説明

吸着原理に従うヒートポンプ

【課題】 幅広い範囲で利用可能な、吸着原理に従うヒートポンプを提示する。
【解決手段】 吸着原理に従うヒートポンプが、それぞれ吸着剤を有する複数の中空要素を含み、前記中空要素内にそれぞれ作動媒体が入れられており、かつ、前記作動媒体が前記吸着剤と相変化領域との間を移動可能であり、前記中空要素が、バルブ装置(108)によって可変である流体回路(101)において熱輸送流体によって流通可能であり、これにより、前記中空要素が前記吸着剤の領域で前記流体と熱接触させられ、前記中空要素における前記流体の流通が周期的に切り替わる。前記バルブ装置の少なくとも1つの状態において、前記中空要素の少なくとも2つが並列に前記流体によって流通され、その際、前記中空要素の少なくとも2つが直列に順次流通される。また、前記中空要素の少なくとも1つの第1のサブセットが第1の循環ポンプ(103)の下流側に配置されており、前記中空要素の第2のサブセットが第2の循環ポンプ(103)の下流側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、それぞれ吸着・脱離領域と蒸発・凝縮領域あるいは相変化領域とを備えた複数の中空要素からなる吸着ヒートポンプを開示している。前記中空要素には前記領域の各々に熱輸送流体が流通され、その際、前記中空要素の連結が、前記流体流通に関してバルブ装置によって定期的に変化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/068481号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特に幅広い範囲で利用可能な、吸着原理に従うヒートポンプを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、冒頭に挙げたヒートポンプに関して、請求項1に記載の本発明に係る特徴により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
吸着剤の領域(前記ヒートポンプの収着側)において前記中空要素の幾つかに並列に流体を流通させることによって、これらの中空要素の収着側の温度を充分に適合させることが可能となり、これにより、基礎となる熱力学サイクルが拡張される。
【0007】
これは、例えば、ヒートポンプの温度リフトを増大させるために利用できる。特に、この場合、駆動温度差は比較的小さくなり得る。ここで、温度リフトとは、利用プロセスにおける温度差あるいは低温熱源(NQ)と中温ヒートシンク(MS)との間の温度差を意味し、従って、例えば冷却装置として用いる場合、低温熱源と可能な限り低い蒸発器温度および/または可能な限り高い再冷却温度(あるいは凝縮温度と吸着温度)との間の温度差を意味する。また、この場合、駆動温度差とは、駆動プロセスにおける温度差を意味し、従って、例えば、(高温)熱源と再冷却部あるいは中温熱源との間の温度差、つまり冷却運転モードの場合には(高温)熱源と再冷却温度との間の温度差を意味する。特に、本発明に係る前記解決手段によって、温度リフトと駆動温度差との間の比は増大され、その際、プロセスの負荷幅を余り小さくし過ぎることがなく、その結果、利用範囲が拡大される。本発明は、補足的にまた、所定の温度リフトにおいて、当該設備の利用可能な負荷幅と、従ってまたその熱COP(成績係数)とを増大させるためにも利用できる。
【0008】
本発明の好ましい1実施形態では、バルブ装置の各状態において、前記複数の中空要素の少なくとも2つの群にそれぞれ並列に流体を流通させることができ、その際、前記群の少なくとも1つの群が熱交換器の直ぐ下流側に配置されている。熱交換器は、好都合には、様々な温度レベルでそれぞれの蓄熱体と熱交換し、例えば一方では熱源と、もう一方では蓄冷体と熱交換する。熱源の例としては、ソーラーモジュールや、ブロック型コージェネレーション設備の廃熱などが可能である。蓄冷体は、例えば外気であることが可能であり、その際、前記対応する熱交換器により、外界へ「乾燥」放熱を行うことができる。
【0009】
一般に有利には、温度リフトと駆動温度差とからなる比を最適化するために、全体的に並列に流体が流通される中空要素の個数は、前記流体が流通される中空要素の総数のうちの少なくとも約4分の1、特に好ましくは少なくとも約3分の1であることが実現されている。
【0010】
さらに、本発明の特に好ましい1実施形態では、特に好ましくはさらに別のバルブ装置によって可変である流体回路において、前記中空要素にさらに別の熱輸送流体が流通可能であることが実現されており、これにより、前記中空要素は、相変化領域で前記別の流体と熱接触し、その際、前記中空要素における前記別の流体の流通が周期的に切り替わる。吸着領域だけでなく相変化領域でも前記のように部分的に並列に流体を流通させることによって、前記温度リフトをさらに増大させることができる。具体的な構成に応じて、相変化側の流体回路を吸着側の流体回路から完全に分離しておくことが可能であり、この場合、さらに最適化するためにまた異なる流体を用いることもできる。しかしまた、具体例として、前記両流体回路を互いに結合しておくことも可能であり、例えば、同じ熱交換器を再冷却器として共用すること、従って低コストで利用することができる。本発明に係るヒートポンプの特に適切な熱輸送流体の例は、通常の水/グリコール混合物であり、必要に応じて、冷却回路で用いられる種類の防食添加剤が加えられる。
【0011】
好都合には、前記吸着側の流体回路にも前記相変化側の流体回路にもそれぞれ個別のバルブ装置が具備されており、前記中空要素に周期的に切り替えて流体を流通できる。しかし、また一般に、両側を同一の組み込まれたバルブ装置によって制御することも考えられる。本発明には、一般に、バルブ装置の全ての構造形態が含まれる。
【0012】
好ましい1詳細態様では、前記特に好ましくはさらに別のバルブ装置の少なくとも1つの状態、特に好ましくは各状態において、相変化領域における前記中空要素の少なくとも2つに並列に前記別の流体が流通され、その際、前記中空要素の少なくとも2つに順次直列に流体が流通される。好ましいが、必須ではない別態様では、前記特に好ましくはさらに別のバルブ装置の各状態において、前記複数の中空要素の少なくとも2つの群に、相変化領域でそれぞれ並列に前記別の流体が流通されることが実現されており、その際、熱交換器が前記群のうち少なくとも1つ群の直ぐ上流側に配置されている。
【0013】
本発明において特に有効であるのは、収着側でも相変化側でも、それぞれ幾つかの中空要素には並列に、かつ、幾つかの中空要素には直列に流体が流通されるヒートポンプである。この場合、これらの様々に流体が流通される中空要素は、前記両側について所定の位相位置に配置すべきである。このようにすることで、特に有利には、収着領域において互いに対して並列に流体が流通される1つの群の中空要素に、その相変化側においてそれぞれ互いに対して直列に流体を流通させることができ、かつ、その逆も可能となる。前記ヒートポンプの機能を精密最適化するために、中空要素に収着側で並列(直列)に、かつ、相変化側で直列(並列)に流体が流通されるこの配設は、しかしまた、互いに対してある種の位相のずれ、例えば中空要素1つまたは2つ分のずれを有することもできる。代替的または補完的に、バルブ調整の時点を互いに対して所定の時間ステップだけずらすことも可能である。従って、当該システムの熱慣性を考慮することが可能である。
【0014】
本発明の好ましい1実施形態では、前記バルブ装置の所与の状態において、中空要素のサブセットが部分回路に連結されており、その際、前記熱輸送流体が、追加的な循環ポンプによって前記部分回路を循環させられる。これにより、一般に、前記様々な群の並列および直列に貫流される中空要素の質量流を少なくとも部分的に互いに独立して調節するための自由度が作り出される。第1の可能な詳細態様の場合、全部で2つの循環ポンプが具備されており、第1の部分回路が第1の循環ポンプによって循環され、第2の部分回路が前記第1の部分回路に連通されて第2の循環ポンプによって循環される。これにより、構造上のコストと前記質量流の可制御性との間の良好な妥協点が得られる。しかしまた、前記様々な群の並列および直列に貫流される中空要素について質量流を最適に決定するために、全部で3つの部分回路を設けておくことも可能であり、この場合、前記部分回路が分離されており、それぞれ3つの循環ポンプのうちの1つによって循環される。
【0015】
代替的な低コストの構造様式の場合、循環ポンプをただ1つのみ設けることも可能であり、この場合、分岐部によって前記中空要素への前記質量流の分配が簡便に行われる。
【0016】
ヒートポンプのさらに別の最適化された実施形態の場合、前記中空要素の少なくともそれぞれ1つに、特にその相変化領域において熱輸送流体が流通しない。この場合、好ましい詳細態様では、流体が流通しない前記中空要素はそれぞれ、前記相変化領域で熱を収容する中空要素の群と前記相変化領域で熱を放出する中空要素の群との間に配置されている。これにより、断熱ゾーンが、隣接する中空要素の前記相変化領域の間に特に大きな温度差によって作り出され、この温度差により、不所望な熱流が低減され、ヒートポンプの効率が全体的に改善される。
【0017】
本発明の有利な1実施形態では、前記バルブ装置が、円筒シェルとその中に回動可能に配置された弁体とを備えた少なくとも1つの、特に好ましくはただ1つの回転バルブを含む。この場合、通例、前記収着側にも前記相変化側にも固有のバルブ装置が配設されているが、これらのバルブ装置は、それぞれ類似または同一の構造であってもよい。
【0018】
簡単かつ有効な構造形態の好ましい別態様では、前記回転バルブは、前記個々の中空要素に接続するための端面側の供給部と排出部とを有する。
【0019】
ヒートポンプの回転バルブの一般に有利な構造形態の場合、前記弁体が少なくとも1つの環状スペースを構成し、その際、少なくとも2つの軸方向の通路が前記環状スペース内へ連通し、これらの通路が並列に連結された中空要素にそれぞれ結合されており、かつ、前記環状スペースに少なくとも1つの径方向開口部が設けられていて、この開口部が前記環状スペースを介して前記少なくとも2つの軸方向の通路に接続されている。これにより、前記中空要素の群を前記軸方向の通路を介して並列に連結することが容易に実現でき、その際、前記並列に連結された中空要素が、前記バルブ装置がさらに回動することによって切り替わる。前記環状スペースの前記径方向の接続部は、好都合には、熱交換器に結合されており、従って、これらの熱交換器は、流れ方向に応じて、前記並列に連結された中空要素の上流側または下流側に配置されている。
【0020】
本発明の前記課題は、さらに、冒頭で挙げたヒートポンプに関して、請求項15に記載の特徴によって解決される。前記中空要素の少なくとも1つの第1のサブセットを第1の循環ポンプの下流側に配置し、前記中空要素の第2のサブセットを第2の循環ポンプの下流側に配置することによって、所与の構造サイズにおいて、とりわけ特に効果的な熱交換が実現できる。この場合、好ましい1実施形態では、前記サブセットのうちの前記少なくとも1つが少なくとも2つの中空要素を含み、これらの中空要素が互いに並列に前記それぞれの循環ポンプの下流側に配置されている。少なくとも、かなり多くの個数、例えば8個または12個の中空要素が設けられており、それぞれの切り替え位置において、前記サブセットの各々に前記中空要素のうちの2個以上が割り当てられている。しかしまた、然るべき要件がある場合には、前記サブセットのうちの少なくとも1つが、最小数の場合にはただ1つの中空要素のみを含むこともあり得る。
【0021】
本発明の特に好ましい1実施形態の場合、中空要素の前記両サブセットが、前記バルブ装置の前記少なくとも1つの状態において、流体の、互いに分離された2つの部分回路に属することが実現されている。これにより、前記ヒートポンプの特に高い出力密度が可能となる。その際、特に好ましくは、前記分離された部分回路は、これらの部分回路がどのような種類の熱源またはヒートシンクと熱交換を行うかに従って、様々な個数の中空要素を有することができる。例えば、前記第1の部分回路が高温熱源(HQ)に接続され、前記第2の部分回路が中温ヒートシンク(MS)に接続されている場合、好ましくは、前記第1の部分回路の中空要素の個数は、前記第2の部分回路の中空要素の個数よりも少ない。前記両部分回路への前記中空要素の配分は、好ましくは1:3から1:1までの比で行われ、特に好ましくは約2:5から約4:5までの比で行われる。前記中空要素の総数が許す限り、約1:2の配分が特に有利である。
【0022】
本発明の代替的または補完的な1実施形態では、中空要素の前記第1のサブセットが前記流体の第1の部分回路に属し、中空要素の前記第2のサブセットが前記流体の第2の部分回路に属することが実現されており、この場合、前記両部分回路は少なくとも1つの中空要素を介して互いに接続されている。これにより、一方では、有効な熱交換と、従ってまた良好な出力密度とが実現されており、その際、さらに、熱回収するように前記部分回路を連結することによって、総合効率を向上させることが可能となっている。この場合、特に好ましい詳細態様では、前記部分回路の前記中空要素のうちのそれぞれただ1つが、前記それぞれ別の部分回路に接続されている。この接続は、例えば、前記それぞれただ1つの中空要素の出口を吸入側において前記他方の部分回路の循環ポンプに結合することによって実現することができる。
【0023】
さらに、一般に有利には、前記ヒートポンプを最適化するために、前記バルブ装置が、前記個々の接続された中空要素に流体を流通させるための断面積調整部および/または絞り要素を含むことが可能であり、これらの部材によって、回収される熱が最大化される。
【0024】
一般に有利には、請求項15〜19のいずれか1項に記載のヒートポンプが、さらなる最適化を可能にするために、請求項1〜14のいずれか1項以上に記載の特徴をさらに有することが実現されている。
【0025】
本発明のその他の利点および特徴については、以下に説明する実施例および従属請求項によって明らかにする。
【0026】
以下において、本発明の複数の実施例について説明し、添付した図面を用いてさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るヒートポンプの第1の実施例の回路構成を示す。
【図2】図1のヒートポンプの収着側および相変化側のサイクルを示す温度−圧力グラフである。
【図3】図1のヒートポンプの収着側の流体流通を制御するための回転バルブを示す模式展開図である。
【図4】図3の回転バルブの長手方向断面を示す模式図である。
【図5】図4の回転バルブの、線A−Aに沿った断面図である。
【図6】図4の回転バルブの、線B−Bに沿った断面図である。
【図7】図1のヒートポンプの相変化側の流体流通を制御するための回転バルブを示す模式展開図である。
【図8】図7の回転バルブの長手方向断面を示す模式図である。
【図9】本発明に係るヒートポンプの第2の実施例の回路構成を示す。
【図10】図9のヒートポンプの収着側および相変化側のサイクルを示す温度−圧力グラフである。
【図11】本発明に係るヒートポンプの第3の実施例の回路構成を示す。
【図12】本発明に係るヒートポンプの第4の実施例の回路構成を示す。
【図13】本発明の第5の実施例の回路構成を示す。
【図14】本発明の第6の実施例の回路構成を示す。
【図15】図14のヒートポンプの収着側の流体流通を制御するための回転バルブを示す模式展開図である。
【図16】図14のヒートポンプの相変化側の流体流通を制御するための回転バルブを示す模式展開図である。
【図17】図13〜16の諸回路で意図されている理想的な矩形プロセス管理を示すLOG P−1/T図であり、負荷幅が増大されている。
【実施例】
【0028】
図1に機能系統的に示されたヒートポンプは、複数の、ここでは12個の中空要素を含み、これらの中空要素は、好ましくはそれぞれ同一構造で、かつ、相互に並べて配置されている。このような中空要素の精密な設備上の実施態様は公知であり、例えば、特許文献1に見て取ることができる。前記中空要素は、例えば密封して閉鎖された長手体として構成することができ、端部領域に、一方ではそれぞれ吸着剤が設けられており、もう一方では液体を貯蔵するための手段、例えば毛管構造体が設けられている。
【0029】
前記12個の中空要素の各々は、図1の左半分に示されたそれぞれ1つの収着領域(SZ1〜SZ12)を有する。前記収着領域には、それぞれ、ある量の吸着剤、例えば活性炭が存在する。さらに、前記中空要素の各々は、図1の右半分に示された相変化領域(PZ1〜PZ12)を毛管構造体の形態で有する。
【0030】
諸図に含まれる1〜12の数字を付した符号は、それぞれ文脈に応じて、前記中空要素の付番、および/または、それらの収着領域および相変化領域の付番に関連する。
【0031】
前記中空要素内には、それぞれ所定量の作動媒体、ここではメタノールが入れられており、これにより、前記作動媒体は、前記収着領域および/または相変化領域の印加温度に従って前記吸着剤と前記毛管構造体との間を移動することができる
前記収着側(図1左側)と前記相変化側(図1右側)とには、それぞれ流体回路101、102が設けられており、これらの流体回路を用いて、前記中空要素の前記個々の収着領域と相変化領域とに熱輸送流体を流通させることが可能である。そのために、各流体回路に対してそれぞれ1つの循環ポンプ103が設けられており、かつ、図1に示されていないバルブ装置が設けられていて、このバルブ装置を用いて、前記中空要素は、前記流体回路における前記要素の状態に関して周期的にステップ切り替えを行うことができる。
【0032】
前記収着領域では、前記収着領域SZ1〜SZ12との前記流体の熱交換以外に、熱交換器105を介した熱源HQ(高温蓄熱体)との交換および再冷却器としての熱交換器106を介した熱源MS(中温蓄熱体)との交換もまた行われる。
【0033】
前記相変化領域では、前記相変化領域PZ1〜PZ12との前記流体の熱交換以外に、熱交換器107を介した熱源NQ(低温蓄熱体)との交換および熱交換器106’を介した熱源MS(中温蓄熱体)との交換もまた行われる。実施形態に応じて、特に前記中温熱源は同一であることも可能であり、例えば外気の形態であってもよい。その際、前記それぞれの熱交換器106、106’は、構造上組み込んでおくことが可能であり、あるいはまた、例えば前記両流体回路101、102を接続した上でただ1つの熱交換器として備えることも可能である。
【0034】
住居スペースの空調を行うために前記ヒートポンプを用いることが可能である場合、前記熱交換器107は蒸発器に相当し、この蒸発器は、同時に空気の除湿も行えるように可能な限り露点以下の温度レベルNQにまで気流を冷却できるように構成されている。次に、前記蓄熱体MSは外気であってもよい。前記熱源HQは、例えばブロック型コージェネレーション設備の廃熱またはソーラーモジュールの熱であることも可能である。そして最後に、前記レベルMSから前記レベルNQへ(「温度リフト」MS−NQ)の前記空気の冷却は、前記レベルHQから前記レベルMSへ(「駆動温度差」HQ−MS)の熱流によって駆動される。
【0035】
図2の等比体積線図に示されたサイクルは、この場合、12個のサブステップに分解され、これらのサブステップを、各中空要素が時間的にずれながら次々と通過する。前記サブプロセスの数は前記中空要素の個数に一致するので、各サブプロセスには、当該サブプロセスを通過するただ1つの中空要素が存在する。簡単化のために、観察時点は、前記中空要素の番号が前記サブプロセスの番号に一致するように選定されている。所定の時間間隔の後、各中空要素は1プロセスステップずつ切り替えられ、この切り替えは継続されて、12のステップの後に全サイクルが再び実施される。
【0036】
図1から見て取れるように、前記熱媒流体が前記中空要素の中を、収着側において部分的に並列に貫流し、かつ、部分的に降順の中空要素番号の方向に直列に貫流する。これにより、前記諸プロセスステップにおいて、吸着温度が変化しながら、前記中空要素の順流回路(昇順の中空要素番号)に対する中空要素の一種の逆流回路(降順の中空要素番号)が生じる。これに対し、収着温度が同じである前記中空要素は並列に貫流される。
【0037】
図1の右側では、前記相変化側(蒸発/凝縮ゾーン)においても、前記中空要素に流体が並列に流通される領域と直列に流通される領域とが存在し、また、2つの貫流されない中空要素(番号1と7)が存在している。
【0038】
従って、回路構成上、前記収着ゾーン(図1左側)と前記相変化ゾーン(図1右側)との前記流体回路101に4つの領域が存在し、これらの領域の機能について、図2を用いてまず全般的な説明を、その後に詳細な説明を行う。
【0039】
図2の状態1から状態5までのプロセスステップは、温度低下時の熱除去を含む(1=>2:等比体積冷却および2=>5:等圧吸着)。その後、圧力上昇時の等温熱除去段階が状態点7まで続く(等温吸着)。状態点7から11のプロセスステップは、温度上昇時の熱供給を特徴とする(7=>8:等比体積加熱および8=>11:等圧脱離)。この後、圧力低下時の等温熱供給段階が再び前記状態点1に達するまで続く(等温脱離)。
【0040】
図1において括弧内に示された、前記中空要素領域の名称に対する添字は、下記意味である。
【0041】
+Q:熱供給、−Q:熱放出、A:吸着、D:脱離、T:温度変化、∨:蒸発、K:凝縮、(−):断熱段階。
【0042】
以下において、前記収着側の流路に沿った前記12個の各サブプロセスステップと、前記相変化側において並行に進むプロセスとについて、前記状態点1を起点に詳細に説明する。
【0043】
1. この状態は、収着領域(SZ1)が完全に脱離されてまだ高温であることを特徴とし、この収着領域は、その後に一定の負荷において(等比体積で)冷却される。その際、図1にあるように、上流側に接続された収着領域(SZ2)から来る既に加熱された熱媒流体はもう一度さらに加熱されて、次にさらに一層の加熱のために高温熱源(HQ)に導かれる。前記中空要素の、圧力平衡にある相変化ゾーン(PZ1)は、熱源から作用を受けることはなく、これにより、作動媒体の有意な蒸発を伴うことなく断熱的に状態∨3から状態∨1(図2を参照)にまで中空要素を冷却することができる。
【0044】
2. プロセス点2に達した際、前記相変化ゾーンは、前記低温熱源NQから来る冷媒流体によって貫流され、その際、作動媒体が低い蒸発圧力レベル(∨1)で蒸発する。同時にまた、前記予冷却された収着領域は、温度がさらに幾分低い作動媒体によって貫流され、これにより、蒸発した作動媒体を受容しながらさらに状態3にまで冷却される。まだ比較的高い温度レベルで発生する吸着熱は、既に比較的よく加熱された熱媒体に供給される。
【0045】
3. この吸着プロセスは、熱媒体の温度が段階的に低くなりながら、まず、状態点4に至り、
4. 既に貫流されている中空要素において、蒸発温度が一定の低さにありながら吸着温度が低下しつつある状態で、最終的に状態点5に至るまで継続される。
【0046】
5. 状態点5を起点に、中空要素は、図1にあるように、収着側において充分に周囲温度(MS)にまで再冷却された流体によって直接貫流される。分離された中間回路ZKのさらに幾分高温になった熱媒体を前記相変化領域に流通させることによって、蒸発圧力がレベル∨2にまで上昇される。これに関連して前記収着領域の圧力が上昇することによって、前記収着領域が、温度上昇を伴うことなく、さらなる作動媒体を受容することができ、状態点6に至る。
【0047】
6. このサブプロセスに配設される中空要素も、プロセスステップ5の中空要素に並列接続されて、前記再冷却器106(中温熱源MS)から来る流体の可能な最低の温度が印加される。前記相変化領域にさらに温度の高い流体が印加され、これにより、前記蒸発プロセスがほぼ圧力レベル∨3で行われるので、前記収着領域は、温度低下を伴わなくとも、さらなる作動媒体を受容することができる。前記相変化領域の前記中間回路ZKの流体温度が上昇することが、後述するプロセスステップ11からの凝縮熱を受容することによって実現される。吸着圧力が増大することによって、前記吸着領域は、温度がほぼ一定のままで、さらなる作動媒体を受容することができる。
【0048】
7. 状態点7では、前記吸着領域に対する最大負荷が実現されており、前記吸着領域内への熱供給段階が始まる。前記吸着領域は事実上まだ周囲温度レベルにあるので、加熱するためには、ほどほどの高さの温度の流体で充分であり、この流体が自らの余熱を前記吸着領域に引き渡し、これにより、吸着領域の温度は周囲温度に一層近づく。その後、前記流体は、周囲温度にまで冷却されるように前記再冷却器106(MS)に送給される。これに関連する相変化領域PZ7は流体の流通がないために断熱状態に維持されるので、作動媒体の圧力は、ほぼ等比体積で状態点8にまで増大する。
【0049】
8. この圧力レベルで、さらなる熱が、このときにはより高くなっている温度レベルで供給され、これにより、次に作動媒体が脱離され、かつ、それに応じて上昇した凝縮温度(K6)において凝縮される。図2のグラフが示しているように、この凝縮温度は、ほぼ両吸着最終温度のレベルであり、これにより、吸着熱と凝縮熱とを放出するために、1つの共通の再冷却器106、106’を用いることができる。流体温度には制限があるので、このプロセスは状態点9で終了する。
【0050】
9. それに続くプロセスステップでは、中空要素は、さらに幾分高い流体温度で状態点10にまで脱離され、その際、前記相変化領域は、同じ温度レベルK6で、同様に周囲温度レベル(MS)にまで再冷却された流体によって並列接続で冷却される。
【0051】
10. このプロセスは、さらに高い脱離温度で状態点11に至るまで継続され、その際、さらなる凝縮熱が、レベルK6において、前記再冷却された流体に引き渡される。
【0052】
11. それに続くプロセスステップでは、前記吸着領域が、直接、前記熱源温度HQでさらに脱離され、一方、前記相変化領域の凝縮温度レベルがレベルK5にまで低下される。図1にあるように、この温度は、前記個別の中間回路ZKの予冷却された熱媒体によってもたらされる。その際、前記吸着領域のほぼ等温の脱離が、プロセス点12まで実施される。
【0053】
12. このプロセスは、次のプロセスステップにおいて、脱離のための最大流体温度が不変の状態で、前記凝縮圧力レベルおよび温度レベルがさらに低減されることによって継続される。この低減は、前記相変化領域に、好ましくは個別の中間回路ZKの、プロセスステップ5からの予冷却された熱媒体が直接印加されることによって実現される。このサブプロセスステップは、開始状態1に達して終了する。
【0054】
従って、ヒートポンプの前述例の場合、前記収着側でも前記相変化側でも、それぞれ幾つかの中空要素に互いに並列に、かつ、幾つかの中空要素に順次直列に流体が流通される。具体的には、これは次のような群である。
【0055】
収着側 並列:SZ5とSZ6、SZ11とSZ12
収着側 直列:SZ10〜SZ7およびSZ4〜SZ1
相変化側 並列:PZ2〜PZ4とPZ8〜PZ10
相変化側 直列:PZ5とPZ6およびPZ11とPZ12
特に、ここでは、前記収着側で並列に連結されている中空要素群は、前記相変化側ではそれぞれ直列に連結されている。
【0056】
図3〜図6は、図1の前記収着側の前記流体回路101を制御するためのバルブ装置の好ましい構造上の実施態様を示す様々な図である。この場合、前記バルブ装置は、円筒シェル109とその中に配置された回転体110とを備えたただ1つの回転バルブ108として実施されており、この回転体は、前記位置固定されたシェル109内で軸110Aを中心に回動可能である。
【0057】
図3は前記回転体110の模式展開図であり、この展開図によって、その機能が特に明確になる。前記回転体110は、全部で4つの周回する環状スペース111を有し、これらの環状スペースは、摺動シール112を介して前記シェル109に対して密封されている。外側径方向開口部113によって、前記環状スペース111は外方向に前記それぞれの熱交換器105、106に結合され、これにより、熱交換器105、106の各流入口および流出口はそれぞれ、前記4つの環状スペース111のうちのただ1つに接続されている。
【0058】
前記回転体110はさらに軸方向の通過路114を有し、これらの通過路は前記回転体を貫通している。その際、例えば前記中空要素11および12の、前記中空要素10への移行部において、前記通過路の幾つかをただ1つの通路に統合する(あるいは分岐する)ことができる(図1を比較参照)。
【0059】
前記回転体はさらに軸方向の袋状通路116を有し、これらの袋状通路は、内側径方向開口部115を介して前記環状スペース111の1つの中へ連通する。図3の展開図では、これらの連通部は、矢の先端と後端との平面図として示されている。これらの通路により、前記中空要素の1つまたは複数と前記熱交換器105、106の1つとの間の接続が行われる。
【0060】
連結の周期的な切り替わりは、前記回転体110が段階的に回動することによって行われ、これにより、前記シェル109の端面側開口部117が切り替わって弁体内における前記通過路114と袋状通路116との軸方向の連通部に重なる。前記端面側の重なりの領域に、適切なシール材121、例えばセラミックシールディスクを設けておくことができる。
【0061】
前記回転体の中央領域118に、(図示されていない)ばね手段を設けておくことができ、これらのばね手段は、第1の回転体部分119と第2の回転体部分120とを互いに押し離して、それぞれ前記軸方向端面側のシール材121に対して押し付けることができる。前記中央領域118における前記通過路114の接続は、例えばホース部材を介して行うことが可能である。前記分岐あるいは統合は、可能な1実施形態では、例えば前記ホース部材を用いて行うことができる。
【0062】
前記シェル109における端面側接続部の付番は、収着側中空要素との接続部あるいは図1の連結状態に対応する。
【0063】
図7および図8は、前記相変化側のバルブ装置としての回転バルブ108を示す。構造および機能は、前記収着側の前記バルブ108にかなり類似している。連結の仕方が異なっているので、前記相変化側の前記回転バルブ108は、前記回転体110内に、それぞれ最大3つまでの内側径方向開口部115を備えた全部で7つの環状スペース111を有する。循環ポンプ103が、全部で6つの外側径方向開口部113のうちの2つに結合されており、これにより、前記中間回路ZKを循環させることができる。
【0064】
図9は、本発明に係るヒートポンプのさらに別の実施例を示す。第1の実施例とは異なり、この例では、前記収着側において、それぞれ3つの中空要素、すなわちSZ4〜SZ6およびSZ10〜SZ12の群が互いに並列に連結されている。これにより、駆動温度差に対する温度リフトの比を一層向上させることが可能となる。同様に、前記相変化側では、中空要素の同じ群(PZ4〜PZ6およびPZ10〜PZ12)が、中間回路において直列に連結されている。
【0065】
図9の例によって実現可能な、前記温度リフトの前記一層の改善は、それに対応する図10のグラフを前記第1の実施例の当該グラフ(図2)と比較することによって明確になる。
【0066】
基本的に本発明では要件に応じて、並列に連結される中空要素と直列に連結される中空要素とを任意に配分することが可能であり、これにより、温度リフトと駆動温度差とを制御できる。温度リフトをさらに最適化するために、特に有利には、前記収着側において前記中空要素の総数の少なくとも3分の1が並列に連結されている。第1の実施例の場合は、全部で12個の中空要素のうち4個が並列に連結されている。図9の第2の実施例では、前記収着側中空要素のちょうど半分が並列に連結されている。
【0067】
本発明の前述の両実施例において、前記相変化側にはそれぞれ全部で3つの循環ポンプが具備されており、これによって、並列に連結された前記両群の中空要素も中間回路も、流体質量流についてそれぞれ個別に調節することができる。これにより、効率を最適化するために前記ヒートポンプを特に精密に調整することが可能である。
【0068】
それに対して、前記収着側には、ただ1つの循環ポンプ103だけが具備されており、前記流体質量流は、管路あるいはバルブ装置に備えられた分岐路に従って分流または合流されている。これは、低コストの解決手段であり、最適な各質量流についてはほとんど調節性を有さない。
【0069】
図11は第3の実施例を示し、この実施例は、収着側の連結の仕方については図9に示した第2の例に一致する。しかし、相変化側には中間回路がなく、全ての中空要素が、ただ1つの循環ポンプ103で駆動される流体回路に組み入れられている。さらに、この場合、並列および直列に連結された中空要素群が、図9の例と類似した形で備えられている。図11の例は、循環ポンプの数が少ないので特に低コストである。前記中空要素がそれぞれ複数のサブモジュールで構成されている場合、および/または、前記外部熱交換器において大きな温度拡散が許容または所望されている場合、この例は特に有利に利用可能である。特に有利には、このことは、交差逆流回路において外部熱交換器を用いる場合に当てはまり、好ましくは、熱源および/またはヒートシンクが空気の場合である。
【0070】
図12はさらに別の実施例を示しており、この実施例の場合、相変化側では、図11の例の場合と同様にただ1つの循環ポンプ103を備えた連結法が選択されている。それに対して前記収着側では、互いに連通する2つの部分回路を組み合わせる方法が選択されており、これらの部分回路は2つの循環ポンプを用いて循環される。この場合も、前記熱交換器105、106のうちの1つから来る流体質量流はそれぞれ3つの中空要素に分配されるが、結合された部分回路であるこれらのモジュールのうちの2つモジュールの戻り流は、前記熱交換器に直接再び送給される。前記3つの並列中空要素のうち1つのみの中空要素の流体質量流が、それ以降に続く直列に連結された中空要素に送給される。前記両ポンプおよぶ/または図示されていない流量制限器をフィードバック制御することによって、前記直列および並列に連結された中空要素群における当該の流体質量流を充分に調整することができ、しかも、第3の循環ポンプを必要としなくなる。
【0071】
図12の例は、少なくとも請求項1および15の適用範囲において本発明に即している。
【0072】
当然ながら、前記各実施例の諸特徴は、要件に応じて互いに有用に組み合わせることが可能である。このことは、特に前記提案された、1つ、2つまたは3つの循環ポンプを備えた連結法に当てはまり、これらの連結法は、要件に応じて前記収着側でも前記相変化側でも利用可能である。
【0073】
従って、例えば、図1の例の相変化側のように3つの分離された部分回路あるいは3つの循環ポンプを備えた回路を前記収着側に用いることも可能である。この場合、前記熱源105(HQ)と前記ヒートシンク106(MS)とに直接結合されて並列に連結された全ての中空要素は、直接これらの外部熱伝導体へ導き戻されるであろう。前記中間回路は、この場合、脱離温度から吸着温度へ温度変化する際の顕熱を回収し、さらに別のポンプによって導き戻す働きを担う。
【0074】
前述した全ての回路変更態様において、回路・温度プロファイルは、前記回転バルブ108をモジュール番号の降順方向に段階的に回動させることによってシフトされる。基本的に、前記両バルブ108を同方向に同調してステップ切り替えするように留意する必要がある。しかし、前記収着領域と前記相変化領域との流体制御を行うための切り替え時間を互いに時間的にずらすことが有利であることもあり得、これにより、前記諸モジュール内で進行する動力学的プロセスの様々な動力学的関係および時間的遅延を考慮することが可能である。
【0075】
全ての回路の特徴は、一方では、前記収着領域と場合によっては前記相変化領域とに関して中空要素の並列回路と直列回路とを組み合わせることである。もう一方において特徴的であるのは、収着側で並列に連結された中空要素群が相変化側ではほぼ直列に連結されており、かつ、その逆も同様であるという意味で、前記収着領域と前記相変化領域との全ての中空要素がほぼ相補的に連結されていることである。
【0076】
この場合、好ましいが必須ではなく、前記蒸発プロセスから前記凝縮プロセスへ、またその逆方向にプロセスが切り替わる中空要素(PZ1、PZ7)はそれぞれ、相変化側において貫流されることはなく、その際、収着側では、ほぼ等比体積での圧力変化および温度変化が行われる。前記モジュールを並列および直列に連結された相補的な群に振り分けることによって、駆動温度差に対する温度リフトの比(MS−NQ)/(HQ−MS)を、収着剤の負荷幅が低減することなく変化させることができ、かつ、前記具備された熱源(HQ、NQ)とヒートシンク(MS)との所望の相対的温度状態に対して最適に適合させることができる。
【0077】
図13には、特に請求項15の適用範囲において本発明に即した、中空要素の連結あるいは配置が示されている。この場合、収着領域(SZ1〜SZ8)と相変化領域(PZ1〜PZ8)とを備えた全部で8個の中空要素が具備されている。この模式図と名称とは、上記の諸実施例に類似している。
【0078】
この実施形態の場合、左図にあるように、全ての収着側中空要素が、並列に貫流される2つの要素群に配設されており、これらの要素群は、それぞれの循環ポンプ103と熱伝導体HQ、MSと共に2つの完全に個別の回路を形成する。その際、上方の回路は高温熱源HQに結合されており、下方の回路は中温ヒートシンクMSに結合されている。
【0079】
特に有利には、前記中温回路によって並列に貫流される中空要素の群が、前記高温回路によって貫流される要素の群よりも大きい。本例では、個数比は3:5である。従って、吸着工程よりも脱離工程において、一般的に、より大きな動力学関係が考慮される。
【0080】
それに対応する前記中空要素の相変化ゾーン(図13の右図)は、特に有利には、少なくとも群として同様にそれぞれ並列に貫流される。図13の実施例では、第1の群PZ1〜PZ3が中温ヒートシンク(MS)および循環ポンプと共にここでも個別の回路を形成する。中空要素PZ4〜PZ8の第2の群は2つの並列に貫流される下位群に区分されているが、これらの下位群は、この実施例では直列に連結されていて、前記相変化ゾーンの前記低温熱源NQと第2の循環ポンプ103と共に個別の回路を形成する。
【0081】
バルブ装置を介して定められる、流体接続部の回路ロジックは、この場合、図では所定の時間ステップで段階的に上方へ移動し、これにより、各モジュールは、周期的に様々に調温される回路に配設される。有利には、前記バルブが1つの位置分ステップ切り替えされる切り替え時点は、前記相変化ゾーン用の前記バルブ装置の切り替え時点が所定の時間間隔だけ前記収着ゾーンの前記バルブ装置の切り替え時点よりも後に行われるように、時間的にずらされている。従って、前記中空要素において新たな物理的状態に調節する際に熱慣性が考慮される。
【0082】
図13の例は、特に請求項15の適用範囲において本発明に即している。
【0083】
図14は、図13に類似したさらに別の実施例を示しており、この実施例の場合、前記収着側の両流体回路が、熱の回収を実現するために完全には分離されていない。その代わりに、2つの中空要素SZ1およびSZ4の戻り路が、前記それぞれの相補的回路に関連付けられている。これらの中空要素は、バルブ切り替え後にもまだ高い熱容量を保持している中空要素である。
【0084】
この場合、前記並列に流体が流通される中空要素、特に前記それぞれの移行部要素(すなわち図示された切り替え状態では中空要素SZ1とSZ4)の体積流が、前記移行部中空要素の温度変化が前記バルブ装置の所定の時間ステップ間隔内にちょうど完全に実施されるように、前記バルブ装置内に所定通りに設けられた断面積調整部および/または絞り要素によって分配されることが提案される。このようにして、当該中空要素内で生じる温度プロファイルの温度勾配がこの時間ステップ幅内にちょうど完全に達成され、これにより、前記回収される熱が最大となる。図15のバルブ装置の図には、このような対策が前記バルブ内の通過部の様々な幅によって模式的に示されている。例えば、「1」および「4」が付された中空要素(従って図14のSZ1とSZ4)の出口に続くバルブ内の通過部が、特に小さな断面積を有している。
【0085】
従って、前記中空要素SZ1が、並列に連結された中空要素SZ6、SZ7およびSZ8にそれぞれ直列に接続されており、かつ、前記中空要素SZ4が、並列に連結された中空要素SZ2、SZ3およびSZ4にそれぞれ直列に接続されているので、図14の例は、少なくとも請求項1および15の適用範囲において本発明に即している。
【0086】
相変化側では、図14の実施例の場合、前記中空要素PZ4の前記相変化ゾーン(図の右側を参照)は貫流されておらず、その結果、前記中空要素は、それに対応する収着ゾーンの切り替え後に相変化側でまず断熱プロセス変化を行う。追加的または代替的に、前記相変化ゾーンのための前記バルブの切り替え時点は、前記収着ゾーンのための前記バルブ装置の切り替え時点に対して時間的に遅延させることが可能である。
【0087】
前記中空要素の並列および直列の貫流方式を互いに組み合わせた回路変更態様の典型例では、流体質量流を適切に調整した場合、図17のグラフにあるように、ほぼ矩形のプロセス変化を経過させることができる。
【0088】
上記の回路変更態様、特に図13と図14の変更態様もまた、前記蓄熱体の温度レベルによって温度リフトと駆動温度差とが事前に設定される場合に、双方向矢印が示すように負荷幅を著しく増大させることできるという利点を有する。また当然その逆に、利用される負荷幅を同等にすることで、温度リフトと駆動温度差との比を改善することも実現可能である。
【0089】
前記矩形プロセスにおける番号は、図14のモジュール番号の要素によって通過される中間的状態を表している。
【0090】
さらに加えて、特に前記凝縮回路と前記蒸発器回路との変動する温度範囲は、前記配設された流体回路を、入口/出口の広がり角をより大きくし、かつ、質量流を比較的わずかにして運用するために利用でき、これにより、ポンプ出力および送風出力を低く維持することができる。
【符号の説明】
【0091】
HQ 熱源(高温蓄熱体)、高温熱源、熱源温度、熱伝導体
HQ−MS 駆動温度差
K4〜K6 レベル
MS 熱源(中温蓄熱体)、中温熱源、熱伝導体、中温ヒートシンク
MS−NQ 温度リフト
NQ 熱源(低温蓄熱体)、低温熱源
PZ1〜PZ12 相変化領域
SZ1〜SZ12 収着領域
∨1〜∨3 状態、レベル
ZK 中間回路
1〜12 中空要素、収着領域、相変化領域;プロセスステップ、状態、状態点、プロセス点
101 流体回路
102 流体回路
103 循環ポンプ
105 熱交換器
106 熱交換器、再冷却器、ヒートシンク
106’ 熱交換器、再冷却器
107 熱交換器
108 バルブ装置、回転バルブ
109 シェル
110 回転体、弁体
110A 軸
111 環状スペース
112 摺動シール
113 外側径方向開口部
114 通過路
115 内側径方向開口部
116 袋状通路
117 端面側開口部
118 中央領域118
119 回転体部分
120 回転体部分
121 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着原理に従うヒートポンプであって、
それぞれ吸着剤を有する複数の中空要素を含み、
前記中空要素内にそれぞれ作動媒体が入れられており、かつ、前記作動媒体が前記吸着剤と相変化領域との間を移動可能であり、
前記中空要素が、バルブ装置(108)によって可変である流体回路(101)において熱輸送流体によって流通可能であり、これにより、前記中空要素が前記吸着剤の領域で前記流体と熱接触させられ、
前記中空要素における前記流体の流通が周期的に切り替わるヒートポンプにおいて、
前記バルブ装置の少なくとも1つの状態、特に好ましくは各状態において、前記中空要素の少なくとも2つが並列に前記流体によって流通され、その際、前記中空要素の少なくとも2つが直列に順次流通されることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項2】
前記バルブ装置(108)の各状態において、前記複数の中空要素の少なくとも2つの群にそれぞれ並列に流体が流通され、その際、前記群の少なくとも1つの群が熱交換器(105、106)の直ぐ上流側または下流側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記並列に流体が流通される中空要素の個数が、前記直列に流体が流通される中空要素の個数の少なくとも約4分の1、特に好ましくは少なくとも約3分の1に相当することを特徴とする、請求項1または2に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記中空要素に、特に好ましくはさらに別のバルブ装置(108)によって可変である流体回路(102)においてさらに別の熱輸送流体が流通可能であり、これにより、前記中空要素が、前記相変化領域において前記さらに別の流体と熱接触させられ、その際、前記中空要素における前記さらに別の流体の流通が周期的に切り替わることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
前記特に好ましくはさらに別のバルブ装置(108)の少なくとも1つの状態、特に好ましくは各状態において、前記相変化領域における前記中空要素の少なくとも2つに並列に前記さらに別の流体が流通され、その際、前記中空要素の少なくとも2つが直列に順次流通されることを特徴とする、請求項4に記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記特に好ましくはさらに別のバルブ装置(108)の各状態において、前記相変化領域における前記複数の中空要素の少なくとも2つの群にそれぞれ並列に前記さらに別の流体が流通され、その際、熱交換器(106’、107)が前記群のうちの少なくとも1つ群の直ぐ上流側または下流側に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記バルブ装置(108)の所与の状態において、前記中空要素のサブセットが部分回路に連結されており、前記熱輸送流体が、追加的な循環ポンプ(103)によって前記部分回路を循環させられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項8】
全部で3つの部分回路が設けられており、前記部分回路が分離されていて、それぞれ3つの循環ポンプ(103)のうちの1つによって循環されることを特徴とする、請求項7に記載のヒートポンプ。
【請求項9】
全部で2つの循環ポンプ(103)が具備されており、第1の部分回路が第1の循環ポンプによって循環され、第2の部分回路が前記第1の部分回路に連通されて第2の循環ポンプによって循環されることを特徴とする、請求項7に記載のヒートポンプ。
【請求項10】
前記中空要素の少なくともそれぞれ1つに、特にその相変化領域において熱輸送流体が流通しないことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項11】
流体が流通しない前記中空要素がそれぞれ、前記相変化領域で熱を収容する中空要素の群と前記相変化領域で熱を放出する中空要素の群との間に配置されていることを特徴とする、請求項10に記載のヒートポンプ。
【請求項12】
前記バルブ装置が、円筒シェル(109)とその中に回動可能に配置された弁体(110)とを備えた少なくとも1つの、特に好ましくはただ1つの回転バルブ(108)を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項13】
前記回転バルブ(108)が、前記個々の中空要素に接続するための端面側の供給部と排出部とを有することを特徴とする、請求項12に記載のヒートポンプ。
【請求項14】
前記弁体(110)が少なくとも1つの環状スペース(111)を構成し、その際、少なくとも2つの軸方向の通路(116)が前記環状スペース(111)内へ連通し、これらの通路が並列に連結された中空要素にそれぞれ結合されており、かつ、前記環状スペースの少なくとも1つの径方向開口部(113)が設けられていて、この開口部が前記環状スペース(111)を介して前記少なくとも2つの軸方向の通路(116)に接続されていることを特徴とする、請求項12または13に記載のヒートポンプ。
【請求項15】
吸着原理に従うヒートポンプであって、
それぞれ吸着剤を有する複数の中空要素を含み、
前記中空要素内にそれぞれ作動媒体が入れられており、かつ、前記作動媒体が前記吸着剤と相変化領域との間を移動可能であり、
前記中空要素が、バルブ装置(108)によって可変である流体回路(101)において熱輸送流体によって流通可能であり、これにより、前記中空要素が前記吸着剤の領域で前記流体と熱接触させられ、
前記中空要素における前記流体の流通が周期的に切り替わるヒートポンプにおいて、
前記バルブ装置(108)の少なくとも1つの状態、特に好ましくは各状態において、前記中空要素の少なくとも1つの第1のサブセットが第1の循環ポンプ(103)の下流側に配置されており、前記中空要素の第2のサブセットが第2の循環ポンプ(103)の下流側に配置されていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項16】
前記サブセットのうちの前記少なくとも1つが少なくとも2つの中空要素を含み、これらの中空要素が互いに並列に前記それぞれの循環ポンプ(103)の下流側に配置されていることを特徴とする、請求項15に記載のヒートポンプ。
【請求項17】
中空要素の前記両サブセットが、前記バルブ装置の前記少なくとも1つの状態において、前記流体の、互いに分離された2つの部分回路に属することを特徴とする、請求項15または16に記載のヒートポンプ。
【請求項18】
中空要素の前記第1のサブセットが前記流体の第1の部分回路に属し、中空要素の前記第2のサブセットが前記流体の第2の部分回路に属しており、前記両部分回路が少なくとも1つの中空要素を介して互いに接続されていることを特徴とする、請求項15または16に記載のヒートポンプ。
【請求項19】
前記バルブ装置(108)が、前記個々の接続された中空要素に流体を流通させるための断面積調整部および/または絞り要素を含み、これらの部材によって、回収される熱が最大化されることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか1項以上に記載の特徴を有することを特徴とする、請求項15〜19のいずれか1項に記載のヒートポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−510281(P2013−510281A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535882(P2012−535882)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066982
【国際公開番号】WO2011/054950
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】