説明

吸着式ローラーとその輸送装置

【課題】輸送物件の吸着に応用可能な吸着式ローラーとその輸送装置の提供。
【解決手段】吸着式ローラー2内部は負圧で、しかも表面には少なくとも1個の物件を吸着する開口を有し、各開口内には開口の開閉に用いるバルブ体212を配置し、ローラー2が特定区域まで回転すると、内部のバルブ体212の移動を制御可能で、これによりその区域の開口は開き、負圧を生じ、このようにして特定区域内において物件に対して吸着力を発揮し、物件の移動を制御する。吸着式ローラー2と位置調整ユニットの結合を利用し、輸送装置を形成し、吸着式ローラー2を利用し輸送物件を吸着する他、位置調整ユニットにより輸送過程において生じる物件の位置の偏りを補償可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輸送技術に関し、特に物件を吸引吸着する力を備え、物件を輸送する吸着式ローラーとその輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テクノロジーの進歩に従い、民生用製品も社会のニーズに合わせて絶えず発展、変化している。
フレキシブル電子製品、フレキシブルディスプレーは、撓み性を備え巻き取ることができ、携帯に便利で、コストが低廉である等の長所を備えるため、極めて幅広い製品応用の可能性が期待される。
【0003】
このタイプの製品は、使用する材料が湾曲可能という特性を備えるため、製造工程において、ローラーを採用し、巻き取り式伝送(R2R,roll−to−roll)の生産形態を採るが、その製造工程は多段階の複雑なプロセスを経由する。
そのため各製造段階において、基板を効果的に拘束し、重ねる際に、位置合わせの精度を高く保つことが求められる。
しかし、基板の巻き取り伝送プロセス経由時に、輸送過程において生じる偏り現象を回避することは難しいため、偏り矯正器等のガイドシステムによって偏りを修正しなければならない。
【0004】
けれども、製造工程の一部が既に完成した基板、或いはウェットコーティング、スペーサー、媒介充填等の製造工程を経過した未成品に対して、偏り矯正器により補正を行う時には、方向転換過程において、ローラーが基板上方に直接接触し、製造工程面が汚染され、或いは構造が圧力を受け損傷することがある。
すなわち、この種の製品は多段階の複雑な製造プロセスを経過するため、輸送過程で不適当な挟持と圧迫を受けると、製品の性質が変化してしまい、歩留まりに悪影響を及ぼす。
【0005】
また、連続式伝送プロセスにおいて、補正後のフレキシブル基板は表面処理プロセスを経過する必要があるが、フレキシブル基板の処理表面は、未凝固の状態で、次のプロセスに伝送すると、再度補正を行わなければならない。
この時、ローラーはスイング或いは左右移動の方式により補正を行うが、何れにしろフレキシブル基板の製造工程面に接触してしまい、連続式設備生産の品質全体に直接的に影響を与えてしまう。
【0006】
よって、巻き取り式生産工程設備において、上記したような製造工程面に損傷を与える情況を回避し、安定的な拘束力で薄膜材料に対して伝送、位置補正、輸送張力等の運動行為を行い、効果的に制御することが重要である。
公知の巻き取り式伝送工程では、ローラーとフレキシブル基板製造工程面の接触を回避する技術には以下の形式がある。
先ず一つ目は、ローラーの中間部分を中空とし、両端に段差を形成するもので、アスレチック器材の鉄アレイに似た形状を呈する。
該構造では、ローラー両端とフレキシブル基板辺縁のみが接触するため、2本一組のローラーを利用しフレキシブル基板両端を挟持し、中空部分はフレキシブル基板中間部分の製造工程面を避けて伝送を行うことができる。
二つ目の類似の方法は、フレキシブル基板両側において、輸送方向に沿って、一定の間隔を隔て孔を開け、ローラー両側表面の相対位置には、ドットマトリックスプリンターのように突出点を配置する。
ローラーが回転すると、突出点はそれぞれ各孔を貫通し、フレキシブル基板を連動し拘束と伝送を行う。
【0007】
さらに別種の、ローラーに製造工程面を回避させる方式には、特許文献1に掲示するエアフローとローラーを利用するものがある。
該ローラー表面には一面に孔を形成し、ローラー内部は正圧とする。気流が孔から噴出すと、ローラー表面とフレキシブル薄膜の間は、圧力効果を利用し、微小なエアフローと間隙を生じる。これにより両者の表面は直接の接触を免れる。
また、エアフロート式ローラーの正圧吹き付けとは異なる方式として、特許文献2に掲示する吸着方式がある。
該方式はローラー外部に一層の弾性材料を被せ、内部の2個のロールと外ローラー間の間歇性回転接触を利用し、これにより弾性材料表面は変形を生じ、微小な孔を形成する。該微小な孔の開閉が生じる吸着気流により、フレキシブル基板に対して吸着と釈放を達成する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,427,941号明細書
【特許文献2】米国特許第5,931,635号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は吸着区域を制御し気体の漏洩を防止し、しかも輸送物件の製造工程面を損傷しない状況において、安定的な拘束力を通して、特定の区域内で、物件に対して吸着、挟持を行い、これにより製造工程において要求される物件の伝送、輸送張力等の運動行為を効果的に制御することができる吸着式ローラーを提供することである。
【0010】
本発明は吸着力を提供し、物件を挟持するローラーと物件輸送位置補償を行うことができる位置調整ユニットを利用し、吸着式ローラーを用い物件を輸送可能である他、位置調整ユニットを利用し、物件の輸送過程において生じる位置の偏りを補償することができ、物件輸送の正確性を維持することができる輸送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は下記の吸着式ローラーとその輸送装置を提供する。
吸着式ローラーは外スリーブ、外ローラー、内ホイールを備え、
該外スリーブは複数の第一貫通孔を備える。該外ローラーは該外スリーブ内に設置し、該外ローラー上には、該複数の第一貫通孔と相対する複数の第二貫通孔を備え、各第二貫通孔はそれぞれバルブ体を設置する。該内ホイールは該外ローラー内に設置し、該内ホイール上には凸部と少なくとも1個の溝を備え、該凸部と該外ローラーの内壁間には微小な間隙を備える。
【0012】
本発明の輸送装置は、少なくとも1個の吸着式ローラーを備え、
該吸着式ローラーは台体上に設置し、物件を輸送する。
該少なくとも1個の吸着式ローラーはそれぞれ外スリーブ、外ローラー、内ホイール、負圧源、位置調整ユニットを備え、
該外スリーブは複数の第一貫通孔を備える。該外ローラーは該外スリーブ内に設置し、該外ローラー上には該複数の第一貫通孔と相対する複数の第二貫通孔を備え、該各第二貫通孔はそれぞれバルブ体を設置する。該内ホイールは該外ローラー内に設置し、該内ホイール上には凸部と少なくとも1個の溝を備え、該凸部と該外ローラーの内壁間には微小間隙を備える。該負圧源は該少なくとも1個の吸着式ローラーと連接し、負圧を提供する。該位置調整ユニットは該台体上に接続し、該台体の位置を調整し、該物件の輸送位置を補償する。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提供する吸着式ローラーとその輸送装置は、負圧力を提供可能で、物件を効果的に吸着、伝送し、しかも輸送時に物件に対する張力の制御を行い、物件輸送時に生じる位置の偏りを補償することができる。
よって、同産業における競争力を向上させ、周辺産業の発展を牽引することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態による吸着式ローラーの立体概略図であり、図2は本発明の一実施形態による吸着式ローラーの立体分解概略図である。
本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、吸着式ローラー2は物件90上に吸着力を提供し、物件90を回転輸送する。
本発明の一実施形態では、物件90は軟性材料或いは撓み性材料である。
吸着式ローラー2は外スリーブ20、外ローラー21、内ホイール22を備える。
外スリーブ20は設置空間202、及び円形貫通孔である複数の第一貫通孔201を備える。
外スリーブ20の材料は、鋼材、ガラス、セラミック、ファイバー、プラスチックから選択することができる。
外ローラー21は外スリーブ20の設置空間202内に設置する。
外ローラー21上には設置空間213、及び複数の第一貫通孔201と対応する複数の第二貫通孔211を備える。
各第二貫通孔211内にはそれぞれバルブ体212を設置する。
図2では、第二貫通孔211に対応するバルブ体212のみを掲示する。
本一実施形態では、第二貫通孔211は錐形孔である。
外ローラー21が特定の位置まで回転した時に、バルブ体212が第一貫通孔201から落下することがないよう、第一貫通孔201の孔径は第二貫通孔211の最も外側の孔径より小さい。
【0015】
図3、図4は本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の概略図である。
第二貫通孔211と対応させるため、バルブ体212は図3に示す球体、或いは図4に示す錐体とすることができる。
バルブ体212の材料は、鋼材、ガラス、セラミック、ファイバー、プラスチックから選択することができる。
【0016】
図5は本発明の第二実施形態による吸着式ローラーの断面概略図である。
本実施形態では、外ローラー21の第二貫通孔211aの外観は円孔ではなく、細長い形状の錐形孔である。
本実施形態においては、細長い形状の第二貫通孔211aに対応するため、本実施形態のバルブ体は円柱体212a(図6参照)、或いは錐度を備える柱体212b(図7参照)で、こうして第二貫通孔211a内に設置し、第二貫通孔211aの開閉を制御する。
第二貫通孔211aが細長い錐形であるときには、図5に示すように、第一貫通孔201aも、必要に応じて細長い形状の開孔とすることができる。
この時、第一貫通孔201aの径幅は、第二貫通孔211aよりも小さく、このようにして外ローラーが特定の位置まで回転しても、バルブ体が第一貫通孔201aから落下しないようにする。
【0017】
再び図1、図2に示すように、内ホイール22は外ローラー21の設置空間213内に設置する。
内ホイール22上には、凸部220、及び少なくとも1個の溝221(図は複数の溝221を示すが、1個のみでも実施可能)を備える。
凸部220と外ローラー21の内壁間には、微小間隙25を備える(図10参照)。
【0018】
図8に示すように、本実施形態において、凸部220は展開角度Θを備え、それは10から180度の間である。
展開角度Θの大きさは、物件に対して生じる吸着力の範囲を決定する。
【0019】
さらに図1、図2に示すように、内ホイール22の両端には、管体222をそれぞれ延伸し、その上にはそれぞれベアリング26を嵌設する。
ベアリング26内部壁面260は管体222の外壁と対応し、ベアリング26の外壁261は外ローラー21の内壁面214と対応する。これにより、外ローラー21はベアリング26を利用し回転可能となる。
管体222上にはさらに油封部品27を嵌め、ベアリング26の外側に設置する。
内ホイール22の外側はさらに、蓋体28によりベアリング26と油封部品27を、外ローラー21の管体上において固着する。
蓋体28の外径は、外スリーブ20の外径とほぼ等しい。
吸着式ローラー2の両端には管路23を備え、内ホイール22の管体222と通じる。
管路23の一端は、負圧源24と連接する。
負圧源24が提供する負圧は、内ホイール22の溝221を通して、内ホイール22と相互に通じる第二貫通孔211内のバルブ体212上に作用する。
【0020】
図1に示す設計により、内ホイール22と外ローラー21の真空漏れの問題を解決することができる。
すなわち、外ローラー21内部には第二貫通孔211を形成し、その内部には特定形状のバルブ体212を設置し、負圧源24が内ホイール22を経由し生じる負圧吸着力を利用するためである。
その原理はバルブ体の開閉を制御する方式と同様で、主要な目的は、真空気体の流量を効果的に制御し、ローラーの輸送される物件に対する吸着力を向上させることである。
【0021】
図1と図2に示す実施形態の組み立て方式においては、先ず内ホイール22を外ローラー21内に嵌める。
次に、負圧源24と内ホイール22の両側を相互に通じさせ、これにより外ローラー21上の第二貫通孔211は負圧吸着力を備え、外ローラー21はたくさんのバルブ体212を備える容器内において、回転する。
この時、第二貫通孔211は負圧吸着力を備えるため、対応するバルブ体212を吸着し第二貫通孔211内に進入させる。
続いて、熱を受けて膨張する外スリーブ20を外ローラー21外部に嵌め、冷却する。これにより、外スリーブ20は外ローラー21と緊密に対応することができる。
このようにして、図1に示す断面状態を完成する。
【0022】
次に、第二貫通孔とバルブ体が真空を制御する吸着と釈放原理について説明する。
図9は本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の動作概略図であり、図10は本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の動作概略図である。
図9と図10に示すように、先ずバルブ体212を外ローラー21の第二貫通孔211内に入れる。外ローラー21が停止時に、バルブ体212が落下しないよう、外ローラー21外部には外スリーブ20を設置する。
外ローラー21と外スリーブ20の両者は、一致した回転を行い、相対運動を行わない。
内ホイール22は固定され、回転せず、その上の凸部220と外ローラー21上のバルブ体212の一部は接触する。
負圧源24を起動する前に、先に一層のフレキシブル基板91を外スリーブ20の吸着表面上に置く。
負圧源24を起動すると、内ホイール22内は負圧を生じ、すべてのバルブ体212は負圧源24が生じる吸着力により吸入され、第二貫通孔211を塞ぐ。これにより、第二貫通孔211とバルブ体212は完全に密着する。
図9において、凸部220と接触する一部のバルブ体212は、凸部220により押し上げられ、それが対応する第二貫通孔211を塞ぐことができない。
このようにして、図10に示すように、気体92は外部からバルブ体212及び第二貫通孔211を経由し、内ホイール22内部へと流入する。
よって、外スリーブ20を覆うフレキシブル基板91は、フレキシブル基板91と接触する第一貫通孔201を経由し、真空負圧が生じる吸引力により吸着される。
【0023】
図11、図12、図13は本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、物件を輸送する状態を示す概略図である。
図11中では、フレキシブル基板91は外スリーブ20の表面に接触すると、たちまち吸着される。
図12中では、外スリーブ20が回転すると、バルブ体212も一緒に回転し、外スリーブ20の回転過程において、バルブ体212は回転過程に従い、内ホイール22上の凸部220を順番に押し上げ、もともとバルブ体212が塞いでいた、外ローラー21の第二貫通孔211は真空気流間隙を形成する。これにより真空吸着を生じ、フレキシブル基板91を直接吸着し、伝送を行い、フレキシブル基板91の移動を牽引する。
図13中では、回転後のバルブ体212は凸部220を離脱し、さらに第二貫通孔211の負圧直吸引を通過し、第二貫通孔211を塞ぐ。これにより真空気流間隙は閉鎖される。
この時、フレキシブル基板91は真空気流の吸着がなくなるため、釈放される。
吸着式ローラー2の回転により、フレキシブル基板91は真空気体により緊密に吸着され、フレキシブル基板91を吸着しない区域(凸部220が接触しない区域)のバルブ体212は外ローラー21の第二貫通孔211を塞ぎ、このようにしてフレキシブル基板91は徐々に前方へと輸送される。
【0024】
図14は本発明の一実施形態による輸送装置の概略図である。
本実施形態において、吸着式輸送装置3は吸着式ローラー30、負圧源31、位置調整ユニット32を備える。
吸着式ローラー30は台体33上に設置し、物件93を輸送する。
物件93は軟性基板或いは撓み性基板(プラスチック基板、或いは他の高分子材料の軟性材料等)であるが、これに限定するものではない。
本実施形態では、物件93はフレキシブル基板91である
吸着式ローラー30の構造は、図1に示す吸着式ローラー2の構造と同一であるため、ここでは記載しない。
【0025】
負圧源31は管路と吸着式ローラー30とが連接し、負圧を提供する。
位置調整ユニット32は台体33上に接続し、台体33の位置を調整し、物件93の輸送位置の補償を行う。
本実施形態においては、位置調整ユニット32は精密リニアモーターで、水平移動により物件93の輸送時の位置を調整し、物件93が輸送時に生じる位置の偏りを補正する。
リニアモーターは基本的には、コントローラーとガイドレールを備える。
コントローラーは信号を受信し、ガイドレールの移動を制御する。
これらは公知の技術であるため、ここでは説明しない。
物件93の片側には、さらに少なくとも1個の位置センサー34を設置し、物件の側辺930の位置を探知する。
位置調整ユニット32は位置センサー34が感知した物件93側辺930の偏り量に基づき、精密な水平移動を利用し、物件93の偏り量を補償する。
位置センサー34の位置と数量は、必要に応じて決定することができ、図14に示す位置と数量に限定するものではない。
【0026】
図15は本発明の第二実施形態による輸送装置の概略図である。
図15に示すように、本実施形態は、基本的には図14に示す実施形態と相同であるが、輸送装置3がさらに送り出しローラー部35と巻き取りローラー部36を備える点が異なる。
送り出しローラー部35はロール状の軟性物件を受け取ることができ、巻き取りローラー部36は製造工程を経過後の軟性物件を巻き取る。
図15に示すような、roll−to−roll巻き取り伝送設備である。
軟性物件94は上面に、コーティング或いは媒介充填等のプロセスを施すため、表面の媒介が未凝固の状態では、製造工程面の品質に影響を及ぼさないようにするため、軟性物件94表面をローラーに挟むことはできない。
フレキシブル基板の製造工程面をローラーが挟み込まないようにするため、本発明図15に示す真空吸着を利用し、伝統的なローラーにより挟持する方式に置換し、軟性物件94を輸送する。
【0027】
吸着式ローラー30に対応し、軟性物件94が伝送される時には、位置の偏りを生じる。
軟性物件94の偏り現象に対しては、上記した位置センサー34を利用し、軟性物件94の側辺940の位置を探知し、偏りが生じているかいなかを判断する。
軟性物件94が吸着式ローラー30による伝送で偏り、位置センサー34が軟性物件94の側辺940の偏りを感知すると、信号を位置調整ユニット32内のリニアモーターのコントローラーに伝送する。
コントローラーはリニアモーターを駆動し、即時に位置の補正を行う。
図14と図15とに示す実施形態は共に、一対の吸着式ローラー30を利用する。
よって、一対の吸着式ローラー30が軟性物件94を吸着すれば、吸着式ローラー30中央部分の軟性物件94が受ける張力は安定し、しかも平均を保持している。
軟性物件94の前後は、吸着の拘束力により既にかなり大きな張力作用を有するため、この区間の軟性物件94は、伝送において、ねじれや変形が生じることはなく、微張力制御とみなすことができる。
なぜなら、輸送の過程において、軟性物件94の張力は均衡を維持されるため、軟性物件94は後続の製造工程(プリント或いはコーティング等)において、製造工程面の均一性を維持することができる。
【0028】
図14と図15とに示す吸着式ローラーは、一対とする実施形態であるが、本項技術の習熟者が本発明の精神を理解した上で、図1に示す吸着式ローラー2と図14或いは図15とに示す位置調整ユニット32、及び位置センサー34と、を相互に結合し、単一の吸着式ローラーの輸送装置を形成することができる。
本発明の吸着式ローラー及びその輸送装置は、フレキシブルディスプレー及びフレキシブル回路板等の単一製品の伝送に用いることができ、さらに、製品包装と製品の運輸等にも応用可能である。
すなわち吸着式ローラーは幅広い分野に使用することができる。
【0029】
図16は公知の吸着式ローラー(US6,427,941)において、その負圧効果を示す折れ線グラフであり、図17は本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、その負圧効果を示す折れ線グラフである。
図16と図17との座標において、座標軸(角度)は、ローラーが物件に対して生じる吸着力の角度範囲を示し、座標軸(引力)は、その角度範囲において吸着ローラーが固定され回転せず、引力器により物件を動かす場合に必要な引力を示す。
図16において、公知の負圧ローラーが生じる吸着力は均一ではなく、接触角度が小さくなればなるほど、その真空吸着力は小さくなり、接触角度が大きくならなければその吸着力が大きくならないことが分かる。
上記した現象が生じる原因は、公知技術の負圧効果に漏洩状況があるためであると考えられる。そのため、吸着力の大きさは接触範囲に応じて変化する。
反対に、図17において、本発明の真空吸着力は漏洩せず、接触範囲にかかわらず、吸着式ローラーは物件に安定的な負圧吸着力を提供可能であることが分かる。
【0030】
本発明は具体的実施形態を上記の通り開示したが、これらは最適実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではない。当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の製品と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、したがって本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
上記したように、本発明が提供する吸着式ローラーとその輸送装置は、負圧力を提供可能で、物件を効果的に吸着、伝送し、しかも輸送時に物件に対する張力の制御を行い、物件輸送時に生じる位置の偏りを補償することができる。
よって、同産業における競争力を向上させ、周辺産業の発展を牽引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による吸着式ローラーの立体概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による吸着式ローラーの立体分解概略図である。
【図3】本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の概略図である。
【図5】本発明の第二実施形態による吸着式ローラーの断面概略図である。
【図6】本発明の第二実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の立体概略図である。
【図7】本発明の第二実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の立体概略図である。
【図8】本発明の一実施形態による吸着式ローラーの内ホイールの断面概略図である。
【図9】本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の動作概略図である。
【図10】本発明の一実施形態による吸着式ローラーのバルブ体の動作概略図である。
【図11】本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、物件を輸送する状態を示す概略図である。
【図12】本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、物件を輸送する状態を示す概略図である。
【図13】本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、物件を輸送する状態を示す概略図である。
【図14】本発明の一実施形態による輸送装置の概略図である。
【図15】本発明の第二実施形態による輸送装置の概略図である。
【図16】公知の吸着式ローラー(US6,427,941)において、その負圧効果を示す折れ線グラフである。
【図17】本発明の一実施形態による吸着式ローラーにおいて、その負圧効果を示す折れ線グラフである。
【符号の説明】
【0032】
2 吸着式ローラー
20 外スリーブ
201、201a 第一貫通孔
202 設置空間
21 外ローラー
211、211a 第二貫通孔
212 バルブ体
212a 円柱体
212b 柱体
213 設置空間
214 壁面
22 内ホイール
220 凸部
221 溝
222 管体
23 管路
24 負圧源
25 間隙
26 ベアリング
260、261 壁面
27 油封部品
28 蓋体
3 吸着式ローラー輸送装置
30 吸着式ローラー
31 負圧源
32 位置調整ユニット
33 台体
34 位置センサー
35 送り出しローラー部
36 巻き取りローラー部
90 物件
91 フレキシブル基板
92 気体
93 物件
930 側辺
94 フレキシブル基板
940 側辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外スリーブ、外ローラー、内ホイールを備え、
前記外スリーブは、複数の第一貫通孔を備え、
前記外ローラーは、前記外スリーブ内に設置し、前記外ローラー上には前記複数の第一貫通孔と対応する複数の第二貫通孔を備え、各第二貫通孔内にはそれぞれバルブ体を設置し、
前記内ホイールは、前記外ローラー内に設置し、前記内ホイール上には、凸部、及び少なくとも1個の溝を備え、前記凸部と前記外ローラーの内壁間には、間隙を備えることを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項2】
請求項1記載の吸着式ローラーにおいて、前記凸部は、展開角度を備え、それは10度から180度の間であることを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項3】
請求項1記載の吸着式ローラーにおいて、前記第一貫通孔は、円形貫通孔で、前記第二貫通孔は錐形貫通孔で、前記バルブ体は球体、錐体、或いは柱体であることを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項4】
請求項1記載の吸着式ローラーにおいて、前記バルブ体と前記外スリーブの材料は、鋼材、ガラス、セラミック、ファイバー、プラスチックから選択することを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項5】
請求項1記載の吸着式ローラーにおいて、前記内ホイールの少なくとも一端には、さらに負圧源を接続し、前記少なくとも1個の溝を経由し、負圧作用を前記複数のバルブ体に提供することを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項6】
請求項1記載の吸着式ローラーにおいて、前記第一貫通孔は、長方形貫通孔で、前記第二貫通孔は細長い形状の錐形貫通孔であることを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項7】
請求項1記載の吸着式ローラーにおいて、前記内ホイールの両端には、それぞれ管体を備え、その上にはベアリングと油封部品を嵌め、前記内ホイールの両側はそれぞれ、さらに、前記外ローラーの管体上において、蓋体により、前記ベアリングと前記油封部品を固着することを特徴とする吸着式ローラー。
【請求項8】
少なくとも1個の吸着式ローラーを備え、それは台体上に設置し、物件を輸送し、前記少なくとも1個の吸着式ローラーはそれぞれ外スリーブ、外ローラー、内ホイール、負圧源、位置調整ユニットを備え、
前記外スリーブは、複数の第一貫通孔を備え、
前記外ローラーは前記外スリーブ内に設置し、前記外ローラー上には前記複数の第一貫通孔と対応する複数の第二貫通孔を備え、各第二貫通孔内にはそれぞれバルブ体を設置し、
前記内ホイールは、前記外ローラー内に設置し、前記内ホイール上には、凸部、及び少なくとも1個の溝を備え、前記凸部と前記外ローラーの内壁間には、間隙を備え、
前記負圧源は、前記少なくとも1個の吸着式ローラーと連接し、負圧を提供し、
前記位置調整ユニットは前記台体上に接続し、前記台体の位置を調整し、物件の輸送位置の補償を行うことを特徴とする輸送装置。
【請求項9】
請求項7記載の輸送装置において、前記凸部は、展開角度を備え、それは10度から180度の間であることを特徴とする輸送装置。
【請求項10】
請求項7記載の輸送装置において、前記第一貫通孔は、円形貫通孔で、前記第二貫通孔は錐形貫通孔で、前記バルブ体は球体、錐体、或いは柱体であることを特徴とする輸送装置。
【請求項11】
請求項7記載の輸送装置において、前記バルブ体と前記外スリーブの材料は、鋼材、ガラス、セラミック、ファイバー、プラスチックから選択することを特徴とする輸送装置。
【請求項12】
請求項7記載の輸送装置において、前記内ホイールの少なくとも一端には、さらに負圧源を接続し、前記少なくとも1個の溝を経由し、負圧作用を前記複数のバルブ体に提供することを特徴とする輸送装置。
【請求項13】
請求項7記載の輸送装置において、前記第一貫通孔は、長方形貫通孔で、前記第二貫通孔は細長い形状の錐形貫通孔であることを特徴とする輸送装置。
【請求項14】
請求項7記載の輸送装置において、前記輸送装置は、さらに少なくとも1個の位置センサーを備え、物件の側辺の位置を探知することを特徴とする輸送装置。
【請求項15】
請求項7記載の輸送装置において、前記位置調整ユニットは、水平移動により物件の位置を調整することを特徴とする輸送装置。
【請求項16】
請求項7記載の輸送装置において、前記物件は、軟性材料或いは撓み性材料であることを特徴とする輸送装置。
【請求項17】
請求項15記載の輸送装置において、前記輸送装置は、さらに送り出しローラー部と巻き取りローラー部を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項18】
請求項7記載の輸送装置において、前記内ホイールの両端には、それぞれ管体を備え、その上にはベアリングと油封部品を嵌設、前記内ホイールの両側はそれぞれ、さらに、前記外ローラーの管体上において、蓋体により、前記ベアリングと前記油封部品を固着することを特徴とする輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−70383(P2010−70383A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254285(P2008−254285)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】