説明

吸引と共に使用するための創傷充填材

【課題】従来の創傷充填材の欠点を解消する優れた創傷充填材を提供することである。
【解決手段】吸引と共に使用するための創傷充填材が提供される。創傷充填材は、相互に連結して、哺乳動物の創傷内に配置するために好適な非吸収性の材料を形成する、複数の非吸収性の合成ポリマー繊維を含む。開示した創傷充填材を用いて哺乳動物の創傷を治療するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、ここに参照することによってその内容を本件出願に含める、2004年3月18日付の米国特許仮申請番号第60/554,158号に対する優先権の利益を請求するものである。
本発明は創傷を治療するための装置及び方法に関し、詳しくは、吸引と共に使用するための治療用の創傷充填材及び創傷充填材を用いた治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大きく開いた慢性創傷は、治療プロセス期間中に、典型的には滲出物が分泌される。感染や治療の遅れの原因となり得るバクテリアの成長を最小化するためには、一般に、創傷近辺からのそうした創傷滲出物を除去することが望ましい。創傷の周囲の皮膚部分は創傷滲出物に過度に露呈されると解離する。創傷滲出物は、創傷の治癒を阻害する細胞劣化酵素を含有することが知られている。大きく開いた慢性創傷からの滲出物に対し、ガーゼのような吸収性充填材を充填して対処する方法が一般に知られている。ガーゼ充填材は創傷のデッドスペースに充填され、時間と共に細胞から放出される滲出物を吸収する。この方法の欠点は、大量の滲出物を吸収して飽和した吸収材としてのガーゼを、定期的に交換しなければならないことである。
【0003】
別法では、創傷滲出物は吸引によって除去される。創傷はその全体をカバー材で覆うことによってシールされ、次いで創傷に吸引が適用されて滲出物が吸い出される。吸引はしばしば数日間あるいは数週間に渡り連続的に適用される。吸引を用いる場合は創傷充填材も使用するのが有益であり得る。創傷充填材は、創傷表面からの滲出物を、この創傷充填材が創傷と接する領域から吸引源へと連通させる通路を提供する。創傷充填材を吸引と組み合わせて使用すると創傷はずっと早く治癒し、滲出物が連続的に除去されるので創傷充填材をそれ程頻繁に交換しなくて良くなることが一般に知られている。
【0004】
ガーゼのような吸収性の創傷充填材を吸引と共に使用する場合は、創傷充填材は高吸収性のものである必要はない。綿ガーゼは代表的には、その重さの10倍〜25倍の重量の水溶液を吸収する。こうした吸収性は、吸収性の充填材が、バクテリアの成長及び細胞の酵素的な分解を助長する多量の滲出物を創傷内空間や創傷表面の直ぐ近くで保持する傾向があることから、好ましいものではない。
創傷に吸引が適用された場合は創傷が収縮することが一般に望しい。創傷が収縮するのは創傷治療では普通のことであるから、収縮を妨害するのではなく助長する充填材を使用することが望ましい。非圧縮性の、例えばガーゼのような創傷充填材を吸引と組み合わせて用いると、創傷の収縮が創傷充填材によって妨害される恐れがある。
【0005】
創傷充填材としてガーゼに代替するものはフォーム材であるが、フォーム材は、ヒートスタンプ法などの多くの伝統的方法によっては形成後の表面テクスチャを生じさせるべく容易には改変できないという欠点がある。フォーム材形成法を複合物の構造用に適合させるのは容易ではなく、それ故、製造プロセス中に多数の材料をフォーム構造に一体化させ得る程度には限界がある。フォーム材は、吸収性、孔寸法などの如く、全方向での一様性を持つ点で等方性を有するものであるが、創傷から除去すると各部片が全体から容易に分離するという欠点がある。これは、新しい細胞がフォーム構造内に成長することが原因であるが、創傷に残留するフォーム材のそうした部片はしばしば見えないことから、この点は問題となり得る。
かくして、既知の創傷充填材には欠点が多いことから、優れた創傷充填材に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許仮申請番号第60/554,158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の創傷充填材の欠点を解消する優れた創傷充填材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、従来の創傷治療法及び治療装置の欠点を解決する、創傷充填材、創傷充填材の製造方法及び、創傷充填材を用いた創傷の治療方法が提供される。
本発明の例示的な実施例に従えば、哺乳動物の創傷の治療を促進するための創傷充填材が提供される。この創傷充填材は、相互に連結して、哺乳動物の創傷内に配置するために好適な非吸収性材料を形成する、非吸収性の複数のポリマー繊維を含む。
本発明の他の実施例は、非等方性を有する創傷充填材である。
本発明の更に他の実施例では創傷充填材は嵩張りあるいはふくらみ(loft)を有する。創傷充填材の更に他の実施例は綿芯(batting)である。
創傷充填材の追加的な実施例は弾性を有する。
創傷充填材の別の実施例には、繊維成分内に組み込まれた、及びまたは、繊維成分上にコーティングされた創傷治療物質が含まれる。
【0009】
本発明の更に他の実施例に従えば、創傷の治療を促進するための創傷充填材が提供され、この創傷充填材には、ランダムに相互連結して、哺乳動物の創傷内に配置するために好適な非吸収性のシート状材料を形成する、非吸収性の複数のポリマー繊維が含まれる。
本発明の更に他の様相によれば、波形の3次元構造及びその製造方法を含むシート状材料の実施例が提供される。
本発明の更に別の様相によれば、哺乳動物の創傷を治療するための方法であって、非吸収性の繊維性の創傷充填材を創傷の少なくとも一つの表面と接触させて配置すること、創傷及び創傷充填材に吸引を提供すること、が含まれる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の創傷充填材の実施例の例示図である。
【図2】本発明の創傷充填材の実施例の斜視図である。
【図3A】深い細胞創傷の断面図である。
【図3B】本発明の実施例と組み合わせて例示する、図3Aの深い細胞創傷の断面図である。
【図4】本発明の波形の創傷充填材シートの波形シートユニットの実施例の斜視図である。
【図5A】本発明のプリーツ付きの創傷充填材シートの実施例の斜視図である。
【図5B】本発明の波形の創傷充填材シートの実施例の斜視図である。
【図5C】本発明のエンボス付きの創傷充填材シートの実施例の斜視図である。
【図5D】本発明のループ状の創傷充填材シートの実施例の斜視図である。
【図5E】本発明のベルベット製の創傷充填材シートの実施例の斜視図である。
【図6A】本発明の螺旋波形の創傷充填材シートの実施例の平面図である。
【図6B】本発明の螺旋波形の創傷充填材シートの実施例の側面図である。
【図7】本発明の複合波形の創傷充填材の実施例の斜視図である。
【図8】本発明のコルクスクリュー形の創傷充填材例の斜視図である。
【図9】本発明の中空管形の創傷充填材例の斜視図である。
【図10】本発明の創傷充填材の実施例の写真図である。
【図11】図10の創傷充填材の実施例の正面側からの写真図である。
【図12】図10の創傷充填材の実施例の側面側からの写真図である。
【図13】図10の創傷充填材の実施例の平面的な写真図である。
【図14A】創傷の例示図である。
【図14B】本発明の創傷充填材を充填した、図14Aの創傷充填材を表す例示図である。
【図14C】創傷に吸引を適用した後の、図14Bの創傷充填材の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
非吸収性の創傷充填材には、創傷からの滲出物を創傷から離間した吸引源に向けて素早く且つより完全に連通させる利益がある。創傷充填目的用の非吸収性の繊維材料は、その重さの約20%未満の水溶液を吸収する。しかしながら、創傷充填材の吸収性は、充填容積(その非圧縮状態での)に吸収される液体量として特徴付けられる方が適切である。かくして、非吸収性の創傷充填材はその容積の約3分の1未満において水溶液を保持することが好ましく、約11%未満において保持することが更に好ましく、容積の約5%未満において水溶液を保持することが最も好ましい。創傷充填材の吸収性は数多くの物理特性の関数であり、それらの特性には、基本材料の、密度、濡れ性、吸収に伴う膨張性、(もしあれば)個々の繊維の表面特徴、創傷充填材を形成する幾何学的構造、等がある。材料の圧縮性は、圧縮下にその容積を減少させ得る能力の目安である。圧縮性の創傷充填材は、吸引状況での創傷の収縮を許容する。一般に、創傷と創傷充填材とは柔軟なカバーでシールされる。次いでこのカバーの下方に吸引が適用され、大気圧以下の圧力が創出される。大気圧と、創傷充填材位置での圧力との圧力差によって、創傷充填材に圧縮力が発生する。圧縮性の創傷充填材は、患者が動いたり創傷が収縮したりすることで生じる創傷寸法の変化に対しても順応し、そうした寸法変化に合致し続ける。創傷充填材の圧縮能力は数多くの物理特性の関数であり、中でも主要な特性は空間容積比である。空間容積が大きいと創傷充填材は圧縮力に応答して変形することができる。
【0012】
一般には創傷が吸引下に収縮することが有益であるが、第2及びまたは第3方向に優先して第1方向への収縮を促進させることが好ましい場合がしばしばある。圧縮力に対する応答性が、その力を受ける方向によって変化する材料は非等方性を有するものとして説明される。創傷治療用途では、例えば、創傷の“幅”方向の収縮を促進しつつ、創傷の長さのみならず深さを維持することが好ましい場合があり得る。あるいは、創傷のマージン部分の相対位置を維持しつつ、創傷床からの治療を促進することが望ましい場合があり得る。
創傷充填材のその他の望ましい特徴は弾力性である。弾性材料は、圧縮に露呈されるとその形状及び容積が減少し、創傷内では拡張して創傷を充填する。この点は、創傷充填材は創傷滲出物が吸引によって全ての創傷表面から抜き出され得るように創傷の全表面と接触すべきであることから有益な特徴である。創傷内に充填材が存在しないデッドスペースがあると創傷の治癒を妨害する創傷滲出物がそうしたデッドスペースに充満され得る。更には、弾性の創傷充填材は、創傷空間内に充填されると拡張することから、臨床的セッティングに際しての過剰充填を防止する。弾性の創傷充填材は、吸引が停止及び再開される場合、あるいは患者が動いた後にその形態を復元する有益な能力をも有する。これは、吸引を間欠様式下に創傷に適用する場合にも重要となる能力である。
【0013】
その一体性を維持し、創傷内で容易には分離あるいは分解して創傷内の材料から脱離しないような一体性を維持する創傷充填材を使用することも一般に望ましい。この特性を示す材料は、“非分離性(nonshedding)”材料として説明され得る。非分離性材料は、分離することなく不整形の創傷にフィットさせる目的でカットし得る利益をも有する。高度の一体性を有する材料は、そうした材料の一部が全体から分離して創傷床内に引っ掛かる恐れがずっと少ない点で有益である。
【0014】
図1には本発明の1実施例が例示される。図1に示されるように、創傷充填材100はランダムに相互連結した繊維塊101である。繊維塊101は所望の嵩張りあるいはふくらみを有する簡単な綿芯材料の形態を取り得る。あるいはこの綿芯材料は絡め合わせた単繊維材料から構成され得る。創傷充填材100は弾性及び圧縮性を有し、それ故、不整形の創傷に容易に合致することができる。創傷充填材100は不織性のものであることが好ましい。創傷充填材100はスパンボンディング法あるいはメルトブロー法で製造されたものであるのことがもっと好ましい。創傷充填材101の繊維成分は非吸収性の合成ポリマーから構成される。好適な生物相容性材料には、ポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン、ナイロン及び関連するアラミドのようなポリアミド、そしてポリエステルがある。更に、ヒアルロン酸あるいは抗細菌性の銀で処理した繊維を創傷充填材100に組み入れることができる。以下の如き有益な特性を有する一つ以上の繊維成分が考えられる。繊維は生物吸収性のものであり得、治療剤を制御下に釈放するために生物腐食性のものであり得、所望されざる細胞、物質あるいは微生物を選択的に除去するために粘着性のものであり得、デリケートな細胞を保護するために非粘着性のものであり得る。更に、繊維は、創傷の治癒を促進するために斯界に認識される一つ以上の薬剤を組み込んだものであることがもっと好ましい。例えば、アルギン酸カルシウム繊維を創傷充填材100に組み込むことができる。あるいは、ヒアルロン酸あるいは抗微生物性の銀で処理した繊維を創傷充填材100に組み込むことができる。創傷充填材100に組み込んだ一つ以上の繊維が、図示されない好適な電源から創傷細胞に治療用電流を伝送させるための十分な伝導性を有する実施例も考えられる。
【0015】
創傷充填材100は非吸収性材料から構成されるため、それ自身は実質的に非吸収性である。非吸収性であることは、創傷充填材100内に保持される創傷滲出物量を最小化する上で望ましい。創傷充填材100内に保持される創傷滲出物量が最小化されると、創傷の、滲出物に露呈(及び付随する感染)される度合いが低下すると共に、創傷充填材100の必要交換頻度も低下するという利益がある。創傷充填材100は、繊維マトリクス内での捕捉及び繊維表面での吸収を介しての液体保持量が少ないことから、顕著な吸収性を有し得る。あるいは、創傷充填材100の吸収比率を制御して、患者ケア提供者が医薬用溶液に創傷充填材100を浸漬し、医薬用溶液を創傷部位に一定時間処方することができるようにすることも可能である。
【0016】
図2には本発明の別の実施例が例示される。図2に示されるように、創傷充填材シート200は、相互にランダムに連結して実質的に平坦なシート204を形成する非吸収性の複数の合成ポリマー繊維202を含んでいる。ランダムな繊維材料を製造する技術はテキスタイル分野では既知のものであり、そうした技術には例えば、カーディング法、スパンボンド法、メルトブロー法が含まれる。好適な材料は、テネシー州ナッシュビルのReemay社のBBA Fiberweb(商標)の製造するスパンボンドポリプロピレンタイパー(商標名)である。スパンボンドポリプロピレンタイパーは、液体の移送を非常に効率的に容易化する点で有益なものである。創傷充填材シート200は実質的に平坦なものとして示されるが、テキスタイル分野において既知の手段を使用することにより、かなりの厚さを有するものとして提供され得る。構成上可能なものとして、図5Aにはプリーツ付きの創傷充填材シート210が、図5Bには波形の創傷充填材シート220が、そして図5Cにはエンボス付きの創傷充填材シート230が夫々示される。更に他の既知の段階によって、図5D及び図5Eに夫々ループ状の創傷充填材シート240及びベルベット材料製の創傷充填材シート250として各例示されるようなパイル付き繊維を製造することができる。あるいはパイル付き繊維を、カーペット製造におけるようなタフト付け処理を用いて製造しても良い。
図3Aには深い創傷の一例が例示される。この創傷は、創傷充填材を吸引と組み合わせて治療するために好適な創傷空間300を含んでいる。創傷充填材は創傷空間300内に配置される。例えば、図3Bには創傷空間300内に充填した創傷充填材シート200が示される。
【0017】
図4には2枚のシートを含む、本発明の波形の創傷充填材シートの波形シートユニット450が例示される。第1シート層410が提供され、次いで、例えば、本来サイン波状の断面を有する第2シート層420が位置430において第1シート層の表面に連結される。この連結は接着材あるいはヒートシールを用いて実現され得る。第1シート層410と第2シート層420とを連結するのに2部材式のシリコーン接着材が好適であることが分かった。波形シートユニット450の弾性を調節するためのシリコーン材料440のビード部分を随意的に追加することができる。好適な創傷充填シート材料は、ペンシルヴェニア州ホリースプリングスのAhistrom社の製造するHollytex(商標名)スパンボンデッドポリエステルである。Hollytexは繊維分離しにくいことから、創傷充填シート材料として選択するのは好ましいことである。ポリエステル繊維は、流体を殆ど吸収せず、液体を効率的に移送し、一定時間力を加えた後にずっと容易に原形に復帰する点で耐クリープ性を有するので、創傷充填シート材料としては好ましいものである。スパンボンドシートから波形シートユニット実施例を作成することが好ましいが、その他のシートも同様に基本シート材として好適に使用することができる。そうした基本シート材は、メルトブロー法あるいはハイドロエンタングリング法の如きその他の不織プロセスによって、あるいは編み織り(knitting)あるいは編み合わせ(weaving)のような通常的な方法によっても作製可能である。第2シート層420はサイン波状の断面を有するものとして例示されたが、本発明はそのように限定されるものではなく、例えばプリーツ付きのようなその他の断面を使用し得ることが意図されるものでもある。
【0018】
波形の創傷充填材シートの波形シートユニット450は、それ以上改変することなく創傷充填として用いることが可能であり、また、もっと複雑な3次元構造を形成するためにも用い得る。図6A及び図6Bに例示する螺旋状の創傷充填材500は、波形シートユニット450を転動させ、その第1シート層410の一部分が周囲方向に沿って露出されるようにすることで形成される。複数の波形シートユニットを用いることで、もっと込み入った構造のものを形成することもできる。例えば、個々の波形シートユニットを接着材あるいはヒートシールによって相互に連結して、多重波形の創傷充填材550を形成し得る。シリコーン材料の一つ以上のビード552が、2つの目的、即ち、各波形シートユニット450を図7に示すように連結するため及び構造体の弾性を向上させるために作用し得る。図7には隣り合う波形シートユニットの各ピーク部分が整列する実施例が例示されるが、これらのピーク部分がスタガー配列される実施例も意図され得る。多重波形の創傷充填材550は、波形の創傷充填材シートのカット片を創出するべく、断面に沿って好適な厚さにスライスすることもできる。あるいは多重波形の創傷充填材550は、波形の創傷充填材シートのバイアスカット片を創出するべく、あるバイアスに沿ってスライスしても良い。
【0019】
螺旋状の創傷充填材500、波形の創傷充填材シートのカット片、波形の創傷充填材シートのバイアスカット片には、高圧縮自在性で且つ高弾性である事による利益がある。これらの創傷充填材構造は、吸引時に通常遭遇する約2psi(13790Pa)の圧力を受けた場合にその元の容積の50%未満に減少するに十分な圧縮性を有することが好ましく、元の容積の25%未満に減少するに十分な圧縮性を有することが更に好ましく、元の容積の10%未満に減少するに十分な圧縮性を有することが最も好ましい。
これらの創傷充填材構造は、臨床的セッティングにおいてよくある圧縮力に露呈された後に、その元の容積の50%以上に復元するに十分な弾性を有することが好ましい。そうした圧縮力は20psi(137900Pa)もの高さであり得るが、より一般的には1〜2psi(6895〜13790Pa)のオーダーのものである。これらの創傷充填材構造は、その元の容積の80%以上に復元するに十分な弾性を有することが更に好ましい。
【0020】
螺旋状の創傷充填材500、波形の創傷充填材のカット片、波形の創傷充填材シートのバイアスカット片の各構造は、1つの軸方向に沿って、残余の軸方向に沿った場合よりもずっと容易に圧縮されるように改変させることができる。そうした改変は、波形の創傷充填材シートのカッティング角度を変更する、あるいは波形シートユニットの製造時に使用する接着剤量及び接着方向を変更することによって達成し得る。詳しくは、シリコーン接着材のビードの量及び方向を変えることで、弾性が向上されるのみならず、圧縮性が向上し且つ所望方向に対して制御されることが分かった。例えば、多重波形の創傷充填材550は全体に非等方性を有し、各軸に関する合成の弾性係数は異なっていることから、真空が適用されると特定の軸方向に優先的に圧縮される。この特性は創傷を、他の方向に優先してある一つの方向からの閉鎖を促進させることが望ましい場合に有用である。
【0021】
多重波形の創傷充填材550の一つの変形例は、x軸方向における弾性係数が0.9psi(6205.5Pa)、y軸方向の弾性係数が3.7psi(25511.5Pa)、z軸方向の弾性係数が1.0psi(6895Pa)である。例えば、多重波形の創傷充填材550から1立方インチ(約16.4cm3)分を切り取り、0.5lb(約0.23kg)の力を各軸方向に沿って加えると、各方向での圧縮量は、x軸方向では0.55インチ(約1.39cm)、y軸方向では0.16インチ(約0.40cm)、z軸方向では0.5インチ(約1.27cm)となる。図14Aには非等方性の創傷充填材1410による利益を受ける創傷1400が例示され、図14Bには、吸引を提供する以前の、非等方性の創傷充填材1410を配置した創傷1400が、図14Cには、吸引を提供する間における、非等方性の創傷充填材1410が収縮した状態での創傷1400が夫々例示される。特定の合成弾性係数のリストは多重波形の創傷充填材550のためのものとして示されたが、創傷充填材の各軸方向における弾性係数は特定の必要性に応じて変更することができる。
【0022】
図8には本発明の螺旋コルクスクリュー形の創傷充填材600が例示される。螺旋コルクスクリュー形の創傷充填材600は、所望であれば単一の連続シートを単に巻き回すことによって形成され得る。螺旋コルクスクリュー形の創傷充填材600の螺旋構造は、製造上の複雑さを最小化する、実質的に3次元構造体を提供する。螺旋コルクスクリュー構造は、そのままで創傷充填材として使用され得、あるいは螺旋コークスクリュー構造を追加した、もっと手の込んだ3次元形態の創傷充填材とすることもできる。
図9には本発明の中空管形の創傷充填材700が例示される。中空管形の創傷充填材700は、テキスタイル分野に既知の様々の手段、特には、繊維成分を所望の構造に寄り合わせることによって形成し得る。
【0023】
図10には本発明の更に他の例示的な実施例が示される。図示されるように、創傷充填材1000は全体に螺旋形状を有し、繊維の螺旋の長手方向軸線に沿った開放部分1020と、隣り合う特定の螺旋部分間における開放部分1040とを有している。創傷充填材1000は、全体に、スパンデックスのようなポリマー繊維1060から構成される。
創傷充填材1000を形成するためには、ポリマー繊維1060を、図示されない鋼管のようなマンドレルの周囲に巻き付け、スパンデックスを巻き付けた鋼管を列状に積み重ね、次いで、各鋼管間に図示されないポリウレタンフィルムを配置する。ポリウレタンフィルムの厚さは約0.003インチ(約0.08mm)であることが望ましい。次いで、積み重ねた鋼管を相互にクランプ止めして約320°F(約160℃)に加熱する。これによりポリウレタンフィルムが溶けてスパンデックス繊維に接着され、かくして隣り合う螺旋どうしが相互に連結される。各鋼管を、冷却された後に取り外すと、図10〜図13に例示する創傷充填材1000が残される。
創傷充填材1000には数多くの有益な特性による利益がある。そうした利益は、全体的に非吸収性を有することであり、圧縮された後に回復するような圧縮自在性及び弾性を有することであり、非等方性の様式下に構成され得ることである。
好適な追加実施例として、溶融させた繊維フィラメントをワッフル表面を備えるコンベヤ上に噴霧することによって作製した創傷充填材が考えられる。この場合、生物相容性の結合剤を3次元形態上に噴霧し、次いで、チョッパーガンを用いて、細断された繊維を3次元形態上に所望の特徴下に噴霧する。結合剤は各繊維を相互に連結して適宜の創傷充填材を形成するように作用する。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0024】
100 創傷充填材
101 繊維塊
200 創傷充填材シート
202 合成ポリマー繊維
204 実質的に平坦なシート
210 プリーツ付きの創傷充填材シート
220 波形の創傷充填材シート
230 エンボス付きの創傷充填材シート
240 ループ状の創傷充填材シート
250 ベルベット製の創傷充填材シート
300 創傷空間
410 第1シート層
420 第2シート層
440 シリコーン材料
450 波形シートユニット
500 螺旋状の創傷充填材
550 多重波形の創傷充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引と共に使用するための創傷充填材(450)であって、
非吸収性の第1繊維材料を含む第1層(410)と、
非吸収性の第2繊維材料を含み、複数のピーク部分及びトラフ部分(430)を含む断面を有する第2層(420)と、
を含み、
第2層の各トラフ部分が第1層の上方表面と連結して創傷充填材の波形ユニットを形成し、
前記第2層が前記創傷充填材(450)の弾性を調節する手段を有する創傷充填材。
【請求項2】
前記創傷充填材(450)の弾性を調節する手段がシリコーン材料のビード部分である請求項1に記載する創傷充填材。
【請求項3】
波形ユニットが、第1層の少なくとも一部分を周囲方向に露呈させた、全体に螺旋形状(500)を形成する形態とされる請求項1の創傷充填材。
【請求項4】
吸引と共に使用するための創傷充填材(550)であって、
請求項1に記載する創傷充填材(450)からなる複数の波形ユニットを含み、
隣り合う各波形ユニットが層形態において相互に連結される創傷充填材。
【請求項5】
隣り合う波形ユニットが、一方の波形ユニットの第2層のピーク部分を他方の波形ユニットの第1層の下方表面に連結することにより相互に連結される請求項4の創傷充填材(550)。
【請求項6】
隣り合う波形ユニットが、一方の波形ユニットの第2層のピーク部分を他方の波形ユニットの第1層のピーク部分に連結することにより相互に連結される請求項4の創傷充填材(550)。
【請求項7】
隣り合う波形ユニットが、一方の波形ユニットの第1層の下方表面を他方の波形ユニットの第1層の下方表面に連結することにより相互に連結される請求項4の創傷充填材(550)。
【請求項8】
隣り合う波形ユニットが接着材により相互に連結される請求項4の創傷充填材(550)。
【請求項9】
隣り合う波形ユニットがヒートシールにより相互に連結される請求項4の創傷充填材(550)。
【請求項10】
請求項1に記載する如き創傷充填材の製造方法であって、
非吸収性の第1繊維材料を含む実質的に平坦な第1層を提供すること、
第2繊維材料を含む実質的に平坦な第2層を提供すること、
第2層を複数のピーク部分及びトラフ部分を含む形状に形成すること、
第2層のトラフ部分を第1層の上方表面に連結して創傷充填材の波形ユニットを形成すること、
を含む方法。
【請求項11】
第1波形ユニットを、第1層の少なくとも一部分が周囲方向に露呈されてなる全体に螺旋形状に形成すること、を更に含む請求項10の方法。
【請求項12】
請求項5に記載する如き複数の波形ユニットを有する創傷充填材の製造方法であって、
請求項10の各段階を一回以上実施して1つ以上の波形ユニットを形成すること、
全ての波形ユニットが相互連結されるまで、1つの波形ユニットの第2層のピーク部分の少なくとも一部分を別の波形ユニットの第1層の下方表面に相互連結すること、
を含む方法。
【請求項13】
吸引と共に使用するための創傷充填材であって、請求項1に記載する創傷充填材を含み、
相互に連結して、創傷充填材に吸収され得る水溶液が該創傷充填材の非圧縮状態での容積の約1/3未満であるような非吸収性の構造を形成する複数の生物相容性の繊維を含む創傷充填材。
【請求項14】
創傷充填材によって吸収され得る水溶液の容積が、非圧縮状態の創傷充填材の容積の約11%未満である請求項1または13の創傷充填材。
【請求項15】
創傷充填材によって吸収され得る水溶液の容積が、非圧縮状態の創傷充填材の容積の約5%未満である請求項14の創傷充填材。
【請求項16】
創傷充填材が、13790Pa未満の圧縮力を受けた場合に非圧縮容積の約50%未満の圧縮容積に圧縮され得る請求項1または13の創傷充填材。
【請求項17】
圧縮容積が非圧縮容積の約25%未満である請求項16の創傷充填材。
【請求項18】
圧縮容積が非圧縮容積の約10%未満である請求項17の創傷充填材。
【請求項19】
圧縮力を除去すると非圧縮容積の約50%以上に復元し得る請求項16の創傷充填材。
【請求項20】
圧縮力を除去すると非圧縮容積の約80%以上に復元し得る請求項19の創傷充填材。
【請求項21】
創傷充填材が非等方性を有し、非吸収性の材料を形成する複数の非吸収性の合成ポリマー繊維にして、第1軸に沿った第1圧縮応答性と、第1軸と直角な第2軸に沿った第2圧縮応答性とを有し、第2圧縮応答性が第1圧縮応答性とは異なる請求項1または13の創傷充填材。
【請求項22】
第1軸及び第2軸と直角な第3軸に沿って第3圧縮応答性を有し、第1圧縮応答性と、第2圧縮応答性と、第3圧縮応答性とが、夫々異なったものである請求項21の創傷充填材。
【請求項23】
非吸収性の構造が、実質的にコークスクリュー形状(600)に更に形成される請求項13、14、15の何れかの創傷充填材。
【請求項24】
繊維が相互に連結して中空管構造を形成する請求項13、14、15の何れかの創傷充填材。
【請求項25】
非吸収性の構造が、織らない態様下にランダムに相互連結して、実質的に連続した非吸収性のシート状に形成したポリマー繊維から形成される請求項13、14、15の何れかの創傷充填材。
【請求項26】
シート状の材料が少なくとも1つの平坦な表面と、該表面から上昇するパイル構造とを更に含む請求項25の創傷充填材。
【請求項27】
パイル構造がベルベットである請求項26の創傷充填材。
【請求項28】
パイル構造がループ付き繊維である請求項26の創傷充填材。
【請求項29】
繊維が合成ポリマー繊維である請求項13、14、15の何れかの創傷充填材。
【請求項30】
合成ポリマー繊維がポリエステルを含む請求項29の創傷充填材。
【請求項31】
繊維がヒートシール手段によって相互に連結される請求項13、14、15の何れかの創傷充填材。
【請求項32】
繊維が接着材によって相互に連結される請求項13、14、15の何れかの創傷充填材。
【請求項33】
接着材がシリコーンを含む請求項1の創傷充填材。
【請求項34】
少なくとも1つの繊維が創傷治療剤を含む請求項13の創傷充填材。
【請求項35】
少なくとも1つの繊維が、創傷の少なくとも1つの表面に電流を伝導するようになっている請求項13の創傷充填材。
【請求項36】
繊維が、スパンボンド法あるいはメルトブロー法の何れかによって相互に連結される請求項13の創傷充填材。
【請求項37】
綿芯を形成する、ランダムサイズの、少なくとも1つの非吸収性の合成ポリマー繊維を含む請求項13、21、22の何れかの創傷充填材。
【請求項38】
少なくとも1つの非吸収性の合成ポリマー繊維が単繊維を含む請求項37の創傷充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−24613(P2012−24613A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233042(P2011−233042)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2007−503916(P2007−503916)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(508248003)ボリンジャー・テクノロジーズ・エル・ピー (7)
【Fターム(参考)】