説明

吸着剤ブロック及びその製造方法、吸着器、吸着式ヒートポンプ

【課題】活性炭繊維の吸着性能を低下させずに、活性炭繊維を高密度で充填できるようにする。
【解決手段】複数の活性炭繊維3を金属シート18で筒状に被覆し、複数の活性炭繊維3を被覆した筒状の金属シート18を一方向に圧延し、切断して、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維3と、複数の活性炭繊維3の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シート18とを備える吸着剤ブロック19を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤ブロック及びその製造方法、吸着器、吸着式ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止やエネルギー資源の保全など、環境負荷低減のための技術開発の重要性が急速に増大している。
その中で、従来は利用価値がなく捨てていた廃熱を回収及び再利用する技術が注目を集めている。その一つが、吸着式ヒートポンプである。
吸着式ヒートポンプは、吸着質(例えば水、メタノール等)が吸着剤(例えばシリカゲル、活性炭等)に対して吸脱着する際に生じる潜熱の移動を利用することで、例えば100℃以下の低質な熱エネルギーを利用可能な冷熱に変換する技術である。脱着時に必要な温熱は、吸着剤によっては例えば60℃程度の比較的低い温度でも良い。このため、種々の低温廃熱からエネルギーを回収できる技術として、多くの研究がなされてきた。
【0003】
しかし、吸着式ヒートポンプは、効率を高めることが難しい。また、装置が大型化してしまう。このため、これまで実用化は限られた用途にとどまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−103979号公報
【特許文献2】特開平10−165745号公報
【特許文献3】特表平9−504085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の吸着式ヒートポンプは、吸着剤が吸着質を吸脱着することで、低温廃熱(温熱)から冷熱を生成するシステムであり、その主要部品である吸着器は、熱交換器に吸着剤を充填することによって構成される。
吸着剤としては、吸着量及び吸着速度が大きいという点で、活性炭繊維が優れている。
しかしながら、活性炭繊維は、その形態から嵩密度が低く、熱交換器に少量しか充填することができない。
【0006】
なお、バインダや例えば500℃以上の高温加熱処理を用いて活性炭繊維を高密度に充填することも考えられるが、活性炭繊維の吸着性能が低下してしまう。
そこで、活性炭繊維の吸着性能を低下させずに、活性炭繊維を高密度で充填できるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本吸着剤ブロックの製造方法は、複数の活性炭繊維を金属シートで筒状に被覆し、複数の活性炭繊維を被覆した筒状の金属シートを一方向に圧延し、切断して、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、複数の活性炭繊維の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備える吸着剤ブロックを製造することを要件とする。
本吸着剤ブロックは、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、複数の活性炭繊維の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備えることを要件とする。
【0008】
本吸着器及び本吸着式ヒートポンプは、上記の吸着剤ブロックを含むことを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本吸着剤ブロック及びその製造方法、吸着器、吸着式ヒートポンプによれば、活性炭繊維の吸着性能を低下させずに、活性炭繊維を高密度で充填できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)、(B)は、本実施形態にかかる吸着剤ブロックの製造方法及び吸着剤ブロックの構成を説明するための模式図である。
【図2】(A)〜(C)は、本実施形態の具体例にかかる吸着剤ブロックの製造方法及び吸着剤ブロックの構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態にかかる吸着器の製造方法及び吸着器の構成を説明するための模式図である。
【図4】本実施形態にかかる吸着式ヒートポンプの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる吸着剤ブロック及びその製造方法、吸着器、吸着式ヒートポンプについて、図1〜図4を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる吸着式ヒートポンプは、吸着剤が吸着質を吸脱着することで、熱源からの低温廃熱等の温熱から冷熱を生成する吸着式ヒートポンプである。
本吸着式ヒートポンプでは、以下のようにして温熱から冷熱を生成する。
【0012】
まず、減圧した容器の中に、吸着剤と、吸着剤に対して吸脱着可能な液体の吸着質とが封入されている。そして、気体の吸着質が吸着剤に吸着して雰囲気中の吸着質の蒸気圧が減少すると、液体の吸着質が蒸発(気化)する。この蒸発の際に吸着質は熱を奪うため、そこから冷熱を取り出すことができる。これを吸着過程という。
一方、吸着質を吸着した吸着剤を、温熱を用いて加熱すれば、気体の吸着質が吸着剤から脱着する。そして、脱着した気体の吸着質を、例えば冷却水などを用いて冷やせば、凝縮して、液体の吸着質に戻る。これを脱着過程という。
【0013】
このような吸着過程と脱着過程とを繰り返して、温熱から冷熱を生成する。
このため、本吸着式ヒートポンプは、図4に示すように、液体の吸着質を蒸発させて気体の吸着質にする蒸発器1と、気体の吸着質を凝縮させて液体の吸着質にする凝縮器2と、吸着質を吸脱着しうる吸着剤3を有する2つの吸着器4、5とを備える。
そして、蒸発器1と凝縮器2とは、第1流路6によって接続されている。また、蒸発器1及び凝縮器2の一方の側(図4中、左側)に一の吸着器4が接続されている。つまり、蒸発器1の一方の側と一の吸着器4とは、第2流路7によって接続されており、凝縮器2の一方の側と一の吸着器4とは、第3流路8によって接続されている。さらに、蒸発器1及び凝縮器2の他方の側(図4中、右側)に他の吸着器5が接続されている。つまり、凝縮器2の他方の側と他の吸着器5とは、第4流路9によって接続されており、蒸発器1の他方の側と他の吸着器5とは、第5流路10によって接続されている。また、第2流路7、第3流路8、第4流路9及び第5流路10には、それぞれ、流路の開閉を行なうバルブ11〜14が設けられている。なお、蒸発器1、凝縮器2、吸着器4、5及び各流路6〜10は、内部に密閉された空間を有し、吸着式ヒートポンプの使用時には、この空間は通常減圧された状態になっている。
【0014】
ここでは、蒸発器1は、液体の吸着質を気体の吸着質に相変化させるものであり、冷熱を取り出すための熱交換器を含み、熱搬送用媒体として、液体の吸着質が蒸発する際に生じた冷熱を外部へ搬送しうる流体を流す管状部材15を備える。この蒸発器1では、吸着過程で一方の吸着器(図4では吸着器4)で気体の吸着質が吸着され、流路(図4では第2流路7)を介して、蒸発器1から一方の吸着器へ気体の吸着質が流出することによって、液体の吸着質が蒸発する。そして、液体の吸着質が蒸発する際に生じた冷熱は、管状部材15の内部を流れる熱搬送用媒体としての流体によって外部へ搬送され、例えば冷却に用いられる。
【0015】
凝縮器2は、気体の吸着質を冷却して液体の吸着質に相変化させる熱交換器であり、熱搬送用媒体として、吸着質の凝縮点よりも低い温度の流体(ここでは冷却水)を流す管状部材16を備える。この凝縮器2は、脱着過程で一方の吸着器(図4では吸着器5)から流路(図4では第4流路9)を介して流入する気体の吸着質を冷却して液体の吸着質に相変化させる。そして、液体の吸着質は、第1流路6を介して、凝縮器2から蒸発器1へ送られる。
【0016】
吸着器4、5は、それぞれ、内部に流体を流すことができる管状部材17を備え、管状部材17の周囲に吸着剤3が充填された熱交換器である。ここでは、吸着剤3として、吸着量及び吸着速度が大きい糸状の活性炭繊維を用いる。また、吸着質は、水である。なお、吸着質として、メタノール、エタノールなどのアルコールを用いても良い。
ここで、吸着剤3は、特定の温度以上では吸着質の脱着が支配的に起こり、それよりも低い温度では吸着が支配的に起こる。
【0017】
このため、管状部材17に流す流体の温度によって、吸着剤3の温度が制御され、これにより、吸着質の脱着又は吸着が制御されるようになっている。
つまり、吸着器4、5に備えられる吸着剤3に吸着質を吸着させる吸着過程では、管状部材17に、吸着質の吸着が支配的になる温度に制御しうる熱搬送媒体としての流体を流す。ここでは、冷却水を熱搬送媒体として流し、吸着剤3を冷却することによって、吸着剤3に吸着質を吸着させる。
【0018】
一方、吸着器4、5に備えられる吸着剤3から吸着質を脱着させる脱着過程では、管状部材17に吸着質の脱着が支配的になる温度に制御しうる熱搬送媒体としての流体を流す。ここでは、吸着剤3から吸着質を脱着させるのに必要な温度は約60℃程度である。このため、約100℃以下の比較的低温の廃熱などを温熱として利用する。つまり、廃熱などから回収した温熱を熱搬送媒体としての流体によって搬送し、吸着剤3を加熱することによって、吸着剤3から吸着質を脱着させる。
【0019】
このように構成される吸着式ヒートポンプでは、バルブ11〜14の開閉状態を切り替えることで、吸着過程と脱着過程とを繰り返して、温熱から冷熱を連続的に生成することができる。
例えば、図4に示すように、バルブ11、13を開いた状態とし、バルブ12、14を閉じた状態とした場合には、一方の吸着器4(図4中、左側)は蒸発器1に接続され、他方の吸着器5(図4中、右側)は凝縮器2に接続される。この場合、一方の吸着器4には、冷却水を流して、吸着剤3を冷却し、他方の吸着器5には、廃熱などから回収した温熱を流体によって搬送して、吸着剤3を加熱する。これにより、一方の吸着器4に備えられる吸着剤3に吸着質が吸着し、他方の吸着器5に備えられる吸着剤3から吸着質が脱着する。つまり、蒸発器1に接続された一方の吸着器4は、吸着過程となり、凝縮器2に接続された他方の吸着器5は、脱着過程となる。
【0020】
一方、バルブ12、14を開いた状態とし、バルブ11、13を閉じた状態とした場合には、他方の吸着器5(図4中、右側)は蒸発器1に接続され、一方の吸着器4(図4中、左側)は凝縮器2に接続される。この場合、他方の吸着器5には、冷却水を流して、吸着剤3を冷却し、一方の吸着器4には、廃熱などから回収した温熱を流体によって搬送して、吸着剤3を加熱する。これにより、他方の吸着器5に備えられる吸着剤3に吸着質が吸着し、一方の吸着器4に備えられる吸着剤3から吸着質が脱着する。つまり、蒸発器1に接続された他方の吸着器5は、吸着過程となり、凝縮器2に接続された一方の吸着器4は、脱着過程となる。
【0021】
このようにして、バルブ11〜14の開閉状態を切り替えることで、吸着過程と脱着過程とを繰り返して、温熱から冷熱を連続的に生成することができる。
なお、ここでは、一方の吸着器4の吸着過程と他方の吸着器5の脱着過程とが同時に行なわれ、一方の吸着器4の脱着過程と他方の吸着器5の吸着過程とが同時に行なわれ、これらが繰り返し行なわれるようにしているが、これに限られるものではない。例えば、一方の吸着器4の吸着過程と他方の吸着器5の吸着過程とが同時に行なわれ、一方の吸着器4の脱着過程と他方の吸着器5の脱着過程とが同時に行なわれ、これらが繰り返し行なわれるようにしても良い。つまり、吸着過程と脱着過程とを段階的に行なうようにしても良い。この場合、吸着過程では、バルブ11、14を開いた状態とし、バルブ12、13を閉じた状態とし、両方の吸着器4、5に冷却水を流して、吸着剤3を冷却すれば良い。一方、脱着過程では、バルブ12、13を開いた状態とし、バルブ11、14を閉じた状態とし、両方の吸着器4、5に廃熱などから回収した温熱を流体によって搬送して、吸着剤3を加熱すれば良い。
【0022】
ところで、上述のように、吸着剤3として活性炭繊維を用いる場合、活性炭繊維は、その形態から嵩密度が低く、吸着器に少量しか充填することができない。
そこで、本実施形態では、図1、図3に示すように、まず吸着剤としての活性炭繊維3を筒状の金属シート18で被覆して吸着剤ブロック19を作製し、この吸着剤ブロック19を吸着器4、5に備えられる管状部材17に接するように設けることによって、吸着器4、5に吸着剤としての活性炭繊維3を充填するようにしている。
【0023】
この場合、吸着器4、5は、吸着剤ブロック19を含むものとなる。また、吸着式ヒートポンプは、吸着剤ブロック19を含むものとなる。なお、本吸着剤ブロック19は、上述の吸着式ヒートポンプに用いられるため、吸着式ヒートポンプ用吸着剤ブロックともいう。具体的には、本吸着剤ブロック19は、上述の吸着式ヒートポンプに備えられる吸着器4、5に用いられる。つまり、吸着式ヒートポンプに備えられる吸着器4、5を構成する熱交換器に吸着剤としての活性炭繊維3を充填するために用いられる。このため、吸着器用吸着剤ブロックともいう。
【0024】
本実施形態にかかる吸着剤ブロック19は、図1(B)に示すように、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維(吸着剤)3と、複数の活性炭繊維3の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シート18とを備える。
ここでは、活性炭繊維3は、吸着質に対する親和性を付与する処理が施されている。本実施形態では、吸着質は水であるため、活性炭繊維3は、親水化処理が施されている。なお、吸着質として、メタノール、エタノールなどのアルコールを用いる場合には、活性炭繊維3は、アルコールに対する親和性を付与する処理が施されたものとなる。
【0025】
次に、本吸着剤ブロック19の製造方法について、図1、図2を参照しながら説明する。
まず、図2(A)、(B)に示すように、複数の活性炭繊維3を金属シート18で筒状に被覆する。これを被覆工程という。
次に、図1(A)、(B)、図2(C)に示すように、複数の活性炭繊維3を被覆した筒状の金属シート18を一方向に圧延し、切断する。これを圧延・切断工程という。これにより、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維3と、複数の活性炭繊維3の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シート18とを備える吸着剤ブロック19が製造される。
【0026】
具体的には、まず、活性炭繊維3に、吸着質に対する親和性を付与する処理を施す。本実施形態では、吸着質は水であるため、活性炭繊維3に親水化処理を施す。なお、吸着質として、メタノール、エタノールなどのアルコールを用いる場合には、活性炭繊維3に、アルコールに対する親和性を付与する処理を施す。
次に、吸着質に対する親和性を付与された活性炭繊維3に、吸着質と同一の液体を含ませる。本実施形態では、親水化処理を施した活性炭繊維3のかたまり(チョップ状ないしトウ状のもの)に水を含ませる。これにより、活性炭繊維間を水で満たして空気を追い出す。
【0027】
このように、複数の活性炭繊維3を金属シート18で筒状に被覆する前に、活性炭繊維3に、吸着質に対する親和性を付与する処理を施し、親和性を付与された活性炭繊維3に吸着質と同一の液体を含ませる。本実施形態では、金属シート18で筒状に被覆する前に、活性炭繊維3に親水化処理を施し、親水化処理を施した活性炭繊維3に水を含ませる。
次に、図2(A)、(B)に示すように、複数の活性炭繊維3を金属シート18で筒状に被覆する。本実施形態では、水を含ませて空気を追い出した活性炭繊維3のかたまりを、塑性変形する金属シート18、好ましくは延性及び熱伝導性の高い金属シート18で円筒状に巻いて周囲(外周)を覆う。なお、金属シート18としては、例えば銅やアルミなどからなり、薄い膜状のものを用いれば良い。なお、円筒状に巻かれた金属シート18の継ぎ目は、例えば、融着、半田付け、接着剤等でつなぎ合わせる。
【0028】
そして、図2(C)、図1(A)、(B)に示すように、複数の活性炭繊維3を被覆した筒状の金属シート18を一方向に圧延(冷間圧延)し、切断する。
本実施形態では、活性炭繊維3のかたまりを包み込んだ筒状の金属シート18を、側面をガイド20で押さえながら、ロール21で圧延する。ここでは、活性炭繊維3のかたまりを包み込んだ筒状の金属シート18を、ロール21とガイド20とによって形成された空間から一方向へ引き抜くことによって圧延する。このような一方向への圧延によって、筒状の金属シート18は、四方から圧力を加えられて、径が小さくされながら、引き延ばされ、これと同時に、活性炭繊維3間の水が追い出され、複数の活性炭繊維3は、伸張方向に揃えられ、押し固められることになる。各活性炭繊維3は円柱状なので、一方向に向きを揃えて押し固めてやれば、充填密度を高めることができる。
【0029】
本実施形態では、上述のように、活性炭繊維3に親水化処理を施し、これに水を含ませておくため、個々の活性炭繊維3は内部で保持され、活性炭繊維3間を適度な割合の水で満たすことができる。このため、例えば有機系の媒質やバインダを用いることなく、水のみで活性炭繊維3間の摩擦と流動性を制御することができる。
その後、柱状に引き延ばされた成形体を所望の長さに切断する。
【0030】
これにより、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維3(活性炭繊維3の束)の外周が、一方向を軸方向とする筒状の金属シート18によって被覆された吸着剤ブロック19が製造される。このように、複数の活性炭繊維3を被覆した筒状の金属シート18を、加熱することなく、圧延成形し、個片に切断することで、吸着剤ブロック19が製造される。
【0031】
このようにして吸着剤ブロック19を製造した後、図3に示すように、吸着器4、5に備えられる管状部材17の周囲に複数の吸着剤ブロック19を充填する。これにより、複数の吸着剤ブロック19を備える吸着器4、5が製造される。
上述のようにして吸着剤ブロック19を製造することで、バインダや高温加熱処理を用いることなく、複数の活性炭繊維3の向きが一方向に揃い、高密度化されることになる。このような吸着剤ブロック19を用いることで、活性炭繊維3の吸着性能を低下させずに、活性炭繊維3が高密度に充填された吸着器4、5を実現することができる。
【0032】
また、上述のようにして吸着剤ブロック19を製造することで、複数の活性炭繊維3の向きを一方向に揃えることができ、この結果、活性炭繊維3同士は、点ではなく線で接触することになり、接触面積が大きくなり、熱伝導性が高まる。また、複数の活性炭繊維3の外周は金属シート18で被覆されており、各吸着剤ブロック19の金属シート18は、互いに接し、さらに管状部材17にも接するように、吸着剤ブロック19を配列・充填するため、金属シート18が伝熱フィンの役割を果たし、熱伝導性が高まる。これにより、吸着器4、5の吸脱着時の熱交換効率を高めることができる。また、複数の活性炭繊維3の向きが一方向に揃うことによって、各活性炭繊維3の間に軸方向に貫通した空隙が確保されるため、吸着質が各活性炭繊維3の間を通過しやすくなる。この結果、吸着式ヒートポンプの効率を向上させることができ、十分な出力が得られ、高性能化を実現することができる。
【0033】
さらに、上述のように、活性炭繊維3を金属シート18で被覆してブロック化することで、吸着器4、5内への吸着剤3の充填を容易に行えることになる。つまり、吸着剤3をブロック化することで、吸着器4、5の製造が容易となる。
したがって、本実施形態にかかる吸着剤ブロック及びその製造方法、吸着器、吸着式ヒートポンプによれば、活性炭繊維3の吸着性能を低下させずに、活性炭繊維3を高密度で充填できるという利点がある。
【0034】
また、吸着式ヒートポンプを、小型化、高効率化することができるため、例えば自動車やコンピュータなど、低温廃熱を発生する中・小型機械類に広く搭載することが可能となる。この結果、廃熱利用による省エネルギー、環境負荷の低減といった効果を期待することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0035】
例えば、吸着式ヒートポンプの構成は、上述の実施形態のものに限られるものではなく、少なくとも、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、複数の活性炭繊維の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備える吸着剤ブロックを含むものであれば良い。
また、例えば、吸着器の構成は、上述の実施形態のものに限られるものではなく、少なくとも、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、複数の活性炭繊維の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備える吸着剤ブロックを含むものであれば良い。
【0036】
また、例えば、吸着剤ブロックの製造方法は、上述の実施形態のものに限られるものではなく、他の方法によって、一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、複数の活性炭繊維の外周を被覆し、一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備える吸着剤ブロックを製造しても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 蒸発器
2 凝縮器
3 活性炭繊維(吸着剤)
4、5 吸着器
6 第1流路
7 第2流路
8 第3流路
9 第4流路
10 第5流路
11〜14 バルブ
15〜17 管状部材
18 金属シート
19 吸着剤ブロック
20 ガイド
21 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の活性炭繊維を金属シートで筒状に被覆し、
前記複数の活性炭繊維を被覆した筒状の前記金属シートを一方向に圧延し、切断して、一方向に向きが揃っている前記複数の活性炭繊維と、前記複数の活性炭繊維の外周を被覆し、前記一方向を軸方向とする筒状の前記金属シートとを備える吸着剤ブロックを製造することを特徴とする吸着剤ブロックの製造方法。
【請求項2】
前記複数の活性炭繊維を前記金属シートで被覆する前に、
前記活性炭繊維に、吸着質に対する親和性を付与する処理を施し、
前記吸着質に対する親和性を付与された前記活性炭繊維に前記吸着質と同一の液体を含ませることを特徴とする、請求項1に記載の吸着剤ブロックの製造方法。
【請求項3】
一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、
前記複数の活性炭繊維の外周を被覆し、前記一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備えることを特徴とする吸着剤ブロック。
【請求項4】
前記活性炭繊維は、吸着質に対する親和性を付与する処理が施されていることを特徴とする、請求項3に記載の吸着剤ブロック。
【請求項5】
一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、前記複数の活性炭繊維の外周を被覆し、前記一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備える吸着剤ブロックを含むことを特徴とする吸着器。
【請求項6】
前記活性炭繊維は、吸着質に対する親和性を付与する処理が施されていることを特徴とする、請求項5に記載の吸着器。
【請求項7】
一方向に向きが揃っている複数の活性炭繊維と、前記複数の活性炭繊維の外周を被覆し、前記一方向を軸方向とする筒状の金属シートとを備える吸着剤ブロックを含むことを特徴とする吸着式ヒートポンプ。
【請求項8】
前記活性炭繊維は、吸着質に対する親和性を付与する処理が施されていることを特徴とする、請求項7に記載の吸着式ヒートポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240256(P2011−240256A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114622(P2010−114622)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】