説明

吸水性樹脂複合体の製造方法

【課題】吸水性樹脂に無機粒子を添加する際に簡便でありながら均一な表面処理を行い、これにより優れた性能の吸水性樹脂複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】機械撹拌型混合機を用いて吸水性樹脂に無機粒子を添加する方法であって、該混合機の撹拌翼先端の周速(m/秒)と混合時間(秒)の積を25〜480mで混合する吸水性樹脂複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子で表面処理された吸水性樹脂複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、衛生用品分野では、幼児用、大人用又は失禁者用の使い捨ておむつや婦人用生理用ナプキン等の吸収性物品;農園芸分野での保水剤等;土木建築分野での汚泥の凝固剤、結露防止剤又は止水剤等として幅広く使用されている。
【0003】
かかる吸水性樹脂は、吸水性能、流動性、その他種々の特性向上を目的として、吸水性樹脂に色々の無機粒子を表面処理する方法が提案されている。
【0004】
かかる吸水性樹脂は、吸水性能、流動性、その他の特性向上を目的として、吸水性樹脂に種々の無機粒子を表面処理する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、吸水性樹脂と無機粒子とを単に粉体状で混合する、或いは混合した後に水を加える方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、無機粒子を水分散液として吸水性樹脂に添加する方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭56−133028号公報
【特許文献2】特開平4−114738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、混合状態が不均一となり、無機粒子で表面処理したことによる効果を充分に得ることができない。また、特許文献2に開示された方法では、水分散液の調製工程が必要であり、簡便な方法とは言えない。
【0008】
本発明は、吸水性樹脂に無機粒子を添加して混合する際に、簡便であり且つ均一な表面処理を行うことができ、これにより優れた性能の吸水性樹脂複合体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、機械撹拌型混合機を用いて吸水性樹脂に無機粒子を添加する方法であって、該混合機の撹拌翼先端の周速(m/秒)と混合時間(秒)の積を25〜480mで混合する吸水性樹脂複合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性樹脂に無機粒子を添加して混合する際に、簡便であり且つ均一な表面処理を行うことができ、これにより優れた性能の吸水性樹脂複合体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係る吸水性樹脂複合体の製造方法では、機械撹拌型混合機において攪拌翼を回転させることにより吸水性樹脂に無機粒子を添加して混合する。そして、攪拌翼の翼先端の周速(m/秒)と混合時間(秒)との積が25〜480mとなるように、攪拌翼を回転制御する。このようにすれば、吸水性樹脂に無機粒子を添加して混合する際に、簡便であり且つ均一な表面処理を行うことができ、これにより優れた性能の吸水性樹脂複合体を得ることができる。
【0013】
<機械撹拌型混合機>
吸水性樹脂に無機粒子を添加する混合機は、処理効率が高いことから機械撹拌型混合機を好ましく用いることができる。機械撹拌型混合機としては、リボンブレンダー(NEOTEC社製)、スクリューブレンダー等のリボン型混合機;スクリュー混合機;ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)等の円錐型スクリュー混合機;ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)社製)等の高速回転羽根混合機;タービュライザー(ホソカワミクロン社製)、レディゲミキサー(中央機工(株)社製)等の高速攪拌形混合機;ニーダー((株)モリヤマ社製)等の混練装置が挙げられる。これらの中では処理効率が特に高いリボン型混合機又は高速攪拌形混合機が好ましい。
【0014】
<吸水性樹脂>
本発明の吸水性樹脂に用いるモノマーとしては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸又はそれらの塩等のアクリル酸系モノマー、アクリル酸系モノマーと共重合可能なその他のモノマーが挙げられる。その他のモノマーとしては水溶性のモノマーが好ましく、例えばオレフィン系不飽和カルボン酸、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アンモニウム塩及びオレフィン系不飽和アミド等の、重合性不飽和基を有する水溶性ビニルモノマーが挙げられる。
【0015】
本発明に用いる吸水性樹脂は平均粒径150〜4000μmの粒子である。この範囲であれば、取り扱いやすいため、産業上の有用性が高い。平均粒径200μm以上が好ましく、250μm以上がより好ましい。また、平均粒径1200μm以下が好ましく、平
均粒径800μm以下の粒子がより好ましい。
【0016】
<無機粒子>
無機粒子としては酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物;酸化亜鉛等の亜鉛化合物;炭酸カルシウム等のカルシウム化合物;シリカ等の珪素化合物その他を挙げることができる。これらの中ではシリカ等の珪素化合物を好ましく用いることができる。
【0017】
更に疎水性超微粒子シリカで表面処理した吸水性樹脂複合体は吸水性能等が優れており、好ましく用いることができる。疎水性超微粒子シリカはシリカ表面のシラノール基をジメチルジクロルシラン等と反応させて疎水化したものである。疎水性超微粒子シリカの粒径は1〜100nmが好ましく、2〜50nmが更に好ましい。またBETによる比表面積が50m/g以上が好ましい。
【0018】
吸水性樹脂に添加する無機粒子の量は、得られた吸水性樹脂複合体の加圧下通液速度が優れている観点から吸水性樹脂100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上が更に好ましく、0.2重量部以上が特に好ましい。また経済性の観点から吸水性樹脂100重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下が更に好ましく、1重量部以下が特に好ましい。
【0019】
<混合操作>
本実施形態に係る吸水性樹脂複合体の製造方法では、機械撹拌型混合機の撹拌翼の翼先端の周速(m/秒)と混合時間(秒)との積が25〜480mとなるように攪拌翼を回転制御する。無機粒子を効率的に均一に吸水性樹脂と接触させ観点からは、その積が30m以上となるように攪拌翼を回転制御することが好ましい。また、吸水性樹脂が粉砕されたり、或いは、製造される吸水性樹脂複合体の加圧下通液速度が低くなるのを防止する観点からは、その積が400m以下となるように攪拌翼を回転制御することが好ましい。
【0020】
撹拌翼の翼先端の周速は、無機粒子を効率的に吸水性樹脂と接触させる観点から0.2m/秒以上とすることが好ましく、0.4m/秒以上とすることが更に好ましい。また、吸水性樹脂が粉砕されることを防止する観点からは4.5m/秒以下とすることが好ましく、4m/秒以下とすることが更に好ましい。
【0021】
機械撹拌型混合機での混合時間は、吸水性樹脂に無機粒子を均一に被着させる観点から10秒以上とすることが好ましく、30秒以上とすることが更に好ましい。また、吸水性樹脂が粉砕されることを防止する観点からは500秒以下とすることが好ましく、120秒以下とすることが更に好ましい。
【0022】
混合処理の温度は、特に制限はなく、例えば0〜80℃である。
【0023】
混合処理は、バッチ方式で行ってもよく、また、連続方式で行ってもよい。バッチ方式の場合は、機械撹拌型混合機に吸水性樹脂と無機粒子を仕込んだ後、それらの混合を一定時間行なう。連続方式の場合は、機械撹拌型混合機に原料粉(吸水性樹脂と無機粒子)を単位時間あたり所定量供給すると共に、供給する原料粉と同質量の吸水性樹脂複合体を機械撹拌型混合機から抜き出す。なお、連続方式の場合の混合時間とは、機械撹拌型混合機における粉体の平均滞留時間である。
【0024】
以上の製造方法により吸水性樹脂に無機粒子が添加された吸水性樹脂複合体が製造されるが、その平均粒径は例えば150〜4000μmである。得られた吸水性樹脂複合体は、例えば、衛生用品分野では幼児用、大人用或いは失禁者用の使い捨ておむつや婦人用生理用ナプキン等;農園芸分野での保水剤等;土木建築分野での汚泥の凝固剤、結露防止剤、止水剤等に利用される。
【実施例】
【0025】
(分析方法)
実施例及び比較例で利用した各種分析方法の条件を以下に示す。
【0026】
(1)吸水性樹脂粒子平均粒径の算出方法
試験用ふるい(JIS−Z8801−1参照)を、上から目開き4760μm、2830μm、1400μm、1000μm、850μm、600μm、500μm、355μm、受け皿、の順に組み合わせ、最上のふるいに吸水性樹脂を約50g入れ、ロータップ式自動ふるい振とう器にて10分間振とうした。
【0027】
各ふるいに残留した吸水性樹脂の重さを測定してから、各ふるいに残留した吸水性樹脂の全体に対する質量比(残留百分率)Rを片対数グラフ(横軸:粒径(対数目盛)、縦軸:残留百分率)にプロットし、R=50%に相当する粒径を求めて平均粒径とした。
【0028】
(2)吸水性樹脂複合体の加圧下通液速度
200mLのガラスビーカーに、測定試料である吸水性樹脂複合体0.32±0.005gを膨潤するに十分な量の生理食塩水(イオン交換水を用いた0.9重量%塩化ナトリウム水)、例えば吸水性ポリマーの飽和吸収量の5倍以上の生理食塩水に浸して30分間放置する。
【0029】
別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、株式会社三商販売のバイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で該円筒管内に、膨潤した測定試料を含む上記ビーカーの内容物全てを投入する。コックを開いて濾過円筒管内の液面を60mLの目盛り線より5cm上に調整する。次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、該金網と測定試料とが接するようにし、更に測定試料に2.0kPaの荷重が加わるようおもりを載せる。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までの時間(T1)(秒)をストップウォッチで計測する。計測された時間T1(秒)を用い、次式から2.0kPaでの加圧下通液速度を算出する。尚、式中、T0(秒)は、濾過円筒管内に測定試料を入れないで、生理食塩水20mLが金網を通過すのに要する時間を計測した値である。
加圧下通液速度(mL/min)=20×60/(T1−T0)
測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。
【0030】
(3)無機粒子付着量の変動係数
混合して得られた吸水性樹脂複合体を混合機内の任意の3点から2mLのサンプル瓶に各1gサンプリングし、ICP発光分析装置(原子吸光)でSi元素の測定を行った。各分析値の平均値と標準偏差を求め、標準偏差を平均値で除した変動係数で付着量の均一性を表す指標とした。
【0031】
(製造例:吸水性樹脂の調製)
<アクリル酸系モノマー水溶液の調製>
容量1MのSUS304製滴下槽に80.6質量%アクリル酸水溶液506Kgを仕込んだ後、213Kgのイオン交換水で希釈した。ここに、槽内温度を30℃以下に保つよう冷却しながら、49.3質量%水酸化ナトリウム水溶液331Kgを滴下して72%中和させ、次いでアシル化アミノ酸化合物水溶液(味の素株式会社製、商品名;「アミソフトPS−11」0.245Kgをイオン交換水4.4Kgに溶解させたもの)4.645Kgを加えて、47質量%のアクリル酸系モノマー水溶液を調製した。
【0032】
<重合物の調製>
加熱、冷却用のジャケットの付いた容量3MのSUS304製反応槽に、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル(商品名;「プライサーフA212C」、第一工業製薬株式会社製)1.47Kgと、n−ヘプタン1600L(1094Kg)を仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温を開始した。槽内温度が98℃に到達してから40分間、n−ヘプタンを還流させた。
【0033】
混合液を90℃に冷却した後、混合液へ滴下槽中のアクリル酸系モノマー水溶液の半量、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名;「V−50」0.061Kgをイオン交換水3.0Kgに溶解させたもの)3.061Kgを30分間かけて等速で滴下した。滴下終了時の槽内温度は85℃であった。引き続き、残り半量のアクリル酸系モノマー水溶液及び重合開始剤として過硫酸ナトリウム水溶液(過硫酸ナトリウム0.571Kgをイオン交換水10Kgに溶解させたもの)10.571Kgを、30分間かけて等速で滴下した。滴下終了時の槽内温度は82℃であった。
【0034】
滴下完了後、槽内をジャケット加熱してn−ヘプタンと共沸させながら、275Kgの脱水を行った。
【0035】
得られた重合体に、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液(ナガセケムテックス株式会社製、商品名;「デナコールEX−810」0.245Kgをイオン交換水10Kgに溶解させたもの)10.245Kgを滴下し、再び125Kgの脱水を行うことにより重合物を得た。
【0036】
<吸水性樹脂の調製>
得られた重合物を横型の真空乾燥機を用いて減圧下で乾燥して乾燥粉を得た。乾燥終了時の真空度は5KPa、乾燥物の温度は80℃であった。
【0037】
次いで乾燥粉を篩で分級し、106μm以下の微粉、及び850μm以上の粗粉を除去した吸水性樹脂470Kgを得た。得られた吸水性樹脂の平均粒径は300μm、水分は7質量%であった。
【0038】
(吸水性樹脂複合体の製造)
<実施例1>
容量130LのSUS304製レディゲミキサー(FM-130D型、中央機工(株)製)に、製造例で得た吸水性樹脂50Kg及びシリカ粒子(商品名;「アエロジル200」、日本アエロジル(株)製)250gを仕込んだ。
【0039】
次いでレディゲミキサーの翼先端の周速3.7m/秒で60秒間の混合を行なった。
【0040】
混合で得られた吸水性樹脂複合体の加圧下通液速度は114mL/min、シリカ粒子の付着量の変動係数は9.3%であった。
【0041】
<実施例2>
レディゲミキサーでの混合時間を120秒間に変更した以外は実施例1と同じ操作を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0042】
<実施例3>
容量30LのSUS304製リボンミキサー(商品名;リボンブレンダー、NEOTEC社製)に、製造例で得た吸水性樹脂10Kg及びシリカ粒子(商品名;「アエロジル200」、日本アエロジル(株)製)50gを仕込んだ。
【0043】
次いでリボンミキサーの翼先端の周速0.52m/秒で60秒間の混合を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例4>
リボンミキサーでの混合時間を120秒間に変更した以外は実施例3と同じ操作を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例5>
リボンミキサーの翼先端の周速を1.6m/秒に変更した以外は実施例3と同じ操作を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0046】
<比較例1>
レディゲミキサーの翼先端の周速を4.9m/秒に変更した以外は実施例2と同じ操作を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0047】
<比較例2>
リボンミキサーでの混合時間を30秒間に変更した以外は実施例3と同じ操作を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0048】
<比較例3>
リボンミキサーでの混合時間を960秒間に変更した以外は実施例3と同じ操作を行なって吸水性樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により得られる吸水性樹脂複合体は、衛生用品分野では幼児用、大人用又は失禁者用の使い捨ておむつや婦人用生理用ナプキン等の吸収性物品;農園芸分野での保水剤等;土木建築分野での汚泥の凝固剤、結露防止剤、止水剤等として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械撹拌型混合機を用いて吸水性樹脂に無機粒子を添加、混合して吸水性樹脂複合体を製造する方法であって、該混合機の撹拌翼先端の周速(m/秒)と混合時間(秒)の積を25〜480mとして混合する吸水性樹脂複合体の製造方法。
【請求項2】
機械撹拌型混合機がリボン型混合機又は高速撹拌型混合機である、請求項1に記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
【請求項3】
無機粒子を乾燥状態で添加する、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
【請求項4】
無機粒子が水不溶性の無機粒子である、請求項1乃至3のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
【請求項5】
混合機の撹拌翼先端の周速が0.2〜4.5m/秒である、請求項1乃至4のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
【請求項6】
混合機の混合時間が10〜500秒である、請求項1乃至5のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法により製造された吸水性樹脂複合体。

【公開番号】特開2010−138278(P2010−138278A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315657(P2008−315657)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】