該吸収性物品10のヒートシール部21は袋体の周縁端部の先端部まで延在しており、X線造影糸17はヒートシール部21に固定されていて、表面に露出していない。このために、連続的に製造した吸収性物品10は、肉眼的には外周縁に繊維のほつれが無く衛生的であり、X線造影剤及びX線造影糸17の断裂による糸くずが吸収性物品10外にこぼれ落ちる心配の無い吸収性物品10を得ることができた。また、手で10回揉みくちゃした後でも糸や繊維のほつれ、及びX線造影剤及びX線造影糸17の断裂による糸くずは認められなかった。また、該吸収性物品10を両手で挟んでX線写真を撮影したところ、明確にX線造影糸17が写っていた。
【0057】
(実施例5)外面基材11として、幅240mm、坪量20g/m2のナイロン(デュポン社、登録商標)長繊維不織布(ユニチカ株式会社製、製品名「ナイエースN0203WTO」)を、内面基材15として、幅240mm、坪量20g/m2のポリプロピレン長繊維不織布(三井化学株式会社製、製品名「シンテックスPB0220」)とを用いた。
フィルム巻き返し機を用いて、前記外面基材11と内面基材15とを別々の給紙軸から供給し重ね合わせて、重ね巻きした巻取とした。
該巻取の内面基材15面が袋体の内側になるように、横ピロー包装機にセットし、幅100mm、長さ180mmの袋体を形成しつつ、吸液性コア101を投入して、ヒートシールしてピロー袋形状の実施例5の吸収性物品10を得た。なお、吸液性コア101は幅750mm、長さ150mmの、粉砕パルプと吸水性樹脂の混合物をティッシュペーパーで被覆した尿取りパッド用吸水性素材を用いた。
該ピロー袋は、公知で既設の横ピロー包装機を用いて、連続的で効率よく、容易に、安価に吸収性物品10を製造することができた。該吸収性物品10は、ヒートシール部21がピロー袋の周縁端部の先端部まで延在しており、手で10回揉みくちゃした後でも糸や繊維のほつれは認められなかった。また、サイドシール部が無いため手触りがよく、柔軟性にも富んでいた。
【0058】
(実施例6)吸液性コア101を投入しない以外は、実施例5と同様にして、実施例6の吸収性物品10を得た。
該吸収性物品10は、ヒートシール部21がピロー袋の周縁端部の先端部まで延在しており、手で10回揉みくちゃした後でも糸や繊維のほつれは認められなかった。また、サイドシール部が無いため手触りがよく、柔軟性にも富んでいた。
【0059】
(比較例1)市販のX線造影糸17入りガーゼは、切断部の縦糸が固定されていないため、繊維のほつれが認められ、衛生的に好ましくない。また、縦糸として織り込まれているX線造影糸17は、表面に露出しているため、ピンセットで摘めば容易に傷がつき、X線造影剤が簡単に脱落する危険性をはらんでいる。この市販のX線造影糸17入りガーゼを、手で10回揉みくちゃしたところ、糸やX線造影糸17がほつれ、さらにX線造影剤の一部が脱落していた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
(産業上の利用可能性)本発明は、おむつカバー、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りパッドなどの使い捨ての体液処理物品や、手術中に血液等の拭き、臓器等のカバー等に利用することができる。しかしながら、血液、浸出液、汗、尿など粘液体の吸収性を必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
10:吸収性物品
11:外面基材
15:内面基材
17:X線造影糸
21:ヒートシール部
21A:上端ヒートシール部
21B:背ヒートシール部
21C:下端ヒートシール部
40:積層基材
43:接着剤
45:押し出し樹脂
101:吸液性コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面基材及び内面基材を重ね合わせてなる吸収性物品であって、
前記外面基材が液体透過性を有する吸水性繊維の織布又は不織布であり、
前記内面基材が両面ヒートシール性を有する不織布であり、
前記外面基材及び前記内面基材を重ね合わせたまま、前記内面基材を内側にして袋状とし、
前記袋状の周縁端部がヒートシール法によるヒートシール部が形成され、
前記ヒートシール部の前記外面基材と前記内面基材との接触面、及び前記内面基材同士面がヒートシール法によって接着されてなる袋体で、
該袋体の内部に吸液性コアが収納され、
前記ヒートシール部が前記袋体の周縁端部の先端部まで延在していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記袋体の内部に吸液性コアが収納されてないことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸収性物品であって、前記外面基材と前記内面基材とが熱ラミネーション、熱エンボス、ノンソルベントラミネーション、電子線硬化ラミネーション、ホットメルト樹脂を点状又は線状に用いたホットメルトラミネーション、又は筋状押し出しラミネーションによって、少なくとも1部が接着されてなることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
前記外面基材の吸水性繊維が綿、麻、絹、ポリアミド又はレーヨンであり、前記袋体がピロー袋形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品において、
前記ヒートシール部の少なくとも1辺に、X線造影糸が挟持されていることを特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−165949(P2012−165949A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30812(P2011−30812)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】