説明

吸湿剤の製造方法及び吸湿剤

【課題】水分の吸放出量が多い熱再生可能な吸湿剤およびその製造方法の提供。
【解決手段】吸湿剤1の製造方法は、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンを有するゼオライト2の金属カチオンを、塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させてゼオライト2表面に潮解性を有する金属化合物3を形成させてなる。この製造方法で製造される吸湿剤は、高湿度下でも液化した潮解性を有する金属化合物が垂れることなく、また水分の吸放出量が多く、熱再生可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で空気中の水分を吸収し、熱再生処理により水分を放出する吸湿剤の製造方法およびこれにより得られる吸湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸湿剤としては、ゼオライトやシリカゲルなどの多孔質体が知られていた。しかしながら、ゼオライトやシリカゲルは水分の吸放出量が少ないという課題があり、この課題を解決すべく下記に示す様々な取り組みがなされてきた。
【0003】
特許文献1では、潮解性無機化合物の水溶液中に気孔率20〜90%を有する導電性多孔質セラミックス体を浸漬し、必要により減圧下で含浸処理し、含浸処理後に乾燥することにより、導電性セラミックスの多孔質組織内に吸湿性物質が分散担持された構造の再生質吸湿材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−7673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術であっても、含浸処理では乾燥時に潮解性無機化合物が凝集するため比表面積が小さくなり、水分の吸放出量が少ないという課題があり、未だ改善の余地があった。また、相対湿度が60%を越える高湿度下では、凝集した潮解性無機化合物が水分を吸収し液化し、その液化した潮解性無機化合物が多孔質セラミックスから垂れてしまうという課題があり、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高湿度下でも液化した潮解性無機化合物が垂れることなく、水分の吸放出量が多い熱再生可能な吸湿剤の製造方法およびこれにより得られる吸湿剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ゼオライトの金属カチオンを塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させ、ゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物を形成させることで吸湿剤を製造すること、およびその製造方法により得られた吸湿剤が、上記従来技術の有する課題を解決する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンを有するゼオライトの金属カチオンを、塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させてゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物を形成させてなる吸湿剤を製造する吸湿剤の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の吸湿剤の製造方法は、ゼオライトのカルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンを、イオンレベルで塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させ、分子レベルで潮解性物質化することで、水分子と結合しても大きな液滴にならずゼオライトから垂れることがないため、水分の吸放出量が多い熱再生可能な吸湿剤を製造することができる。
【0010】
また、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、前記ゼオライトは化学反応時に加熱状態であることが好ましい。さらに、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、ゼオライトは、親水性ゼオライトが好ましい。
【0011】
また、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、ゼオライトはA型であり、かつ金属カチオンはカルシウムイオンが好ましい。さらに、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、気体分子は塩化水素が好ましい。
【0012】
また、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、気体分子と金属カチオンがカルシウムイオンであるゼオライトとを密閉容器に入れ、気体分子は塩化水素で、塩化水素は前記カルシウムイオンの2倍のモル数であることが好ましい。さらに、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、密閉容器内の圧力は0.1Mpa以上、0.5Mpa未満であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の吸湿剤の製造方法においては、特に、潮解性を有する金属化合物は塩化カルシウムが好ましい。
【0014】
さらには、本発明は、先に述べた本発明の吸湿剤の製造方法により得られる吸湿剤を提供する。本発明の吸湿剤は、先に述べた本発明の吸湿剤の製造方法により製造されているため、ゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物が分子レベルで形成されており、高湿度下でも液化した潮解性を有する金属化合物がゼオライトからたれることなく、水分の吸放出量が多い。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の吸湿剤の製造方法によれば、ゼオライトの金属カチオンを、塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させることでゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物を分子レベルで形成させ、高湿度下でも液化した潮解性を有する金属化合物がゼオライトから垂れることなく、水分の吸放出量が多い熱再生可能な吸湿剤を製造することができる。
【0016】
また、本発明の吸湿剤は、ゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物が分子レベルで形成されているので、高湿度下でも液化した潮解性を有する金属化合物がゼオライトから垂れることなく、また水分の吸放出量が多い熱再生可能な吸湿剤である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の吸湿剤の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図
【図2】図1のRの部分の拡大図
【図3】本発明の吸湿剤の製造に用いる好適な一実施形態の製造装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の吸湿剤の製造方法および吸湿剤の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
<吸湿剤>
以下、図1および図2を用いて本発明の吸湿剤の第1実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の吸湿剤の基本構成を示す模式図である。また、図2は、図1のRの部分の拡大図である。
【0021】
図1に示すように、第1実施形態の吸湿剤1は、主として、ゼオライト2と、ゼオライト2の表面上に配置された潮解性を有する金属化合物3とから構成されている。そして図2に示すように、ゼオライト2はソーダライト単位11と、ソーダライト単位11が有する細孔12あるいはソーダライト単位11同士が形成する細孔12から構成されている。そして、ソーダライト単位11が有する細孔12の径は、ゼオライトの種類によっても異なるが、細孔12の入口部分の径は概ね1nm未満の大きさであり、細孔12内部の径は最大でも1.5nm程度の大きさである。
【0022】
以下、第1実施形態の吸湿剤1を構成するゼオライト2と潮解性を有する金属化合物3について説明する。
【0023】
まず、ゼオライト2について説明する。
【0024】
図1に示すゼオライト2は、後述する潮解性を有する金属化合物3を支持する支持体となる部材であるとともに、水分子を吸脱着することで水分を吸放出可能な部材である。
【0025】
ゼオライト2は、代表径が0.5μm〜50μm程度であることが好ましく、空隙率は30〜80%程度が好ましい。代表径が0.5μm以上とすると、取り扱いが容易になり、50μm以下とすると、比表面積を大きくすることができ、水分の吸放出量の大きい吸湿剤が実現できる。なお、図1ではゼオライト2の形状を球状で示しているが、形状は特に限定されるものではない。
【0026】
また、本発明の効果をより確実に得るという観点から、ゼオライト2は、親水性ゼオライトであることが好ましい。効果の詳細は後述するが、親水性ゼオライトとは、一般的にシリカ/アルミナ比(SiO2/Al2O3比)が2〜10程度のゼオライトのことを指し、この数値が大きくなるほどアルミナの含有量が減り、それと共に金属カチオンの含有量が減る。
【0027】
次に、潮解性を有する金属化合物3について説明する。
【0028】
図1または図2に示す潮解性を有する金属化合物3は、ゼオライト2の細孔12内外の表面上に分子レベルで配置されており、水分子を吸脱着することで水分を吸放出させるための部材である。潮解性を有する金属化合物3は、ゼオライト2の金属カチオンと塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で反応して生成されるため、分子レベルでゼオライト2表面上に配置され、金属カチオン(図示せず)は水素イオン(図示せず)に置換され、ゼオライト2表面近傍に存在すると推察される。なお、気体分子が塩素の場合、気相中に水分が含まれる必要があり、その水分も化学反応に寄与すると考えられ、水素イオンは水分の分解物と推察される。
【0029】
さらには、図2では潮解性を有する金属化合物3の形状を球状で示しているが、形状は特に限定されるものではなく、潮解性を有する金属化合物3が1分子あるいは数分子の集合体で存在しているものと考えられる。
【0030】
また、潮解性を有する金属化合物3は、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンと塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子との化学反応生成物である。具体的には、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウムまたはそれら物質の水和物のいずれか、あるいはこれらの群から選択される2種類以上の混合物が挙げられる。
【0031】
ここで、潮解性を有する金属化合物3としては、本発明の効果をより確実に得るという観点から、塩化カルシウム、塩化リチウムまたはそれらの水和物が好ましく挙げられる。特に、上述した中でも、最も水分の吸放出量が大きく、最も腐食性が小さいという観点から塩化カルシウムおよびその水和物が好ましい。
【0032】
本実施形態の吸湿剤1は、以上説明したように、ゼオライト2の細孔12内外の表面上に潮解性を有する金属化合物3を分子レベルで多数配置することで、高湿度下でも液化した潮解性を有する金属化合物3がゼオライト2から垂れることなく、また潮解性を有する金属化合物3を分子レベルで多数配置することで比表面積が大きくなるため水分の吸放出量が多い熱再生可能な吸湿剤1を実現できる。
【0033】
<吸湿剤の製造方法>
以下、本発明の吸湿剤の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0034】
本発明では、従来の含浸処理で課題となっていた、乾燥時に潮解性無機化合物が凝集するため比表面積が小さくなり水分の吸放出量が少ないことと、高湿度下では凝集した潮解性無機化合物が水分を吸収し液化し、その液化した潮解性無機化合物が多孔質セラミックスから垂れることを解決するために、ゼオライトの金属カチオンを塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と化学反応させ、ゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物を形成させることが特徴である。なお、潮解性を有する金属化合物とは上述したとおり、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウムのいずれか、あるいはこれらの群から選択される2種類以上の混合物を指す。
【0035】
次に、本実施形態の吸湿剤の製造方法について具体的に説明する。
【0036】
まず、所定量のゼオライトを密閉可能で温度調整が可能な容器に入れ、その容器を密閉した後、真空ポンプなどを用いて容器内を真空にする(ゼオライト密閉工程)。
【0037】
ゼオライトは、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンを有する公知のゼオライトを用いることができる。さらには、ゼオライトは、カチオンがプロトン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン等のゼオライトを、公知の方法により、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンにカチオンを交換したゼオライトを用いることができる。
【0038】
また、ゼオライトは、代表径が0.5μm〜50μm程度の粉末固体を使用することが好ましく、空隙率は30〜80%程度が好ましい。代表径が0.5μm以上とすると、取り扱いが容易になり、50μm以下とすると、比表面積を大きくすることができ、水分の吸放出量の大きい吸湿剤を製造することができる。なお、ゼオライトの形状は特に限定されるものではない。
【0039】
そして、粉末状のゼオライトが塊にならないように略均一に容器に敷き詰めることが好ましい。これにより、気体分子との反応が均一かつ速やかに行うことができる。
【0040】
また、本発明の効果をより確実に得るという観点から、ゼオライトは、親水性ゼオライトを用いることが好ましい。親水性ゼオライトとは、上述したとおり、一般的にシリカ/アルミナ比が2〜10程度のゼオライトのことを指し、この数値が大きくなるほどアルミナの含有量が減り、それと共に金属カチオンの含有量が減る。したがって、親水性ゼオライトを用いると気体分子と化学反応してできる潮解性を有する金属化合物を多く形成することができ、水分の吸放出量の大きい吸湿剤を製造することができる。
【0041】
さらに、本発明の効果をより確実に得るという観点から、ゼオライトは、金属カチオンがカルシウムイオンのA型ゼオライトを用いることが好ましい。これは、一般的に5A型ゼオライトと称されるもので、入手が容易な金属カチオンがナトリウムイオンのA型ゼオライト(4A型)から容易に金属カチオンをカルシウムイオンに交換することができる。そして、金属カチオンをカルシウムイオンとすると、気体分子と化学反応して形成される潮解性を有する金属化合物はカルシウム化合物であるため、潮解性が強く、水分の吸放出量の大きい吸湿剤を製造することができる。なお、5A型ゼオライトは、一般的には、Ca〔(AlO12 (SiO12〕・27HOで表される。
【0042】
これによると、分子量は約1669で、うち含まれるカルシウムは約240である。したがって、ゼオライトが10gの場合、含まれるカルシウムは1.44gであるため、カルシウムイオンのモル数は0.0359molである。
【0043】
次に、塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子の濃度を調整した気体を用意する(反応ガス準備工程)。この気体は、各気体分子を体積濃度で100%のものであっても良いし、また希釈したものであっても良い。なお、希釈する場合は、空気、窒素などゼオライトの金属カチオンと反応しない気体で希釈することが好ましい。また、濃度を調整した気体分子は、これら気体分子と反応しない材質で作られた容器もしくは袋などに封入しておき、より好ましくは、高圧ガス容器に封入しておく。
【0044】
本発明の効果をより確実に得るという観点から、気体分子は塩化水素を用いることが好ましい。気体分子を塩化水素とすると、金属カチオンと化学反応して形成される潮解性を有する金属化合物は塩化物であるため、潮解性が強く、水分の吸放出量の大きい吸湿剤を製造することができる。特に、金属カチオンがカルシウムイオンとすると、潮解性を有する金属化合物は塩化カルシウムであるため、潮解性が強く、水分の吸放出量の大きい吸湿剤を製造することができる。
【0045】
そして、ゼオライト密閉工程で得たゼオライトが敷き詰められた密閉容器に、反応ガス準備工程で得た気体分子を含む気体を注入し、化学反応を行う(反応ガス注入工程)。
【0046】
なお、ゼオライトは必ずしも密閉容器内に入れ、密閉容器内で反応を行う必要はなく、例えば気体分子が通気可能な不織布等に入れ、反応ガス準備工程で用意した気体を通気させることで化学反応を行っても良い。
【0047】
本発明の効果をより確実に得るという観点から、密閉容器内の圧力は0.1MPa以上、0.5MPa未満とすることが好ましい。圧力を0.1MPa以上とすると、化学反応速度を向上させることができ、速やかに反応を終えることができるためで、0.5MPa未満とすると、市販で容易に入手可能な圧力容器を利用することが可能であるためである。
【0048】
また、本発明の効果をより確実に得るという観点から、密閉容器内のゼオライトを化学反応時に加熱状態にさせることが好ましい。このとき、ゼオライトの温度は室温から300℃が好ましい。ゼオライトの温度を室温より高くすると、化学反応速度を向上させることができ、速やかに反応を終えることができるためで、300℃未満とすると、反応時にゼオライトの構造が変化することがないためである。
【0049】
さらには、本発明の効果をより確実に得るという観点から、気体分子に塩化水素を用い、金属カチオンがカルシウムイオンのゼオライトを用いて、塩化水素はカルシウムイオンの2倍のモル数の塩化水素を含むことが好ましい。これにより、カルシウムイオンと塩化水素をほぼ完全に反応させ、塩化カルシウムを生成させることで、潮解性が強く、水分の吸放出量の大きい吸湿剤を効率良く製造することができる。これは、5A型ゼオライトを10g用いる場合、前述したとおりカルシウムイオンのモル数は0.0359molであり、カルシウムイオンは2価のイオンであるため、無機酸に塩酸を用いる場合、2倍の0.0718molの塩化水素を含むことでゼオライト中のカルシウムイオンをほぼ完全に反応させることができ、塩化水素を余らせることなく使うことができるからである。
【0050】
このようにして、吸湿剤を得ることができる。
【0051】
さらに、図3を用いて上述の本実施形態の吸湿剤の製造方法について、さらに詳しく説明する。なお、本発明の吸湿剤の製造方法は、図3に示す装置を用いて製造される製造方法に限定されるものではない。
【0052】
図3に示す製造装置は、開閉可能な蓋23が設置された密閉可能な耐熱耐圧容器21と、真空ポンプ25を繋ぐ配管中に設けられたバルブA24と、高圧ガス容器27を繋ぐ配管中に設けられたバルブB26と、耐熱耐圧容器21内部に敷き詰めたゼオライト22を加熱するヒータ29と、ゼオライト22の温度を測定する温度センサ30と、ゼオライト22の温度が所定の温度になるようヒータ29の入力を調整する温度調整器28から構成される。なお、それぞれの部材は公知の部材を用いることができ、また各部材の組み立て方も公知の方法で組み立てて装置を作ることができる。
【0053】
ゼオライト22が5A型ゼオライトで10g用いる場合、耐熱耐圧容器21は内容積が10Lのものを用い、気体分子には塩化水素を用いて、その塩化水素を窒素で体積濃度17.6%に希釈した気体を用いることが好ましい。このとき、常温(25℃)、10L、1気圧(101325Pa)の体積濃度17.6%の気体に含まれる塩化水素の気体分子は、0.0718molで、5A型ゼオライト10gに含まれるカルシウムイオンの2倍である。したがって、塩化水素を過不足なく反応させることができるため、非常に効率良く、塩化水素を使用することができる。なお、耐熱耐圧容器21の内容積は10Lに限定されず、また気体分子に塩化水素を含む気体の濃度も体積濃度17.6%に限定されるものではなく、ゼオライト22に含まれるカルシウムイオンの2倍量の塩化水素を耐熱耐圧容器21内に注入できればよい。
【0054】
次に、具体的操作について説明する。
【0055】
まず、蓋23を開き、5A型ゼオライト10gを耐熱耐圧容器21内に略均一に敷き詰める。次に、蓋23を閉じ、バルブA24とバルブB26が閉じているのを確認した後、真空ポンプ25を作動させ、ゆっくりとバルブA24を開き、耐熱耐圧容器21内部を真空にする(ゼオライト密閉工程)。耐熱耐圧容器21内の到達真空度に特に限定はないが、好ましくは1000Pa以下である。このとき、ゼオライト22の吸着物を脱着させるために、温度調整器28とヒータ29を作動させ、温度センサ30と温度調整器28によりヒータ29への入力を制御し、ゼオライト22を300℃未満の温度で加熱することが好ましい。約1時間程度、真空ポンプ25を作動させた後、バルブA24を閉じ、真空ポンプ25を止める。
【0056】
次に、予め窒素で塩化水素を体積濃度17.6%に希釈した気体が入っている(反応ガス準備工程)高圧ガス容器27の栓(図示せず)を開き、バルブB26を開いて、体積濃度17.6%の塩化水素を耐熱耐圧容器21内に導入し、内部の圧力が1気圧(101325Pa)に到達したところでバルブB26を閉じる(反応ガス注入工程)。このとき、耐熱耐圧容器21内が常温であれば、上述したとおり耐熱耐圧容器21内の圧力は1気圧であるが、ゼオライト22の反応速度を向上させるため、温度調整器28とヒータ29を作動させ、耐熱耐圧容器21内の平均温度が例えば約80℃となった場合、圧力は約1.18気圧に上昇する。このようにして圧力を高めることで、さらに反応速度は向上する。
【0057】
ゼオライト22を加熱せず、耐熱耐圧容器21内が常温の場合、1〜3時間保持した後、蓋23を開け、ゼオライト22を取り出す。なお、ゼオライト22の温度を250℃程度に加熱し、耐熱耐圧容器21内の平均温度が例えば約80℃程度の場合は、10〜30分程度で反応が完了すると思われる。
【0058】
このようにして、吸湿剤を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明の吸湿剤の製造方法により得られる吸湿剤は、例えば下駄箱や押入れ、バスルームなど居住空間で除湿が必要なところに配置し、その空間を強力に除湿することができ、そしてそれを熱再生し、繰り返し使用することができる吸湿剤として利用できる。
【0060】
また、本発明の吸湿剤をデシカント式除湿機のデシカントロータに担持させることで、小型で除湿性能の高いデシカント式除湿機として利用することができる。さらには、本発明の吸湿剤を担持したデシカントロータを用い、これに外気の水分を吸湿させ、熱再生により放出した水分を部屋へ導入することで加湿デバイスとして利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 吸湿剤
2 ゼオライト
3 潮解性を有する金属化合物
11 ソーダライト単位
12 細孔
21 耐熱耐圧容器
22 ゼオライト
23 蓋
24 バルブA
25 真空ポンプ
26 バルブB
27 高圧ガス容器
28 温度調整器
29 ヒータ
30 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤の製造方法であって、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンを有するゼオライトの前記金属カチオンを、塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させて前記ゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物を形成させてなる吸湿剤を製造する吸湿剤の製造方法。
【請求項2】
化学反応時に前記ゼオライトが加熱状態である請求項1に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライトは親水性ゼオライトである請求項1または2に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項4】
前記ゼオライトはA型であり、かつ金属カチオンはカルシウムイオンである請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項5】
前記気体分子は塩化水素である請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項6】
前記気体分子と前記金属カチオンがカルシウムイオンであるゼオライトとを密閉容器に入れ、前記気体分子は塩化水素で、前記塩化水素は前記カルシウムイオンの2倍のモル数である請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項7】
前記密閉容器内の圧力は0.1Mpa以上、0.5Mpa未満である請求項6に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項8】
前記潮解性を有する金属化合物は塩化カルシウムである請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる吸湿剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−161357(P2011−161357A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26191(P2010−26191)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】