説明

吸引式噴射器

【課題】吸引式噴射器において、噴射器の重量バランスを良好になし、被噴射物容器を比較的大きくしても持ち易く使用しやすいものとする。
【解決手段】噴射機構部31と、噴射ボンベ21と、被噴射物収納室15とを備え、噴射機構部31は、噴射ボンベ21のガスを噴出させることにより被噴射物収納室15の被噴射物を吸引して噴射させる。ケーシング11の上端には、上記の噴射機構部31が設けられる。ケーシング11は、縦方向に伸びる筒状をなし、この筒状の内部空間が上記の噴射ボンベ21を縦方向に収納するボンベ収納空間14とされると共に、噴射ボンベ収納空間14の横に並べて被噴射物収納室15が縦方向に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、吸引式噴射器に関するもである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体の噴射器は次の3種のタイブに大別される。第1のタイプは、エアゾール容器に代表されるもので、噴射ガスと被噴射物とを同一の圧力容器内に収納して、噴射ガスの噴出と共に被噴射物を霧状やムース状に吐出させるタイプである。第2のタイプは、圧力容器を2重容器として、内側の容器を柔軟な容器とし、その内部に被噴射物を収納する一方、外側に高圧ガスを収納することにより、内側の柔軟容器を加圧して、その圧力により被噴射物を噴射するようにしたものである。第3のタイプは、噴射機構部に接続された噴射ボンベと、噴射ボンベとは別個に噴射機構部に接続された被噴射物収納室とを備え、噴射ボンベのガスを噴出させることにより被噴射物収納室の被噴射物を吸引して噴射させる吸引式噴射器である。この吸引式噴射器は、被噴射物と噴射ガスとが別容器に収容されているため、被噴射物と噴射ガスとの相溶性や噴射ガスによる被噴射物の変質などを考慮する必要がないという利点や、被噴射物収納室を耐圧容器とする必要がなく、その材質や設計の自由度が高いという利点があるが、第1のエアゾール容器ほど多用されていないのが現状である。本願発明はこの第3の吸引式噴射器の改良を提案し、その有効活用を図らんとするものである。
【0003】
吸引式噴射器としては、特許文献1〜3に示すものが提案されている。特許文献1に記載の噴射器は、噴射ボンベと被噴射物(塗料)を収納した被噴射物容器とを、完全に別体に構成したものであり、それぞれを噴射機構の下部に取り付ける。使用者は、噴射ボンベを掴んで噴射機構の操作部を押し下げ操作して、噴射を行う。ところが、この噴射器にあっては、噴射ボンベの前方に被噴射物容器を配置してあるため、被噴射物容器をあまり大きく重くすると、持った時の重心が前方にかかったり、被噴射物容器が邪魔になったりして、操作性が悪くなってしまう。
【0004】
特許文献2に記載の噴射器は、噴射ボンベであるエアゾール容器の噴射機構(エアゾールヘッド)に被噴射物の収納室を設けるもので、収納室の大きさがエアゾールヘッドの大きさの制限を受けて、あまり大きなものを使用することができず、無理矢理大きなものを設計したとしても、全体の重量バランスが上方に偏り、設置の安定性や操作性が悪くなってしまう。
【0005】
特許文献3に記載の噴射器は、噴射ボンベの下部に被噴射物容器を設けるもので、噴射機構から被噴射物容器までをつなぐチューブを、圧力ボンベの横を通して、圧力ボンベの下方にまで導く必要があり、構造が複雑になってしまう。
また、これらの特許文献に記載の噴射器にあっては、被噴射物容器を封鎖するための手段を備えておらず、輸送時に被噴射物容器から被噴射物が漏れ出してしまうおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−305243号公報
【特許文献2】特開平11−169759号公報(第3図)
【特許文献3】実公平7−53734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明は、噴射機構部と、この噴射機構部に接続された噴射ボンベと、噴射ボンベとは別個に噴射機構部に接続された被噴射物収納室とを備え、噴射機構部は、噴射ボンベのガスを噴出させることにより被噴射物収納室の被噴射物を吸引して噴射させるものである吸引式噴射器において、噴射器の重量バランスを良好になし、被噴射物容器を比較的大きくしても持ち易く使用しやすいものとすることを目的とする。また本願発明の他の目的は、長いチューブを用いずとも被噴射物容器と噴射機構部とを接続でき、簡単な構成で組立も簡単に行うことができる吸引式噴射器を提供せんとするものである。本願発明のさらに他の目的は、輸送時などに被噴射物容器からの液漏れを有効に防止し得る吸引式噴射器を提供せんとするものである。本願発明のまたさらに他の目的は、使用終了後の廃棄時などにおいて、噴射ボンベ内の残ガスを簡単に排出処理できるようにした吸引式噴射器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、噴射機構部と、この噴射機構部に接続された噴射ボンベと、噴射ボンベとは別個に噴射機構部に接続された被噴射物収納室とを備え、噴射機構部は、噴射ボンベのガスを噴出させることにより被噴射物収納室の被噴射物を吸引して噴射させるものである吸引式噴射器において、ケーシングの上端に上記の噴射機構部が設けられ、ケーシングは、縦方向に伸びる筒状をなし、この筒状の内部空間が上記の噴射ボンベを縦方向に収納するボンベ収納空間とされると共に、噴射ボンベ収納空間の横に並べて被噴射物収納室が縦方向に形成されたものであり、噴射機構部は、その下部に噴射ボンベに対する接続部と被噴射物収納室に対する接続部とを備えたことを特徴とする吸引式噴射器を提供する。
上記のケーシングは、内周壁と外周壁とを備えた内外2重の筒状の容器であり、内周壁で囲まれた空間が上記のボンベ収納空間を構成し、内周壁と外周壁との間の空間が上記の被噴射物収納室を構成するものとして実施できる。
また、上記のケーシングは、外周壁を備えた一重の筒状の容器であり、この容器の外周壁で囲まれた内部空間が上記のボンベ収納空間と上記の被噴射物収納室とを兼用するものであり、この内部空間に、この内部空間の内径よりも外径が小さな噴射ボンベが収納されると共に、噴射ボンベの外壁とケーシングの外周壁との間の空間が被噴射物収納室となるものとすることができる。
さらに、噴射ボンベは、噴射口を有するステムと、ステムに対する押圧によって開弁する開閉弁を備え、ボンベ収納空間の下端に底部が形成され、使用済の噴射ボンベを底部の外側から押し付けて噴射ボンベ内の残ガスをボンベ収納空間内に吐出させることができる残ガス処理部が、この底部に設けられたものとして実施しできる。
さらにまた、噴射ボンベは、噴射口を有するステムと、ステムに対する押圧によって開弁する開閉弁を備え、噴射機構部は、噴射ボンベのステムに接続されるボンベ接続部と、被噴射物収納室に接続される被噴射物用接続部と、被噴射物収納室に空気を導入する空気用開閉部と、人が噴射のための操作をなす操作部とを備え、被噴射物用接続部と空気用開閉部とにそれぞれ開閉弁が設けられ、操作部の操作により、被噴射物用接続部と空気用開閉部との開閉弁を開くと共にステムを押圧するものとして実施し得る。
【発明の効果】
【0009】
本願発明にあっては、ケーシングの上端に上記の噴射機構部が設けられ、ケーシングは、縦方向に伸びる筒状をなし、この筒状の内部空間が上記の噴射ボンベを縦方向に収納するボンベ収納空間とされると共に、噴射ボンベ収納空間の横に並べて被噴射物収納室が縦方向に形成されたものであり、噴射機構部は、その下部に噴射ボンベに対する接続部と被噴射物収納室に対する接続部とを備えたものであるため、噴射器全体の重量バランスが良好であり、被噴射物容器を比較的大きくしても持ち易く操作性が高い吸引式噴射器を提供することができたものである。
また、長いチューブを用いずとも被噴射物容器と噴射機構部とを接続でき、簡単な構成で組立も簡単に行うことができる。
さらに、噴射ボンベ内の残ガスをボンベ収納空間内に吐出させることができる残ガス処理部をケーシングの底部に設けることにより、使用終了後の廃棄時などにおいて、噴射ボンベ内の残ガスを簡単に排出処理できる。
またさらに、被噴射物用接続部と空気用開閉部とにそれぞれ開閉弁が設けられ、操作部の操作により、被噴射物用接続部と空気用開閉部との開閉弁を開くと共にステムを押圧することによって、輸送時などに被噴射物容器からの液漏れを有効に防止しできると共に、使用時に操作部を操作するだけで、これらの開閉弁が開いて円滑に内容液を吸引噴射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
図1(A)は本願発明の実施の形態に係る吸引式噴射器の断面図であり、(B)は同要部正面図である。図2は同吸引式噴射器の噴射状態を示す要部断面図である。図3は同吸引式噴射器の残ガス処理時の状態を示す断面図である。
【0011】
この噴射器は、ケーシング11と、ケーシング11内に収容された噴射ボンベ21と、ケーシング11の上端に設けられた噴射機構部31とを備える。
【0012】
まず噴射ボンベ21から説明すると、噴射用のガスが収納されたもので、このガスとしては、DME、LPG、弗化炭化水素等の液化ガスや、窒素、炭酸ガス、笑気ガス、空気等の圧縮ガスの一種又は2種以上を混合して用いる事ができる。その内圧は、エアゾール製品として一般的な圧力を有するものや、それ以上高圧の圧縮ガスとしてもよく、その噴射によって、後述の被噴射物収納室15内の被噴射物を吸引して噴射させることができるものであれば、その種類や圧力は問わない。また、噴射ボンベ21には、噴射ガスと併用して、薬液などの被噴射物を収納することもできる。この噴射ボンベ21に収納される被噴射物は、噴射ガスと共にボンベ内で保管可能であると共に噴射ガスと共に噴射ボンベから噴射されることを条件に適宜選択して用いることができ、具体的には、後述の被噴射物収納室15に収納される被噴射物と同等のものを利用できる。より具体的な利用方法としては、2液性の薬剤(発熱剤、塗料、接着剤、染毛剤など)の一方を噴射ボンベ21に収納し他方を被噴射物収納室15に収納することを例示できる。
【0013】
噴射ボンベ21はステム22を上端に備えており、このステム22の上端には噴射ボンベ21の内部に連通する噴射口(図示せず)が形成されている。噴射ボンベ21の内部には、ステム22に対する押圧(押し下げや傾斜)によって開弁する開閉弁(図示せず)を備えており、ステム22を押し下げたり、傾けることによって、弁が開き、内部のガスがステム22の噴射口から噴射する。この噴射ボンベ21の材質は、内部のガスの圧力によって金属、合成樹脂などの適宜材質のものを選択して用いる事が出来る。また、この例では、噴射ボンベ21の上端寄りに、他の部分よりも外径が小さくなったくびれ部分23が形成されている。
【0014】
次に、ケーシング11は、内周壁12と外周壁13とを備えた内外2重の円筒状の容器である。この内周壁12は、円筒状をなすもので、内周壁12によって囲まれた空間が上記の噴射ボンベ21を収容するためのボンベ収納空間14を構成する。このボンベ収納空間14は、横断面が筒状の空間で、上端は開放されているが、噴射機構部31が取り付けられることによって閉ざされる。ボンベ収納空間14の底部16は、内周壁12間に底板を設けることによって形成されている。この底部16は、ボンベ収納空間14内に噴射ボンベ21を縦方向に収納した際に、その上端のステム22が噴射機構部31に固定できる位置に形成されている。また、この底部16には、図3に示すように、使用済の噴射ボンベ21を底部16の外側から押し付けて噴射ボンベ内の残ガスをボンベ収納空間14内に吐出させることができる残ガス処理部が設けられている。具体的には、底部16の外側には、噴射ボンベ21を挿入できる凹部17が形成され、凹部17内にはステム22の噴射口と略同じ大きさの開口18が形成されている。従って、使用済み噴射ボンベ21を凹部17に差し込むことによって、ステム22が押圧されて、残ガスがステム22の噴射口から開口18を経てボンベ収納空間14内に吐出させられ、これにより、安全に廃棄処分をなすことができる。その際、噴射ボンベ21(この例ではくびれ部分23)に係止できる係止部19をケーシング11に設けておき、係止部19にボンベ収納空間14が係止した状態で、ステム22が底部16によって押圧される位置に係止部19を設けておくことによって、手を噴射ボンベ21から離しておいても、残ガスを吐出させることができる。
【0015】
このケーシング11の内周壁12と外周壁13との間の空間が被噴射物収納室15を構成する。この被噴射物収納室15は、横断面が環状の空間で、上端は開放されているが、噴射機構部31が取り付けられることによって液密に閉ざされる。なお、その際、液密性を保つために、パッキンを内周壁12、外周壁13の上端に設けるか、噴射機構部31の下端に設けるかしておくことが望ましい。被噴射物収納室15の下端には、環状の底部が設けられ液密に閉じられている。具体的には、内周壁12の下端と外周壁13の下端とを繋げた状態に一体成形しておくか、場合によっては接合することによって閉じられている。被噴射物収納室15内に収納される被噴射物は、噴射ガスの噴射によって吸引され得ることを条件に自由に選定して実施することができ、芳香剤、消臭剤、洗浄剤などの液状の日用品類、化粧品類、医薬品、塗料、インキ、アルコール、水などの液状の流動体のほか、ナイロンパウダーに代表される合成樹脂製パウダーや、シリカなどの微粉末、シラスバルーン等の中空球体や多孔質体等々、全体として流動性を備えた粉粒体を例示できる。
【0016】
以上、この例では、ボンベ収納空間14の横に並べて被噴射物収納室15が縦方向に形成されたものであり、より詳しくは、環状(円筒状)に配位された被噴射物収納室15の内側(中心)にボンベ収納空間14形成され、このボンベ収納空間14の中に縦方向に噴射ボンベ21が配位されるものである。ボンベ収納空間14と被噴射物収納室15の上端は略同じ高さとされており、ボンベ収納空間14と被噴射物収納室15の上部に噴射機構部31が設けられる。
【0017】
この噴射機構部31は、この例では、キャップ32内に組付けられている。このキャップ32は、下端が開放された椀状をなしており、その下端には、ケーシング11に対する固定部33が設けられている。固定の方法は適宜選択すればよいが、この例では、固定部33は、内周壁12の上端に嵌合又は螺合によって着脱可能に取り付けられるものである。またこの例では、ケーシング11の被噴射物収納室15の上端は開放されているため、これを閉じるための被噴射物収納室用の蓋34がキャップ32の下部に設けられている。
【0018】
噴射機構部31は、人が噴射のための操作をなす操作部35と、この操作に基づき噴射のための動きをなす作動部36とを備える。操作部35は、その前端が、軸支部分37としてキャップ32に回動可能に軸支されており、その後端の上面が、人が下方に押圧するための押圧部分38となっている。軸支部分37と押圧部分38との間の下面には、作動部36に対する押し下げ部分39が形成されている。従って、人が押圧部分38を下方に押圧すると、操作部35全体が軸支部分37を中心として、下方に回動して、押し下げ部分39が作動部36を下方に押圧する。作動部36は、その下部に、噴射ボンベ21のステム22と嵌合するボンベ接続部40を備える。作動部36が下方に下がると、ボンベ接続部40に嵌合したステム22が下方に押し下げられ、噴射ボンベ21の内部の開閉弁が開き、噴射ガスが吐出して、ボンベ接続部40に流入する。このボンベ接続部40は、前方に伸ばされてその先端に噴射ノズル41が取り付けられている。噴射ノズル41は、噴射ガスの流量を絞り流速を高めるための縮径部42と、その先端側に設けられた被噴射物の合流部43と、合流部43の先端に設けられた噴射ガスと被噴射物との混合流を噴射する噴射口44とを備える。ここで、噴射口44の内径(流路面積)は、縮径部42の内径(流路面積)よりも大きいことが望ましく、より望ましくは縮径部42の内径の2倍以上とする。また合流部43の内径(流路面積)は、噴射口44の内径及び縮径部42の内径よりも大きいことが望ましい。
【0019】
合流部43には、被噴射物収納室15に接続される被噴射物用接続部45の上端が導通している。この被噴射物用接続部45の下端は、被噴射物収納室用の蓋34に設けられた接続孔46を介して被噴射物収納室15に導通する。また、被噴射物用接続部45には、閉鎖用の弁部材として機能するOリング47が設けられており、このOリング47によって、常時は被噴射物収納室15は液密状態で閉じており、操作部35の操作によって、作動部36が押し下げられた時にのみ、被噴射物用接続部45と被噴射物収納室15とが導通する。詳しくは、被噴射物用接続部45の下部は閉じられており、この下部にOリング47が設けられている。そして、このOリング47の上部に横方向に開口する連通孔48が形成され、作動部36、被噴射物用接続部45が上方位置にあるときは、Oリング47が接続孔46の内壁との間で液密性を保ち、作動部36、被噴射物用接続部45が下方位置に下がった際に、連通孔48が接続孔46よりも下方に下がりに、被噴射物用接続部45が被噴射物収納室15と連通する。なお、接続孔46にはチューブ49が接続されており、このチューブ49は、被噴射物収納室15の底の被噴射物もうまく吸い上げることができるように、その下端が被噴射物収納室15の底部付近にまで伸ばされている。なお、被噴射物用接続部45の合流部43への開口面積は、縮径部42の内径(流路面積)よりも大きいことが望ましい。
【0020】
次に、作動部36の後部には、空気用開閉部50が下方に向けて設けられており、この空気用開閉部50の下部の周囲には弁機能を果たすOリング52が設けられている。他方被噴射物収納室用の蓋34には、この空気用開閉部50が摺動可能に挿通される空気用孔51が形成されており、作動部36が上方位置にあるときは、Oリング52によって、空気用開閉部50と空気用孔51との間の気密性が保たれている。そして、作動部36が下方位置にあるときは、Oリング52が空気用孔51よりも下方に位置し、空気用開閉部50と空気用孔51との間の隙間から空気が導通可能となる。
【0021】
以上の構成により、操作部35の操作で作動部36が下がると、噴射ボンベ21の噴射ガスがステム22の噴射孔から吐出され、ボンベ接続部40、縮径部42、合流部43を経て、噴射口44から噴出すると同時に、作動部36の下降に伴い、被噴射物用接続部45の弁が開き、被噴射物収納室15が、チューブ49、被噴射物用接続部45を介して、合流部43に導通する。そして、この噴射口44の噴射に伴い、合流部43内が負圧となり、被噴射物用接続部45、チューブ49を介して、被噴射物収納室15内の被噴射物が吸引され、噴射ガスと共に噴射口44から噴射される。その際、作動部36の下降に伴い、空気用開閉部50の弁が開くため、被噴射物収納室15内は大気圧となり、良好な被噴射物の吸引噴射を継続して行うことができる。
【0022】
次に、操作部35の押圧部分38から人が手を離すと、ステム22を上方に付勢している噴射ボンベ21内の付勢手段(図示せず)によって、操作部35が上方位置まで戻り、噴射ガスの噴射が停止されると共に、被噴射物用接続部45、空気用開閉部50の弁が閉じて、被噴射物は液密及び気密状態に戻り、これにより、運搬に際しても、被噴射物収納室15内の液が漏れ出るおそれがない。なお、この例では、操作部35は下方に押し下げるものとしているが、横に押すものや、持ち上げるものなど、適宜変更し得る。また、噴射機構の細部の構造は、特許文献1〜3に示したものなど、従来の吸引式噴射器の構造など、噴射ガスの噴射に伴い被噴射物を噴射できることを条件に適宜変更して実施することができる。このように、噴射ボンベ21と被噴射物収納室15のそれぞれの上端が、ケーシング11の上部にまで達するように構成することによって、操作部35の1回の操作によって、被噴射物用接続部45と空気用開閉部50の双方の弁を開閉させる機構を簡単な構造によって実現できる。特に、空気用開閉部50の弁を、被噴射物収納室用の蓋34に設けておくことによって、ケーシング11にキャップ32を装着するだけで、被噴射物収納室15に開閉弁付きの空気用開閉部50を設けることができる。
【0023】
さらに、ケーシング11とキャップ32(噴射機構部31)とは、消費者において取り外し不能に固定してもよいが、着脱可能とすることによって、噴射ボンベ21を交換可能としてもよく、被噴射物収納室15内に被噴射物を追加して使用できるようにしてもよい。また、廃棄に際しては、噴射ボンベ21を取り出して、前述の方法で残ガスを処理した後、分別廃棄することができる。なお、底部16のみを着脱可能として実施することもできる。被噴射物収納室15は、1室として実施しているが、半径方向などに分割して、2室以上を設けることもできる。この場合、被噴射物用接続部45も複数となり、複数種類の被噴射物を合流部43やその手前にて合流させるものでもよく、或いは、開閉弁や切替弁を取り付けておくことによって、複数種類の被噴射物を選択的に用いることもできる。
【0024】
さらに、図4に示すように、ケーシング11について、先の例の内周壁12を設けない構造とすることもできる。即ち、外周壁13のみを備えた一重の筒状の容器とし、この外周壁13で囲まれた内部空間がボンベ収納空間14と被噴射物収納室15とを兼用するものとする。この内部空間に収容される噴射ボンベ21の外径は、外周壁13の内径よりも小さなものとされ、噴射ボンベ21の外壁とケーシング11(外周壁13)の内面壁との間の空間が被噴射物収納室となる。なお、その際、先の例で底部16に設けられていた開口18は、形成しないようにするか、或いは開閉弁などによって、内部空間の液密性を保つことができるようにする。また噴射ボンベ21の上部と外周壁13の上部との間も、液密性を維持するにように閉じておく必要がある。
【0025】
また、被噴射物用接続部45に設けられた弁構造についても、常時は閉じていると共に操作部の操作に基づき開くものであれば、種々の弁構造に変更して実施することができる。たとえば、図5に示すようなものを採用することができる。これは、被噴射物収納室用の蓋34に弁箱61を設け、弁箱61の上端にラバーなどの弾性変形可能なシール材62を設け、シール材62の下方に有底筒状の弁体63を上下に摺動可能に配位し、この弁体63をスプリング64などによって上方に付勢することにより、弁体63の上端とシール材62との間で液封を行うものである。そして、先の例と同様、連通孔48を下端に有する管状の被噴射物用接続部45を、シール材62を貫いて上方から弁体63の底に当接させる。弁箱61の下端は開放されたものとし、前述のチューブ49を接続する。これにより、常時は、図5の左半に示すように、弁体63の上端とシール材62との間で液封を行う。一方、図5の右半に示すように、操作部35の操作によって被噴射物用接続部45が押し下げられると、弁体63がスプリング64の付勢に抗して開き、チューブ49、弁箱61内の下部空間、弁箱61と弁体63との間の空間、弁箱61の上部空間、弁体63とシール材62との間の空間、弁体63の内部空間、連通孔48、被噴射物用接続部45の順に被噴射物が導通可能となるものである。
この弁構造は、被噴射物用接続部45の構造のほか、空気用開閉部50の弁構造として実施することもできる。
【0026】
以上、この吸引式噴射器にあっては、外観上、通常のエアゾール噴射器と同等の外観を形成することができ、重量バランスが良好で、使い勝手が良いものとすることができる。また、ケーシングは円筒状に限るものではなく、角柱状などの適宜形状に変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)は本願発明の実施の形態に係る吸引式噴射器の断面図であり、(B)は同要部正面図である。
【図2】同吸引式噴射器の噴射状態を示す要部断面図である。
【図3】は同吸引式噴射器の残ガス処理時の状態を示す断面図である。
【図4】他の実施の形態に係る吸引式噴射器の断面図である。
【図5】さらに他の実施の形態に係る吸引式噴射器の要部断面図である。
【符号の説明】
【0028】
11 ケーシング
12 内周壁
13 外周壁
14 ボンベ収納空間
15 被噴射物収納室
21 噴射ボンベ
22 ステム
31 噴射機構部
32 キャップ
35 操作部
36 作動部
40 ボンベ接続部
41 噴射ノズル
45 被噴射物用接続部
50 空気用開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射機構部と、この噴射機構部に接続された噴射ボンベと、噴射ボンベとは別個に噴射機構部に接続された被噴射物収納室とを備え、噴射機構部は、噴射ボンベのガスを噴出させることにより被噴射物収納室の被噴射物を吸引して噴射させるものである吸引式噴射器において、
ケーシングの上端に上記の噴射機構部が設けられ、
ケーシングは、縦方向に伸びる筒状をなし、この筒状の内部空間が上記の噴射ボンベを縦方向に収納するボンベ収納空間とされると共に、噴射ボンベ収納空間の横に並べて被噴射物収納室が縦方向に形成されたものであり、
噴射機構部は、その下部に噴射ボンベに対する接続部と被噴射物収納室に対する接続部とを備えたことを特徴とする吸引式噴射器。
【請求項2】
上記のケーシングは、内周壁と外周壁とを備えた内外2重の筒状の容器であり、内周壁で囲まれた空間が上記のボンベ収納空間を構成し、内周壁と外周壁との間の空間が上記の被噴射物収納室を構成することを特徴とする請求項1記載の吸引式噴射器。
【請求項3】
上記のケーシングは、外周壁を備えた一重の筒状の容器であり、この容器の外周壁で囲まれた内部空間が上記のボンベ収納空間と上記の被噴射物収納室とを兼用するものであり、
この内部空間に、この内部空間の内径よりも外径が小さな噴射ボンベが収納されると共に、噴射ボンベの外壁とケーシングの外周壁との間の空間が被噴射物収納室となることを特徴とする請求項1記載の吸引式噴射器。
【請求項4】
噴射ボンベは、噴射口を有するステムと、ステムに対する押圧によって開弁する開閉弁を備え、
ボンベ収納空間の下端に底部が形成され、使用済の噴射ボンベを底部の外側から押し付けて噴射ボンベ内の残ガスをボンベ収納空間内に吐出させることができる残ガス処理部が、この底部に設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の吸引式噴射器。
【請求項5】
噴射ボンベは、噴射口を有するステムと、ステムに対する押圧によって開弁する開閉弁を備え、
噴射機構部は、噴射ボンベのステムに接続されるボンベ接続部と、被噴射物収納室に接続される被噴射物用接続部と、被噴射物収納室に空気を導入する空気用開閉部と、人が噴射のための操作をなす操作部とを備え、被噴射物用接続部と空気用開閉部とにそれぞれ開閉弁が設けられ、操作部の操作により、被噴射物用接続部と空気用開閉部との開閉弁を開くと共にステムを押圧するものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の吸引式噴射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−137453(P2007−137453A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331856(P2005−331856)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(591284472)キョ−ワ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】