説明

吸気ダクト

【課題】全体が変形し易く、ボンネットの大きな変形を許容できる吸気ダクトを提供する。
【解決手段】1分体と第2分体とが接合一体化されてなる筒状の吸気ダクトにおいて、第1分体を周壁に開口を持つ筒状に形成し、第2分体を開口を覆う被覆部を持つ形状に形成する。そして、少なくとも第1分体に周方向に延びる脆弱部を設けて、第1分体を脆弱部を境界とした複数の軸方向領域に分けるとともに、第2分体を軸方向領域の少なくとも一つに接合し、かつ、軸方向領域のうち第1分体の軸方向端部を含む領域の少なくとも一つには接合していないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に空気を供給する通路の一部を構成する吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
吸気ダクトは、内燃機関の吸気経路の一部を構成し、空気導入口から導入された空気を吸気経路の下流側に供給する部材である。吸気ダクトは筒状をなし、内部が吸気経路の一部を構成する。吸気ダクトは、内燃機関の吸気脈動や吸気負圧で変形しないように、比較的剛性の高い材料や強度の高い構造で形成されている。吸気ダクトはエンジンルームに配される。このため、エンジンルーム内に配される各種部材の配置位置を考慮して、湾曲形状に形成されるのが一般的である。したがって、成形の都合上、吸気ダクトは複数の分体が接合一体化されてなる場合がある。
【0003】
ところで近年では、車両のボンネットに障害物が衝突した場合等に、ボンネットを変形させて衝撃を吸収することが提案されている。吸気ダクトは一般にボンネットの下側に配されるため、吸気ダクトによってボンネットの変形が阻害される場合がある。このため、障害物が衝突した時にボンネットの更なる変形を許容し得る吸気ダクトが開発されている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、空気導入口側の部分が変形し易い吸気ダクトが紹介されている。この吸気ダクトは、上側分体と下側分体とが接合一体化されてなる。そして、下側分体の空気導入口側の部分に上側分体を支持する支持壁部が形成されている。支持壁部と下側分体との連結領域には溝状の破断予定ラインが形成されている。この吸気ダクトでは、障害物が衝突して上側分体に下方向の荷重が加わると、上側分体が変形して支持壁部を押圧する。すると、支持壁部の破断予定ラインに剪断力が作用して、支持壁部は破断予定ラインから破断して下落する。支持壁部が下落すると、上側分体の空気導入口側の部分が下側分体方向に窪む。よって、ボンネットの変形を許容できるようになる。
【0005】
このような吸気ダクトでは、吸気ダクトのうち空気導入口側の部分は窪むが、吸気ダクト全体は変形し難い。したがって、吸気ダクトとボンネットとの間に大きな空間を形成できず、ボンネットの大きな変形を許容し難い問題があった。
【特許文献1】特開2004−124757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、全体が変形し易く、ボンネットの大きな変形を許容できる吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の吸気ダクトは、第1分体と第2分体とが接合一体化されてなる筒状の吸気ダクトであって、第1分体は周壁に開口を持つ筒状をなし、第2分体は開口を覆う被覆部を持ち、少なくとも第1分体は周方向に延びる脆弱部を持ち、第1分体は脆弱部を境界とした複数の軸方向領域に分けられ、第2分体は軸方向領域の少なくとも一つに接合し、かつ、軸方向領域のうち第1分体の軸方向端部を含む領域の少なくとも一つには接合していないことを特徴とする。
【0008】
本発明の吸気ダクトは、以下の構成(1)〜(5)の何れかを備えることが好ましい。
(1)上記脆弱部は、断面V字の溝状に形成されている。
(2)上記脆弱部は上記開口の周方向外縁の一部を構成する脆弱端末部を持つ。
(3)本発明の吸気ダクトが構成(2)を備える場合、上記脆弱端末部は、上記開口の周方向外縁のうち軸方向端末部を構成する。
(4)本発明の吸気ダクトが構成(2)を備える場合、上記脆弱端末部は切り欠き形状に形成されている。
(5)上記開口部は上記第1分体の下側に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸気ダクトにおいて、第1分体は周方向に延びる脆弱部を持つ。脆弱部は脆弱であるために破断し易くなっている。したがって、吸気ダクトに荷重が加わると脆弱部が破断する。脆弱部は周方向に延び、第1分体は脆弱部を境界とした複数の軸方向領域に分けられるために、脆弱部が破断すると第1分体は軸方向領域毎に分割される。第2分体は軸方向領域の少なくとも一つに接合し、かつ、軸方向領域のうち第1分体の軸方向端部を含む領域の少なくとも一つには接合していない。このため、第1分体の少なくとも一方の軸方向端部は第2分体から遊離する。したがって、本発明の吸気ダクトは、荷重が加わって脆弱部が破断すると、脆弱部を境界とした複数の分割体に分断される。各々の分割体の軸方向の長さは、吸気ダクトの軸方向の長さよりも短いため、吸気ダクトが複数の分割体に分割されることで、吸気ダクト全体が大きく変形する。よって、吸気ダクトとボンネットとの間には大きな空間が形成され、ボンネットの大きな変形を許容できる。脆弱部は第1分体の他の部分より脆弱に形成すれば良い。例えば薄肉に形成するなどである。
【0010】
また、本発明の吸気ダクトは、第1分体が筒状をなすために、吸気ダクト全体の剛性が高められている。よって、本発明の吸気ダクトは荷重が加わると変形し易いが、上述した吸気脈動や吸気負圧では変形し難い。
【0011】
本発明の吸気ダクトが構成(1)を備える場合には、吸気ダクトに荷重が加わる際に脆弱部のV字頂部に応力が集中する。従って、脆弱部が小さな荷重で破断し、吸気ダクトが変形し易い。
【0012】
本発明の吸気ダクトが構成(2)を備える場合には、脆弱部が小さな荷重で破断する。すなわち、脆弱部が周方向に連続したリング状をなす場合には、脆弱部に作用する応力は分散される。一方、脆弱部が周方向の一部が欠落した弧状をなす場合には、脆弱部には周方向の端末であり、開口の周方向外縁の一部を構成する脆弱端末部が形成される。脆弱端末部は、脆弱部のなかで最も応力が集中する部分であり、破断開始点となる。このため、吸気ダクトに荷重が加わると、脆弱部は脆弱端末部から破断する。よって、脆弱部が小さな荷重で破断する。
【0013】
本発明の吸気ダクトが構成(3)を備える場合には、脆弱部が小さな荷重で破断する。すなわち、開口の周方向外縁のうち軸方向端末部は、吸気ダクトに荷重が加わった際に応力が最も集中する部分である。このため、脆弱端末部を開口の周方向外縁のうち軸方向端末部に設ける場合には、脆弱部が小さな荷重で破断する。ここで、軸方向端末部とは、開口の周方向外縁のうち軸方向端末近傍の部分を指す。すなわち、脆弱端末部は、開口の周方向外縁のうち軸方向端末に設けても良いし、軸方向端末近傍に設けても良い。脆弱端末部を軸方向端末に設ける場合には、脆弱部がさらに小さな荷重で破断する。
【0014】
本発明の吸気ダクトが構成(4)を備える場合には、脆弱部が小さな荷重で破断する。すなわち、脆弱部の脆弱端末部を切り欠き形状に形成すると、脆弱端末部に応力が集中し、脆弱部が破断し易くなる。よって、脆弱部が小さな荷重で破断する。
【0015】
本発明の吸気ダクトが構成(5)を備える場合には、脆弱部が小さな荷重で破断する。すなわち、開口部を第1分体の上側に配置する場合には、吸気ダクトに上方から荷重が加わった際に、第1分体は開口を閉じつつ変形する。これに対して、開口部を第1分体の下側に配置する場合には、吸気ダクトに上方から荷重が加わった際に、第1分体は開口を広げつつ変形する。第1分体が開口を広げつつ変形することで、第1分体の変形を第1分体自身が干渉することがない。また、第1分体が開口を広げつつ変形することで、脆弱部がより破断し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の吸気ダクトは、脆弱部が容易に破断する材料で形成されることが好ましい。本発明の吸気ダクトは、例えば、PP、PE、PA等の樹脂材料を主成分としてなることが好ましい。なお、本発明の吸気ダクトをこれらの樹脂材料にガラスやタルク等を配合した混合材料から構成すれば、脆弱部がより小さな荷重で破断し易くなる。
【0017】
本発明の吸気ダクトは射出成形で形成するのが好ましい。開口や脆弱部を型成形できるため、吸気ダクトを少ない製造工数で形成できるからである。なお、本発明の吸気ダクトをブロー成形などの方法で形成する場合には、開口や脆弱部を切削加工すればよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の吸気ダクトを図面を基に説明する。
【0019】
(実施例1)
実施例1の吸気ダクトは、構成(1)〜(5)を備える。実施例1の吸気ダクトでは、脆弱部は薄肉に形成されている。実施例1の吸気ダクトを模式的に表す側面図を図1に示す。実施例1の吸気ダクトを模式的に表す分解側面図を図2に示す。実施例1の吸気ダクトのうち脆弱部を模式的に表す断面図を図3に示す。実施例1の吸気ダクトが変形している様子を模式的に表す側面図を図4および図5に示す。本発明の吸気ダクトにおける好ましい脆弱部の位置を説明する説明図を図6に示す。以下、上、下、前、後とは図1に示す上、下、前、後を指すものとする。
【0020】
実施例1の吸気ダクトは、僅かに湾曲した筒状をなし、車両のボンネット90の下方に配置される。吸気ダクトの前側端部はフロントグリル後方のラジエータアッパサポート91に支持されている。吸気ダクトの後側端部はエアクリーナ(図略)に連結されている。
【0021】
実施例1の吸気ダクトは第1分体1と第2分体2とが一体化されてなる。第1分体1は筒状をなし、周壁のうち軸方向(図1中前後方向)の略中央部に切り欠き状の開口10を持つ。開口10の軸方向の長さは、吸気ダクトの軸方向長さの半分程度である。開口10の周方向の長さは、吸気ダクトの周方向の長さの半分程度である。第1分体1のうち軸方向の両端部は筒状をなす。従って、第1分体1は開口10を持つが、全体としては筒状をなしている。第1分体と第2分体とは、ともにPPを主成分としてなる。
【0022】
第1分体1は、2つの第1接合部3を持つ。各々の第1接合部3は、開口10の周縁部のうち開口10に周方向で対面する部分(以下、周方周縁部11と呼ぶ)に形成されている。実施例1の吸気ダクトにおいて、第1分体1は、一つの開口10を持ち、2つの周方周縁部11をもつ。各周方周縁部11には、それぞれ1つずつの第1接合部3が形成されている。
【0023】
第1接合部3は、3つの第1接合片30からなる。3つの第1接合片30は軸方向に離間配置されている。第1接合片30は、第1分体1の周壁に固着されている第1脚部(図略)と、第1脚部の先端に形成されている枠状の第1頭部31とを持つ。第1脚部と第1頭部31とは互いに交叉する方向に延びている。
【0024】
第1分体1には、周方向に延びる2つの脆弱部4が形成されている。2つの脆弱部4のうち図1中前側に配されるものを前側脆弱部4aと呼び、図1中後方に配されるものを後側脆弱部4bと呼ぶ。後側脆弱部4bの肉厚および前側脆弱部4aの肉厚は0.5mmである。第1分体1のうち後側脆弱部4b、前側脆弱部4aおよび第1接合部3を除く部分の肉厚は、2〜3mm程度である。
【0025】
前側脆弱部4aおよび後側脆弱部4bは、それぞれ2つの脆弱端末部40を持つ。前側脆弱部4aおよび後側脆弱部4bは円弧状に延びている。各脆弱端末部40は開口10の周方向外縁12(以下、開口周外縁12と呼ぶ)の一部を構成する。前側脆弱部4aの脆弱端末部40aは、開口周外縁12のうち前側の軸方向端末を構成する。後側脆弱部4bの脆弱端末部40bは、開口周外縁12のうち後側の軸方向端末を構成する。脆弱部4は、図3に示すように、断面V字の溝状に形成されている。脆弱端末部40は、開口10から周方向に延びる切り欠き形状に形成されている。第1分体1のうち前側脆弱部4aと後側脆弱部4bとで区画されている軸方向領域を中央部13と呼ぶ。前側脆弱部4aを境界に中央部13よりも前側に配されている軸方向領域を前側部14と呼ぶ。後側脆弱部4bを境界に中央部13よりも後側に配されている軸方向領域を後側部15と呼ぶ。前側部14と後側部15とは、それぞれ第1分体1の軸方向端部17を含む。軸方向端部17は、第1分体1の軸方向の端部である。詳しくは、前側部14は第1分体1の前側軸方向端部17aを含み、後側部15は第1分体1の後側軸方向端部17bを含む。第1分体1は、脆弱部4を境界として、前側部14と中央部13と後側部15との3つの軸方向領域に分けられている。第1接合部3は中央部13に形成されている。後側部15と前側部14とはそれぞれ筒状をなす。中央部13は湾曲した円筒が軸方向に切断されてなる略半円筒形状に形成されている。
【0026】
第2分体2は、周方向および軸方向の長さが開口10よりも僅かに大きく形成されている。第2分体2は、湾曲した円筒が軸方向に切断されてなる半円筒形状に形成されている。実施例1の吸気ダクトでは、第2分体2の全体が開口10を覆う被覆部を構成している。第2分体2のうち周方向の両端部を被覆周端部20と呼ぶ。各被覆周端部20には、それぞれ第1接合部3と接合する第2接合部5が形成されている。第2接合部5は、3つの第2接合片50からなる。それぞれの第2接合片50は各第1接合片30と対向する位置に配置されている。3つの第2接合片50は軸方向に離間配置されている。第2接合片50は第2分体2の周壁に固着されている第2脚部51と第2脚部51の端部が拡径してなる第2頭部52とを持つ。第2頭部52は第1頭部31と係合する。実施例1の吸気ダクトでは、第1頭部31と第2頭部52とが係合して、第1分体1と第2分体2とが接合一体化されている。第2分体2は第1分体1の3つの軸方向領域のうち中央部13に接合している。そして、第1分体1の軸方向端部17を含む前側部14と後側部15とには接合していない。
【0027】
第2分体2の被覆周端部20は、開口周外縁12を覆っている。第2分体2の軸方向端部53は開口10の軸方向外縁16(以下、開口軸外縁16と呼ぶ)を覆っている。なお、実施例の吸気ダクトでは、第1接合部3と第2接合部5とが互いに係合して第1分体1と第2分体2とが接合一体化しているが、第1接合部3と第2接合部5とは互いに接着あるいは溶着されて接合しても良い。第1接合部3と第2接合部5とはその他の方法で接合しても良い。
【0028】
図4に示すように、実施例1の吸気ダクトに下方への荷重が加わると、脆弱部4が破断する。すなわち、吸気ダクトのうち前側部14はラジエータアッパサポート91に支持され、後側部15はエアクリーナに連結されているために、吸気ダクト全体は下方に動き難い。このため、荷重を受けた吸気ダクトは変形しようとする。吸気ダクトのうち脆弱部4は肉厚が薄いために強度が低く、破断し易くなっている。さらに、脆弱部4には応力が集中する脆弱端末部40が形成されているために、脆弱端末部40が破断開始点となる。よって、脆弱部4は脆弱端末部40から破断する。脆弱部4全体が破断すると、図5に示すように、吸気ダクトは前側部14からなる前側分割体140と、後側部15からなる後側分割体150と、中央部13と第2分体2とからなる中央分割体130とに3分割される。そして、ラジエータアッパサポート91やエアクリーナなどの相手材に固定されていない中央分割体130が下落して、吸気ダクト全体が大きく変形する。よって、吸気ダクトの上方には大きな空間が形成され、ボンネット90の大きな変形を許容できる。なお、本実施例では脆弱部4全体が破断した場合を例示して説明したが、脆弱部4が部分的に破断するだけであっても、吸気ダクトは大きく変形する。すなわち、図4に示すように、脆弱部4が破断する際に、後側部15および前側部14はそれぞれ脆弱部4を中心として揺動する。この揺動に伴って、中央部13と第2分体2とは下方に移動する。よって、吸気ダクトは大きく変形する。
【0029】
本実施例の吸気ダクトでは、脆弱部4が断面V字の溝状に形成されているため、脆弱部4のV字頂部45(図3に示す)に応力が集中する。よって、脆弱部4は小さい荷重で破断する。
【0030】
また、開口10の外縁(開口周外縁12、開口軸外縁16)のうち、開口周外縁12と開口軸外縁16との接合部分である開口周外縁12の軸方向端末は、最も応力が集中する部位である。したがって、開口周外縁12の軸方向端末に脆弱端末部40を設けることで、脆弱端末部40はより小さな荷重で破断する。なお、実施例1においては、脆弱端末部40を開口周外縁12の軸方向端末に形成しているが、開口周外縁12の軸方向端末部に形成すれば、脆弱部4が充分に小さな荷重で破断する。
【0031】
さらに、脆弱端末部40は切り欠き状に形成されているため、脆弱端末部40はより一層小さな荷重で破断する。これらの協働によって、本実施例の吸気ダクトは小さな荷重で大きく変形し、吸気ダクトとボンネット90との間に大きな空間を形成する。
【0032】
実施例1の吸気ダクトには二つの脆弱部4が設けられているが、脆弱部4は一つのみであっても良いし、3以上であっても良い。
【0033】
実施例1の吸気ダクトでは、脆弱部4の脆弱端末部40は開口周外縁12の一部を構成しているが、開口軸外縁16の一部を構成していても良い(図6の4cに示す)。軸方向に対して垂直でないが軸方向に対して交叉する方向に延びる脆弱部4cは、軸方向に対して垂直な方向に延びる脆弱部4a、4bに比べて、破断に要する荷重が大きくなるが、脆弱部4cであっても、充分に小さな荷重で破断する。脆弱端末部40が開口周外縁12の一部を構成する脆弱部4では、脆弱部4を軸方向に対して垂直な方向に延設でき(図6の4dに示す)、脆弱部4の破断に要する荷重が小さくて済む利点がある。よって、脆弱端末部40は開口周外縁12(図6のC領域)内に設けるのが好ましい。なお、脆弱部4に脆弱端末部40を設けない場合、すなわち、脆弱部4を周方向に連続する形状に形成する場合(図6中4eに示す)には、脆弱部4は吸気ダクトのうち開口周外縁12が形成されていない領域(図6のD領域)に形成される。この場合は、脆弱部4に脆弱端末部40を設ける場合に比べると、脆弱部4の破断に要する荷重は大きくなる。しかし、吸気ダクトに荷重が加えられると脆弱部4が破断して吸気ダクトが大きく変形する。
【0034】
本発明の吸気ダクトにおいて、第2分体2は第1分体1の軸方向領域の一つである中央部13に接合している。そして、前側部14や後側部15には接合していない。従って、荷重が加わって脆弱部4が破断すると、吸気ダクトは3つの分割体(前側分割体140、後側分割体150、中央分割体130)に3分割される。よって、吸気ダクトは大きく変形する。また、第2分体が中央部13にのみ接合しているため、第1分体1と第2分体2との接合部分が脆弱部4の破断に干渉することもない。よって、脆弱部4は小さい荷重で破断する。
【0035】
実施例1の吸気ダクトは、一つの第1分体1と一つの第2分体2とからなるが、第1分体1には2以上の開口10を設けても良い。この場合には、開口10に対応する個数の第2分体2を設ければよい。複数の開口10を設ける場合には、個々の開口10は同形状であっても良いし異形状であっても良い。
【0036】
実施例1の吸気ダクトでは、開口10が第1分体1の下側に形成され、第2分体2は第1分体1の下方に配置されているが、開口10を第1分体1の上側に形成し、第2分体2を第1分体1の上方に配置しても良い。この場合には、吸気ダクトに下方への荷重が加わると、第2分体2が第1分体1を押圧する。そして、第2分体2から加わる荷重によって第1分体1の脆弱部4が破断する。
【0037】
実施例1の吸気ダクトは、第1分体1と第2分体2とが同じ樹脂材料からなるが、第1分体1と第2分体2とを異なる材料から形成しても良い。例えば、第2分体2の一部を不織布等の多孔体で形成すれば、吸気ダクトに吸気干渉音を低減する機能を付与できる。
【0038】
(実施例2)
実施例2の吸気ダクトは、第1分体と第2分体とがともに筒状をなすことと、脆弱部が第1分体と第2分体とに形成されていること以外は実施例1と同じである。実施例2の吸気ダクトは、構成(1)〜(5)を備える。実施例2の吸気ダクトを模式的に表す分解側面図を図7に示す。
【0039】
実施例2の吸気ダクトにおいて、第1分体1は前側部14と中央部13とを持つ。前側部14は実施例1の前側部14と同じ形状である。中央部13は開口10を持つ。第1分体1は実施例1と同じ前側脆弱部4aを持つ。すなわち、前側脆弱部4aの脆弱端末部40aが開口周外縁12のうち前側の軸方向端末を構成する。実施例2の吸気ダクトにおいて、第1分体1は後側脆弱部を持たない。よって、実施例2の吸気ダクトにおいて、第1分体1は前側脆弱部4aを境界とした2つの軸方向領域(前側部14、中央部13)に分けられる。中央部13には実施例1と同じ第1接合部3が形成されている。前側部14が筒状をなすために、第1分体1は全体として筒状をなしている。
【0040】
第2分体2は、実施例1の第2分体とほぼ同形状の被覆部25と、実施例1の後側部15とほぼ同形状の後側部26とが一体化されてなる。第2分体2は、第1分体1の開口10に対面する部分が開口している。この開口の開口周外縁を第2の開口周外縁22と呼ぶ。後側部26と被覆部25との境界部分には後側脆弱部4bが形成されている。後側脆弱部4bの脆弱端末部40bは、被覆周端部20のうち後側の軸方向端末を構成する。脆弱端末部40bは、第2の開口周外縁22のうち後側の軸方向端末に形成されている。第2分体2は第1分体1の2つの軸方向領域のうち中央部13に接合されている。そして、第2分体2は第1分体1の軸方向領域のうち第1分体の軸方向端部17aを含む前側部14には接合していない。実施例2の吸気ダクトでは、後側部26が筒状をなすために、第2分体2は全体として筒状をなしている。
【0041】
実施例2の吸気ダクトにおいて、前側脆弱部4aおよび後側脆弱部4bはともに断面V字の溝形状に形成されている。そして、前側脆弱部4aの脆弱端末部40aと後側脆弱部4bの脆弱端末部40bとはともに切り欠き形状に形成されている。
【0042】
実施例2の吸気ダクトに下方への荷重が加わると、前側脆弱部4aと後側脆弱部4bとがともに破断する。すなわち、第1分体1に加わった荷重によって第1分体1の前側脆弱部4aが破断し、第1分体1に押圧された荷重によって第2分体2の後側脆弱部4bが破断する。前側脆弱部4aおよび後側脆弱部4bは、実施例1と同様に、断面V字の溝形状に形成されおり、脆弱端末部40を持ち、脆弱端末部40が切り欠き形状に形成されている、このため、前側脆弱部4aおよび後側脆弱部4bは実施例1の吸気ダクトと同様に、小さな荷重で破断する。後側脆弱部4bと前側脆弱部4aとが破断すると、吸気ダクトは第1分体1の前側部14からなる前側分割体と、第2分体2の後側部26からなる後側分割体と、第1分体1の中央部13と第2分体2の被覆部25とからなる中央分割体とに3分割される。そして、中央分割体が下落して、吸気ダクト全体が大きく変形する。よって、実施例2の吸気ダクトにおいても、吸気ダクトの上方には大きな空間が形成され、ボンネット90の大きな変形を許容できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1の吸気ダクトを模式的に表す側面図である。
【図2】実施例1の吸気ダクトを模式的に表す分解側面図である。
【図3】実施例1の吸気ダクトのうち脆弱部を模式的に表す断面図である。
【図4】実施例1の吸気ダクトが変形している様子を模式的に表す側面図である。
【図5】実施例1の吸気ダクトが変形している様子を模式的に表す側面図である。
【図6】本発明の吸気ダクトにおける好ましい脆弱部の位置を説明する説明図である。
【図7】実施例2の吸気ダクトを模式的に表す分解側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1:第1分体 2:第2分体 10:開口 17:軸方向端部 3:第1接合部 4:脆弱部 40:脆弱端末部 5:第2接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1分体と第2分体とが接合一体化されてなる筒状の吸気ダクトであって、
該第1分体は周壁に開口を持つ筒状をなし、該第2分体は該開口を覆う被覆部を持ち、
少なくとも該第1分体は周方向に延びる脆弱部を持ち、
該第1分体は該脆弱部を境界とした複数の軸方向領域に分けられ、
該第2分体は該軸方向領域の少なくとも一つに接合し、かつ、該軸方向領域のうち該第1分体の軸方向端部を含む領域の少なくとも一つには接合していないことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
前記脆弱部は、断面V字の溝状に形成されている請求項1に記載の吸気ダクト。
【請求項3】
前記脆弱部は前記開口の周方向外縁の一部を構成する脆弱端末部を持つ請求項1に記載の吸気ダクト。
【請求項4】
前記脆弱端末部は、前記開口の周方向外縁のうち軸方向端末部を構成する請求項3に記載の吸気ダクト。
【請求項5】
前記脆弱端末部は切り欠き形状に形成されている請求項3に記載の吸気ダクト。
【請求項6】
前記開口部は前記第1分体の下側に配置されている請求項1に記載の吸気ダクト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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