説明

吸収性物品

【課題】尿等を速やかに吸収できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート2と液不透過性のバックシート3とこれらの間に設けられた吸収性コア4とを有し、前後方向yと幅方向xを有する吸収性物品1であって、吸収性コア4は開口を有し、当該開口に発泡ポリマーからなる拡散体5が設けられ、拡散体5にはバックシート3側に前後方向yに拡散体5の後側端まで延びる溝6が形成されている吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品において尿等の拡散性を高めるために、発泡ポリマーが備えられた吸収性物品が知られている。例えば特許文献1には、トップシートとバックシートとこれらの間に設けられた吸収性積層体を有し、吸収性積層体が、開口を有する貯蔵層と、この貯蔵層の開口の下に配され、発泡ポリマーからなる液体取扱層とを有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−60645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される吸収性物品は、発泡ポリマーからなる液体取扱層で尿等が滞留して、尿等が貯蔵層に速やかに吸収されないおそれがある。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、尿等を速やかに吸収できる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとこれらの間に設けられた吸収性コアとを有し、前後方向と幅方向を有する吸収性物品であって、吸収性コアは開口を有し、当該開口に発泡ポリマーからなる拡散体が設けられ、拡散体には、バックシート側に、前後方向に拡散体の後側端まで延びる溝が形成されているところに特徴を有する。本発明の吸収性物品は、トップシートを通過し拡散体に収容された尿等が溝によって形成される空間に移行し、この空間で尿等が吸収性物品の前後方向に速やかに拡散できる。そして、溝は拡散体の後側端まで延びているため、尿等は拡散体の後側端を越えて拡散し、吸収性コアに速やかに吸収されるようになる。
【0006】
拡散体は、幅方向に対して交わる側面の一部または全部が液不透過性に形成されている、または幅方向に対して交わる側面の一部または全部に液不透過層が設けられていることが好ましい。拡散体の幅方向に対して交わる側面が液不透過性に形成されたり、拡散体の幅方向に対して交わる側面に液不透過層が設けられていれば、拡散体に収容された尿等が、拡散体の内部や溝の空間を通って前後方向に優先的に拡散しやすくなる。また、尿等が拡散体の幅方向の側面を越えて吸収性コアに移行しにくくなり、尿等の幅方向への横漏れも起こりにくくなる。
【0007】
溝は、幅方向に対して交わる側面の一部または全部が液不透過性に形成されている、または幅方向に対して交わる側面の一部または全部に液不透過層が設けられていることが好ましい。溝の幅方向に対して交わる側面が液不透過性に形成されたり、溝の幅方向に対して交わる側面に液不透過層が設けられていれば、溝によって形成される空間に移行した尿等が、再び拡散体に吸収されることなく当該空間で吸収性物品の前後方向に拡散しやすくなる。
【0008】
トップシートは、拡散体の幅方向の両側でエンボス加工されて、吸収性コアに直接的または間接的に接合されていることが好ましい。このようにトップシートが吸収性コアに接合されていれば、拡散体が吸収性コアの開口からはみ出ようとするのを抑えやすくなる。
【0009】
トップシートと吸収性コアの間には、拡散体の幅方向の両側に、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収層が設けられていてもよい。吸収性物品は吸収性コアの開口に拡散体が設けられているため、吸収容量が不十分となるおそれがあるところ、シート状吸収層を設けることにより吸収性物品の吸収容量を高めることができる。また、拡散体の幅方向の両側にシート状吸収層を設けることにより、尿等の幅方向への横漏れが防止される。
【0010】
バックシートと拡散体の間には、保形シートとしてクレープ紙またはスパンレース不織布が設けられていてもよい。保形シートが設けられれば、吸収性物品の保形性が高められるとともに、拡散体の下側に移行した尿等が保形シートで拡散して、尿等がより速やかに吸収性コアに吸収されるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収性物品は、バックシート側に溝が形成された拡散体が吸収性コアの開口に設けられているため、尿等が拡散体の溝の空間で速やかに拡散できるようになる。そして、溝の空間で拡散した尿等は、吸収性コアに速やかに吸収されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の吸収性物品の一実施態様として、吸収性物品(尿パッド)をトップシート側から見た一部切欠図を表す。
【図2】図1に示した吸収性物品のA−A断面図を表す。
【図3】図1に示した吸収性物品の拡散体の斜視図を表す。図3(a)は拡散体をトップシート側から見た斜視図を表し、図3(b)は拡散体をバックシート側から見た斜視図を表す。
【図4】本発明の吸収性物品の他の実施態様として、吸収性物品(尿パッド)をトップシート側から見た一部切欠図を表す。
【図5】図4に示した吸収性物品のB−B断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に設けられた吸収性コアとを有する。本発明の吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。
【0014】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が、例えば尿パッド、生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が示される。
【0015】
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右に一対の止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するオープン型使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつであってもよい。
【0016】
吸収性物品が、例えば使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、前腹部と、後背部と、これらの間に位置し吸収性コアが備えられた股部とから構成されているものが挙げられる。使い捨ておむつとしては、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、おむつ本体の股部に吸収性コアを有する吸収性物品が備えられていてもよい。このとき、吸収性物品の形状としては、略長方形等が示される。また、吸収性物品が使い捨ておむつである場合、吸収性物品が、前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを形成し、この股部に吸収性コアが備えられていてもよい。前腹部、後背部、股部とは、使い捨ておむつの着用する際、着用者の腹側に当てる部分を前腹部と称し、着用者の背側に当てる部分を後背部と称し、前腹部と後背部との間に位置し着用者の股間に当てる部分を股部と称する。
【0017】
吸収性物品は前後方向と幅方向とを有する。吸収性物品の前後方向とは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。吸収性物品の幅方向とは、吸収性物品を平面に広げた状態で吸収性物品と同一面上にあり、前後方向と直交する方向を意味する。また、本発明において、上側とは吸収性物品を着用した際の着用者側を意味し、下側とは吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味する。上側から下側に延びる方向またはその逆方向を、厚み方向と称する。
【0018】
トップシートは、吸収性物品の着用の際に着用者側に位置するシートであり、液透過性であればその材料は特に限定されない。バックシートは、吸収性物品の着用の際に着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートであり、液不透過性であればその材料は特に限定されない。なお、本発明において、液不透過性とは撥水性の意味も含まれる。
【0019】
トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、孔が形成されたプラスチックフィルムを用いてもよい。
【0020】
バックシートとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。
【0021】
前記説明した各シートの材料として不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブロー法、エアレイド法やそれらの製法の組み合わせ等により製造されるものが好ましい。また、スパンボンド法とメルトブロー法を組み合わせたSMS法により製造された不織布を用いてもよい。
【0022】
吸収性物品が、前記説明したように、内側シートと外側シートとからなる積層体から形成されるおむつ本体の股部に備えられるものである場合、内側シートは親水性または液不透過性であることが好ましく、外側シートは液不透過性であることが好ましい。
【0023】
吸収性コアは、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収性コアとしては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いたり、あるいは吸収性材料を紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布シート等のシート部材で覆ったものを用いることができる。吸収性コアに含まれる吸収性材料としては、例えば、粉砕したパルプ繊維、セルロース繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等の体液との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0024】
吸収性材料は、尿等を速やかに吸収できるようにするために親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収性コアの吸収容量を高める点からは、吸収性材料は親水性繊維に加え吸水性樹脂を含むことが好ましい。吸収性材料は、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0025】
吸収性コアの外縁形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性コアの外縁形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が挙げられる。
【0026】
吸収性コアは、開口を有する。開口は吸収性コアを厚み方向(上下方向)に貫通するものであれば、その形状は特に限定されない。なお、吸収性物品は一般に前後方向に長い形状であることから、尿等は前後方向への拡散が促されることが吸収性コアによる尿等の速やかな吸収を実現する点で好ましい。従って、開口の形状としては、吸収性物品の幅方向より前後方向に長い形状であることが好ましい。なお開口には、後述するように拡散体が設けられており、基本的に開口の空間は拡散体で塞がれているが、開口と拡散体とは同一の形状である必要はない。
【0027】
吸収性コアの開口には、発泡ポリマーからなる拡散体が設けられている。拡散体は、吸収性コアを厚み方向に貫通するように設けられる。発泡ポリマーは、内部に多数の小さな空隙を有しているため、トップシートを通過した尿等の一部または全部は、これらの空隙を通って拡散体内を拡散できる。拡散体は、実質的に発泡ポリマーのみから構成されていることが好ましい。
【0028】
拡散体は、全部が吸収性コアの開口に設けられてもよく、一部が吸収性コアの開口に設けられ他部が吸収性コア(すなわち吸収性コアを構成する吸収性材料)と重なって設けられてもよい。拡散体は、吸収性コアの開口にはめ込まれて、開口の全体を実質的に塞ぐように設けられることが好ましい。なおこの場合、吸収性コアの開口の縁と拡散体との間にわずかな隙間が生じることが排除されるものではない。
【0029】
発泡ポリマーとしては、高分子を発泡成形したものであれば特に限定されない。発泡ポリマーとしては、一般的な吸収性物品の取り扱い条件で弾性変形可能であるものが好ましく、例えば、発泡ウレタン、発泡ゴム、発泡ポリエステル等を用いることができる。
【0030】
拡散体の形状は特に限定されない。拡散体の平面形状は、吸収性物品の幅方向より前後方向に長い形状であることが好ましい。この場合、拡散体に、後述するように吸収性物品の前後方向に延びる溝を形成しやすくなる。拡散体の平面形状は、例えば、長方形、角の丸まった長方形、多角形、楕円形等が挙げられる。また拡散体は、着用者の排尿部が面する付近が幅広に形成されたり、拡散体での多方向への拡散を促すために、例えば後側端が分岐していてもよい。なお、平面形状とは、吸収性物品の前後方向と幅方向から形成される面上の形状を意味する。
【0031】
拡散体は、吸収性物品を着用した際に着用者の排尿部付近が面するように、吸収性コアに配されることが好ましい。このように拡散体が設けられれば、着用者から排泄されトップシートを通過した尿等のより多くの量を拡散体で受けることができる。従って、尿等はより多くの量が拡散体を通って拡散して、速やかに吸収性コアに吸収されるようになる。
【0032】
拡散体は、吸収性コアの前後方向に対する相対的位置として前側端を0%とし後側端を100%としたとき、拡散体の前側端が10%〜35%の範囲(より好ましくは15%〜30%の範囲)に位置し、拡散体の後側端が50%〜80%の範囲(より好ましくは55%〜70%の範囲)に位置することが好ましい。拡散体の前側端が吸収性コアの前側端から35%以下の位置にあれば、吸収性物品を着用した際、拡散体が着用者の排尿部付近が面しやすくなる。拡散体の後側端が吸収性コアの前側端から50%以上の位置にあれば、尿等が拡散体を前後方向に拡散して、尿等が吸収性コアの後側部分まで容易に達するようになる。拡散体の前側端が吸収性コアの前側端から10%以上の位置にあれば、尿等が拡散体の前側端まで拡散しても、尿等が吸収性コアで好適に吸収されて尿等の前後方向への漏れが起こりにくくなる。拡散体の後側端が吸収性コアの前側端から80%以下の位置にあれば、尿等が拡散体の後側端まで拡散しても、尿等が吸収性コアで好適に吸収されて尿等の前後方向への漏れが起こりにくくなるとともに、吸収性コアの吸収容量を高めることができる。
【0033】
拡散体には、バックシート側に、吸収性物品の前後方向に拡散体の後側端まで延びる溝が形成されている。拡散体はバックシート側に溝が形成されているため、この溝の部分に空間が形成され、この空間を通って尿等が吸収性物品の前後方向に拡散できる。溝に形成される空間は、発泡ポリマーの内部にある多数の空隙よりも大きい。従って、トップシートを通過し拡散体に収容された尿等は、拡散体の発泡ポリマー内を通って溝によって形成された空間に移行し、この空間で尿等は発泡ポリマー内よりも速やかに拡散できるようになる。その結果、尿等は前後方向への拡散性が高まり、溝の空間を前後方向に拡散した尿等は吸収性コアに速やかに吸収されるようになる。
【0034】
溝は、拡散体のバックシート側に配される部材(例えば、バックシートや後述する保形シート等)に面するように、拡散体に形成されればよい。なお溝は、拡散体を吸収性コアの厚み方向(上下方向)に貫通するようには形成されない。従って、溝によって形成される空間は、拡散体と、拡散体のバックシート側に配される部材とにより囲まれている。具体的には、溝によって形成される空間は、上側や側面(幅方向の側面)が拡散体に覆われ、下側が拡散体のバックシート側に配される部材に覆われる。溝によって形成される空間の上側や側面が拡散体に覆われることにより、吸収性物品が厚み方向や幅方向に圧迫されても、溝によって形成される空間が保持されやすくなる。また、溝が拡散体のトップシート側まで貫通していないため、溝の空間に溜まった尿等がトップシートに逆戻りしにくくなって、吸収性物品の着用感が向上する。
【0035】
溝は、吸収性物品の前後方向に延びるように、拡散体に形成される。溝の平面形状は、吸収性物品の前後方向に延びる形状であれば特に限定されない。溝は、幅方向の中心線が、吸収性物品の前後方向に対し略平行に延びていることが、尿等の前後方向への拡散性を高める点で好ましい。溝の断面形状も特に限定されず、例えば、U字状、V字状、矩形状等が挙げられる。
【0036】
溝は、吸収性物品の前後方向に延び、拡散体の少なくとも後側端まで延びている。そのため溝の空間に移行した尿等は、より多くの量が拡散体の後側端まで拡散して吸収性コアの後側部分に吸収されるようになる。吸収性物品は一般に、吸収性コアの前後方向の後側部分が広い面積となるように形成される場合が多いため、溝が拡散体の少なくとも後側端まで延びていれば、尿等が速やかに吸収性コアに吸収されるようになる。
【0037】
溝は、吸収性物品の前後方向に対する長さが、拡散体の当該前後方向に対する長さの40%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。拡散体の前後方向の長さに対する溝の前後方向の長さの割合の上限は特に定められない。従って、溝は拡散体の前側端と後側端の両方の端まで延びていてもよい。
【0038】
溝は複数形成されてもよいが、この場合、複数の溝が吸収性物品の幅方向に並行して形成されることが好ましい。しかし、溝の空間で尿等の拡散性を高めるためには、細い幅の溝を複数設けるよりも広い幅の溝を1つ設ける方が効果的である。従って、拡散体には溝は1つのみ形成されることが好ましい。
【0039】
溝の幅(幅方向の長さ)は、溝の空間で尿等が拡散できる限り特に限定されないが、5mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。溝の幅が5mm以上あれば、溝の空間で尿等がスムーズに拡散しやすくなる。一方、溝の幅が25mmを超えると、溝により形成される空間が大きくなって、吸収性コアに設けることのできる吸収性材料の量が少なくなるおそれがある。この場合、吸収性物品の吸収容量が低下して非効率的となる。また、溝の幅が広すぎると、吸収性物品の厚み方向に対し拡散体に負荷がかかると、溝により形成される空間が潰れるおそれがある。この場合、尿等が溝の空間で拡散しにくくなるおそれがある。
【0040】
溝の高さ(吸収性物品の厚み方向の長さ)は、溝の空間で尿等が拡散できる限り特に限定されないが、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。溝の高さが3mm以上あれば、溝の空間で尿等がスムーズに拡散しやすくなる。一方、溝の高さが20mmを超えると、溝の上側に位置する拡散体の厚みが薄くなって、溝の空間に溜まった尿等がトップシートに逆戻りするおそれがある。
【0041】
前記説明した溝の好ましい長さ、幅、高さは、拡散体が吸収性コアの開口に設けられた状態に基づく。従って、溝の長さや幅、高さ等の寸法を測定するには、拡散体のバックシート側に配される部材(例えば、バックシートや後述する保形シート等)を、溝と重なる部分のみ除去して、溝の寸法を測定すればよい。また、前記説明した溝の好ましい長さ、幅、高さは、吸収性物品に弾性部材が配される場合は、弾性部材を伸張させて吸収性物品を完全に広げた状態に基づく。
【0042】
拡散体は、吸収性物品の幅方向に対して交わる側面の一部または全部が液不透過性に形成されていることが好ましい。このように拡散体の側面の一部が液不透過性に形成されていれば、拡散体に収容された尿等が、拡散体の内部や溝の空間を通って前後方向に優先的に拡散しやすくなる。また、尿等が拡散体の幅方向の側面を越えて吸収性コアに移行しにくくなり、尿等の幅方向への横漏れも起こりにくくなる。なお、本発明において、吸収性物品の幅方向に対して交わる拡散体の側面を、拡散体の幅方向の側面と称する場合がある。
【0043】
拡散体の幅方向の側面の一部が液不透過性に形成される場合、拡散体の幅方向の側面は、下側半分が上側半分よりも液不透過性の部分の面積が多くなることが好ましい。この場合、尿等が溜まりやすい拡散体の下側部分で、尿等が拡散体の幅方向の側面を越えて吸収性コアに移行しにくくなり、尿等が拡散体の内部や溝の空間を通って前後方向に拡散しやすくなる。そして、拡散体の上側部分まで尿が溜まると、尿等が拡散体の幅方向の側面を越えて吸収性コアに移行しやすくなって、拡散体で尿等が溢れるのが防止される。
【0044】
拡散体の幅方向の側面の一部が液不透過性に形成される場合、拡散体の幅方向の側面は次のように液不透過性に形成されることが好ましい。すなわち、拡散体を、吸収性物品の前後方向に、前方部と後方部とこれらの間に位置する中間部とに区分したとき、拡散体の幅方向の側面の前方部および/または後方部は液不透過性でなくてもよい(すなわち、前記側面の前方部および/または後方部は液透過性であってもよい)。拡散体の幅方向の側面の前方部および/または後方部が液不透過性でなければ、拡散体の前方部や後方部で拡散体から吸収性コアに尿等が移行しやすくなって、尿等が吸収性コアに速やかに吸収されるようになる。
【0045】
拡散体の幅方向の側面の一部が液不透過性に形成される場合、拡散体の幅方向の側面は特に後方部が液不透過性でないこと(すなわち、後方部が液透過性であること)が好ましい。吸収性物品は一般に、吸収性コアの後側部分が広い面積となるように形成される場合が多いため、拡散体の幅方向の側面の後方部が液不透過性でなければ、尿等はより多くの量が吸収性コアの後側部分に移行しやすくなって、尿等が吸収性コアに速やかに吸収されるようになる。
【0046】
拡散体の幅方向の側面の後方部が液不透過性でない場合、液不透過性とならない後方部の前後方向の長さは、拡散体の前後方向の長さの3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。また、拡散体の幅方向の側面の前方部が液不透過性でない場合、液不透過性とならない前方部の前後方向の長さは、拡散体の前後方向の長さの3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0047】
拡散体の幅方向の側面の一部が液不透過性に形成される場合、液不透過性の部分と液透過性の部分とが混在するように設けられてもよい。例えば、液不透過性の部分が液透過性の部分に囲まれてもよいし、液透過性の部分が液不透過性の部分に囲まれてもよい。また、液不透過性の部分と液透過性の部分が交互に設けられてもよい。拡散体の幅方向の側面は、液透過性の部分と液不透過性の部分の割合を適宜調整することで、尿等が拡散体の溝を前後方向に良好に拡散しつつ、尿等が拡散体から溢れないように調整することが可能となる。
【0048】
拡散体の幅方向の側面の一部または全部を液不透過性に形成する方法は特に限定されない。例えば、拡散体を構成する発泡ポリマーの幅方向の側面の一部または全部を加熱することで、加熱した部分を液不透過性に形成すればよい。
【0049】
拡散体の幅方向の側面の一部または全部を液不透過性に形成する代わりに、拡散体の幅方向の側面の一部または全部に液不透過層を設けてもよい。液不透過層は、例えば、拡散体の幅方向の側面に塗料やホットメルト接着剤等を塗布することにより設けてもよいし、拡散体の幅方向の側面に液不透過性のシートを取り付けることにより設けてもよい。
【0050】
溝は、吸収性物品の幅方向に対して交わる側面の一部または全部が液不透過性に形成されていることが好ましい。このように溝の一部が液不透過性に形成されていれば、溝によって形成される空間に移行した尿等が、再び拡散体に吸収されることなく当該空間で吸収性物品の前後方向に拡散しやすくなる。また、尿等の幅方向への横漏れも起こりにくくなる。なお、本発明において、吸収性物品の幅方向に対して交わる溝の側面を、溝の幅方向の側面と称する場合がある。
【0051】
溝の幅方向の側面は、当該側面の下端から所定の高さまでの領域の一部または全部が液不透過性に形成されることが好ましい。このように溝の幅方向の側面が液不透過性に形成されれば、溝の空間で、尿等の前後方向への拡散が促される。具体的には、溝の高さをHとした場合、溝の幅方向の側面の下端から0.6H以内の高さ(より好ましくは、0.5H以内の高さ)の領域の一部または全部が液不透過性に形成され、当該側面の下端から0.6H超の領域(より好ましくは0.5H超の領域)では溝は液不透過性に形成されない。すなわち、溝の上面は液透過性であることが好ましい。なお、溝の上面や溝の側面の下端とは、吸収性物品のトップシートが上側にある状態、すなわち拡散体の溝(溝の開口)が下側を向いた状態に基づく。
【0052】
溝の幅方向の側面の一部または全部を液不透過性に形成する方法は特に限定されない。例えば、溝の幅方向の側面に位置する発泡ポリマーの表面の一部または全部を加熱することで、加熱した部分を液不透過性に形成すればよい。
【0053】
溝の幅方向の側面の一部または全部を液不透過性に形成する代わりに、溝の幅方向の側面の一部または全部に液不透過層を設けてもよい。液不透過層は、例えば、溝の幅方向の側面に塗料やホットメルト接着剤等を塗布することにより設けてもよいし、溝の幅方向の側面に液不透過性のシートを取り付けることにより設けてもよい。
【0054】
吸収性物品には、バックシートと拡散体の間に、保形シートとしてクレープ紙またはスパンレース不織布が設けられていることが好ましい。クレープ紙は表面に多数の細かいしわが形成されているため、しわが形成されていない普通の紙と比較して嵩高に形成される。またスパンレース不織布も、不織布を構成する繊維どうしが絡み合うことにより、比較的嵩高に形成されている。従って、吸収性物品に、クレープ紙やスパンレース不織布からなる保形シートが設けられることで、吸収性物品に剛性が付与され、吸収性物品を所定形状に保持しやすくなる。
【0055】
さらに、クレープ紙やスパンレース不織布からなる保形シートがバックシートと拡散体の間に設けられれば、拡散体の下側に移行した尿等が保形シートで拡散できるようになる。すなわち、尿等は、クレープ紙と拡散体の間の隙間やスパンレース不織布を構成する繊維間隙を通って、拡散できるようになる。従って、尿等がより速やかに吸収性コアに吸収されるようになる。
【0056】
本発明の吸収性物品は、吸収性コアに開口が形成され、開口には発泡ポリマーからなる拡散体が設けられている。従って、開口の分だけ吸収性コアの吸収容量が低下し、吸収性物品全体としての吸収容量が不十分となるおそれがある。このような場合は、トップシートと吸収性コアの間に、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収層を設けることが好ましい。シート状吸収層は不織布シート間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。従って、トップシートと吸収性コアの間にシート状吸収層を設けることにより、吸収性物品の吸収容量を高めることができる。また、シート状吸収層は不織布シート間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。さらに、シート状吸収層は不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないため、尿等を吸収しても、表面が比較的乾いた状態で維持される。従って、トップシートと吸収性コアの間にシート状吸収層を設けることにより、吸収性コアからトップシートへ尿等が逆戻りしにくくなり、吸収性物品の着用感を向上させることができる。
【0057】
シート状吸収層は、拡散体に対し、幅方向の両側に設けられることが好ましい。拡散体の幅方向の両側では、吸収性コアの幅(吸収性コアの外縁と開口との間の幅方向の長さ)が狭く形成されるため、当該部分での尿等の吸収容量が低下し、尿等の幅方向への横漏れが起こるおそれがある。しかし、シート状吸収層を拡散体の幅方向の両側に設ければ、当該部分で吸収性コアにより吸収されなかった尿等がシート状吸収層により吸収され、尿等の横漏れが防止されるようになる。また、シート状吸収層は、一旦尿等を吸収すると吸水性樹脂が膨潤して尿等を通しにくくなる。そのため、シート状吸収層が尿等を吸収した後、吸収性コアが拡散体の幅方向の両側部分で尿等を収容しきれなくなって、尿等が当該部分で溢れそうになっても、尿等がシート状吸収層を越えてトップシートに逆戻りしにくくなり、当該部分で尿等が前後方向に拡散しやすくなって、尿等の横漏れが防止されるようになる。シート状吸収層はさらに、拡散体に対し、前後方向の一方または両方に設けられてもよい。
【0058】
シート状吸収層が拡散体の幅方向の両側に設けられる場合、シート状吸収層は拡散体の一部と重なって設けられてもよいが、拡散体の全部とは重なって設けられないことが好ましい。シート状吸収層が拡散体の全部と重なって設けられると、トップシートを通過した尿等が拡散体に収容されにくくなって、尿等の吸収性物品の前後方向への拡散性が低下するおそれがあるためである。より好ましくは、シート状吸収層は、拡散体と重ならないように設けられる。
【0059】
シート状吸収層に配される吸水性樹脂としては、高い吸収容量を有する点で、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
シート状吸収層に用いられる不織布シートは液透過性であり、そのような不織布シートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維を界面活性剤で親水化したものを用いればよい。
【0061】
シート状吸収層は、例えば、トップシート側の上側不織布シートとバックシート側の下側不織布シートとからなる2枚の不織布シートの間に吸水性樹脂が配されて形成される。この場合、上側不織布シートと下側不織布シートは、各々1枚の不織布シートから構成されてもよく、2枚以上の不織布シートが重ねられて構成されてもよい。また、上側不織布シートと下側不織布シートとが、1枚の不織布シートが折り目で折り返されて、この折り目を挟んで一方側を上側不織布シートとして、他方側を下側不織布シートとしてもよい。この場合、1枚の不織布シートが折り返された内側に吸収性樹脂が配される。
【0062】
シート状吸収層は、不織布シート間に、吸水性樹脂が配された吸水性樹脂存在領域と、吸水性樹脂存在領域に隣接して吸水性樹脂非存在領域とを有し、吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしが接合されていることが好ましい。シート状吸収層は吸水しても、吸水性樹脂非存在領域で不織布シートどうしの接合が維持されることが好ましく、従って、不織布シートどうしは、熱融着、超音波融着、またはゴム系接着剤やスチレン系エラストマー等の接着剤により接合することが好ましい。このような接合手段を用いれば、吸水性樹脂が吸水して膨潤しても、不織布シートどうしの接合が維持されやすくなる。接着剤としてゴム系接着剤やスチレン系エラストマーを用いる場合、ゴム系接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等の接着剤が挙げられ、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0063】
吸水性樹脂存在領域と吸水性樹脂非存在領域は、シート状吸収層の前後方向の長さとほぼ等しい長さを有する略長方形状で設けられることが好ましい。このように吸水性樹脂存在領域と吸水性樹脂非存在領域が設けられれば、吸水性樹脂を所定幅で一方向に連続的に散布することにより吸水性樹脂存在領域と吸水性樹脂非存在領域を形成することができるので、シート状吸収層の製造が容易になる。
【0064】
トップシートは、拡散体の幅方向の両側でエンボス加工されて、吸収性コアに直接的または間接的に接合されていることが好ましい。拡散体は吸収性コアとは異なる材料から構成されているため、吸収性物品が変形すると、拡散体と吸収性コアとの間にずれが生じることにより、拡散体が吸収性コアの開口からはみ出そうとするおそれがある。従って、拡散体が吸収性コアの開口からはみ出ようとするのを抑えるために、トップシートは拡散体の幅方向の両側でエンボス加工されて、吸収性コアに接合されていることが好ましい。
【0065】
トップシートと吸収性コアが隣接して設けられる場合は、トップシートは、拡散体の幅方向の両側でエンボス加工されて、吸収性コアに直接的に接合されていることが好ましい。トップシートと吸収性コアの間にシート状吸収層が設けられるような場合は、トップシートは、拡散体の幅方向の両側でエンボス加工されて、吸収性コアに間接的に接合されていることが好ましい。いずれの場合も、トップシートと吸収性コアは、エンボス加工によって加圧された部分で互いに接合していることが好ましい。
【0066】
トップシートと吸収性コアは、エンボス加工された部分が融着していてもよいし、融着していなくてもよい。前者の場合、例えば、トップシートは、吸収性コアに重ねられた状態で熱エンボスや超音波エンボスされることにより、吸収性コアと融着する。後者の場合、例えば、トップシートは接着剤により吸収性コアと接合され、さらにこの状態でエンボスされることにより、エンボスされた部分で接着剤の接合力が強化される。いずれの場合も、トップシートと吸収性コアの間に、シート状吸収層のような他のシート部材を介していてもよい。
【0067】
トップシートと吸収性コアを接着剤で接合する場合、接着剤層(接着剤により形成される層)は網状に形成されることが好ましい。このように接着剤層が形成されれば、エンボスされない部分では接着剤層に尿等を通す空隙が形成され、尿等はその空隙を通過できるようになる。一方、エンボスされた部分では、トップシートと吸収性コアとが直接的または間接的に強固に接着され、拡散体が吸収性コアの開口からはみ出そうとするのを抑える。接着剤層を網状に形成する方法としては、スパイラルコーティング法、カーテンスプレー法、オメガコーティング法等の接着剤塗工方法を用いればよい。
【0068】
トップシートがエンボス加工されて吸収性コアに接合される場合、拡散体が吸収性コアの開口からはみ出そうとするのが抑えられる限り、トップシートがエンボス加工される部分は少ない方が好ましい。トップシートがエンボスされた部分では、尿等のトップシートの透過性が低下するおそれがあるためである。従って、トップシートは全面的にエンボス加工されて吸収性コアに接合されないことが好ましい。特にトップシートは、拡散体と重なる部分では、エンボス加工されることによって拡散体と接合していないことが好ましい。
【0069】
吸収性物品には、吸収性コアの幅方向両側に立ち上がりフラップが設けられてもよい。立ち上がりフラップは、例えば、吸収性コアの上側に、吸収性コアの両側縁に沿って設けられてもよく、吸収性コアの幅方向両外側に設けられてもよい。立ち上がりフラップは、例えばトップシートや、トップシート上面に折り返されたバックシート、あるいはトップシートとバックシートの両方に接合される。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。立ち上がりフラップおよびサイドシートは、液不透過性であることが好ましい。
【0070】
本発明の吸収性物品の実施態様の一例を、図面を参照して説明する。図1〜図3には、本発明の吸収性物品の一実施態様を示した。なお、本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。図1は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た一部切欠図を表す。図2は、図1の吸収性物品のA−A断面図を表す。図3(a)は、図1の吸収性物品の拡散体をトップシート側から見た斜視図を表し、図3(b)は、図1の吸収性物品の拡散体をバックシート側から見た斜視図を表す。なお、本願の図では、矢印xが幅方向、矢印yが前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。
【0071】
吸収性物品1は、液透過性のトップシート2と液不透過性のバックシート3とこれらの間に設けられた吸収性コア4とを有し、前後方向yと幅方向xとを有する。トップシート2は、着用者の肌に面するように配置され、尿等の排泄物を透過する。トップシート2を透過した排泄物は、吸収性コア4により収容される。バックシート3は、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。
【0072】
トップシート2の幅方向xの両端には、前後方向yに延在するサイドシート13が接合している(図1,図2)。サイドシート13は、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成される。サイドシート13には、幅方向xの内方端に起立用弾性部材15が設けられている。サイドシート13は、起立用弾性部材15の収縮力によりサイドシート13の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより立ち上がりフラップ14が形成され、尿等の幅方向xの横漏れが防止される。立ち上がりフラップ14は前後端部の内面がトップシート2上に接合されてもよく、これにより尿等の前後方向yへの漏れが防止される。
【0073】
吸収性コア4は開口を有し、開口には発泡ポリマーからなる拡散体5が設けられている。図1〜図3に示した吸収性物品1では、略直方体の拡散体5が設けられている。拡散体5は、バックシート3側に、前後方向yに拡散体5の後側端まで延びる溝6が形成されている。なお、図3では図の右側が吸収性物品の後側に相当する。図3(a)では拡散体5の下側の面がバックシート側を表し、図3(b)では拡散体5の上側の面がバックシート側を表す。トップシート2を通過し拡散体5に収容された尿等は、拡散体5の発泡ポリマー内を通って溝6によって形成された空間に移行し、溝6の空間で前後方向yに速やかに拡散できる。その結果、尿等は拡散体5の後側端を越えて吸収性コア4に速やかに吸収される。
【0074】
図3に示すように、吸収性物品1では、拡散体5の幅方向xに対して交わる側面の一部に液不透過層7が設けられている。また、溝6にも幅方向xに対して交わる側面の一部に液不透過層8が設けられている。このように液不透過層7,8が設けられていれば、拡散体5および溝6の空間で、尿等の前後方向yへの拡散性が高められる。
【0075】
バックシート3と拡散体5の間には、クレープ紙またはスパンレース不織布からなる保形シート9が設けられている。このように保形シート9が設けられれば、吸収性物品1の保形性が高められるとともに、拡散体5の下側に移行した尿等が保形シート9で拡散して、尿等がさらに速やかに吸収性コア4に吸収されるようになる。
【0076】
本発明の吸収性物品の他の実施態様について、図4および図5を参照して説明する。図4,図5には、図1〜図3に示した吸収性物品1の吸収性コア4とトップシート2の間にシート状吸収層10を設けた吸収性物品を示した。図4は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た一部切欠図を表す。図5は、図4の吸収性物品のB−B断面図を表す。下記の説明において、図1〜図3の実施態様と重複する部分の説明は省略する。
【0077】
図4,図5に示した吸収性物品1は、吸収性コア4とトップシート2の間に、不織布シート12,12間に吸水性樹脂11を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収層10が設けられている。シート状吸収層10は、拡散体5の幅方向xの両側に設けられている。このようにシート状吸収層10を設けることにより、吸収性物品1の吸収容量が高められる。また、拡散体5の幅方向xの両側にシート状吸収層10を設けることにより、尿等の幅方向xへの横漏れが防止される。
【符号の説明】
【0078】
1: 吸収性物品(尿パッド)
2: トップシート
3: バックシート
4: 吸収性コア
5: 拡散体
6: 溝
9: 保形シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとこれらの間に設けられた吸収性コアとを有し、前後方向と幅方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収性コアは開口を有し、当該開口に発泡ポリマーからなる拡散体が設けられ、
前記拡散体には、前記バックシート側に、前記前後方向に前記拡散体の後側端まで延びる溝が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記拡散体は、前記幅方向に対して交わる側面の一部または全部が液不透過性に形成されている、または前記幅方向に対して交わる側面の一部または全部に液不透過層が設けられている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溝は、前記幅方向に対して交わる側面の一部または全部が液不透過性に形成されている、または前記幅方向に対して交わる側面の一部または全部に液不透過層が設けられている請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートは、前記拡散体の前記幅方向の両側でエンボス加工されて、前記吸収性コアに直接的または間接的に接合されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートと前記吸収性コアの間には、前記拡散体の前記幅方向の両側に、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収層が設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記バックシートと前記拡散体の間には、保形シートとしてクレープ紙またはスパンレース不織布が設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−50744(P2012−50744A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197032(P2010−197032)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】