説明

吸引カテーテル

【課題】体内への挿入性の低下を抑制するとともに、吸引性能の低下を抑制する吸引カテーテルを提供する。
【解決手段】吸引カテーテルは、カテーテル本体11とハブとを備える。カテーテル本体11は、異物を吸引するための吸引ルーメン17を有する吸引チューブ14と、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメン18を有するガイドワイヤチューブ15とを備える。また、カテーテル本体11は、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを備える。遠位側チューブ51では、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とを仕切るルーメン隔壁部が、吸引ルーメン17の中心部に向けて突出して設けられており、近位側チューブ52では、上記ルーメン隔壁部が吸引ルーメン17の中心部に向けて突出せずに設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内の血栓等といった体内の異物を除去するための吸引カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管内に存在する血栓といった体内の異物を吸引除去するための吸引カテーテルが知られている(例えば、特許文献1参照)。吸引カテーテルは、異物を吸引するための吸引ルーメンを内部に有する吸引チューブを備える。この種の吸引カテーテルを用いて、例えば血管内の血栓を吸引する際には、まず治療行為者が吸引カテーテルを血管内に挿入し移動させることで、吸引チューブの遠位端に形成されている吸引口を血栓が存在する治療対象箇所に到達させる。そして、吸引チューブの近位端に取り付けられた吸引具を用いて吸引ルーメンを負圧とすることにより、当該ルーメンを介して血栓を吸引除去する。
【0003】
ところで、吸引カテーテルを体内の治療対象箇所まで搬送する際には、予め体内に挿入されたガイドワイヤに沿って搬送する。具体的には、吸引カテーテルには、吸引チューブの他に、ガイドワイヤルーメンを内部に有するガイドワイヤチューブが設けられ、そのガイドワイヤルーメンにガイドワイヤを挿通させた状態で同カテーテルが治療対象箇所まで搬送される。なお、ガイドワイヤチューブは、例えば吸引チューブの外周側に接合されて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−222946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガイドワイヤチューブが吸引チューブの外周側に配置される上述の吸引カテーテルでは、吸引チューブとガイドワイヤチューブとが軸線方向に直交する方向に並んで配置されるため、吸引カテーテルにおいてその並び方向における幅寸法が大きくなり、同カテーテルの体内への挿入性が低下するおそれがある。特に、ガイドワイヤチューブが吸引チューブの遠位端側まで延びている場合には、吸引カテーテルの遠位端側において上記並び方向の幅寸法が大きくなってしまい、挿入性を著しく低下させてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、この問題に対する対策として、吸引チューブの吸引ルーメンにガイドワイヤチューブを配設し、これにより吸引カテーテルの挿入性の低下を抑制することが考えられる。しかしながら、この場合、吸引ルーメンの通路面積がガイドワイヤチューブにより縮小されるため、吸引性能の低下が懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、体内への挿入性の低下を抑制するとともに、吸引性能の低下を抑制する吸引カテーテルを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の吸引カテーテルは、異物を吸引するための吸引ルーメンと、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメンとを有するカテーテルチューブを備える吸引カテーテルにおいて、前記カテーテルチューブの軸線方向において遠位端部を含む遠位部分とそれよりも近位側である近位部分とのうち前記遠位部分では、前記吸引ルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとを仕切るルーメン隔壁部が、前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出して設けられ、前記近位部分では、前記ルーメン隔壁部が前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出せずに設けられていることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、カテーテルチューブの遠位部分では、ルーメン隔壁部が吸引ルーメンの中心部に向けて突出して設けられているため、ルーメン隔壁部が吸引ルーメンの中心部に向けて突出せずに設けられている場合と比べて、吸引ルーメンとガイドワイヤルーメンとが並ぶ並び方向におけるカテーテルチューブの幅寸法、すなわち最大幅寸法を小さくすることができる。これにより、カテーテルチューブにおける体内への挿入性の低下を抑制できる。それに対して、カテーテルチューブの近位部分では、ルーメン隔壁部が吸引ルーメンの中心部に向けて突出していないため、ルーメン隔壁部により吸引ルーメンの開口面積が縮小されていない。そのため、吸引性能の低下が抑制されている。よって、この場合、体内への挿入性能の低下を抑制できるとともに、吸引性能の低下を抑制できる。
【0010】
また、吸引カテーテルにおいて遠位部分と近位部分とを比較した場合、遠位部分では体内への挿入性に対する要求が強いのに対し、近位部分では挿入性に対する要求が遠位部分ほど求められてはいない。そこで、上記の構成では、この点に着目し、かかる近位部分において吸引性能に対する要求を満たすこととしている。これにより、体内への挿入性と吸引性能という相反する要求を共に満たすことを可能としている。
【0011】
第2の発明の吸引カテーテルは、第1の発明において、前記カテーテルチューブにおいて前記近位部分には、前記吸引ルーメンを囲む周壁部に補強体を埋設することにより補強層が形成されており、前記遠位部分には、前記周壁部に前記補強層が形成されておらず、前記近位部分では、前記補強層の外側に前記ガイドワイヤルーメンが設けられていることを特徴とする。
【0012】
吸引カテーテルでは、カテーテルチューブの近位部分には、同チューブの剛性を高めるべく周壁部に補強体が埋設されてなる補強層を形成する一方、遠位部分には同チューブの柔軟性を確保すべく周壁部にかかる補強層を形成しないことがある。かかる構成では、近位部分では周壁部に補強体が埋設されているため、ルーメン隔壁部を吸引ルーメンの中心部に向けて突出させる構成とすることが困難であると考えられる。この点、本発明では、近位部分では、補強層の外側にガイドワイヤルーメンを配置して、補強層を有しない遠位部分においてルーメン隔壁部を吸引ルーメンの中心部に向けて突出させる構成としている。この場合、補強層を有するカテーテルチューブに対しても上記第1の発明の効果を好適に奏することができる。
【0013】
第3の発明の吸引カテーテルは、第1又は第2の発明において、前記カテーテルチューブの軸線方向に直交する方向の断面である横断面において、前記吸引ルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとが並ぶ第1方向における前記カテーテルチューブの幅寸法をW1とし、前記第1方向と直交する方向における前記カテーテルチューブの幅寸法をW2とした場合に、前記遠位部分における寸法比W1/W2が、前記近位部分における寸法比W1/W2よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0014】
ところで、カテーテルチューブの横断面において直交する2つの方向の幅寸法W1及びW2が異なる場合、すなわち同横断面が楕円形状をなしている場合には、カテーテルチューブの屈曲性が、同チューブに対して第1方向への曲げ力を作用させた場合と、第2方向への曲げ力を作用させた場合とで相違することが考えられる。これは、カテーテルチューブの体内への挿入性の観点からすると好ましくない。特に、カテーテルチューブの体内への挿入先となる遠位部分においてかかる屈曲性の相違が生じていると、同チューブの挿入性が大きく低下するおそれがある。そこで、本発明では、この点に鑑み、カテーテルチューブの幅寸法における寸法比W1/W2について、近位部分よりも遠位部分の方を小さくし、これによりカテーテルチューブの横断面形状について近位部分よりも遠位部分の方を真円に近い形状としている。この場合、吸引ルーメンとガイドワイヤルーメンとの二つのルーメンを有するカテーテルチューブについて体内への挿入性を高めることができる。
【0015】
また、例えばカテーテルチューブの幅寸法W2を近位部分と遠位部分とで同一寸法とした場合には、カテーテルチューブの幅寸法W1、換言すると同チューブの最大幅寸法について、近位部分よりも遠位部分の方を小さくすることができる。この場合、カテーテルチューブの体内への挿入性の上では好ましい構成であるといえる。
【0016】
第4の発明の吸引カテーテルは、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記カテーテルチューブは、前記吸引ルーメンを囲む周壁部に一部が埋設されてなるガイドワイヤチューブを有し、該ガイドワイヤチューブの内腔により前記ガイドワイヤルーメンが形成されており、前記遠位部分では、前記ガイドワイヤチューブが前記吸引ルーメンの内側に突出しており、前記近位部分では、前記ガイドワイヤチューブが前記吸引ルーメンの内側に突出していないことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ガイドワイヤチューブが吸引ルーメンを囲む周壁部に少なくとも一部埋設されているため、ガイドワイヤチューブが周壁部に埋設されない状態で吸引ルーメン内に配置されている場合と比べて、周壁部に対するガイドワイヤチューブの接合強度を高めることができる。これにより、ガイドワイヤチューブへのガイドワイヤの挿通時にガイドワイヤチューブに対して過剰な負荷が加わった場合でも、同チューブが周壁部からはがれるといった不都合が生じるのを抑制できる。
【0018】
第5の発明の吸引カテーテルは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記ルーメン隔壁部が前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出して設けられている遠位側チューブと、前記ルーメン隔壁部が前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出せずに設けられている近位側チューブとを含んで前記カテーテルチューブが構成されており、前記遠位側チューブと前記近位側チューブとが、前記遠位側チューブの近位端部と前記近位側チューブの遠位端部とを接合した状態で互いに熱溶着されていることを特徴とする。
【0019】
上述したカテーテルチューブは、その遠位部分ではルーメン隔壁部が吸引ルーメンに突出している一方、近位部分ではルーメン隔壁部が突出せずに設けられているため、遠位部分と近位部分とでチューブの構成が相違している。この点本発明では、カテーテルチューブの製造に際し、まず遠位部分を構成する遠位側チューブと、近位部分を構成する近位側チューブとを個別に製造し、その後遠位側チューブと近位側チューブとを熱溶着により接合することでカテーテルチューブを製造できる。そのため、近位部分と遠位部分とでチューブ構成が相違する上述のカテーテルチューブを好適に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】吸引カテーテルの構成を示す概略全体側面図。
【図2】(a)がカテーテル本体の構成を示す縦断面図、(b)が同構成を示す側面図。
【図3】カテーテル本体の構成を示す横断面図であり、(a)が図2(a)のA−A線断面、(b)がB−B線断面、(c)がC−C線断面、(d)がD−D線断面を示す。
【図4】吸引カテーテルの製造手順を説明するための説明図。
【図5】他の実施形態におけるカテーテル本体を示す横断面図。
【図6】他の実施形態におけるカテーテル本体を示す横断面図。
【図7】他の実施形態におけるカテーテル本体を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、血栓を吸引するための吸引カテーテルについて具体化している。図1は、吸引カテーテルの構成を示す概略全体側面図である。
【0022】
図1に示すように、吸引カテーテル10は、1m〜2mの長さ寸法とされており、カテーテル本体11と、当該カテーテル本体11の近位端部(基端部)に取り付けられたハブ12とを備えている。カテーテル本体11は、吸引チューブ14と、当該吸引チューブ14の遠位端側に設けられたガイドワイヤチューブ15とを備え、これら各チューブ14,15が溶着により接合されることで形成されている。吸引チューブ14は、その内部に吸引ルーメン17を有しており、ガイドワイヤチューブ15は、その内部にガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメン18(図2及び図3参照)を有している。
【0023】
ハブ12は、その内部に吸引チューブ14の吸引ルーメン17に通じる流体通路12aを有している。ハブ12には、吸引具としてシリンジSが接続されており、このシリンジSを用いて吸引ルーメン17に負圧を付与することで、同ルーメン17を介して血栓の吸引等が可能となる。ちなみに、かかる吸引具としては、シリンジSの他に、電動式の真空ポンプ等が用いられる。
【0024】
次に、カテーテル本体11の構成について図2及び図3を用いて詳細に説明する。図2は、(a)がカテーテル本体11の構成を示す縦断面図、(b)が同構成を示す側面図である。図3は、カテーテル本体11の構成を示す横断面図であり、(a)が図2(a)のA−A線断面、(b)がB−B線断面、(c)がC−C線断面、(d)がD−D線断面を示す。ちなみに、縦断面はカテーテル本体11の長手方向(軸線方向)に平行な断面であり、横断面は同長手方向に直交する断面である。
【0025】
図2及び図3に示すように、カテーテル本体11は、上述したように吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とが溶着されてなるものとなっている。吸引チューブ14は、近位側吸引チューブ21とそれよりも遠位側に設けられた遠位側吸引チューブ22とを備え、それら各チューブ21,22同士が互いに溶着により接合されることで形成されている。なおここで、吸引チューブ14が第1チューブに相当し、ガイドワイヤチューブ15が第2チューブに相当する。また、近位側吸引チューブ21が第1近位管部に相当し、遠位側吸引チューブ22が第1遠位管部に相当する。
【0026】
なお、本明細書において、「溶着」とは、接合対象である各部材の材料同士が溶融することにより接合(溶着)されている場合だけでなく、接合対象となる各部材が熱収縮チューブにより被覆されて加熱される等することで、各部材のうち一方の部材が溶融しそれが他方の部材に接合されている場合を含む意味である。
【0027】
近位側吸引チューブ21は、吸引チューブ14においてその近位端部から遠位側に向けた所定の範囲を構成している。近位側吸引チューブ21は、管状をなしており、その内部に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔21aを有している。近位側吸引チューブ21は、合成樹脂を含む複数種類の素材が積層されてなる複層構造を有している。具体的には、近位側吸引チューブ21は、その遠位端部から近位側に向けた所定の範囲を構成しその外周側にガイドワイヤチューブ15が配置されるガイドチューブ配置領域24と、同領域24よりも近位側を構成しその外周側にガイドワイヤチューブ15が配置されないガイドチューブ非配置領域25とを有している。近位側吸引チューブ21は、ガイドチューブ非配置領域25では、内層27がテフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂、外層28がポリアミドエラストマ、中間層29(補強層に相当)が金属製の編組体31からなる3層構造(図3(d)参照)となっている。
【0028】
編組体31は、近位側吸引チューブ21を補強するための補強体であり、この編組体31を用いて形成されている中間層29は編組層となっている。編組体31は、図2(b)に示すように、ステンレス製の線材がメッシュ状に編み込まれることにより形成されている。編組体31における複数の線材の間には外層28の樹脂が入り込んでおり、その入り込んだ部分において内層27と溶着されている。なお、図2(a)及び図3では便宜上、中間層29を、編組体31の線材間の隙間が埋められた状態で示している。
【0029】
一方、ガイドチューブ配置領域24では、上記各層27〜29のうち外層28が設けられておらず内層27と中間層29とからなる2層構造(図3(c)参照)となっている。この場合、近位側吸引チューブ21の中間層29の外周側に後述する外層45が設けられることで、編組体31における複数の線材の間に外層45の樹脂が入り込み、その入り込んだ部分において内層27と溶着されている。
【0030】
遠位側吸引チューブ22は、ポリアミドエラストマにより管状に形成されており、単一層構造をなしている(図3(a)参照)。すなわち、遠位側吸引チューブ22は、近位側吸引チューブ21とは異なり、編組体31を有しておらず、そのため近位側吸引チューブ21よりも剛性が低く形成されている。遠位側吸引チューブ22は、その内部に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔22aを有している。この内腔22aは、その近位端側において近位側吸引チューブ21の内腔21aと連通しており、これら各内腔21a,22aによって吸引ルーメン17が形成されている。また、本実施形態では、これら各内腔21a,22aの径がほぼ同じとなっており、そのため吸引チューブ14の長手方向全域において吸引ルーメン17の径(ルーメン径)がほぼ一定となっている。但し、これら各内腔21a,22aの径は異なっていてもよく、つまり、内腔21aの径が内腔22aの径よりも大きくなっていても、又は小さくなっていてもよい。
【0031】
内腔22aの遠位端開口は、血栓等の異物を吸引ルーメン17に取り込むための吸引口33となっている。遠位側吸引チューブ22の遠位側端面は軸線方向に対して傾斜しており、その傾斜に沿って吸引口33が形成されている。この場合、吸引口33が軸線方向に直交する方向に沿って形成されている場合と比べ、吸引口33の開口面積を大きくすることができ、異物の吸引性能を高めることができる。
【0032】
図3(a)に示すように、遠位側吸引チューブ22において内腔22aを囲む周壁部37(ポリアミドエラストマからなる樹脂層)は、その厚みが周方向において異なるものとなっている。具体的には、周壁部37は、後述するようにガイドワイヤチューブ15が配設される部位では肉厚に形成された肉厚部37aとなっているのに対し、内腔22aを挟んで肉厚部37aとは反対側の部位では肉薄に形成された肉薄部37bとなっている。
【0033】
遠位側吸引チューブ22の近位端部は、近位側吸引チューブ21の遠位端部に対して溶着されている。遠位側吸引チューブ22の近位端側はそれ以外の部位に対して拡径された拡径部35となっており、その拡径部35の内側(内腔22a)には近位側吸引チューブ21の遠位端側が挿入されている。この挿入されている部分を以下、挿入部39という。そして、かかる挿入状態において、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とが溶着により接合されている。
【0034】
ここで、拡径部35における拡径は遠位側吸引チューブ22の伸縮性に基づいたものであり、遠位側吸引チューブ22が径方向に伸張されることにより拡径部35が形成されている。また、拡径部35では、周壁部37において肉薄部37bが内腔22aの軸線に対して径方向の外側に変位している一方、肉厚部37aは内腔22aの軸線に対して径方向に変位していない。そのため、遠位側吸引チューブ22の周壁部37において拡径部35とそれ以外の部位との境界部では、肉薄部37b側において段差部38が形成されている一方、肉厚部37a側ではかかる段差部が形成されていない。
【0035】
ガイドワイヤチューブ15は、ナイロン樹脂により管状に形成されており、その内部に長手方向全域に亘って延びるガイドワイヤルーメン18を有している。ガイドワイヤチューブ15は、吸引チューブ14の軸線方向において近位側吸引チューブ21及び遠位側吸引チューブ22の双方に跨って延びるように設けられている。また、ガイドワイヤチューブ15は、その一部が吸引チューブ14(遠位側吸引チューブ22)よりも遠位側に延出した状態で設けられている。
【0036】
ガイドワイヤチューブ15は、近位側吸引チューブ21に対してはその外周側に配設され、遠位側吸引チューブ22に対してはその内部(詳しくはその外周面よりも内側)に配設されている。具体的には、ガイドワイヤチューブ15は、遠位側吸引チューブ22に対しては同チューブ22の肉厚部37aを軸線方向に貫通するようにして設けられている(図3(a)参照)。かかるガイドワイヤチューブ15の配設状態において、同チューブ15のガイドワイヤルーメン18は吸引チューブ14の吸引ルーメン17と同方向に延びており、そのためこれら各ルーメン17,18は軸線方向に対して直交する方向に並んでいる。以下においては、これら各ルーメン17,18の並び方向を第1方向Xといい、第1方向X及び軸線方向のそれぞれに直交する方向を第2方向Yという。
【0037】
ガイドワイヤチューブ15は、軸線方向に分割されてなる近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを備える。これら各チューブ41,42はそれぞれその内側に長手方向全域に連続して延びる内腔41a,42aを有しており、これら各内腔41a,42aは互いに連通している。そして、これら各内腔41a,42aによってガイドワイヤルーメン18が形成されている。また、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とは同じ横断面を有している。各ガイドチューブ41,42はそれぞれ互いの軸線が同一直線上に位置するように、かつ、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置されており、その配置状態において当該端面同士が溶着により接合されている。なおここで、近位側ガイドチューブ41が第2近位管部に相当し、遠位側ガイドチューブ42が第2遠位管部に相当する。
【0038】
近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21に対して溶着により接合されている。近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21のガイドチューブ配置領域24における外周面(中間層29の外周面)に、同吸引チューブ21と同方向に延びる向きで配設されている。ここで、ガイドチューブ配置領域24の外周面が第2チューブ配置部に相当する。
【0039】
近位側ガイドチューブ41は、その軸線方向の長さ(全長)がガイドチューブ配置領域24の同方向の長さよりも短くなっており、その近位端部をガイドチューブ配置領域24の近位端部と位置合わせした状態で配置されている。この場合、近位側ガイドチューブ41に対して近位側吸引チューブ21(ガイドチューブ配置領域24)の一部が遠位側に延出しており、その延出した部分が遠位側吸引チューブ22の拡径部35に挿入される上記挿入部39となっている。
【0040】
図3(c)に示すように、ガイドチューブ配置領域24において近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とは外層45によって被覆されている。外層45は、ポリアミド樹脂により形成されており、近位側ガイドチューブ41及び近位側吸引チューブ21に対してそれぞれ溶着されている。これにより、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とがこの外層45を介して互いに溶着されている。
【0041】
外層45は、近位側吸引チューブ21の外周面に沿って形成されており、同チューブ21を外側から囲む層をなしている。外層45は、その厚みが周方向において異なるものとなっており、具体的には、近位側ガイドチューブ41が配置される側の部位では肉厚に形成された肉厚部45aとなっており、近位側吸引チューブ21を挟んで肉厚部45aとは反対側の部位では肉薄に形成された肉薄部45bとなっている。そして、近位側ガイドチューブ41は外層45において肉厚部45aに埋設されている。
【0042】
外層45の近位端側では、周方向において近位側ガイドチューブ41が配置されている側の部位が、ガイドチューブ非配置領域25における外層28まで延びており該外層28と溶着されている。そして、上記部位には、軸線方向に貫通する開口部56が形成されている。この開口部56は近位側ガイドチューブ41(ひいてはガイドワイヤチューブ15)の近位端開口に対応する位置に形成され、この開口部56を通じてガイドワイヤをガイドワイヤチューブ15のガイドワイヤルーメン18から引き出すことが可能となっている。
【0043】
なお、近位側吸引チューブ21のガイドチューブ配置領域24における上記挿入部39は外層45により被覆されておらず、その外周側には上述したように、遠位側吸引チューブ22が配置され溶着されている。そして、遠位側吸引チューブ22の近位端部と外層45の遠位端部とが互いの端面同士を突き合わせた状態で溶着されている。
【0044】
遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22に対して溶着により接合されている。遠位側ガイドチューブ42は、図3(a)に示すように、その一部が遠位側吸引チューブ22の周壁部37における肉厚部37aに埋設されており、その埋設状態で遠位側吸引チューブ22に溶着されている。この場合、遠位側ガイドチューブ42、詳しくは同チューブ42において内腔42aを囲む周壁部47において、その一部が遠位側吸引チューブ22に埋設されず非埋設部47aとなっており、その非埋設部47aが遠位側吸引チューブ22の内腔22aに一部突出して設けられている。この非埋設部47aによって遠位側吸引チューブ22の内腔22aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとが区画されている。また、かかる構成では、第1方向Xにおいて内腔22aの中心部P1(軸線位置)から遠位側ガイドチューブ42までの離間距離が、内腔22aの中心部P1から周壁部37(肉薄部37b)までの離間距離よりも小さくなっている。なお、遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22の外周面よりも内側に配置されており、同外周面からは突出していない。
【0045】
遠位側ガイドチューブ42は、その軸線方向の長さ(全長)が、遠位側吸引チューブ22の軸線方向の長さ(全長)よりも長くなっている。遠位側ガイドチューブ42は、その近位端部を遠位側吸引チューブ22の近位端部と位置合わせした状態で配置されており、その配置状態において遠位側ガイドチューブ42の一部が遠位側吸引チューブ22の遠位端部よりも遠位側に延出している。
【0046】
また、遠位側ガイドチューブ42は、その近位端側では、軸線方向において近位側吸引チューブ21と一部重複しており、その重複部位における外周面が近位側吸引チューブ21(詳しくは挿入部39)の外周面と当接している。そして、その当接状態において遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とは互いに溶着されている。具体的には、図3(b)に示すように、かかる重複部位では、遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とが共に遠位側吸引チューブ22の周壁部37により被覆された状態にあり、この周壁部37に対して遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とがそれぞれ溶着されている。すなわち、遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とは周壁部37を介して溶着されている。
【0047】
続いて、カテーテル本体11の寸法関係について説明する。カテーテル本体11の軸線方向(長手方向)において吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とが並設されている領域では、カテーテル本体11の横断面(軸線方向に直交する方向の断面)寸法について、第1方向Xの幅寸法W1が、第2方向Yの幅寸法W2よりも大きくなっている。したがって、カテーテル本体11は、両チューブ14,15の並設領域においては、その横断面が第1方向Xに長い楕円形状をなしている。
【0048】
具体的には、カテーテル本体11において、ガイドワイヤチューブ15(詳しくは遠位側ガイドチューブ42)が吸引チューブ14(詳しくは遠位側吸引チューブ22)に一部埋設されている遠位部分と、遠位部分よりも近位側でありガイドワイヤチューブ15(詳しくは近位側ガイドチューブ41)が吸引チューブ14(詳しくは近位側吸引チューブ21)の外側に配置されている近位部分とで、幅寸法の寸法比W1/W2を比較すると、遠位部分における寸法比W1/W2が、近位部分における寸法比率W1/W2よりも小さくなっている。したがって、本カテーテル本体11では、近位部分よりも遠位部分の方が真円に近い楕円形状となっている。
【0049】
上述した構成のカテーテル本体11は、その遠位側において吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが並設される部位を見ると、図3(a)と図3(c)とから明らかなように、各々異なる断面構造を有するものとなっており、図3(a)の断面を有する部位が「遠位側チューブ51」、図3(c)の断面を有する部位が「近位側チューブ52」となっている。この場合、遠位側チューブ51は、遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを有して構成され、近位側チューブ52は、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41と外層45とを有して構成されている。
【0050】
ここで、遠位側チューブ51では、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが遠位側ガイドチューブ42の周壁部47により仕切られており、この遠位側ガイドチューブ42の周壁部47が「ルーメン隔壁部」に相当する。そして、そのルーメン隔壁部(遠位側ガイドチューブ42の周壁部47)が、吸引ルーメン17(内腔22a)の中心部P1に向けて突出して設けられている。また、近位側チューブ52では、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)と近位側ガイドチューブ41の周壁部48とにより仕切られており、これら近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)と近位側ガイドチューブ41の周壁部48とが「ルーメン隔壁部」に相当する。そして、そのルーメン隔壁部(近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41の周壁部48)が、吸引ルーメン17(内腔21a)の中心部P1に向けて突出せずに設けられている。
【0051】
かかる構成では、吸引ルーメン17に対する各ガイドチューブ41,42の位置が異なるものとなる。すなわち、遠位側ガイドチューブ42と近位側ガイドチューブ41とは同軸に配置されているため、互いの内腔41a,42aの中心部P2が第1方向Xにおいて同位置にあるのに対して、遠位側吸引チューブ22の内腔22aの中心部P1(図3(a)参照)と近位側吸引チューブ21の内腔21aの中心部P1(図3(b)〜(d)参照)とは第1方向Xにおける位置が若干相違している。詳しくは、第1方向Xにおいて内腔22aの中心部P1が内腔21aの中心部P1よりもガイドワイヤルーメン18の中心部P2側に寄っている。このように、吸引ルーメン17に対する各ガイドチューブ41,42の位置が相違していることにより、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とでは、上記のとおり寸法比率W1/W2が異なるものとなっている。
【0052】
次に、吸引カテーテル10の製造手順について図4に基づいて説明する。なお、図4は吸引カテーテル10の製造手順を説明するための説明図である。
【0053】
まず図4(a)に示すように、遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを熱溶着により接合することで遠位側チューブ51を製造する遠位側チューブ製造工程を行う。この工程では、まず遠位側吸引チューブ22の内腔22aに遠位側ガイドチューブ42を、その外周面を遠位側吸引チューブ22の内周面に当接させた状態で配置する。この際、遠位側ガイドチューブ42の全長は遠位側吸引チューブ22よりも長くなっており、これら両チューブ22,42の近位端部(図の右端部)の端面同士を図示のとおり一致させることで、遠位側吸引チューブ22の遠位端部から遠位側ガイドチューブ42の一部が突出するようになっている。なお、遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22の内腔22aにおいて同チューブ22の遠位端が尖っている側に配置される。
【0054】
そして、この配置状態において遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを熱溶着により接合する。この熱溶着は、遠位側吸引チューブ22の内腔22aと遠位側ガイドチューブの内腔42aとにそれぞれ芯材としてマンドレルを挿入するとともに、各チューブ22,42の外側に熱収縮チューブを被せた状態で、同収縮チューブの外側からヒータにより熱を加えることで行う。これにより、遠位側チューブ51が製造される。なお、各内腔22a,42aに挿入されるマンドレルは各々の内腔22a,42aの径とほぼ同一の外径を有した金属製の棒材からなる。より詳しくは、内腔22aに挿入されるマンドレルについては同内腔22aに配置される遠位側ガイドチューブ42との干渉を回避すべく長手方向に沿った溝部が形成されている。
【0055】
上記の遠位側チューブ製造工程により、図3(a)に示す断面構造の遠位側チューブ51が得られることとなる。上記の溶着作業に伴い図3(a)の断面構造となることについて補足する。溶着前においては、遠位側吸引チューブ22は周方向に同一厚さの樹脂チューブであり、その内腔22a内に遠位側ガイドチューブ42とマンドレルとをセットした状態で遠位側吸引チューブ22を溶融させることにより、図3(a)に示すように、遠位側ガイドチューブ42を囲むようにして遠位側吸引チューブ22の溶融樹脂が回り込む。これにより、遠位側ガイドチューブ42の周りに肉厚部37aが形成され、遠位側ガイドチューブ42は、内腔22a側の一部を残してそれ以外が遠位側吸引チューブ22の周壁部37に埋設されることとなる。
【0056】
なお、遠位側ガイドチューブ42の溶融温度は遠位側吸引チューブ22の溶融温度よりも高くなっている。これは、熱溶着の接合強度の観点からすれば、各チューブ22,42の溶融温度は同じであるのが好ましいものの、遠位側ガイドチューブ42ではガイドワイヤの滑りを良くするために比較的硬質の材料が用いられており、それ故溶融温度が高いものとなっているからである。
【0057】
次に、図4(b)に示すように、近位側吸引チューブ21を製造する近位側吸引チューブ製造工程を行う。この工程では、まず内層27を構成する内管61の外周面に、複数の線材を螺旋状にかつ編組させて巻き付けることで編組体31を形成する。その後、編組体31の外周側を外層28を構成する外管62により被覆する。この外管62による被覆は内管61において遠位端部から近位側に向けた所定の範囲については行わないこととする。この所定の範囲は上述したガイドチューブ配置領域24に相当するものとなる。その後、内管61の外周面と外管62の内周面とを熱溶着により接合する。これにより、内層27と外層28との間に編組体31(中間層29)が介在されてなる近位側吸引チューブ21が製造される。そして、ガイドチューブ非配置領域25において近位側吸引チューブ21が図3(d)に示す断面構造となる。
【0058】
次に、図4(c)に示すように、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とを熱溶着により接合することで近位側チューブ52を製造する近位側チューブ製造工程を行う。この工程では、まず近位側吸引チューブ21のガイドチューブ配置領域24の外周面に近位側ガイドチューブ41を配置する。この際、近位側ガイドチューブ41を、その近位端部をガイドチューブ配置領域24の近位端部(すなわち近位側吸引チューブ21の外層28の遠位端部)と位置合わせした状態で配置する。ここで、近位側ガイドチューブ41の全長は、ガイドチューブ配置領域24の長さ(近位側吸引チューブ21の軸線方向の長さ)よりも短くなっている。そのため、ガイドチューブ配置領域24の外側に近位側ガイドチューブ41を配置した状態では、近位側吸引チューブ21の一部が近位側ガイドチューブ41よりも遠位側に延出し、その延出した部分が上述した挿入部39となる。
【0059】
続いて、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41との双方に対して外側からポリアミドエラストマからなるカバーチューブ54を被せる。これにより、カバーチューブ54の内側に近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが挿入された状態となる。具体的には、カバーチューブ54は、その遠位端部を近位側ガイドチューブ41の遠位端部と位置合わせされた状態で、かつ、その近位端側が近位側吸引チューブ21に若干(例えば1mm程度)被さる状態で、各チューブ21,41に対して被せられる。
【0060】
その後、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とを熱溶着により接合する。この熱溶着は、近位側吸引チューブ21の内腔21aと近位側ガイドチューブの内腔41aとにそれぞれマンドレルを挿入するとともに、各チューブ21,41に被せられたカバーチューブ54の外側にシリコン製の熱収縮チューブをさらに被せた状態で、同収縮チューブの外側からヒータにより熱を加えることで行う。これにより、カバーチューブ54が溶け出して各チューブ21,41が溶着され、近位側チューブ52が製造される。なお、この溶着に伴い、カバーチューブ54は上記外層45となる。
【0061】
上記の近位側チューブ製造工程により、図3(c)に示す断面構造の近位側チューブ52が得られることとなる。上記の溶着作業に伴い図3(c)の断面構造となることについて補足する。溶着前においては、カバーチューブ54は周方向に同一厚さの樹脂チューブであり、その内腔内に近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とマンドレルとをセットした状態でカバーチューブ54を溶融させることにより、図3(c)に示すように、近位側ガイドチューブ41を囲むようにしてカバーチューブ54の溶融樹脂が回り込む。これにより、溶着後において、近位側ガイドチューブ41の周りに肉厚部45aが形成され、近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)の外側において全てが外層45(図3(c)では近位側吸引チューブ21の周壁部)に埋設されることとなる。
【0062】
なお、近位側ガイドチューブ41の溶融温度はカバーチューブ54の溶融温度よりも高くなっている。これは、熱溶着の接合強度の観点からすれば、各チューブ41,54の溶融温度は同じであるのが好ましいものの、近位側ガイドチューブ41ではガイドワイヤの滑りを良くするために比較的硬質の材料が用いられており、それ故溶融温度が高いものとなっているからである。
【0063】
次に、図4(d)に示すように、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを接合するチューブ接合工程を行う。この工程では、まず、近位側チューブ52における近位側吸引チューブ21の挿入部39を遠位側チューブ51における遠位側吸引チューブ22の近位端部に挿入する。この挿入に際しては、まず遠位側吸引チューブ22の近位端側を治具等を用いて拡径し、その拡径部分(つまり拡径部35)の内側に近位側吸引チューブ21の挿入部39を挿入する。そして、この挿入は、近位側チューブ52の近位側ガイドチューブ41と遠位側チューブ51の遠位側ガイドチューブ42とが同軸となるように、かつ、互いの端面同士が突き合わせられた状態となるように行う。
【0064】
その後、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを熱溶着により接合する。この熱溶着は、近位側吸引チューブ21の内腔21aと遠位側吸引チューブ22の内腔22aとに跨るようにマンドレルを挿入するとともに近位側ガイドチューブ41の内腔41aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとに跨るようにマンドレルを挿入し、かつ、遠位側チューブ51と近位側チューブ52との重複部分を少なくとも含む所定部分に対して外側から熱収縮チューブを被せた状態で、同収縮チューブの外側からヒータにより熱を加えることで行う。これにより、近位側吸引チューブ21の遠位端側(挿入部39)と遠位側吸引チューブ22の近位端側(拡径部35)とが熱溶着されるとともに、遠位側吸引チューブ22の近位側端面と外層45の遠位側端面とが熱溶着され、吸引チューブ14が形成される。また、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とが熱溶着され、ガイドワイヤチューブ15が形成される。
【0065】
上記のチューブ接合工程により、遠位側チューブ51と近位側チューブ52との接合部分、詳しくは、遠位側チューブ51の遠位側吸引チューブ22が近位側チューブ52の近位側吸引チューブ21の外周側に被せられてそれら両者が重なり合う部分において、図3(b)に示す断面構造となる。このとき、その重なり合う部分では、遠位側チューブ51の遠位側ガイドチューブ42と近位側チューブ52の中間層29(編組体31)とが外周同士で接触し、その状態でそれら遠位側ガイドチューブ42と中間層29(編組体31)とが遠位側吸引チューブ22の周壁部37により一体化されている。
【0066】
その後、後工程として、カテーテル本体11にハブ12を連結するハブ連結工程等を行うことで、一連の製造工程が終了する。
【0067】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0068】
カテーテル本体11の軸線方向(長手方向)において、遠位側チューブ51では、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とを仕切るルーメン隔壁部(具体的には遠位側ガイドチューブ42の周壁部47)を吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出して設けたため、同チューブ51では、ルーメン隔壁部が吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出せずに設けられている場合と比べて、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが並ぶ第1方向Xの幅寸法W1、すなわち最大幅寸法を小さくすることができる。そのため、体内への挿入性の低下を抑制できる。その一方、近位側チューブ52では、ルーメン隔壁部(具体的には、近位側ガイドチューブ41の周壁部48及び近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29))を吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出せずに設けたため、同チューブ52では、ルーメン隔壁部により吸引ルーメン17の開口面積が狭められていない。そのため、吸引性能の低下が抑制されている。よって、この場合、体内への挿入性能の低下を抑制できるとともに、吸引性能の低下を抑制できる。
【0069】
カテーテル本体11の近位側チューブ52では、吸引ルーメン17を囲む周壁部(近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)及び外層45)に編組体31を埋設することにより中間層29(編組層)を形成し、遠位側チューブ51では、吸引ルーメン17を囲む周壁部37に編組層を形成しない構成とした。この場合、カテーテル本体11の近位側では剛性を高めることができる一方、遠位側では柔軟性を確保できる。ここで、かかる構成では、近位側チューブ52において吸引ルーメン17を囲む周壁部に編組体31が埋設されているため、ルーメン隔壁部を吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出させる構成とすることが困難であると考えられる。この点、上記の構成では、近位側チューブ52において編組層の外側にガイドワイヤルーメン18を配置し、編組層を有しない遠位側チューブ51においてルーメン隔壁部を吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出させる構成としている。この場合、編組層を有するカテーテル本体11において、体内への挿入性能の低下を抑制するとともに吸引性能の低下を抑制するという上述の効果を好適に得ることができる。
【0070】
カテーテル本体11の横断面における幅寸法の寸法比W1/W2について、遠位側チューブ51における寸法比W1/W2を、近位側チューブ52における寸法比W1/W2よりも小さくしたため、カテーテル本体11の横断面形状が遠位側チューブ51では近位側チューブ52よりも真円に近い形状となっている。この場合、カテーテル本体11の遠位側において、カテーテル本体11の屈曲性について、同本体11に第1方向Xへの曲げ力を作用させた場合の屈曲性と、第2方向Yへの曲げ力を作用させた場合の屈曲性との相違を小さくすることができる。そのため、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との二つのルーメンを有するカテーテル本体11について体内への挿入性を高めることができる。
【0071】
カテーテル本体11の遠位側チューブ51では、吸引チューブ14(遠位側吸引チューブ22)の周壁部37に遠位側ガイドチューブ42を埋設させ、その埋設状態で遠位側ガイドチューブ42を吸引ルーメン17の内側に突出させた。この場合、遠位側ガイドチューブ42を周壁部37に埋設しない状態で吸引ルーメン17内に配置する場合と比べて、周壁部37に対する遠位側ガイドチューブ42(ひいてはガイドワイヤチューブ15)の接合強度を高めることができる。これにより、ガイドワイヤチューブ15へのガイドワイヤの挿通時にガイドワイヤチューブ15に対して過剰な負荷が加わった場合でも、同チューブ15が周壁部37からはがれるといった不都合が生じるのを抑制できる。
【0072】
カテーテル本体11を、ルーメン隔壁部が吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出して設けられている遠位側チューブ51と、ルーメン隔壁部が吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出せずに設けられている近位側チューブ52とを備えて構成し、それら各チューブ51,52を互いの端部同士を熱溶着することにより接合した。この場合、カテーテル本体11の製造に際し、まず遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを個別に製造し、その後遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを熱溶着により接合することでカテーテル本体11を製造できる。これにより、近位部分と遠位部分とで構成の相違する上述のカテーテル本体11を好適に製造できる。
【0073】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、吸引ルーメン17の中心部に向けてルーメン隔壁部を突出させて設ける構成として、図3(a)に示す構成を用いたが、これを変更してもよい。例えば、遠位側ガイドチューブ42の周壁部47において、遠位側吸引チューブ22に埋設される部分と埋設されない部分(非埋設部47a)との比率を図3(a)とは異なるものとし、図5(a)に示すように、遠位側ガイドチューブ42の周壁部47において、周方向の半分以上を非埋設部47aとしてもよい。この場合、非埋設部47aが大きくなるほど、吸引ルーメン17の中心部P1に向けて突出する突出量が大きくなり、遠位側吸引チューブ22の外周部で見れば第1方向Xの幅寸法W1が小さくなり真円に近づくことになる。つまり、寸法比W1/W2が1に近くなる。
【0074】
また、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とを仕切るルーメン隔壁部を、遠位側ガイドチューブ42の周壁部47だけで構成するのではなく、図5(b)に示すように、遠位側吸引チューブ22(チューブ溶着時に溶融した遠位側吸引チューブ22の溶融樹脂)と周壁部47とによりルーメン隔壁部を構成してもよい。この場合、遠位側ガイドチューブ42が全て遠位側吸引チューブ22内に埋設される構成としつつも、吸引ルーメン17の中心部に向けてルーメン隔壁部が突出した構成となる。
【0075】
(2)上記実施形態では、カテーテル本体11において吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とが並設されている領域(並設領域)における第1方向Xの幅寸法W1について、同領域において遠位部分(遠位側チューブ51)よりも近位部分(近位側チューブ52)の方を小さくしたが、これを変更し、遠位部分よりも近位部分の方を小さくしてもよいし、遠位部分と近位部分とで同じとしてもよい。
【0076】
(3)上記実施形態では、ガイドワイヤチューブ15において近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを同軸に配置したが、これを変更し、これら各チューブ41,42の中心部P2が第1方向Xにおいて若干異なる位置となるように各チューブ41,42を配置してもよい。また、上記実施形態では、吸引チューブ14において近位側吸引チューブ21の中心部P1と遠位側吸引チューブ22の中心部P1とが第1方向Xにおいて若干異なる位置となるようにそれら各チューブ21,22を配置したが、これを変更し、各チューブ21,22を同軸に配置してもよい。
【0077】
(4)遠位側チューブ51及び近位側チューブ52の少なくともいずれかを吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との双方を有する単一のチューブとして形成してもよい。例えば図6(a)に示す遠位側チューブ65は、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18と(詳しくは2つの内腔)を有する単一のチューブとして形成されている。また、図6(b)に示す近位側チューブ66は、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18と(詳しくは2つの内腔)を有する単一のチューブとして形成されている。これらのチューブ65,66は、例えば押し出し成形により形成することができる。
【0078】
(5)近位側吸引チューブ21において、吸引ルーメン17を囲む周壁部に設けられる補強体として、編組体以外を用いることも可能である。例えば、近位側吸引チューブ21の周壁部に、遠位側吸引チューブ22の樹脂材料(ポリアミドエラストマ)よりも硬い(剛性の高い)樹脂材料を用いてなる高剛性樹脂体を設ける構成であってもよい。この場合、近位側吸引チューブ21の周壁部に高剛性樹脂体を埋設することで補強層を形成する。
【0079】
(6)近位側チューブ52において近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが並設されている領域における横断面形状、具体的には外層45の横断面形状は必ずしも図3(c)に示すような楕円形状に限ることはない。例えば図7(a)に示す外層45は、(吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが並ぶ)第1方向Xにおいて近位側ガイドチューブ41側の部位が、近位側吸引チューブ21側から近位側ガイドチューブ41側に向かって先細りされた形状となっている。また、図7(b)に示す外層45は、その外周面が、外周方向において近位側吸引チューブ21(中間層29)の外周面と近位側ガイドチューブ41の外周面とに沿って形成されている。この場合、外層45の肉厚が外周方向において比較的均一なものとされている。要するに、外層45により近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが被覆されていれば、外層45の断面形状は任意としてよい。
【0080】
(7)上記実施形態では、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22との接合、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42との接合、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41との接合、及び遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42との接合のそれぞれを溶着により行ったが、これらの接合を接着剤や溶剤を用いた接着により行ってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…吸引カテーテル、11…カテーテル本体、14…吸引チューブ、15…ガイドワイヤチューブ、17…吸引ルーメン、18…ガイドワイヤルーメン、21…近位側吸引チューブ、22…遠位側吸引チューブ、41…近位側ガイドチューブ、42…遠位側ガイドチューブ、51…遠位側チューブ、52…近位側チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物を吸引するための吸引ルーメンと、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメンとを有するカテーテルチューブを備える吸引カテーテルにおいて、
前記カテーテルチューブの軸線方向において遠位端部を含む遠位部分とそれよりも近位側である近位部分とのうち前記遠位部分では、前記吸引ルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとを仕切るルーメン隔壁部が、前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出して設けられ、前記近位部分では、前記ルーメン隔壁部が前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出せずに設けられていることを特徴とする吸引カテーテル。
【請求項2】
前記カテーテルチューブにおいて前記近位部分には、前記吸引ルーメンを囲む周壁部に補強体を埋設することにより補強層が形成されており、前記遠位部分には、前記周壁部に前記補強層が形成されておらず、
前記近位部分では、前記補強層の外側に前記ガイドワイヤルーメンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記カテーテルチューブの軸線方向に直交する方向の断面である横断面において、前記吸引ルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとが並ぶ第1方向における前記カテーテルチューブの幅寸法をW1とし、前記第1方向と直交する方向における前記カテーテルチューブの幅寸法をW2とした場合に、前記遠位部分における寸法比W1/W2が、前記近位部分における寸法比W1/W2よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記カテーテルチューブは、前記吸引ルーメンを囲む周壁部に一部が埋設されてなるガイドワイヤチューブを有し、該ガイドワイヤチューブの内腔により前記ガイドワイヤルーメンが形成されており、
前記遠位部分では、前記ガイドワイヤチューブが前記吸引ルーメンの内側に突出しており、前記近位部分では、前記ガイドワイヤチューブが前記吸引ルーメンの内側に突出していないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記ルーメン隔壁部が前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出して設けられている遠位側チューブと、前記ルーメン隔壁部が前記吸引ルーメンの中心部に向けて突出せずに設けられている近位側チューブとを含んで前記カテーテルチューブが構成されており、
前記遠位側チューブと前記近位側チューブとが、前記遠位側チューブの近位端部と前記近位側チューブの遠位端部とを接合した状態で互いに熱溶着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸引カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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