説明

吸収用品の緩みあるいはその体からの脱落を検出するための方法

本発明は、吸収用品が緩むかあるいは着用者の体から完全に外れていないかを検出し、その場合にはアラーム信号を伝送するための方法に関する。本発明は吸収用品の濡れを検出するための方法と一緒に使用されることを意図しており、さらには吸収用品の緩みおよび/または濡れを検出するための組み合わされた検出およびアラーム方法に関する。本発明はさらに、吸収用品が緩むかあるいは着用者の体から完全に外れていないかおよび/または吸収用品が濡れていないを検出し、その場合にはアラーム信号を伝送するための方法に関する。当該システムは、(a)少なくとも一つの吸収層、たとえば留め具のような変位させられる物体、一つ以上の検知デバイス、一つ以上の励振デバイスを備えた吸収用品と、(b)遠隔レシーバーとからなる。さらに本発明は、幼児あるいは失禁症および/または痴呆などの精神的病気を患う成人の介護における当該システムの使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収用品の緩みあるいは着用者の体からのその完全な脱落を検出し、その場合には、この緩みを遠隔的に知らせるための方法に関する。本発明は吸収用品の濡れを検出するための方法と共に使用することを意図しており、さらには吸収用品における緩みおよび/または濡れを検出するための組み合わされた検出および警告方法に関する。本発明はさらに、吸収用品が緩むかあるいは着用者の体から外れたこと、および/またはこの用品が濡れたことを検出し、その場合にアラーム信号を伝送するためのシステムに関する。当該システムは、(a)少なくとも一つの吸収層、たとえば留め具のような変位させられる物体、一つ以上の検知デバイス、一つ以上の送信デバイスを備えた吸収用品と、(b)遠隔レシーバーとからなる。さらに本発明は、幼児あるいは失禁症および/または痴呆などの精神的病気を患う成人の介護における当該システムの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児および成人用のおむつ、生理用ナプキン、そして成人失禁者用ガーメントのような吸収用品は従来よく知られており、広く使用されている。今日、そうした製品の多くは原則として一度しか使用されない。一度の使用を原則とする、そうした使い捨て式製品は、たとえば、失禁症を患う成人だけでなく幼児および小児の世話に関する特定の要求を満たすために、広範なさまざまな製品の発展につながった。そうした吸収用品の主な目的は、通常、尿、ふん便あるいは血液などの身体排出物を吸収し、保持し、隔離することである。
【0003】
製品内へのあるいは製品上への流体の吸収に関連する、排尿あるいは排便のような事象に反応する吸収用品もまた従来よく知られている。この反応は、通常、事象が起こってしまった後の信号であり、しかもたとえば濡れ、温度、質量変化の測定値に基づく。この信号は、視覚的信号を含む光学信号、音響信号、化学的信号あるいは電気的信号であってもよい。この信号は、着用者自身あるいは介護補助者に、事象が生じたというフィードバック情報を提供し得るが、これは両当事者にとって後始末を容易なものとするであろう。
【0004】
こうした用品の多くはセンサーを備えている(その最近のものは、さまざまな様式で機能し得る)。例としては以下のようなものがある。
【0005】
特許文献1には、濡れを検出するための使い捨て式感知吸収体が開示されているが、このものは、少なくとも一つの吸収層および磁気弾性フィルムからなる少なくとも一つの検知デバイスを具備してなる。本吸収体は、吸収用品における状態(たとえば濡れ、少なくとも一つの生物学的検体および/または少なくとも一つの化学的検体)を監視するための手段および方法を使用可能とする。
【0006】
特許文献2には、少なくとも部分的に湿気感知物質からなる共振回路を具備してなるシステムが開示されているが、その電気抵抗は当該物質が湿気と接したときに増大する。当該システムはまた、湿気の存在を検出するための少なくとも一つの電子センサーと、湿気の存在に関するセンサーからの情報を得るための少なくとも一つの読み取りデバイスとを具備してなる。
【0007】
特許文献3には、ハウジング内に配置されかつ監視されているガーメントの外面に貼り付けられた容量センサーを具備してなるおむつまたはガーメントにおける濡れ状況を検出するためのガーメントおむつ検出器が開示されている。当該センサーは、共有基板に貼り付けられた、2枚の実質的に固体の、共面導体プレートからなり、しかも非常に高いダイナミックレンジを有する。ガーメント内部が濡れたとき、離間した導体プレート間の静電容量は所定値を上回り、その結果、検出器は発信器への出力すなわちアラームを付与する。
【0008】
そうした吸収用品の直接の使用者あるいは着用者のある特定のグループは、痴呆あるいはその他の精神的病気を患う精神医学患者を含むであろうが、彼らはさらに、さまざまな度合いの失禁症を患っている。こうした人々は、排泄作用に関する抑制を覚えないことがあり、しかも排尿/排便の前に、あるいはその直後に失禁ガーメントを外してしまうことがあり、これによって彼ら自身および/またはその周囲を汚損してしまい、介護スタッフは不快な片付けを行わねばならなくなる。
【0009】
そうした場合、失禁用ガーメント内の「緩み」センサーすなわち検出器の存在は、非常に有用でかつ有益なものであると考えられる。そうしたセンサーは、失禁用品が緩むか着用者の体から完全に外れたことを記録しアラームを発生させる。
【0010】
脱落センサーの存在はまた、たとえば幼児あるいは失禁症を患う人々などの普通の着用者にとって有用なものであると考えられる。この場合、たとえば、睡眠中に吸収用品が偶発的に外れた場合にアラーム信号が発せられる。
【特許文献1】国際公開第2004/021944号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/16081号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,808,554号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術文献は、いずれも、緩みあるいは着用者の体からの完全な脱落を検出するためのセンサーを具備してなる吸収用品について開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、吸収用品が緩むか着用者の体から完全に外れたことを検出し、そしてアラーム信号を、直接の使用者すなわち着用者、あるいは間接的使用者、たとえば看護スタッフに伝送するための方法を提供する。
【0013】
本発明による方法は、(a)少なくとも一つの物体、たとえば留め具の変位を検出することと、(b)遠隔レシーバーにアラームを伝送することとを具備する。
【0014】
上記方法は、たとえば国際公開第2004/021944号パンフレット(その内容はこの引用によって本明細書に組み込まれる)に開示された方法のような、吸収用品の濡れを検出するための方法と一緒に使用可能である。
【0015】
本発明に係る方法は、吸収用品が緩むかあるいはそれが着用者の体から外れたことを遠隔的に検出するための方法であって、
少なくとも第1および第2の部分を具備してなる締結システムを備えた前記吸収用品を提供するステップであって、前記部分は吸収用品が着用者に対して取り付けられていないとき分離状態となるよう構成され、かつ用品が着用者に取り付けられたとき一つにつながるよう構成されており、前記第1の部分は、前記締結システムの前記第2の部分にあるいはその近傍に配置された共振体に影響を与える能力を有する領域を備えたものであるステップと、
前記吸収用品を着用者に対して止着するステップと、
前記共振体から発せられる信号の共振周波数および/または信号強度を読み取るステップと、
前記読み取られた共振周波数および/または信号強度に基づいて、吸収用品の状態を、一方では緩んでいるかあるいは外れていると、また他方では正しく締結されていると判定するステップとを具備する。
【0016】
ある種の実施形態では、上記共振周波数は、吸収用品が着用者に正しく取り付けられた場合の第1の値と、吸収用品が緩むか着用者の体から外れた場合の第2の値とを呈する。この例では、本方法はさらに、読み取った周波数が第1の周波数であるか第2の周波数であるかを判定するためのステップを具備する。
【0017】
本発明はさらに、吸収用品が緩むか着用者の体から外れたこと、および/または当該用品が濡れたこと検出しかつアラーム信号を伝送するためのシステムの製造における上記組み合わされた方法の利用法に関する。
【0018】
本発明はそれゆえ、吸収用品が緩むか着用者の体から外れたこと、および/または当該用品が濡れたこと検出しかつアラーム信号を伝送するためのシステムにも関する。
【0019】
好ましい実施形態によれば、上記システムは、(a)少なくとも一つの吸収体、留め具のような変位させられる物体、一つ以上の検出デバイス、一つ以上の送信デバイスを備えた吸収用品、および(b)遠隔レシーバーを具備してなる。
【0020】
ある実施形態においては、一つ以上の検出デバイスは、上記物体の変位に対応するバイアス磁界の増大あるいは減少に起因して生じる振動差を検出する。そうした実施形態においては、好ましい検出デバイスは磁気弾性フィルムである。
【0021】
別な実施形態においては、一つ以上の検出デバイスは、誘導要素、容量要素および接続要素を具備してなる共振回路を備え、ここで、これら要素の少なくとも一つは、これら要素あるいは要素群の電気的特性が、吸収用品がずれるかあるいは外れたときに変化するように配置構成される。
【0022】
本発明のある実施形態においては、上記システムは、手持ち型ユニットである遠隔レシーバーを具備してなる。
【0023】
別な実施形態においては、上記システムは固定型ユニットである遠隔レシーバーを具備してなる。
【0024】
別な態様に関して、本発明は、幼児および失禁症および/または痴呆のような精神的病気を患う成人の介護における上記システムの利用法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[定義]
本明細書で用いているように、「吸収用品」との用語は、身体排出物あるいは身体滲出物、たとえば尿、ふん便あるいは血液などを吸収し、保持し、そして収容する物品を意味する。使用時、当該物品は着用者の体に当接状態で配置され、さもなければ接近した状態で位置決めされる。
【0026】
「使い捨て可能」との用語は、洗濯したり、元の状態に戻したり、吸収用品として再利用したりすることを意図していない吸収用品を意味する。そうした吸収用品は、一度使用した後に廃棄されることになる。だが、一度の使用とは、環境的に両立可能な様式で、製品をリサイクルしたり、堆肥化したり、あるいはその他の方法で廃棄したりすることを除外するものではない。
【0027】
「センサー」、「検知デバイス」あるいは「検出器」という用語は、交換可能に用いられており、そして本明細書中では、事象あるいはこの事象と関係付けられたパラメーターを検出できるデバイスを意味する。事象と関連付けられたパラメーターは、システムの構成内での事象の発生と相関する測定可能な信号、すなわち排出物、着用者あるいはその成分によって生成される信号である。センサーとは一つ以上の特定の入力に反応するあらゆる形態のものを含む。
【0028】
「感知」あるいは「検知」あるいは「検出」との用語は、たとえば検知デバイスを用いて、事象あるいは事象と関係付けられたパラメーターを検出できる手段および方法を意味する。
【0029】
「濡れ」との用語は、本明細書では、濡れるか、湿るか、湿気を帯びるか、あるいは液体、特に水を含むかあるいはそれが浸み込んだ状況を意味する。
【0030】
「おむつ」との用語は、本明細書では、一般に、小児、幼児および失禁症を患う人々によって胴の下部のまわりに装着される吸収用品を意味する。
【0031】
「使用者」との用語は、本明細書で使用しているように、(a)直接の使用者すなわち吸収用品の着用者、あるいは(b)間接的使用者すなわち吸収用品の着用者の看護に責任を持つ介護者を意味する。
【0032】
「磁気ひずみ」との用語は、磁性材料において観察される一般的な現象を意味し、しかも磁化された後に磁性材料の寸法が変化する場合に生じると言われている。寸法変化の範囲あるいは大きさは、温度、材料の磁化の強さ、そしてもちろん材料特性に依存する。磁気ひずみは、材料の原子の磁気モーメント間の相互作用に起因する。
【0033】
「磁気音響共振周波数」との用語は、磁性材料が磁界によって励起され、そして磁気エネルギーを磁気弾性モードで蓄積するときに現れる振動周波数を意味する。磁界が消失したとき、材料は、磁気音響共振周波数と呼ばれる特定の周波数によって減衰振動を示す。
【0034】
「支持材」との用語は、本明細書で使用しているように、図4に示すように、フック型留め具を覆う材料すなわち布地を意味する。支持材は、たとえば、約25〜60g/mの坪量を持つスパンボンド不織布であってもよい。それは好ましくはポリプロピレン繊維から製造される。だが一般的な素材も使用可能である。
【0035】
「共振回路」との用語は、本明細書で使用しているように、回路のインピーダンスあるいは減衰が周波数に依存する電気回路を意味する。
【0036】
「共振体」との用語は、本質的に、電気的な物体、磁気的な物体、機械的な物体、磁歪的な物体あるいはその他の物体を意味し、ここで当該物体の減衰は周波数に依存する。
【0037】
[本発明に関連する専門用語および関係事項]
〔吸収用品〕
通常使用時、吸収用品、たとえばおむつ、再閉止可能なパンツ型おむつ、失禁用ガーメント、生理用ナプキンは、たとえば尿、ふん便、血液、月経血液、外傷および傷口からの液状物質などの身体排出物あるいは身体滲出物および排泄物を吸収し、保持し、そして隔離する役割を果たす。
【0038】
吸収用品のある実施形態においては、吸収用品に含まれる吸収層は、少なくとも一つの捕捉層、少なくとも一つの貯蔵層、および任意選択で一つ以上の吸い上げ層を具備してなる。捕捉層は流体を吸収し、この流体を吸い上げ層および貯蔵層へと分散させるものである。他の実施形態においては、上記捕捉、貯蔵あるいは吸い上げ層の少なくとも一つは、0〜100%の超吸収物質を具備してなる。さらなる実施形態では、上記捕捉、貯蔵あるいは吸い上げ層は、0〜95%、20〜100%、0〜30%、20〜90%、あるいは30〜40%の超吸収物質を含んでいてもよい。
【0039】
〔面ファスナー〕
面ファスナー(Hook and loop fastening)はVELCRO(登録商標)ファスナーの一種、すなわち接合される面の一方が無数の小さなフックを具備してなる掛止手段を意味する。他方の面は無数の小さなループを具備してなる。
【0040】
〔磁気弾性フィルム〕
磁気弾性フィルムはある種の磁気弾性センサーである。磁気弾性センサーはGrimes他によって説明されている(Biomedical Microdevices、2:51〜60、1999年)。
【0041】
磁性材料が、外部から加えられた磁気パルスあるいは磁界によって励起されたとき、それは磁気弾性モードで磁気エネルギーを蓄える。磁界が消失したとき、この材料は特定の周波数で、磁気音響共振周波数で減衰振動を示す。この減衰によって時間と共に変化する磁束が生じるが、これはピックアップコイルによって遠隔検出可能である。共振周波数の変化は、多数の環境パラメーターを測定あるいは検出するために監視可能である。この方法を使用した温度、圧力、粘度の測定はCrimes他よって説明されている(Biomedical Microdevices、2:51〜60、1999年)。
【0042】
磁気音響共振周波数に対応するかあるいはそれに近い周波数を呈する連続磁界によって材料を励起し、そしてパルス間の材料からの減衰した磁気的応答のような、材料からの応答を、その代わりに測定することも可能である。共振周波数において、材料からの応答は最大となる。
【0043】
さらに、たとえば強磁性材のような磁性材料に対して磁界が印加されたとき、材料の寸法は変化する。この効果は、先に定義したように磁気ひずみと呼ばれる。材料の寸法変化の範囲は、磁気ひずみ定数によって左右される。
【0044】
磁気ひずみは、多くの物質、たとえば鉄、ニッケル、コバルト、希土類金属、ならびに鉄‐ニッケル合金、フェライト、たとえばスピネル型フェライト(Fe、MnFe)およびケイ素‐鉄合金など、さまざまな合金において観察可能である。
【0045】
本発明において使用される磁気弾性フィルムは磁気ひずみを呈し、しかもまたアモルファス磁性素材、合金あるいはその混合物を具備してなることができる。アモルファス磁性素材は極めて容易に磁気的に飽和し、しかも僅かな磁気的異方性を呈する。合金アモルファス磁性素材においては、磁気ひずみがやはり存在し、しかも磁気ひずみの量は合金の正確な組成に依存する。アモルファス合金の例は、たとえばFe40Ni38Mo18(たとえばMetglas282MB(商標))(Honeywell Amorphous Metals、ピッツバーグ、PA、USA)、(FeCo)8020、(CoNi)8020、(FeNi)8020である。
【0046】
本発明の実施形態では、磁気弾性材として、Honeywell社(Honeywell Amorphous Metals、ピッツバーグ、PA、USA)製のMETGLAS(登録商標)素材、たとえばMETGLAS(登録商標)2826MBを使用する。
【0047】
適当な磁気弾性フィルムは、鉄‐ニッケル合金、希土類金属、フェライトおよび上述したさまざまな合金および混合物のような、ゼロではない(non-zero)磁気ひずみおよび高い磁気弾性を持つフィルムであってもよい。上記磁気弾性フィルムの適当なフィルム厚みは約0.01〜1000μm、たとえば約0.01ないし約200μm、たとえば約5ないし約100μm、たとえば約0.01ないし約100μmである。フィルムの厚みは、その幅および長さよりも著しく小さなものであってもよい。
【0048】
磁気ひずみ効果をさらに高める一つの方策は、バイアス磁界を含めることである。バイアス磁界は最適なバイアス磁界を有するが、これは最適な磁気音響効果を付与し、さらに磁気音響効果による最適信号を付与する(Grimes他、Sensors and Actuators、B71:112〜117、2000年)。ある実施形態では、バイアス磁界は、磁気弾性フィルムに関連して配置された永久磁石によって形成される。永久磁石は、(冷蔵庫のキッチンピンナップ具として家庭内で使用されているもののような)さまざまな形状およびサイズを持つ小金属片、パウダー、細粒、フィルム、磁性インク、およびその他既存の形態であってもよい。
【0049】
[本発明の説明]
本発明は、吸収用品が緩むか、それが着用者の体から完全に外れたことを検出し、直接的な使用者(たとえば着用者)あるいは間接的な使用者(たとえば看護スタッフ)にアラーム信号を伝送するための簡便かつコストの掛からない方法を提供する。
【0050】
アラーム信号は、それゆえ、事象が起こったというフィードバック情報を表す。
【0051】
本発明はまた、介護スタッフによる時間の経過に伴う連続的な監視だけでなく、着用者の状態(すなわち吸収用品が装着されているか外れているか)の、遠隔アクセスによる簡便な監視を可能とする。
【0052】
本発明による方法は、(a)たとえば留め具のような少なくとも一つの物体の変位を検出すること、および(b)遠隔レシーバーにアラームを伝送することを具備する。遠隔レシーバーは、手持ち型ユニットあるいは適当な場所に恒久的に設置される固定型ユニットの形態であってもよい。
【0053】
上記方法は、先に簡単に説明しかつその内容はこの引用によって本明細書に組み込まれる、国際公開第2004/021944号パンフレットに開示された方法のような、吸収用品の濡れを検出するための方法と一緒に使用されるものである。当該方法は、湿気および/または生物学的検体および/または化学的検体の存在を検出するための約0.01ないし1000μmの厚みを持つ磁気弾性フィルムを具備してなる検知デバイスの利用法を明らかにしたものである。本発明はそれゆえ、さらに、吸収用品の緩みおよび/または濡れを検出するための、組み合わされた検出およびアラーム方法に関する。
【0054】
本発明はさらに、吸収用品が緩むかあるいはそれが着用者の体から外れたことを、そして任意選択で当該用品が濡れたことを検出し、そしてアラーム信号を伝送するためのシステムの製造における上記組み合わされた方法の利用法に関する。
【0055】
本発明はそれゆえ、吸収用品が緩むかあるいはそれが着用者の体から外れたことを、そして任意選択で当該用品が濡れたことを検出し、そしてアラーム信号を伝送するためのシステムにも関する。
【0056】
好ましい実施形態によれば、上記システムは、(a)少なくとも一つの吸収層、たとえば留め具のような変位させられる物体、一つ以上の検知デバイス、一つ以上の送信デバイスを具備してなる吸収用品、および(b)遠隔レシーバー(これはピックアップコイルを収容する)を具備してなる。
【0057】
ある実施形態では、一つ以上の検知デバイスは、物体の変位に対応するバイアス磁界の増大あるいは減少に起因して生じる振動差を検出する。上記検知デバイスは、小型であって、任意選択で取り外し可能であってかつ再利用可能であってもよく、無線式無電池型回路を含み、アラーム発信器および遠隔レシーバーに接続される。検知デバイスは、たとえば共振周波数に影響を与え得る物理的圧力によるダメージに対する保護としてパッケージされてもあるいはカプセル化されてもよい。適当なカプセル化形態としては、たとえばSensomatic(オーストリア国ウィーン)から入手可能なタグのようなタグあるいは類似の製品の形態のカプセル化が挙げられる。カプセル化は、特定の実施形態に適合するよう、各場合において当業者により設計あるいは選択される。
【0058】
ある好ましい実施形態では、検知デバイスとして磁気弾性フィルムが採用される。一つ以上のセンサーを利用可能である。さらに、磁気弾性フィルムからなる薄いリボンを使用できる。たとえば磁気弾性素材からなる薄いリボンに関する磁気音響共振周波数は、リボンの長さに反比例する。ゆえに、一つの検知デバイスにおいて異なる共振周波数を得ることができる。本発明において使用可能な典型的な磁気弾性素材は、Honeywell社(ニュージャージー州モリスタウン)から入手可能なMETGLAS(登録商標)である。
【0059】
本発明のある実施形態では、たとえば、一つ以上のセンサーに対して、規定されたポジションに接合されるかあるいは配置された一つ以上の永久磁石の存在によって、バイアス磁界が形成され、かつ共振体が提供される。永久磁石は、従来一般的に使用されている方法を用いて吸収用品の一つ以上の留め具に対して取り付けられ、あるいは留め具の一部として採用されてもよい。永久磁石は、さまざまな形状ならびにサイズを有する金属小片、パウダー、細粒、フィルム、磁気インクの形態であってもよく、あるいはその他の形態であってもよい。
【0060】
吸収用品が締結状態を解かれる状況のように、留め具がセンサーから分離させられたとき、磁界が変化し、そしてセンサーは、この留め具の変位に対応するバイアス磁界の増大または減少に起因して生じる振動差を検出する。実例として、おむつ型ガーメントにおいて、センサー応答は、テープあるいはベルトのような留め具がおむつの前面材と接触状態にあるかどうかを検出する共振体を必要とするであろう。
【0061】
この効果は、文献(Chizumi, S.、「Physics of Ferromagnetism」、Oxford、Oxford University Press、1997年;O'Handley, R.C、「Modern Magnetic Materials, Principle and Applications」、New York、John Wiley & Sons Inc.、2000年)における研究によって支持されている。バイアス磁界を最初に印加するか、あるいはこの例のようにそれが(a)(METGLAS(登録商標)のような)磁気弾性フィルムの近傍の、および(b)当該フィルムの上の永久磁石から得られるときに現れる磁気音響効果の比較は、磁気音響振動が著しく増大すること、および磁気音響振動のより高い調和を観察することさえ可能であることを示す。これは、磁気弾性効果が、磁界がサンプルの上で増大したとき高められるという事実に起因する。
【0062】
印加される磁界の大きさは、材料寸法の十分に大きな変化を実現するために、磁気弾性フィルムのような材料を、ある程度まで磁化するのに十分なほど大きなものであるべきである。この特定の磁界はそれゆえ、各選択された磁歪材料に関して最適化することができる。
【0063】
フィルムにおける、たとえば0.06mTの磁界の大きさは、磁気音響信号を検出するために十分に高いものであると本発明者によって評価された。20%のデューティサイクルを持つ1kHzの磁気パルスが通常は使用されるが、他の周波数およびデューティサイクルもまた使用可能である。0.05mTないし0.1mTの範囲の磁界は、磁気弾性フィルムに十分な磁化を生じるであろう。正確な値は磁気弾性フィルムの選択された材料に依存し、したがって各実施形態に関して最適化される。パルス周波数、デューティサイクル、フィルムにおける磁界の大きさの正確な値は、同様に、磁気弾性フィルムの材質およびセンサーシステムの適用が選択されるとき最適化できる。さらに、(手持ち型あるいは固定型ユニットのような)アラーム信号の遠隔レシーバーの距離もここでは検討すべきであり、しかも遠隔レシーバーと磁気弾性フィルムとの間の最大距離の値は、さまざまな実施形態においてその他のパラメーターを最適化するときに確定されるべきである。最小距離は吸収用品の外面においてである。検出は、励振コイルおよびピックアップコイルの適切な設計によって、xm(ここでxはたとえば介護者によって選択される)の最大カバリングレンジを可能にするよう設計可能である。
【0064】
ある実施形態においては、検出はxm(ここでxは約0〜10m、たとえば約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10m)の最大カバリングレンジを可能とするよう設計されてもよい。
【0065】
さらなる実施形態においては、検出はxm(ここでxは約0〜5mである)の最大カバリングレンジを可能とするよう設計されてもよい。
【0066】
その上さらなる実施形態においては、検出はxm(ここでxは約0〜1m、たとえば約0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1m)の最大カバリングレンジを可能とするよう設計されてもよい。
【0067】
磁気音響共鳴周波数の検出は、遠隔レシーバー内に収容されたピックアップコイル(これは材料からの応答を検出する)によって実現される。
【0068】
本発明の一実施形態においては、本システムは手持ち型ユニットである遠隔レシーバーを具備してなる。手持ち型ユニットの形態の典型的な遠隔レシーバーは国際公開第2004/021944号パンフレットにおいて既に開示されている(その内容はこの引用によって本明細書に組み込まれる)。信号発生器は検出回路に接続され、この結果、検出回路は、信号が励振コイルに送られたことを「認識」する。さらに、たとえば手持ち型ユニットの形態の遠隔レシーバーは、たとえば永久磁石からのバイアス磁界とピックアップコイルとの間の磁気結合を最低限に抑えるように設計可能である。バイアス磁界に対するピックアップコイルのポジションは、フィルムからの最大信号およびバイアス磁界からの磁界による最小信号のために最適化することができる。
【0069】
本発明の他の実施形態においては、上記システムは、(たとえば着用者のあるいは患者のベッドルーム内で)着用者および介護スタッフの両方に関して、あるいは(たとえば介護スタッフのオフィス内で)介護スタッフに関してのみ適当なポジションに置かれた固定型ユニットである遠隔レシーバーを具備してなる。
【0070】
さらに他の実施形態においては、一つ以上の検出デバイスは、磁気弾性フィルムの代わりに共振電気回路を具備してなる。当該実施形態は、LC回路あるいはLRC回路の第1および第2の電極を具備してなる。この第1および第2の電極は上記吸収用品の留め具の一部として、あるいはその近傍に配置される。留め具はさらに導電性領域、たとえば金属フィルムを備え、この結果、吸収用品の留め具が正確に閉じられたとき、導電性領域は第1および第2の電極の両方と接触し、これによって上記LC回路は短絡する。上記LC回路が呼掛け信号によって励振させられているとき、応答信号はゼロあるいはゼロに近くなり、この信号の周波数は、上記吸収用品の留め具が開いているかあるいは不正確に閉じられているときに検出可能な信号の周波数とは異なったものとなるであろう。上記呼掛け信号はLC回路を励振させるための信号である。励振させられたLC回路は、この励振に続いて、無線周波応答信号を発する。この応答信号は読み取りデバイス(これは遠隔レシーバーの一部であってもよい)によって読み取られる。
【0071】
さらなる実施形態においては、上記システムは、LCあるいはLCR回路のような共振電気回路を備えた吸収用品を具備してなる。当該共振電気回路は十分に小さなサイズのものであり、それゆえ、上記吸収用品の留め具の一部としてあるいはその近傍に配置できる。留め具はさらに遮蔽手段、たとえば金属箔あるいは金属フィルムを備えており、この結果、吸収用品の留め具が正確に閉じられたとき、遮蔽領域は、それが共振電気回路を完全に、あるいは遮蔽手段がやって来る無線周波信号を拡散させるほど大きな部分を覆うようなポジションとなり、この結果、その下に存在する共振電気回路は共振しないか、あるいは極めて僅かしか共振しない。
【0072】
共振電気回路は、好ましくは、いわゆる「テープ被着領域(Tape Landing Zone)」、すなわち粘着掛止タブが取り付けられる吸収用品の留め具の領域に配置される。面ファスナー機構においては、対応する領域は「ループ側領域」となるであろう。
【0073】
他の態様によれば、本発明は、子供およびたとえば失禁症および/または痴呆のような精神的病気を患う成人の介護における上記システムの使用に関する。
【0074】
[実施例]
以下に提示する実施例(および図面)1〜5は本発明を例証し、かつ本発明によるシステムに含まれる上記吸収用品のいくつかの可能な実施形態を説明するものである。これらの実例は、本発明を例証するためのものであり、本明細書中で説明したとおりに本発明を限定することを意図したものではない。
【0075】
(総合的に)図1および図2、および図3は、本発明に係る二つの異なる実施形態を示している。
【0076】
〔実施例1〕
図1において、ベルト型おむつ(1)は概してT字形状を有し、かつ液体浸透性表面シート(4)と液体不浸透性背面シート(5)との間の配置された吸収体(2)を具備してなる。ベルト型おむつはさらに、ベルト(3)の形態の留め具を具備してなる。当該ベルトは、図示する実施形態においては、第1および第2のベルト部分(7,8)からなる。
【0077】
ベルト型おむつはさらに、第2のベルト部分(8)に直に張り付くベルト留めフック(6)の形態の留め具を具備してなる。この留め具は、さらにおむつ留め掛止具(12,13)を含んでいる。ベルトは、毛羽立てられた不織布の二つの層の間に配置されかつそれに対して熱接合されたスパンボンド不織布を備えた不織布ラミネートからなる。この実施形態では、不織布層はポリプロピレン繊維からなる。各層は約22g/mの面重量を有する。
【0078】
おむつ留め掛止具(12,13)は、図2に示すように、おむつ(1)の液体浸透性表面シート(4)の上に配置されかつベルト(3)の外側に面する部分に直に張り付く。各おむつ留め掛止具は、液体浸透性表面シート(4)とおむつ留め掛止具(15,16)の外面との間に配置された永久磁石(15,16)を具備してなる。当該構造のさらなる詳細は図4および図5に示す。
【0079】
上記永久磁石は、さまざまな形状ならびにサイズを有する金属小片、パウダー、細粒、フィルム、磁気インクの形態であってもよく、あるいはその他の形態であってもよい。
【0080】
複数の磁気弾性フィルム、たとえば三つのフィルムは、使用時に使用者とは逆側を向く、毛羽立てられた不織布層と、ベルト積層体における中間スパンボンド不織布層との間の第1のベルト部分(7)の内部に配置される。これは、図1および図2に示す三つの矩形状磁気弾性フィルム(20)によって示されている。さらなる実施形態では、上記複数の磁気弾性フィルムは、留め具(締結システム)の長手方向あるいは横方向に配置されてもよい。それを長手方向に配置することによって、本発明の機能にひどい悪影響を与えることなく、サイズの異なる使用者が本吸収用品を使用することが可能となる。
【0081】
全ての実施形態において、フィルムは、機械的な圧力からそれを保護するために、好ましくはカプセル化される。
【0082】
さらなる実施形態においては、いくつかのさらなるセンサー(20)(これは異なる共振周波数を有していてもよい)が、吸収用品中に配置される。配置場所は、おむつの後部、前部そして側部であってもよい。
【0083】
図1におけるセンサー20の配置場所は単に実例と考えるべきである。
【0084】
ベルト型おむつはさらに、使用中に装着者の腹部に当接した状態で装着されることを意図した前部(19)と、使用中に装着者の背中に当接した状態で装着されることを意図した後部(17)と、使用中に着用者の生殖器に当接した状態で装着されることを意図した、前部(19)と後部(17)との間に配置される股部(18)とを具備してなる。ベルト(3)は、おむつ(1)の後部(17)に対して取り付けられる。
【0085】
図2は、ベルト(3)に対しておむつ(1)の前部(19)を定着する寸前の状態で、おむつ(1)を示している。図1はまた、おむつの他の部分の説明のために参照すべきである。第1のベルト部(7)は、ベルト定着フック(6)を介して第2のベルト部(8)に対して取り付けられる。これを行うことで、複数の磁気弾性フィルム(20)が露出させられ、かつおむつ留めフック(12,13)と永久磁石(15,16)に近接して配置される。図1のベルト型おむつに見られる吸収コア、液体不浸透性背面シートおよび液体浸透性表面シートは、もし適切であるなら、図3に示す開放型おむつと同じ形態を有していてもよい。
【0086】
手持ち型ユニットの形態の、あるいは固定型ユニットの形態の遠隔ユニットが、閉じたおむつに対応する第1の周波数Aを確定するために使用可能である。この周波数Aは、後の段階で、第2の周波数の新しい測定値を相関させるために使用できる。第1の周波数Aが第2の周波数Bよりも低い場合、永久磁石(15,16)は複数の磁気弾性フィルム20に関して、ずれている。このずれは、おむつの締結システムが機能していないかあるいは締結システムの機能が低下したという事象と関連付けることができる。おむつ締結システムが機能しない場合、おむつは着用者の体に適合しておらず、したがって漏れのリスクは前よりも非常に高くなる。生じるアラーム信号によって介護補助者は、着用者の実際の状況を確認しようとするであろう。他の実施形態では、周波数Aは手持ち型ユニットに記憶させられる。他の実施形態では周波数Aは、この周波数Aとその後測定される周波数Bとを比較するコンピューターに、直接または間接的に送信される。
【0087】
周波数AおよびBはいずれも、開放されたあるいは閉じられた/使用不能なおむつに対応する所定の値と比較されてもよい。
【0088】
〔実施例2〕
図3aおよび図3bは、本発明に係るさらなる実施形態を示している。図3aは、テープタブ(307,308)と、液体不浸透性背面シート(302)の上に配置された二つのループ状定着領域(320,321)とを備えたおむつを示している。テープタブ307,308はさらにフック領域307a,307bを備える。フック領域はさらにそれぞれ永久磁石340,341を備える。当該構成については図4を用いてさらに詳しく説明する。
【0089】
ループ状定着領域(320,321)は一般的なループ状素材からなり、したがってこれ以上詳しく説明しない。二つの磁気弾性フィルム331,332は、ループ状定着領域320,321と液体不浸透性背面シートとの間に置かれる。おむつを装着したとき、フック領域307a,308aと永久磁石領域340,341とを備えたテープタブ(307,308)の形態の締結システム留め具とループ状締結領域(320,321)は磁気弾性フィルムに関して近接する。実施例1において説明したように、続いて、周波数が確定可能となる。おむつが緩んだとき、この変位は、先と同様、着用者あるいは看護補助者へのアラーム信号を発生させる。
【0090】
湿潤ポイントは、体液あるいは身体排出物と最初に接触することになる、おむつ表面の領域である。明らかに、実際には、これに関して特定のポイントあるいは領域を確定することはできないが、体液および排出物は、おむつの所与の限定された領域内で、おむつに放出されるということは概ね容認可能である。一般に、この領域は、男性および女性のいずれの場合にも、おむつ部分の僅かに前部側に置かれる。第1の吸収層、すなわち捕捉層における液体の拡散は僅かなものに過ぎないので、この層に関しては、濡れが最も起こりそうな、おむつの領域のみを覆えば十分である。したがって、本発明に基づくシステムを具備してなるおむつのような吸収用品内に検知デバイスを配置する場合に、そうした態様を分析しかつ検討することが可能である。
【0091】
図3に示すおむつは、液体浸透性表面シート301(たとえば不織布あるいは有孔プラスチックフィルム)と、液体不浸透性背面シート302(たとえばプラスチックフィルムあるいは疎水性不織布材)と、これら二つの層301,302間に封入された吸収体303とからなる。
【0092】
上記おむつは、吸収パンツのように、着用者の胴体の下部を取り囲むようになっている。当該おむつは、おむつを装着した際に着用者の後方に配置されることになる後部304と、おむつを装着した際に着用者の前方に配置されることになる前部305と、おむつの後部304と前部305との間に延在しかつおむつを装着した際に着用者の大腿部間で、その股領域に配置される股部306とを備える。フック材307a,308aを備えるファスナータブ307,308は、おむつを所望のパンツ状形態で取り付けることを可能とするために、おむつの後方ウエスト縁部311の近くで、おむつの長手方向に延在する後部304の側方縁部309,310に設けられている。おむつが使用されるとき、締結タブ307,308は、前方ウエスト縁部312の近くで、おむつ前部305の外面に留められ、これによっておむつは着用者のウエスト周りで、ひとまとまりに保持される。
【0093】
図3に示すおむつはまた、予め引き伸ばされた弾性部材313,314を含むが、これは股部306において、おむつの長手方向側方縁部に沿って延在している。弾性部材313,314は適当な素材、たとえば弾性フォーム、弾性バンドまたは被覆弾性糸などからなっていてもよい。簡便のために、弾性部材313,314は、引き伸ばされた状態で示している。
【0094】
吸収体303は相互に異なる層から構成される。液体浸透性表面シート301の最も近くに存在するのは、高臨界嵩、大きな空孔体積、そして低い液体拡散性を有する、薄いセルロース綿毛状パルプ層315である。臨界嵩とは、濡れたときにセルロース体が潰れも膨張もしない嵩を意味する。高臨界嵩のセルロース綿毛状パルプは、濡れたときでさえ、大きな空孔体積を持つ開口構造を維持する。
【0095】
液体不浸透性背面シート302に向かう方向に見ると、第1の吸収層316(これは大きな空孔体積、高い濡れ弾性および低い液体拡散性能を有するセルロース綿毛状パルプからなる)と、小さい空孔体積、低い濡れ弾性および高い液体拡散性能を有するセルロース綿毛状パルプからなる第2の吸収層317とが続く。両吸収層はまた超吸収物質を含んでいる。
【0096】
第1の吸収層316は、長円形状を有し、かつ、いわゆる濡れポイントの周りで、概ね、おむつの股部306に配置されている。他の実施形態では、当該層316は矩形状またはその他の適当な形状となる。
【0097】
おむつの第1の受け入れ層(すなわち捕捉層)は、それゆえ、放出された体液あるいは排出物用の受け領域として機能する。
【0098】
CTMP綿毛、CF綿毛、ワッディングあるいはフォームは、第1の吸収層において使用するのに適している。SAPを、この層に対して異なる比率で加えることも同様に可能である。
【0099】
第1の吸収層316はまた、超吸収体が混合される領域の層の総乾燥重量で計算して2〜30%の、たとえば2〜15%の超吸収体を含んでいてもよい。超吸収体は、その少なくとも一つの区域あるいは領域内で、層内に概ね均一に配分することができ、しかも層が第2の吸収層317(これは吸い上げ層であってもよい)によって排液されてしまったときでさえ、層中に残存する液体を拘束することを目的としている。
【0100】
上述したように、第1の吸収層中の超吸収物質は、好ましくは、濡れた状態となったときでさえ開口繊維構造を維持するために、高いゲル強度を有しているべきである。
【0101】
第2の吸収層317はまた超吸収物質を含むが、これは、フレーク、繊維、細粒、パウダーなどからなる一つ以上の層の形態であってもよい。この層は、吸収層317の全体にわたって広がっているか、あるいはその少なくとも一つの領域に限定される。この領域は、たとえば吸収層316よりも僅かに大きなものであっても、当該層と同様、本質的におむつの股部に限定されてもよい。
【0102】
第2の吸収層317に含まれる超吸収剤の比率は、層の総乾燥重量の分数として計算すると、好ましくは2ないし60%、好ましくは19ないし50%となる。
【0103】
第2の吸収層317における超吸収剤は、好ましくは、高いゲル強度を有することになる。すなわち、液体の拡散を妨害したり邪魔したりしないように、普通に生じる圧力で実質的に影響を受けずに膨張する能力を有する。これら超吸収体の特性とは、それが、より軽度の架橋を有するゲルと比べて、それを圧縮するのをより困難なものとする重度の架橋を有することである。
【0104】
第2の吸収層の層317における綿毛状パルプは、実質的に綿毛状パルプから、あるいは高い液体拡散能力を有するその他の吸収材からなるものであってもよい。セルロース素材から化学的に製造された綿毛状パルプは概ねこれを満足する。最終繊維は、140〜190μg/mの重量、低い剛性および低い濡れ安定性、ならびに2.5kPaにおいて8cm/g以下の臨界嵩を有していてもよい。
【0105】
第2の層317はまた、選択された綿毛状パルプ、たとえばCTMPパルプあるいは化学パルプを具備してなることができる。
【0106】
したがって、放出された体液あるいは排出物は、まず、第1の吸収層316(これはバッファーあるいはリザーバとして機能する)において収集されるが、この層は、第2の吸収層317が液体排出物を吸収し拡散させるので連続的に排液される。
【0107】
図示しかつ説明したおむつは単に本発明を例証することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものであると考えるべきではないことを理解されたい。たとえば、おむつの形状および他の態様に関するその構成は変更可能である。同様に、第1の吸収層316は第2の吸収層を完全に覆っていてもよい。さらに、液体浸透性表面シート層301の最も近くに配置された、薄いセルロース綿毛状パルプ層315は省略することもできる。
【0108】
本明細書で用いているように、おむつは特に失禁に関して使用されるが、本発明はこの特定の用法あるいは、これによって示唆されるおむつの特定のサイズあるいは形式に限定されるものではなく、当業者には明らかな、いかなるおむつであってもよいことにも留意されたい。
【0109】
〔実施例3〕
図4aは、支持材(担持材)、たとえば約25〜60g/mの坪量を有するスパンボンド不織布を具備してなるフック型留め具(401)を示している。支持材は好ましくはポリプロピレン繊維からなるが、いかなる一般的な素材が使用されてもよい。支持材はさらに永久磁石(402)を具備してなる。永久磁石(402)は、一般的なホットメルト接着剤を用いて支持材に接着されたフック素材(403)によって適所に保持される。あるいは、磁石は担体素材にじかに接着されてもよい。フック素材(403)は磁石を適所で保持し、この結果、磁石のポジションはフック素材のポジションと常に相関させられる。
【0110】
図4bは、フック型留め具の一実施形態に関する、線I‐Iに沿った断面を示す。
【0111】
図5aは留め具の他の実施形態を示している。この実施形態においては、永久磁石は上記フックで覆われていない。これによって、磁気弾性フィルムはより強いバイアス磁界にさらされるが、これは、用品を装着した際に好都合であろう。
【0112】
フック状部材は、粘着フィルムあるいは従来公知のその他公知の留め部材によって置き換えることができることに留意されたい。締結システムが、財布などに用いられる磁力式留め具からなる場合、付加的な永久磁石は必要はない。その代わり、磁気的な締結システムからのバイアス磁界が、本発明によるシステムにおいて使用可能である。
【0113】
図示する永久磁石は矩形状のものであるが、他の実施形態においては、(冷蔵庫のキッチンピンナップ具として家庭内で使用されているもののような)さまざまな形状およびサイズを持つ小金属片、パウダー、細粒、フィルム、磁性インク、およびその他既存の形態であってもよい。磁石の厚みはまた、約30μm〜5mm、たとえば約40μm〜3mm、70μm〜2mm、100μm〜2mm、500μm〜2mm、1mm〜2mm、30μm〜1mm、30μm〜500μm、30μm〜200μmであってもよい。
【0114】
「薄い」磁石は約40μmの厚みを有していてもよく、一方、一般的な「厚い」磁石は約1mmの厚みを有していてもよい。磁石の長さおよび幅は好ましくは各用途に適合させられる。一般に、磁石は、少なくとも5mm、10mm、2〜10mm、20mm、30mm、40mm、50mmあるいは約10〜20mm、たとえば10〜30mm、10〜40mm、10〜50mm、10〜100mmの、少なくとも一つの寸法、たとえば長さ、幅、直径などを有する。異なる磁石は、磁気弾性フィルムの共振に影響を与える、異なるバイアス磁界をもたらす。ある実施形態においては、複数の永久磁石が使用されてもよい。
【0115】
〔実施例4〕
励振デバイスは、本発明の実施形態の共振体を励振するのに使用される。この励振デバイスは、ある実施形態においては、励振コイルと、無線周波励振磁界を発生させるのに適した信号を当該コイルに供給するための適当な回路および電源とを具備してなる。
【0116】
読み取りデバイスは、共振体から発せられる応答信号をピックアップするのに使用される。当該読み取りデバイスは、ある実施形態においては、ピックアップコイルと、上記応答信号を受け、そこから周波数データを取り出すための適当な回路および電源とを具備してなる。上記読み取りデバイスはさらに、周波数を表示するためのディスプレイを具備してなる。さらなる実施形態では、上記読み取りデバイスはさらに、周波数が吸収用品の正しい取り付け状態を、あるいは吸収用品の緩み/外れを示唆しているかどうかを判定するための回路あるいはソフトウエアを具備してなる。
【0117】
〔実施例5〕
本発明のさらなる実施形態では、上記吸収用品はシール手段を備える。当該シール手段は、第1の部分および第2の部分を具備してなる。
【0118】
上記第1の部分は作用(influencing)手段を備える。上記第2の部分は、この作用手段による作用を受け得る共振体を備える。
【0119】
上記第1の部分および第2の部分は、互いに張り付くことができるように構成される。すなわち、シールは、それが張り付いたとき作用手段が共振体に作用するよう閉じられる。互いに分離状態となったとき、すなわちシールが破壊されたとき、作用手段はかなりの程度まで共振体に作用しなくなる。
【0120】
上記シール手段は、吸収用品が使用者に対して適切に取り付けられかつこのシール手段が閉止されたとき、このシールを壊すことなく吸収用品を取り外したりあるいはずらしたりできないように吸収用品に対して配置される。シールが壊されたとき、共振体からの応答は変化し、そして事象を検出することができる。
【0121】
好ましくは、作用手段は粘着テープ内にあるいはその上に設けられ、そして吸収用品、たとえばズボン型おむつが適切に本来の場所に装着されたとき、粘着テープは共振体を具備してなる部分に対して取り付けられ、これによって共振体に作用する。
【0122】
ズボン型おむつが、意図的にあるいは意図せずして取り外されるかあるいは位置がずらされたとき、テープはその本来の位置から変位することになり、共振体への作用が変化する。この共振体からの応答がこうして変化し、事象の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】概ねT字形状を有しかつ吸収体(2)およびベルト(3)の形態の留め具を具備してなるベルト型おむつ(1)を示す図である。
【図2】おむつ(1)の前部(19)をベルト(3)に留める直前の状態で、おむつ(1)を示す図である。
【図3a】非装着状態でベルト型おむつ(1)の「オープン型おむつ」実施形態を示す図である。
【図3b】装着状態でベルト型おむつ(1)の「オープン型おむつ」実施形態を示す図である。
【図4a】支持材を具備してなるフック型留め具(401)を正面から見て示す図である。
【図4b】支持材を具備してなるフック型留め具(401)を側面から見て示す図である。
【図5a】留め具の他の実施形態を正面から見て示す図であるが、永久磁石はフック材で覆われていない。
【図5b】留め具の他の実施形態を側面から見て示す図であるが、永久磁石はフック材で覆われていない。
【符号の説明】
【0124】
1 ベルト型おむつ
2 吸収体
3 ベルト
4 液体浸透性表面シート
5 液体不浸透性背面シート
6 ベルト留めフック
7 第1のベルト部分
8 第2のベルト部分
12,13 おむつ留め掛止具
15,16 永久磁石
17 後部
18 股部
19 前部
20 センサー(磁気弾性フィルム)
301 液体浸透性表面シート
302 液体不浸透性背面シート
303 吸収体
304 後部
305 前部
306 股部
307,308 テープタブ
307a,307b フック領域
309,310 側方縁部
311 後方ウエスト縁部
312 前方ウエスト縁部
313,314 弾性部材
315 セルロース綿毛状パルプ層
316 第1の吸収層
317 第2の吸収層
320,321 ループ状定着領域
331,332 磁気弾性フィルム
340,341 永久磁石
401 フック型留め具
402 永久磁石
403 フック素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収用品が緩むかあるいはそれが着用者の体から外れたことを遠隔的に検出するための方法であって、
少なくとも第1および第2の部分を具備してなる締結システムを備えた前記吸収用品を提供するステップであって、前記部分は吸収用品が着用者に対して取り付けられていないとき分離状態となるよう構成され、かつ用品が着用者に取り付けられたとき一つにつながるよう構成されており、前記第1の部分は、前記締結システムの前記第2の部分にあるいはその近傍に配置された共振体に影響を与える能力を有する領域を備えたものであるステップと、
前記吸収用品を着用者に対して止着するステップと、
前記共振体から発せられる信号の共振周波数および/または信号強度を読み取るステップと、
前記読み取られた共振周波数および/または信号強度に基づいて、吸収用品の状態を、一方では緩んでいるかあるいは外れていると、また他方では正しく締結されていると判定するステップと、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項2】
留め具のような少なくとも一つの物体の変位を検出するステップと、
遠隔レシーバーにアラーム信号を伝送するステップと、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸収用品が緩むかあるいは着用者の体から外れたこと、および/または前記用品が湿ったことを検出し、かつアラーム信号を伝送するための方法であって、請求項1または請求項2に記載の方法および吸収用品の濡れを検出するための方法を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
吸収用品が緩むかあるいはそれが着用者の体から外れたことを検出し、かつその場合にはアラーム信号を伝送するためのシステム。
【請求項5】
(a)少なくとも一つの吸収層を具備してなる吸収用品と、締結システムの一部分のような変位させられる物体と、一つ以上の検出デバイスと、遠隔レシーバーと、を具備してなることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記検出デバイスは、前記物体の変位に対応するバイアス磁界の増大あるいは減少に起因して生じる振動差を検出するようになっていることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記検出デバイスは磁気弾性フィルムであることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記検出デバイスは無線周波電気回路を具備してなることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記吸収用品が着用者の体に正確に取り付けられたとき回路が短絡状態となるように前記回路が構成されていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記吸収用品が緩むかあるいは着用者の体から外れたとき回路が短絡状態となるように前記回路が構成されていることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
無線周波励起信号を発生させることができる励起デバイスをさらに具備してなることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記遠隔レシーバーは、前記電気回路から発せられる無線周波信号を読み取ることができることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記遠隔レシーバーは手持ち型ユニットであることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項14】
前記遠隔レシーバーは固定型ユニットであることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項15】
前記用品が濡れているかどうかを検出するための手段を具備してなると共に、用品が濡れていることを知らせるアラーム信号を伝送するための、前記検出するための手段に対して接続された手段をさらに具備してなることを特徴とする請求項4ないし請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項4ないし請求項11のいずれか1項に記載のシステムの製造における、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法の使用法。
【請求項17】
幼児および失禁症および/または痴呆のような精神的病気を患う成人の介護における、請求項4ないし請求項11のいずれか1項に記載のシステムの使用法。
【請求項18】
締結システムを有する吸収用品であって、前記締結システムは、少なくとも第1および第2の部分を具備してなり、前記部分は吸収用品が着用者に対して取り付けられていないとき分離状態となるよう構成され、かつ用品が着用者に取り付けられたとき一つにつながるよう構成されており、前記第1の部分は、前記締結システムの前記第2の部分にあるいはその近傍に配置された共振体に影響を与えるための手段を具備してなることを特徴とする吸収用品。
【請求項19】
前記締結システムはベルトであることを特徴とする請求項18に記載の吸収用品。
【請求項20】
前記共振体は少なくとも一つの磁歪フィルムを具備してなることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の吸収用品。
【請求項21】
前記共振体は複数の磁歪フィルムを具備してなることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の吸収用品。
【請求項22】
前記共振体に影響を与えるための前記手段は永久磁石を具備してなることを特徴とする請求項18ないし請求項21のいずれか1項に記載の吸収用品。
【請求項23】
前記共振体は無線周波回路を具備してなることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の吸収用品。
【請求項24】
前記共振体はLCまたはLCR回路を具備してなることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の吸収用品。
【請求項25】
前記共振体に影響を与えるための前記手段は遮蔽手段を具備してなることを特徴とする請求項18、請求項19および請求項24のいずれか1項に記載の吸収用品。
【請求項26】
前記遮蔽手段は金属フィルムであることを特徴とする請求項25に記載の吸収用品。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3B】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−500640(P2009−500640A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521346(P2008−521346)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001142
【国際公開番号】WO2007/008122
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】