説明

吸収性物品

【課題】好適な収縮力を有する伸縮可能な吸収性物品を提供する。
【解決手段】本発明の吸収性物品1Aは、液透過性の表面シート10と、表面シート10と対向する位置に設けられた裏面シート20と、裏面シート20の表面シート10側とは反対側の面に設けられた粘着部50とを備え、表面シート10および裏面シート20は、高圧水流によってシート加工された後、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製させた不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着などの被着体に貼り付けて使用する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
下着に取り付けて使用するパンティライナなどの吸収性物品は、下着の伸縮に合わせて伸び縮みすることが好ましい。たとえば、吸収性物品が伸び縮みしない場合、下着から吸収性物品が剥がれたり、しわになったりする場合がある。また、着用者は、下着との伸縮性が異なる吸収性物品に対して違和感を感じ、不快に感じる場合がある。そこで、従来から伸縮性を有する吸収性物品が開発されてきた(たとえば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の吸収製品は、着用者の下着に取り着けるための吸収製品であり、縦軸および横軸を有し、液体通路を有するトップシートと、使用の間下着に面する外側表面を有するバックシートと、トップシートとバックシートとの間に介在された吸収性コアと、バックシートの外側表面上に提供されるパンティ固定手段とを含み、製品は縦軸に平行または横軸に平行あるいはその組合せから選択される方向に収縮性を有する。
【0004】
特許文献2に記載の吸収性物品は、縦方向の中心線と、横方向の中心線と、透液側と、不透液側と、上記透液側と上記不透液側の間にある吸収体とをもち、下着の股部分に装着する伸縮自在な吸収性物品であり、縦方向中心線付近に中心がある、吸収性物品の縦方向部分に沿って、吸収性物品から切り取られた初期長さをもつ1.0インチ(2.54cm)幅のストリップが、500g以下の力がかかったときに、その初期長さの110%以上に伸長することができる。
【0005】
特許文献3に記載の吸収用品は、少なくとも第1層と少なくとも第2層とを含み、縦方向に弾性的になっている。吸収用品は、400gの負荷力により縦の中央線に沿って元の長さの5%〜20%伸び、負荷力が除去された後の回復率は、少なくとも90%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表11−508178号公報
【特許文献2】特表6−502109号公報
【特許文献3】特開2008−49128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
伸縮性を有する吸収性物品が伸びたとき、元の大きさに戻ろうとする力(収縮力)が発生する。この収縮力が大きいと、着用時に着用者に対して突っ張ったような使用感を与えたり、下着が体圧から解放されたとき吸収性物品は、たるみ、しわ、よれなどを下着に発生させたりする場合がある。本発明は、好適な収縮力を有する伸縮可能な吸収性物品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の吸収性物品は、液透過性の表面シートと、表面シートと対向する位置に設けられた裏面シートと、裏面シートの表面シート側とは反対側の面に設けられた粘着部とを備え、表面シートおよび裏面シートは、高圧水流によってシート加工された後、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製させた不織布である。
本発明の他の吸収性物品は、液透過性の表面シートと、表面シートと対向する位置に設けられた裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に設けられた吸収体と、吸収体と裏面シートとの間に設けられた、液の透過を抑制する防漏シートと、裏面シートの表面シート側とは反対側の面に設けられた粘着部とを備え、表面シートおよび裏面シートは、高圧水流によってシート加工された後、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製させた不織布であり、表面シートおよび裏面シートの少なくとも一方は、該シートを構成する繊維の融点付近の温度まで加熱した場合、さらに収縮し、表面シートおよび裏面シートの繊維の配向方向が、長手方向に対して直交しており、吸収体の面方向の領域は、表面シートおよび裏面シートの面方向の領域の中に含まれ、防漏シートは、一軸延伸フィルムであり、表面シート、裏面シート、吸収体および防漏シートのうちの少なくとも1つは、メッシュ状の溝を形成するか、エンボス加工により複数の開口部を形成するか、またはスリットを形成することによって、伸長強度が低減されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、好適な収縮力を有する伸縮可能な吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の吸収性物品を説明するための図である。
【図2】図2は、潜在捲縮繊維を説明するための図である。
【図3】図3は、不織布の中の捲縮繊維の配向方向を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態の吸収性物品を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態の吸収性物品の伸長力、収縮力および歪み量を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態の吸収性物品の吸収体および防漏シートの存在する領域の伸長力および収縮力と、吸収体および防漏シートの存在しない領域の伸長力および収縮力とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−第1の実施形態−
以下、図を参照して本発明の第1の実施形態の吸収性物品を説明する。本発明の第1の実施形態の吸収性物品は、パンティライナである。
図1は、本発明の第1の実施形態の吸収性物品を説明するための図である。図1(a)は、本発明の第1の実施形態における吸収性物品の平面図であり、図1(b)は、本発明の第1の実施形態における吸収性物品の背面図であり、図1(c)は、図1(a)のA−A断面を概略的に表した図である。本発明の第1の実施形態における吸収性物品1Aは、透液性の表面シート10と、表面シート10と対向する位置に設けられた裏面シート20と、表面シート10および裏面シート20の間の表面シート10側に設けられた吸収体30Aと、表面シート10および裏面シート20の間の裏面シート20側に設けられた、液の透過を抑制する防漏シート40Aと、裏面シート20の表面シート10側とは反対側の面に設けられた粘着部50とを備える。表面シート10、裏面シート20、吸収体30Aおよび防漏シート40Aは、同じ外形および寸法を有する。図1で、吸収性物品1Aの長手方向がx軸であり、長手方向に直交する幅方向がy軸方向である。また、図1では、xy方向が面方向である。
【0012】
表面シート10は、液の透過を妨げない塗布坪量のホットメルト型接着剤などを使用して吸収体30Aと接着している。同様な方法で、吸収体30Aは防漏シート40Aと接着し、防漏シート40Aは裏面シート20と接着している。
【0013】
吸収性物品1Aには、加熱圧縮によるエンボス加工が施されており、吸収性物品1Aは、エンボス加工により形成されたエンボス圧縮部60,70を有する。吸収性物品1Aには、エンボス圧縮部60により、ドットパターンおよび花びら形状が描かれている。なお、ドットパターンおよび花びら形状の他に、円形状、星形状、リーフ状模様、波状パターンなどをエンボス圧縮部で描くようにしてもよい。このように、所定の図形や模様などを描くためのエンボス圧縮部60を、以下デザインエンボス60と呼ぶ。また、吸収性物品1Aの外周には、表面シート10、裏面シート20、吸収体30Aおよび防漏シート40Aを一緒に接合するためのランドシールがエンボス圧縮部70によって形成されている。このようなランドシールを形成するエンボス圧縮部70を、以下ラウンドシールエンボス70と呼ぶ。
【0014】
表面シート10は、吸収性物品の着用時に着用者の肌に接するシートである。表面シート10には、熱捲縮繊維を主体として含む不織布が使用される。熱捲縮繊維とは、熱処理などによって潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させた繊維である。熱捲縮繊維を主体として含む不織布は、潜在捲縮性繊維を主体として含むウエブを、カード機などのウエブ形成手段によって形成し、ウエブを所定温度に加熱して潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製される。表面シート10に使用される不織布には、高圧水流によってシート加工されたスパンレース不織布が好ましい。しかし、表面シート10に使用される不織布は、スパンレース不織布に限定されず、たとえば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、エアレイド不織布などでもよい。
【0015】
潜在捲縮性繊維には、たとえば、図2(a)に示すように、高収縮成分110Aおよび低収縮成分120Aが並列に配置されたサイド・バイ・サイド型複合繊維100Aおよび図2(b)に示すように、高収縮成分110Bを芯に低収縮成分120Bを鞘にし、両成分の重心が一点に重ならない芯鞘型に配置された偏芯芯鞘型複合繊維100Bがある。潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させると、潜在捲縮性繊維は、たとえばコイル状に捲縮する。
【0016】
表面シート10に使用するのに好適なサイド・バイ・サイド型複合繊維には、たとえば、ユニチカ社製のポリエステル繊維(T81、捲縮発現温度140℃以上、捲縮発現数(170℃・65個))がある。表面シート10に使用するのに好適な偏芯芯鞘型複合繊維には、たとえば、チッソ社製のポリオレフィン繊維(チッソEP繊維、捲縮発現温度110℃以上、捲縮発現数(140℃・55個))がある。
【0017】
不織布を構成する繊維は、不織布を製造する工程でウエブが進行する方向、すなわち、機械方向(MD)に配向する傾向がある。したがって、図3に示すように表面シート10に使用される不織布200中の捲縮繊維210も機械方向(MD)に配向する傾向がある。このため、熱捲縮繊維210は、不織布200の機械方向(MD)において絡み合いの度合いが大きくなる。したがって、不織布200を伸長させるために必要な力(伸長力)および伸長した不織布200が収縮しようとする力(収縮力)は、機械方向(MD)と直交する幅方向(CD)に比べて、機械方向(MD)の方が大きい傾向にある。
【0018】
表面シート10の長手方向の伸長力および収縮力を強くさせないために、表面シート10に用いる不織布の機械方向(MD)が表面シート10の長手方向と直交をなすことが好ましい。すなわち、表面シート10の繊維の配向方向が、長手方向に対して直交していることが好ましい。ここで、伸長力とは表面シート10を伸長させるために必要な力であり、収縮力とは伸長した表面シート10が収縮しようとする力である。
【0019】
吸収性物品1Aを貼り付ける下着の伸縮に吸収性物品1Aの伸縮を追従させるのに適切な伸長力および収縮力を得るために、表面シート10に用いる不織布は、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることによって、30〜60%の収縮率に収縮した不織布であることが好ましい。不織布の収縮率が30%よりも小さいと、表面シート10はあまり伸縮しなくなり、吸収性物品1Aを貼り付ける下着の伸縮に吸収性物品1Aの伸縮を追従させることができなくなる場合がある。また、不織布の収縮率が60%よりも大きいと、表面シート10の伸長力および収縮力が、吸収性物品1Aを貼り付ける下着の伸縮に吸収性物品1Aの伸縮を追従させるには大きくなりすぎてしまう場合がある。ここで、収縮率は次式より算出することができる。
収縮率(%)=(100−((熱処理前のウエブの幅)−(熱処理後のウエブの幅)/熱処理前のウエブの幅)×100)
ここで、熱処理とは潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させるための熱処理である。
【0020】
表面シート10に用いる不織布は、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることによって、最大で60%の収縮率しか収縮していない。このため、表面シート10に用いる不織布をさらに繊維の融点付近の温度まで加熱すると、潜在捲縮性繊維の捲縮の発現がさらに進む。たとえば、表面シート10に用いる不織布をさらに熱処理すると、この熱処理前に比べて15〜30%の収縮率で収縮させることができる。すなわち、表面シート10に用いる不織布では、最大の捲縮までには至らない程度の潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させている。
【0021】
また、表面シート10に用いる不織布は、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させる温度において、40〜100個/25mmの捲縮数の捲縮を発現させた熱捲縮繊維であることが好ましい。この捲縮数は、JIS−L1015−8.12(2010)にしたがって測定されたものである。熱捲縮繊維の捲縮数が40個/25mmよりも小さいと、表面シート10はあまり伸縮しなくなり、吸収性物品1Aを貼り付ける下着の伸縮に吸収性物品1Aの伸縮を追従させることができなくなる場合がある。また、熱捲縮繊維の捲縮数が100個/25mmよりも大きいと、表面シート10の伸長力および収縮力が、吸収性物品1Aを貼り付ける下着の伸縮に吸収性物品1Aの伸縮を追従させるには大きくなりすぎてしまう場合がある。
【0022】
通常、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させる熱処理の後、繊維同士を融着させる熱処理を行うが、表面シート10に用いる不織布では、表面シート10の伸長力および収縮力を強くさせないために、繊維同士を融着させる熱処理を行わない方が好ましい。
【0023】
表面シート10に用いる不織布の目付は、不織布の伸長力および液透過性の観点から25〜100g/m2であることが好ましい。このような目付の不織布は、たとえば、カード機などのウエブ形成手段によってウエブを形成した後、高圧水流によるシート加工を行い、加熱処理によってウエブを収縮させることによって作製される。
【0024】
表面シート10に用いる不織布は、表面シート10の吸収性、肌触りなどを改善するために、熱捲縮繊維の他の繊維を含むことができる。たとえば、表面シート10に親水性、吸水性を与えるために、不織布は、綿、レーヨンなどを20重量%以上含むようにしてもよい。
【0025】
裏面シート20には、表面シート10と同様の上述の不織布を使用することができる。たとえば、熱捲縮線を主として含むスパンレース不織布を使用することができる。裏面シート20は液透過性を有する必要がないので、裏面シート20には30〜150g/m2の目付の不織布を使用することができる。裏面シート20には、さらに30〜60g/m2の目付の不織布を使用することが好ましい。吸収性物品が防漏シートを備えない場合は、着用者の体液の透過による下着の汚れを防止するために、裏面シート20に用いる不織布は液の透過を抑制するものが好ましい。この場合、裏面シート20には、繊度が2.2dtex以上のポリエステル系繊維を用いた100g/m2以上の目付の不織布を使用することが好ましい。
【0026】
裏面シート20の長手方向の伸長力および収縮力を強くさせないために、裏面シート20に用いる不織布の機械方向(MD)が裏面シート20の長手方向と直交をなすことが好ましい。すなわち、裏面シート20の繊維の配向方向が、長手方向に対して直交していることが好ましい。
【0027】
裏面シート20に用いる不織布では、裏面シート20の伸長力および収縮力を強くさせないために、表面シート10に用いる不織布と同様に、繊維同士を融着させる熱処理を行わない方が好ましい。
【0028】
所定の応力をシートに与えて伸長させた後、応力を解除して収縮した後のシートの長さから元のシート長さを引いた値を、元のシートの長さでさらに割り算した値、すなわち、シートの伸長歪み量は、表面シート10と裏面シート20とで、同等であることが好ましい。これにより、吸収性物品1Aが伸長した後、表面シート10の伸長歪み量と裏面シート20の伸長歪み量との差異により生ずる吸収性物品1Aのたるみ、しわ、凹凸などが発生するのを抑制することができる。
【0029】
吸収体30Aは、着用者の体液を吸収し保持する。なお、軽微な下着の汚れを防止するための吸収性物品の場合は、吸収性物品は吸収体を備えなくてもよい。
【0030】
吸収体30Aは、熱捲縮繊維と、吸収性を高めるための繊維とを含む。たとえば、吸収体30Aには、熱捲縮繊維と、レーヨン、綿、羽毛パルプなどの吸水性および親水性を高める繊維との混合物からなるスパンレース不織布を使用することができる。また、吸収体30Aには、レーヨン繊維を70〜100重量%、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維を0〜30重量%、およびPE(ポリエチレン)−PP(ポリプロピレン)芯鞘繊維を0〜30重量%含んだ、目付が20〜80g/m2および厚みが0.15〜0.50mmである非熱捲縮性のスパンレース不織布を用いることができる。また、吸収体30Aには、パルプ繊維を50〜90重量%、PE−PP芯鞘繊維を0〜30重量%、およびラテックス樹脂を10〜25重量%含んだ、目付が35〜80g/m2であるエアレイドパルプ、または、目付が70〜200g/m2である羽毛パルプを使用することができる。
【0031】
吸収体30Aの長手方向の伸長力および収縮力を低減させるために、吸収体30Aの機械方向(MD)は、吸収性物品1Aの長手方向と直交することが好ましい。
【0032】
表面シート10および裏面シート20の伸長を阻害しないために、吸収体30Aの伸長強度を低減させるための加工として、複数の開口部(デサインエンボス)60を吸収体30Aに形成するためのエンボス加工が施されている。ここで、吸収体30Aの伸長強度とは、吸収体が伸びて塑性変形が生ずるのに必要な応力である。伸長強度を低減させるための他の加工には、たとえば、吸収体30Aにメッシュ状の溝を形成したり、スリットを形成したりすることなどがある。とくに、吸収体30Aの伸長強度を低減させるための加工によって、吸収体30Aの機械方向(延伸方向)と直交する幅方向(CD)の伸長強度を低減させることが好ましい。また、吸収性物品1Aの伸長力および収縮力を減少させるために、表面シート10および裏面シートのうちの少なくとも一方についても、同様の伸長強度を低減させるための加工を施してもよい。
【0033】
防漏シート40Aは、吸収体30Aで吸収した着用者からの体液が外側に漏れるのを抑制するためのシートである。なお、裏面シート20が液不透過性のシートまたは液の透過を抑制するシートである場合は、吸収性物品に防漏シート40Aを設けなくてもよい。
【0034】
防漏シート40Aには、機械方向(MD)に一軸延伸加工を施し、機械方向(MD)と直交する幅方向(CD)の引っ張り強度を低減させた、10〜40g/m2の坪量(または目付)の透湿フィルム、疎水性繊維(撥水加工した、もしくは親水加工していない繊維)からなる不織布、または不織布にラミネート加工を施した複合材料などを用いることができる。とくに、防漏シート40Aには、一軸延伸フィルムが好ましい。たとえば、伸長性、防漏性、透湿性および製造コストの観点から、防漏シート40Aには、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機化合物の充填剤微粒子を30〜80重量%含有するポリオレフィン系樹脂組成物を一軸方向に延伸することで延伸方向と直交する方向に伸長性を発現させ、かつ透湿性を高めた10〜50g/m2の坪量のフィルム組成物が好ましい。防漏シート40Aが延伸された方向が吸収性物品1Aの長手方向と直交するように防漏シート40Aを吸収性物品1Aに設けるのが好ましい。
【0035】
表面シート10および裏面シート20の伸長を阻害しないために、防漏シート40Aに、吸収体30Aと同じような伸長強度を低減させる加工を施してもよい。ここで、防漏シート40Aの伸長強度とは、防漏シートが伸びて塑性変形が生ずるのに必要な応力である。伸長強度を低減させるための他の加工には、たとえば、防漏シート40Aにメッシュ状の溝を形成したり、エンボス加工により複数の開口部を形成したり、スリットを形成したりすることなどがある。とくに、防漏シート40Aの伸長強度を低減させるための加工によって、防漏シート40Aの機械方向(延伸方向)と直交する方向(CD)の伸長強度を低減させることが好ましい。
【0036】
粘着部50は、裏面シート20の表面シート10と対向する面の反対の面(非肌当接面)と接するシーツなどの下着に吸収性物品1Aを貼り付けるための粘着層である。粘着部50は、吸収性物品1Aの幅方向(y軸方向)に延びる矩形形状の粘着部であり、複数の粘着部50が吸収性物品1Aの長手方向(x軸方向)に並んでいる。なお、先着部の形状は、矩形形状には限定されず、たとえば円形でもよい。また、長手方向に延びる矩形形状の複数の粘着部を幅方向に並べてもよい。
【0037】
粘着部50は、吸収性物品1Aの長手方向の端周辺(吸収性物品1Aの長手方向の端から20mm以内の範囲内)に少なくとも設けられるのが好ましく、吸収性物品1Aの長手方向の端から10mm以内の範囲内に少なくとも設けられることがさらに好ましい。粘着部50は、ホットメルト型の感圧性接着剤を裏面シート20に直接塗工することにより形成することが好ましい。剥離紙に粘着剤を塗工し、剥離紙から塗工された粘着剤を裏面シート20に転写して粘着部50を形成する方法もあるが、この方法では、接着剤が裏面シート20に十分浸透せず、下着から吸収性物品1Aをはがす際、粘着部50が剥がれて下着に残ってしまう場合がある。
【0038】
デザインエンボス60は、表面シート10から吸収体30Aまで達している。これにより、吸収性物品1Aの表面シート10側の表面から吸収体30Aまでの液体の連通性が高まり、着用者の体液を速やかに吸収することができる。また、デザインエンボス60は、吸収性物品1Aの内部につながる凹部を形成しているので、吸収性物品1Aのデザインエンボス60を見た着用者は、吸収性物品1Aが高吸収性機能を有することを想起できる。またデザインエンボス60により描かれた模様や図形により、吸収性物品1Aにデザインによる情緒的な価値を付与することができる。
【0039】
表面シート10の伸長歪み量、裏面シート20の伸長歪み量、吸収体30Aの伸長歪み量および防漏シート40Aの伸長歪み量はほぼ同等(±5%以内)であることが好ましい。これにより、伸長歪み量の差異が原因で生じる吸収性物品1Aの凹凸、よれなどを防止することができる。そして吸収性物品1Aの使用感を良好にするとともに、使用後の吸収性物品1Aの見た目の状態も悪くならない。
【0040】
吸収性物品1Aの収縮力は、伸長力よりも小さいことが好ましい。吸収性物品1Aの伸縮力が伸長力と同等である場合、吸収性物品1Aは、ゴムなどの弾性体と同じような弾性特性を有することになり、収縮力も強いものとなる。このような弾性特性を有する吸収性物品を使用すると、着用者は、吸収性物品の着用時、常に吸収性物品の収縮力を感じることになり、着用者は吸収性物品に対して違和感を感じる場合がある。また、吸収性物品の強い収縮力により吸収性物品が下着から外れてしまう場合がある。
【0041】
吸収性物品1Aの収縮力が弱くなると吸収性物品1Aは緩やかに収縮することになる。これにより、吸収性物品1Aが取り付けられた下着よりも吸収性物品1Aが速く収縮するのを防ぐことができ、着用中に着用者に対して突っ張ったような使用感を与えるのを抑制することができる。
【0042】
所定の応力を吸収性物品1Aに与えて元の長さに対して10%伸長させた後、応力を解除して収縮した後の吸収性物品1Aの長さから元の吸収性物品1Aの長さを引いた値を、元の吸収性物品1Aの長さでさらに割り算した値、すなわち、吸収性物品1Aの伸長歪み量は、20%以上、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。吸収性物品1Aの伸長歪み量が40%よりも大きくなると、吸収性物品1Aを取り付けた下着が伸長した後に収縮したとき、下着の収縮に合わせて、吸収性物品1Aが収縮できない場合があり、吸収性物品1Aが歪んだり、波打つ状態になったりする場合がある。
【0043】
吸収性物品1Aを元の長さの5%伸長させたときの収縮力は、0.4N(25mm幅)以下であることが好ましい。吸収性物品1Aを元の長さの5%伸長させたときの収縮力が0.4N(25mm幅)よりも大きいと、着用時に着用者に対して突っ張ったような使用感を与えたり、下着が体圧から解放されたとき吸収性物品は、たるみ、しわ、よれなどを下着に発生させたりする場合がある。なお、この収縮力の測定条件は、後述する実施例と同じである。
【0044】
−第2の実施形態−
以下、図を参照して本発明の第2の実施形態の吸収性物品を説明する。第2の実施形態の吸収性物品の構成要素のうち第1の実施形態の吸収性物品1Aの構成要素と共通する構成要素については同じ符号を付し、第1の実施形態の吸収性物品1Aと異なる部分を主に説明する。
【0045】
本発明の第2の実施形態の吸収性物品も第1の実施形態の吸収性物品1Aと同じパンティライナである。第1の実施形態の吸収性物品1Aでは、表面シート10、裏面シート20、吸収体30Aおよび防漏シート40Aの外形および寸法は同じであった。しかし、第2の実施形態の吸収性物品では、吸収体および防漏シートの外形および寸法は、表面シートおよび裏面シートの外形および寸法と異なる。とくに、第2の実施形態の吸収性物品では、吸収体および防漏シートの面方向の大きさは、表面シートおよび裏面シートの面方向の大きさに比べて小さい。
【0046】
図4は、本発明の第2の実施形態の吸収性物品を説明するための図である。図4(a)は、本発明の第2の実施形態における吸収性物品の平面図であり、図4(b)は、本発明の第2の実施形態における吸収性物品の背面図であり、図4(c)は、図4(a)のB−B断面を概略的に表した図である。本発明の第2の実施形態における吸収性物品1Bは、透液性の表面シート10と、表面シート10と対向する位置に設けられた裏面シート20と、表面シート10および裏面シート20の間の表面シート10側に設けられた吸収体30Bと、表面シート10および裏面シート20の間の裏面シート20側に設けられた、液の透過を抑制する防漏シート40Bと、裏面シート20の表面シート10側とは反対側の面に設けられた粘着部50とを備える。図4では、吸収性物品1Bの長手方向がx軸であり、長手方向に直交する幅方向がy軸方向である。また、図4では、xy方向が面方向である。
【0047】
第2の実施形態の吸収性物品1Bの表面シート10、裏面シート20および粘着部50は、第1の実施形態の吸収性物品1Aの表面シート10、裏面シート20および粘着部50と同様であるので、第2の実施形態の吸収性物品1Bの表面シート10、裏面シート20および粘着部50の説明は省略する。
【0048】
吸収性物品1Bにおけるラウンドシールエンボス70は、表面シート10および裏面シート20を一緒に接合する。
【0049】
吸収体30Bは、第1の実施形態の吸収性物品1Aの吸収体30Aと、主に面方向の大きさおよび面方向の形状のみが異なる。吸収体30Bの面方向の大きさは、表面シート10および裏面シート20の面方向の大きさよりも小さい。また、吸収体30Bの面方向の領域は、表面シート10および裏面シート20の面方向の領域の中に含まれる。吸収体30Bの長手方向の寸法は、60mm以上であることが好ましく、幅方向の寸法は25mm以上であることが好ましい。この寸法よりも小さくなると、着用者が吸収性物品1Bを着用しているときに吸収性物品1Bの位置がずれた場合、着用者の体液が吸収体30Bの平面方向の領域から外れた位置に排出される場合がある。
【0050】
第1の実施形態の吸収性物品1Aと同様に、第2の実施形態の吸収性物品1Bについても、軽微な下着の汚れを防止するための吸収性物品の場合は、吸収性物品は吸収体30Bを備えなくてもよい。
【0051】
防漏シート40Bは、吸収体30Bで吸収した着用者からの体液が外側に漏れるのを抑制するためのシートである。したがって、防漏シート40Bの面方向の大きさおよび形状は、吸収体30Bの面方向の大きさおよび形状と同様であることが好ましい。また、防漏シート40Bの面方向の大きさを、吸収体30Bの面方向の大きさよりも大きく、かつ表面シート10および裏面シート20の面方向の大きさよりも小さくするようにしてもよい。防漏シート40Bの面方向の領域は、表面シート10および裏面シート20の面方向の領域の中に含まれる。
【0052】
第1の実施形態の吸収性物品1Aと同様に、裏面シート20が液不透過性のシートまたは液の透過を抑制するシートである場合は、吸収性物品に防漏シート40Bを設けなくてもよい。
【0053】
吸収性物品の構成要素の積み重なりが増えると、吸収性物品の伸長力および収縮力が大きくなり、伸長性が小さくなる。したがって、積み重なる構成要素の数は少ない方が好ましい。ところで、吸収性物品において、吸収性や防漏性を必要とされるのは、主に着用者の体液が排出される領域、たとえば、吸収性物品の長手方向および幅方向の中央付近の領域である。それ以外の領域では、着用者の体液が直接排出されることが少ない。そこで、第2の実施形態の吸収性物品1Bでは、吸収性物品1Bの中で、とくに吸収性や防漏性を必要とされる領域に吸収体30Bおよび防漏シート40Bを設け、それ以外の領域に吸収体30Bおよび防漏シート40Bを設けないようにすることによって、吸収性物品1Bの伸長力および収縮力を低減させ、伸長性を大きくしている。
【0054】
吸収性物品1Bにおける吸収体30Bの周りの領域では、吸収体30Bおよび防漏シート40Bが設けられていないので、伸長力および収縮力が強くならず、伸長性が大きくなる。したがって、吸収体30Bの周りの領域は、吸収性物品1Bが取り付けられた下着の伸縮に追従することができる。吸収性物品1Bにおける吸収体30Bの周りの領域のうちの吸収体30Bに対して長手方向にある領域は、下着の胴回り近傍に固定される。下着の胴回り近傍は、着用者が下着を着用するときに大きく伸長する部分であるので、吸収性物品1Bにおいて吸収体30Bに対して長手方向にある領域の伸長力および収縮力が強くなく、伸長性が大きいことは非常に好ましい。また、吸収性物品1Bにおいて吸収体30Bの周りの領域のうちの吸収体30Bに対して幅方向にある領域は、下着の股繰り近傍に固定される。下着の股繰り近傍は、着用者が足を動かすたびに伸縮する領域であるので、伸縮が頻繁に起こる。したがって、吸収性物品1Bにおいて吸収体30Bに対して幅方向にある領域の伸長力および収縮力が強くなく、伸長性が大きいことは非常に好ましい。一方、吸収性物品1Bにおける吸収体30Bの領域は、下着においてあまり伸縮が起きない領域に固定されるので、伸長力および収縮力が多少強く、伸長性が小さくなっても着用者が違和感を感じることが少ない。
【0055】
吸収体30Bに対して幅方向にある領域には、吸収体30Bおよび防漏シート40Bが設けられていないので、吸収体30Bに対して幅方向にある領域は柔らかい。吸収性物品1Bにおいて吸収体30Bに対して幅方向にある領域は使用者の脚に接触する領域であるので、吸収体30Bに対して幅方向にある領域が柔らかいことは非常に好ましい。
【0056】
第1の実施形態の吸収性物品1Aと同様に、表面シート10および裏面シート20の伸長を阻害しないために、吸収体30Bおよび防漏シート40Bのうちの少なくとも一方に、伸長強度を低減させる加工を施してもよい。また、表面シート10および裏面シート20にも伸長強度を低減させる加工を施してもよい。
【実施例1】
【0057】
実施例1では、本発明の第1の実施形態の吸収性物品1Aの伸長力、収縮力および歪み量を測定した。
【0058】
第1の実施形態の吸収性物品1Aから長手方向140mm、幅25mmの試験試料を切り出した。そして、チャック間が100mmである引っ張り試験機(インストロン5564、インストロンジャパンカンパニーリミテッド社製)に試験試料を取り付け、100mm/分の引っ張りスピードで引っ張り試験を行った。引っ張り試験は、試験試料が10%伸長(10mm)するまで試験試料を伸ばして伸長力を測定し、試験試料が10%伸長(10mm)した後は、100mm/分のスピードで試験試料を収縮させて収縮力を測定した。また、収縮力が0Nになったときのストローク値が、試験試料が10%伸長することによって伸びた長さであるので、収縮力が0Nになったときのストローク値をチャック間の距離である100mmで割り算することにより歪み値を求めた。試験は、引っ張り試験機に同じ試料を取り付けた状態で2回連続して行った。また、比較のために、一般的な下着の例としてショーツ(ソフィショーツ、ユニ・チャーム社製)および伸縮性のないパンティライナの伸縮力および収縮力も、第1の実施形態の吸収性物品1Aと同様の試験条件で測定した。結果を図5に示す。
【0059】
図5(a)は、本発明の第1の実施形態の吸収性物品1Aの伸長力、収縮力および歪み量を測定した結果を示す図である。グラフ310が第1の実施形態の吸収性物品1Aの伸長力、収縮力および歪み量を測定した結果を示すグラフである。符号311は、1回目の試験試料を伸長させたときの伸縮力を示す。符号312は1回目の試験試料を10%伸長させた後、収縮させたときの伸縮力を示す。地点313は、収縮力が0Nになったときのストローク値(2.89mm)を示す。符号314は、2回目の試験試料を伸長させたときの伸縮力を示す。符号315は2回目の試験試料を10%伸長させた後、収縮させたときの伸縮力を示す。
【0060】
図5(a)に示すように、第1の実施形態の吸収性物品1Aの収縮力は、伸長力よりも小さいことがわかる。また、第1の実施形態の吸収性物品1Aの歪み量は、約30%であった。
【0061】
図5(b)は、本発明の第1の実施形態の吸収性物品1Aの伸長力および収縮力とショーツの伸長力および収縮力とを比較するための図である。グラフ320が、ショーツの伸長力および収縮力を測定した結果を示すグラフである。これを見ると、第1の実施形態の吸収性物品1Aは、ショーツと同じように伸縮するので、第1の実施形態の吸収性物品1Aの伸縮は、ショーツの伸縮に追従できることがわかる。また、第1の実施形態の吸収性物品1Aの伸長力は、ショーツの伸長力と同等もしくは小さく、第1の実施形態の吸収性物品1Aの収縮力は、ショーツの収縮力よりも小さいことがわかった。
【0062】
図5(c)は、伸縮性のないパンティライナの伸長力および収縮力とショーツの伸長力および収縮力とを比較するための図である。グラフ330が、伸縮性のないパンティライナの伸長力および収縮力を測定した結果を示すグラフである。これを見ると、伸縮性のないパンティライナの伸縮の挙動は、ショーツの伸縮の挙動と大きく異なるので、伸縮性のないパンティライナの伸縮は、ショーツの伸縮に追従できないことがわかる。また、伸縮性のないパンティライナの伸長力および収縮力は、ショーツの伸長力および収縮力と比べて非常に大きいことがわかった。
【実施例2】
【0063】
実施例2では、本発明の第2の実施形態の吸収性物品1Bの吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在する領域の伸長力および収縮力と、吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在しない領域(図4のC−Cの領域)の伸長力および収縮力とを測定した。測定する試料の寸法、測定装置および測定条件は、実施例1と同じである。結果を図6に示す。
【0064】
図6は、本発明の第2の実施形態の吸収性物品1Bの吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在する領域の伸長力および収縮力と、吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在しない領域(図4のC−Cの領域)の伸長力および収縮力とを測定した結果を示す図である。図6のグラフ410は、吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在する領域の伸長力および収縮力を測定した結果を示すグラフであり、図6のグラフ420は、吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在しない領域の伸長力および収縮力を測定した結果を示すグラフである。第2の実施形態の吸収性物品1Bの吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在する領域では、伸長力および収縮力は大きいものの、吸収体30Bおよび防漏シート40B(図4参照)の存在しない領域では、伸長力および収縮力は非常に小さいことがわかる。
【0065】
以上の本発明の第1の実施形態の吸収性物品1Aでは、次のような作用効果が奏する。
(1)本発明の第1の実施形態の吸収性物品1Aは、液透過性の表面シート10と、表面シート10と対向する位置に設けられた裏面シート20と、裏面シート20の表面シート10側とは反対側の面に設けられた粘着部50とを備え、表面シート10および裏面シート20は、高圧水流によってシート加工された後、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製させた不織布であるようにした。これにより、好適な収縮力を有する伸縮可能な吸収性物品1Aを提供することができ、吸収性物品1Aが、着用時に着用者に対して突っ張ったような使用感を与えたり、下着が体圧から解放されたときに吸収性物品が、たるみ、しわ、よれなどを下着に発生させたりするのを抑制することができる。
【0066】
(2)表面シート10および裏面シート20の少なくとも一方は、該シートを構成する繊維の融点付近の温度まで加熱した場合、さらに収縮するものとした。これにより、潜在捲縮性繊維の捲縮の発現が進みすぎて、吸収性物品1Aの伸長力および収縮力が強くなりすぎるのを防ぐことができる。
【0067】
(3)表面シート10および裏面シート20の繊維の配向方向が、長手方向に対して直交するようにした。これにより、表面シート10および裏面シート20の長手方向の伸長力および収縮力を小さくすることができ、好適な伸長力および収縮力を有する伸縮可能な吸収性物品1Aを提供することができる。
【0068】
(4)裏面シート20の表面シート10側に、液の透過を抑制する防漏シート40Aをさらに備え、防漏シート40Aは、一軸延伸フィルムであるようにした。これにより、防漏シート40Aの延伸方向と直交する方向が吸収性物品1Aの長手方向になるように防漏シート40Aを吸収性物品1Aに設けることによって、長手方向の伸縮力及び収縮力の弱い吸収性物品1Aを得ることができる。
【0069】
(5)表面シート10、裏面シート、吸収体30Aおよび防漏シート40A、すなわち、吸収性物品1Aの粘着部50を除く構成要素10,20,30A,40Aのうちの少なくとも1つの構成要素は、メッシュ状の溝を形成するか、エンボス加工により複数の開口部を形成するか、またはスリットを形成することによって、伸長強度が低減されているようにした。これにより、吸収性物品1A全体としての伸長力および収縮力を減少させることができる。また、吸収体30Aに、伸長強度を低減させるための加工を施すことにより、下着の伸長に合わせて表面シート10および裏面シート20が伸長するのを吸収体30Aが阻害するのを抑制することができる。さらに、防漏シート40Aに、伸長強度を低減させるための加工を施すことにより、下着の伸長に合わせて表面シート10および裏面シート20が伸長するのを防漏シート40が阻害するのを抑制することができる。
【0070】
以上の本発明の第2の実施形態の吸収性物品1Bでは、第1の実施形態の吸収性物品1Aが奏する効果以外に、次のような作用効果が奏する。
本発明の第2の実施形態の吸収性物品1Bは、液透過性の表面シート10と、表面シートと対向する位置に設けられた裏面シート20と、表面シート10および裏面シート20の間に設けられた吸収体30Bと、裏面シート20の表面シート10側とは反対側の面に設けられた粘着部50とを備え、吸収体30Bの面方向の領域は、表面シート10および裏面シート20の面方向の領域の中に含まれるようにした。これにより、吸収性物品1Bの伸長力および収縮力をさらに小さくすることができる。また、吸収性物品1Bの中で、下着の伸縮が起きやすい領域に固定される領域の伸長力および収縮力を選択的に弱めることができる。また、吸収性物品1Bにおいて吸収体30Bに対して幅方向にある、使用者の脚に接触する領域を柔らかくすることができる。
【0071】
以上の本発明の第1の実施形態の吸収性物品1Aおよび/または第2の実施形態の吸収性物品1Bを次のように変形することができる。
以上の第1および第2の実施形態の吸収性物品1A,1Bは、パンティライナであったが、下着などの被着体に貼り付けて使用する吸収性物品であれば、パンティライナに限定されない。たとえば、生理用ナプキン、失禁パッド、失禁ライナなどの他の吸収性物品に対しても本発明を適用することができる。本発明はとくに薄型の吸収性物品に好適である。
【0072】
実施形態同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0073】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1A,1B 吸収性物品
10 表面シート
20 裏面シート
30A,30B 吸収体
40A,40B 防漏シート
50 粘着部
60 デザインエンボス
70 ラウンドシールエンボス
100A サイド・バイ・サイド型複合繊維
100B 偏芯芯鞘型複合繊維
200 不織布
210 捲縮繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、
前記表面シートと対向する位置に設けられた裏面シートと、
前記裏面シートの前記表面シート側とは反対側の面に設けられた粘着部とを備え、
前記表面シートおよび前記裏面シートは、高圧水流によってシート加工された後、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製させた不織布である吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートおよび裏面シートの少なくとも一方は、該シートを構成する繊維の融点付近の温度まで加熱した場合、さらに収縮する請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートおよび前記裏面シートの繊維の配向方向が、長手方向に対して直交している請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体をさらに備え、
前記吸収体の面方向の領域は、前記表面シートおよび前記裏面シートの面方向の領域の中に含まれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記裏面シートの前記表面シート側に、液の透過を抑制する防漏シートをさらに備え、
前記防漏シートは、一軸延伸フィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品の前記粘着部を除く前記構成要素のうちの少なくとも1つの構成要素は、メッシュ状の溝を形成するか、エンボス加工により複数の開口部を形成するか、またはスリットを形成することによって、伸長強度が低減されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
液透過性の表面シートと、
前記表面シートと対向する位置に設けられた裏面シートと、
前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体と、
前記吸収体と前記裏面シートとの間に設けられた、液の透過を抑制する防漏シートと、
前記裏面シートの前記表面シート側とは反対側の面に設けられた粘着部とを備え、
前記表面シートおよび前記裏面シートは、高圧水流によってシート加工された後、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより作製させた不織布であり、
前記表面シートおよび裏面シートの少なくとも一方は、該シートを構成する繊維の融点付近の温度まで加熱した場合、さらに収縮し、
前記表面シートおよび前記裏面シートの繊維の配向方向が、長手方向に対して直交しており、
前記吸収体の面方向の領域は、前記表面シートおよび前記裏面シートの面方向の領域の中に含まれ、
前記防漏シートは、一軸延伸フィルムであり、
前記表面シート、前記裏面シート、前記吸収体および前記防漏シートのうちの少なくとも1つは、メッシュ状の溝を形成するか、エンボス加工により複数の開口部を形成するか、またはスリットを形成することによって、伸長強度が低減されている吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−75553(P2012−75553A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221886(P2010−221886)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】